(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017214
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】生体材料インプラントおよびそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20220118BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220118BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220118BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220118BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220118BHJP
A61K 35/32 20150101ALI20220118BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220118BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220118BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220118BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20220118BHJP
A61K 35/19 20150101ALI20220118BHJP
【FI】
A61L27/36 400
A61L27/36 430
A61L27/38
A61P17/02
A61P19/00
A61L27/18
A61L27/20
A61K35/32
A61K35/17 A
A61K35/28
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/38
A61K35/18 A
A61K35/19 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115871
(22)【出願日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】16/926,905
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア シジ
(72)【発明者】
【氏名】アルチャナ バト
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ マルケス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C076BB40
4C076CC19
4C076CC29
4C076DD38
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE37
4C076FF11
4C076FF68
4C081AB02
4C081BA12
4C081BA13
4C081CA182
4C081CD022
4C081CD082
4C081CD34
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB36
4C087BB37
4C087BB38
4C087BB44
4C087BB46
4C087BB63
4C087MA01
4C087MA02
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZA96
(57)【要約】
【課題】従来の骨移植片は、所望の特性を示し得ないか、入手が困難であり得るか、またはインプラントに好適な形状もしくは形態になっていない。
【解決手段】生体材料、それから作製されるインプラント、生体材料およびインプラントを作製する方法、生体材料またはインプラントを哺乳動物に投与することによって哺乳動物の骨または創傷治癒を促進する方法、ならびに生体材料、インプラント、またはそれらの構成成分などを含むキット。生体材料は、骨の修復を促進するのに役立つ脱灰皮質繊維を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨再生を助けるためのインプラント可能な生体材料を作製する方法であって、
全骨を得ることと、
前記全骨を皮質リングに分割および創傷清拭することと、
前記皮質リングを、10~50mmの長さ、0.5~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する皮質繊維に機械加工することと、
前記皮質繊維を脱灰して、脱灰皮質繊維を形成することと、
前記脱灰皮質繊維を水溶液中に浮遊させ、かつ絡ませることと、
溶液中の前記脱灰皮質繊維を型内で圧縮して、所定の形状の成形生体材料組成物を形成することと、
前記成形生体材料組成物を凍結することと、
前記成形生体材料組成物を凍結乾燥して、前記インプラント可能な生体材料を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記皮質リングが、10~30mmの長さに分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮質リングが、0.1%v/vデオキシコール酸ナトリウム/滅菌生理食塩水溶液、3%過酸化水素溶液、70%イソプロピルアルコール溶液、および温水の滅菌水で洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記皮質リングの壁の厚さの外側の3分の2が繊維に機械加工され、残りの3分の1が廃棄される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記皮質繊維が、0.6Nの塩酸処理による酸処理を使用して脱灰され、続いて、緩衝液すすぎによって、中性pHを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記皮質繊維が、滅菌水中に浮遊し、攪拌下で絡み合う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記皮質繊維が前記型内で圧縮され、前記型内の排水孔が余分な水の排出を可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記型が、1:1~2:1の脱灰皮質繊維対型の体積比率(立方センチメートル)で詰められる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
