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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172127
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】浴室
(51)【国際特許分類】
   A47K 4/00 20060101AFI20221108BHJP
   E03C 1/20 20060101ALI20221108BHJP
   E03C 1/046 20060101ALI20221108BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20221108BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20221108BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20221108BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
A47K4/00
E03C1/20 A
E03C1/046
E04F15/00 F
A61L2/18
B08B3/02 F
B08B3/08 Z
A61L101:06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127210
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2017224667の分割
【原出願日】2017-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】海野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 祐子
(57)【要約】
【課題】皮脂汚れに隠れた洗い場床の表面に電解水を接触させやすい浴室を提供すること。
【解決手段】表面が撥油性である洗い場床と、前記洗い場床へ向かって除菌作用を有する電解水を吐出可能な電解水吐出装置と、を備えた浴室であって、前記撥油性は、該洗い場床を大気中の常温下で水平に保持し、オレイン酸からなる1μLの油滴を該表面に存在させた場合の該油滴の接触角である油接触角が40°以上であって、前記電解水吐出装置は、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が撥油性である洗い場床と、前記洗い場床へ向かって除菌作用を有する電解水を吐出可能な電解水吐出装置と、を備えた浴室であって、
前記撥油性は、該洗い場床を大気中の常温下で水平に保持し、オレイン酸からなる1μLの油滴を該表面に存在させた場合の該油滴の接触角である油接触角が40°以上であって、
前記電解水吐出装置は、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出可能であることを特徴とする浴室。
【請求項2】
使用者が操作することによって電解水を吐出させる操作部をさらに備え、
前記操作部が操作された際には、まず電解水でない水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする請求項1記載の浴室。
【請求項3】
前記操作部が操作された際には、まず電解水でない水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、所定時間経過するまで電解水および水道水を吐出させず、前記所定時間経過した後、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする請求項1記載の浴室。
【請求項4】
前記電解水でない水道水は、前記洗い場床だけでなく浴室を形成する浴室内壁にも吐出させることを特徴とする請求項2または3に記載の浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室の洗い場床に向かって除菌水を吐出させる除菌水吐出装置が知られている(特許文献1)。このような除菌水吐出装置において、吐出させる除菌水として、例えば、流れてきた水(水道水)を電気分解することで生成する次亜塩素酸水などの電解水を利用することも知られている。このような電解水を除菌水として利用することで、例えば洗剤などを利用する場合と比べ、洗剤などを蓄えるカートリッジ等の用意・交換が不要であり、非常に使い勝手が良い。
【0003】
