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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172027
(43)【公開日】2022-11-14
(54)【発明の名称】非常時対応水洗トイレシステム
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/014 20060101AFI20221107BHJP
   B01D 29/96 20060101ALI20221107BHJP
   E03D 5/016 20060101ALI20221107BHJP
   E03D 5/10 20060101ALI20221107BHJP
   E03D 1/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
E03D5/014
B01D29/02 E
E03D5/016
E03D5/10
E03D1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078203
(22)【出願日】2021-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】521179504
【氏名又は名称】株式会社e6s
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】高波 正充
(72)【発明者】
【氏名】中野 和典
【テーマコード(参考)】
2D039
4D116
【Fターム(参考)】
2D039AC10
2D039BA00
2D039DA01
2D039FA03
2D039FA07
2D039FC10
2D039FD01
4D116AA07
4D116BB02
4D116BC03
4D116BC06
4D116BC13
4D116BC74
4D116DD01
4D116EE04
4D116FF14B
4D116FF15B
4D116GG11
4D116GG13
4D116KK01
4D116QA21C
4D116QA21E
4D116QA21G
4D116QA41C
4D116QA41E
4D116QA41G
4D116QA44C
4D116QA44E
4D116QA44G
4D116QA45C
4D116QA45E
4D116QA45G
4D116QA46C
4D116QA46E
4D116QA46F
4D116QA55C
4D116QA55E
4D116QA55F
4D116QB25
4D116QB26
4D116QC16C
4D116QC20B
4D116QC39
4D116SS01
4D116SS07
4D116UU01
4D116UU20
4D116VV14
(57)【要約】
【課題】非常時において水洗トイレ10の衛生環境が悪化することを容易に抑制する。
【解決手段】非常時対応水洗トイレ10システム1は、水洗トイレ10と、水洗トイレ10から排出された被処理物を、平常時においては下水に排出するように制御し、非常時においては当該被処理物に含まれる固形物と液体を分離する固液分離ユニット20,70に排出するように制御する制御部46と、固液分離ユニット20,70により分離された被処理物に含まれる液体を水洗トイレ10の洗浄水として貯留するタンクと、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗トイレと、
前記水洗トイレから排出された被処理物を、平常時においては下水に排出するように制御し、非常時においては当該被処理物に含まれる固形物と液体を分離する固液分離ユニットに排出するように制御する制御部と、
前記固液分離ユニットにより分離された前記被処理物に含まれる液体を前記水洗トイレの洗浄水として貯留するタンクと、
を備える、
非常時対応水洗トイレシステム。
【請求項2】
前記制御部は、非常時を通知する信号を受信した場合に、前記被処理物を固液分離ユニットに排出するように制御する、
請求項1に記載の非常時対応水洗トイレシステム。
【請求項3】
前記制御部は、平常時を通知する信号を受信した場合に、前記被処理物を下水に排出するように制御し、前記タンクの容量が所定量未満になったことに応じて、当該タンクに上水が送水されるように制御する、
請求項1又は2に記載の非常時対応水洗トイレシステム。
【請求項4】
前記固液分離ユニットの一部又は全部は、カセットとして着脱自在であり、
