(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172035
(43)【公開日】2022-11-14
(54)【発明の名称】織物デザインプログラムおよび製織方法
(51)【国際特許分類】
D03C 19/00 20060101AFI20221107BHJP
D03D 23/00 20060101ALI20221107BHJP
D03C 17/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
D03C19/00 B
D03D23/00
D03C17/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021099755
(22)【出願日】2021-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】592029359
【氏名又は名称】山岡 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊秀
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048BA01
4L048EA00
(57)【要約】
【課題】 家庭用パソコン等の一般的コンピュータを利用して、織物組織図から綜絖通し図、踏木順図、タイアップ図の算出および織上がりの織柄の予測画像を提示する織物デザインプログラムを提供する。
【解決手段】 織物組織図から経糸の上下を示す2値データの組織図配列を設定し、コンピュータプログラムにより綜絖通し図、踏木順図、タイアップ図を算出して四角文字で表示する。また、組織図を指定した配色による線分で表示し、織上がりの予測画像を表示する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸TN本、緯糸YN本からなる組織図に基づいて織物をデザインするコンピュータ織物デザインプログラムにおいて、インデックスがTNの列とYNの行からなる2次元の組織図配列を設定し、前記組織図に従って、経糸の上げ下げを2値の値として組織図配列の各要素に入力し、前記組織図配列の2つの経糸列を順次互いに比較演算して各経糸列に綜絖番号付けを行って必要な綜絖枚数Pを算出し、インデックスがTNの列とPの行からなる各綜絖に通すべき経糸の位置を表示する2次元の綜絖通し配列を作成し、次いで前記綜絖通し配列の各要素に経糸を通すか通さないかを2値の値として代入することを特徴とする、織物デザインプログラムおよび製織方法
【請求項2】
請求項1における組織図配列の2つの緯糸行を順次互いに比較演算して必要な踏木本数Qを算出し、インデックスがQの列とYNの行からなる、各緯糸行で踏むべき踏木を表示する2次元の踏木順配列を作成して、前記踏木配列の各要素に踏木踏むか踏まないかを2値の値として代入することを特徴とする、請求項1記載の織物デザインプログラムおよび製織方法
【請求項3】
請求項1における綜絖通し配列と請求項2における踏木順配列を比較演算してインデックスがQの列とPの行からなる各踏木に接続すべき綜絖を表示した2次元のタイアップ配列を作成し、各要素に踏木と綜絖を結びつけるか否かを2値の値として代入することを特徴とする、請求項1記載の織物デザインプログラムおよび製織方法
【請求項4】
前記した組織図配列、綜絖通し配列、踏木順配列、タイアップ配列の少なくとも1つの配列を、黒四角および白四角の文字で表示することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の織物デザインプログラムおよび製織方法
【請求項5】
前記した織物デザインプログラムに基づいて織り上げる織物の予測画像を表示画面に表示するにあたり、各経糸毎および各緯糸毎に色を指定して入力し、経糸が上がる要素部分では垂直の経糸色の線分を表示し、緯糸が上がる要素部分では水平の緯糸色の線分を表示することを特徴とする請求項1の織物デザインプログラムおよび製織方法
【請求項6】
