(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172138
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】タンパク質およびペプチドの送達のための粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 38/02 20060101AFI20221108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221108BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221108BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221108BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221108BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20221108BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20221108BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P35/00
A61P29/00
A61P27/02
A61P9/12
A61P11/00
A61K9/16
A61K47/36
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/10
A61K38/18
A61K38/19
A61K38/22
A61K38/43
A61K38/20
A61K38/21
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128076
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2019505224の分割
【原出願日】2017-08-01
(31)【優先権主張番号】62/369,412
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/371,306
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/374,639
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】ロスカルゾ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,イン‐イ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療用粒子を製造する方法、かかる治療用粒子を使用して疾患または状態を治療する方法を提供する。
【解決手段】治療用粒子を製造する方法であって、(i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;(ii)負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子を含む第1の懸濁液を得ることと;(iii)治療用タンパク質の溶液と第1の懸濁液とを混合して、治療用粒子を含む第2の懸濁液を得ることとを含む方法を提供する。また、かかる方法によって調製される治療用粒子、該治療用粒子と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用粒子を製造する方法であって:
i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;
ii)負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子であって、前記粒子のコア
は、前記正の電荷を持つ多糖を含む粒子を含む、第1の懸濁液を得ることと;
iii)前記治療用タンパク質の溶液と前記第1の懸濁液を混合して、前記治療用粒子を
含む第2の懸濁液を得ることと
を含む方法。
【請求項2】
治療用粒子を製造する方法であって:
i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;
ii)負の電荷を持つ多糖と、正の電荷を持つ多糖と、二価金属イオンとを含む粒子であ
って、前記正の電荷を持つ多糖は、前記粒子のコア中のジカルボン酸リンカーによって共
有結合的に架橋される粒子を含む、第1の懸濁液を得ることと;
iii)前記治療用タンパク質の溶液と前記第1の懸濁液とを混合して、前記治療用粒子
を含む第2の懸濁液を得ることと
を含む方法。
【請求項3】
前記第1の溶液が、水性の溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水性の溶媒が、水および緩衝生理食塩水から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記緩衝生理食塩水が、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液中の治療用タンパク質の濃度が、約2nmol/mlから約30nmol/m
lである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の懸濁液が、水性の溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶液中の治療用タンパク質と、前記粒子中の負の電荷を持つ多糖内の負の電荷を持
つ官能基を有する単糖単位とのモル比が、約0.25:100から約3:100である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップiii)における混合が、前記治療用タンパク質の溶液を前記第1の懸濁
液に添加することによって実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合が、約800rpmで実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項11】
前記混合が、約20分間実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得られた固体の糖アルコ
ールの溶液への懸濁が続き、前記治療用粒子を含む前記第2の懸濁液が得られる、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得られた固体の糖アルコ
ールの溶液、DPBS、または生理食塩水への懸濁が続き、前記治療用粒子を含む前記第
2の懸濁液が得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記糖アルコールの溶液が、水溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記糖アルコールの水溶液が、約2.5重量%のマンニトールを含む、請求項12に記
載の方法。
【請求項16】
前記糖アルコールの水溶液が、約5重量%のマンニトールを含む、請求項12に記載の
方法。
【請求項17】
前記粒子中の治療用タンパク質の組み込み効率が、約90%から約100%である、請
求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子が、ナノ粒子である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子の直径が、約300nmから約600nmである、請求項18に記載の方
法。
【請求項20】
前記ナノ粒子の直径が、動的光散乱(DLS)方法を用いた測定によれば、約300n
mから約500nmである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ粒子の直径が、約350nmから約500nmである、請求項20に記載の方
法。
【請求項22】
前記ナノ粒子のコアの直径が、前記粒子を滅菌濾過膜に通過させることによって決定さ
れる場合、約220nm未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記粒子中の前記負の電荷を持つ多糖と前記正の電荷を持つ多糖との重量比が、約3:
1から約5:1である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記粒子中の前記負の電荷を持つ多糖と前記正の電荷を持つ多糖との重量比が、約4:
1である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記検出可能な量の前記粒子中の前記負の電荷を持つ多糖が、粒子調製物に使用される
総量の約80%である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子が、負の電荷を持ち、ゼータ電位が、約-35mVから約-50mVである、
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が、負の電荷を持ち、ゼータ電位が、約-40mVから約-45mVである、
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記負の電荷を持つ多糖が、生理的pHで負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位を含
む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記官能基が、カルボン酸(-C(=O)OH)、スルホン酸(-S(=O)2(OH
)または-SO3H)、およびホスホン酸(-P(=O)(OH)2)から選択される、
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記負の電荷を持つ多糖が、グリコサミノグリカンである、請求項1~29のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項31】
前記グリコサミノグリカンが、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマ
タン硫酸、ケラタン硫酸、およびヒアルロン酸から選択される、請求項30に記載の方法
。
【請求項32】
前記負の電荷を持つ多糖が、グリカンである、請求項1~29のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項33】
前記グリカンが、硫酸デキストランである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記正の電荷を持つ多糖が、生理的pHで正の電荷を持つ官能基を有する単糖単位を含
む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記官能基が、アミノ基(-NH2)である、請求項1~34のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項36】
前記正の電荷を持つ多糖が、ポリグルコサミンである、請求項1~35のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリグルコサミンが、キトサンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記正の電荷を持つ多糖が、前記粒子のコア中で架橋されている、請求項1または3~
37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記架橋剤が、ジカルボン酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記架橋のための触媒が、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジ
イミド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)からなる群から選択さ
れる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ジカルボン酸は、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、および酒石酸からなる群から
選択される、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記治療用タンパク質が、前記治療用粒子中の前記負の電荷を持つ多糖に結合されてい
る、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記治療用タンパク質と前記負の電荷を持つ多糖が、非共有結合的に結合されている、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記治療用タンパク質が、ヘパリン結合ドメインを含む、請求項1~43のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項45】
前記ヘパリン結合ドメインが、前記治療用タンパク質に固有のものである、請求項44
に記載の方法。
【請求項46】
前記ヘパリン結合ドメインが、前記治療用タンパク質の組換え産生中に、前記治療用タ
ンパク質にタグ付けされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記治療用タンパク質が、増殖因子、サイトカイン、抗体、ホルモン、膜貫通タンパク
質、および酵素から選択される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記増殖因子が、インスリン様増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、血小板由来増殖因
子(PDGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、
および線維芽細胞増殖因子(FGF)から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記サイトカインが、インターフェロン、コロニー刺激因子、胸腺間質性リンパ球新生
因子、およびインターロイキンから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記酵素が、アガルシダーゼベータ、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼアルファ、
タリグルセラーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ
、β-グルコ-セレブロシダーゼ、アルグルコシダーゼ-α、ラロニダーゼ、α-L-イ
ズロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、ガルスルファ
ーゼ、アガルシダーゼ-β、ヒトα-ガラクトシダーゼA、α-1-プロテイナーゼ、α
-1-プロテイナーゼ阻害剤、膵酵素、ラクターゼ、糖質加水分解酵素、リパーゼ、アミ
ラーゼ、プロテアーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネ
クテプラーゼ、ウロキナーゼ、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレアーゼI、ドルナ
ーゼ-α、ヒアルロニダーゼ、パパイン、アスパラギナーゼ、ラスブリカーゼ、ストレプ
トキナーゼ、アニストレプラーゼ、およびガルスルファーゼから選択される、請求項47
に記載の方法。
【請求項51】
前記治療用タンパク質が、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)、血管内皮増
殖因子(VEGF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、
骨形成タンパク質-2(BMP-2)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、およ
びリゾチームから選択される、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記治療用タンパク質が、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)、血管内皮増
殖因子(VEGF)、骨形成タンパク質-2(BMP-2)、塩基性線維芽細胞増殖因子
(FGF-2)、およびリゾチームから選択される、請求項1~46のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項53】
前記治療用タンパク質に関する粒子の装填能力が、負の電荷を持つ多糖内の負の電荷を
持つ官能基を有する100nmolの単糖単位あたり、約0.25nmolから約3nm
olである、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記治療用タンパク質に関する前記粒子の装填能力が、前記負の電荷を持つ多糖内の負
の電荷を持つ官能基を有する単糖単位の総量の約10%未満である、請求項52に記載の
方法。
【請求項55】
前記治療用タンパク質が、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)であり、前記
負の電荷を持つ多糖が、硫酸デキストランであり、SDF-1αに関する前記粒子の装填
能力が、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約1nmol
から約3nmolである、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記治療用タンパク質が、血管内皮増殖因子(VEGF)であり、前記負の電荷を持つ
多糖が、硫酸デキストランであり、VEGFに関する前記粒子の装填能力が、100nm
olの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約0.6nmolから約1nmo
lである、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記治療用タンパク質が、骨形成タンパク質-2(BMP-2)であり、前記負の電荷
を持つ多糖が、硫酸デキストランであり、BMP-2に関する前記粒子の装填能力が、1
00nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約0.5nmolから約
1nmolである、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記治療用タンパク質が、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)であり、前記負の
電荷を持つ多糖が、硫酸デキストランであり、FGF-2に関する前記粒子の装填能力が
、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約1nmolから約
2nmolである、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記治療用タンパク質が、リゾチームであり、前記負の電荷を持つ多糖が、硫酸デキス
トランであり、リゾチームに関する前記粒子の装填能力が、100nmolの硫酸デキス
トランの硫酸グルコース単位あたり、約1nmolから約2nmolである、請求項1~
46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記治療用粒子が、少なくとも2種の治療用タンパク質を含む、請求項1~59のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記粒子が、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)と血管内皮増殖因子(VE
GF)とを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記粒子が、
i)負の電荷を持つ多糖を含む第1の溶液を得ることと;
ii)正の電荷を持つ多糖を含む第2の溶液を得ることと;
iii)前記第1の溶液と前記第2の溶液とを混合して、前記粒子を含む懸濁液を得るこ
とと
を含む方法によって製造される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記粒子が、
i)負の電荷を持つ多糖を含む第1の溶液を得ることと;
ii)正の電荷を持つ多糖を含む第2の溶液を得ることと;
iii)二価イオンを含む第3の溶液を得ることと、
iv)前記3つの溶液を混合して、前記粒子を含む懸濁液を得ることと、
v)遠心分離によって、前記懸濁液中で前記粒子を沈殿させることと、
vi)前記粒子を、約7.0のpHの緩衝水に懸濁することと、
vii)前記粒子を、ジカルボン酸、EDC、およびNHSと混合して、前記粒子のコア
中の前記正の電荷を持つ多糖の架橋を達成することと、
viii)3倍濃縮されたDPBSを用いて、耐塩性の架橋された粒子を選択することと
、
ix)前記粒子を、滅菌および最終のサイズ選択の目的のために、0.22マイクロメー
トルPVDF膜を通して濾過することと
を含む方法によって製造される、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の溶液が、水溶液である、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記第1の溶液における水溶液が、水である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の溶液中の前記負の電荷を持つ多糖の濃度が、約1mg/mlである、請求項
62~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記第2の溶液が、水溶液である、請求項62~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の溶液における水性の溶媒が、約0.2%酢酸水溶液である、請求項67に記
載の方法。
【請求項69】
前記第2の溶液中の前記正の電荷を持つ多糖の濃度が、約1mg/mlである、請求項
62~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記負の電荷を持つ多糖と前記正の電荷を持つ多糖との重量比が、約4:1である、請
求項62~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ステップiii)における混合が、前記第2の溶液を前記第1の溶液に添加するこ
とによって実施される、請求項62~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記ステップiii)における混合が、約800rpmで実施される、請求項62~7
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記ステップiii)における前記第1の溶液と前記第2の溶液の混合の後に、この混
合物への金属塩の水溶液の添加が続く、請求項62~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記金属が、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、およびベリリウムから選択
される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記金属が、カルシウムである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記金属が、亜鉛である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記金属塩が、ZnSO4である、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記金属塩の水溶液中のZnSO4の濃度が、約0.2Mである、請求項77に記載の
方法。
【請求項79】
ZnSO4と前記負の電荷を持つ多糖との重量比が、約1.3:1である、請求項77
または78に記載の方法。
【請求項80】
前記ステップiii)の混合物への前記金属塩の水溶液の添加の後に、前記混合物への
糖アルコールの水溶液の添加が続く、請求項73~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記糖アルコールが、マンニトールである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記水溶液中の糖アルコールの濃度が、約15重量%である、請求項80または81に
記載の方法。
【請求項83】
前記糖アルコールと前記負の電荷を持つ多糖との重量比が、約75:1である、請求項
80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得られた固体の糖アルコ
ールの溶液への懸濁が続き、前記粒子を含む第2の懸濁液が得られる、請求項62~83
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記糖アルコールが、マンニトールである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記水溶液中の糖アルコールの濃度が、約5重量%である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
請求項1~86のいずれか一項に記載の方法によって調製される治療用粒子。
【請求項88】
請求項62~87のいずれか一項に記載の方法によって調製される粒子。
【請求項89】
請求項87に記載の治療用粒子と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項90】
疾患または状態の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効
量の請求項87に記載の治療用粒子または請求項89に記載の医薬組成物を、前記対象に
投与することを含む方法。
【請求項91】
前記疾患または状態が、前記治療用粒子中の治療用タンパク質によって有益に治療され
る、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記疾患または状態が、癌である、請求項90または91に記載の方法。