前記カセットは、前記被処理物に含まれる固形物と液体を分離するフィルターを少なくとも含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の非常時対応水洗トイレシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時対応水洗トイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、災害等によって上下水道や電気等のライフラインが使用できなくなった際にも利用可能な水洗トイレシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平常時には汚水を下水道に放流し、非常時には下水への放流を止めて汚水を貯留タンクで浄化し、給水タンクに返送することで洗浄水(水洗水)を循環使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-204919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、汚水とともに固形物(例えば、大便やトイレットペーパー等)が多く含まれる場合、貯留タンク内における汚水の浄化効率が低下するため、洗浄水が汚れたままとなり、水洗トイレの衛生環境が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非常時において水洗トイレの衛生環境が悪化することを容易に抑制することができる非常時対応水洗トイレシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る非常時対応水洗トイレシステムは、水洗トイレと、前記水洗トイレから排出された被処理物を、平常時においては下水に排出するように制御し、非常時においては当該被処理物に含まれる固形物と液体を分離する固液分離ユニットに排出するように制御する制御部と、前記固液分離ユニットにより分離された前記被処理物に含まれる液体を前記水洗トイレの洗浄水として貯留するタンクと、を備える。
【0008】
また、本発明の第二態様では、前記制御部は、非常時を通知する信号を受信した場合に、前記被処理物を固液分離ユニットに排出するように制御する。
【0009】
また、本発明の第三態様では、前記制御部は、平常時を通知する信号を受信した場合に、前記被処理物を下水に排出するように制御し、前記タンクの容量が所定量未満になったことに応じて、当該タンクに上水が送水されるように制御する。
【0010】
また、本発明の第四態様では、前記固液分離ユニットの一部又は全部は、カセットとして着脱自在であり、前記カセットは、前記被処理物に含まれる固形物と液体を分離するフィルターを少なくとも含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非常時において水洗トイレの衛生環境が悪化することを容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る非常時対応水洗トイレシステムの一例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る固液分離ユニットの平面図であって、フィルターが巻き取られる前の状態を示す。
図3】本実施形態に係る固液分離ユニットの平面図であって、フィルターが巻き取られた後の状態を示す。
図4】本実施形態に係る固液分離ユニットの側面図であって、フィルターが巻き取られる前の状態を示す。
図5】本実施形態に係る固液分離ユニットの側面図であって、フィルターが巻き取られた後の状態を示す。
図6】本実施形態に係る固液分離ユニットの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<全体構成>
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非常時対応水洗トイレシステム1について、図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る非常時対応水洗トイレシステム1の一例を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、非常時対応水洗トイレシステム1は、水洗トイレ10と、固液分離ユニット20と、第1タンク50と、第1ポンプ52と、浄化ユニット54と、第2タンク56と、オゾン発生装置58と、第2ポンプ60と、を備える。
【0016】
