(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172118
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】タンパク質の半減期延長方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/16 20060101AFI20221108BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20221108BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221108BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221108BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221108BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20221108BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20221108BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221108BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C12N15/16
C07K14/575 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/22
A61P1/14
A61P3/04
A61P3/00
A61P25/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126709
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2021016939の分割
【原出願日】2016-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2015-0160728
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518172990
【氏名又は名称】ユビプロテイン, コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】UBIPROTEIN, CORP.
【住所又は居所原語表記】A-518, Samwhan Hipex 240, Pangyoyeok-ro, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do 13493 Repuzblic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョンゴン
(72)【発明者】
【氏名】ベク,クァン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ソン-リョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンミ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,イェウン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ラン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン-オク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半減期の延長されたタンパク質、および該タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】半減期の延長された食欲刺激ホルモン(グレリン)であって、ここで、食欲刺激ホルモン(グレリン)は特定のアミノ酸配列を有し、食欲刺激ホルモン(グレリン)のN末端から39、42、43、及び47に対応する位置における1つ以上のリジン残基はアルギニンで置換されている、前記食欲刺激ホルモン(グレリン)である。肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、前記半減期の延長されたグレリンおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、前記医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又は(ポリ)ペプチドの半減期を延長する方法であって、タンパク質又は(ポリ)ペプチドの1つ以上のリジン残基をアルギニンで置換することを含み、
リジン残基は、ユビキチンのC末端グリシンに結合する方法。
【請求項2】
タンパク質は、β-トロフィンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記β-トロフィンは、配列番号1のアミノ酸配列を有し、前記β-トロフィンのN末端から62、124、153、及び158に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質は、成長ホルモン(GH)である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成長ホルモンは、配列番号10のアミノ酸配列を有し、前記成長ホルモンのN末端から64、67、96、141、166、171、184、194、及び198に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質は、インスリンである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記インスリンは、配列番号17のアミノ酸配列を有し、前記インスリンのN末端から53及び88に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質は、インターフェロン-αである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記インターフェロン-αは、配列番号22のアミノ酸配列を有し、前記インターフェロン-αのN末端から17、54、72、93、106、135、144、154、156、157、及び187に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質は、G-CSFである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記G-CSFは、配列番号31のアミノ酸配列を有し、前記G-CSFのN末端から11、46、53、64、及び73に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記タンパク質は、インターフェロン-βである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記インターフェロン-βは、配列番号36のアミノ酸配列を有し、前記インターフェロン-βのN末端から4、40、54、66、73、120、126、129、136、144、155、及び157に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質は、エリスロポエチン(EPO)である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エリスロポエチン(EPO)は、配列番号43のアミノ酸配列を有し、前記エリスロポエチン(EPO)のN末端から47、72、79、124、143、167、179、及び181に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質は、BMP2である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記BMP2は、配列番号51のアミノ酸配列を有し、前記BMP2のN末端から32、64、127、178、185、236、241、272、278、281、285、287、290、293、297、355、358、379、及び383に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質は、FGF-1である請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記FGF-1は、配列番号59のアミノ酸配列を有し、前記FGF-1のN末端から15、24、25、27、72、115、116、120、127、128、133、及び143に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質は、レプチンである請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記レプチンは、配列番号64のアミノ酸配列を有し、前記レプチンのN末端から26、32、36、54、56、74、及び115に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質は、VEGFAである請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記VEGFAは、配列番号73のアミノ酸配列を有し、前記VEGFAのN末端から22、42、74、110、127、133、134、141、142、147、149、152、154、156、157、169、180、184、191、及び206に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質は、グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)である請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)は、配列番号78のアミノ酸配列を有し、前記G-CSFのN末端から39、42、43、47、85、100、111、及び117に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質は、食欲刺激ホルモン(グレリン)である請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記食欲刺激ホルモン(グレリン)は、配列番号80のアミノ酸配列を有し、前記食欲刺激ホルモン(グレリン)のN末端から39、42、43、及び47に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質は、GLP-1である請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記GLP-1は、配列番号89のアミノ酸配列を有し、前記GLP-1のN末端から117及び125に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質は、IgG重鎖(HC)である請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記IgG重鎖(HC)は、配列番号94のアミノ酸配列を有し、前記IgG重鎖(HC)のN末端から49、62、84、95、143、155、169、227、232、235、236、240、244、268、270、296、310、312、339、342、344、348、356、360、362、382、392、414、431、436、及び461に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質は、IgG軽鎖(LC)である請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記IgG軽鎖(LC)は、配列番号101のアミノ酸配列を有し、IgG軽鎖(LC)のN末端から61、64、67、125、129、148、167、171、191、205、210、212、及び229に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
半減期の延長されたタンパク質であって、
前記タンパク質のアミノ酸配列の1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換され、前記リジン残基は、ユビキチンのC末端グリシンに結合するタンパク質。
【請求項35】
前記タンパク質は、β-トロフィン、GLP-1、IgG重鎖、IgG軽鎖、食欲刺激ホルモン(グレリン)、G-CSF、VEGFA、レプチン、FGF-1、BMP2、Gタンパク質結合受容体、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、食欲刺激ホルモン前駆体、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン受容体、コロニー刺激因子(CSF)、グルカゴン様ペプチド、Gタンパク質結合受容体、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー阻害剤、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンフォトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1抗トリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、エリスロポエチン、高度グリコシル化エリスロポエチン、アンギオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、プラスミノゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮成長因子、表皮成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨成長因子、骨刺激タンパク質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路阻害剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体、受容体拮抗薬、細胞表面抗原、ウィルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は抗体フラグメントである請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項36】
前記タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するβ-トロフィンであり、前記β-トロフィンのN末端から62、124、153、及び158に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項37】
前記タンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列を有する成長ホルモンであり、前記成長ホルモンのN末端から64、67、96、141、166、171、184、194、及び198に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項38】
前記タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を有するインスリンであり、前記インスリンのN末端から53及び88に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニン置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項39】
前記タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列を有するインターフェロン-αであり、前記インターフェロン-αのN末端から17、54、72、93、106、135、144、154、156、157、及び187に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項40】
前記タンパク質は、配列番号31のアミノ酸配列を有するG-CSFであり、前記G-CSFのN末端から11、46、53、64、及び73に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項41】
前記タンパク質は、配列番号36のアミノ酸配列を有するインターフェロン-βであり、前記インターフェロン-βのN末端から4、40、54、66、73、120、126、129、136、144、155、及び157に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項42】
前記タンパク質は、配列番号43のアミノ酸配列を有するエリスロポエチン(EPO)であり、前記エリスロポエチン(EPO)のN末端から47、72、79、124、143、167、179、及び181に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項43】
前記タンパク質は、配列番号51のアミノ酸配列を有するBMP2であり、前記BMP2のN末端から32、64、127、178、185、236、241、272、278、281、285、287、290、293、297、355、358、379、及び383に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項44】
前記タンパク質は、配列番号59のアミノ酸配列を有するFGF-1であり、前記FGF-1のN末端から15、24、25、27、72、115、116、120、127、128、133、及び143に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項45】
前記タンパク質は、配列番号64のアミノ酸配列を有するレプチンであり、前記レプチンのN末端から26、32、36、54、56、74、及び115に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項46】
前記タンパク質は、配列番号73のアミノ酸配列を有するVEGFAであり、前記VEGFAのN末端から22、42、74、110、127、133、134、141、142、147、149、152、154、156、157、169、180、184、191、及び206に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項47】
前記タンパク質は、配列番号78のアミノ酸配列を有するグレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)であり、前記グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)のN末端から39、42、43、47、85、100、111、及び117に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項48】
前記食欲刺激ホルモン(グレリン)は、配列番号80のアミノ酸配列を有し、前記食欲刺激ホルモン(グレリン)のN末端から39、42、43、及び47に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項49】
前記タンパク質は、配列番号89のアミノ酸配列を有するGLP-1であり、前記GLP-1のN末端から117及び125に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項50】
前記タンパク質は、配列番号94のアミノ酸配列を有するIgG重鎖(HC)であり、前記IgG重鎖(HC)のN末端から49、62、84、95、143、155、169、227、232、235、236、240、244、268、270、296、310、312、339、342、344、348、356、360、362、382、392、414、431、436、及び461に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項51】
前記タンパク質は、配列番号101のアミノ酸配列を有するIgG軽鎖(LC)であり、前記IgG軽鎖(LC)のN末端から61、64、67、125、129、148、167、171、191、205、210、212、及び229に対応する位置における1つ以上のリジン残基は、アルギニンで置換されている請求項34に記載の半減期の延長されたタンパク質。
【請求項52】
糖尿病及び/又は肥満を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項36に記載のβ-トロフィンと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項53】
小人症、歌舞伎症候群、及び/又はカーンズ・セイヤー症候群(KSS)を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項37に記載の成長ホルモンと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項54】
糖尿病を治療するための医薬組成物であって、
請求項38に記載のインスリンと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項55】
多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又は、ウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項39に記載のインターフェロン-αと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項56】
好中球減少症を予防及び/又は治療する医薬組成物であって、
請求項40に記載のG-CSFと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項57】
多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又はウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項41に記載のインターフェロン-βと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項58】
貧血を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項42に記載のエリスロポエチン(EPO)と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項59】
貧血及び骨疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項43に記載のBMP2と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項60】
ニューロン疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項44に記載のFGF-1と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項61】
脳疾患、心臓疾患、及び/又は肥満を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項45に記載のレプチンと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項62】