【請求項93】
前記疾患または状態が、炎症、黄斑変性、または肺高血圧症である、請求項90または
91に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2016年8月12日に出願された米国仮特許出願第62/374,639号
明細書;2016年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,306号明細
書;および2016年8月1日に出願された米国仮特許出願第62/369,412号明
細書の利益を主張する。前述の内容全体を、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of
Health)(NIH)によって拠出された補助金番号HL048743、HL06
1795、GM107618、およびHL108630に基づいて、政府支援の下で行わ
れた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、粒子、その組成物、製造の方法、および使用の方法に、また、詳細には、治
療用タンパク質などの治療用分子を含む粒子に関する。
【背景技術】
【0004】
タンパク質による治療法は、疾患の治療において重要である。したがって、タンパク質
などの生体分子の、例えば、肺、経鼻、静脈内、非経口、皮下、および経口経路を介する
、患者への送達のための改良された方法を開発する必要性が存在する。
【0005】
多数の粒子(例えば、ナノ粒子(NP))プラットフォームが、タンパク質の送達のた
めに開発されている。しかし、既存のタンパク質送達用途のためのNPの能力は、例えば
、低装填効率および制御できない放出プロフィールが原因で、制限されたままである。
【0006】
臨床解釈を達成するために克服されなければならないタンパク質ベースの治療薬の開発
および製造の難しさが原因で、タンパク質薬物およびタンパク質送達ナノメディシンの臨
床解釈は妨げられている。均質化、超音波処理、押し出し、および溶媒への曝露などの、
合成の化学的結合および製剤パラメータなどの制限が、しばしば、生体分子(例えば、治
療用タンパク質)の不活性化をもたらす。所望の疾患組織へのタンパク質治療薬の安全か
つ有効な送達は、重要な課題のままである。本開示の粒子、組成物、および方法は、この
必要性を満たすのを助ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施態様では、本開示は、特に、治療用粒子を製造する方法であって:
i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;
ii)負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子(ここでは、この粒子のコ
アは、正の電荷を持つ多糖を含む)を含む、第1の懸濁液を得ることと;
iii)治療用タンパク質の溶液と第1の懸濁液を混合して、治療用粒子を含む第2の懸
濁液を得ることと
を含む方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施態様では、本開示は、治療用粒子を製造する方法であって:
i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;
ii)負の電荷を持つ多糖と、正の電荷を持つ多糖と、二価金属イオンとを含む粒子を含
む(ここでは、正の電荷を持つ多糖は、粒子のコア中のジカルボン酸リンカーによって共
有結合的に架橋されている)、第1の懸濁液を得ることと
iii)治療用タンパク質の溶液と第1の懸濁液を混合して、治療用粒子を含む第2の懸
濁液を得ることと
を含む方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施態様では、第1の溶液は、水性の溶媒を含む。いくつかの実施態様では
、水性の溶媒は、水および緩衝生理食塩水から選択される。いくつかの実施態様では、緩
衝生理食塩水は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)である。いくつかの実施
態様では、溶液中の治療用タンパク質の濃度は、約2nmol/mlから約30nmol
/mlである。
【0010】
いくつかの実施態様では、第1の懸濁液は、水性の溶媒を含む。
【0011】
いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タンパク質と、粒子中の負の電荷を持つ多糖
内の負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位とのモル比は、約0.25:100から約3
:100である。
【0012】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、治療用タンパク質の溶液
を第1の懸濁液に添加することによって実施される。
【0013】
いくつかの実施態様では、混合は、約800rpmで実施される。
【0014】
いくつかの実施態様では、混合は、約20分間実施される。
【0015】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得
られた固体の糖アルコールの溶液への懸濁が続き、治療用粒子を含む第2の懸濁液が得ら
れる。
【0016】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得
られた固体の糖アルコールの溶液、DPBS、または生理食塩水への懸濁が続き、治療用
粒子を含む第2の懸濁液が得られる。
【0017】
いくつかの実施態様では、糖アルコールの溶液は、水溶液である。
【0018】
いくつかの実施態様では、糖アルコールの水溶液は、約2.5重量%のマンニトールを
含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、糖アルコールの水溶液は、約5重量%のマンニトールを含む
。
【0020】
いくつかの実施態様では、粒子中の治療用タンパク質の組み込み効率は、約90%から
約100%である。
【0021】
いくつかの実施態様では、粒子は、ナノ粒子である。
【0022】
いくつかの実施態様では、ナノ粒子の直径は、約300nmから約600nmである。
いくつかの実施態様では、ナノ粒子の直径は、約350nmから約500nmである。い
くつかの実施態様では、ナノ粒子の直径は、動的光散乱(DLS)方法を用いた測定によ
れば、約300nmから約500nmである。いくつかの実施態様では、ナノ粒子のコア
の直径は、粒子を滅菌濾過膜に通過させることによって決定される場合、約220nm未
満である。
【0023】
いくつかの実施態様では、粒子中の負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量
比は、約3:1から約5:1である。
【0024】
いくつかの実施態様では、粒子中の負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量
比は、約4:1である。
【0025】
いくつかの実施態様では、検出可能な量の、粒子中の負の電荷を持つ多糖は、粒子調製
物に使用される総量の約80%である。
【0026】
いくつかの実施態様では、粒子は、負の電荷を持ち、ゼータ電位は、約-35mVから
約-50mVである。いくつかの実施態様では、粒子は、負の電荷を持ち、ゼータ電位は
、約-40mVから約-45mVである。
【0027】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖は、生理的pHで負の電荷を持つ官能基
を有する単糖単位を含む。いくつかの実施態様では、この官能基は、カルボン酸(-C(
=O)OH)、スルホン酸(-S(=O)2(OH)または-SO3H)、およびホスホ
ン酸(-P(=O)(OH)2)から選択される。
【0028】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖は、グリコサミノグリカンである。いく
つかの実施態様では、グリコサミノグリカンは、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチ
ン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、およびヒアルロン酸から選択される。
【0029】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖は、グリカンである。いくつかの実施態
様では、グリカンは、硫酸デキストランである。
【0030】
いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、生理的pHで正の電荷を持つ官能基
を有する単糖単位を含む。いくつかの実施態様では、この官能基は、アミノ基(-NH2
)である。いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、ポリグルコサミンである。
いくつかの実施態様では、ポリグルコサミンは、キトサンである。
【0031】
いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、粒子のコア中で(例えば、共有結合
的に)架橋されている。
【0032】
いくつかの実施態様では、架橋剤は、ジカルボン酸である。
【0033】
いくつかの実施態様では、ジカルボン酸は、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、および
酒石酸からなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施態様では、架橋のための触媒は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミ
ノプロピル)カルボジイミド(EDC)、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS
)からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施態様では、架橋された粒子は、耐塩性について選択される。
【0036】
いくつかの実施態様では、選択は、3倍濃縮されたDPBSとのインキュベーションに
よって行われる。
【0037】
いくつかの実施態様では、架橋された粒子は、滅菌される。
【0038】
いくつかの実施態様では、滅菌は、粒子を0.22μm濾過膜に通過させることを含む
。
【0039】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、治療用粒子中の負の電荷を持つ多糖に
結合される。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質と負の電荷を持つ多糖は、非共
有結合的に結合されている。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ヘパリン結
合ドメインを含む。
【0040】
いくつかの実施態様では、ヘパリン結合ドメインは、治療用タンパク質に固有のもので
ある。
【0041】
いくつかの実施態様では、ヘパリン結合ドメインは、治療用タンパク質の組換え産生中
に、治療用タンパク質にタグ付けされる。
【0042】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、増殖因子、サイトカイン、抗体、ホル
モン、膜貫通タンパク質、および酵素から選択される。
【0043】
いくつかの実施態様では、増殖因子は、インスリン様増殖因子、ケラチノサイト増殖因
子、血小板由来増殖因子(PDGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子
受容体(EGFR)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)から選択される。
【0044】
いくつかの実施態様では、サイトカインは、インターフェロン、コロニー刺激因子、胸
腺間質性リンパ球新生因子、およびインターロイキンから選択される。
【0045】
いくつかの実施態様では、酵素は、アガルシダーゼベータ、イミグルセラーゼ、ベラグ
ルセラーゼアルファ、タリグルセラーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、
イデュルスルファーゼ(idursulfase)、β-グルコ-セレブロシダーゼ、ア
ルグルコシダーゼ-α、ラロニダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、イデュルスルファーゼ
(idursulphase)、イズロン酸-2-スルファターゼ、ガルスルファーゼ(
galsulphase)、アガルシダーゼ-β、ヒトα-ガラクトシダーゼA、α-1
-プロテイナーゼ、α-1-プロテイナーゼ阻害剤、膵酵素、ラクターゼ、糖質加水分解
酵素、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルテプラーゼ
、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌ
クレアーゼI、ドルナーゼ-α、ヒアルロニダーゼ、パパイン、アスパラギナーゼ、ラス
ブリカーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、およびガルスルファーゼ(ga
lsulfase)から選択される。
【0046】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF
-1α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄
養因子(CNTF)、骨形成タンパク質-2(BMP-2)、塩基性線維芽細胞増殖因子
(FGF-2)、およびリゾチームから選択される。
【0047】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF
-1α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、骨形成タンパク質-2(BMP-2)、塩基
性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、およびリゾチームから選択される。
【0048】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質に関する粒子の装填能力は、負の電荷を持
つ多糖内の負の電荷を持つ官能基を有する100nmolの単糖単位あたり、約0.25
nmolから約3nmolである。
【0049】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質に関する粒子の装填能力は、負の電荷を持
つ多糖内の負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位の総量の約10%未満である。
【0050】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF
-1α)であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、SDF-1αに関す
る粒子の装填能力は、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、
約1nmolから約3nmolである。
【0051】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、血管内皮増殖因子(VEGF)であり
、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、VEGFに関する粒子の装填能力は
、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約0.6nmolか
ら約1nmolである。
【0052】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、骨形成タンパク質-2(BMP-2)
であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、BMP-2に関する粒子の装
填能力は、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約0.5n
molから約1nmolである。
【0053】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-
2)であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、FGF-2に関する粒子
の装填能力は、100nmolの硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約1n
molから約2nmolである。
【0054】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、リゾチームであり、負の電荷を持つ多
糖は、硫酸デキストランであり、リゾチームに関する粒子の装填能力は、100nmol
の硫酸デキストランの硫酸グルコース単位あたり、約1nmolから約2nmolである
。
【0055】
いくつかの実施態様では、治療用粒子は、少なくとも2種の治療用タンパク質を含む。
いくつかの実施態様では、この粒子は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)と
血管内皮増殖因子(VEGF)を含む。
【0056】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子(こ
こでは、この粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む)は、
i)負の電荷を持つ多糖を含む第1の溶液を得ることと;
ii)正の電荷を持つ多糖を含む第2の溶液を得ることと;
iii)第1の溶液と第2の溶液を混合して、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖
とを含む粒子(ここでは、この粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む)を含む懸濁液
を得ることと
を含む方法によって製造される。
【0057】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子(こ
こでは、この粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む)は、
iii)負の電荷を持つ多糖を含む第1の溶液を得ることと;
iv)正の電荷を持つ多糖を含む第2の溶液を得ることと;
v)二価イオンを含む第3の溶液を得ることと、
vi)3つの溶液を混合して、粒子を含む懸濁液を得ることと、
vii)遠心分離によって、懸濁液中で粒子を沈殿させることと、
viii)粒子を、約7.0のpHの緩衝水に懸濁することと、
ix)粒子を、ジカルボン酸、EDC、およびNHSと混合して、粒子のコア中の正の電
荷を持つ多糖の架橋を達成することと、
x)3倍濃縮されたDPBSを用いて、耐塩性の架橋された粒子を選択することと、
xi)粒子を、滅菌および最終のサイズ選択の目的のために、0.22マイクロメートル
PVDF膜を通して濾過することと
を含む方法によって製造される。
【0058】
いくつかの実施態様では、第1の溶液は、水溶液である。
【0059】
いくつかの実施態様では、第1の溶液における水溶液は、水である。
【0060】
いくつかの実施態様では、第1の溶液中の負の電荷を持つ多糖の濃度は、約1mg/m
lである。
【0061】
いくつかの実施態様では、第2の溶液は、水溶液である。
【0062】
いくつかの実施態様では、第2の溶液における水溶液は、約0.2%酢酸水溶液である
。
【0063】
いくつかの実施態様では、第2の溶液中の正の電荷を持つ多糖の濃度は、約1mg/m
lである。
【0064】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量比は、約
4:1である。
【0065】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、第2の溶液を第1の懸濁
液に添加することによって実施される。
【0066】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、約800rpmで実施さ
れる。
【0067】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における第1の溶液と第2の溶液の混合の
後に、混合物への金属塩の水溶液の添加が続く。
【0068】
いくつかの実施態様では、金属は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、およ
びベリリウムから選択される。いくつかの実施態様では、金属は、カルシウムである。い
くつかの実施態様では、金属は、亜鉛である。
【0069】
いくつかの実施態様では、金属塩は、ZnSO4である。いくつかの実施態様では、金
属塩の水溶液中のZnSO4の濃度は、約0.2Mである。いくつかの実施態様では、Z
nSO4と負の電荷を持つ多糖との重量比は、約1.3:1である。
【0070】
いくつかの実施態様では、ステップiii)の混合物への金属塩の水溶液の添加の後に
、この混合物への糖アルコールの水溶液の添加が続く。いくつかの実施態様では、糖アル
コールは、マンニトールである。いくつかの実施態様では、水溶液中の糖アルコールの濃
度は、約15重量%である。いくつかの実施態様では、糖アルコールと負の電荷を持つ多
糖との重量比は、約75:1である。
【0071】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得
られた固体の糖アルコールの溶液への懸濁が続き、粒子を含む第2の懸濁液が得られる。
【0072】
いくつかの実施態様では、糖アルコールは、マンニトールである。
【0073】
いくつかの実施態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約5重量%である。
【0074】
いくつかの実施態様では、本開示はまた、本明細書に開示した方法のいずれか1つによ
って調製される治療用粒子を提供する。
【0075】
いくつかの実施態様では、本開示はまた、本明細書に記載した方法のいずれか1つによ
って調製される、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子(ここでは、こ
の粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む)を提供する。
【0076】
いくつかの実施態様では、本開示はまた、本明細書に記載した通りの治療用粒子と、薬
学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0077】
いくつかの実施態様では、本開示はまた、それを必要とする対象における疾患または状
態を治療する方法であって、本明細書に記載した通りの治療有効量の治療用粒子またはそ
の医薬組成物を、対象に投与することを含む方法を提供する。
【0078】
いくつかの実施態様では、疾患または状態は、治療用粒子中の治療用タンパク質によっ
て有益に治療される。いくつかの実施態様では、疾患または状態は、癌である。いくつか
の実施態様では、疾患または状態は、炎症、黄斑変性、または肺高血圧症である。
【0079】
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本出願
が属する分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料
は、本出願に使用するために本明細書に記載されており;当技術分野で公知の他の適切な
方法および材料も使用することができる。材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定
ではない。本明細書に言及するすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエ
ントリ、および他の参考文献の全体を、参照によって組み込む。矛盾する場合は、本明細
書が、定義を含めて、優先されることとなる。
【0080】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図から、また、特許請求の範
囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】凍結乾燥中の硫酸デキストランおよびキトサン(DSCS)ナノ粒子の安定性に対するマンニトールの効果を示す棒グラフである。DSCSナノ粒子を、示された濃度でマンニトール溶液に懸濁させ、凍結乾燥させた。サイズ測定の前に、粒子を水で再構成して元の体積とした。データは、3つの調製物からの測定値の平均±SDを表す。
【
図2】DSCS粒径に対する亜鉛濃度の効果を示す棒グラフである。粒子を、示された濃度のZnSO
4と共に調製し、調製後に5%マンニトールに再懸濁した。粒径は、凍結乾燥の前(黒色バー)と後(灰色バー)に測定した。データは、3つの別の調製物の測定値の平均±SDを表す。
【
図3A】アズールAの吸収スペクトルを示す折れ線グラフである。点線は、DS濃度の増大に伴って吸光度が相対的に変化した(510および620nm)または変化しなかった(548nm、等吸収点)波長を示す。
【
図3B】96ウェルプレートフォーマットにおいて荷電DSを測定するために使用される検量線の例を示す折れ線グラフである。
【
図4A】SDF-lαが組み込まれた粒子の粒径およびゼータ電位を示す。黒色バーは、反応がpH6の水中で、灰色バーは、pH8の30mM Tris-HCl中で実施されたことを示す。SDF-lαとDSCSナノ粒子は、40μg荷電DSあたりのSDF-lα(μg)の数値、またはDSCSナノ粒子中の100nmol荷電硫酸グルコース単位(Gluc-SO
3-)あたりのSDF-lα(nmol)の数値として表される、示された比で混合した。
【
図4B】(左パネル)組み込まれていないタンパク質(上清、S)から粒子(ペレット、P)を分離するための遠心分離後の組み込みのSDSゲル分析、および(右パネル)ゲルバンド中のSDF-lα含有量の濃度測定的定量化を示す。ここでは、グラフは、3つの別の調製物からの平均±SD、*p<0.05(SDF-lαなしの対照と比較)を表す。
