IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国土防災技術株式会社の特許一覧

特開2022-172037集排水施設における集排水管閉塞防止工法
<>
  • 特開-集排水施設における集排水管閉塞防止工法 図1
  • 特開-集排水施設における集排水管閉塞防止工法 図2
  • 特開-集排水施設における集排水管閉塞防止工法 図3
  • 特開-集排水施設における集排水管閉塞防止工法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172037
(43)【公開日】2022-11-14
(54)【発明の名称】集排水施設における集排水管閉塞防止工法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/10 20060101AFI20221107BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C02F5/10 630
C02F5/00 620B
C02F5/00 620Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2021161157
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000170646
【氏名又は名称】国土防災技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 菜々子
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰弘
(57)【要約】
【目的】
本発明は,集排水施設における集排水管閉塞防止工法に関するもので,鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能とした。
【解決手段】
集排水施設における集排水管閉塞防止工法において,鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで閉塞物に付着することを特徴とする塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたことを特徴とする集排水施設における集排水管閉塞防止工法。
【請求項2】
木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化することで長期間フルボ酸およびフミン酸を溶出させることが可能となることを特徴とする集排水施設における集排水管閉塞防止工法。
【請求項3】
木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化する方法としては,石膏(CaSO4・2H2O),再生石膏に含侵させて固形物を製造することを可とし,閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたことを特徴とする集排水施設における集排水管閉塞防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,集排水施設における集排水管閉塞防止工法に関するもので,集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって,塩類を主体とした目詰まり物質が付着して排水管が閉塞することが問題となっている。
【0002】
このような問題に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を利用することで閉塞物のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたものである。
【背景技術】
【0003】
通常行われている集排水施設における塩類を主体とした目詰まり物質である炭酸カルシウム(CaCO3)を抑制する方法としては,(1)全炭酸濃度に占める炭酸イオン濃度の割合を小さくする方法,(2)カルシウムの微小粒子の粒径を揃えて特定の結晶が肥大化するのを防止する方法,(3)析出した炭酸カルシウムの結晶粒子を分散させ,凝集するのを防止する方法,(4)粗大化し易い結晶核の結晶成長面にひずみを与えて正常な結晶の成長を防止する方法がある。
【0004】
この手法のうちで,(1)については集排水施設に流入する集排水に酸を添加してpHを6.5~7.0に保つ方法で,従来から広く一般的に採用されていた。しかし,このような方法では,炭酸カルシウムの析出を防ぐことはできるが,腐食を同時に抑制することが困難であることから,今日ではあまり利用されなくなってきている。
【0005】
(2)については,炭酸カルシウムスケールの生成防止作用をもった薬品としてポリリン酸塩,ホスホン酸類,高分子電解質類などが知られている。ポリリン酸塩は,滞留時間の長い高濃縮系ではオリトリン酸への加水分解率が高くなるので利用することができないなどの問題がある。
【0006】