使用前に、前記乾燥したインプラント可能な生体材料を細胞材料で再構成することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記細胞材料が、赤血球、白血球、血小板、血漿、および/または骨髄細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
骨移植片であって、
10~50mmの長さ、0.5~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する、絡み合って圧縮された脱灰皮質繊維からなり、一切の余分な水が、成形中に前記骨移植片から排出される、骨移植片。
【請求項12】
哺乳動物における骨または創傷治癒を促進する方法であって、
請求項11に記載の骨移植片を提供することと、
前記骨移植片を標的修復部位に投与して、前記標的修復部位での骨の修復または再生を容易にすることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記標的修復部位が、脊椎の損傷または欠損である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
骨再生を助けるためのインプラント可能な生体材料を作製する方法であって、
全骨を得ることと、
前記全骨を顆および皮質幹に分割することと、
前記顆を、1.5mm未満のサイズを有する皮質海綿状チップに粉砕することと、
前記皮質幹を、15~30mmのサイズを有する皮質繊維に機械加工することと、
前記皮質繊維を脱灰し、任意に前記皮質海綿状チップを脱灰することと、
前記皮質海綿状チップおよび脱灰皮質繊維を担体と組み合わせることと、を含み、前記担体が、逆相ヒドロゲルである、方法。
【請求項15】
前記担体が、ポロキサマー、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムを有する25~45%(w/v)溶液である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記担体が、ポロキサマーを有する35%(w/v)溶液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インプラント可能な生体材料が、40~70%の脱灰皮質繊維、100~500μmのサイズ範囲の20~40%の海綿状チップ、および10~40%の担体を含むパテである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記皮質海綿状チップが、100~500μmおよび500~1500μmの二峰性分布を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記インプラント可能な生体材料が、40~70%の脱灰皮質繊維、100~500μmのサイズ範囲の10~30%の皮質海綿状チップ、500~1500μmのサイズ範囲の10~30%の皮質海綿状チップ、および10~40%の担体を含むクランチである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記顆および皮質幹が、10~15分間の抗生物質/抗真菌剤溶液、15~35分間の0.05~0.15%v/vデオキシコール酸ナトリウム溶液、15~35分間の2~6%(w/v)過酸化水素溶液、および5~15分間の70%イソプロピルアルコールと共に、滅菌水を使用した中間すすぎステップを含む液体処理を受ける、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、骨および創傷治癒生体材料およびそれから形成されるインプラント、生体材料およびインプラントを作製する方法、哺乳動物における骨または創傷治癒を促進する方法、ならびに生体材料、インプラント、またはそれらの構成成分のうちの1つ以上を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
骨移植は、失われた骨を置換および/または骨を修復する外科的処置である。骨は、概して、再生する能力を有するが、そのためには足場が必要になり得る。骨移植片は、同種移植片(例えば、骨バンクからの死体の骨)、自己(すなわち、患者自身の体、例えば、腸骨稜から採取された骨)、または合成であり得る。骨移植片は、時間の経過とともに自然な骨が治癒するにつれて、再吸収され、置換され得る。
【0003】
生体材料は、骨伝導(天然の骨の修復成長を導く)、骨誘導(未分化細胞が活性な骨芽細胞になるように促す)、骨刺激(骨芽細胞の増殖および分化の活発な刺激)、および/または骨形成(移植材料中の生きた骨細胞が骨リモデリングに貢献)を含み得る。従来の骨移植片は一定の利点を示し得るが、従来の同種移植片は、所望の特性を示し得ないか、入手が困難であり得るか、またはインプラントに好適な形状もしくは形態になっていない可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