アンチエイジング、毛髪成長、傷痕、及び/又は血管形成に関連の疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項46に記載のVEGFAと、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項63】
肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項47に記載の食欲刺激ホルモン前駆体、グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項64】
肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項48に記載の食欲刺激ホルモン(グレリン)と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項65】
糖尿病を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項49に記載のGLP-1と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項66】
癌を予防及び治療するための医薬組成物であって、
請求項50に記載のIgG重鎖(HC)と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項67】
癌を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、
請求項51に記載のIgG軽鎖(LC)と、
薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項68】
発現ベクターであって、
(a)プロモータと、
(b)請求項34~51のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸配列と、
任意で、リンカーとを含み、
前記プロモータ及び前記核酸配列は、作動可能に連結される発現ベクター。
【請求項69】
請求項68に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキチン化に関連したタンパク質の1つ以上のリジン残基を置換することにより、タンパク質又は(ポリ)ペプチドの半減期を延長する方法と、半減期の延長されたタンパク質とに関連する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞中のタンパク質又は(ポリ)ペプチドは、リソソーム系及びユビキチン-プロテアソーム系の2つの個別経路を通じて分解される。リソソーム系は、10~20%の細胞タンパク質が分解されるが、基質特異性も精密なタイミング制御性も持ち合わせていない。つまり、リソソーム系は、表面タンパク質がエンドサイトーシスによって取り込まれてリソソームによって分解されるため、特に、細胞外タンパク質又は膜タンパク質の大部分を分割するプロセスである。真核細胞中のタンパク質の選択的分解について、ユビキチン-プロテアソーム経路(UPP)が関与していなければならず、ここでは標的タンパク質が最初にユビキチン-結合酵素に結合されてポリ-ユビキチン鎖を形成した後、プロテアソームによって認識及び分解される。約80~90%の真核細胞タンパク質がUPPを通じて分解されるため、UPPが真核生物中の細胞タンパク質の大部分に対する分解を調節し、タンパク質の代謝回転及びインビボにおける恒常性を司ると考えられる。ユビキチンは、高度に保存された76個のアミノ酸からなる小さなタンパク質であり、あらゆる真核細胞中に存在する。ユビキチンのアミノ酸残基の中でも、6、11、27、29、33、48、及び63に対応する位置の残基はリジン(リジン、Lys、K)であり、48及び63の位置にある残基は、ポリ-ユビキチン鎖の形成に必須の役割を果たすものとして知られている。3つの酵素は、通常E1、E2、及びE3として知られており、ユビキチン化を促進するように順次作用し、ユビキチンタグ標識タンパク質は、ATP依存性タンパク質分解複合体の26Sプロテアソームによって分解される。
【0003】
以上に開示の通り、ユビキチンプロテアソーム経路(UPP)は、2つの個別且つ連続のプロセスからなる。一方が、多数のユビキチン分子が基質タンパク質と共役したタンパク質タグ標識プロセスであり、他方が、タグ標識タンパク質が26Sプロテアソーム複合体によって分割される分解プロセスである。ユビキチンと基質タンパク質との間の共役は、ユビキチンのC末端グリシンと基質のリジン残基との間のイソペプチド結合の形成によって実現され、次いでユビキチン活性化酵素E1、ユビキチン結合酵素E2、及びユビキチン連結酵素E3の一連の酵素による、ユビキチンと基質タンパク質との間のチオール-エステル結合の発生が続く。E1(ユビキチン-活性化酵素)は、ATP-依存性反応機構を通じてユビキチンを活性化することが知られている。活性化ユビキチンは、E2(ユビキチン共役酵素)のユビキチン共役ドメインにおけるシステイン残基に転移された後、E2は、活性化ユビキチンをE3連結酵素に伝達するか、又は基質タンパク質に直接送達する。E3は、基質タンパク質のリジン残基とユビキチンのグリシンとの間の安定なイソペプチド結合も触媒する。他のユビキチンは、基質タンパク質に結合したユビキチンのC末端リジン残基に共役可能であり、追加ユビキチン部分等の反復的共役は、多数のユビキチン分子が互いに連結されるポリユビキチン鎖を生成する。ポリユビキチン鎖が生成されると、基質タンパク質が26Sプロテアソームにより選択的に認識及び分解される。
【0004】
一方、インビボにおける治療効果を有する種々のタンパク質がある。インビボにおける治療効果を有するタンパク質、(ポリ)ペプチド、又は生体活性ポリペプチドは、例えば、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン(インターフェロン-α又はインターフェロン-β)、インターフェロン受容体、コロニー刺激因子(CSF)、グルカゴン様ペプチド、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、Gタンパク質結合受容体、ヒト成長ホルモン(hGH)、マクロファージ活性化因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー阻害剤、細胞壊死糖タンパク質、Gタンパク質結合受容体、免疫毒素、リンフォトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1抗トリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、エリスロポエチン、高度グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮成長因子、表皮成長因子、アンギオスタチン、アンギオテンシン、骨成長因子、骨刺激タンパク質、カルシトニン、インスリン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、フィブリン結合ペプチド、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路阻害剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、レラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体、受容体拮抗薬、細胞表面抗原、ウィルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及び抗体フラグメントを含むが、これに限定されるものでない。
【0005】
β-トロフィンは、インスリンを分泌する膵臓β細胞の増殖を促進するものとして知られている。従って、β-トロフィンは、血糖値を制御すべく膵臓β細胞の活動を維持するために、II型糖尿病を罹患した患者に対して年1回又は2回投与することができる。β-トロフィンの投与は、β-トロフィン治療を施された患者が自身でインスリンを生成することができるため、インスリン投与に比較して悪影響が少ない。さらに、マウスの肝臓における一過性発現β-トロフィンは、膵臓β細胞の増殖を促進することが報告されている(Cell、153、747758、2013)。
【0006】
成長ホルモン(GH)、ペプチドホルモンは、脳下垂体の前葉において合成及び分泌されるが、これは、骨及び軟骨の成長に関連するだけでなく、脂肪分解及びタンパク質合成の刺激に対する代謝にも関連する。そこで、成長ホルモンは、小人症の治療に使用可能であるが、小人症は、例えば、先天的心臓疾患、慢性的肺疾患、慢性的腎臓疾患、又は慢性的消耗症、成長ホルモン欠乏によるホルモンの不適合分泌、甲状腺機能低下症、又は糖尿病、及びターナー症候群等の先天的遺伝性疾患を含む種々の病状によって引き起こされ得る。さらに、成長ホルモンは、STAT(転写のシグナル伝達物質及び活性化因子)タンパク質の転写を調節する(Oncogene、19、2585~2597、2000)ことが知られている。
【0007】
インスリンは、ヒトの体内の血糖値を調節することが知られている。従って、インスリンは、膵臓の膵島細胞の機能障害の結果として生じた血糖値の上昇を患うI型糖尿病患者の治療のために投与可能である。またインスリンは、インスリンが依然として正常分泌されるものの、体細胞のインスリン受容体抵抗により血糖値を制御することのできないII型糖尿病患者にも投与可能である。過去の研究によると、インスリンは、肝臓中のSTATリン酸化反応を刺激することにより、肝臓中のグルコース恒常性を制御するものであると報告されている(Cell Metabolism 3、267275、2006)。
【0008】
インターフェロンは、天然生成タンパク質の群であるが、白血球、ナチュラルキラー細胞、線維細胞、及び上皮細胞等を含む免疫系細胞によって生成及び分泌される。インターフェロンは、I型、II型、及びIII型等の3種に分類され、これらの種別は、各タンパク質によって送達される受容体によって判定される。インターフェロンの機能的機構は複雑であり、未だ完全には理解されていないが、ウィルス、癌、及びその他の外的(又は感染性)物質に対する免疫系の応答を調節することが知られている。一方、インターフェロンは、ウィルス又は癌細胞を直接殺すものでなく、免疫系の応答を促進し、多数の細胞中のタンパク質分泌を調節する遺伝子の機能を制御することにより、癌細胞の成長を抑制することが知られている。I型インターフェロンについては、IFN-αをB型肝炎及びC型肝炎の治療に使用可能であり、IFN-βを多発性硬化症の治療に使用可能であることが知られている。さらに、IFN-αは、STAT-1、STAT-2、及びSTAT-3を増進することが報告されており(J Immunol、187、2578~2585、2011)、黒色腫細胞において黒色腫腫瘍形成に寄与するSTAT3タンパク質を活性化する(Euro J Cancer、45、1315~1323、2009)。さらに、AKTを含むシグナル経路の活性化は、IFN-β処理細胞で誘発されることが報告されている(Pharmaceuticals(Basel)、3、994~1015、2010)。
【0009】
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、糖タンパク質は、幹細胞及び顆粒球を生成し、骨髄を刺激して、幹細胞及び顆粒球を血管内に分泌する。G-CSFは、一種のコロニー刺激因子であり、サイトカイン及びホルモンとしてもまた機能する。さらに、G-CSFは、造血に影響を及ぼすことに加え、神経可塑性を増加し、アポトーシスを抑制することにより、神経栄養因子として作用する。G-CSF受容体は、脳及び脊髄のニューロンに発現する。中枢神経系において、G-CSFは、ニューロン生成を誘発し、神経可塑性を増加させることにより、アポトーシスに関連付けられる。従って、G-CSFは、脳梗塞等の神経疾患の治療への使用が研究されている。G-CSFは、一種の白血球である顆粒球の生成を刺激する。さらに、組換G-CSFは、腫瘍学及び血液学における化学治療で生じる、好中球減少症からの回復を加速するために使用される。G-CSFは、グリオーマ細胞におけるSTAT3を活性化することにより、グリオーマ成長に関与することが報告されている(Cancer Biol Ther.、13(6)、389~400、2012)。さらに、G-CSFは、卵巣上皮癌細胞に発現し、JAK2/STAT3経路を調節することにより、女性の子宮癌に病理学的に関連することが報告されている(Br J Cancer、110、133~145、2014)。
【0010】
エリスロポエチン(EPO)、糖タンパク質ホルモンは、インターロイキン-3、インターロイキン-6、グルココルチコイド、及び幹細胞因子等、種々の成長因子と相互作用する。サイトカイン、エリスロポエチンは、赤血球前駆体として骨髄内に存在し、赤血球の生成に関連する。さらに、エリスロポエチンは、鉄調節ホルモンのヘプシジンホルモンの吸収を抑制することにより、鉄イオンの吸収を上方制御する点で、エリスロポエチンは、血管収縮依存高血圧症に関連する。さらに、エリスロポエチンは、心筋梗塞又は脳卒中等、ニューロン損傷に対する脳の応答においてニューロン保護に関する重要な役割を果たす。また、エリスロポエチンは、記憶の向上、傷痕の回復、及び抑鬱症に治療効果を有することが知られている。さらに、エリスロポエチンレベルは、肺癌及び血液癌の患者において増加することが報告されている。さらに、EPOは、Erk1/2リン酸化反応を通じて細胞周期進行を調節するため、低酸素症に効果を有することが報告されている(J Hematol Oncol.、6、65、2013)。
【0011】
線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)は、線維芽細胞成長因子の1つであり、胚発生、細胞成長、組織再生、及び癌の進行及び転移に関連する。さらに、FGF-1は、臨床研究において心血管の血管形成を誘発することが報告されている(BioDrugs.、11(05)、301308、1999)。FGF-1は、細胞成長を促進するため、上皮を健康に維持するのに役立ち、肌を保湿して肌の弾力を強化する。さらに、FGF-1は、肌の細胞を活性化し、肌の見た目を明るくし、ミルキーな肌を提供する。また、FGF-1は、肌を損傷又は傷痕から素早く回復させるのに役立ち、肌のバリアを強化することにより、保護機能を向上させることが知られている。さらに、組換線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)は、HEK293細胞中のErk1/2リン酸化反応を増進させることが知られている(Nature、513(7518)、436-439、2014)。血管内皮成長因子A(VEGFA)は、脈管及び血管形成を刺激する細胞中に生成されるシグナル伝達タンパク質であり、低酸素環境において組織中に酸素を保存する(Mol Cell Endocrinol.、397、5157、2014)。喘息及び糖尿病の場合、VEGFの血清レベルの増加が検出された(Diabetes、48(11)、22292239、2013)。VEGFは、胚発生、損傷後の新たな血管の生成、及びエクササイズ後の筋肉及び詰まった血管を貫通する新たな血管の生成において機能する。一方、VEGFの過剰発現は、結果として、疾患又は障害を引き起こす。例えば、固形癌は、血液の流入が妨害されれば、さらに成長することはないが、癌は、継続的に成長し、VEGFが発現すれば、転移が生じる。さらに、VEGFは、内皮細胞の成長及び増殖にとって重要な因子として知られており、癌細胞中の血管形成の展開に関与する。特に、PI3K/Akt/HIF-1αシグナル伝達経路が癌細胞中のVEGFによる血管形成の展開に関連することが報告されている(Carcinogenesis、34、426~435、2013)。さらに、VEGFは、AKTリン酸化反応を誘発することが知られている(Kidney Int.、68、1648~1659、2005)。
【0012】
食欲抑制タンパク質(レプチン)及び食欲刺激ホルモン(グレリン)は、脂肪組織中に分泌される。レプチンは、循環ホルモン(16kDa)であり(Cell Res.、10、81~92、2000)、免疫、再生、及び造血において重要な役割を果たす。グレリンは、成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて脂肪組織から分泌され、食欲を刺激するが、28個のアミノ酸からなる胃ペプチドであり(J Endocrinol.、192、313323、2007;Nature、442、656~660、1999)、プレプログレリンから形成される(Pediatr Res.、65、3944、2009;J Biol Chem.、281(50)、3886738870、2006)。
【0013】
レプチンは、これ以上の食物を要さないという満腹シグナルを与えるホルモンであり、レプチンホルモン分泌障害が食欲を刺激することが知られている。フルクトースはインスリン分泌に干渉し、レプチン分泌を低減する一方で、グレリンの分泌を促進して食欲を増すことが報告されている(J Biol Chem.,、277(7)、5667~5674、2002;I.J.S.N.、7(1)、06~15、2016)。さらに、食欲抑制タンパク質は、乳癌細胞におけるAKTリン酸化反応を増大させることが報告されており(Cancer Biol Ther.、16(8)、1220~1230、2015)、子宮癌におけるPI3K/AKTシグナル伝達経路中の癌細胞成長を刺激する(Int J Oncol.、49(2)、847、2016)。さらに、レプチンは、PI3K/AKTシグナル伝達を通じて子宮癌における癌細胞成長を刺激することが知られている(Int J Oncol.、49(2)、847、2016)。
【0014】
食欲刺激ホルモン(グレリン)は、成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて細胞成長を規制し、インビボにおけるカルシウム規制により、STAT3を増進する(Mol Cell Endocrinol.、285、19~25、2008)ことが知られている。
【0015】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、インクレチンホルモンは、回腸及び大腸のL細胞から分泌されるが、グルコース濃度に応じてインスリン分泌を増すことにより、低血糖を防ぐ。従って、GLP-1は、II型糖尿病の治療に使用可能である(Pharmaceuticals (Basel)、3(8)、2554~2567、2010;Diabetologia、36(8)、741~744、1993)。さらに、GLP-1は、上部消化器官の運動低下を誘発し、食欲を抑制して、既存の膵臓β細胞の増殖を刺激することができる(Endocr Rev.、16(3)、390~410、1995;Endocrinology、141(12)、4600~4605、2000;Dig Dis Sci.、38(4)、665~673、1993;Am J Physiol.、273(5 Pt1)、E981~988、1997)。しかしながら、GLP-1のインビボにおける2分間という短い半減期は、GLP1の使用による医薬品の開発には不都合である。グルカン様ペプチド(GLP-1)は、恒常性を規制し、インスリン抵抗において重大な役割を果たすため、糖尿病の治療薬として使用されてきた。さらに、GLP-1がSTAT3活性を誘発することが報告されている(Biochem Biophys Res Commun.、425(2)、304~308、2012)。
【0016】
BMP-2は、TGF-βスーパーファミリーの1つであり、軟骨及び骨の形成に寄与し、細胞成長、細胞死、及び細胞分化に重大な役割を果たす(Genes Dev.、10、1580~1594、1996;Development、122、3725~3734、1996;J Biol Chem.、274、26503~26510、1999;J Exp Med.、189、1139~1147、1999)。さらに、BMP-2は、多発性硬化症に対する治療薬として使用可能であることが報告されている(Blood、96(6)、2005~2011、2000;Leuk Lymphoma.、43(3)、635~639、2002)。
【0017】
免疫グロブリンG(IgG)は、一種の抗体であり、血液及び細胞外液体に見出される主要な種別の抗体であって体組織の感染を制御可能にし、容易に組織を潅流させるような小さなサイズを有するモノマーとして分泌される(Basic Histology、McGraw-Hill、ISBN0-8385-0590-2、2003)。IgGは、免疫不全、自己免疫障害、及び感染の治療に使用される(Proc Natl Acad Sci USA.、107(46)、19985~19990、2010)。
【0018】
インビボにおける恒常性に関連するタンパク質治療薬は、癌の誘発リスクを高める等、種々の弊害を有する。例えば、インクレチン分解酵素(DPP-4)(ジぺプチジルペプチダーゼ-4)阻害剤ファミリー治療薬については甲状腺癌の誘発の可能性を生じ、インスリングラルギンは、乳癌のリスクを高めるものと知られている。さらに、成長ホルモン分泌障害の疾患を患う患者への成長ホルモンの連続的又は過剰な投与は、患者の糖尿病、微小血管障害、及び早期死亡に関与することが報告されている。この点に関して、このような治療用タンパク質の弊害及び副作用を低減すべく、幅広い研究が行われてきた。タンパク質の半減期を延長することは、治療用タンパク質の弊害及び副作用のリスクを最少化する方法として提案されている。この目的のために、種々の方法が開示されてきた。この点に関して、本発明者は、インビボ及び/又はインビトロでタンパク質の半減期を延長する新規の方法を開発するために研究してきており、ユビキチンプロテアソーム系を通じてタンパク質又は(ポリ)ペプチドの分解を防ぐために、治療用タンパク質又は(ポリ)ペプチドのユビキチン化に関連する1つ以上のリジン残基を置換することにより、本発明を完成した。
【0019】
本明細書に引用したあらゆる特許、公開出願、及び参照文献の教示について、その全体を参照としてここに組み込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、タンパク質又は(ポリ)ペプチドの半減期を改良することにある。
【0021】
さらに、本発明の他の目的は、半減期の延長された治療用タンパク質を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の他の目的は、薬理学的活性成分として、半減期の延長されたタンパク質を含む医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以上の目的を達成するために、本発明は、タンパク質のアミノ酸における1つ以上のリジン残基を置換することにより、インビボ及び/又はインビトロにおけるタンパク質の半減期を延長する方法を提供する。
【0024】
本発明において、リジン残基は、保存的アミノ酸で置換可能である。「保存的アミノ酸置換」という用語は、アミノ酸が、置換対象のアミノ酸とは異なるものの、電荷特性又は疎水特性等、化学的特徴の類似した他のアミノ酸によって置換されていることを意味する。タンパク質の機能的特徴は、通常、必ずしも対応する保存的アミノ酸を使用したアミノ酸置換によって変化させられるものでない。例えば、アミノ酸は、以下の通り、同様の化学的特性を有する側鎖に応じて分類可能である。(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン、及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖;アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩、及び(7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニン。