(3)と(4)については,スケール除去剤やスケール抑制剤の定期的,常時の投入が必要となり,アルカリ剤による中和処理が必須で,廃棄された酸や中和処理による塩を産業廃棄物として処理する必要がある。また,スケール抑制剤は,結晶の凝集や結晶の粗大化を抑制するもので,効果を得るためには薬剤を常時添加するシステムが必要であり,継続的に効果を出すには多大な費用がかかる。一般的には,スケール抑制剤としてポリリン酸塩やホスホン酸を主体とするものが用いられるが,これらは植物の肥料となるリン酸塩の一種であることから,下流河川において藻類が異常に発生するなどの環境悪化が危惧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008- 10016号公報
【特許文献2】特開2016-180274号公報
【特許文献3】特開2012-172384号公報
【0008】
上記特許文献1の発明の構成は,廃棄物最終処分場に埋め立てられた廃棄物から浸出水を場外に排出する為の集排水管において,集排水管内に堆積したカルシウムスケールを定期的に除去するための方法であって,集排水管内の上部位置に,集排水管に沿って,カルシウムスケールを分解可能な液性の分解除去剤が供給されるとともに,多数の通孔を通して集排水管内に分解除去剤を分布する為の分解除去剤用流路が形成され,かつ分解除去剤用流路に分解除去剤を供給する為に注入管が接続され,注入管より分解除去剤を定期的に供給することによって,集排水管内に付着したカルシウムスケールを除去することを特徴とするカルシウムスケール除去方法である。
【0009】
これに対し,本発明においては集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって,塩類を主体とした目詰まり物質が付着して集排水管が閉塞する問題に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで長期間地下水に含有する閉塞物のイオン化(ここでのイオンは陽イオン,陰イオンといった原子団そのものを指し,電子を失ったり得たりする,変化や動きのことを指す)を維持することが可能となり,集排水管への付着を緩和することができるようにした手法であることから特許文献1とは異なっている。
【0010】
上記特許文献2の発明の構成は,地山の斜面に傾斜して埋設される地下水排除施設要の集水管であって,地山の地下水を集水するストレーナーが外周壁に穿設され,当該ストレーナーを介して集水した地下水を排出する排出口が下流側の端部に設けられた管本体を有し,この管本体の内部に,ストレーナーを介して集水した地下水と接触して溶解し,地下水に含まれる鉄イオンの酸化を抑制する電子を発生させる,マグネシウムを主成分とする金属部材が,地下水の流路を確保して配設されることを特徴とした地下水排除施設用集水管におけるスライム付着防止方法である。
【0011】
これに対し,本発明においては集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって,塩類を主体とした目詰まり物質が付着して集排水管が閉塞する問題に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで長期間地下水に含有する閉塞物のイオン化を維持することが可能となり,集排水管への付着を緩和することができるようにした手法であることから特許文献2とは異なっている。
【0012】
上記特許文献3の発明の構成は,地すべりなどで対策工として利用する地下水排除工法である集水井で地下水を集水する集水ボーリングにおいて,集水管内全体を地下水で常に満たしていくことにより,集水管内と地下水が貯留している飽和地下水帯を地下水の飽和状態にし,飽和地下水帯の透水性を低下させることなく集水できるように構成したことを特徴とする地下水排除工の集水機能の長期安定化工法である。また,それに付随し集水管内全体を地下水で飽和させるため,地下水と大気が接触することがなくなり,赤錆等の発生が防止できる。
【0013】
これに対し,本発明においては集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって,塩類を主体とした目詰まり物質が付着して集排水管が閉塞する問題に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化して利用することで長期間地下水に含有する閉塞物のイオン化を維持することが可能となり,集排水管への付着を緩和することができるようにした手法であることから特許文献3とは異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで,本発明では鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化し,目詰まり物質のイオン化を維持することを可能とした工法である。
【0015】
本発明の第1は,集排水施設における集排水管閉塞防止工法において,鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を希釈した溶液を固形化し,固形化したフルボ酸およびフミン酸から長期にわたってフルボ酸およびフミン酸が溶け出すことで,集水井,集排水管の腐食の進行を抑制し,塩類を主体として閉塞物(集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって発生する,塩類を中心とした目詰まり物質)に付着する目詰まり物質のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたものである。