水洗トイレ10は、例えば、便器や便座、蓋、洗浄センサー等を有する。この洗浄センサーは、水洗トイレ10の利用者からの洗浄指示を検知する。例えば、洗浄センサーは、利用者からの洗浄指示を検知すると、第2ポンプ60を作動させ、洗浄水を送水して便器を洗浄し、当該便器内の被処理物(例えば、小便や大便、トイレットペーパー等)を下水又は固液分離ユニット20に排出する。この洗浄センサーとしては、例えば、利用者によって洗浄レバーが下げられたことを検知する各種センサーや、利用者が便座から立ち上がったことを検知する各種センサー、利用者の手等が接近したことを検知する非接触センサー等が挙げられる。
ここで、平常時においては、被処理物は、電磁弁B1により下水に排出される。一方、災害等の発生によって上・下水道の機能が停止した非常時においては、被処理物は、電磁弁B1により固液分離ユニット20に排出される。すなわち、非常時においては、固液分離ユニット20や浄化ユニット54等により分離及び浄化された液体が洗浄水として再利用される。
【0017】
固液分離ユニット20は、水洗トイレ10から排出された被処理物に含まれる固形物と液体を分離する。この固形物としては、例えば、大便やトイレットペーパー等の汚物が挙げられる。また、この液体としては、例えば、小便や洗浄水等の汚水が挙げられる。
【0018】
第1タンク50は、固液分離ユニット20によって分離された液体を貯留する。また、第1タンク50は、貯留されている液体の容量を計測するセンサーを有する。このセンサーとしては、例えば、重量センサーや、光学センサー等が挙げられる。
【0019】
第1ポンプ52は、第1タンク50に貯留された液体を浄化ユニット54に送水する。例えば、第1ポンプ52は、第1タンク50における液体の容量が満タンである場合に作動し、当該液体を浄化ユニット54に送水する。また、例えば、第1ポンプ52は、第1タンク50における液体の容量が空(ゼロ)である場合に作動を停止する。なお、第1ポンプ52は、第1タンク50における液体の容量に関わらず、第2タンク56における液体の容量が満タンである場合に作動を停止する。
【0020】
浄化ユニット54は、第1タンク50から送水された液体(汚水)を浄化する。例えば、浄化ユニット54は、ゼオライトや活性炭等が層状に敷き詰められており、通過する液体を消臭及び無色化する。なお、浄化ユニット54では、薬剤や微生物(例えば、バイオフィルムや植物根圏微生物群)を用いて、消臭等を行ってもよい。
【0021】
第2タンク56は、洗浄水を貯留する。本実施形態では、第2タンク56は、浄化ユニット54を通過して浄化された液体、又は上水を貯留する。例えば、平常時においては、上水は、電磁弁B2によって第2タンク56に送水される。
【0022】
また、第2タンク56は、オゾン発生装置58を有している。このオゾン発生装置58は、第1タンク50から送水された液体を消臭殺菌するための装置である。このオゾン発生装置58は、動作を自動的に停止するタイマーが設けられ、節電のためやオゾン濃度の上昇によって人体への健康被害が発生しないために、動作時間が制限されている。なお、この動作時間は、後述する制御部46によって制御(管理)されてもよい。
【0023】
また、第2タンク56は、貯留されている液体(洗浄水)の容量を計測するセンサーを有する。また、電磁弁B2は、上水が送水(供給)されていることを検知するセンサー(例えば、光学センサー)を有する。
【0024】
第2ポンプ60は、第2タンク56に貯留された液体(洗浄水)を水洗トイレ10に送水する。例えば、第2ポンプ60は、水洗トイレ10の洗浄センサーが洗浄指示を検知した場合に作動する。
【0025】
(具体例1)
図2乃至図5は、本実施形態に係る固液分離ユニット20の一例(具体例1)を示す概略図である。
【0026】
図2乃至図5に示すように、固液分離ユニット20は、第1排水口22と、フィルター24と、格子網26と、第1ガイドローラー28と、第2ガイドローラー30と、高さセンサー32と、送出ローラー34と、巻取ローラー36と、モーター38と、第2排水口40と、電源42と、送風機44と、制御部46と、を備える。
【0027】