【
図5A】得られたVEGFが組み込まれた粒子の粒径およびゼータ電位を示す。VEGFとDSCSナノ粒子は、より低い割合(10~25μg VEGF/40μg DS)の、または逆に、より高いVEGF/NP比(20~80μg/40μg DS)の示された割合(これは、VEGFの量を増大させることとDSCSナノ粒子の固定量を維持することとを通して達成された)で混合した。
【
図5B】VEGF組み込みのSDSゲル分析(左および中央パネル)、およびゲルバンドの濃度測定分析から得られた組み込み効率(右パネル)を示す。データは、3つの別の調製物からの平均±SDを表す。VEGFとDSCSナノ粒子は、より低い割合(10~25μg VEGF/40μg DS)の、または逆に、より高いVEGF/NP比(20~80μg/40μg DS)の、示された割合(これは、VEGFの量を増大させることとDSCSナノ粒子の固定量を維持することとを通して達成された)で混合した。
【
図6】SDSゲル電気泳動(左)、続いてバンドの分析に基づくタンパク質分布の濃度測定分析(右)によって分析される、ペレット(P)および上清(S)分画中のタンパク質含有量を示す。データは、3つの別の組み込み反応からの平均±SDを表す。組み込みは、タンパク質(20μg SDF-lαもしくはVEGFまたは50μg BSA)を、DSCSナノ粒子(40μg荷電DSを含有)と、水(H
2O)または50%PBS(PBS)中で20分間混合することによって実施した。次いで、粒子を、遠心分離によって、組み込まれていないタンパク質から分離した。
【
図7】組み込み効率の推定のためにSDSゲルに装填した等しい体積のペレット(P)および上清(S)分画を示す。データは、1回の組み込み実験からのものである。組み込み反応は、タンパク質とDSCSナノ粒子中の荷電糖単位(Gluc-SO
3-)との示されたモル比で、50%PBS中で実施した。粒子は、反応後すぐに遠沈させ、2.5%マンニトールに再懸濁して、元の体積とした。
【
図8A】SDF-lαおよびSDFNPの走化活性が、1ng/mlおよび3ng/mlのSDF-lα濃度でのジャーカット細胞遊走アッセイによって検討されることを示す棒グラフである。SDF-lα(黒色バー)およびSDFNP(灰色バー)試料は、2.5%マンニトールで希釈し、37℃で最大24日間インキュベートした。示された時点で、一定分量を取り出し、遊走アッセイで使用した。対照としてSDF-lαストック溶液(4℃に維持)を使用し、3ng/mlのSDF-lα濃度で遊走アッセイを実施した。データは、2つの別々に調製された試料からの4つの一定分量の平均±SD、*p<0.05(同じ群内のSDF-lα試料と比較)として表す。
【
図8B】SDF-lαおよびSDFNPの熱安定性の遊走アッセイを示す。SDF-lα(黒色バー)およびSDFNP(灰色バー)試料は、2.5%マンニトールで希釈し、37℃で最大24日間インキュベートした。示された時点で、一定分量を取り出し、遊走アッセイで使用した。対照としてSDF-lαストック溶液(4℃に維持)を使用し、3ng/mlのSDF-lα濃度で遊走アッセイを実施した。データは、2つの別々に調製された試料からの4つの一定分量の平均±SD、*p<0.05(同じ群内のSDF-lα試料と比較)として表す。
【
図9A】肺動脈内皮細胞増殖に対するVEGFおよびVEGF NPの活性を、示された濃度で検討し、比色定量細胞増殖アッセイによって測定したことを示す棒グラフである。OD490は、細胞増殖のレベルを示す。4℃に維持したVEGFストック溶液を、対照として使用した。データは、増殖アッセイにおいて3連で行った2つの37℃インキュベーション試料の平均値を表す。
【
図9B】VEGFおよびVEGF NPの熱安定性を示す棒グラフである。試料は、2.5%マンニトールで55μg/mlに希釈し、37℃でインキュベートした。第13日に、インキュベーション試料から一定分量を取り出し、内皮細胞増殖アッセイにかけた。データは、3連で行った2つの37℃インキュベーション試料の平均値を表す。
【
図9C】VEGFおよびVEGF NPの安定性を示す棒グラフである。試料は、2.5%マンニトールで55μg/mlに希釈し、37℃でインキュベートした。第20日に、インキュベーション試料から一定分量を取り出し、内皮細胞増殖アッセイにかけた。データは、3連で行った2つの37℃インキュベーション試料の平均値を表す。
【
図10】ラットの肺におけるSDF-lαおよびSDFNPの保持時間を示す棒グラフである。SDF-lαおよびSDFNP(12μg SDF-lα含有量)を、ラットの肺にエアロゾル噴霧した。示された時点で、肺組織を採取し、ホモジナイズした。ホモジネート中のSDF-lαの濃度を、ELISAによって決定した。データは、4匹のラットから得られた組織からの平均±SEMを表す。
【
図11】DSCSナノ粒子の形成を模式的に示す図である。
【
図12】架橋(xNP)の前および後の、硫酸デキストランおよびキトサンナノ粒子(DSCS NP)のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す。データは、架橋されたNPと、ジカルボン酸によって導入されたカルボキシル基の残基における新しいアミド結合形成を示す。
【
図13】架橋された DSCS NPの安定性を示す棒グラフである。架橋されたNP、MA xNP、SA xNP、またはTA xNPを、ウシ胎児血清(FBS)またはRPMI1640+10%FBS(RPMI)と共に、25℃で16時間インキュベートした。次いで、粒子をPBSで洗浄および懸濁し、そのサイズおよびゼータ電位を決定した。データは、架橋されたDSCS NPが、完全な血清または細胞培養培地中で安定であることを示す。
【
図14】架橋されたDSCS NP(xNP)へのタンパク質の組み込みを示すプロットである。示された量のFGF-2、SDF-lα、BMP-2、またはVEGFを、100nmol荷電硫酸グルコース単位(Gluc-SO
3-)を含有するxNPと、PBS中で20分間混合した。組み込まれていないタンパク質を、遠心分離によって粒子から分離し、得られたペレット(P)および上清(S)分画を、SDSゲル上で分析した。組み込み効率は、ゲルバンドの濃度測定分析に基づいて推定した。次いで、タンパク質が組み込まれたxNPを、凍結乾燥させ、-80℃で保管した。PBSでのNPの再構成後に、タンパク質が組み込まれたxNPの粒子サイズおよびゼータ電位を決定した。データは、検討された増殖因子のxNPへの組み込み効率が、95~100%であり、xNPの粒径およびゼータ電位が、示されたタンパク質装填割合では有意には変化せず、粒子が、組み込みおよび保管プロセス全体を通して安定であったことを示す。
【
図15】架橋前(DSCS NP)と架橋後(xNP)のDSCSナノ粒子のフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルである。
【
図16A】25℃での16時間のインキュベーション後の、NaCl溶液中でのDSCS NPおよび架橋されたNP(xNP)の粒子直径を示す棒グラフである。データは、DSCS NPが生理食塩水(0.15M NaCl)中で凝集するのに対して、xNPは最大2MまでのNaCl濃度に耐性であることを示す。
【
図16B】NaCl溶液中でのDSCS NPおよび架橋されたNP(xNP)の多分散指数を示す棒グラフである。0.15M NaCl中でのインキュベーション後のDSCS NPでは、多分散指数の劇的な増加が見られ、これは、粒子集団の深刻な凝集および不均一性を示す。比較すると、xNPは、高濃度塩類溶液中で、インキュベーション全体を通してその均一性を維持していた。
【
図17】完全な細胞培養培地、RPMI1640+10%FBS(RPMI+)、およびウシ胎児血清(血清)中での、DSCS NPおよび架橋されたNP(xNP)の安定性を示す棒グラフを含有する。データは、DSCS NPが、これらの培地中で凝集したが、架橋されたNPは影響を受けなかったことを示す。
【
図18】架橋されたDSCS NPへの組み込みの前(SDF-1)および後(SDF-xNP)の、SDF-1αの走化活性を示す棒グラフである。データは、SDF-1αが、架橋されたNPへの組み込み後に、同様のまたはわずかに大きい活性を呈することを示す。
【
図19】架橋されたDSCS NPへの組み込みの前(VEGF)および後(VEGF xNP)の、VEGFの増殖活性を示す棒グラフである。データは、VEGFが、架橋されたNPへの組み込みの前と後とで同様の活性を有することを示す。
【
図20】DSCS NP(パネルA)または架橋されたNP(xNP、パネルB)のエアロゾル噴霧を受けたラットから得られたヘマトキシリンおよびエオシン染色された肺切片を示す。どちらのラットも、肺の内皮傷害および肺高血圧症を引き起こすモノクロタリンを注射されており、幹細胞治療のための免疫抑制剤としてシクロスポリンを与えられた。これらの厳しい条件下で、DSCSNPは、重度の肺の炎症/線維症を引き起こす可能性があるのに対して、xNPは無害である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示の粒子
負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
む粒子(ここでは、この粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む)を提供する。これら
の実施態様のいくつかの態様では、粒子の外殻(outer shell)(表面)は、
正の電荷を持つ多糖を含まない。これらの実施態様の他の態様では、粒子のコアは、正の
電荷を持つ多糖の総量の少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%
、約95%、または約100%を含む。
【0083】
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
む粒子(ここでは、粒子の外殻(表面)は、負の電荷を持つ多糖を含む)を提供する。こ
れらの実施態様のいくつかの態様では、粒子の外殻(表面)は、正の電荷を持つ多糖を含
まない。これらの実施態様の他の態様では、粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む。
これらの実施態様の他の態様では、粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖の総量の少なくと
も約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を
含む。
【0084】
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
むコアと;負の電荷を持つ多糖を含む外殻(表面))とを含む粒子を提供する。これらの
実施態様のいくつかの態様では、粒子の外殻(表面)は、正の電荷を持つ多糖を含まない
。これらの実施態様の他の態様では、粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖の総量の少なく
とも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%
を含む。
【0085】
治療用粒子
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
み、かつ、少なくとも1種の治療用タンパク質(例えば、負の電荷を持つ多糖に結合した
治療用タンパク質)をさらに含む、治療用粒子(ここでは、この粒子のコアは、正の電荷
を持つ多糖を含む)を提供する。これらの実施態様のいくつかの態様では、外殻(例えば
、治療用粒子の表面)は、正の電荷を持つ多糖を含まない。これらの実施態様の他の態様
では、治療用粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖の総量の少なくとも約70%、約75%
、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含む。
【0086】
いくつかの実施態様では、本開示は、外殻(例えば、治療用粒子の表面)が負の電荷を
持つ多糖を含み、かつ、少なくとも1種の治療用タンパク質が、負の電荷を持つ多糖に結
合した、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む治療用粒子を提供する。これ
らの実施態様のいくつかの態様では、外殻(例えば、治療用粒子の表面)は、正の電荷を
持つ多糖を含まない。これらの実施態様の他の態様では、治療用粒子のコアは、正の電荷
を持つ多糖を含む。これらの実施態様の他の態様では、治療用粒子のコアは、正の電荷を
持つ多糖の総量の少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約9
5%、または約100%を含む。
【0087】
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
むコアと;負の電荷を持つ多糖と少なくとも1種の治療用タンパク質とを含む外殻(例え
ば、治療用粒子の表面)とを含む治療用粒子を提供する。いくつかの実施態様では、治療
用タンパク質は、負の電荷を持つ多糖に結合されている。
【0088】
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖は、静電相互作用を通じて正の電荷を持
つ多糖に結合されている。いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖の量は、正の電
荷を持つ多糖の正電荷を完全に中和するのに十分である。
【0089】
本開示の粒子(例えば、治療用粒子)の性質
図11を参照すると、負の電荷を持つ多糖(例えば、硫酸デキストラン)を含む溶液が
、正の電荷を持つ多糖を含む溶液と混合された場合、反対電荷を持つ多糖分子が(例えば
、静電相互作用を通じて)反応して、コアと外殻(粒子の表面)とを含む粒子を形成する
。正の電荷を持つ多糖は、粒子のコア中にあり、負の電荷を持つ多糖(これは、正の電荷
を持つ多糖よりも多い)は、コア中と粒子の外殻(表面)中の両方にある。これは、正の
電荷を持つ多糖と反応した、負の電荷を持つ多糖分子の部分のみが、粒子のコア中にとど
まるのに対して、正の電荷を持つ多糖と反応しなかった、負の電荷を持つ多糖分子の部分
が、粒子の外殻(表面)に位置することが理由で可能である。いくつかの実施態様では、
粒子の外殻(表面)は、未反応の負の電荷を持つ多糖を含む。生じた負の電荷を持つ多糖
と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子(ここでは、この粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖
を含む)は、治療用タンパク質(例えば、本明細書に記載した治療用タンパク質のいずれ
か1つ)とさらに反応して、本明細書に記載した通りの治療用粒子を形成する。治療用タ
ンパク質は、粒子の表面上の負の電荷を持つ多糖の残基と(例えば、本明細書に記載した
通りに、非共有結合的に)結合し、治療用粒子の外殻(表面))内にとどまる。いくつか
の実施態様では、治療用粒子のコアは、治療用タンパク質を含まない。いくつかの実施態
様では、粒子の外殻(表面)は、治療用タンパク質の総量の少なくとも約70%、約75
%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%を含む。
【0090】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した通りの粒子または治療用粒子は、ナノ粒
子である。いくつかの実施態様では、ナノ粒子のサイズ(例えば、直径)は、約300n
mから約600nm、または約350nmから約500nmである。いくつかの実施態様
では、直径は、約10nmから約800nm、または約50nmから約600nm、また
は約60nmから約550nmである。いくつかの実施態様では、直径は、約50nm、
約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350n
m、約400nm、約450nm、約500nm、約550nm、約600nm、約65
0nm、または約700nmである。
【0091】
いくつかの実施態様では、粒子中の負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量
比は、約1:1から約10:1、約2:1から約7:1、または約3:1から約5:1で
ある。いくつかの実施態様では、粒子中の負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との
重量比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、または約5:1である。いくつか
の実施態様では、粒子中の負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量比は、約4
:1である。
【0092】
いくつかの実施態様では、検出可能な量の、粒子中の負の電荷を持つ多糖は、粒子の粒
子調製に使用される総量の約60%、約70%、約80%、または約90%である。
【0093】
いくつかの実施態様では、粒子は、負の電荷を持ち、ゼータ電位は、約-35mVから
約-50mV、または約-40mVから約-45mVである。いくつかの実施態様では、
ゼータ電位は、約-10mVから約-100mV、約-20mVから約-100mV、約
-20mVから約-80mV、約-30mVから約-70mV、または約-40mVから
約-60mVである。いくつかの実施態様では、ゼータ電位は、約-10mV、約-20
mV、約-30mV、約-40mV、約-45mV、または約-50mVである。
【0094】
いくつかの実施態様では、ある集団内、例えばある組成物中に存在する粒子は、実質的
に、同じ形状および/またはサイズを有することができる(すなわち、これらは、「単分
散される」)。例えば、粒子は、約5%または約10%以下の粒子が、粒子の平均直径の
約10%超よりも大きい直径を有するような、また、場合によっては、約8%、約5%、
約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%、または約0.01%以下が、
粒子の平均直径の約10%超よりも大きい直径を有するような分布を有することができる
。いくつかの実施態様では、25%以下の粒子の直径が、平均粒子直径の150%、10
0%、75%、50%、25%、20%、10%、または5%よりも大きく、平均粒子直
径と異なる。粒子の大部分が類似の性質を有するように、サイズ、形状、および/または
組成に関して比較的均一である粒子の集団を生じることが、しばしば望ましい。例えば、
本明細書に記載した方法を使用して生成される粒子の少なくとも80%、少なくとも90
%、または少なくとも95%は、平均直径または最大径の5%、10%、または20%の
範囲内にある直径または最大径を有することができる。いくつかの実施態様では、粒子の
集団は、サイズ、形状、および/または組成に関して不均一であり得る。いくつかの実施
態様では、多分散指数は、約0.01から約0.5、約0.05から約0.5、約0.1
から約0.4、または約0.1から約0.3である。いくつかの実施態様では、多分散指
数は、約0.05、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、または約0.3であ
る。
【0095】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、粒子中の負の電荷を持つ多糖に非共有
結合的に結合される。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ヘパリン結合ドメ
インを含み、ヘパリン結合ドメインを介してして粒子中の負の電荷を持つ多糖に結合され
る。本明細書で使用する場合、用語「非共有結合的」は、それらの構成要素間の結合が非
共有結合である(すなわち、ある構成要素のどの原子も、別の構成要素の原子と電子対を
共有しない)、2種以上の構成要素間の相互作用を指す。非共有結合には、水素結合、静
電効果、π効果、疎水効果、またはファンデルワールス力などの、弱い結合が含まれる。
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質と負の電荷を持つ多糖との間の非共有結合的
相互作用は、水素結合、静電相互作用、疎水相互作用、およびファンデルワールス力を含
む。
【0096】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した粒子のいずれか1つは、-SO3H官能
基を含む単糖単位を含む負の電荷を持つ多糖と、-NH2官能基を含む単糖単位を含む正
の電荷を持つ多糖を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載した粒子のいずれか
1つは、-SO3H官能基を有するグリカンと、-NH2官能基を含むポリグルコサミン
を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載した粒子のいずれか1つは、硫酸デキ
ストラン(例えば、硫酸デキストランナトリウム塩)とキトサンを含む。
【0097】
負の電荷を持つ多糖
負の電荷を持つ多糖は、アロース、アルトロース、アラビノース、エリトロース、エリ
トルロース、フルクトース、フコサミン、フコース、ガラクトサミン、ガラクトース、グ
ルコサミン、グルコサミニトール、グルコース、グリセルアルデヒド、グリセロール、グ
リセロン、グロース、イドース、リキソース、マンノサミン、マンノース、プシコース、
キノボース、キノボサミン、ラムニトール、ラムノサミン、ラムノース、リボース、リブ
ロース、ソルボース、タガトース、タロース、トレオース、キシロース、キシルロース、
グルクロン酸、およびその誘導体から選択される、あらゆる数の単糖残基(あらゆる非環
式および/または環式型ならびにあらゆる可能な立体異性体が含まれる)を含む、天然ま
たは合成の多糖であり得る。いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖中の単糖残基
は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、
キシロース、N-アセチルグルコサミン、グルクロン酸、グルコサミン、シアル酸、イズ
ロン酸、ガラクトサミン、およびその誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施
態様では、負の電荷を持つ多糖は、中性pHで酸性である。いくつかの実施態様では、負
の電荷を持つ多糖は、生理的pHで負の電荷を持つ官能基、例えば、酸(カルボン酸(カ
ルボン酸エステル)、スルホン酸(スルホン酸エステル)、硫酸エステル、リン酸エステ
ル、およびホスホン酸エステルが含まれる)を含む。すなわち、多糖内の、あらゆる数の
単糖単位は、-C(=O)OH、-S(=O)2(OH)(すなわち、-SO3H)、ま
たは-P(=O)(OH)2基で誘導体化されている可能性がある。(いくつかの実施態
様では、これらの基のいずれか1つは、生理的pHで負の電荷を持つ)。いくつかの実施
態様では、負の電荷を持つ多糖は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デル
マタン硫酸、ケラタン硫酸、またはヒアルロン酸などの、グリコサミノグリカンである。
いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストラン(例えば、硫酸デキ
ストランナトリウム塩、CAS登録番号9011-18-1)などのグリカンである。
【0098】
正の電荷を持つ多糖
正の電荷を持つ多糖は、アロース、アルトロース、アラビノース、エリトロース、エリ
トルロース、フルクトース、フコサミン、フコース、ガラクトサミン、ガラクトース、グ
ルコサミン、グルコサミニトール、グルコース、グリセルアルデヒド、グリセロール、グ
リセロン、グロース、イドース、リキソース、マンノサミン、マンノース、プシコース、
キノボース、キノボサミン、ラムニトール、ラムノサミン、ラムノース、リボース、リブ
ロース、ソルボース、タガトース、タロース、トレオース、キシロース、キシルロース、
グルクロン酸、およびその誘導体から選択される、あらゆる数の単糖残基(あらゆる非環
式および/または環式型ならびにあらゆる可能な立体異性体が含まれる)を含む、天然ま
たは合成の多糖であり得る。いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖中の単糖残基
は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、
キシロース、N-アセチルグルコサミン、グルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、
ガラクトサミン、およびその誘導体からなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施態様では、正味の正電荷は、正の電荷を持つ多糖に含まれている塩基性
の基(例えばアミン、アンモニウム基、またはグアニジウム基)によって提供される。い
くつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、生理的pHで正の電荷を持つ官能基を有
する単糖単位を含む。いくつかの実施態様では、正味の正電荷は、多糖中の単量体の単糖
単位がそれを用いて誘導体化される、アミンおよび/またはアンモニウム基によって提供
される。正の電荷を持つ多糖内のあらゆる数の単糖単位が、生理的pHで正の電荷を持つ
ことが可能なNH2基を含有することができる。いくつかの実施態様では、正の電荷を持
つ多糖は、中性pHで塩基性である。いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、
キトサン(例えば、CAS登録番号9012-76-4を参照のこと)などのポリグルコ
サミンである。
【0100】
いくつかの実施態様では、正の電荷を持つ多糖は、架橋される。架橋剤の適切な例とし
ては、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸(MA)、コハク酸(SA)、グルタル酸(GA)
、酒石酸(TA)、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、