前記した予測画像を表示するにあたり、組織図配列の予測画像を1回または多数回の連結画像かを指定入力して表示することを特徴とする請求項5の織物デザインプログラムおよび製織方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織図に基づいて複数の綜絖を選択上下して、形成された経糸の開口に緯糸を通して製作する織物の文様をデザインするコンピュータプログラムおよびそのプログラムによるデザインに基づいて織物を製作する製織方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、織物デザインに従って織物を製作するために織物組織図が使用されてきた。例えば、特許文献1では織物デザイン画から織物組織図を作成する方法が提案されている。
【0003】
また、組織図を従って織機に織糸を掛けるためには、綜絖通し、踏木順、タイアップを求めることが必要であり、例えば、非特許文献1には、その読解手順および製織への活用方法が記載してある。
また非特許文献2においては、マイクロソフト社の表計算ソフト「エクセル」のマクロ機能を利用して、既知の綜絖通し、踏木順、タイアップから組織図を求め、その経糸と緯糸の色を指定して組織図の方眼をカラー表示することにより、どのような織柄になるかを予測する方法が提案されている。
【0004】
従って、組織図およびコンピュータを活用して、織物をデザインし織物を製作することは一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】彦根愛、「手織りの組織図事典」、株式会社グラフィック社、2020年4月25日
【非特許文献2】Riko、riko122/WeavingMacro、[online]、2021年1月18日、[令和3年1月18日検索]、インターネット<URL:https://github.com/riko122/WeavingMacro>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように組織図を目視で読解して織物を製作する場合、長時間を要してしまう、あるいは読み取り違いを生じ易いという問題があった。このため、綜絖通しや、綜絖と踏木をセッティングするタイアップを求めるまでに多大な手間および経験が必要であった。また、組織図に基づいてどのような経糸と緯糸の配色および配置を選択すればどのような織柄となるかは、実際に織機に糸を掛けて試し織りをして確認する必要があった。
【0008】
一方、近年織物にコンピュータが利用されるようになり、専門の高度な織物システムでは組織図に基づく織上がりをシミュレーションして実際に近い織物画像を表示できるようになったが、一般の家庭用のパソコンで利用される織物システムにおいてはエクセル等の表計算ソフトを利用した織物プログラムが提供されている。このようなソフトでは組織図をモニター上に方眼画像として表示し、着色した方眼画像から事前に織柄をある程度予想できるようになった。しかしながら、方眼を手作業で塗りつぶすのは手間がかかり、また組織図の着色された方眼画像では、実際の色糸での織上がりの模様を予測するのは困難であった。
【0009】
上記したように、従来の手法では専門の織物システムでない一般のパソコンでは組織図を活用して織物をデザインし製織することは簡単ではなく、特に商業的専門家でない手織り愛好家等における組織図利用の障害となっていた。
本発明は、以上のような従来技術における問題を鑑みてなされたもので、家庭用パソコン等の一般的コンピュータを利用して、組織図から織機への織糸のセッティングや織上がりの織柄の予測が可能で、織物製作について熟知した経験を有していない手織り愛好家等でも組織図を利用した織物デザインが容易なプログラムと、それを利用した製織方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達するためになされた本発明の第1の態様は、経糸TN本、緯糸YN本からなる組織図に基づいてデザインするコンピュータ織物デザインプログラムにおいて、インデックスがTNの列とYNの行からなる2次元の組織図配列を設定し、前記組織図に従って、経糸の上げ下げを2値の値として組織図配列の各要素に入力し、前記組織図配列の2つの経糸列を順次互いに比較演算して各経糸列に綜絖番号付けを行って必要な綜絖枚数Pを算出し、インデックスがTNの列とPの行からなる各綜絖に通すべき経糸の位置を表示する2次元の綜絖通し配列を作成し、次いで前記綜絖通し配列の各要素に経糸を通すか通さないかを2値の値として代入することを特徴とする、織物デザインプログラムおよび製織方法である。
【0011】