第1排水口22は、水洗トイレ10から排出された被処理物が通過する排水口である。この第1排水口22は、例えば、下方向(重力方向)に向けて面積が大きくなっており、水平方向に広げられたフィルター24による濾過面積が大きくなるように構成されている。なお、第1排水口22は、昇降手段(図示しない)を有している。この昇降手段は、例えば、昇降用モーターによって実現される。この昇降手段は、例えば、制御部46によって制御される。この昇降手段は、例えば、モーター38の動作が開始するタイミングで、第1排水口22を上昇させ、モーター38の動作が停止するタイミングで、第1排水口22の下部が水平方向に広げられたフィルター24に接地するように下降させる。これにより、巻取ローラー36によってスムーズにフィルター24を巻き取ることができる。
【0028】
フィルター24は、送出ローラー34から巻取ローラー36までの間において水平方向に広げられ、水洗トイレから排出された被処理物に含まれる固形物と液体を分離する濾材である。この水平方向に広げられたフィルター24には、第1排水口22から被処理物が落下し、固形物はフィルター24の上部(上面)に残留し、液体はフィルター24を通過して下方向(重力方向)に落下する。このフィルター24としては、植物性材料で作られたガーゼや、樹脂製の不織布等が挙げられる。なお、フィルター24は、複数の層状に構成されていてもよいし、固形物が付着(吸着)しやすいように凹凸(プリーツ等)が設けられていてもよい。
【0029】
本実施形態では、フィルター24は、固液分離が行われていない部分(未使用部分)が送出ローラー34にロール状に巻き付けられており、固液分離が行われた部分(使用済部分)が巻取ローラー36にロール状に巻き取られるように構成されている。なお、このフィルター24には、一定の張力がかけられ、シワやたるみの発生が抑制されている。
【0030】
また、本実施形態では、巻取ローラー36によって巻き取られた使用済のフィルター24(固形物が付着したフィルター24)は、例えば非常時対応水洗トイレシステム1の管理者によって、新しいフィルター24に交換可能である。例えば、非常時対応水洗トイレシステム1の管理者は、フィルター24が巻取ローラー36に全て巻き取られた場合、当該フィルター24を含む固液分離ユニット20の一部又は全部をカセットとして回収し(取り外し)、新しいフィルター24を含むカセット(固液分離ユニット20の一部又は全部)を非常時対応水洗トイレシステム1に設置することができる。すなわち、固液分離ユニット20の一部又は全部は、カセットとして着脱自在である。このカセットは、少なくともフィルター24を含む。例えば、カセットは、フィルター24と、格子網26と、第1ガイドローラー28と、第2ガイドローラー30と、を含む。なお、カセットには、送出ローラー34や、巻取ローラー36、モーター38、電源42、送風機44、制御部46の一部又は全部が含まれていてもよい。
【0031】
格子網26は、送出ローラー34から巻取ローラー36までの間において水平方向に広げられたフィルター24を支持する。格子網26は、フィルター24を通過した液体を下方向(重力方向)に通過させる穴が空いている。この格子網26としては、例えば、金属製ネットや、金属製パンチング等が挙げられる。
【0032】
第1ガイドローラー28は、格子網26の送出ローラー34側の端部に設けられており、送出ローラー34から送出されたフィルター24を格子網26の上面に案内する。例えば、第1ガイドローラー28は、2本のローラーから構成されており、フィルター24を当該2本のローラーで挟み込むことで当該案内を行う。
【0033】
第2ガイドローラー30は、格子網26の巻取ローラー36側の端部に設けられており、巻取ローラー36によって巻き取られるフィルター24を案内するとともに、フィルター24に被処理物に含まれる固形物を付着(吸着)させるとともに、固形物に含まれる水分を圧搾する。例えば、第2ガイドローラー30は、2本のローラーから構成されており、フィルター24を当該2本のローラーで挟み込むことで当該案内や固形物の付着及び圧搾を行う。
【0034】
高さセンサー32は、水平方向に広げられたフィルター24に残留している固形物の高さを検知する。この高さセンサー32は、例えば、残留している固形物の高さが所定値(例えば7センチメートル)に到達したことを検知する。
【0035】
送出ローラー34は、固液分離が行われていないフィルター24がロール状に巻き付けられている。この送出ローラー34に巻き付けられたフィルター24は、巻取ローラー36が回転することによって減少する。
【0036】
巻取ローラー36は、フィルター24とともに、当該フィルター24によって分離された固形物をロール状に巻き取る。この巻取ローラー36に巻き取られるフィルター24は、巻取ローラー36が回転することによって増加する。巻取ローラー36は、フィルター24の巻き取りを行うためのモーター38を有しており、このモーター38が回転することにより、固液分離が行われたフィルター24とともに、フィルター24に付着した固形物を巻き取る。