ブラシル酸、またはタプシン酸などの、ジカルボン酸が挙げられる。いくつかの実施態様
では、架橋は、例えば、正の電荷を持つ多糖中のアミン基とジカルボン酸中のカルボキシ
ル基との間のアミド結合形成をもたらす。アミド結合は、多糖の糖単位を、粒子のコア中
で架橋する。いくつかの実施態様では、粒子のコア中の多糖の架橋は、架橋されていない
粒子(これは、高分子電解質複合体のその性質が原因で、生理食塩水または体液中で凝集
体を形成することとなる)と比較した場合の粒子の塩安定性の増大を可能にする。
【0101】
治療用タンパク質
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、抗体、ホルモン、膜貫通タンパク質、
増殖因子、サイトカイン、酵素、または構造タンパク質である。
【0102】
いくつかの実施態様では、タンパク質治療薬は、例えば、その開示の全体が参照によっ
て本明細書に組み込まれるLeader et al.,Nature Reviews
2008,7,21-39に記載されているタンパク質治療薬のいずれか1つである。
【0103】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ヘパリン結合タンパク質である。
【0104】
ヘパリン結合タンパク質は、そのタンパク質を≧0.15M NaCl中でヘパリン-
セファロース樹脂に結合させることによって一般に実証される、ヘパリンに対するその高
い親和性によって定義される。多くのタンパク質、特に、細胞間シグナル伝達を媒介する
ものは、このカテゴリーに入る。(例えば、Ori A,et al.J.Biol.C
hem.2011,286(22),19892-19904を参照のこと)。これらの
タンパク質のうちの大部分の生物学的リガンドが、ヘパラン硫酸または硫酸化グリコサミ
ノグリカンであり、これらは、細胞表面上に、および細胞外マトリックス中に存在する。
これらのタンパク質の一次または三次構造におけるヘパリン結合部位またはドメインは、
ヘパリン結合を担い、これは、しばしば、静電相互作用を通じてヘパリンと結合する正の
電荷を持つアミノ酸残基(Lys、Arg、およびHis)のクラスターを含む。(例え
ば、Esko JD.Demystifying heparan sulfate-p
rotein interactions.Annu.Rev.Biochem.201
4;83:129-157;およびGallagher J.Fell-Muir Le
cture:Heparan sulphate and the art of ce
ll regulation:a polymer chain conducts t
he protein orchestra.Int J Exp Pathol.Au
g 2015;96(4):203-231を参照のこと)。
【0105】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ヘパリン結合ドメインを含む。いくつ
かの実施態様では、ヘパリン結合ドメインは、治療用タンパク質に固有のものである。他
の実施態様では、いくつかの実施態様では、ヘパリン結合ドメインは、治療用タンパク質
の組換え産生中に、治療用タンパク質にタグ付けされる。ヘパリン結合ドメインは、例え
ば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるOri A et al.J.Bio
l.Chem.2011,286(22),19892-19904に記載されている、
ヘパリン結合タンパク質中に見られるドメインのいずれか1つであり得る。ヒトでは、多
くの増殖因子、サイトカイン、および細胞間情報伝達を媒介するタンパク質を含めた、4
35種を超えるヘパリン結合タンパク質が存在する。ヘパリン結合部位がタンパク質合成
中にペプチド配列の末端にタグ付けされる場合、他のタンパク質またはペプチド(ワクチ
ンなど)も、DSCS NPおよびxNPによって潜在的に送達される可能性がある。ヘ
パリン結合ドメインのタグ付けは、当技術分野で公知の組換えタンパク質産生のための手
順のいずれか1つによって実施することができる。
【0106】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、トランスフォーミング増殖因子-β(
TGF-β)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-α、インターフェロン-
β、インターフェロン-γ)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G
M-CSF))、および胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)などの、サイトカイン
である。インターフェロンは、インターフェロン-αcon1、インターフェロン-α2
a、インターフェロン-α2b、インターフェロン-αn3、インターフェロン-β1a
、またはインターフェロン-γ1bであり得る。サイトカインは、インターロイキン-1
、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイ
キン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、イン
ターロイキン-10、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイ
キン-15、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-2
2、インターロイキン-23、およびインターロイキン-35などの、インターロイキン
であり得る。いくつかの実施態様では、サイトカインは、インターフェロン、コロニー刺
激因子、胸腺間質性リンパ球新生因子、およびインターロイキンから選択される。
【0107】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、インスリン様増殖因子、ケラチノサイ
ト増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮
増殖因子受容体(EGFR)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)から選択される増殖
因子である。
【0108】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、アミリン、抗ミュラー管ホルモン、カ
ルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン、エンドセリン、エンケファリン、エ
リスロポエチン(EPO)、ダルベポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガラニン、ガストリン
、グレリン、グルカゴン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、
ヘプシジン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、成長ホルモン(GH)、ヒト成長ホルモン(h
GH)、インヒビン、インスリン、イソフェンインスリン、インスリンデテミル、インス
リングラルギン、プラムリンチド、酢酸プラムリンチド、インスリン様増殖因子、レプチ
ン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、モ
チリン、オレキシン、オキシトシン、膵ポリペプチド、副甲状腺ホルモン、プロラクチン
、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン、血管作動性腸
管ペプチド、ソマトトロピン、メカセルミン、メカセルミンリンファバート、ヒト卵胞刺
激ホルモン、ルトロピン、テリパラチド、エキセナチド、オクトレオチド、ジボテルミン
-α、骨形成タンパク質7、ケラチノサイト増殖因子、血小板由来増殖因子、トリプシン
、ネシリチド、およびバソプレシンなどの、ポリペプチドホルモンである。
【0109】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、第VIIa因子、第VIII因子、第
IX因子、アンチトロンビンIII、プロテインC、ドロトレコギン-α、フィルグラス
チム、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、レピルジン、ビバリルジン、またはオ
プレルベキンである。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、A型ボツリヌス毒
素、B型ボツリヌス毒素である。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、アタシ
セプト、アバタセプト、アフリベルセプト、アレファセプト、ベラタセプト、エタネルセ
プト、ソタテルセプト(sotatercept)、ロミプロスチム、またはリロナセプ
トである。
【0110】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、酵素である。いくつかの実施態様では
、酵素は、アガルシダーゼベータ、イミグルセラーゼ、ベラグルセラーゼアルファ、タリ
グルセラーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、β
-グルコ-セレブロシダーゼ、アルグルコシダーゼ-α、ラロニダーゼ、α-L-イズロ
ニダーゼ、イデュルスルファーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、ガルスルファーゼ
、アガルシダーゼ-β、ヒトα-ガラクトシダーゼA、α-1-プロテイナーゼ、α-1
-プロテイナーゼ阻害剤、膵酵素、ラクターゼ、糖質加水分解酵素(例えばリゾチーム)
、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、アデノシンデアミナーゼ、アルテプラーゼ、レ
テプラーゼ、テネクテプラーゼ、ウロキナーゼ、コラゲナーゼ、ヒトデオキシリボヌクレ
アーゼI、ドルナーゼ-α、ヒアルロニダーゼ、パパイン、アスパラギナーゼ(例えばL
-アスパラギナーゼ)、ラスブリカーゼ、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、ま
たはガルスルファーゼである。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、アルブミ
ン、ヒトアルブミン、または免疫グロブリンである。
【0111】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、治療用抗体を含めた抗体(例えば、モ
ノクローナル抗体、例えば、二重特異性モノクローナル抗体)である。いくつかの実施態
様では、抗体は、癌を治療するのに有用である(例えば、アバゴボマブ(abagovo
mab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ、アラシズマブ
・ペゴール、ペンテト酸アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ・マフェナトクス
(anatumomab mafenatox)、アポリズマブ、アルシツモマブ、バビ
ツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ・メルタンシン(
bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ
・ベドチン、カンツズマブ・メルタンシン、カンツズマブ・ラブタンシン、カプロマブペ
ンデチド、セツキシマブ、シタツズマブ・ボガトクス(citatuzumab bog
atox)、シズツムマブ、クリバツズマブ・テトラキセタン、ダセツズマブ、デミシズ
マブ、デツモマブ(detumomab)、ドロジツマブ、エクロメキシマブ(ecro
meximab)、エクリズマブ、エロツズマブ、エンシツキシマブ(ensituxi
mab)、エプラツズマブ、エタラシズマブ、ファーレツズマブ、フィギツムマブ、フラ
ンボツマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、ギレンツキシマブ、イブリ
ツモマブ・チウキセタン、イムガツズマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、レクサツムマ
ブ、ロルボツズマブ・メルタンシン、ニモツズマブ、オファツムマブ、オレゴボマブ、パ
ニツムマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、タカツズマブ・テトラキセタン、トシツモマ
ブ、トラスツズマブ、トツムマブ(totumumab)、またはザルツムマブ)。
【0112】
いくつかの実施態様では、抗体は、炎症性疾患または状態を治療するのに有用である(
例えば、アダリムマブ、アレムツズマブ、アトリズマブ、バシリキシマブ、カナキヌマブ
、セルトリズマブ、セルトリズマブ・ペゴール、ダクリズマブ、ムロモナブ、エファリズ
マブ、フォントリズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、メポリズマブ、ナタリズマブ
、オマリズマブ、ルプリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ザノリムマブ、ベドリ
ズマブ、ベリムマブ、オテリキシズマブ、テプリズマブ、リツキシマブ、オファツムマブ
、オクレリズマブ、エプラツズマブ、エクリズマブ、またはブリアキヌマブ)。いくつか
の実施態様では、治療用タンパク質は、感染症を治療するのに有用である(例えば、エン
フビルチド)。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、アブシキシマブ、ペグビ
ソマント、マムシ(crotalidae)多価免疫Fab、ジゴキシン免疫血清Fab
、ラニビズマブ、またはデニロイキンジフチトクスである。
【0113】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF
-1α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、骨形成タンパク質-2(BMP-2)、塩基
性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、およびリゾチームから選択される。
【0114】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、オンコスタチンM(OSM)または毛
様体神経栄養因子(CNTF)である。これらの実施態様のいくつかの態様では、治療用
粒子は、黄斑変性を治療するのに有用である。
【0115】
いくつかの実施態様では、治療用粒子は、SDFおよびVEGF治療用タンパク質を含
む。これらの実施態様のいくつかの態様では、この粒子は、肺高血圧症を治療するのに有
用である。実施態様では、この粒子は、幹細胞と組み合わせて対象に投与することができ
る。
【0116】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質に関する粒子の装填能力は、負の電荷を持
つ多糖(例えば、粒子の表面上の負の電荷を持つ多糖)内の負の電荷を持つ官能基を有す
る100nmolの単糖単位あたり、約0.25nmolから約3nmolである。これ
らの実施態様のいくつかの態様では、粒子の装填能力は、負の電荷を持つ多糖(例えば、
粒子の表面上の負の電荷を持つ多糖)内の負の電荷を持つ官能基を有する100nmol
の単糖単位あたり、約0.01nmolから約100nmol、約0.1nmolから約
50nmol、約0.15nmolから約40nmol、約0.2nmolから約30n
mol、約0.25nmolから約20nmol、約0.25nmolから約10nmo
l、約0.25nmolから約5nmol、約0.25nmolから約2.5nmolで
ある。これらの実施態様のいくつかの態様では、粒子の装填能力は、負の電荷を持つ多糖
(例えば、粒子の表面上の負の電荷を持つ多糖)内の負の電荷を持つ官能基を有する、約
0.1nmol、約0.15nmol、約0.2nmol、約0.25nmol、約0.
5nmol、約0.75nmol、約1nmol、約1.25nmol、約1.5nmo
l、約2nmol、約2.5nmol、約3nmol、約3.5nmol、約4nmol
、約5nmol、約10nmol、約20nmol、約50nmol、または100nm
olの単糖単位である。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質に関する粒子の装填
能力は、負の電荷を持つ多糖内の負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位の総量の約30
%、約20%、約15%、または約10%未満である。
【0117】
いくつかの実施態様では、治療用粒子に対する治療用タンパク質の割合は、治療用タン
パク質の特性、治療用粒子の性質、および用途に依存する。いくつかの実施態様では、治
療用タンパク質は、治療用粒子の総重量の約0.01重量%から約99重量%の範囲で装
填される。治療用タンパク質は、約1重量%から約80重量%、約1重量%から約75重
量%、約1重量%から約70重量%、約1重量%から約65重量%、約1重量%から約6
0重量%、約1重量%から約55重量%、約1重量%から約50重量%、約1重量%から
約45重量%、約1重量%から約40重量%、約1重量%から約35重量%、約1重量%
から約30重量%、約1重量%から約25重量%、約1重量%から約20重量%、約1重
量%から約15重量%、約1重量%から約10重量%、および/または約1重量%から約
5重量%の範囲内であり得る。
【0118】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF
-1α)であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、SDF-1αに関す
る粒子の装填能力は、100nmolの硫酸デキストラン(例えば、粒子の表面上の硫酸
デキストラン)の硫酸グルコース単位あたり、約1nmolから約3nmolである。
【0119】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、血管内皮増殖因子(VEGF)であり
、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、VEGFに関する粒子の装填能力は
、100nmolの硫酸デキストラン(例えば、粒子の表面上の硫酸デキストラン)の硫
酸グルコース単位あたり、約0.6nmolから約1nmolである。
【0120】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、骨形成タンパク質-2(BMP-2)
であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、BMP-2に関する粒子の装
填能力は、100nmolの硫酸デキストラン(例えば、粒子の表面上の硫酸デキストラ
ン)の硫酸グルコース単位あたり、約0.5nmolから約1nmolである。
【0121】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-
2)であり、負の電荷を持つ多糖は、硫酸デキストランであり、FGF-2に関する粒子
の装填能力は、100nmolの硫酸デキストラン(例えば、粒子の表面上の硫酸デキス
トラン)の硫酸グルコース単位あたり、約1nmolから約2nmolである。
【0122】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、リゾチームであり、負の電荷を持つ多
糖は、硫酸デキストランであり、リゾチームに関する粒子の装填能力は、100nmol
の硫酸デキストラン(例えば、粒子の表面上の硫酸デキストラン)の硫酸グルコース単位
あたり、約1nmolから約2nmolである。
【0123】
いくつかの実施態様では、粒子は、少なくとも2種の治療用タンパク質を含む。いくつ
かの実施態様では、この粒子は、ストロマ細胞由来因子-1α(SDF-1α)と血管内
皮増殖因子(VEGF)を含む。
【0124】
有用な治療用タンパク質のさらなる例は、それぞれその全体が参照によって本明細書に
組み込まれる米国特許第8,349,910号明細書;および米国特許第8,043,8
33号明細書;米国特許出願第2013/0195888号明細書;および米国特許出願
第2007/0092486号明細書;およびPCT国際公開第2014/130064
号パンフレットにおいて参照することができる。
【0125】
プロセスによって調製される粒子
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載した方法のいずれか1つによって
調製された、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子を提供する。
【0126】
いくつかの実施態様では、本開示は、本明細書に記載した方法のいずれか1つによって
調製された、負の電荷を持つ多糖と、正の電荷を持つ多糖と、負の電荷を持つ多糖に結合
した治療用タンパク質とを含む治療用粒子を提供する。
【0127】
本開示の粒子を製造する方法
負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子
いくつかの実施態様では、本開示は、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含
む粒子を製造する方法であって:
xii)負の電荷を持つ多糖を含む第1の溶液を得ることと;
xiii)正の電荷を持つ多糖を含む第2の溶液を得ることと;
xiv)第1の溶液と第2の溶液を混合して、粒子を含む懸濁液を得ることと
を含む方法によって製造される。
【0128】
いくつかの実施態様では、粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む(例えば、正の電
荷を持つ多糖の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なく
とも100%は、粒子のコア中にある)。
【0129】
いくつかの実施態様では、第1の溶液は、水溶液である。
【0130】
いくつかの実施態様では、第1の水溶液中の水性の溶媒は、水である。
【0131】
いくつかの実施態様では、第1の溶液中の負の電荷を持つ多糖の濃度は、約0.1mg
/mlから約10mg/ml、約0.25mg/mlから約8mg/ml、約0.5mg
/mlから約5mg/ml、または約0.5mg/mlから約2mg/mlである。いく
つかの実施態様では、第1の溶液中の負の電荷を持つ多糖の濃度は、約0.5mg/ml
、約1mg/ml、約1.5mg/ml、または約2mg/mlである。いくつかの実施
態様では、第1の溶液中の負の電荷を持つ多糖の濃度は、約1mg/mlである。
【0132】
いくつかの実施態様では、第2の溶液は、水溶液である。
【0133】
いくつかの実施態様では、第2の水溶液中の水性の溶媒は、約0.2%から約0.5%
酢酸(水中)である。いくつかの実施態様では、第2の水溶液中の水性の溶媒は、約0.
2%酢酸水溶液である。
【0134】
いくつかの実施態様では、第2の溶液中の正の電荷を持つ多糖の濃度は、約0.1mg
/mlから約10mg/ml、約0.25mg/mlから約8mg/ml、約0.5mg
/mlから約5mg/ml、または約0.5mg/mlから約2mg/mlである。いく
つかの実施態様では、第2の溶液中の正の電荷を持つ多糖の濃度は、約0.5mg/ml
、約1mg/ml、約1.5mg/ml、または約2mg/mlである。いくつかの実施
態様では、第2の溶液中の正の電荷を持つ多糖の濃度は、約1mg/mlである。
【0135】
いくつかの実施態様では、第1の溶液からの負の電荷を持つ多糖と、第2の溶液からの
正の電荷を持つ多糖との重量比は、約1:1から約10:1、約2:1から約8:1、ま
たは約3:1から約5:1である。いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖と正の
電荷を持つ多糖との重量比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、または約5:
1である。いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖との重量
比は、約4:1である。
【0136】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、第1の溶液に第2の溶液
を添加することによって実施される。いくつかの実施態様では、ステップiii)におけ
る混合は、第2の溶液に第1の溶液を添加することによって実施される。
【0137】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、約400rpmから約1
200rpm、約500rpmから約1100rpm、または約600rpmから約10
00rpmで実施される。いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、
約400rpm、約600rpm、約800rpm、または約1000rpmで実施され
る。いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、約800rpmで実施
される。
【0138】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における第1の溶液と第2の溶液の混合の
後に、混合物への金属塩の水溶液の添加が続く。いくつかの実施態様では、金属は、カル
シウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、およびベリリウムから選択される。いくつかの
実施態様では、金属は、カルシウムである。いくつかの実施態様では、金属は、亜鉛であ
る。いくつかの実施態様では、金属塩は、CaSO4、CaCl2、MgCl2、MgS
O4、ZnCl2、およびZnSO4から選択される。いくつかの実施態様では、金属塩
は、ZnSO4である。
【0139】
いくつかの実施態様では、金属塩の水溶液中の金属塩の濃度は、約0.01Mから約1
M、約0.05Mから約0.5M、または約0.1Mから約0.3Mである。いくつかの