また、本発明における第2の態様は、第1の態様における組織図配列の2つの緯糸行を順次互いに比較演算して必要な踏木本数Qを算出し、インデックスがQの列とYNの行からなる各緯糸行で踏むべき踏木を表示する2次元の踏木順配列を作成して、前記踏木配列の各要素に踏木踏むか踏まないかを2値の値として代入することを特徴とする織物デザインプログラムおよび製織方法である。
【0012】
さらに、本発明における第3の態様は、第2の態様における綜絖通し配列と第3の態様における踏木順配列を比較演算してインデックスがQの列とPの行からなる各踏木に接続すべき綜絖を表示した2次元のタイアップ配列を算出し、各要素に踏木と綜絖を結びつけるか否かを2値の値として代入することを特徴とする、織物デザインプログラムおよび製織方法である。
【0013】
本発明における第4の態様は、第1の態様における組織図配列、綜絖通し配列、第2の態様における踏木順配列、または第3の態様におけるタイアップ配列の少なくとも1つの配列を黒四角および白四角の文字で表示するものである。
従来は前記の組織図、綜絖通し図、踏木順図、タイアップ図の表示には画像ソフト等で白黒のビットマップ画像として作成していた。このためプログラムが複雑となり、また表示に時間を要するという問題があった。一方、本発明のように組織図を文字として表示することによりプログラムが単純化できプログラム容量を低減することができる。また図に関する説明や利用方法等のコメントの文も組織図表示と混在して表示できるため、十分な経験がない手織り愛好家にも組織図を容易に理解することができる。
【0014】
本発明に於ける第5の態様は、第1の態様における組織図配列に基づいて織り上げる織物の予測画像を表示画面に表示するにあたり、各経糸毎および各緯糸毎に色を指定して入力し、経糸が上がる要素部分では垂直の経糸色の線分を表示し、緯糸が上がる要素部分では水平の緯糸色の線分を表示することを特徴とする織物デザインプログラムおよび製織方法である。
【0015】
前記したようにエクセル等のソフトで組織図を方眼状に形成し、組織図の各方眼毎に着色して表示方法が提案されているが、各方眼毎に手作業で色を指定することは手間がかかりまた間違いが生じやすい。また方眼の塗りつぶしたカラー画像では、実際の織物を連想することは困難であった。そこで、本発明では各要素を垂直、水平の線分で表示することで、実際の織糸での織り上がりと類似した画像をグラフィック表示することで、手織りの経験が十分でない手織り愛好家でも容易に実際の織柄を予想することが可能であり、これを参考にデザインして織物を製作することができる。
【0016】
本発明に於ける第6の態様は、第5の態様における予測画像を表示するにあたり組織図配列に基づく予測画像を1回または多数回の連結画像かを指定入力して表示することを特徴とする請求項5の織物デザインプログラムおよび製織方法である。
【0017】
織物は組織図の基本的なパターンを繰返し連結して製作するものである。このため、基本的な組織図パターンを多数連結した予測画像を提示することが織物デザインには有効である。また、同一の組織図を用いても経糸と緯糸の配色と配置の組合せを変えることで織上がるデザインが大きく変わる。そこで、まず1個の組織図で織糸の基本的な配色配置を設定し、次いで組織図画像を多数回連結して表示することで、実際の織上がりを予測することができる。
【0018】
この場合、連結回数に対応して、織糸の太さや打ち込みのピッチ等を補正して実際の織上がりに近い予測画像を提示することが重要である。当初に設定した配色での予測画像がデザイン的に満足できなければ、再度配色を変更して改めて多数回連結画像を作成し予測画像を見て確認する、という工程を繰り返して行うことによりデザインの品質を向上させていくことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パソコン等を利用して組織図から綜絖通し図、踏木順図、タイアップ図を簡単に得ることができ、織機への織糸のセッティングが容易になる。また、実物と近い織上がりの織柄の予測画像が容易に得られるので、織物製作について十分な経験を有していない手織り愛好家でも容易に組織図を利用して織物を製作することができるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】綜絖通し配列を算出するフローチャートである。
【