一方で、例えば次亜塩素酸水などの電解水を除菌水として利用した場合、電解水は菌に接触すると殺菌するとともに水に戻ってしまう性質がある。したがって、洗い場床の表面を除菌するためには、洗い場床の表面に直接電解水を着水させることが肝要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-178470号公報
【特許文献2】特許第5371337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、洗い場床には、浴室の使用者の身体から洗い落とされた皮脂汚れなどが表面に付着してしまっていることが多い。皮脂汚れが付着している洗い場床の表面は、皮脂汚れに覆われているため、吐出された電解水が直接着水できない。このことから、使用者が例えばスポンジやブラシなどで浴室を洗浄して皮脂汚れを取り除いた際に、皮脂汚れを養分として繁殖した菌が原因で、皮脂汚れを取り除いた洗い場床の表面に黒ずみ等が発生してしまっているという課題がある。すなわち、せっかく電解水を洗い場床に向かって吐出させても、依然、洗い場床の表面の一部には黒ずみが発生してしまう可能性が残っている。
【0006】
本発明は、皮脂汚れに隠れた洗い場床の表面に電解水を接触させやすい浴室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の浴室は、表面が撥油性である洗い場床と、前記洗い場床へ向かって除菌作用を有する電解水を吐出可能な電解水吐出装置と、を備えた浴室であって、前記撥油性は、該洗い場床を大気中の常温下で水平に保持し、オレイン酸からなる1μLの油滴を該表面に存在させた場合の該油滴の接触角である油接触角が40°以上であって、前記電解水吐出装置は、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出可能であることを特徴としている。
第1の発明によれば、洗い場床の表面は撥油性であるため、洗い場床の表面と皮脂汚れとが強く固着しがたい。このような洗い場床の表面へ向かって電解水を斜めから吐出することで、皮脂汚れを洗い場床の表面に対して浮かせやすくさせつつ、斜めから吐出された電解水が、浮きやすくなった皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込みやすくなる。
したがって、洗い場床の表面において皮脂汚れに隠れた部分に電解水を接触させやすくなり、結果として洗い場床の表面をしっかりと除菌することができる。
皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込んだ電解水は、洗い場床の表面に対して除菌の作用をした後、水に戻り、皮脂汚れはそのまま水とともに排水口へと排出されやすくなる。このため、せっかく除菌された洗い場床の表面に再度皮脂汚れが接触しにくくできるという、当業者も予期せぬ効果も生まれた。
第2の発明は、第1の発明において、使用者が操作することによって電解水を吐出させる操作部をさらに備え、前記操作部が操作された際には、まず電解水でない水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする。
第2の発明によれば、皮脂汚れを洗い場床の表面から引き離す作用を水道水にさせ、皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込ませて洗い場床の表面を除菌させる作用を電解水にさせることができる。したがって、皮脂汚れを洗い場床の表面から引き離すために不要に電解水が皮脂汚れに接触してしまうことを抑制でき、より効果的に電解水を洗い場床の表面に対して作用させることができる。
第3の発明は、第1の発明において、前記操作部が操作された際には、まず電解水でない水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、所定時間経過するまで電解水および水道水を吐出させず、前記所定時間経過した後、電解水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする。
第3の発明によれば、水道水を洗い場床へ着水させた直後に電解水を洗い場床へ吐出させてしまうと、せっかくの電解水の除菌成分の濃度が、残っている水道水で薄まってしまう。そこで、水道水を洗い場床に吐出させた後、所定時間が経過するまで電解水および水道水を吐出させず、その所定時間経過した後、電解水を洗い場床へ向かって吐出させることで、より効果的に電解水を洗い場床の表面に対して作用させることができる。
第4の発明は、第2または第3の発明において、前記電解水でない水道水は、前記洗い場床だけでなく浴室を形成する浴室内壁にも吐出させることを特徴とする。