【0016】
本発明の第2は,第1の発明に係る集排水施設における集排水管閉塞防止工法において,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化することで長期間フルボ酸およびフミン酸を溶出させることが可能となるものである。
【0017】
本発明の第3は,第1の発明に係る集排水施設における集排水管閉塞防止工法において,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化する方法としては,石膏(CaSO4・2H2O),再生石膏に含侵させて固形物を製造することを可とし,閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記の構成であるから,次の効果がある。
請求項1において,対象となる集排水施設に木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化した資材を集排水施設に設置することによって,長期間フルボ酸およびフミン酸を溶出させることが可能となり,閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することが可能である。
請求項2において,対象となる集排水施設に木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化することで長期間フルボ酸およびフミン酸を溶出させることが可能である。
請求項3において,対象となる集排水施設に木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化する方法としては,石膏(CaSO4・2H2O),再生石膏に含侵させて固形物を製造することを可とし,閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のネットと固形化したフルボ酸およびフミン酸の閉塞防止資材の温泉地等の集水箇所での配置図である。
図2】本発明のネットと固形化したフルボ酸およびフミン酸の閉塞防止資材の集水井への配置図である。
図3】集水管の先端部にネットと固形化したフルボ酸およびフミン酸の閉塞防止資材を装着した状態の斜視図である。
図4】排水管の基端部にネットと固形化したフルボ酸およびフミン酸の閉塞防止資材を装着した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に関わる塩類のイオン化を促進する資材は,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化する方法としては,石膏(CaSO4・2H2O),再生石膏に含侵させて固形物を製造したものを標準とする。
【実施例0021】
次に,本発明の実施例を説明する。図において,1は固形化したフルボ酸およびフミン酸であり,これを固形化するために石膏や再生石膏にフルボ酸およびフミン酸を含侵させて製造する。2は固形化したフルボ酸およびフミン酸を収容するネットであり,ポリエチレンの袋状を可とするネットを使用して,集水管の先端部や排水管の基端部を覆える程度の量にしてある。3はネット2と固形化したフルボ酸およびフミン酸1の閉塞防止資材であり,固形化したフルボ酸およびフミン酸1の閉塞防止材3はポリエチレンのネットに石膏や再生石膏で固形化したフルボ酸およびフミン酸を複数投入したものを示す。なお、当該閉塞防止材3の外形は、箱型または筒形等条件に応じて対応できる形状とする。
【0022】
4は集水管であり,その材質は,塩ビパイプVP-40のポリエチレン,機能はタンク周辺から集水した水分を貯水タンク6に流入して貯水する役割を果たしている。5は排水管であり,当該排水管5の材質や機能(役割)は配管パイプSGP90-A,鋼材又はポリエチレンであり,貯水タンク6内に溜まった地下水7をタンク外に排出する役割を成している。当該排水管5の基端部には固形化したフミン酸1が閉塞防止材3から排水管5を通じて流出しないように流出防止ネット3を設けてある。6は貯水タンクであり,その材質は鋼材かポリエチレンを可とし,機能は集水管から流れてきた水分を貯水する役割を成している。7は鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水であり,地下水7の成分や,これに与える機能(役割)は,図1に示すように貯水タンク6を想定しており,図2は地すべり対策に用いられる集水井8であり,温泉地の場合は閉塞物の成分にカルシウムが多い傾向にあり,地すべり対策に用いられる。その集水井8の形状や大きさや機能(役割)は,形状が直径3.5mの円柱状,側壁にライナープレートと称する薄い鋼板に波付け加工された資材を複数組合せて設置している。機能は地表からは排除できないすべり面付近の地下水を集水して地すべりを防止する役割を成している。9は集水管4および排水管5を通る地下水の流れを示す。また、図1において10は温泉地等の集水箇所である。
【0023】
「集排水施設における集水管閉塞防止工程」