実施態様では、金属塩の水溶液中のZnSO4の濃度は、約0.01Mから約1M、約0
.05Mから約0.5M、または約0.1Mから約0.3Mである。
【0140】
いくつかの実施態様では、金属塩の水溶液中のZnSO4の濃度は、約0.05M、約
0.1M、約0.15M、約0.2M、約0.25M、または約0.3Mである。いくつ
かの実施態様では、金属塩の水溶液中のZnSO4の濃度は、約0.2Mである。
【0141】
いくつかの実施態様では、金属塩と負の電荷を持つ多糖との重量比は、約10:1から
約1:10、約8:1から約1:2、約6:1から約1:1、約4:1から約1:1、ま
たは約2:1から約1:1である。
【0142】
いくつかの実施態様では、ZnSO4と負の電荷を持つ多糖との重量比は、約10:1
から約1:10、約8:1から約1:2、約6:1から約1:1、約4:1から約1:1
、または約2:1から約1:1である。いくつかの実施態様では、ZnSO4と負の電荷
を持つ多糖との重量比は、約4:1、約3:1、約2:1、約1.5:1、約1.4:1
、約1.3:1、約1.2:1、または約1:1である。いくつかの実施態様では、Zn
SO4と負の電荷を持つ多糖との重量比は、約1.3:1である。
【0143】
いくつかの実施態様では、ステップiii)の混合物への金属塩の水溶液の添加の後に
、この混合物への糖アルコール(例えば、マンニトール、エリスリトール、スクロース、
ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、グリセロール、キシリトール、イノシトール
、またはボレミトール)の水溶液の添加が続く。
【0144】
いくつかの実施態様では、糖アルコールは、マンニトールである。
【0145】
いくつかの実施態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約1重量%から約50重
量%、約2重量%から約40重量%、約3重量%から約30重量%、または約5重量%か
ら約20重量%である。いくつかの実施態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約
1重量%、約2重量%、約3重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20
重量%、約25重量%、または約30重量%である。いくつかの実施態様では、水溶液中
の糖アルコールの濃度は、約15重量%である。
【0146】
いくつかの実施態様では、糖アルコールと負の電荷を持つ多糖との重量比は、約200
:1から約1:1、約150:1から約10:1、約100:1から約20:1、または
約90:1から約50:1である。いくつかの実施態様では、糖アルコールと負の電荷を
持つ多糖との重量比は、約100:1、約90:1、約75:1、約60:1、約50:
1、または約30:1である。いくつかの実施態様では、糖アルコールと負の電荷を持つ
多糖との重量比は、約75:1である。
【0147】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得
られた固体の糖アルコールの溶液への懸濁が続き、粒子を含む第2の懸濁液が得られる。
これらの実施態様のいくつかの態様では、糖アルコールは、マンニトールである。これら
の実施態様のいくつかの態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約0.1重量%か
ら約25重量%、約0.5重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、約2
重量%から約10重量%、または約3重量%から約7重量%である。これらの実施態様の
いくつかの態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約1重量%、約2重量%、約3
重量%、約4重量%、約4重量%、約6重量%、または約10重量%である。これらの実
施態様のいくつかの態様では、水溶液中の糖アルコールの濃度は、約5重量%である。
【0148】
いくつかの実施態様では、粒子は、粒子のコア中のキトサンを、ジカルボン酸と共有結
合的に架橋させることによって調製される。いくつかの実施態様では、負の電荷を持つ多
糖と粒子のコア中の正の電荷を持つ多糖とを含む粒子は、ほぼ中性のpHの水性緩衝液に
懸濁される。水性緩衝液の適切な例としては、約7.0のpHのHEPES[4-(2-
ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]緩衝水が挙げられる。いくつか
の実施態様では、粒子の懸濁液は、短鎖ジカルボン酸の溶液と混合される。ジカルボン酸
の適切な例としては、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、および酒石酸が挙げられる。い
くつかの実施態様では、溶液中のジカルボン酸の濃度は、約5mMから約30mMである
。いくつかの実施態様では、架橋反応は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピ
ル)カルボジイミド(EDC、例えば、約20から約100mMの濃度の)、およびN-
ヒドロキシスクシンイミド(NHS、例えば、約20から約100mMの濃度の)の存在
下で実施される。架橋条件の適切な例としては、粒子を約25℃で約16時間反応させる
ことが挙げられる。いくつかの実施態様では、コア中に、架橋された正の電荷を持つ多糖
を有する粒子は、約15,000×gの約15分間の遠心分離によって沈殿され、DPB
Sで洗浄される。いくつかの実施態様では、架橋された粒子は、耐塩性選択のために、3
×DPBS(3倍高い濃度のDPBS)にさらに再懸濁される。これらの実施態様では、
3時間のインキュベーション後、懸濁液中の凝集体を、約200×gでの約15分間の遠
心分離によって沈殿させ、残りの粒子を、約15,000×gでの約15分間の遠心分離
によって沈殿させる。いくつかの実施態様では、粒子は、次いで、DPBSに再懸濁され
、0.22マイクロメートルの孔径を有するPVDF膜を通して濾過される。いくつかの
実施態様では、濾過は、溶液の滅菌および最終の粒径選択の目的で実施される。
【0149】
治療用粒子
いくつかの実施態様では、本開示は、治療用粒子を製造する方法であって:
i)治療用タンパク質を含む溶液を得ることと;
ii)本明細書に記載した通りの負の電荷を持つ多糖と正の電荷を持つ多糖とを含む粒子
を含む第1の懸濁液を得ることと;
iii)治療用タンパク質の溶液と第1の懸濁液を混合して、第2の懸濁液を得て治療用
粒子を得ることと
を含む方法を提供する。
【0150】
いくつかの実施態様では、粒子のコアは、正の電荷を持つ多糖を含む(例えば、正の電
荷を持つ多糖の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なく
とも100%は、粒子のコア中にある)。
【0151】
いくつかの実施態様では、第1の溶液は、水性の溶媒を含む。
【0152】
いくつかの実施態様では、水性の溶媒は、水および緩衝生理食塩水から選択される。い
くつかの実施態様では、緩衝生理食塩水は、50%ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(P
BS)である。
【0153】
いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タンパク質の濃度は、約0.1nmol/m
lから約200nmol/ml、約0.2nmol/mlから約150nmol/ml、
約0.3nmol/mlから約100nmol/ml、約0.5nmol/mlから約8
0nmol/ml、約0.75nmol/mlから約60nmol/ml、約1nmol
/mlから約60nmol/ml、または約2nmol/mlから約30nmol/ml
である。いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タンパク質の濃度は、約2nmol/
mlから約30nmol/mlである。いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タンパ
ク質の濃度は、約0.1nmol/ml、約0.2nmol/ml、約0.3nmol/
ml、約0.5nmol/ml、約0.75nmol/ml、約1nmol/ml、約1
.25nmol/ml、約1.5nmol/ml、約1.75nmol/ml、約2nm
ol/ml、約3nmol/ml、約5nmol/ml、約7.5nmol/ml、約1
0nmol/ml、約15nmol/ml、約20nmol/ml、約25nmol/m
l、約30nmol/ml、約40nmol/ml、または約50nmol/mlである
。
【0154】
いくつかの実施態様では、第1の懸濁液は、水性の溶媒を含む。これらの実施態様のい
くつかの態様では、水性の溶媒は、糖アルコール(例えば、マンニトール、エリスリトー
ル、スクロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、グリセロール、キシリトー
ル、イノシトール、またはボレミトール)、特にマンニトールを、約0.1重量%から約
25重量%、約0.2重量%から約20重量%、約0.5重量%から約10重量%、また
は約1重量%から約5重量%の濃度で、または約0.5重量%、約1重量%、約1.5重
量%、約2重量%、約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、または約5重量%の濃度
で含む。
【0155】
いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タンパク質と、粒子中の負の電荷を持つ多糖
内の負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位とのモル比は、約0.01:100から約1
00:100、約0.05:100から約50:100、約0.1:100から約40:
100、約0.2:100から約20:100、約0.2:100から約10:100、
約0.2:100から約5:100である。いくつかの実施態様では、溶液中の治療用タ
ンパク質と、粒子中の負の電荷を持つ多糖内の負の電荷を持つ官能基を有する単糖単位と
のモル比は、約0.25:100から約3:100である。いくつかの実施態様では、溶
液中の治療用タンパク質と、粒子中の負の電荷を持つ多糖内の負の電荷を持つ官能基を有
する単糖単位とのモル比は、約0.1:100、約0.2:100、約2.5:100、
約0.3:1000、約0.5:100、約1:100、約2:100、約3:100、
または約5:100である。
【0156】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、第1の懸濁液に治療用タ
ンパク質の溶液を添加することによって実施される。いくつかの実施態様では、ステップ
iii)における混合は、治療用タンパク質の溶液に第1の懸濁液を添加することによっ
て実施される。
【0157】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、約400rpmから約1
200rpm、約500rpmから約1100rpm、または約600rpmから約10
00rpmで実施される。いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合は、
約400rpm、約600rpm、約800rpm、または約1000rpmで実施され
る。いくつかの実施態様では、混合は、約800rpmで実施される。
【0158】
いくつかの実施態様では、混合は、約1分から約2時間、約2分から約1.5時間、約
5分から約60分、約7分から約40分、または約10分から約30分実施される。いく
つかの実施態様では、混合は、約5分、約10分、約15分、約20分、約30分、約4
0分、または約60分間実施される。いくつかの実施態様では、混合は、約20分間実施
される。
【0159】
いくつかの実施態様では、ステップiii)における混合の後に、遠心分離、および得
られた固体の糖アルコールの溶液への懸濁が続き、治療用粒子を含む第2の懸濁液が得ら
れる。これらの実施態様のいくつかの態様では、糖アルコールの溶液は、水溶液である。
これらの実施態様のいくつかの態様では、糖アルコールの水溶液は、約0.1重量%から
約25重量%、約0.5重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、約2重
量%から約10重量%、または約3重量%から約7重量%のマンニトールを含む。これら
の実施態様のいくつかの態様では、糖アルコールの水溶液は、約1重量%、約2重量%、
約2.5重量%、約3重量%、約4重量%、約4重量%、約6重量%、または約10重量
%を含む。これらの実施態様のいくつかの態様では、糖アルコールの水溶液は、約2.5
重量%のマンニトールを含む。
【0160】
いくつかの実施態様では、粒子中の治療用タンパク質の組み込み効率は、約75%から
約100%、約80%から約100%、約85%から約100%、約90%から約100
%、または約95%から約100%である。いくつかの実施態様では、粒子中の治療用タ
ンパク質の組み込み効率は、約90%から約100%である。いくつかの実施態様では、
粒子中の治療用タンパク質の組み込み効率は、約85%、約90%、約92%、約95%
、約99%、または約100%である。
【0161】
本開示の粒子を使用する方法
本開示の方法は、治療用タンパク質を過酷な生理的条件に曝露させずに(例えば、治療
用タンパク質を胃の生理的条件に曝露させずに)所望の生物学的標的に治療用タンパク質
を送達する能力を提供する。
【0162】
いくつかの実施態様では、本開示は、対象における疾患または状態を治療する方法であ
って、本明細書に記載した通りの治療有効量の粒子、または本明細書に記載した通りの粒
子を含む医薬組成物を、対象(例えば、それを必要とする対象)に投与することを含む方
法を提供する。いくつかの実施態様では、疾患または状態は、粒子中の治療用タンパク質
によって有益に治療される状態の疾患である。
【0163】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、内分泌障害(ホルモン欠乏症)(例え
ば、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、高カリウム血症、高血糖、GH欠
乏もしくは慢性腎不全に起因する成長障害、プラダー・ウィリー症候群、ターナー症候群
、抗ウイルス療法を用いるAIDS消耗症候群もしくは悪液質、GH遺伝子欠失もしくは
重度の原発性IGF1欠損症を伴う小児における成長障害、閉経後骨粗鬆症、重度の骨粗
鬆症、またはメトホルミンおよびスルホニル尿素での治療に抵抗性の2型糖尿病、または
先端巨大症)を治療するのに有用なホルモンである。
【0164】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、止血および血栓症(例えば、血友病A
、血友病B、外科または産科処置と関連する遺伝性AT-III欠損症、または重度の遺
伝性プロテインC欠乏症を患う患者における血栓塞栓症、静脈血栓症、および電撃性紫斑
病;肺血栓塞栓症、心筋梗塞、急性虚血性脳卒中、中心静脈アクセス装置(centra
l venous access devices)の閉塞、急性心筋梗塞、血友病Aま
たはBおよび第VIII因子または第IX因子に対する阻害剤を有する患者における出血
、死亡のリスクが高い重症敗血症、ヘパリン起因性血小板減少症、冠動脈形成術における
血液凝固、急性進行性貫壁性心筋梗塞、深部静脈血栓症、動脈血栓症、動静脈カニューレ
の閉塞、または不安定狭心症を有する患者における血栓溶解)を治療するのに有用である
。
【0165】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、代謝酵素欠損(例えば、ゴーシェ病、
ポンペ病、糖原病II型、HurlerおよびHurler-Scheie型のムコ多糖
症I型、ムコ多糖症II型、ハンター症候群、ムコ多糖症VI型、またはファブリー病)
を治療するのに有用な酵素である。いくつかの実施態様では、酵素は、肺および胃腸管障
害(例えば、先天性α-1-アンチトリプシン欠損症、ガス、腹部膨満、ラクトースを消
化できないことに起因する腹痛および下痢、嚢胞性線維症、慢性膵炎、膵機能不全、ビル
ロートII胃バイパス手術後、膵管閉塞、脂肪便、消化不良、ガス、または膨満)を治療
するのに有用である。いくつかの実施態様では、酵素は、免疫不全(例えば、アデノシン
デアミナーゼ欠損に起因する重症複合免疫不全疾患、または原発性免疫不全)を治療する
のに有用である。
【0166】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、癌(例えば、膀胱癌、脳癌、乳癌、大
腸癌、子宮頸癌、胃腸癌、尿生殖器癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌
、皮膚癌、または精巣癌;特に、肉腫、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、粘
液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、奇形腫、肺癌、気管支原性肺癌、扁平細胞、未分化小
細胞、未分化大細胞、腺癌、肺胞・細気管支癌(alveolar bronchiol
ar carcinoma)、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、胃
腸癌、食道癌、扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫、胃癌、癌腫、リンパ腫、平滑
筋肉腫、膵癌、管状腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノ
イド腫瘍、VIP産生腫瘍、小腸癌、腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、
平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫、大腸または結腸の癌、管状腺腫、絨毛
腺腫、過誤腫、平滑筋腫、尿生殖器癌、腎癌、腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽腫)、リンパ
腫、白血病、膀胱癌、尿道癌、扁平上皮癌、移行上皮癌、前立腺癌、精巣癌、精上皮腫、
奇形腫、胎児性癌、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、間質細胞腫(interstitial
cell carcinoma)、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫、肝臓癌、肝
細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫、骨癌、骨原性肉腫
(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫
(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良
性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、巨細胞腫、神経系癌、頭蓋骨の癌
、骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎、髄膜癌、髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症
、脳癌、星細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形性神経膠芽
腫、乏突起神経膠腫、シュワン細胞腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍、脊髄の癌、神経線維
腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫、婦人科癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、子宮頚癌、前
腫瘍性子宮頚部異形成、卵巣癌、卵巣癌、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類不能癌
、顆粒膜-莢膜細胞腫(granulosa-theca cell tumor)、セ
ルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫、外陰癌、扁平上皮癌、上皮
内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫、膣癌、明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫、胎児性横
紋筋肉腫、卵管癌、血液系癌、血液の癌、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血
病(CML)、急性リンパ芽球性(lymphoblastic)白血病(ALL)、慢
性リンパ芽球性(lymphoblastic)白血病、慢性リンパ性(lymphoc
ytic)白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、ホジキンリンパ
腫、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症
、皮膚癌、悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ、異形成母斑、脂
肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬、副腎癌、および神経芽腫)を治療するのに
有用な抗体である。
【0167】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、炎症性疾患または状態(例えば、関節
リウマチ、乾癬、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、変形性関節症(o
steoarthritis)、変形性関節症(degenerative arthr
itis)、リウマチ性多発筋痛症、強直性脊椎炎、反応性関節炎、痛風、偽痛風、炎症
性関節疾患、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、および線維筋痛症を治療するのに有
用な抗体である。追加の型の関節炎としては、アキレス腱炎、軟骨無形成症、先端肥大性
関節症、癒着性関節包炎、成人スチル病、鵞足炎、無腐性壊死、ベーチェット症候群、上
腕二頭筋腱炎、Blount病、ブルセラ症性脊椎炎(brucellar spond
ylitis)、滑液包炎、踵骨滑液包炎、ピロリン酸カルシウム二水和物沈着症(CP
PD)、結晶沈着症、カプラン症候群、手根管症候群、軟骨石灰化症、膝蓋軟骨軟化症、
慢性滑膜炎症、慢性再発性多発性骨髄炎、チャーグ・ストラウス症候群、コーガン症候群
、コルチコステロイド誘発性骨粗鬆症、肋胸骨症候群(costosternal sy
ndrome)、クレスト症候群、クリオグロブリン血症、変性関節疾患、皮膚筋炎、糖
尿病性手指強皮症、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、椎間板炎、円板状エリテマトー
デス、薬剤誘発性ループス、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、デュピュイトラン拘縮、
エーラス・ダンロス症候群、腸炎性関節炎、上顆炎、びらん性変形性関節症(erosi
ve inflammatory osteoarthritis)、運動誘発性コンパ
ートメント症候群、ファブリー病、家族性地中海熱、ファーバー脂肪性肉芽腫症、フェル
ティ症候群、第五病、扁平足、異物性滑膜炎、フライバーグ病、真菌性関節炎、ゴーシェ
病、巨細胞性動脈炎、淋菌性関節炎、グッドパスチャー症候群、肉芽腫性動脈炎、関節血
症、ヘモクロマトーシス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、B型肝炎表面抗原疾患、股
関節形成不全、ハーラー症候群、過剰可動性症候群、過敏性血管炎、肥大性骨関節症、免
疫複合体病、インピンジメント症候群、ジャクー関節症、若年性強直性脊椎炎、若年性皮
膚筋炎、若年性関節リウマチ、川崎病、キーンベック病、レッグ・カルベ・ペルテス病、
レッシュ・ナイハン症候群、線状強皮症、リポイド皮膚関節炎、ロフグレン症候群、ライ
ム病、悪性滑膜腫、マルファン症候群、内側滑膜ひだ症候群(medial plica
syndrome)、転移性癌性関節炎(metastatic carcinoma
tous arthritis)、混合性結合組織病(MCTD)、混合型クリオグロブ
リン血症、ムコ多糖症、多中心性細網組織球症、多発性骨端異形成症、マイコプラズマ関
節炎、筋筋膜性疼痛症候群、新生児ループス、神経障害性関節症、結節性脂肪織炎、組織
褐変症、肘頭部滑液包炎、オスグッド・シュラッター病、変形性関節症、骨軟骨腫症、骨
形成不全症、骨軟化症、骨髄炎、骨壊死、骨粗鬆症、オーバーラップ症候群、肥厚性皮膚
骨膜症、骨パジェット病、回帰性リウマチ、膝蓋大腿部痛症候群、ペレグリニ・スチーダ
症候群、色素性絨毛結節性滑膜炎、梨状筋症候群、足底筋膜炎、結節性多発動脈炎、リウ
マチ性多発筋痛症、多発性筋炎、膝窩嚢胞、後脛骨筋腱炎(posterior tib
ial tendinitis)、ポット病、膝蓋前滑液包炎、人工関節感染症、弾性線
維性仮性黄色腫、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎/ライター症候群、反射性
交感神経性ジストロフィー、再発性多発軟骨炎、再灌流傷害、踵骨後部滑液包炎(ret
rocalcaneal bursitis)、リウマチ熱、リウマチ性血管炎、肩回旋
筋腱板炎、仙腸関節炎、サルモネラ菌性骨髄炎、サルコイドーシス、鉛痛風、ショイエル
マン骨軟骨炎(Scheuermann’s osteochondritis)、強皮
症、化膿性関節炎、血清反応陰性関節炎、赤痢菌性関節炎、肩手症候群、鎌状赤血球関節
症(sickle cell arthropathy)、シェーグレン症候群、大腿骨
頭すべり症、脊柱管狭窄症、脊椎分離症、ブドウ球菌性関節炎、スティックラー症候群、