第4の発明によれば、皮脂汚れの両側から挟み込むように水道水を皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込ませることができ、より効果的に皮脂汚れを洗い場床の表面から引き離すことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浴室によれば、皮脂汚れに隠れた洗い場床の表面に電解水を接触させやすい浴室が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る浴室洗浄装置の全体構成を示すシステムブロック図。
図2】実施形態に係る浴室の模式斜視図。
図3】(a)は実施形態に係る電解水吐出装置の斜視図であり、(b)は実施形態に係る洗い場床の模式断面図。
図4】実施形態における吐出された電解水の着水までの軌跡を模式的に示す側面図。
図5】実施形態における洗い場床の除菌洗浄作用を示す模式図。
図6】実施形態における洗い場床の除菌洗浄作用を示す模式図。
図7】実施形態における洗い場床の除菌洗浄作用を示す模式図。
図8】(a)は実施形態における電解水の吐水タイムチャートであり、(b)は実施形態における水道水および電解水の吐水タイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る浴室洗浄装置1の全体構成を示すシステムブロック図である。
【0012】
浴室洗浄装置1は、電源30と、制御装置40と、操作部35と、電解水吐出装置100とを備えている。電解水吐出装置100は浴室のカウンターに設置される。
【0013】
図2(a)は、実施形態に係る浴室500の模式斜視図である。
図2(b)は、浴室500におけるカウンター530の近傍を拡大した模式斜視図である。
【0014】
図2(a)に示すように、浴室500は、4つの壁541~544と天井545に囲まれている。その浴室500内に、浴槽510、洗い場床520、およびカウンター530が設けられている。さらに、浴室500には、鏡、水栓装置、ハンドシャワーなどが適宜設けられている。
【0015】
浴槽510の一対の短辺側に、第1の壁541と第2の壁542が互いに対向して設けられている。浴槽510の一方の長辺側に第4の壁544が設けられている。その第4の壁544に対向して、洗い場床520側に第3の壁543が設けられている。
【0016】
洗い場床520には排水口521が設けられている。図2(a)に示す例では、排水口521は、洗い場床520における浴槽510側の縁部近傍であって、洗い場床520の長手方向の略中央に位置している。
【0017】
洗い場床520の表面(床面)には、第1の壁541側の縁部、第2の壁542側の縁部、および第3の壁543側の縁部から、排水口521へと向かう緩やかな下り傾斜(排水勾配)が設けられている。
【0018】
カウンター530は、例えば第2の壁542に取り付けられている。カウンター530は、洗い場床520の表面から上方に離間して設置されている。カウンター530は、上方から見たときに、洗い場床520の短辺方向に沿った長辺をもつ略矩形状の形状を有する。
【0019】
図2(b)に示すように、カウンター530は、天板531と、天板531の下方を覆うカバー532とを有する。図1に示す電解水吐出装置100は、一部の要素(止水栓50、吐水部10)を除いて、天板531とカバー532で囲まれたカウンター530の内部に収容されている。
【0020】
吐水部(ノズル部)10は、図2(b)に示すように、カウンター530の下方に突出するように設けられている。吐水部10は、洗い場床520の表面から離間している。また、吐水部10は、カウンター530の横幅方向(短手方向)における中央付近に設置されている。すなわち、吐水部10は、洗い場床520の長手方向の一端側であって且つ短辺方向の中央付近に設置されている。この位置での後述する吐水部10の回転動作により、水道水および電解水を洗い場床520の略全体に吐水しやすくなる。
【0021】
図1に示す止水栓50は水道水が供給される給水管と接続される。その止水栓50は、ストレーナ51と接続されている。ストレーナ51の下流側は定流量弁52に接続され、その定流量弁52の下流側は2つの配管61、62に分岐している。
【0022】
一方の配管61には電磁弁53が設けられ、その電磁弁53の下流側は吐水部10の第1の吐水口11につながっている。また、例えば寒冷地などでは、電磁弁53と吐水部10との間に必要に応じて水抜弁54が接続される。
【0023】