【0025】
本発明において、リジン残基は、塩基性側鎖を含むアルギニン又はヒスチジンで置換可能である。リジン残基は、アルギニンで置換されることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された変異タンパク質は、半減期が著しく延長されるため、長期に亘って残留可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【0028】
【
図2】β-トロフィン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0029】
【
図3】HEK-293T細胞における発現β-トロフィンプラスミド遺伝子を示す。
【0030】
【
図4】ユビキチン化アッセイを通じたβ-トロフィンのタンパク質分解経路を説明している。
【0031】
【
図5】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換β-トロフィンのユビキチン化レベルを示す。
【0032】
【
図6】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のβ-トロフィンの半減期変化を示す。
【0033】
【
図7】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0034】
【0035】
【
図9】成長ホルモン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0036】
【
図10】HEK-293T細胞における発現成長ホルモンプラスミド遺伝子を示す。
【0037】
【
図11】ユビキチン化アッセイを通じた成長ホルモンのタンパク質分解経路を説明している。
【0038】
【
図12】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換成長ホルモンのユビキチン化レベルを示す。
【0039】
【
図13】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後の成長ホルモンの半減期変化を示す。
【0040】
【
図14】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0041】
【0042】
【
図16】インスリン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0043】
【
図17】HEK-293T細胞におけるインスリンプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0044】
【
図18】ユビキチン化アッセイを通じたインスリンのタンパク質分解経路を説明している。
【0045】
【
図19】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インスリン変異体のユビキチン化レベルを示す。
【0046】
【
図20】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインスリンの半減期変化を示す。
【0047】
【
図21】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0048】
【
図22】インターフェロン-α発現ベクターの構造を示す。
【0049】
【
図23】インターフェロン-α遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0050】
【
図24】HEK-293T細胞におけるインターフェロン-αプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0051】
【
図25】ユビキチン化アッセイを通じたインターフェロン-αのタンパク質分解経路を説明している。
【0052】
【
図26】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インターフェロン-αのユビキチン化レベルを示す。
【0053】
【
図27】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインターフェロン-αの半減期変化を示す。
【0054】
【
図28】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0055】
【0056】
【
図30】G-CSF遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0057】
【
図31】HEK-293T細胞におけるG-CSFプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0058】
【
図32】ユビキチン化アッセイを通じたG-CSFのタンパク質分解経路を説明している。
【0059】
【
図33】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換G-CSFのユビキチン化レベルを示す。
【0060】
【
図34】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のG-CSFの半減期変化を示す。
【0061】
【
図35】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0062】
【
図36】インターフェロン-β発現ベクターの構造を示す。
【0063】
【
図37】インターフェロン-β遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0064】
【
図38】HEK-293T細胞におけるインターフェロン-βプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0065】
【
図39】ユビキチン化アッセイを通じたインターフェロン-βのタンパク質分解経路を説明している。
【0066】
【
図40】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換インターフェロン-βのユビキチン化レベルを示す。
【0067】
【
図41】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のインターフェロン-βの半減期変化を示す。
【0068】
【
図42】JAK-STAT及びPI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0069】
【
図43】エリスロポエチン発現ベクターの構造を示す。
【0070】
【
図44】エリスロポエチン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0071】
【
図45】HEK-293T細胞におけるエリスロポエチンプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0072】
【
図46】ユビキチン化アッセイを通じたエリスロポエチンのタンパク質分解経路を説明している。
【0073】
【
図47】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換エリスロポエチンのユビキチン化レベルを示す。
【0074】
【
図48】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のエリスロポエチンの半減期変化を示す。
【0075】
【
図49】MAPK/ERKシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0076】
【0077】
【
図51】BMP2遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0078】
【
図52】HEK-293T細胞におけるBMP2プラスミド遺伝子の発現を示す。
【0079】
【
図53】ユビキチン化アッセイを通じたBMP2のタンパク質分解経路を説明している。
【0080】
【
図54】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換BMP2のユビキチン化レベルを示す。
【0081】
【
図55】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のBMP2の半減期変化を示す。
【0082】
【
図56】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0083】
【
図57】線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクターの構造を示す。
【0084】
【
図58】FGF-1遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0085】
【
図59】HEK-293T細胞におけるFGF-1プラスミド遺伝子の発現を示す。
【0086】
【
図60】ユビキチン化アッセイを通じたFGF-1のタンパク質分解経路を説明している。
【0087】
【
図61】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換FGF-1のユビキチン化レベルを示す。
【0088】
【
図62】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のFGF-1の半減期変化を示す。
【0089】
【
図63】MAPK/ERKシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0090】
【0091】
【
図65】レプチン遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0092】
【
図66】HEK-293T細胞におけるレプチンプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0093】
【
図67】ユビキチン化アッセイを通じたレプチンのタンパク質分解経路を説明している。
【0094】
【
図68】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換レプチンのユビキチン化レベルを示す。
【0095】
【
図69】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のレプチンの半減期変化を示す。
【0096】
【
図70】PI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0097】
【
図71】血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクターの構造を示す。
【0098】
【
図72】VEGFA遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0099】
【
図73】HEK-293T細胞におけるVEGFAプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0100】
【
図74】ユビキチン化アッセイを通じたVEGFAのタンパク質分解経路を説明している。
【0101】
【
図75】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換VEGFAのユビキチン化レベルを示す。
【0102】
【
図76】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のVEGFAの半減期変化を示す。
【0103】
【
図77】JAK-STAT及びPI3K/AKTシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0104】
【
図78】グレリン/オベスタチンプレプロペプチド(Prepro-GHRL)発現ベクターの構造を示す。
【0105】
【
図79】Prepro-GHRL遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0106】
【
図80】HEK-293T細胞におけるPrepro-GHRLプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0107】
【
図81】ユビキチン化アッセイを通じたPrepro-GHRLのタンパク質分解経路を説明している。
【0108】
【
図82】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換Prepro-GHRLのユビキチン化レベルを示す。
【0109】
【
図83】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のPrepro-GHRLの半減期変化を示す。
【0110】
【
図84】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0111】
【0112】
【
図86】GHRL遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0113】
【
図87】HEK-293T細胞におけるGHRLプラスミド遺伝子の発現を示す。
【0114】
【
図88】ユビキチン化アッセイを通じたGHRLのタンパク質分解経路を説明している。
【0115】
【
図89】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換GHRLのユビキチン化レベルを示す。
【0116】
【
図90】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のGHRLの半減期変化を示す。
【0117】
【
図91】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0118】
【
図92】グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクターの構造を示す。
【0119】
【
図93】GLP-1遺伝子についてPCR生成物をクローニングした結果を示す。
【0120】
【
図94】HEK-293T細胞におけるGLP-1プラスミド遺伝子の発現を示す。
【0121】
【
図95】ユビキチン化アッセイを通じたGLP-1のタンパク質分解経路を説明している。
【0122】
【
図96】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換GLP-1のユビキチン化レベルを示す。
【0123】
【
図97】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のGLP-1の半減期変化を示す。
【0124】
【
図98】JAK-STATシグナル伝達様効果についての結果を示す。
【0125】
【0126】
【
図100】IgG重鎖遺伝子に対するクローニングの結果を示す。
【0127】
【
図101】HEK-293T細胞におけるIgG重鎖プラスミド遺伝子の発現を示す。
【0128】
【
図102】ユビキチン化アッセイを通じたIgG重鎖のタンパク質分解経路を説明している。
【0129】
【
図103】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換IgG重鎖のユビキチン化レベルを示す。
【0130】
【
図104】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のIgG重鎖の半減期変化を示す。
【0131】
【0132】
【
図106】IgG軽鎖遺伝子に対するクローニングの結果を示す。
【0133】
【
図107】HEK-293T細胞におけるIgG軽鎖プラスミド遺伝子の発現を示す。
【0134】
【
図108】ユビキチン化アッセイを通じたIgG軽鎖のタンパク質分解経路を説明している。
【0135】
【
図109】野生型との比較において、リジン残基がアルギニンで置換された置換IgG軽鎖のユビキチン化レベルを示す。
【0136】
【
図110】タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)による処理後のIgG軽鎖の半減期変化を示す。
【0137】
以降、実施例を参照して、本発明についてより詳細に説明する。これらの実施例は、いかなる方法においても、本発明を限定することが意図されるものでないことを理解しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明の一実施形態において、タンパク質は、β-トロフィンである。β-トロフィンアミノ酸配列(配列番号1)において、N末端から62、124、153、及び158に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の増加したβ-トロフィンが提供される。さらに、糖尿病及び肥満を予防及び/又は治療するための置換β-トロフィンを含む医薬組成物が提供される(Cell、153(4)、747758、2013;Cell Metab.、18(1)、5~6、2013;Front Endocrinol(Lausanne)、4、146、2013)。
【0139】
本発明の他の実施形態において、タンパク質は、成長ホルモンである。この成長ホルモンのアミノ酸配列(配列番号10)において、N末端から64、67、96、141、166、171、184、194、及び198に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の改善された成長ホルモンが提供される。さらに、小人症、歌舞伎症候群、及びカーンズ・セイヤー症候群(KSS)を予防及び/又は治療するための置換成長ホルモンを含む医薬組成物が提供される(J Endocrinol Invest.、39(6)、667~677、2016;J Pediatr Endocrinol Metab.、2016、[Epub ahead of print];Horm Res Paediatr.2016、[Epub ahead of print])。
【0140】
本発明の他の実施形態において、タンパク質は、インスリンである。このインスリンのアミノ酸配列(配列番号17)において、N末端から53及び88に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の改善されたインスリンが提供される。さらに、糖尿病を予防及び/又は治療するための置換インスリンを含む医薬組成物が提供される。
【0141】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、インターフェロン-αである。このインターフェロン-αのアミノ酸配列(配列番号22)において、N末端から17、54、72、93、106、135、144、154、156、157、及び187に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の改善されたインターフェロン-αが提供される。さらに、多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又は、ウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症、インターフェロン-α治療を必要とする疾患又は障害を予防及び治療するための置換インターフェロン-αを含む医薬組成物が提供される(Ann Rheum Dis.、42(6)、672~676、1983;Memo.、9、63~65、2016)。
【0142】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、G-CSFである。G-CSFのアミノ酸配列(配列番号31)において、N末端から11、46、53、64、及び73に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の延長されたG-CSFが提供される。さらに、好中球減少症を予防及び/又は治療するためのG-CSFを含む医薬組成物が提供される(EMBO Mol MeD.2016、[Epub ahead of print])。
【0143】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、インターフェロン-βである。インターフェロン-βのアミノ酸配列(配列番号36)において、N末端から4、40、54、66、73、120、126、129、136、144、155、及び157に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の延長されたインターフェロン-βが提供される。さらに、多発性硬化症、自己免疫疾患、関節リウマチを含む免疫疾患、及び/又は、固形癌及び/又は血液癌を含む癌、及び/又は、ウィルス感染、HIV関連疾患、及びC型肝炎を含む感染症を予防及び/又は治療するための置換インターフェロン-βを含む医薬組成物が提供される。
【0144】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、エリスロポエチンである。エリスロポエチンのアミノ酸配列(配列番号43)において、N末端から47、72、79、124、143、167、179、及び181に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、インビボ及び/又はインビトロにおける半減期の増加されたエリスロポエチンが提供される。さらに、慢性的腎不全、外科手術、及び癌又は癌治療等によって引き起こされる貧血を予防及び/又は治療するための置換エリスロポエチン含有医薬組成物が提供される。
【0145】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、骨形成タンパク質-2(BMP2)である。BMP2のアミノ酸配列(配列番号52)において、N末端から32、64、127、178、185,236、241、272、278、281、285、287、290、293、297、355、358、379、及び383に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加されたBMP2が提供される。さらに、貧血及び骨疾患を予防及び/又は治療するための置換BMP2含有医薬組成物が提供される(CeLL J.、17(2)、193~200、2015;Clin Orthop Relat Res.、318、222~230、1995)。
【0146】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)である。FGF-1のアミノ酸配列(配列番号61)において、N末端から15、24、25、27、72、115、116、120、127、128、133、及び143に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加したFGF-1が提供される。さらに、ニューロン疾患を予防/及び治療するための置換FGF-1含有医薬組成物が提供される。