図4】踏木順配列を算出するフローチャートである。
【
図5】踏木経糸配列を算出する手順を示すフローチャートである。
【
図6】タイアップ配列を算出する手順を示すフローチャートである。
【
図8】予測画像を作成する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願のプログラムを作成するソフトとしては、配列を含む数値計算やグラフィック機能を有するものであればどのようなものでも使用可能であるが、一般の手織り愛好家等での利用を考慮すると低額または無償のソフトを利用することが望ましい。初心者向けのプログラミング言語BASICは、学校教育用に利用されており無償で提供もされている。そこで本出願では、下記のURLからインターネット上で無償で提供されている十進BASICにより本発明を実施し、その結果を元に説明する。
(https://hp.vector.co.jp/authors/VA008683/)
なお、十進BASICにおいては、配列A(X、Y)を宣言するとインデックスが0~XのX+1本の列とインデックスが0~YのY+1本の行からなる配列が設定される。
【0022】
第1の発明において、経糸TN本、緯糸YN本のマトリクスの組織図を2次元のインデックスがTNとYNの大きさの組織図配列A(TN,YN)に2値データとして代入する。本出願では、組織図で黒色で書かれる経糸を上げる要素には1を白色で書かれる経糸を下げる要素には0を代入する。このようにして2値を代入した組織図配列において、TN本の経糸列を互いに比較して必要な綜絖枚数を算出する。
【0023】
なお、組織図、踏木順、タイアップの図を1枚にまとめた完全意匠図は、本質的には同様であっても、各織物製作者の流儀により、各図の配置や列行の番号付けの方法が異なる。また、踏木を踏んだ時に綜絖が上がるか又は下がるかは織機の構造によって異なる。本出願では、非特許文献1に準拠し、踏木をむと綜が上がるジャッキ式の織機として説明する。
【0024】
図1が、第1の発明の織物デザインプログラムにおける、組織図配列から綜絖番号を算出する手順を示すフローチャートである。
組織図配列A(TN,YN)を宣言して、TN×YNの要素に組織図のデータを入力する。A(1,0)~A(TN,0)は綜絖番号行であり、計算により得られた綜絖番号の格納に使用する。
【0025】
図1において、組織図配列A(TN,YN)の各要素にキーボードからの手入力あるいはハードディスク、USB等の外部メモリーからデータが読み込まれて、0または1の数値が代入される。次いで綜絖番号Pを求めるが、まず綜絖枚数の変数Pを1とし、第1列の経糸列を綜絖番号を1と定めA(1,0)に1を代入する。
【0026】
次いで
図1のフローチャートのa、b、cの三重の繰り返しループで綜絖枚数と綜絖番号を求める。aの繰り返しループで対象とする経糸列を選択し、bの繰り返しループで比較する経糸列を選択し、cの繰り返しループで選択された2つの経糸列の同一行の要素を比較する。つまり、経糸列・列Iについては、経糸列の列1から列(I-1)まで順に、同一であるかを比較する。
【0027】
例えば列Iと列Jのすべての要素が同じであったら、列Iの経糸は列Jの綜絖と同じ綜絖に通され、A(I,0)には同じ綜絖番号としてA(J,0)の値が代入され、このため綜絖枚数Pに変わりはない。一方、cの繰り返しループで要素が異なった値が見出されたら、列Iは新しい綜絖であるのでcの繰り返しループから抜けて、綜絖枚数はこれまでの枚数から1加えた値を新たにPとし、A(I,0)=Pと代入される。a,b,cの繰り返しループで全て経糸列の比較検討を終了すれば、最終的なPの値が総綜絖枚数であり、A(1,0)~A(TN,0)の行には各経糸列の綜絖番号が格納される。
【0028】
図2が第1の発明の織物デザインプログラムにおける、綜絖通し配列を算出する手順を示すフローチャートである。
図2において、
図1のフローチャートにより算出された綜絖番号がすでにA(1,0)からA(TN,0)の行に格納されている。
【0029】
綜絖通し配列をインデックスがTNの列とPの行からなる2次元の配列のB(TN,P)として宣言する。
図2のフローチャートのd,eの2重の繰り返しループで1枚目からP枚目の各綜絖に通す経糸が算出される。
I枚目の綜絖においては、I行目にB(1,I)~B(TN,I)のTN個の要素があり、本願では綜絖が上がったときに経糸を通す状態を1とし、通さない状態を0として各要素に代入する。