他方の配管62には、上流側から順に、ストレーナ55、電磁弁56、調圧弁57、逆止弁59、電解水生成部20、ストレーナ65、および吐水部10の第2の吐水口12が接続されている。また、調圧弁57と逆止弁59との間に安全弁58が接続されている。
【0024】
また、電解水吐出装置100は、吐水部10を回転(旋回)動作させるモーター(例えばステッピングモーター)66を有する。このモーター66も、カウンター530の内部に収容されている。
【0025】
制御装置40は、電磁弁53、電磁弁56、電解水生成部20、およびモーター66の動作を制御する。電源30はそれらに電力を供給する。また、電源30は操作部35に電力を供給する。電源30は、図2(a)に示すように例えば浴室500の天井545の裏に設置される。制御装置40は、カウンター530の内部、または浴室500の天井545の裏に設置される。
【0026】
電磁弁53は制御装置40の制御によって開閉される。電磁弁53が開くと、水道水が第1の吐水口11から吐水される。電磁弁53が閉じると、第1の吐水口11から水道水水は吐水されない。
【0027】
電磁弁56は制御装置40の制御によって開閉される。電磁弁56が開くと、水道水が電解水生成部20に供給され、その電解水生成部20で生成された電解水が第2の吐水口12から吐水される。電磁弁56が閉じると、第2の吐水口12から電解水は吐水されない。
【0028】
調圧弁57による水道水の圧力制御により、電解水生成部20に供給される水道水の流量が調整される。電解水生成部20に供給される水道水の流量調整により、第2の吐水口12から吐水される電解水の流量が調整される。
【0029】
また、電磁弁53、56によって、その下流側に供給される水道水の流量を調整することができる。
【0030】
電解水生成部20は電解水を生成する。この電解水は除菌作用を有する除菌水である。電解水生成部20は、例えば陽極と陰極とを有する電解槽である。それら陽極と陰極との間に電圧を印加して、陽極と陰極との間を流れる水道水を電気分解することで、水道水は電解水に変性する。水道水は塩化物イオンを含んでいるため、その塩化物イオンを電気分解することによって、次亜塩素酸が生成される。
【0031】
次亜塩素酸は、菌を死滅させ、さらに菌の繁殖を抑える能力をもつ。したがって、電解水は、次亜塩素酸を含み、除菌作用を有する除菌水である。
【0032】
図3(a)は、吐水部10の斜視図である。
【0033】
吐水部10は、円筒状に形成され、その下部側面に第1の吐水口11と第2の吐水口12が設けられている。第1の吐水口11および第2の吐水口12は、それぞれ、縦長のスリット状に形成されている。
【0034】
第1の吐水口11と第2の吐水口12は、円筒状の吐水部10の周方向に並んで配置されている。または、第1の吐水口11と第2の吐水口12を高さ方向に並んで配置してもよい。
【0035】
第1の吐水口11からは、電解水でない水道水が洗い場床520に吐水される。第2の吐水口12からは、前述した電解水(除菌水)が洗い場床520に吐水される。円筒状の吐水部10内に水道水または電解水を一時的に貯留することができ、吐水圧力を上昇させることができる。
【0036】
縦長の第1の吐水口11から、縦方向(上下方向)に扇状に広がった水道水を吐水することができる。同じく縦長の第2の吐水口12から、縦方向(上下方向)に扇状に広がった電解水を吐水することができる。
【0037】
前述したモーター66の駆動により、円筒状の吐水部10をその中心軸(図3(a)において1点鎖線で示す)のまわりに回転させ、水道水や電解水が吐出される方向を変化させることができる。
【0038】
図3(b)は、洗い場床520の模式断面図である。
【0039】
洗い場床520は、基材521と、基材521の表面に形成された塗膜522とを備えている。基材521は、FRP(Fiber Reinforced Plastic)、PP(ポリプロピレン)等からなり得る。塗膜522は、マトリックスと、このマトリックス中に分散された親水性及び撥油性を有する機能材料とを有し得る。
【0040】
マトリックスは水酸基と反応する塗料原料からなり、機能材料は水酸基含有フッ素化合物であることが好ましい。水酸基含有フッ素化合物の水酸基が親水性を呈し、フッ素が撥油性を呈する。すなわち、洗い場床520の表面には、撥油基81と親水基82がある。
【0041】
洗い場床520の表面は、親水性であるとともに撥油性でもある。ここでの洗い場床520の表面の撥油性は、以下のように規定できる。
【0042】
図5(a)に示すように、洗い場床520を大気中の常温下で水平に保持し、オレイン酸からなる1μLの油滴300をその表面に存在させた場合のその油滴300の接触角である油接触角αが40°以上である。