【0147】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲抑制ホルモン(レプチン)である。食欲抑制ホルモン(レプチン)のアミノ酸配列(配列番号66)において、N末端から26、32、36、54、56、74、及び115に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加した食欲抑制ホルモン(レプチン)が提供される。さらに、脳疾患、心臓疾患、及び/又は肥満を予防及び/又は治療するための置換食欲抑制ホルモン(レプチン)含有医薬組成物が提供される(Ann N Y Acad Sci.、1243,1529、2011;J Neurochem.、128(1)、162~172、2014;Clin Exp Pharmacol Physiol.、38(12)、905~913、2011)。
【0148】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、VEGFAである。VEGFAのアミノ酸配列(配列番号75)において、N末端から22、42、74、110、127、133、134、141、142、147、149、152、154、156、157、169、180、184、191、及び206に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、アンチエイジング、毛髪成長、傷痕、及び/又は血管形成に関連する疾患を予防及び/又は治療するための半減期が増加したVEGFAと、それを含む医薬組成物とが提供される。
【0149】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲刺激ホルモン前駆体、グレリン/オベスタチンプレプロホルモン(prepro-GHRL)である。食欲刺激ホルモン前駆体のアミノ酸配列(配列番号80)において、N末端から39、42、43、47、85、100、111、及び117に対応する位置におけるリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、半減期の増加を示す食欲刺激ホルモン前駆体が提供される。さらに、肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための置換食欲刺激ホルモン前駆体を含む医薬組成物が提供される。
【0150】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、食欲刺激ホルモン(グレリン)である。グレリンのアミノ酸配列(配列番号83)において、N末端から39、42、43、及び47に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。従って、半減期の増加した食欲刺激ホルモン(グレリン)が提供される。さらに、肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための置換グレリンを含む医薬組成物が提供される。
【0151】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)である。GLP-1のアミノ酸配列(配列番号92)において、N末端から117及び125に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、糖尿病を予防及び/又は治療するための半減期の増加したGLP-1と、それを含む医薬組成物とが提供される。
【0152】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、IgGである。IgG重鎖のアミノ酸配列(配列番号97)において、N末端から49、62、84、95、143、155、169、227、232、235、236、240、244、268、270、296、310、312、339、342、344、348、356、360、362、382、392、414、431、436、及び461に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、癌を予防及び/又は治療するための半減期の改善されたIgGと、それを含む医薬組成物とが提供される。
【0153】
本発明のさらに他の実施形態において、タンパク質は、IgGである。IgG軽鎖のアミノ酸配列(配列番号104)において、N末端から61、64、67、125、129、148、167、171、191、205、210、212、及び229に対応する位置における少なくとも1つのリジン残基がアルギニンで置換されている。結果として、癌を予防及び/又は治療するための半減期の改善されたIgGと、それを含む医薬組成物とが提供される。
【0154】
本発明において、タンパク質のアミノ酸配列のリジン残基をアルギニン(R)残基で置換するために特定部位の突然変異誘発が採用される。この方法によると、特定部位の突然変異誘発を生じるためにDNA配列を使用してプライマーセットが調製された後、変異体プラスミドDNAを生成する特定条件下でPCRが実施される。
【0155】
本発明において、ユビキチン化の程度は、免疫沈降を使用することにより、細胞株を標的タンパク質で形質移入することによって判定される。MG132試薬治療後に形質移入された細胞株中でユビキチン化レベルが上昇すると、標的タンパク質がユビキチン-プロテアソーム経路を通じて分解されると理解される。
【0156】
本発明の医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈内、又は筋肉内の投与を含む種々の方法を通じて体内に投与可能であり、注射型製剤として投与可能であることがより好ましい。さらに、本発明の医薬組成物は、その投与後に、有効成分の迅速、持続的、又は遅延的放出を行う当業者に周知の方法を使用して製剤化可能である。この製剤は、錠剤、ピル、粉体、小袋、エリキシル剤、懸濁液、乳液、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトタイプ及びハードタイプのゼラチンカプセル、無菌注射可能な溶液、無菌包装粉体等の形態であってもよい。好適なキャリア、賦形剤、希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、オキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。さらにこの製剤は、追加で、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、着香料、乳化剤、保存料等を含んでもよい。
【0157】
好適なキャリア、賦形剤、及び希釈剤の例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スターチ、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微小結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、オキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。さらにこの製剤は、追加で、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、着香料、乳化剤、保存料等を含んでもよい。
【0158】
本明細書において使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に否定をしていない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「含んでいる」「含む」「有している」「有する」「伴う」「等」又はこれらの活用形は、これらの用語が明細書及び/又は請求書のいずれかにおいて使用される程度において、限定的なものでなく、「含む」という用語と同様に包含的であることが意図されるものである。本発明において、「生体活性ポリペプチド又はタンパク質」とは、ヒトを含む哺乳動物への投与時、有用な生物学的活性を表す(ポリ)ペプチド又はタンパク質である。
【0159】
以下の実施例は、例示としての実施形態を提供するものである。本開示と当業者の一般的なレベルに鑑みて、当業者は、以下の実施例が単なる例示であることを意図されるものであり、本クレームの主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、及び代替が採用可能であることを理解するであろう。
【0160】
実施例1:β-トロフィンユビキチン化及び半減期延長の解析と細胞中のシグナル伝達の検討
【0161】
1.β-トロフィン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0162】
(1)β-トロフィン発現ベクタークローニング
【0163】
β-トロフィンのクローニングにトリゾール及びクロロホルムを使用してHepG2(ATCC、HB-8065)からRNAを精製及び抽出した。その後、SuperScript(商標)第1鎖cDNA合成系(Invitrogen, Grand Island、NY)を使用して、単一鎖DNAを合成した。上述の合成cDNAをテンプレートとして使用したPCRにより、β-トロフィンを増幅した。得られたβ-トロフィンDNA増幅生成物をBamHI及びEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-myc(5.6kb)ベクターに連結した(
図1、β-トロフィンアミノ酸配列:配列番号1)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図2)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。
図1中下線太字のヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図2)。タンパク質発現の分析のため、
図1のマップ中のpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、β-トロフィンタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図3)。
【0164】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0165】
リジン残基は、特定部位の突然変異誘発を使用してアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRには以下のプライマーセットを使用した。
【0166】
(β-トロフィンK52R)FP5’-AGGGACGGCTGACAAGGGCCAGGAA-3’(配列番号2)、RP5’-CCAGGCTGTTCCTGGCCCTTGT CAGC-3’(配列番号3);
【0167】
(β-トロフィンK124R)FP 5’-GGCACAGAGGGTGCTACGGGACAGC-3’(配列番号4)、RP5’-CGTAGCACCCTCTGTGCCTGGGCCA-3’(配列番号5);
【0168】
(β-トロフィンK153R)FP5’-GAATTTGAGGTCTTAAGGGCTCACGC-3’(配列番号6)、RP5’-CTTGTC AGCGTGAGCCCTTAAGACCTC-3’(配列番号7);及び
【0169】
(β-トロフィンK158R)FP5’-GCTCACGCTGACAGGCAGAGCCACAT-3’(配列番号8)、RP5’-CCATAGGATGTGGCTCTGCCTGTCAGC-3’(配列番号9)。
【0170】
pcDNA3-myc-β-トロフィンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを調製した(表1)。
【0171】
【0172】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0173】
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-β-トロフィンWT及びpMT123-HA-ユビキチン(J Biol Chem.、279(4)、2368-2376、2004;Cell Research、22、873885、2012;Oncogene、22、12731280、2003;Cell、78、787-798、1994)を導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-β-トロフィンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン 1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図4)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図5)。免疫沈降のために得られたタンパク質サンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。続いて、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズとの反応後、免疫沈降物を分離した。次に、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0174】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(Santa Cruz Biotechnology、sc-7392)、及び抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology、sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系(Western blot detection kit、ABfrontier、Seoul、Korea)で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-β-トロフィンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが生成された(
図4、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが示された(
図4、レーン4)。pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)に関して、野生型よりバンドが弱かった。これらの結果は、ユビキチンが変異体プラスミドと結合しなかったため、検出されるユビキチンの量が少なかったことを提示している(
図5、レーン3、5、及び6)。これらの結果は、β-トロフィンがまずユビキチンに結合した後、ポリ-ユビキチン鎖に結合し、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
【0175】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したβ-トロフィン半減期のアセスメント
【0176】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後20分、40分、及び60分で検出した。結果として、ヒトのβ-トロフィンの分解が観察された(
図6)。ヒトのβ-トロフィンの半減期は、1時間未満であったが、βトロフィン変異体(K62R)及びβトロフィン変異体(K158R)の半減期は、
図6に示される通り、1時間以上に延長された。
【0177】
4.細胞中のβ-トロフィン及び置換β-トロフィンによるシグナル伝達
【0178】
マウスの肝臓中の一過性発現β-トロフィンが膵臓β細胞増殖を触媒することが報告されている(Cell、153、747~758、2013)。この実験において、我々は、細胞中のβ-トロフィンと置換β-トロフィンとによるシグナル伝達について検討した。まず、PANC-1細胞(ATCC、CRL-1469)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(158R)を使用して導入した。導入から2日後、タンパク質を細胞から抽出して定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。この目的のために、各々、pcDNA3-myc-β-トロフィンWT、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K158R)を導入したPANC-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。その後、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(Santa Cruz Biotechnology、sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology、sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K62R)、pcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K124R)、及びpcDNA3-myc-β-トロフィン変異体(K153R)は、野生型と比較して、PANC-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図7)。
【0179】
【0180】
実施例2:成長ホルモンのユビキチン化及び半減期延長の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0181】
1.GH発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0182】
(1)GH発現ベクタークローニング
【0183】
PCRで増幅したGH DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCS4-フラグベクター(4.3kb、Oncotarget.、7(12)、14441-14457、2016)に連結した(
図8、GHアミノ酸配列:配列番号10)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図9)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;60℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。
図8中下線太字のヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図9)。タンパク質発現の分析のため、
図8のマップ中のpCS4-フラグベクターのフラグに対する抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)抗体により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、成長ホルモンがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図10)。
【0184】
【0185】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0186】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0187】
(GH K67R)FP5’-CCAAAGGAACAGAGGTATTCATTC-3’(配列番号11)、RP5’-CAGGAATGAATACCTCTGTTCCTT-3’(配列番号12);
【0188】
(GH K141R)FP5’-GACCTCCTAAGGGACCTAGAG-3’(配列番号13)、RP5’-CTCTAGGTCCCTTAGGAGGTC-3’(配列番号14);および
【0189】
(GH K166R)FP5’-CAGATCTTCAGGCAGACCTAC-3’(配列番号15)、RP5’-GTAGGTCTGCCTGAAGATCTG-3’(配列番号16)
【0190】
pcDNA3-myc-β-成長ホルモンをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つの変異体プラスミドDNAを生成した(表2)。
【0191】
【0192】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0193】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCS4-フラグ-GH WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCS4-フラグ-GH WT2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図11)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCS4-フラグ-GH WT、pCS4-フラグ-GH変異体(K67R)、pCS4-フラグ-GH変異体(K141R)、pCS4-フラグ-GH変異体(K166R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルのアセスメントのために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を共導入した。次に、導入後24時間で、免疫沈降を実施した(
図12)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。続いて、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズとの反応後、免疫沈降物を分離した。その後、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0194】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗フラグ(Sigma-aldrich、F3165)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCS4-フラグ-成長ホルモンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが生成された(
図11、レーン2及び3)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図11、レーン3)。さらに、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)に関して、野生型と比較して、バンドが弱かった(
図12、レーン3~5)。これらの結果は、ユビキチンが変異体プラスミドと結合しなかったため、検出されるユビキチンの量が少なかったことを提示している。これらの結果は、β-トロフィンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
【0195】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用した成長ホルモン半減期の解析
【0196】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を同合成阻害剤による処理後1時間、2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトの成長ホルモンの分解が観察された(
図13)。ヒトの成長ホルモンの半減期は、2時間未満であったが、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)の半減期は、
図13に示される通り、8時間以上に延長された。
【0197】
4.細胞中の成長ホルモン及び置換成長ホルモンによるシグナル伝達
【0198】