【0037】
第2排水口40は、フィルター24によって分離された液体を洗浄水として再利用可能に排水する排水口である。例えば、第2排水口40は、当該液体を第1タンク50に排水する。
【0038】
電源42は、非常時対応水洗トイレシステム1の全体に電力供給を行う。例えば、電源42は、各種センサーや各種ポンプ、モーター38、送風機44、制御部46等を動作させるための電力供給を行う。この電力は、例えば、蓄電池やソーラーパネル、小型発電機等から供給される。
【0039】
送風機44は、フィルター24と固形物に対して送風を行い、当該フィルター24と固形物を乾燥させる。このフィルター24は、送出ローラー34から巻取ローラー36までの間において水平方向に広げられたフィルター24や、巻取ローラー36によって巻き取られたフィルター24を含む。
【0040】
制御部46は、非常時対応水洗トイレシステム1全体を制御する。例えば、制御部46は、CPUやメモリ、受信手段、操作手段等を備えて構成される。この受信手段としては、例えば、電波を受信するアンテナが挙げられる。また、操作手段としては、例えば、非常時対応水洗トイレシステム1の管理者からの指示操作を受け付ける切替スイッチやボタン等が挙げられる。
【0041】
本実施形態では、制御部46は、電磁弁B1や電磁弁B2、モーター38、送風機44等を制御する。
【0042】
また、本実施形態では、制御部46は、平常時から非常時への切り替え指示があった場合に、電磁弁B1及び電磁弁B2の切り替えを行う。この切り替え指示としては、国や自治体による非常時を通知する信号(例えば電波)の受信や、非常時対応水洗トイレシステム1の管理者による非常時への切り替え操作、電磁弁B2において上水が送水(供給)されていないことの検知等が挙げられる。具体的には、制御部46は、平常時から非常時への切り替え指示があった場合に、電磁弁B1を切り替えて被処理物を固液分離ユニット20に排出するように制御し、電磁弁B2を切り替えて上水の送水が停止するように制御する。
【0043】
また、本実施形態では、制御部46は、非常時から平常時への切り替え指示があった場合に、電磁弁B1及び電磁弁B2の切り替えを行う。この切り替え指示としては、国や自治体による平常時を通知する信号(例えば電波)の受信や、非常時対応水洗トイレシステム1の管理者による平常時への切り替え操作、電磁弁B2において上水が送水(供給)されていることの検知等が挙げられる。具体的には、制御部46は、非常時から平常時への切り替え指示があった場合に、電磁弁B1を切り替えて被処理物を下水に排出するように制御し、電磁弁B2を切り替えて上水が送水(供給)されるように制御する。
【0044】
また、本実施形態では、制御部46は、所定条件が満たされた場合に、モーター38を自動的に動作させる。この所定条件としては、水洗トイレの利用者からの洗浄指示を検知する洗浄センサーによって当該洗浄指示が検知された回数が所定回数(例えば5回)に到達したことや、水平方向に広げられたフィルターに残留している固形物の高さを検知する高さセンサー32によって検知された高さが所定値に到達したこと等が挙げられる。ここで、制御部46は、第1ガイドローラー28から第2ガイドローラー30までの距離(例えば30センチメートル)のフィルター24を巻き取るように、モーター38の回転数を制御する。なお、制御部46は、フィルター24が徐々に巻取ローラー36に巻き取られることによって、巻取ローラー36に巻き取られたフィルター24の径が大きくなることから、モーター38を動作させる毎に、モーター38の回転数を減らすこととしてもよい。具体的には、制御部46は、当初はモーター38の回転数を10回とし、モーター38による巻き取りを所定回数(例えば4回)行う毎に、当該回転数を1回ずつ減少させる。
【0045】
また、本実施形態では、制御部46は、モーター38によって使用済のフィルター24が巻取ローラー36に巻き取られた後、送風機44を所定時間(例えば3分)だけ動作させる。
【0046】
(具体例2)
図6は、本実施形態に係る固液分離ユニットの変形例(具体例2)を示す断面図である。
【0047】
図6に示すように、固液分離ユニット70は、容器72と、フィルター74と、第1排水口76と、第2排水口78と、を備える。
【0048】