【0043】
図4は、吐水部10から吐出された電解水の着水までの軌跡を模式的に示す側面図である。
【0044】
吐水部10は、電解水を洗い場床520へ向かって斜めから吐出可能である。前述したように縦方向に扇状に広がって吐出される電解水は、水平方向に対する下方への吐出角度が0°以上で且つ40°以下の吐出成分を含んでいる。
【0045】
図4には、0°以上で且つ40°以下の範囲内にある吐出角度としてθ1、θ2、θ3の吐出角度で吐出された3本の電解水の軌跡を例示する。水平方向(図4において破線に沿った方向)に吐出された電解水の吐出角度は0°となる。
【0046】
電解水と同様に、吐水部10は、電解水でない水道水を洗い場床520へ向かって斜めから吐出可能であり、縦方向に扇状に広がって吐出される水道水は、水平方向に対する下方への吐出角度が0°以上で且つ40°以下の吐出成分を含んでいる。
【0047】
図8(a)は、実施形態における電解水の吐水タイムチャートである。
【0048】
使用者が図1図2(a)に示す操作部35を操作すると(操作部35がONになると)、操作部35は制御装置40へ電解水吐出の実行指令を送信する。制御装置40は、操作部35から電解水吐出の実行指令を受信した後、吐水部10から電解水を時間T1の間吐出させるように制御を実行する。
【0049】
実施形態によれば、洗い場床520の表面は撥油性であるため、洗い場床520の表面と皮脂汚れとが強く固着しがたい。このような洗い場床520の表面へ向かって電解水を斜めから吐出することで、皮脂汚れを洗い場床520の表面に対して浮かせやすくさせつつ、斜めから吐出された電解水が、浮きやすくなった皮脂汚れと洗い場床520の表面との間に入り込みやすくなる。
【0050】
したがって、洗い場床520の表面において皮脂汚れに隠れた部分に電解水を接触させやすくなり、結果として洗い場床520の表面をしっかりと除菌することができる。
【0051】
皮脂汚れと洗い場床520の表面との間に入り込んだ電解水は、洗い場床520の表面に対して除菌の作用をした後、水に戻り、皮脂汚れはそのまま水とともに排水口へと排出されやすくなる。このため、せっかく除菌された洗い場床520の表面に再度皮脂汚れが接触しにくくできるという、当業者も予期せぬ効果も生まれた。
【0052】
また、吐水部10は、洗い場床520の油接触角よりも鋭い(小さい)吐出角度(0°以上で且つ40°以下)で電解水を吐出させることができる。このように斜めから鋭く吐出された電解水は、浮きやすくなった皮脂汚れと洗い場床520の表面との間に、より入り込みやすくなる。
【0053】
洗い場床520の表面には排水勾配が形成されており、図5(b)に示すように、洗い場床520の表面は傾斜している。傾斜した表面が撥油性である洗い場床520の表面に付着した皮脂汚れ200は、重力にしたがって傾斜方向に傾いた状態になりやすくなる。
【0054】
このような状態で、電解水は、傾斜した洗い場床520の表面において下方から入り込むように、洗い場床520の表面に対して、0°以上で且つ40°以下の着水角度β(上記吐出角度と錯角の関係にある)で着水するよう吐出させる。このことにより、より効果的に、電解水を皮脂汚れ200と洗い場床520の表面との間に入り込ませることができる。
【0055】
図8(b)は、実施形態における水道水および電解水の吐水タイムチャートである。
【0056】
この例では、電解水を洗い場床520へ向かって斜めから吐出させる前に、電解水でない水道水を洗い場床520へ向かって斜めから吐出させる。
【0057】
使用者が操作部35を操作すると(操作部35がONになると)、まず電解水でない水道水を、図6(a)に示すように傾斜した洗い場床520の表面において下方から入り込むように、上記吐出角度0°以上で且つ40°以下で吐出させる。操作部35の操作後、まず時間t1の間、水道水が吐水部10から吐出される。
【0058】
水道水の吐出終了後、時間t2が経過した後、図6(b)に示すように、電解水を、洗い場床520の表面において下方から入り込むように、上記吐出角度0°以上で且つ40°以下で吐出させる。電解水は、時間t3(=t1)の間吐出される。
【0059】
このことにより、皮脂汚れ200を洗い場床520の表面から引き離す作用を水道水にさせ、皮脂汚れ200と洗い場床520の表面との間に入り込ませて洗い場床520の表面を除菌させる作用を電解水にさせることができる。したがって、皮脂汚れ200を洗い場床520の表面から引き離すために不要に電解水が皮脂汚れ200に接触してしまうことを抑制でき、より効果的に電解水を洗い場床520の表面に対して作用させることができる。
【0060】