亜急性皮膚エリテマトーデス、スイート症候群、シデナム舞踏病、梅毒性関節炎、全身性
エリテマトーデス(SLE)、高安動脈炎、足根管症候群、テニス肘、ティーツェ症候群
、一過性骨粗鬆症、外傷性関節炎、転子部滑液包炎、結核性関節炎、潰瘍性大腸炎の関節
炎、分類不能型結合組織症候群(UCTS)、蕁麻疹様血管炎、ウイルス性関節炎、ウェ
ゲナー肉芽腫症、ウィップル病、ウィルソン病、またはエルシニア性関節炎(yersi
nial arthritis))が挙げられる。いくつかの実施態様では、治療用タン
パク質は、感染症(例えば、HIV感染症)を治療するのに有用である。
【0168】
いくつかの実施態様では、疾患または状態は、不十分な量の成長ホルモン、例えば、ヒ
ト成長ホルモン(hGH)によって特徴付けることができる。例えば、hGHは、hGH
欠乏を患う小児または成人における補充療法として使用することができる。低身長をもた
らすがhGHの欠乏と関連しない状態を治療するために、またはAIDSなどの疾患の結
果としての筋消耗を改善するために筋肉量を維持することにおいて、本開示の方法を使用
して、例えばヒト成長ホルモンを送達することもできる。
【0169】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、造血(例えば、貧血、骨髄形成異常、
腎不全もしくは化学療法に起因する貧血、手術前準備、慢性腎不全(chronic r
enal insufficiency)および慢性腎不全(chronic rena
l failure)(+/-透析)を患う患者における貧血、好中球減少症、AIDS
、または化学療法後、または骨髄移植における好中球減少症、重症慢性好中球減少症、白
血球減少症、骨髄移植後の骨髄再構成、HIV/AIDS、または(特に骨髄抑制性化学
療法後の)血小板減少症)を治療するのに有用である。
【0170】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、不妊症を治療するのに有用である。(
例えば、生殖補助、および黄体形成ホルモン欠乏を伴う不妊症を治療すること)。いくつ
かの実施態様では、治療用タンパク質は、免疫調節において有用である。
【0171】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、成長制御と関係がある疾患または状態
を治療するのに有用である。(例えば、先端巨大症、VIP産生腫瘍(VIP-secr
eting adenoma)および転移性カルチノイド腫瘍の症状軽減、脊椎固定術、
骨損傷修復、脛骨骨折癒合不全、腰椎、脊椎固定術、思春期早発症、糖尿病性潰瘍のため
の化学療法またはデブリードマン補助を受けている患者における重度の口腔粘膜炎)。い
くつかの実施態様では、治療用タンパク質は、褥瘡、静脈瘤性潰瘍、焼痂のデブリードマ
ン、裂開した創傷、日焼け、または急性非代償性のうっ血性心不全を治療するのに有用で
ある。
【0172】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、巨大分子の酵素的分解に有用である。
(例えば、多くの型のジストニア(例えば、頸部)、慢性皮膚潰瘍および重い熱傷を負っ
た領域のデブリードマン、嚢胞性線維症、気道感染症、予測値の40%を超えるFVCを
有する選択された患者における気道感染症、または急性および慢性病変(例えば、褥瘡、
静脈瘤性および糖尿病性潰瘍、熱傷、術後創、毛巣嚢胞傷、癰、および他の創傷)におけ
る壊死組織のデブリードマンもしくは脱落組織の融解)。いくつかの実施態様では、治療
用タンパク質は、臓器移植(例えば、急性の腎臓移植拒絶反応を治療すること)に有用で
ある。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質は、肺障害(例えば、RSウイルス感
染症、喘息)を治療するのに有用である。
【0173】
いくつかの実施態様では、本開示は、組織再生または幹細胞ホーミングのために有用な
粒子を提供する。他の実施態様では、本明細書に記載した通りの粒子、およびこの粒子を
含む組成物は、組織培養に有用である(例えば、増殖因子が装填されたDSCS NPを
様々な幹細胞培養培地中で使用して、組み込まれた増殖因子の効果を延長させ、かつ、頻
繁な培養培地の交換を省くことによって幹細胞培養の費用を削減することができる)。研
究目的では、タンパク質プルダウン濃縮、および粒子からタンパク質を分離することを伴
わないSDSゲル上での分析のために、タンパク質を含まない(非装填)DSCS NP
を使用することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載した粒子および組成
物は、美容目的で使用することができる(例えば、細胞によって分泌される増殖因子を吸
収させるために、非装填DSCS NPを、幹細胞馴化培地に添加することができる、ま
た、特別な皮膚の若返りのために使用することができる)。
【0174】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質を含む治療用粒子は、黄斑変性を治療する
のに有用である。いくつかの実施態様では、治療用タンパク質を含む治療用粒子は、肺高
血圧症を治療するのに有用である。
【0175】
組成物および投与経路
本出願は、特に、本明細書に記載した通りの粒子(例えば、治療用粒子)を含む組成物
を提供する。この組成物は、粒子(例えば、治療用粒子)が薬学的に許容可能な担体と共
に含まれる医薬組成物であり得る。
【0176】
本出願はまた、有効量の治療用タンパク質を含む粒子と、薬学的に許容可能な担体とを
含む医薬組成物を提供する。本開示の組成物は、有機溶媒に対して高感受性であり得る治
療用タンパク質を、他の調製物に必要とされる溶媒に曝露させずに送達する能力を提供す
る。こうした組成物は、天然の形態と比較して、粒子内での治療用タンパク質の高い生理
活性を保持し、向上された安定性も有する。いくつかの実施態様では、組成物中の治療用
タンパク質の生理活性は、天然の治療用タンパク質の生理活性の約70%から約100%
、約80%から約100%、または約90%から約100%の範囲内である。いくつかの
実施態様では、組成物中の治療用タンパク質の生理活性は、天然の治療用タンパク質の生
理活性の約90%、約95%、約97%、または99%超である。したがって、いくつか
の態様では、治療用タンパク質を含む粒子を含む、本明細書に記載した通りの組成物が提
供され、ここでは、組成物中の治療用タンパク質の生理活性は、天然の治療用タンパク質
の生理活性の約70%から約100%、約80%から約100%、または約90%から約
100%の範囲である、または、組成物中の治療用タンパク質の生理活性は、天然の治療
用タンパク質の生理活性の約90%、約95%、約97%、または99%超である。
【0177】
放出プロフィールの制御は、TNPに装填されていない、対象における治療用タンパク
質と比較して、対象内での治療用タンパク質の薬物動態プロフィールの向上をもたらすこ
とができる。薬物動態プロフィールの向上は、AUC、半減期、クリアランス、平均滞留
時間、および分布容積(Vss)から選択される1以上のものの性質の改善を呈すること
ができる。いくつかの実施態様では、本開示の組成物中の治療用タンパク質のAUCは、
天然の治療用タンパク質のAUCの約100%から約1000%、約150%から約70
0%、または約200%から約500%の範囲内である、または、組成物中の治療用タン
パク質のAUCは、天然の治療用タンパク質のAUCの約150%、約200%、約25
0%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、または500%
超である。いくつかの実施態様では、本開示の組成物中の治療用タンパク質の半減期は、
天然の治療用タンパク質の半減期の約100%から約100,000%、約100%から
約1000%、約100%から約500%、約150%から約400%、または約200
%から約300%の範囲内である、または、組成物中の治療用タンパク質の半減期は、天
然の治療用タンパク質の半減期の約150%、約200%、約250%、約300%、ま
たは400%超である。いくつかの実施態様では、本開示の組成物中の治療用タンパク質
のクリアランスは、天然の治療用タンパク質のクリアランスの約1%から約100%、約
10%から約90%、約20%から約80%、約30%から約70%、または約40%か
ら約80%の範囲内である、または、組成物中の治療用タンパク質のクリアランスは、天
然の治療用タンパク質のクリアランスの約3%、約5%、約10%、約15%、約20%
、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%であ
る。いくつかの実施態様では、本開示の組成物中の治療用タンパク質の平均滞留時間は、
天然の治療用タンパク質の平均滞留時間の約100%から約1000%、約150%から
約700%、または約200%から約500%の範囲内である、または、組成物中の治療
用タンパク質の平均滞留時間は、天然の治療用タンパク質の平均滞留時間の約150%、
約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500
%、または500%超である。
【0178】
本明細書で使用する場合、「有機溶媒を実質的に含まない」は、有機溶媒をほとんどま
たはまったく含まない組成物を指す。例えば、有機溶媒を実質的に含まない水性の混合物
は、混合物からほとんどまたはすべての有機溶媒を除去する工程にかけられている水性の
混合物である。いくつかの実施態様では、有機溶媒を実質的に含まない組成物は、重量で
、約5%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、0.1%以下、0.05%以
下、または約0.01%以下の有機溶媒を含むことができる。いくつかの実施態様では、
有機溶媒を実質的に含まない組成物は、約5%、約2%、約1%、0.5%、約0.1%
、約0.05%、または約0.01%の有機溶媒を含むことができる。いくつかの実施態
様では、有機溶媒を実質的に含まない組成物は、薬学的に許容可能な緩衝液を含む水溶液
を含むことができる。いくつかの実施態様では、有機溶媒を実質的に含まない組成物は、
薬学的に許容可能な塩を含む水溶液を含むことができる。一般的な薬学的に許容可能な緩
衝液としては、酢酸(酢酸および酢酸ナトリウム)、クエン酸(クエン酸およびクエン酸
ナトリウム)、およびリン酸(リン酸ナトリウムおよびリン酸二ナトリウム)緩衝液が挙
げられる。薬学的に許容可能な塩溶液としては、希薄塩類溶液が挙げられる。組成物は、
pH緩衝リン酸溶液または塩類溶液中であり得る。いくつかの実施態様では、有機溶媒を
実質的に含まない組成物は、水中の組成物である。いくつかの実施態様では、有機溶媒を
実質的に含まない組成物は、塩を含まない可能性がある。
【0179】
担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ薬学的に許容可能な担体の場合には医薬
品中に使用される量でそのレシピエントに対して有害でないという意味で、「許容可能な
」または「薬学的に許容可能な」。
【0180】
本出願の医薬組成物中に使用することができる薬学的に許容可能な担体、補助剤、およ
びビヒクルとしては、限定はされないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミ
ニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩な
ど)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和した植物性脂肪酸の部分的なグ
リセリド混合物、水、塩または電解質(硫酸プロタミンなど)、リン酸水素二ナトリウム
、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、
ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシ
メチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシ
プロピレン-ブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられる。
【0181】
必要に応じて、医薬組成物中の本出願の治療用タンパク質の溶解度およびバイオアベイ
ラビリティを、当技術分野で周知の方法によって向上させることができる。1つの方法と
しては、製剤中の脂質賦形剤の使用が挙げられる。「Oral Lipid-Based
Formulations:Enhancing the Bioavailabil
ity of Poorly Water-Soluble Drugs(Drugs
and the Pharmaceutical Sciences)」,David
J.Hauss,ed.Informa Healthcare,2007;および「R
ole of Lipid Excipients in Modifying Ora
l and Parenteral Drug Delivery:Basic Pri
nciples and Biological Examples」,Kishor
M.Wasan,ed.Wiley-Interscience,2006を参照のこと
。
【0182】
バイオアベイラビリティを向上させる別の公知の方法は、場合によってはLUTROL
(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などの
ポロクサマー、または酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック共重合体と共に製剤化さ
れる、本出願の化合物の非晶質形の使用である。米国特許第7,014,866号明細書
;および米国特許出願公開第20060094744号明細書および第20060079
502号明細書を参照のこと。
【0183】
本出願の医薬組成物としては、経口、直腸内、経鼻、局所(頬側および舌下が含まれる
)、膣内、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内が含まれる)投与に適した
ものが挙げられる。他の製剤は、単位剤形、例えば、錠剤、徐放性カプセルで、また、リ
ポソームで、好都合に提供することができ、薬学の技術分野で周知のあらゆる方法によっ
て調製することができる。例えば、Remington:The Science an
d Practice of Pharmacy,Lippincott Willia
ms&Wilkins,Baltimore,MD(20th ed.2000)を参照
のこと。
【0184】
本出願の医薬組成物は、注射(例えば、皮下、筋肉内、または静脈内)によって投与す
ることができる。例えば、医薬組成物は、例えば、この医薬組成物が、黄斑変性を治療す
るのに有用なタンパク質を含む場合、注射によって対象の眼に投与することができる。
【0185】
こうした調製方法には、投与されることとなる分子と、1種以上の補助的成分を構成す
る担体とを混合するステップが含まれる。一般に、組成物は、活性成分と、液体担体、リ
ポソームもしくは微粉化された固体担体、またはこれらの両方とを均一かつ十分に混合し
、次いで、必要であれば生成物を成形することによって調製される。
【0186】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質を含む粒子は、経口的に投与される。経口
投与に適した本出願の組成物は、カプセル剤、サシェ(sachet)、もしくは錠剤(
それぞれがあらかじめ定められた量の活性成分を含有する);散剤もしくは顆粒剤;水性
の液体もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液;水中油型液体エマルジョン;油中
水型液体エマルジョン;リポソームに充填させて;またはボーラスとしてなどの不連続な
単位として提供することができる。ソフトゼラチンカプセルは、こうした懸濁液を含有さ
せるのに有用であり得、これは、化合物吸収の速度を有益に増大させることができる。
【0187】
経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトースおよびトウ
モロコシデンプンが挙げられる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も
添加される。カプセル形での経口投与については、有用な希釈剤としては、ラクトースお
よび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性の懸濁剤が経口的に投与される場合、
活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と合わせられる。所望される場合、ある種の甘味料お
よび/または着香料および/または着色剤を添加することができる。
【0188】
経口投与に適した組成物としては、風味付けされた基剤、通常、スクロースおよびアラ
ビアゴムまたはトラガカントゴム中に成分を含むトローチ剤(lozenge);および
ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性な基剤中
に活性成分を含む香錠が挙げられる。
【0189】
本出願の医薬組成物は、直腸内投与のための座剤の形態で投与することができる。これ
らの組成物は、本出願の化合物を、適切な非刺激性の賦形剤(これは、室温では固体であ
るが直腸温では液体であるので、直腸内で溶けて活性成分を放出することとなる)と混合
することによって調製することができる。こうした材料としては、限定はされないが、カ
カオ脂、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0190】
本出願の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することができる。こ
うした組成物は、医薬製剤の技術分野で周知の技術に従って調製され、また、ベンジルア
ルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進
剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野で公知の可溶化剤または分散剤を用い
て、生理食塩水中の溶液として調製することができる。例えば、米国特許第6,803,
031号明細書を参照のこと。
【0191】
所望される治療が、局所適用によって容易に到達可能な部位または器官を含む場合、本
出願の医薬組成物の局所投与が、特に有用である。
【0192】
本開示の局所組成物は、エアロゾルスプレー、クリーム、乳剤、固体、液体、分散系、
フォーム、オイル、ゲル、ヒドロゲル、ローション、ムース、軟膏、粉末、パッチ、ポマ
ード、液剤、ポンプスプレー、スティック、ウェットペーパータオル(towelett
e)、セッケンの形態、または局所投与および/または美容およびスキンケア製剤の技術
分野で一般に用いられる他の形態で調製および使用することができる。局所組成物は、乳
剤形態であり得る。
【0193】
いくつかの実施態様では、局所組成物は、治療用タンパク質を含む粒子と、1以上の追
加の成分、担体、賦形剤、または希釈剤(限定はされないが、吸収剤、抗刺激剤、抗ざ瘡
剤、保存剤、酸化防止剤、着色剤/色素、皮膚軟化薬(保湿剤)、乳化剤、皮膜形成/保
持剤、香料、洗い流し不要の(leave-on)角質除去剤(exfoliant)、
処方薬、保存剤、スクラブ剤、シリコーン、皮膚と同質の/修復剤、滑剤(slip a
gent)、日焼け止め、界面活性剤/洗剤入り清浄剤、浸透促進剤、および増粘剤が含
まれる)との組み合わせを含む。
【0194】
成分のリストは、当技術分野で周知であり、例えば、「Cosmetics:Scie
nce and Technology」,edited by M.S.Balsam
and E.Sagarin,2nd Edition,1972,Wiley Pu
b.Co.;M.G.DeNavasseによる「The Chemistry and
Manufacture of Cosmetics」;および「Harry’s C
osmeticology」,J.B.Wilkinson et al.,7th E
dition,1982,Chem.Pub.Co(上のそれぞれの開示の内容全体を参
照によって本明細書に組み込む)に開示されている。いくつかの実施態様では、希釈剤、
担体、および賦形剤には、限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG200、
PEG300、PEG400、PEG540、PEG600、PEG1450、またはそ
れらの混合物など)が含まれ得る。
【0195】
本出願の医薬組成物においては、治療用タンパク質を含む粒子は、有効量(例えば、治
療有効量)で存在する。
【0196】
動物とヒトについての投薬量(ミリグラム/体表面(平方メートル)に基づく)の相互
関係は、Freireich et al.,Cancer Chemother.Re
p,1966,50:219に記載されている。体表面積は、対象の身長と体重から近似
的に決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy
Pharmaceuticals,Ardsley,N.Y.,1970,537を参
照のこと。
【0197】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質を含む粒子の有効量は、例えば、約1μg
から約1000mgの範囲であり得る。これらの実施態様のいくつかの態様では、治療用
タンパク質を含む有効量の粒子を含有する組成物が、1日1回、1日2回、または1日3
回投与される。
【0198】
いくつかの実施態様では、治療用タンパク質を含む粒子の有効量は、例えば、約0.0
01μg/kgから約10mg/kgの範囲であり得る。
【0199】
当業者によって認識される通り、有効な用量はまた、治療される疾患、疾患の重症度、
投与経路、性別、年齢、および対象の全身健康状態、賦形剤用法、他の薬剤の使用などの
他の治療的処置との同時用法の可能性、および治療を行う医師の判断に応じて変動するこ
ととなる。
【0200】
併用療法
本明細書に記載した通りの、治療用タンパク質を含む粒子、またはその組成物と組み合
わせて、1種以上の追加の医薬品または治療方法、例えば、抗ウイルス薬、化学療法薬、
他の抗癌剤、免疫増強剤、抗炎症薬、免疫抑制剤、放射線、抗腫瘍および抗ウイルスワク
チン、サイトカイン療法(例えば、IL2、GM-CSFなど)、および/またはチロシ
ンキナーゼ阻害剤を使用することができる。これらの薬剤は、単一の剤形で本発明の治療
用粒子と組み合わせることもできるし、これらの薬剤を、別の剤形として同時にまたは連
続的に投与することもできる。本明細書に記載した治療用タンパク質のいずれか1つを、
本開示の粒子および組成物と組み合わせて使用されることとなる追加の薬剤として使用す
ることができる。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は、幹細胞(例えば、幹細胞治療
である。
【0201】
キット
本発明はまた、例えば、本明細書に言及した疾患または障害のいずれか1つの治療また
は予防において有用な医薬キットを含む。このキットは、治療有効量の本発明の粒子を含
む医薬組成物を含有する1つ以上の容器を含む。こうしたキットは、所望される場合、1
つ以上の様々な従来の医薬キット構成要素、例えば、当業者には容易に明らかであろう、
1種以上の薬学的に許容可能な担体を含む容器、追加の容器などをさらに含むことができ
る。投与されるべき成分の量、投与のためのガイドライン、および/または成分を混合す
るためのガイドラインを表示する、挿入物としてのまたはラベルとしての説明書も、キッ
ト内に含めることができる。
【0202】
定義
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示
が属する分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0203】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈によ
って他に明確に指示しない限り、複数の指示内容が含まれる。
【0204】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、「およそ」(例えば、示された値のおよそプ
ラスマイナス10%)を意味する。
【0205】
用語「粒子」は、本明細書で使用する場合、約1nmから約1000μmのサイズを有
する組成物を指す。
【0206】
用語「ナノ粒子」は、本明細書で使用する場合、約1nmから約1000nmのサイズ
(例えば、球体換算径(equivalent spherical diameter
))を有する粒子を指す。
【0207】
用語「粒径」(または「ナノ粒子径」もしくは「微小粒子径」)は、本明細書で使用す
る場合、ナノ粒子または微小粒子の分布におけるサイズ中央値を指す。サイズ中央値は、
個々のナノ粒子の平均の直線寸法、例えば、球状のナノ粒子の直径から決定される。サイ
ズは、動的光散乱(DLS)および透過型電子顕微鏡(TEM)技術を含めた、当技術分
野のいくつもの方法によって決定することができる。
【0208】
用語「組み込み効率」および「封入効率」は、本明細書で使用する場合、粒子の調製に
使用される最初の量の治療用タンパク質に対する、粒子(例えば、ナノ粒子)に組み込ま
れる治療用タンパク質の量の割合を指す。
【0209】
用語「装填能力」および「装填効率」は、本明細書では互換的に使用され、粒子(例え
ば、ナノ粒子)の荷電単糖単位のモル分率に対する、封入される治療用タンパク質のモル
分率を指す。
【0210】
本明細書で使用する場合、用語「水性の溶媒」は、少なくとも50%、少なくとも60
%、少なくとも70%、少なくとも90%、または少なくとも95%の水を含む液体を指
す。いくつかの実施態様では、水性の溶媒は、水である。いくつかの実施態様では、水性
の溶媒は、緩衝液(例えば、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS))である。
【0211】
本明細書で使用する場合、「室温」は、室内の周囲温度、典型的には約15℃から約2
5℃の温度を指す。いくつかの実施態様では、室温は、18℃である。
【実施例0212】
材料および方法
硫酸デキストランナトリウム塩(重量平均分子量500kDa)は、Fisher S
cientificから購入した。キトサン(分子量範囲50~190kDa、75~8