【0030】
図1の組織図配列の0行にはA(1,0)~A(TN,0)の各列の要素に綜絖番号が格納されているので、J列目の要素A(J,0)の値がIであれば、J列目の経糸はI枚目の綜絖に通すことなるのでB(J,I)には1が代入され、J列目の要素A(J,0)の値がIでなければB(J,I)には0が代入される。このようにして、綜絖通し配列のI行のB(1,I)~B(TN,I)には、経糸が通される要素には1が通されない経糸には0が代入される。
【0031】
図3が、第1の発明の織物デザインプログラムにおける、組織図配列から踏木番号を算出する手順を示すフローチャートである。
図3のフローチャートのf、g、hの三重の繰り返しループで踏木本数と踏木番号を求める。fの繰り返しループで対象とする緯糸行を選択し、gの繰り返しループで比較する緯糸行を選択し、hの繰り返しループで選択された2つの緯糸行の同一列の要素を比較する。つまり、
図1で組織図配列の経糸列比較して綜絖番号を求めて綜絖番号を算出したのと同様に、緯糸行を比較して踏木番号を算出し、また、必要な踏木本数Qが算出される。組織図配列のA(0,1)~A(0、YN)が踏木番号列であり、各緯糸行に対応して算出された踏木番号が格納される。
【0032】
図4が第2の発明の織物デザインプログラムにおける、踏木順配列を算出する手順を示すフローチャートである。
図4において、
図1のフローチャートの値を継承している。踏木順配列はインデックスがQの列とYNの行からなる2次元の配列のC(Q,YN)として宣言する。
【0033】
図4のフローチャートのi、jの2重の繰り返しループで組織図の1段目からYN段目の各段で踏むべき踏木番号が算出される。
J段目においては、配列のJ行目にC(1,J)~C(TN,J)のYN個の要素があり、本願では綜絖が上がったときに踏木を踏む状態を1とし、踏まない状態を0として各要素に代入する。
【0034】
図5が第3の発明の織物デザインプログラムにおける、踏木経糸配列を算出する手順を示すフローチャートである。踏木経糸配列とは踏木を踏んだ時に上がる経糸を表わすものである。図中のフローチャートのk、l、mの三重の繰り返しループで踏木本数と踏木番号を求める。踏木経糸配列はインデックスがQの列とTNの列からなる2次元の配列D(Q,TN)として宣言する。踏木経糸配列には、踏木を踏むとどの経糸が上がるかを表す2値の値として代入される。踏木を踏むと経糸が上がるか下がるかは織機の種類によって異なるが、本願では踏木を踏むと経糸が上がる織機の場合を対象としている。踏木経糸配列は通常の組織図利用は使用されないが、タイアップを求めるために作成し算出している。踏木を踏んだ時にどの経糸が上がるかが分かるため、織機に掛けた経糸をチェックする際に有効である。
【0035】
図6が第3の発明の織物デザインプログラムにおける、タイアップ配列を算出する手順を示すフローチャートである。図中のフローチャートのo、p、qの三重の繰り返しループで、どの番号の踏木を踏んだ時にどの番号の綜絖を上がるかを表示するタイアップ配列が求められる。踏木本数がQで綜絖枚数がPであるタイアップ配列は、インデックスがQの列とPの行からなる2次元の配列E(Q,P)として宣言される。タイアップ配列には、踏木を踏むとどの綜絖が上がるかを表す2値の値として代入される。踏木を踏む時どの経糸を上げるかは前記踏木経糸配列で分かり、上げるべき経糸が通されている綜絖は綜絖通し配列で分かるので、この2つの配列からタイアップ配列が算出される。即ち、タイアップ配列の各踏木の列で連結すべき番号の綜絖の行の要素には1が入力される。
【0036】
図7は、織物の完全意匠図である。
図7Aは非特許文献1p.9に記載の従来の表示形式の完全意匠図である。1が組織図でその上部に2の綜絖通し図、その右側に3の踏木順図、さらに2の綜絖通し図と3の踏木順図の延長上に4のタイアップ図が配置されている。従来の完全意匠図は、手書きにより方眼紙のマス目を塗りつぶして表示する、あるいは画像ソフトで完全意匠図の画像データを作成し紙またはパソコンモニター等に表示されていた。
【0037】
一方、