成長ホルモンがタンパク質のSTAT(シグナル伝達物質及び転写の活性化因子)の転写を制御することが報告されている(Oncogene、19、2585~2597、2000)。この実験において、我々は、細胞中の成長ホルモンと置換成長ホルモンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HEK293T細胞に、各々、3μgのpCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入した。導入から1日後、超音波処理により、細胞溶解からタンパク質を得た。PANC-1細胞(ATCC、CRL-1469)をPBSで7回洗浄した後、以上のように得られたタンパク質を3μg使用して導入を行った。細胞中のシグナル伝達の解析のために、ウェスタンブロットを実施した。この目的のために、各々、pCS4-フラグ-成長ホルモンWT、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)、及びpCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K166R)を導入したPANC-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K141R)は、pCS4-フラグ-成長ホルモンWTと比較して、PANC-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示し、pCS4-フラグ-成長ホルモン変異体(K67R)は、コントロールと比較して、リン酸化STAT3の伝達が増加を示した(
図14)。
【0199】
【0200】
実施例3:インスリンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0201】
1.インスリン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0202】
(1)インスリン発現ベクタークローニング
【0203】
PCRによるインスリンDNA増幅生成物をBamHI及びEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図15、インスリンアミノ酸配列:配列番号17)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図16)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;60℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。
図15中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図16)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図15のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、インスリンがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図17)。
【0204】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0205】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0206】
(インスリン K53R)FP5’-GGCTTCTTCTACACACCCAGGACCC-3’(配列番号18)、RP5’-CTCCCGGCGGGTCCTGGGTGTGTA-3’(配列番号19);および
【0207】
(インスリン K88R)FP5’-TCCCTGCAGAGGCGTGGCATTGT-3’(配列番号20)、RP5’-TTGTTCCACAATGCCACGCCTCTGC AG-3’(配列番号21)
【0208】
pcDNA3-myc-インスリンをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表3)。
【0209】
【0210】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0211】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インスリンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、cDNA3-myc-インスリンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図18)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。さらに、ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図19)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0212】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インスリンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強い結合を検出した(
図18、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図18、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)に関して、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図19、レーン3)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを教示している。
【0213】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインスリン半減期の解析
【0214】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのインスリンの分解が観察された(
図20)。その結果、ヒトのインスリンの半減期は、30分未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)の半減期は、
図20に示される通り、1時間以上に延長された。
【0215】
4.細胞中のインスリン及び置換インスリンによるシグナル伝達
【0216】
インスリンが肝臓中のSTATリン酸化反応を刺激することにより、肝臓中のグルコース恒常性を制御することが報告されている(Cell Metab.、3、267275、2006)。この実験において、我々は、細胞中のインスリンと置換インスリンとによるシグナル伝達について検討した。まず、PANC-1細胞及びHepG2細胞をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入した。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インスリンWT、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)、及びpcDNA3-myc-インスリン変異体(K88R)を導入したPANC-1細胞及びHePG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インスリン変異体(K53R)は、pcDNA3-myc-インスリンWTと比較して、PANC-1細胞及びHePG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図21)。
【0217】
【0218】
実施例4:インターフェロン-αのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0219】
1.インターフェロン-α発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0220】
(1)インターフェロン-α発現ベクタークローニング
【0221】
PCRで増幅されたインターフェロン-α DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図22、インターフェロン-αアミノ酸配列:配列番号22)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図23)。
図22中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図23)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図22のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したインターフェロン-αタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図24)。
【0222】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0223】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0224】
(IFN-α K93R)FP5’-CTTCAGCACAAGGGACTCATC-3’(配列番号23)、RP5’-CAGATGAGTCCCTTGTGCTGA-3’(配列番号24)
【0225】
(IFN-α K106R)FP5’-CTCCTAGACAGATTCTACACT-3’(配列番号25)、RP5’-AGTGTAGAATCTGTCTAGGAG-3’(配列番号26)
【0226】
(IFN-α K144R)FP5’-GCTGTGAGGAGATACTTCCAA-3’(配列番号27)、RP5’-TTGGAAGTATCTCCTCACAGC-3’(配列番号28);および
【0227】
(IFN-α K154R)P5’-CTCTATCTGAGAGAGAAGAAA-3’(配列番号29)、RP5’-TTTCTTCTCTCTCAGATAGAG-3’(配列番号30))
【0228】
pcDNA3-myc-インターフェロン-αをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表4)。
【0229】
【0230】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0231】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-インターフェロン-α WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン DNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図25)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-α WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図26)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0232】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インターフェロン-αWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を生成することにより、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドが検出された(
図25、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドを生成した(
図25、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)に関して、変異体プラスミドがユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図26、レーン3~6)。これらの結果は、インターフェロン-αがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
【0233】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインターフェロン-α半減期のアセスメント
【0234】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後1日及び2日で検出した。結果として、ヒトのインターフェロン-αの分解が観察された(
図27)。ヒトのインターフェロン-αの半減期は、1日未満であったが、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)の半減期は、
図27に示される通り、2日以上に延長された。
【0235】
4.細胞中のインターフェロン-α及び置換インターフェロン-αによるシグナル伝達
【0236】
IFN-αがSTAT-1、STA-2、及びSTA-3(J Immunol.、187、2578~2585、2011)を増強し、IFN-αが黒色腫瘍形成に寄与するSTAT3タンパク質を活性化することが報告されている(Eur J Cancer、45、1315~1323、2009)。この実験において、我々は、細胞中のインターフェロン-αと置換インターフェロン-αとによるシグナル伝達について検討した。まず、THP-1細胞(ATCC、TIB-202)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-αWT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入した。導入から1日後及び2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インターフェロン-αWT、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)を導入したTHP-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K93R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K106R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K144R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-α変異体(K154R)は、pcDNA3-myc-インターフェロン-αWTと比較して、THP-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図28)。
【0237】
【0238】
実施例5:G-CSFのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0239】
1.G-CSF発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0240】
(1)G-CSF発現ベクタークローニング
【0241】
PCRで増幅されたG-CSF DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図29、G-CSFアミノ酸配列:配列番号31)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図30)。
図29中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図30)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図29のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したG-CSFタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図31)。
【0242】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0243】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0244】
(G-CSF K46R)FP5’-AGCTTCCTGCTCAGGTGCTTAGAG-3’(配列番号32)、RP5’-TTGCTCTAAGCACCTGAGCAGGAA-3’(配列番号33);および
【0245】
(G-CSF K73R)FP5’-TGTGCCACCTACAGGCTGTGCCAC-3’(配列番号34)、RP5’-GGGGTGGCACAGCCTGTAGGTGGC-3’(配列番号35)
【0246】
pcDNA3-myc-G-CSFをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表5)。
【0247】
【0248】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0249】
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-G-CSF WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-G-CSF WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図32)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-GCSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF(K73R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図33)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0250】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA-myc-G-CSF WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図32、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドを生成した(
図32、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-G-CSF(K73R)に関して、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されるユビキチンの量が少なかった(
図33、レーン4)。これらの結果は、G-CSFがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
【0251】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したG-CSF半減期のアセスメント
【0252】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後4時間、8時間、及び16時間で検出した。結果として、ヒトのG-CSFの分解が観察された(
図34)。ヒトのG-CSFの半減期は、約4時間であり、ヒトの置換G-CSF(K73R)の半減期は、
図34に示される通り、16時間以上に延長された。
【0253】
4.細胞中のG-CSF及び置換G-CSFによるシグナル伝達
【0254】
G-CSFがグリオーマ細胞中のSTAT3を活性化することにより、グリオーマ成長に関与することが報告されている(Cancer Biol Ther.、13(6)、389~400、2012)。さらに、卵巣上皮癌細胞中にG-CSFが発現し、JAK2/STAT3経路を調節することにより、病理学的に女性の子宮癌に関連することが報告されている(Br J Cancer、110、133~145、2014)。この実験において、我々は、細胞中のG-CSFと置換G-CSFとによるシグナル伝達について検討した。まず、THP-1細胞(ATCC、TIB-202)をPBSで7回洗浄した後、各々、3μgのpcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入した。導入から1日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-G-CSF WT、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)、及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)を導入したTHP-1細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-G-CSF変異体(K46R)及びpcDNA3-myc-G-CSF変異体(K73R)は、野生型と比較して、THP-1細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図35)。
【0255】
【0256】
実施例6:インターフェロン-βのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0257】
1.インターフェロン-β発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0258】
(1)インターフェロン-β発現ベクタークローニング
【0259】
PCRで増幅されたインターフェロン-β DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図36、インターフェロン-βアミノ酸配列:配列番号36)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図37)。
図36中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図37)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて50秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図36のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したインターフェロン-βがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図38)。さらに、インターフェロン-βに関しては、グリコシル化により、細胞中に2種の発現バンドが生成された。経路を遮断する500部のPNGase F(New England Biolabs Inc.、P0704S)で細胞を処理した後、1つのみのバンドが検出された(
図38)。
【0260】
【0261】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0262】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0263】
(IFN-β K40R)FP5’-CAGTGTCAGAGGCTCCTGTGG-3’(配列番号37)、RP5’-CCACAGGAGCCTCTGACACTG-3’(配列番号38);
【0264】
(INF-β K126R)FP5’-CTGGAAGAAAGACTGGAGAAA-3’(配列番号39)、RP5’-TTTCTCCAGTCTTTCTTCCAG-3’(配列番号40);および