5%脱アセチル化)(カタログ番号448869)、硫酸亜鉛、マンニトール、アズール
A塩化物(カタログ番号861049)、およびリゾチーム(ニワトリ卵白)、グルタル
酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カ
ルボジイミド(EDC)、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)は、Sigm
a-Aldrichから購入した。チバクロンブリリアントレッド(Cibacron
brilliant red)3B-A(カタログ番号sc-214719)は、San
ta Cruz Biotechnologyから購入した。Ultra Pure D
Nase/RNase不含蒸留水は、lnvitrogenから入手した。組換えヒトS
DF-lαおよびVEGF165は、以前に記載されたプロトコルに従って調製した。(
例えば、Lauten,E.et al.Nanoglycan complex fo
rmulation extends VEGF retention time in
the lung.Biomacromolecules 2010,11(7),1
863-72;およびYin,T.et al.SDF-1alpha in glyc
an nanoparticles exhibits full activity
and reduces pulmonary hypertension in ra
ts.Biomacromolecules 2013,14(11),4009-20
を参照のこと)。ウシ血清アルブミン(BSA)は、EMD Milliporeから購
入した。塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)および骨形成タンパク質-2(BMP
-2)は、Peprotechから購入した。SDF-lα ELISAキット(ヒトC
XCL12/SDF-lα DuoSet)は、R&D Systemsから購入した。
【0213】
実施例1-DSCSナノ粒子の調製および分析
ナノ粒子調製物のための一般手順:
この研究では、DSCSナノ粒子を、1.2~300mlの総体積で調製した。300
mlの調製については、150ml DS(1mg/ml(H2O中))を、700rp
mで撹拌し、37.5ml CS(1mg/ml、0.2% 酢酸/H2Oに溶解し、0
.8、0.45、および0.2μm SFCA膜を通して連続的に濾過した)と15分間
混合した。次いで、撹拌速度を800rpmに増大し、5.8ml 200mM ZnS
O4を、シリンジポンプを通して1ml/分で添加した。この混合物を、さらに60分間
撹拌し、その後、100mlのマンニトールの15%溶液の添加を行った。DSCSナノ
粒子を、20,000×gでの20分間の遠心分離によって沈殿させた。粒子ペレットを
70ml水で2回洗浄し、30,000×gで40分間遠心分離させた。最終の粒子を、
12mlのマンニトールの5%溶液に懸濁し、0.5mlの一定分量に分け、-80℃で
凍結させ、3日間凍結乾燥させた。乾燥させた粒子を、使用まで4℃で乾燥保管した。
【0214】
粒径およびゼータ電位最適化研究
以前に記載された手順に従う粒子分析のために、DelsaNano C Parti
cle Analyzer (Beckman)を使用した(例えば、Bader et
al,Preparation and characterization of
SDF-1alpha-chitosan-dextran sulfate nano
particles.J Vis Exp 2015,(95),52323を参照のこ
と)。簡単に言うと、10~15μlの粒子試料を、サイズまたはゼータ電位測定のため
に、0.5mlまたは2.5mlの水にそれぞれ希釈した。機器の標準の操作手順に従っ
た。自己相関関数を、Continアルゴリズムによって分析し、粒子直径を、キュムラ
ントとして示した。ゼータ電位を、Smoluchowski近似を使用して、電気泳動
移動度から算出した。
【0215】
マンニトール濃度の効果:
凍結乾燥中のDSCSナノ粒子の安定性に対するマンニトールの効果を、
図1に示す。
0.3~5%マンニトールの存在下で、粒子のサイズと多分散指数との両方を徐々に低下
させた。濃度効果は、2.5~5%でプラトーに達し、DSCSナノ粒子調製のために、
5%マンニトールを選択した。
【0216】
亜鉛濃度の効果:
粒径に対する亜鉛濃度の効果を、
図2に示す。0から20mMに亜鉛濃度を増大させる
ことは、凍結乾燥前の粒径低下をもたらしたが、これは凍結乾燥後に増加した。どちらの
場合にも、粒子の多分散指数は、亜鉛濃度を増大させると共に低下した。DSCSナノ粒
子調製のために、6mMの硫酸亜鉛濃度を選択した。
【0217】
凍結乾燥の効果:
凍結乾燥は、粒子の全体サイズを低下させた;しかし、粒子の多分散指数は増加した(
図2参照)。多分散の増大は、凍結乾燥プロセス中の超微小粒子の生成に起因する、粒子
の不均一性の増大を反映していた。残りの粒子から粒子を超微小化するために、凍結乾燥
させたDSCSナノ粒子の再構成後に、遠心分離(21,000×g、20分間)を実施
し、得られた上清を捨てた。最後に調製された粒子のパラメータを、表1に示す:
【0218】
【0219】
DSCSナノ粒子中の非中和DSの定量化(アズールAアッセイ)
DSCS NP中の荷電DSの量を決定するために、アズールA異染色性アッセイを使
用した。アズールAアッセイは、溶液中の硫酸デキストラン(例えば、Ellis,H.
et al.The estimation and recovery of dex
tran sulphates in biological fluids.J.Cl
in.Pathol.1959,12,467-72を参照のこと)およびヘパリン(例
えば、Grant,A.et al.Metachromatic activity
of heparin and heparin fragments.Anal.Bi
ochem.1984,137(1),25-32を参照のこと)の濃度を測定するため
に、以前より確立されている。
【0220】
アズールAを、ストック溶液(4℃で保管)として1mg/mlで水に溶解し、作業用
溶液として水で0.02mg/mlに希釈した。分光光度分析のために、2mlアズール
A作業用溶液を、ポリスチレンキュベットに添加し、20μl DS溶液と混合した。測
定は、混合から15分以内に行った。96ウェルプレートフォーマットにおいてDS濃度
を決定するために、10μl DS標準(硫酸デキストランナトリウム塩を用いて作成)
または0~0.20mg/mlの濃度範囲のNP試料を、プレートウェルに添加した。次
に、アズールA作業用溶液(200μl)を添加し、続いて、プレートシェーカー上で2
分間混合した。620nmの波長での吸光度を読み取った。試料は、3連で行い、空のウ
ェルは、装置ブランクとして使用した。
【0221】
DS溶液と相互作用させた後のアズールAの吸収スペクトルを、
図3Aに示す。典型的
な検量線を
図3Bに示し、0.04~0.2mg/mL濃度の硫酸デキストランナトリウ
ム塩を用いて標準溶液を作製した。
【0222】
アズールAアッセイが、DSCS NP中の荷電DSを検出することを確認するために
、アッセイを実施して、粒子調製の各ステップにおけるDS濃度を測定した。その結果を
表2に示す:
【0223】
【0224】
DS含有量の低下の測定:
表2に表されたデータから分かる通り、DSの検出可能な総量は、NP調製の第1のス
テップにおける150mlの1mg/ml DSへの37.5mlの1mg/ml CS
の添加後に、CSによるDS中の硫酸基の中和に起因して、約20%低下した。DSCS
ナノ粒子中の非中和DS含有量の算出は、次の通りに実施した:DS(硫黄含有量17%
)中の硫酸グルコース単位の質量は、2.3硫酸ナトリウム置換[(23+97-18)
*2.3=235]と1グリコシド結合(5%分枝を無視)(-18)を有するグルコー
ス単位(質量=180)と仮定すれば、およそ397であり;CS(80%脱アセチル化
)中のグルコサミン単位の質量は、0.8グルコサミン単位(179*0.8=143)
、0.2 N-アセチルグルコサミン単位(221*0.2=44)、および1グリコシ
ド結合(-18)と仮定すれば、169である。4:1のDSとCSとの重量比では、D
SとCS中の糖単位の比は、1:0.59である。各単位は、平均で、DS中の2.3負
電荷とCS中の0.8正電荷を有する。したがって、DSとCSとの間の総電荷比は、約
2.3:0.47(5:1)である。中和された場合、荷電DSは、全体の約80%を構
成するであろう。この電荷は、硫酸亜鉛およびマンニトール添加後に残存し、これは、粒
子構造それ自体が、アズールAによるその荷電DSの検出性に影響を与えなかったことを
示している。
【0225】
CS含有量の測定:
チバクロンブリリアントレッド(Cibacron brilliant red)3
B-A比色定量アッセイ(例えば、Mendelovits,A et al,Impr
oved colorimetric determination of chito
san concentrations by dye binding.Appl S
pectrosc 2012,66(8),979-82;およびMuzzarelli
,R.A.,Colorimetric determination of chit
osan.Anal.Biochem.1998,260(2),255-7を参照のこ
と)を使用して、遊離のCSの濃度を測定した。このアッセイを使用して、DSとCSの
混合物中でキトサンは検出されず、これは、CSの完全な中和を示している。
【0226】
実施例2-タンパク質のDSCSナノ粒子への組み込み
タンパク質のナノ粒子への組み込みのための一般手順:
タンパク質組み込みの前に、一定分量の凍結乾燥させたDSCSナノ粒子を水(例えば
、0.5ml)で再構成し、21,000×gで20分間遠心分離して、超微小粒子を除
去した。ペレットを0.5ml 2.5%マンニトールに再懸濁し、アズールAアッセイ
を実施して、懸濁させたNP中の荷電DS濃度を決定した。次いで、タンパク質組み込み
を、次の通りに実施した:
a)40μg荷電DSを含有する量のナノ粒子を、2mlガラスバイアルに移し、水、
そうでなければ特定の緩衝液と混合して、0.3mlの総体積とした。次いで、このナノ
粒子を800rpmで撹拌し、0.1mlタンパク質溶液をゆっくりと添加した。撹拌速
度を300rpmに低下させ、20分間継続して、組み込み反応を完了した、または
b)組み込み反応は、特定の量のDSCS NPおよびタンパク質を、水、50%PB
S、そうでなければ記述した緩衝液に入れたものを希釈し、800rpmで撹拌しながら
NPにタンパク質溶液をゆっくりと添加することによって実施した。総反応体積は、0.
3mlまたは場合によっては0.15mlであり、これを、それぞれ、1.5×8mm撹
拌子を備えた2mlガラスバイアル、または3×3mm撹拌子を備えた1.5ml管に入
れた。この混合物を、300rpmでさらに20分間撹拌した。
【0227】
タンパク質組み込み効率分析のための一般プロトコル
組み込み反応後、21,000×gでの20分間の遠心分離によって、組み込まれてい
ないタンパク質から粒子を分離した。上清を収集し、ペレットを2.5%マンニトールに
再懸濁して、元の体積とした。等しい体積の上清およびペレットを、電気泳動のための4
~20% SDSゲルに装填した。ゲルを、クーマシーブルーで染色し、タンパク質バン
ドを、BioRad ImageLabソフトウェアを使用して、以前に記載されている
濃度測定分析によって定量化した。(例えば、Bader,A.et al,Prepa
ration and characterization of SDF-1alph
a-chitosan-dextran sulfate nanoparticles
.J Vis Exp 2015,(95),52323を参照のこと)。
【0228】
SDF-1α
SDF-lαは、ケモカインかつ重要な幹細胞ホーミング因子である(例えば、Ste
bler,Jet al.Primordial germ cell migrati
on in the chick and mouse embryo:the rol
e of the chemokine SDF-1/CXCL12.Dev.Biol
.2004,272,(2),351-61;Sharma M.et al.Stro
mal-derived factor-1/CXCR4 signaling:ind
ispensable role in homing and engraftmen
t of hematopoietic stem cells in bone ma
rrow.Stem Cells Dev 2011,20,(6),933-46;お
よびGhadge S.et al.SDF-lαlpha as a therape
utic stem cell homing factor in myocardi
al infarction.Pharmacol.Ther.2011,129,(l
)97-108を参照のこと)。その成熟形は、7,963Daの分子量および等電点9
.9を有する。SDF-lαは、溶液では単量体であるが、ヘパリンと結合すると二量体
を形成する(例えば、Fermas S.et al.Sulfated oligos
accharides(heparin and fucoidan)binding
and dimerization of stromal cell-derived
factor-1(SDF-1/CXCL 12) are coupled as
evidenced by affinity CE-MS analysis.Gly
cobiology 2008,18,(12),1054-64;およびSadir
R et al.Characterization of the stromal
cell-derived factor-lalpha-heparin compl
ex.J.Biol.Chem.2001,276,(11),8288-96を参照の
こと)。アルカリ性のpHも、SDF-lαの二量体形成を促進する。SDF-lαは、
ヘパリン断片内の12~14個の糖単位を占める、特異的なヘパリン結合部位を有する。
(例えば、Veldkamp C.et al.The monomer-dimer
equilibrium of stromal cell-derived fact
or-1(CXCL12) is altered by pH,phosphate,
sulfate,and heparin.Protein Sci.2005,14,
(4),1071-81;およびAmara A et al.Stromal cel
l-derived factor-lalpha associates with
heparan sulfates through the first beta-
strand of the chemokine.J.Biol.Chem.1999
,274,(34),23916-25を参照のこと)。
【0229】
SDF NPの形成および特徴付け:
組み込み研究においてDSCS NP中のSDF-lαと荷電DSとの化学量論比を決
定するために、荷電DS中の糖単位の数を、379というDS中の硫酸グルコース単位の
質量を使用して算出した(上の説明を参照のこと)。SDF-1αをDSCS NPと様
々な比で混合することによって、組み込み反応を実施し、続いて、遠心分離を行って、D
SCS NPから組み込まれていないSDF-1αを分離した。ペレットおよび上清分画
中のSDF-1αの量を、SDSゲル上で分析した。SDF-lαの、あらかじめ形成し
たDSCSナノ粒子への組み込みの結果を、
図4Aおよび
図4Bに示す。
【0230】
図4Aは、水(pH6)中で実施された反応について、DSCS NP中の100nm
ol荷電硫酸グルコース単位あたり1.3~1.9nmolのSDF-1α比で、粒径お
よびゼータ電位は有意には変化しなかったことを示す。この点を超えると、粒子は著しく
凝集した。アルカリ性のpH(pH8)は、凝集を誘発するまでに、もう少しの(DSC
S NP中の100nmol荷電硫酸グルコース単位あたり2.5nmolまで)SDF
-1α装填を可能にした。DSCS NPの前述の装填限界(平均約1.5nmolのS
DF-1α/DSCS NP中の100nmol荷電硫酸グルコース単位)は、全荷電D
Sの10%未満が、NP安定性に影響を及ぼす前に占有されている可能性があることを示
唆している。
【0231】
図4Bは、組み込み効率が、試験されたSDF-lα装填量(1~3nmol/100
nmol荷電糖単位)のすべてで、92~100%であったことを示し、これは、DSC
Sナノ粒子中の荷電DSが、より多くのSDF-lαと結合する能力があったが、余分な
結合が粒子の凝集を引き起こしたことを示している。この組み込み効率は、捕捉(ent
rapment)方法を使用して以前に得られたものを超えており、得られた粒径は、以
前に得られたよりも小さかった(例えば、Yin,T.et al,SDF-lalph
a in glycan nanoparticles exhibits full
activity and reduces pulmonary hypertens
ion in rats.Biomacromolecules 2013,14(11
),4009-20(ここでは、組み込み効率は66~80%であり、粒径は約640n
mであった)を参照のこと)。
【0232】
VEGF
VEGFは、血管形成および脈管形成に関与する重要な増殖因子である。(例えば、F
errara,N.,Molecular and biological prope
rties of vascular endothelial growth fac
tor.J Mol Med(Berl)1999,77,(7),527-43を参照
のこと)。このタンパク質は、約40,000DaのMW、および7.6の等電点を有す
るジスルフィド結合されたホモ二量体である(糖鎖修飾を含まない各単量体は19,16
6Daである)。VEGFは、各単量体のカルボキシル末端に位置する2つのヘパリン結
合ドメインを介してヘパリンと結合する。(例えば、Fairbrother,W.et
al.Solution structure of the heparin-bi
nding domain of vascular endothelial gro
wth factor.Structure 1998,6,(5),637-48を参
照のこと)。各単量体中の結合ドメインは、6~7個の糖単位を占め、ホモ二量体VEG
Fは、強い結合のために14個の糖単位を必要とする。(例えば、Robinson,C
.et al.VEGF165-binding sites within hepa
rin sulfate encompass two highly sulfate
d domains and can be liberated by K5 lya
se.J.Biol.Chem.2006,281,(3),1731-40;およびZ
hao,W et al.Binding affinities of vascul
ar endothelial growth factor(VEGF)for he
parin-derived oligosaccharides.Biosci Re
p 2012,32,(1),71-81を参照のこと)。
【0233】
VEGF NPの形成および特徴付け:
VEGFの、あらかじめ形成したDSCSナノ粒子への組み込みを、
図5に示す。
図5
内のデータは、粒子のサイズおよびゼータ電位に有意には影響を及ぼさないVEGFの最
大装填が、DSCS NP中の100nmol荷電硫酸グルコース単位あたり0.63~
1nmol VEGFであり、組み込み効率が、試験されたVEGF装填量(最大2nm
ol)で96~100%であったことを示す。これらの結果は、SDF-lα組み込みか
ら得られた結果と同様である。すなわち、粒子が、より多くのタンパク質と結合する能力
があったのに対して、DSCS NP中の100nmol荷電糖単位のうち、14nmo
lのみが、粒子の安定性に影響を与えずに占有された可能性がある。SDF-1αで判明
したのと同様、VEGFの装填限界は、10%未満の荷電硫酸グルコース単位DSCS
NPが、NPの安定性に影響を与えずに占有され得ることを示唆している。
【0234】
組み込み効率は、試験されたすべてのVEGF装填量(0.25~2nmol/100
nmol荷電糖単位)で、96~100%であり、捕捉方法によって達成されたものを超
えていた。(例えば、Lauten,E.et al.Nanoglycan comp
lex formulation extends VEGF retention t
ime in the lung.Biomacromolecules 2010,1
1,(7),1863-72 showed incorporation effic
iency of ~40%;およびHuang,M et al.Polyelect
rolyte complexes stabilize and controlla
bly release vascular endothelial growth
factor.Biomacromolecules 2007,8,(5),1607
-14は、50~80%の組み込み効率を示していた)。
【0235】
あらかじめ作製したDSCSナノ粒子への、SDF-lα、VEGF、およびBSAの組
み込みの比較
アルブミンおよびグロブリンは、血液中で最も豊富なタンパク質である。タンパク質は
、様々な無機/有機材料の表面に吸着することができるので、あらかじめ形成したDSC
S NPへの、これらのタンパク質の吸着を検討した。
【0236】
BSAは、血清中で最も豊富なタンパク質であり;これは、血液中の様々な小分子また
は巨大分子と結合して運搬する。BSAは、66,463DaのMW、4.7~5.6の
等電点を有し、ヘパリン結合部位またはその配列内のドメインを有しない。DSCSナノ
粒子へのBSAの組み込みを水中で最初に試験し、かなり効率的であることが判明した:
【0237】
a)
図6に示す通り、50μg BSA(0.75nmol)を、DSCSナノ粒子中
の40μg荷電DSと混合することは、BSAのNPへの80%組み込みをもたらした。
それにもかかわらず、50%ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の存在下では、
BSAの8%しか組み込まれなかった;または
【0238】
b)50μgのウシ血清アルブミン(BSA)(0.75nmol)またはヤギガンマ
グロブリン(0.42nmol)を、中水または50%リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
のDSCS NP(100nmol荷電硫酸グルコース単位を含有)と混合した。水中で
混合した場合、かなりの量のBSAおよびガンマグロブリンがDSCS NPに吸着する
(それぞれ、80%および92%)のに対して、50%PBS中で混合した場合には、そ
れぞれ、8%および4%しか吸着しなかった。
【0239】
対照的に、SDF-1αおよびVEGFの、DSCS NPへの組み込みは、50%P
BSによって影響を受けなかった(
図6参照)。
【0240】
あらかじめ作製したDSCSナノ粒子への、リゾチーム、FGF-2、およびBMP-2
の組み込み
リゾチーム、FGF-2、およびBMP-2の組み込みを、50%PBSにおいて研究
した。
【0241】
リゾチーム(MW 14.3kDa、pl 11.4)は、ヘパリン結合タンパク質で
はない(例えば、Ori,A et al.A systems biology ap
proach for the investigation of the hepa
rin/heparan sulfate interactome.J.Biol.C
hem.2011,286,(22),19892-904を参照のこと)が、低濃度塩
類溶液中でヘパリンと結合することが、以前より示されている。(例えば、Zou,S
et al.Heparin-binding properties of lact
oferrin and lysozyme.Comp Biochem Physio
l B 1992,103,(4),889-95;およびVan de Weert,
M et al.Complex coacervation of lysozyme
and heparin:complex characterization an
d protein stability.Pharm Res 2004,21,(1
2),2354-9を参照のこと)。精製されたリゾチームは、商業的供給源から、比較
的大量かつ低コストで得られる可能性がある。
【0242】
FGF-2(MW 17.1kDa、pl 9.6)は、単量体のタンパク質であり、
ヘパリンと結合すると二量体を形成する。(例えば、DiGabriele,A.et
al.Structure of a heparin-linked biologi
cally active dimer of fibroblast growth
factor.Nature 1998,393,(6687),812-7;Faha
m,S.et al.Heparin structure and interact
ions with basic fibroblast growth factor
.Science 1996,271,(5252),1116-20;およびSchl
essinger,J.et al.Crystal structure of a
ternary FGF-FGFR-heparin complex reveals
a dual role for heparin in FGFR binding
and dimerization.Mol.Cell 2000,6,(3),74
3-50を参照のこと)。
【0243】
BMP-2(MW 25.8kDa、pl 8.2)は、ジスルフィド結合されたホモ
二量体ヘパリン結合タンパク質である。(例えば、Ruppert,R.et.al.H
uman bone morphogenetic protein 2 contai
ns a heparin-binding site which modifies
its biological activity.Eur.J.Biochem.1
996,237,(1),295-302;およびVallejo,L et al.F
olding and dimerization kinetics of bone
morphogenetic protein-2,a member of the
transforming growth factor-beta family.