また、上記操作部35が使用者によって操作され、まず電解水でない水道水を洗い場床520の表面において下方から入り込むように、吐出角度0°以上で且つ40°以下で吐出させた後、所定時間t2経過するまで電解水および水道水のどちらも吐出させない。そして、所定時間t2経過した後、電解水を、洗い場床520の表面において下方から入り込むように、吐出角度0°以上で且つ40°以下で吐出させる。
【0061】
水道水を洗い場床520へ着水させた直後に電解水を洗い場床520へ吐出させてしまうと、せっかくの電解水の除菌成分の濃度が、残っている水道水で薄まってしまう。そこで、水道水を洗い場床520に吐出させた後、所定時間t2(例えば、30秒以上1分以下)が経過するまで電解水および水道水を吐出させず、その所定時間t2経過した後、電解水を洗い場床520へ向かって吐出させることで、より効果的に電解水を洗い場床520の表面に対して作用させることができる。
【0062】
また、電解水でない水道水は、洗い場床520だけでなく浴室を形成する浴室内壁にも吐出させる。皮脂汚れを洗い場床520の表面から引き離すための水道水を、洗い場床520の表面に対してだけでなく、浴室を形成する浴室内壁にもあえて吐出させる。
【0063】
浴室内壁に吐出された水道水は、図7(a)に示すように、傾斜した洗い場床520の表面の下り勾配に沿って流れ、皮脂汚れ200の両側から挟み込むように水道水を皮脂汚れ200と洗い場床520の表面との間に入り込ませることができ、より効果的に皮脂汚れ200を洗い場床の表面から引き離すことができる。
【0064】
そして上記所定時間経過した後、図7(b)に示すように、電解水を、洗い場床520の表面において下方から入り込むように、上記吐出角度0°以上で且つ40°以下で吐出させ、皮脂汚れ200と洗い場床520の表面との間に入り込ませる。
【0065】
吐水部10からの電解水や水道水の吐出流速が遅いと電解水や水道水は放物線を描いて着水し、皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込みやすい着水角度が得られ難くなる。そこで、例えば、吐水部10からの電解水の吐出流速を9(m/s)以上11(m/s)以下、吐水部10からの水道水の吐出流速を5.6(m/s)に設定すると、水平方向に対する下方への吐出角度0°以上で且つ40°以下で電解水や水道水を吐出させ、電解水や水道水を皮脂汚れと洗い場床の表面との間に入り込みやすくできる。
【0066】
また、電解水及び水道水はそれぞれ粒状に吐出される。例えば、電解水の粒径は800(μm)であり、水道水の粒径は0.3(mm)以上3.5(mm)以下である。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…浴室洗浄装置、10…吐水部、20…電解水生成部、35…操作部、100…電解水吐出装置、520…洗い場床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が撥油性である洗い場床と、前記洗い場床へ向かってを吐出可能な水吐出装置と、を備えた浴室であって、
前記撥油性は、該洗い場床を大気中の常温下で水平に保持し、オレイン酸からなる1μLの油滴を該表面に存在させた場合の該油滴の接触角である油接触角が40°以上であって、
前記水吐出装置は、を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出可能であり、
前記水の水平方向に対する下方への吐出角度、および前記水の前記洗い場床の表面に対する着水角度は、前記洗い場床の前記油接触角よりも小さいことを特徴とする浴室。
【請求項2】
使用者が操作することによって電解水を吐出させる操作部をさらに備え、
前記水吐出装置は、除菌作用を有する除菌水および水道水を吐出可能であり、
前記操作部が操作された際には、まず水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、除菌水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする請求項1記載の浴室。
【請求項3】
前記操作部が操作された際には、まず水道水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させた後、所定時間経過するまで除菌水および水道水を吐出させず、前記所定時間経過した後、除菌水を前記洗い場床へ向かって斜めから吐出させることを特徴とする請求項記載の浴室。
【請求項4】
前記水道水は、前記洗い場床だけでなく浴室を形成する浴室内壁にも吐出させることを特徴とする請求項2または3に記載の浴室。