【0265】
(IFN-β K155R)FP5’-CATTACCTGAGGGCCAAGGAG-3’(配列番号41)、RP5’-CTCCTTGGCCCTCAGGTAATG-3’(配列番号42)
【0266】
pcDNA3-myc-インターフェロン-βをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表6)。
【0267】
【0268】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0269】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-インターフェロン-β WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図39)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(155R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図40)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-インターフェロン-β WTと結合させることにより、ポリユビキチン化を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図39、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図39、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)に関して、野生型と比較してバンドが弱く、変異体のプラスミドがユビキチンと結合しなかったため、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図40、レーン3~5)。これらの結果は、インターフェロン-βがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
【0270】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したインターフェロン-β半減期のアセスメント
【0271】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期をタンパク質合成阻害剤による処理後4時間及び8時間で検出した。結果として、ヒトのインターフェロン-βの分解が観察された(
図41)。ヒトのインターフェロン-βの半減期は、4時間未満であったが、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)の半減期は、
図41に示される通り、8時間以上に延長された。
【0272】
4.細胞中のインターフェロン-β及び置換インターフェロン-βによるシグナル伝達
【0273】
AKTを含むシグナル経路の活性化が、IFN-β処理細胞によって誘発されることが報告されている(Pharmaceuticals(Basel)、3、994~1015、2010)。この実験において、我々は、細胞中のインターフェロン-βと置換インターフェロン-βとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を使用して導入を行った。導入から1日後、超音波処理により、HepG2細胞溶解からタンパク質を得た後、PBSで7回洗浄したHepG2細胞に導入した。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-インターフェロン-β WT、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、抗AKT(H-136、sc-8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K40R)、pcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K126R)、及びpcDNA3-myc-インターフェロン-β変異体(K155R)は、野生型と比較して、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)中のリン酸化AKTシグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図42)。
【0274】
【0275】
実施例7:エリスロポエチン(EPO)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0276】
1.エリスロポエチン(EPO)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0277】
(1)エリスロポエチン(EPO)発現ベクタークローニング
【0278】
PCRで増幅されたエリスロポエチン(EPO)DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図43、エリスロポエチンアミノ酸配列:配列番号43)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図44)。
図43中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図44)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図43のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したEPOタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図45)。
【0279】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0280】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0281】
(EPO K124R)FP5’-GCATGTGGATAGAGCCGTCAGTGC-3’(配列番号44)、RP5’-GCACTGACGGCTCTATCCACATGC-3’(配列番号45);
【0282】
(EPO K167R)FP5’-TGACACTTTCCGCAGACTCTTCCGAGTCTAC-3’(配列番号46)、RP5’-GTAGACTCGGAAGAGTCTGCGGAAAGTGTCA-3’(配列番号47);
【0283】
(EPO K179R)FP5’-CTCCGGGGAAGGCTGAAGCTG-3’(配列番号48)、RP5’-CAGCTTCAGCCTTCCC CGGAG-3’(配列番号49);および
【0284】
(EPO K181R)FP5’-GGAAAGCTGAGGCTGTACACAGG-3’(配列番号50)、RP5’-CCTGTGTACAGCCTCAGCTTTCC-3’(配列番号51)
【0285】
pcDNA3-myc-EPOをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表7)。
【0286】
【0287】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0288】
HEK293T細胞(ATCC、CRL-3216)に、プラスミドコードpcDNA3-myc-EPO WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-EPO WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチン1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図46)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO(K179R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図47)
【0289】
免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(Santa Cruz Biotechnology、sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-EPO WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを生成した(
図46、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図46、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)に関して、変異体(K181R)がユビキチンと結合しなかったため、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図47、レーン6)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを説明している。
【0290】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したエリスロポエチン半減期のアセスメント
【0291】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのエリスロポエチンの分解が観察された(
図48)。ヒトのエリスロポエチン(EPO)の半減期は、4時間未満であったが、pcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)の半減期は、
図48に示される通り、8時間以上に延長された。
【0292】
4.細胞中のエリスロポエチン(EPO)及び置換エリスロポエチン(EPO)によるシグナル伝達
【0293】
EPOが投与されると、Erk1/2リン酸化反応を通じて細胞周期進行を調節することにより、低酸素症に効果を有することが報告されている(J Hematol Oncol.、6、65、2013)。この実験において、我々は、細胞中のエリスロポエチン(EPO)とエリスロポエチン(EPO)変異体とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-EPO WT、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗Erk1/2(9B3、Abfrontier LF-MA0134)、抗リン酸化Erk1/2(Thr202/Try204、Abfrontier LF-PA0090)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-EPO変異体(K124R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K167R)、pcDNA3-myc-EPO変異体(K179R)、及びpcDNA3-myc-EPO変異体(K181R)は、pcDNA3-myc-EPO野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化Erk1/2シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図49)。
【0294】
【0295】
実施例8:骨形成タンパク質2(BMP2)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0296】
1.骨形成タンパク質2(BMP2)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0297】
(1)骨形成タンパク質2(BMP2)発現ベクタークローニング
【0298】
PCRで増幅された骨形成タンパク質2(BMP2)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図50、BMP2アミノ酸配列:配列番号52)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図51)。
図50中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図51)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図50のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したBMP2タンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図52)。
【0299】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0300】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0301】
(BMP2 K293R)FP5’-GAAACGCCTTAGGTCCAGCTGTAAGAGAC-3’(配列番号53)、RP5’-GTCTCTTACAGCTGGACCTAAGGCGTTTC3’(配列番号54);
【0302】
(BMP2 K297R)FP5’-TTAAGTCCAGCTGTAGGAGACACCCTTTGT-3’(配列番号55)、RP5’-ACAAAGG GTGTCTCCTACAGCTGGACTTAA-3’(配列番号56);
【0303】
(BMP2 K355R)FP5’-GTTAACTCTAGGATTCCTAAGGC-3’(配列番号57)、RP5’-GCCTTAGGAATCCTAGAGTTAAC-3’(配列番号58);および
【0304】
(BMP2 K383R)FP5’-GGTTGTATTAAGGAACTATCAGGAC-3’(配列番号59)、RP5’-GTCCTGATAGTTCCTTAATACAACC-3’(配列番号60)
【0305】
pcDNA3-myc-BMP2をテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)5つのプラスミドDNAを生成した(表8)。
【0306】
【0307】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0308】
HEK293T細胞に、pcDNA3-myc-BMP2 WT及びプラスミドコードpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-BMP2 WT2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図53)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-BMP2 WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-BMP2 WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K62R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K124R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K153R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K158R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図54)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-BMP2 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図53、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン化形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図53、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)に関して、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図54、レーン3~5)。これらの結果は、BMP2がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
【0309】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したBMP2半減期のアセスメント
【0310】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後4時間及び8時間で検出した。結果として、ヒトのBMP2の分解が観察された(
図55)。ヒトのBMP2の半減期は、2時間未満であったが、ヒトpcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)の半減期は、
図55に示される通り、4時間以上に延長された。
【0311】
4.細胞中のBMP2及び置換BMP2によるシグナル伝達
【0312】
骨形成タンパク質-2(BMP2)は、種々の骨髄腫細胞中のSTAT3を不活性化することにより、アポトーシスを誘発することが知られている(Blood、96、2005~2011、2000)。この実験において、我々は、細胞中のBMP2と置換BMP2とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-BMP2WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-BMP2WT、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動した。次に、抗ウサギと抗マウス2次抗体と、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K293R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K297R)、pcDNA3-myc-BMP2変異体(K355R)、及びpcDNA3-myc-BMP2変異体(K383R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図56)。
【0313】
【0314】
実施例9:線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0315】
1.線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0316】
(1)線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)発現ベクタークローニング
【0317】
PCRで増幅された線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)DNAをKpnI及びXhaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(
図57、FGF-1アミノ酸配列:配列番号61)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図58)。
図57中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図58)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図57のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したFGF-1がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図59)。
【0318】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0319】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0320】
(FGF-1 K27R)FP5’-AAGAAGCCCAGACTCCTCTAC-3’(配列番号62)、RP5’-GTAGAGGAGTCTGGGCTTCTT-3’(配列番号63);および
【0321】
(FGF-1 K120R)FP5’-CATGCAGAGAGGAATTGGTTT-3’(配列番号64)、RP5’-AAACCAATTCCTCTCTGCATG-3’(配列番号65)
【0322】
pCMV3-myc-FGF-1をテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表9)。
【0323】
【0324】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0325】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-FGF-1 WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-FGF-1 WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図60)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-C-myc-FGF-1(K120R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図61)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。
【0326】
2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-FGF-1 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図60、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図60、レーン4)。さらに、pCMV3-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-myc-FGF-1変異体(K120R)に関して、pCMV3-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-myc-FGF-1変異体(K120R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図61、レーン3及び4)。これらの結果は、FGF-1がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
【0327】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したFGF-1半減期のアセスメント
【0328】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCMV3-C-myc-FGF-1WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後24時間、及び36時間で検出した。結果として、ヒトのFGF-1の分解が観察された(
図62)。ヒトのFGF-1の半減期は、1日未満であったが、ヒトのpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及び、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)の半減期は、