容器72は、被処理物及びフィルター74を収容する空間を有する。例えば、容器72は、ポリエチレンを形成材料とすることが好ましい。また、容器72は、取り扱いが容易な略立方体形状であってもよいし、固液分離を効率的に行えるように下部が漏斗状の形状であってもよい。
【0049】
フィルター74は、容器72の内部に設けられ、被処理物の固液分離を行い、第1排水口76から落下した被処理物を固液分離し、固形物をフィルター74の上部に残すとともに、分離された液体を、第2排水口78を介して第1タンク50に排水する。
【0050】
また、フィルター74は、例えば、第1排水口76側が開口し、第2排水口78側が閉口した筒状である。この場合、フィルター74の開口側の端部は、容器72の上面の内壁に固定されている。この他にも、フィルター74は、容器72の内部における下面のみに取り付けられていてもよい。なお、容器72の内壁とフィルター74との間には、スペーサを配置し、容器72とフィルター74との間の空間を確保して、分離された液体を流れやすくしてもよい。このスペーサとしては、例えば、金属性の網や、樹脂性の網等が挙げられる。
【0051】
第1排水口76は、容器72の上部に設けられている。また、第1排水口76は、専用の蓋を有していてもよく、この蓋は、紛失防止のために第1排水口76に紐で接続されていてもよい。
【0052】
第2排水口78は、容器72の下部に設けられている。また、第2排水口78は、専用の蓋を有していてもよく、この蓋は、紛失防止のために第2排水口78に紐で接続されていてもよい。なお、この第2排水口78には、第1タンク50側の端部の外面にフランジを設けてもよい。この場合、第2排水口78は、当該フランジとねじ付きクランプを用いて接続することができる。また、第2排水口78は、開閉可能な弁(例えばボールバルブ)を備えてもよく、固液分離ユニット70を交換する際に中身を漏れにくくして、容易に交換作業を行えるようにしてもよい。
【0053】
<効果>
以上、本実施形態では、水洗トイレ10と、水洗トイレ10から排出された被処理物を、平常時においては下水に排出するように制御し、非常時においては当該被処理物に含まれる固形物と液体を分離する固液分離ユニット20に排出するように制御する制御部46と、固液分離ユニット20により分離された被処理物に含まれる液体を水洗トイレ10の洗浄水として貯留するタンク(50,56)と、を備える。
【0054】
この構成によれば、固液分離ユニット20によって被処理物に含まれる固形物を除去した液体を洗浄水として再利用するため、非常時において水洗トイレ10の衛生環境が悪化することを容易に抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、制御部46は、非常時を通知する信号を受信した場合に、被処理物を固液分離ユニット20に排出するように制御する。
【0056】
この構成によれば、非常時を通知する信号によって、被処理物の排出方法を非常時用に切り替えることができるため、管理者の負担を軽減させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、制御部46は、平常時を通知する信号を受信した場合に、被処理物を下水に排出するように制御し、タンク(50,56)の容量が所定量未満になったことに応じて、当該タンク(50,56)に上水が送水されるように制御する。
【0058】
この構成によれば、平常時を通知する信号によって、被処理物の排出方法を平常時用に切り替えることができるため、管理者の負担を軽減させることができ、タンク(50,56)や水洗トイレ10の衛生環境が悪化することを容易に抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、固液分離ユニット20の一部又は全部は、カセットとして着脱自在であり、カセットは、被処理物に含まれる固形物と液体を分離するフィルター24を少なくとも含む。
【0060】
この構成によれば、使用済みのフィルター24を含む固液分離ユニット20の一部又は全部をカセットとして容易に交換することができるため、非常時対応水洗トイレシステム1の管理者によるメンテナンスの手間を軽減することができる。
【0061】
<変形例>
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0062】