次に,本発明の実施例を説明する。
【0024】
集水管閉塞防止の手順については,以下により行う。
(1)木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を固形化する方法としては,石膏(CaSO4・2H2O),再生石膏に含侵させて固形物を製造する。
(2)集水管4の中にフルボ酸およびフミン酸を含侵させた固形物を設置する。
(3)固形物からフルボ酸およびフミン酸が溶け出すことによって,閉塞物に付着する塩類のイオン化を維持して集水管4と排水管5への付着を緩和する。
【0025】
[効果確認試験1]
表Aでは,各社のフルボ酸に鉄粉を混合して二価鉄の量を測定したものであるが,資材によって違いが大きいことが分かる。表Aのフルボ酸はフジミン(登録商標)である。
引用文献1は,栄養書庫出版の電子書籍『大自然の生命の力 フルボ酸 環境改善編(著者:国土防災技術株式会社 田中賢治、発売日2019.12.08)』である。
【表A】
[表A] フルボ酸の違いによる二価鉄の生成
【0026】
[効果確認試験2]
島根県松江市において,pH,EC(電気伝導度)の変化の試験を行った。
【表B】
[表B] 溶液の種類とpH,EC(電気伝導度)の変化
集排水の原液は,pH7.48(微アルカリ性),EC(電気伝導度)2.23dS/mとなるのに対して,10倍希釈ではpH3.25(強酸性)となるが,50倍希釈以上では弱酸性~中性となることから鋼材の腐食は起こらないと考えることができる。EC(電気伝導度)については,フルボ酸(フジミン「登録商標」)が集排水の原液に対して10倍~500倍に希釈されるように混合しても最大で2.23dS/m→2.55 dS/m(0.32 dS/m)しか変化しないことが確認できた。
【0027】
[効果確認試験3]
島根県松江市において,アルカリ度(CaCO3),イオン化カルシウム(Ca2+)の変化の試験を行った。
【表C】
[表C] 溶液の種類とアルカリ度(CaCO3),イオン化カルシウム(Ca2+)の変化
表Cのように集排水の原液は,アルカリ度(CaCO3)736mg/l,イオン化カルシウム(Ca2+)153 mg/lであるのに対して,フルボ酸(フジミン「登録商標」)が集排水の原液に対して500倍に希釈されるように混合した場合,アルカリ度(CaCO3)738mg/l,イオン化カルシウム(Ca2+)172 mg/lとなりほぼ同様の値になるのに対して,希釈倍率を下げるとアルカリ度(CaCO3),イオン化カルシウム(Ca2+)ともに低下する傾向を示すことが確認できた。
【0028】
[効果確認試験4]
島根県松江市において,全鉄(Fe),二価鉄(Fe2+)の変化の試験を行った。
【表D】
[表D] 溶液の種類と全鉄(Fe),二価鉄(Fe2+)の変化
集排水の原液は,全鉄(Fe)0.1mg/l,二価鉄(Fe2+)0.1 mg/lであるのに対して,フルボ酸(フジミン「登録商標」)が集排水の原液に対して10倍に希釈されるように混合した場合,全鉄(Fe)2.51mg/l,二価鉄(Fe2+)5.0 mg/lと高い値を示すことが確認できた。この傾向は,希釈倍率を下げるとイオン化した二価鉄(Fe2+)が溶液中で増加することを示している。
【0029】
[効果確認試験のまとめ]
高いアルカリ度を示す集排水の原液に対して,キレート効果,すなわち目詰まりの原因となる炭酸カルシウム(CaC03)で例えると,フルボ酸を添加することによって,結合状態のCaC03のカルシウムCaだけを切り離すことが可能となり,固まったCaC03が分離し,目詰まりの原因を防ぐことができる効果を持っているフルボ酸(フジミン「登録商標」)を利用することによって炭酸カルシウムの結晶粒子を分散させ,凝集する効果があることが確認できた。
【0030】
この場合,pHが低下し過ぎると鋼材等の腐食が起こる可能性があることから,50倍程度に希釈したフルボ酸(フジミン「登録商標」)を珪藻土等の固形物に染み込ませた状態で高いアルカリ度(CaCO3)を示す集排水に接触させることによって,持続性を持って炭酸カルシウムの結晶粒子を分散させ,凝集する効果を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は,集排水施設において鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水が流れることによって,塩類を主体とした目詰まり物質が付着して排水管が閉塞することが問題となっている。このような問題に対して,木,草,残滓の未分解の有機物を炭の製造過程で産出される強酸性の有機酸に適量漬け込み,長期間養生することで製造されるフルボ酸およびフミン酸を利用することで閉塞物のイオン化を維持して集排水管への付着を緩和することを可能とした手法である。
【符号の説明】
【0032】
1…固形化したフルボ酸およびフミン酸
2…固形化したフルボ酸およびフミン酸を収容するネット
3…ネットと固形化したフルボ酸およびフミン酸の閉塞防止資材
…固形化したフルボ酸およびフミン酸の流出防止ネット
4…集水管
5…排水管
6…貯水タンク
7…鉄やカルシウム等の塩類が豊富に含有している地下水
8…地すべり対策に用いられる集水井
9…地下水の流れ
10…温泉地等の集水箇所
図1
図2
図3
図4