FEBS J.2013,280,(1),83-92を参照のこと)。
【0244】
これらのタンパク質のそれぞれの組み込みを、2つの異なる装填比で検討した。リゾチ
ームおよびFGF-2については、比は、DSCS NP中の100nmol荷電糖単位
あたり1または2nmolのタンパク質であった;BMP-2については、BMP-2は
二量体であるので、この比を半分に減らした。
図7および表3に示す通り、50%PBS
におけるこれらのタンパク質の組み込み効率は、95~100%であった。DSCS N
Pのサイズおよびゼータ電位は、タンパク質と荷電硫酸グルコース単位の比2:100で
のFGF-2が組み込まれたDSCS NPを除いて、有意には変化しなかった。SDF
-1αおよびVEGF組み込みからの知見に加えて、ヘパリン結合タンパク質のDSCS
NPへの最大装填は、DSCS NP中の100nmol荷電硫酸グルコース単位あた
り、単量体タンパク質についてはおよそ1.5nmol、または二量体タンパク質につい
ては0.75nmolであった。これらの試料では、有意な凝集は見られなかった。多分
散指数は、2nmol FGF-2および1nmol BMP-2試料において増加し、
これは、これらが、その装填限界に近づいていることを示唆していた。
【0245】
【0246】
実施例3-SDF-1αナノ粒子およびVEGFナノ粒子の活性および安定性
遊走アッセイプロトコル:
SDF-lαの走化性アッセイ活性を決定するために、ジャーカット細胞遊走アッセイ
を使用した。以前に記載された手順に従った。(例えば、Yin,T.et al.SD
F-lalpha in glycan nanoparticles exhibit
s full activity and reduces pulmonary hy
pertension in rats.Biomacromolecules 201
3,14(11),4009-20を参照のこと)。
【0247】
内皮細胞増殖アッセイプロトコル:
VEGFの活性を決定するために、以前に記載された手順に従ってこのアッセイを使用
した。(例えば、Lauten,E.et al.Nanoglycan comple
x formulation extends VEGF retention tim
e in the lung.Biomacromolecules 2010,11(
7),1863-72を参照のこと)。このアッセイのためにヒト肺動脈内皮細胞(HP
AEC)を使用し、細胞増殖の推定のために細胞増殖アッセイキット(CellTite
r 96)を使用した。
【0248】
SDF NPの活性および安定性:
NPが組み込まれたSDF-1α(SDFNP)の走化活性を検討するために、ジャー
カット細胞遊走アッセイを実施した。遊離またはナノ粒子形のSDF-lαを、遊走培地
で1および3ng/mlの濃度に希釈し、遊走アッセイのために使用した。
図8Aに示す
通り、分析された両方のSDF-lα濃度で、遊離のSDF-lαとSDF-lαナノ粒
子の遊走活性は、類似であり、これは、NP組み込みが、SDF-lαの走化活性に影響
を与えなかったことを示している。
【0249】
タンパク質ナノ粒子の熱安定性を決定するために、遊離のSDF-lαおよびSDF-
lα ナノ粒子(SDF NP)を、2.5%マンニトールで希釈し、37℃で最大24
日間インキュベートした。様々な時点で一定分量を取り出し、遊走アッセイによって分析
した。
図8Bに示す通り、37℃での6、14、および24日のインキュベーション後、
SDF-lαの活性は、それぞれ、61±9%、29±12%、および29±5%であっ
たのに対して、SDF NPの活性は、それぞれ、96±5%、80±20%、および5
2±4%であった。したがって、SDF-lαの熱安定性は、DSCSナノ粒子への組み
込みによって向上した。研究では、ヘパリンへの結合が、プロテアーゼ分解からSDF-
lαを保護することが示されている。(例えば、Sadir,R.et al.Hepa
ran sulfate/heparin oligosaccharides pro
tect stromal cell-derived factor-1(SDF-1
)/CXCL12 against proteolysis induced by
CD26/dipeptidyl peptidase IV.J.Biol.Chem
.2004,279,(42),43854-60;およびTakekoshi,T.e
t al.A locked,dimeric CXCL12 variant eff
ectively inhibits pulmonary metastasis o
f CXCR4-expressing melanoma cells due to
enhanced serum stability.Mol.Cancer The
r.2012,11,(11),2516-25を参照のこと)。
【0250】
VEGF NPの活性および安定性:
VEGFの活性を、内皮細胞増殖アッセイによって検討した。
図9Aに示す通り、NP
が組み込まれたVEGF(VEGFNP)は、VEGFと同様の活性を有し、これは、捕
捉方法によって作製されたVEGF NPを使用する以前の知見と一致していた。(例え
ば、Lauten,E.et al,Nanoglycan complex form
ulation extends VEGF retention time in t
he lung.Biomacromolecules 2010,11(7),186
3-72を参照のこと)。VEGFとVEGF NPの熱安定性を比較するために、これ
らの試料を37℃で最大20日間インキュベートした。試料の活性を、様々なインキュベ
ーション時間で分析し、4℃に維持したVEGFストック(対照)と比較した。第13日
および第20日のインキュベーションでの試料の活性を、それぞれ、
図9Bおよび
図9C
に示す。
【0251】
結果は、VEGFとVEGF NPが両方とも、37℃での20日間のインキュベーシ
ョン後に十分な活性を保持していたことを示し、これは、遊離の形のVEGFが、普通と
は異なって熱的に安定であり、37℃での第20日のインキュベーションが、VEGFと
VEGF NPの安定性に差異を生じさせなかったことを示している。この結果は、VE
GFの熱安定性を決定するために示差走査熱量測定法を使用する以前の研究と一致してい
る。(例えば、Huang,M et al.Polyelectrolyte com
plexes stabilize and controllably releas
e vascular endothelial growth factor.Bio
macromolecules 2007,8,(5),1607-14;およびMul
ler,Y.et al.The cystine knot promotes fo
lding and not thermodynamic stability in
vascular endothelial growth factor.J.Bi
ol.Chem.2002,277,(45),43410-6(ここでは、VEGFが
、107℃またはl08℃という普通ではない高い融点を有することが判明し、これは、
非常に高い熱安定性を示していた)を参照のこと)。VEGFをDSCSナノ粒子に組み
込むことは、融点をさらに115℃超まで上昇させ、これは、VEGFの熱安定性が、D
SCS NPへの組み込みによってさらに高められることを示している。
【0252】
実施例4-DSCSナノ粒子の架橋
DSCSナノ粒子を、粒子のコア中のキトサンをジカルボン酸と架橋させることによっ
て、共有結合的に改変した。この方法では、DSCS NPを、pH7.0のHEPES
[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]緩衝水に懸濁させ
た。NPを、短鎖ジカルボン酸(例えば、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸、または酒石
酸、5~30mM)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
(EDC、20~100mM))、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、20
~100mM)と、25℃で16時間混合することによって、架橋反応を実施した。粒子
を、15,000×gでの15分間の遠心分離によって沈殿させ、DPBSで洗浄し、耐
塩性選択のために3×DPBS(3倍高い濃度のDPBS)に再懸濁した。3時間のイン
キュベーション後、懸濁液中の凝集体を、200×gでの15分間の遠心分離によって沈
殿させ、残りの粒子を、約15,000×gでの約15分間の遠心分離によって沈殿させ
る。次いで、粒子を、DPBSに再懸濁し、0.22マイクロメートルの孔径を有するP
VDF膜を通して濾過する。得られた粒子を、架橋されたNP(xNP)と称する。架橋
反応は、キトサン中のアミン基とジカルボン酸中のカルボキシル基との間のアミド結合形
成をもたらし、これは、キトサンを粒子のコア中で橋架けする。架橋されたNP中の新し
いアミドの形成は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)のスペクトルが示される
図12お
よび15において実証される。
【0253】
架橋されたDSCS NP(xNP)の性質
架橋されたDSCS NP(xNP)は、架橋されていない粒子と比較すると注目すべ
き塩安定性を獲得した。
図13、16、および17に示す通り、xNPの粒径および均一
性(多分散指数)は、最大2MのNaCl溶液中でのインキュベーション後に変化しなか
ったが、架橋されていないDSCS NPは、0.15M NaCl溶液中で凝集した。
同様に、xNPは、ウシ胎児血清(血清)および完全な細胞培養培地、RPMI1640
+10%FBS(RPMI+)中で安定であったのに対して、DSCS NPは、これら
の培地中で凝集した。
【0254】
架橋反応は、粒子のコアで起こるので、xNPは、DSCS NPと同様の粒径および
表面特性を有する。xNPは、DSCS NPと同様の方式でヘパリン結合タンパク質が
組み込まれることを可能にし(
図14および表4)、結合されたタンパク質は、十分なま
たは増進された生物活性を呈する。
図18および19を参照のこと。
【0255】
タンパク質の架橋ナノ粒子への組み込み:
図14および表4は、タンパク質の架橋DSCS NP(xNP)への組み込みを示す
。
【0256】
【0257】
プロトコル:
示された量のFGF-2、SDF-lα、BMP-2、またはVEGFを、100nm
ol荷電硫酸グルコース単位(Gluc-SO
3-)を含有するxNPと、PBS中で2
0分間混合した。組み込まれていないタンパク質を、遠心分離によって粒子から分離し、
得られたペレット(P)および上清(S)分画を、SDSゲル上で分析した(
図14に示
す通り)。組み込み効率は、ゲルバンドの濃度測定分析に基づいて推定した。次いで、タ
ンパク質が組み込まれたxNPを、凍結乾燥させ、-80℃で保管した。PBSでのNP
の再構成後に、タンパク質が組み込まれたxNPの粒子サイズおよびゼータ電位を決定し
た。データは、検討された増殖因子のxNPへの組み込み効率が、95~100%であり
、xNPの粒径およびゼータ電位が、示されたタンパク質装填割合では有意には変化せず
、粒子が、組み込みおよび保管プロセス全体を通して安定であったことを示す。
【0258】
インビボ特性
xNPは、体液、または半流動体の体表面において凝集しない。この特性は、特に炎症
性疾患の状況において、粒子に対する炎症反応を予防する。
図20は、違いの例を示す。
研究のために使用されるラットに、肺の内皮傷害および肺高血圧症を引き起こすモノクロ
タリンを注射した。さらに、これらのラットに、毎日、シクロスポリン、すなわち幹細胞
治療のために使用される免疫抑制剤を与えた。DSCS NPおよびxNPを、これらの
ラットの肺内でエアロゾル噴霧した場合、DSCS NP治療されたラットの何匹かにお
いて、炎症および線維症が見られたが、xNP治療されたラットでは見られなかった。こ
れらの結果は、xNPが、インビボ送達目的で、DSCS NPよりも優れている可能性
があることを示唆している。
【0259】
架橋されたナノ粒子の特徴付け
硫酸デキストランおよびキトサンナノ粒子(DSCS NP)およびその架橋された誘
導体MA xNP、SA xNP、およびTA xNPのフーリエ変換赤外分光スペクト
ルを、
図12に示す。データは、架橋されたNP中のアミド結合形成を示す。
【0260】
架橋されたナノ粒子の安定性
架橋されたDSCS NPの安定性を、
図13で実証する。架橋されたNP、MA x
NP、SA xNP、またはTA xNPを、ウシ胎児血清(FBS)またはRPMI1
640+10%FBS(RPMI)と共に、25℃で16時間インキュベートした。次い
で、粒子をPBSで洗浄および懸濁し、そのサイズおよびゼータ電位を決定した。データ
は、架橋されたDSCS NPが、完全な血清または細胞培養培地中で安定であることを
示す。
【0261】
改変されたDSCS NPは、高濃度塩類溶液および様々な生理流体(血漿が含まれる
)中で安定であり、治療目的のヘパリン結合タンパク質を容易に装填することができる。
この粒子は、亜鉛イオンの代わりに、血液への注射に、より適合する、カルシウムイオン
を含有する。
【0262】
実施例5-気管内エアロゾル噴霧、およびSDF-lα含有量に関する肺組織の分析(S
DF NPのインビボ保持時間)
200~225gの体重の雄のスプラーグドーリーラットを、Charles Riv
er Laboratoriesから購入し、本発明者らの動物施設内で4日間順化させ
た。動物に関するハーバードメディカルエリア常設委員会(Harvard Medic
al Area Standing Committee on Animals)によ
って承認されたプロトコルに従って、動物研究を実施した。
【0263】
SDF-lαまたはSDFナノ粒子の気管内エアロゾル噴霧、ならびに肺におけるSD
F-lα含有量の分析は、以前に記載された手順に従って実施した。(例えば、Yin,
T.et al,SDF-lαlpha in glycan nanoparticl
es exhibits full activity and reduces pu
lmonary hypertension in rats.Biomacromol
ecules 2013,14(11),4009-20を参照のこと)。簡単に言うと
、SDF-lα、または12μg SDF-lα含有量を伴うSDFナノ粒子を、0.2
5mlの体積の50%PBSで希釈し、Penn-CenturyからのMicroSp
rayer Aerosolizerを用いてラットの肺にエアロゾル噴霧した。エアロ
ゾル噴霧の後、0、16、48、および72時間で、ラット肺組織を採取し、液体窒素中
で凍結させた。この組織をホモジナイズし、BCAタンパク質アッセイによって、ホモジ
ネート上清中のタンパク質濃度を決定した。上清中のSDF-lα濃度は、R&D sy
stemsからの試薬を製造業者の指示に従って使用するELISAによって決定した。
【0264】
図10に示す通り、遊離の形のSDF-lαに曝露させた肺組織におけるSDF-lα
含有量は、エアロゾル噴霧の16時間後にほとんど検出できなかった(約2%残存)が、
SDF NPに曝露させた肺においては、送達の16時間、48時間、および72時間後
に、それぞれ、最初の値の100%、76%、および34%で、検出可能なままであった
。
【0265】
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【0266】
他の実施態様
本出願を、その詳細な説明を伴って記載してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の
範囲の範囲によって定義される本出願を例示するものであり、本出願の範囲を限定しない
ことが意図されることを理解するべきである。他の態様、利点、および改変も、次の特許
請求の範囲の範囲内である。