図7Bが、第4の発明における、組織図配列、綜絖通し配列、踏木順配列、タイアップ配列を黒四角および白四角の文字で表示したテキスト表示による完全意匠図である。黒四角および白四角の文字は、ワープロの「しかく」の漢字変換やBLACK SQUARE(Unicode 25A0)、WHITE SQUARE(Unicode 25A1)の文字コード変換で種々のソフトで、■と□の文字として表示することができる。これらを行内表示と行間表示を適切に組合わせて連結すれば方眼状に表示できる。図中、5が組織図、6が綜絖通し図、6が踏木順図、7がタイアップ図を四角文字で表示したものである。文字であるので、図のように行間、文字間を適切に設定することで、
図7Aの画像表示と同様な完全意匠図として提示することができる。
【0038】
図7Bは、従来と同様に5の四角文字の組織図の周囲に6~8の各図を配置したが、一般のパソコンモニターでは完全意匠図全体を表示して容易に一覧することができる。一方、スマートホン等の画面の小さいIT機器では、通常は画面を上下にスクロールして使用する。この場合、前記の各図を上下に並べて配置してスクロールして利用することが想定される。この場合、表示中の図がいずれの図か明示するテキスト文を付加することが望ましい。さらにコメントの文を付加し、織機への織糸のセッティング方法等各図へ情報を提示することによりを組織図を有効に利用することができる。
【0039】
上記したような画像データとテキストデータという異なる表示形態を混在させることは組織図の活用に有効であるが、画像をビットマップデータで表示すると、プログラムの複雑化、ソフト容量の増大、表示レスポンスが遅くなるといった問題が生じる。しかし、配列の各図を四角文字で作成すれば、各図とコメントの文が同一のテキストデータとして、プログラムできるため、前記のような問題を低減することができる。
【0040】
図8が第5および第6の発明における、組織図配列A(TN,YN)から織物の予測画像を作成、表示する手順を示すフローチャートである。組織図の経糸毎に色を指定するためにインデックスがTNの経糸色配列CT(TN)と、緯糸毎に色を指定するためにインデックスがYNの緯糸色配列CY(YN)を宣言し、各要素に織糸の配色データを入力する。
【0041】
次いで、表示画面内に組織図を表示する繰返し回数を入力する。表示画面の画素数が一定の場合、繰返し回数が小さい場合は粗い織物の繰返し回数が大きければ織上がりが密な織物の予測画像となる。また、繰返し回数に対応して繰返し回数が小さい場合は糸の太さを太く、繰返し回数が大きければ糸の太さを細くして、実際の織上がりに近く表示されるように、表示条件補正計算ステップで計算する。
【0042】
図8において、フローチャートのs、tの繰返しループで、組織図配列のデータが1即ち経糸を上にする要素では経糸の色で垂直線分を描画し、配列データが1でなければ緯糸の色で水平線分を描画して、組織
図1個分の画像を作成する。次いで、次の組織図画像と連結するように、図示しないプログラム内の演算で描画開始位置に座標を移動して、次の組織図の画像を作成する。rの繰返しループで、繰返し回数まで組織図画像を描画して連結すれば、予測画像が表示画面に形成される。
【0043】
このようにして作成された予測画像を見れば、出来上がりの織物デザインが容易に予想できる。これに満足しなければ、配色修正や繰返し回数修正のステップに行き、配色や配置を変更し、改めて予測画像を表示画面に表示する。このようにして、配色や配置の変更を繰り返して予測画像で織上がる織物を予測て、自分の期待する織物デザインに近い条件を求めることができる。
【実施例0044】
以下の実施例では非特許文献1p.8-9に掲載の組織図のデータを参考に、十進BASICを使用して、本発明を実施した結果について説明する。
十進BASICではテキスト表示ウィンドウと画像表示ウインドウを有している。テキスト表示ウィンドウで組織図データ等の入力とテキストによる出力表示を行い、画像表示ウィンドウで織り上がりの予測画像を表示した。
【0045】
図9がプログラム内での組織図配列における、入力した組織図の2値のデータおよび算出した綜絖番号のデータ、踏木番号のデータの構成の概念図である。1~6列×1~8行の各要素は、経糸を上げる組織図の黒色方眼部分が1、緯糸を上げる白色方眼が0とする2値の組織図データである。そして、
図1の綜絖番号フローチャートに従って組織図配列のデータより算出された綜絖番号が0行に格納されている。さらに、
図3の踏木番号フローチャートに従って算出された踏木番号が0列に格納されている。