図62に示される通り、1日以上に延長された。
【0329】
4.細胞中のFGF-1及び置換FGF-1によるシグナル伝達
【0330】
HEK293細胞が組換FGF-1で処理されるとき、Erk1/2リン酸化反応が増加することが報告されている(Nature、513(7518)、436~439、2014)。この実験において、我々は、細胞中のFGF-1と置換FGF-1とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-FGF-1 WT、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)、及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗Erk1/2(9B3、Abfrontier LF-MA0134)、抗リン酸化Erk1/2(Thr202/Try204、Abfrontier LF-PA0090)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K27R)及びpCMV3-C-myc-FGF-1変異体(K120R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化ERK1/2シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図63)。
【0331】
【0332】
実施例10:レプチンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0333】
1.レプチン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0334】
(1)レプチン発現ベクタークローニング
【0335】
PCRで増幅されたレプチンDNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(
図64、レプチンアミノ酸配列:配列番号66)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図65)。
図64中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図65)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて45秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図64のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したレプチンタンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図66)。
【0336】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0337】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0338】
(レプチン K26R)FP5’-CCCATCCAAAAGGTCCAAGAT-3’(配列番号67)、RP5’- ATCTTGGACCTTTTGGATGGG-3’(配列番号68);
【0339】
(レプチン K32R)FP5’-GATGACACCAAGACCCTCATC-3’(配列番号69)、RP 5’-GATGAGGGTCTTGGTGTCATC-3’ (配列番号70);
【0340】
(レプチン K36R)FP5’-ACCCTCATCAGGACAATTGTC-3’(配列番号71)、RP5’-GACAATTGTCCTGATGAGGGT-3’(配列番号72);および
【0341】
(レプチン K74R)FP5’-ACCTTATCCAGGATGGACCAG-3’(配列番号73)、RP5’-CTGGTCCATCCTGGATAAGGT-3’(配列番号74)
【0342】
pCMV3-C-myc-レプチンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表10)。
【0343】
【0344】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0345】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-レプチンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-レプチンWT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図67)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図68)。免疫沈降のために得られたタンパク質を、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-レプチンWTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図67、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図67、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変更体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図68、レーン3、5、及び6)。これらの結果は、インスリンがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを示している。
【0346】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したレプチン半減期のアセスメント
【0347】
HEK293T細胞に、各々、6μgのpCMV3-C-myc-レプチンWT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのレプチンの分解が観察された(
図69)。ヒトのレプチンの半減期は、約4時間であり、ヒトのpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)の半減期は、
図69に示される通り、8時間以上に延長された。
【0348】
4.細胞中のレプチン及び置換レプチンによるシグナル伝達
【0349】
レプチンが乳癌細胞中のAKTリン酸化反応を増進することが報告されており(Cancer Biol Ther.、16(8)、1220~1230、2015)、またPI3K/AKTシグナル伝達子宮癌を通じて癌細胞の成長を刺激することが報告されている(Int J Oncol.、49(2)、847、2016)。この実験において、我々は、細胞中のレプチンと置換レプチンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-レプチン WT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-レプチン WT、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギと抗マウスのとの2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗AKT(H-136、sc8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K26R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K32R)、pCMV3-C-myc-レプチン変異体(K36R)、及びpCMV3-C-myc-レプチン変異体(K74R)は、コントロールと比較して、HepG2細胞中のリン酸化Erk1/2シグナル伝達が著しい増加を示した(
図70)。
【0350】
【0351】
実施例11:血管内皮成長因子A(VEGFA)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0352】
1.血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0353】
(1)血管内皮成長因子A(VEGFA)発現ベクタークローニング
【0354】
PCRで増幅された血管内皮成長因子A(VEGFA)DNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(
図71、VEGFAアミノ酸配列:配列番号75)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図72)。
図71中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図72)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて1分間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図71のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したVEGFAがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図73)。
【0355】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0356】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0357】
(VEGFA K127R)FP5’-TACAGCACAACAGATGTGAATGCAGACC-3’(配列番号76)、RP5’-GGTCTGCATTCACATCTGTTGTGCTGTA-3’(配列番号77);および
【0358】
(VEGFA K180R)FP5’-ATCCGCAGACGTGTAGATGTTCCTGCA-3’(配列番号78)、RP5’-TGCAGGAACATCTACACGTCTGCGGAT-3’(配列番号79)
【0359】
pCMV3-C-myc-VEGFA DNAをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表11)。
【0360】
【0361】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0362】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-VEGFA WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-VEGFA WT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図74)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図75)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。
【0363】
分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-VEGFA WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図74、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図74、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図75、レーン3及び4)。これらの結果は、VEGFAがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
【0364】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したVEGFA半減期のアセスメント
【0365】
HEK293T細胞に、各々、6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのVEGFAの分解が観察された(
図76)。ヒトのVEGFAの半減期は、2時間未満であったが、ヒトのpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)の半減期は、
図76に示される通り、4時間以上に延長された。
【0366】
4.細胞中のVEGFA及び置換VEGFAによるシグナル伝達の検討
【0367】
VEGFAは、内皮細胞の成長及び増殖に関連し、癌細胞中の血管形成において機能する一方で、PI3K/Akt/HIF-1α経路(Carcinogenesis、34、426~435、2013)に関与する。さらに、VEGFは、AKTリン酸化反応を誘発する(Kidney Int.、68、1648~1659、2005)。この実験において、我々は、細胞中のVEGFAと置換VEGFAとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-VEGFA WT、pCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)、及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、抗AKT(H-136、sc-8312)、抗リン酸化AKT(S473、Cell Signaling 9271s)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K127R)及びpCMV3-C-myc-VEGFA変異体(K180R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3及びリン酸化AKTシグナル伝達が同じであったか、増加を示した(
図77)。
【0368】
【0369】
実施例12:食欲刺激ホルモン前駆体(グレリン/オベスタチンプレプロホルモン;prepro-GHRL)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0370】
1.prepro-GHRL発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0371】
(1)prepro-GHRL発現ベクタークローニング
【0372】
PCRで増幅されたprepro-GHRL DNAをKpnI及びXbaIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpCMV3-C-mycベクター(6.1kb)に連結した(
図78、prepro-GHRLアミノ酸配列:配列番号80)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図79)。
図78中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図79)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて30秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図78のマップ中に示されるpCMV3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合した食欲刺激ホルモン前駆体タンパク質がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図80)。
【0373】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0374】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0375】
(prepro-GHRL K100R)FP5’-GCCCTGGGGAGGTTTCTTCAG-3’(配列番号81)、RP5’-CTGAAGAAACCTCCCCAGGGC-3’(配列番号82)
【0376】
pCMV3-C-myc-prepro-GHRLをテンプレートとして使用することにより、リジン残基がアルギニンで置換された(K→R)プラスミドDNAを生成した(表12)。
【0377】
【0378】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0379】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT 6μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図81)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各6μgのpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図82)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpCMV3-C-myc-VEGFA WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図81、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図81、レーン4)。さらに、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)に関して、pCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図82、レーン3)。これらの結果は、prepro-GHRLがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを示している。
【0380】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したprepro-GHRL半減期のアセスメント
【0381】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpCMV3-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのprepro-GHRLの分解が観察された(
図83)。ヒトのprepro-GHRLの半減期は、2時間未満であったが、pCMV3-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)の半減期は、
図83に示される通り、2時間以上に延長された。
【0382】
4.細胞中のprepro-GHRL及び置換prepro-GHRLによるシグナル伝達
【0383】
食欲刺激ホルモン前駆体が成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて細胞成長を調節し、インビボにおけるカルシウム調節を通じてSTAT3を増進することが報告されている(Mol Cell Endocrinol.、285、19~25、2008)。この実験において、我々は、細胞中のprepro-GHRLと置換prepro-GHRLとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pCMV3-C-myc-prepro-GHRL WT及びpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)を導入したHepG2細胞(ATCC、AB-8065)から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpCMV3-C-myc-prepro-GHRL変異体(K100R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、増加を示した(
図84)。
【0384】
【0385】
実施例13:グレリンのユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0386】
1.グレリン発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0387】
(1)グレリン発現ベクタークローニング
【0388】
PCRで増幅された食欲刺激ホルモン(グレリン)DNAをBamHI及びXhoIIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図85、グレリンアミノ酸配列:配列番号83)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図86)。
図85中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図86)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて20秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図85のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合した食欲刺激ホルモン(グレリン)pcDNA3-mycがよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図87)。
【0389】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0390】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0391】
(グレリン K39R FP)5’-AGTCCAGCAGAGAAGGGAGTCGAAGAAGCCA-3’(配列番号84)、RP5’-TGGCTTCTTCGACTCCCT TCTCTGCTGGACT-3’(配列番号85);
【0392】
(グレリン K42R)FP5’-AGAAAGGAGTCGAGGAAGCCACCAGCCAAGC-3’(配列番号86)、RP 5’-GCT TGGCTGGTGGCTTCCTCGACTCCTTTCT-3’(配列番号87);
【0393】
(グレリン K43R FP)5’-AGAAAGGAGTCGAAGAGGCCACCAGC CAAGC-3’(配列番号88), RP 5’-GCTTGGCTGGTGGCCTCTTCGACTCCTTTCT-3’(配列番号89);および
【0394】
(グレリン K47R)FP5’-AAGAAGCCACC AGCCAGGCTGCAGCCCCGA-3’(配列番号90)、RP5’-TCGGGGCTGCAGCCTGGCTGGTGGCTTCTT-3’(配列番号91)
【0395】
pcDNA3-myc-グレリンをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)4つのプラスミドDNAを生成した(表13)。
【0396】