上記実施形態では、巻取ローラー36は、モーター38が回転することによってフィルター24を巻き取る場合を説明したが、利用者や管理者による手動(手動巻き部)によってフィルター24を巻き取ることとしてもよい。また、第1ポンプ52や第2ポンプ60は、電力によって作動してもよいし、利用者や管理者等の手動によって作動してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、管理者は、固液分離ユニット20の一部又は全部をカセットとして着脱自在とする場合を説明したが、フィルター24が巻取ローラー36に全て巻き取られた場合に、固形物が付着した当該フィルター24が自動的に回収箱へ回収される回収手段を設けてもよい。この回収手段は、例えば、使用済のフィルター24が落下するように、巻取ローラー36を傾けたり、巻取ローラー36とモーター38を切り離したりする落下手段等を有する。これにより、管理者は、使用済のフィルター24を回収する手間(回数)が軽減する。
【0064】
また、上記実施形態では、制御部46は、平常時を通知する信号を受信した場合等に、電磁弁B1や電磁弁B2を切り替える場合を説明したが、電磁弁B1を切り替えて被処理物を下水に排出するように制御した後、第2タンク56の容量が所定量(例えば3リットル)未満になったことに応じて、電磁弁B2を切り替えて上水が送水されるように制御してもよい。これにより、第2タンク56に収容される液体を徐々に清潔な水(上水)に戻すことができ、水洗トイレ10や非常時対応水洗トイレシステム1を清潔にすることができる。
【0065】
また、上記実施形態では、固液分離ユニット20は、第1排水口22や電源42、制御部46の構成を備える場合を説明したが、これらの構成は、非常時対応水洗トイレシステム1が備えていればよく、例えば水洗トイレ10が備えていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、非常時対応水洗トイレシステム1は、第1タンク50と第2タンク56を備える場合を説明したが、これらのタンクは、1つのタンクであってもよい。
【0067】
<付記>
[付記項1]
フィルターを送り出す送出ローラーと、
前記フィルターを巻き取る巻取ローラーと、
前記送出ローラーから前記巻取ローラーまでの間において水平方向に広げられ、水洗トイレから排出された被処理物に含まれる固形物と液体を分離するフィルターと、
前記分離された液体を洗浄水として再利用可能に排水する排水口と、
を備え、
前記巻取ローラーは、前記フィルターとともに、前記分離された固形物を巻き取る、
固液分離ユニット。
[付記項2]
前記巻取ローラーによって巻き取られる前記フィルターを案内するとともに、当該フィルターに前記固形物を圧搾するガイドローラーと、
を備える、
付記項1に記載の固液分離ユニット。
[付記項3]
前記フィルターと前記固形物に対して送風を行う送風機と、
を備える、
付記項1又は2に記載の固液分離ユニット。
[付記項4]
前記巻取ローラーは、前記フィルターの巻き取りを行うためのモーターを有し、
前記モーターは、所定条件が満たされた場合に、自動的に動作する、
付記項1乃至3の何れか1項に記載の固液分離ユニット。
[付記項5]
前記水洗トイレの利用者からの洗浄指示を検知する洗浄センサーと、
を備え、
前記所定条件は、前記検知された回数が所定回数に到達したことである、
付記項4に記載の固液分離ユニット。
[付記項6]
前記水平方向に広げられたフィルターに残留している固形物の高さを検知するセンサーと、
を備え、
前記所定条件は、前記検知された高さが所定値に到達したことである、
付記項4に記載の固液分離ユニット。
[付記項7]
前記巻取ローラーによって巻き取られたフィルターは、新しいフィルターに交換可能である、
付記項1乃至6の何れか1項に記載の固液分離ユニット。
[付記項8]
付記項1乃至7の何れか1項に記載の固液分離ユニットと、
前記水洗トイレと、
前記水洗トイレから排出された被処理物を、平常時においては下水に排出するように制御し、非常時においては前記固液分離ユニットに排出するように制御する制御部と、
前記固液分離ユニットにより分離された前記被処理物に含まれる液体を前記水洗トイレの洗浄水として貯留するタンクと、
を備える、
非常時対応水洗トイレシステム。
[付記項9]
前記排水口から排出された液体を消臭殺菌するためのオゾン発生装置と、
を備える、
付記項8に記載の非常時対応水洗トイレシステム。
【符号の説明】
【0068】
1…非常時対応水洗トイレシステム、10…水洗トイレ、20,70…固液分離ユニット、46…制御部、50…第一タンク、56…第二タンク

図1
図2
図3
図4
図5
図6