【0397】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0398】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-グレリンWT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-グレリンWT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図88)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-グレリン WT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図89)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-グレリン WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図88、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図88、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図89、レーン3~6)。これらの結果は、prepro-GHRLがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン化を通じて分解されることを表している。
【0399】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したグレリン半減期のアセスメント
【0400】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後12時間、24時間、及び36時間で検出した。結果として、ヒトのグレリンの分解が観察された(
図90)。ヒトのグレリンの半減期は、15時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)の半減期は、
図90に示される通り、36時間以上に延長された。
【0401】
4.細胞中のグレリン及び置換グレリンによるシグナル伝達
【0402】
食欲刺激ホルモンが成長ホルモン分泌促進受容体(GHS-R)を通じて細胞成長を調節し、インビボにおけるカルシウム調節を通じてSTAT3を増加させることが報告されている(Mol Cell Endocrinol.、285、19~25、2008)。この実験において、我々は、細胞中のグレリンと置換グレリンとによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞(ATCC、AB-8065)を8時間飢えさせた後、各々、3μgのpcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-グレリンWT、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K42R)、pcDNA3-myc-グレリン変異体(K43R)、及びpcDNA3-myc-グレリン変異体(K47R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果としてpcDNA3-myc-グレリン変異体(K39R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、増加を示した(
図91)。
【0403】
【0404】
実施例14:グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0405】
1.グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0406】
(1)グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)発現ベクタークローニング
【0407】
PCRで増幅されたグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)DNAをEcoRIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図92、GLP-1アミノ酸配列:配列番号92)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図93)。
図92中下線太字で示すヌクレオチド配列は、クローニング部位を確認するためのPCRに使用されるプライマーセットを示している(
図93)。PCR条件は以下の通りである。ステップ1:94℃にて3分間(1周期);ステップ2:94℃にて30秒間;58℃にて30秒間;72℃にて20秒間(25周期);ステップ3:72℃にて10分間(1周期)、その後、4℃に保持した。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図92のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したGLP-1がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図94)。
【0408】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0409】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0410】
(GLP-1 K117R)FP5’-AAGCTGCCAGGGAATTCA-3’(配列番号93)、RP5’-TGAATTCCCTGGCAGCTT-3’(配列番号94);および
【0411】
(GLP-1 K125R)FP5’-TTGGCTGGTGAGAGGCC-3’(配列番号95),RP5’-GGCCTCTCACCAGCCAA-3’(配列番号96)
【0412】
pcDNA3-myc-GLP-1をテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)2つのプラスミドDNAを生成した(表15)。
【0413】
【0414】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0415】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-GLP-1WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-GLP-1WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図95)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、pcDNA3-myc-GLP-1(K125R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図96)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-GLP-1 WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図95、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図95、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図96、レーン3及び4)。これらの結果は、GLP-1がまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
【0416】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したGLP-1半減期のアセスメント
【0417】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのGLP-1の分解が観察された(
図97)。ヒトのGLP-1の半減期は、約2時間であり、ヒトのpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)の半減期は、
図97に示される通り、4時間以上に延長された。
【0418】
4.細胞中のGLP-1及び置換GLP-1によるシグナル伝達の検討
【0419】
GLP-1は、グルコース恒常性を調節してインスリン感度を増進するため、糖尿病の治療に使用可能であり、STAT3活性を誘発可能である(Biochem Biophy Res Commun.、425(2)、304~308、2012)。この実験において、我々は、細胞中のGLP-1と置換GLP-1とによるシグナル伝達について検討した。まず、HepG2細胞を8時間飢えさせた後、各々、6μgのpcDNA3-myc-GLP-1 WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を使用して導入を行った。導入から2日後、細胞からタンパク質を抽出し、定量化した。細胞中のシグナル伝達の分析には、ウェスタンブロット法を使用した。pcDNA3-myc-GLP-1WT、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)、及びpcDNA3-myc-GLP-1変異体(K125R)を導入したHepG2細胞から分離したタンパク質をPVDF膜に移動させた。次に、抗ウサギ(ヤギ抗ウサギIgG-HRP、Santa Cruz Biotechnology、sc-2004)と抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、Santa Cruz Biotechnology、sc-40)、抗STAT3(sc-21876)、抗リン酸化STAT3(Y705、Cell Signaling 9131S)、及び抗βアクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、タンパク質をECL系で展開した。結果として、pcDNA3-myc-GLP-1変異体(K117R)は、野生型と比較して、HepG2細胞中のリン酸化STAT3シグナル伝達が同じであったか、又は増加を示した(
図98)。
【0420】
【0421】
実施例15:IgG重鎖のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0422】
1.IgG重鎖発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0423】
(1)IgG重鎖発現ベクタークローニング
【0424】
IgG重鎖(HC)DNA配列をRocheによるEP1308455B9号(抗HER2抗体を含む組成物、p24)の記載に応じて合成し、さらに哺乳類細胞においてよく発現するように最適化した。その後、PCRで増幅されたIgG重鎖(HC)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図99、IgGアミノ酸配列:配列番号97)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図100)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図99のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したIgG重鎖(HC)がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図101)。
【0425】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0426】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0427】
(IgG HC K235R)FP5’-ACAAAGGTGGACAGGAAGGTGGAGCCCAAG-3’(配列番号98)、RP5’-CTTGGGCTCCACCTTCC TGTCCACCTTTGT-3’(配列番号99);
【0428】
(IgG HC K344R)FP5’-GAGTATAAGTGCAGGGTGTCCAATAAGGCCCTGC-3’(配列番号100)、RP5’-GCAGGGCCTTATTGGACACCCTGCACTTATACTC-3’(配列番号101);および
【0429】
(IgG HC K431R)FP5’-CTTTCTGTATAGCAGGCTGA CCGTGGATAAGTCC-3’(配列番号102)、RP5’-GGACTTATCCACGGTCAGCCTGCTATACAGAAAG-3’(配列番号103)
【0430】
pcDNA3-myc-IgG HC DNAをテンプレートとして使用して使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表14)。
【0431】
【0432】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0433】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-HC WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-IgG-HC WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図102)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、及びpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図103)。免疫沈降のために得られたサンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル)を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。
【0434】
分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-IgG-HC WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図102、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図102、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図103、レーン5)。これらの結果は、IgG-HCがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
【0435】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したIgG-HC半減期のアセスメント
【0436】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-IgG-HC WT、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K235R)、pcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K344R)、及びpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、ヒトのIgG-HCの分解の抑制が観察された(
図104)。ヒトのIgG-HCの半減期は、2時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-IgG-HC変異体(K431R)の半減期は、
図104に示される通り、4時間以上に延長された。
【0437】
【0438】
実施例16:IgG軽鎖(LC)のユビキチン化及び半減期増加の分析と細胞中のシグナル伝達の分析
【0439】
1.IgG軽鎖(LC)発現ベクタークローニング及びタンパク質発現
【0440】
(1)IgG軽鎖(LC)発現ベクタークローニング
【0441】
IgG軽鎖(LC)DNA配列をRocheによるEP1308455B9号(抗HER2抗体を含む組成物、p23)の記載に応じて合成し、さらに哺乳類細胞においてよく発現するように最適化した。その後、PCRで増幅されたIgG軽鎖(LC)DNAをEcoRI及びXhoIで処理した後、同一の酵素で事前に消化されたpcDNA3-mycベクター(5.6kb)に連結した(
図105、IgG軽鎖アミノ酸配列:配列番号104)。その後、クローニングされたベクターの制限酵素消化後、DNA挿入の存在を確認するために、アガロースゲル電気泳動を実施した(
図106)。クローニングされたDNAによりコードされたタンパク質発現のアセスメントのため、
図105のマップ中に示されるpcDNA3-mycベクターのmycに対する抗myc抗体(9E10、sc-40)により、ウェスタンブロットを実施した。このウェスタンブロットの結果は、mycに結合したIgG軽鎖(LC)がよく発現したことを示した。アクチンによる正規化は、適正量のタンパク質が添加されたことを保証するものであった(
図107)。
【0442】
(2)リジン(リジン、K)残基置換
【0443】
特定部位の突然変異誘発を使用して、リジン残基をアルギニン(アルギニン、R)で置換した。置換プラスミドDNAを生成するためのPCRに、以下のプライマーセットを使用した。
【0444】
(IgG LC K67R)FP5’-CCTGGCAAGGCCCCAAGGCTGCTGATCTAC-3’(配列番号105)、RP5’-GTAGATCAGCAGCCTTGGGGCCTTGCCAGG-3’(配列番号106);
【0445】
(IgG LC K129R)FP5’-ACAAAGGTGGAGATCAGGAGGACCGTGGCC-3’(配列番号107)、RP5’-GGCCACGGTCCTCCTGATCTCCACCTTTGT-3’(配列番号108);および
【0446】
(IgG LC K171R)FP5’-GCCAAGGTGCAGTGGAGGGTGGATAACGCC-3’(配列番号109)、RP5’-GGCGTTATCCACCCTCCACTGCACCTTGGC-3’(配列番号110)
【0447】
pcDNA3-myc-IgG LC DNAをテンプレートとして使用することにより、各々、1つ以上のリジン残基がアルギニンで置換された(K→R)3つのプラスミドDNAを生成した(表16)。
【0448】
【0449】
2.インビボにおけるユビキチン化分析
【0450】
HEK293T細胞に、プラスミドコードpcDNA3.1-6myc-IgG-LC WT及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のため、pcDNA3-myc-IgG-LC WT 2μgとpMT123-HA-ユビキチンDNA1μgとを細胞内に共導入した。導入から24時間後、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理した後、免疫沈降分析を実施した(
図108)。その後、HEK293T細胞に、各々、プラスミドコードpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)、及びpMT123-HA-ユビキチンを導入した。ユビキチン化レベルの分析のために、細胞に、1μgのpMT123-HA-ユビキチンDNAと、各2μgのpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、及びpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)を共導入した。次に、導入から24時間後、免疫沈降を実施した(
図109)。免疫沈降のために得られたタンパク質サンプルを、(1%Triton X、150mMのNaCl、50mMのTris-HCl、pH8及び1mMのPMSF(フッ化フェニルメタンスルホニル))を含む緩衝液中に溶解した後、抗myc(9E10)第1抗体(Santa Cruz Biotechnology、sc-40)と混合した。その後、この混合物を4℃で一晩培養した。4℃で2時間のA/Gビーズ(Santa Cruz Biotechnology)との反応後、免疫沈降物を分離した。続いて、分離した免疫沈降物を緩衝液で2度、洗浄した。2X SDS緩衝剤と混合し、100℃で7分間加熱した後、SDS-PAGEによってタンパク質サンプルを分離した。分離したタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に移動させた後、抗マウス(マウスIgG(H+L)に対するペルオキシダーゼ標識抗体、KPL、074~1806)2次抗体と、抗myc(9E10、sc-40)、抗HA(sc-7392)、及び抗β-アクチン(sc-47778)を含むブロッキング剤とを1:1,000(w/w)で使用することにより、ECL系で展開した。結果として、抗myc(9E10、sc-40)を使用して免疫沈降を実施するとき、ユビキチンをpcDNA3-myc-IgG-LC WTと結合させることにより、ポリユビキチン鎖を形成して、スメアユビキチンの存在を示す強いバンドを検出した(
図108、レーン3及び4)。さらに、細胞をMG132(プロテアソーム阻害剤、5μg/ml)で6時間処理したとき、ポリユビキチン鎖形成が増加し、これによってユビキチンを示すより強いバンドが出現した(
図108、レーン4)。さらに、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)に関して、変異体がユビキチンと結合しなかったため、野生型と比較してバンドが弱く、検出されたユビキチンの量はより少なかった(
図109、レーン5)。これらの結果は、IgG-LCがまずユビキチンに結合した後、ユビキチン-プロテアソーム系で形成されたポリユビキチン鎖を通じて分解されることを表している。
【0451】
3.タンパク質合成阻害剤シクロヘキサミド(CHX)を使用したIgG-LC半減期のアセスメント
【0452】
HEK293T細胞に、各々、2μgのpcDNA3-myc-IgG-LC WT、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K67R)、pcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K129R)、及びpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)を導入した。導入後48時間で、細胞をタンパク質合成阻害剤、シクロヘキサミド(CHX)(Sigma-Aldrich)(100μg/ml)で処理した後、各タンパク質の半減期を阻害剤による処理後2時間、4時間、及び8時間で検出した。結果として、本発明に係るヒトの置換IgG-LCの分解が抑制された(
図110)。ヒトのIgG-LCの半減期は、1時間未満であったが、ヒトのpcDNA3-myc-IgG-LC変異体(K171R)の半減期は、
図110に示される通り、2時間以上に延長された。
【産業上の利用可能性】
【0453】
本発明の変異タンパク質は半減期が延長されているため、本発明は、タンパク質又は(ポリ)ペプチドの治療薬の開発に使用されるであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半減期の延長された食欲刺激ホルモン(グレリン)であって、
ここで、食欲刺激ホルモン(グレリン)は配列番号80のアミノ酸配列を有し、
食欲刺激ホルモン(グレリン)のN末端から39、42、43、及び47に対応する位置における1つ以上のリジン残基はアルギニンで置換されている、前記食欲刺激ホルモン(グレリン)。
【請求項2】
肥満、栄養不良、及び/又は神経性無食欲症等の摂食障害を予防及び/又は治療するための医薬組成物であって、請求項1に記載のグレリンおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、前記医薬組成物。
【請求項3】
(a)プロモータ;
(b)請求項1に記載のグレリンをコードする核酸配列;および
任意でリンカー;
を含む発現ベクターであって、
ここで、プロモータ及び核酸配列は、作動可能に連結される、
前記発現ベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【外国語明細書】