この必要性および他の必要性を満たすために、本明細書に記載の生体材料は、骨の治癒および修復に有利であり、現在の同種移植片または自家移植片製品の欠点がない。生体材料組成物またはそれから調製されるインプラントは、脱灰骨マトリックス(例えば、繊維の形態)を単独で、または追加の構成成分と組み合わせて含み得る。必要に応じて、生体材料組成物はまた、ポロキサマー、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムなどの担体を含み得る。
【0005】
一実施形態によれば、骨再生を助けるための骨移植片またはインプラント可能な生体材料は、絡み合って圧縮された脱灰皮質繊維のみを含む。骨移植片は、全骨を得て、全骨幹を創傷清拭し、かつ皮質リングに分割し、皮質リングを10~50mmの長さ、0.5~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する皮質繊維に機械加工し、皮質繊維を脱灰し、脱灰皮質繊維を水溶液中に浮遊させ、かつ絡ませ、脱灰皮質繊維を型内で、所定の形状の成形生体材料組成物を形成するのに十分な時間および圧力で圧縮し、成形生体材料組成物を凍結し、成形生体材料組成物を凍結乾燥させて、インプラント可能な生体材料を形成することによって生成され得る。脱灰皮質繊維を浮遊させた後に存在する一切の余分な水は、成形プロセスの前、最中、および/または後に骨移植片から排出され得る。
【0006】
皮質リングは、10~30mmの長さに分割され得る。皮質リングは、0.1%v/vデオキシコール酸ナトリウム/滅菌生理食塩水溶液、3%過酸化水素溶液、70%イソプロピルアルコール溶液、および温水の滅菌水で洗浄され得る。皮質リングの壁の厚さの3分の2は繊維に機械加工され得、残りの3分の1は廃棄され得る。繊維は、0.6N~1Nの塩酸処理による酸処理を使用して脱灰され、続いて、緩衝液すすぎによって、中性pHを得ることができる。脱灰皮質繊維は、滅菌水中に浮遊させ、攪拌下で絡ませることができる。皮質繊維は型内で圧縮され得、型の排水孔により、余分な水が排出され得る。型は、1:1~2:1の脱灰皮質繊維対型の体積比率(立方センチメートル)で詰めることができる。装填された型は凍結され、その後凍結乾燥されて、最終製品が生成され得る。使用前に、乾燥したインプラント可能な生体材料は、生理食塩水、または赤血球、白血球、血小板、血漿、および/もしくは骨髄細胞などの細胞材料で再構成され得る。
【0007】
別の実施形態によれば、骨再生を助けるための骨移植片またはインプラント可能な生体材料は、15~30mmの長さを有する約66%の脱灰皮質繊維と、1mm未満のサイズを有する約33%の非脱灰皮質海綿状チップとの混合物のみを含む(例えば、2:1の繊維対チップの比率)。骨移植片は、全骨を得て、軟組織の創傷清拭を行い、全骨を顆および皮質幹に分割し、顆を、1mm未満のサイズを有する皮質海綿状チップに粉砕し、皮質幹を皮質リングに分割し、皮質リングを皮質繊維に機械加工し、皮質繊維を脱灰し、約66%の脱灰皮質繊維と約33%の非脱灰皮質海綿状チップとを含む混合物中で皮質海綿状チップと脱灰皮質繊維とを組み合わせ、脱灰繊維を型内で成形して、所定の形状の成形生体材料組成物を形成し、任意に、充填された型を凍結し、成形生体材料組成物を凍結乾燥させて、インプラント可能な生体材料を形成することによって、生成され得る。
【0008】
別の実施形態によれば、骨移植片は、ゲル、パテ、クランチ、またはストリップの形態であり得る。ゲルは、皮質海綿状チップと逆相ヒドロゲル担体との組み合わせを含み得る。ゲルは、30~60%の脱灰皮質海綿状チップおよび40~70%の担体を含み得る。パテおよびクランチは、皮質海綿状チップ、脱灰皮質繊維、および逆相ヒドロゲル担体の組み合わせを含み得る。パテは、40~70%の脱灰皮質繊維、100~500μmのサイズ範囲の20~40%の海綿状チップ、および10~40%の担体溶液を含み得る。クランチは、40~70%の皮質繊維、100~500μmのサイズ範囲の10~30%の海綿状チップ、500~1500μmのサイズ範囲の10~30%の海綿状チップ、および10~40%の担体溶液を含み得る。ストリップは、皮質海綿状チップおよび脱灰皮質繊維を含み得る。ストリップは、75%の脱灰皮質繊維および100~500μmの範囲のサイズを有する25%の皮質海綿状チップを含み得る。ストリップは、凍結乾燥および架橋され得る。例えば、ストリップは、0.25%グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒド溶液で約1分間架橋され得る。
【0009】
顆および皮質幹は、10~15分間の抗生物質/抗真菌剤溶液、15~35分間の0.05~0.15%v/vデオキシコール酸ナトリウム溶液、15~35分間の2~6%(w/v)過酸化水素溶液、および5~15分間の70%イソプロピルアルコールと共に、滅菌水を使用した中間すすぎステップを含む液体処理を受け得る。皮質海綿状チップは、単峰性または二峰性の分布(例えば、100~500μmおよび500~1500μm)を有し得る。担体は、ポロキサマー、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムを有する25~45%(w/v)溶液であり得る。例えば、担体は、ポロキサマーを有する35%(w/v)溶液であり得る。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、哺乳動物における骨または創傷治癒を促進する方法は、繊維形態の脱灰骨からなる圧縮され、凍結乾燥されたインプラント可能な生体材料を提供することと、インプラント可能な生体材料を標的修復部位に投与して、標的修復部位での骨の修復または再生を容易にすることと、を含む。標的修復部位には、脊椎の損傷または欠損が含まれ得る。インプラント可能な生体材料は、隣接する椎骨間に配置されるように構成されたスタンドアロンのインプラントを形成し得るか、またはケージもしくは他の好適な椎体間デバイスの中もしくは近くに配置され得る。
【0011】
さらに別の実施形態によれば、キットは、本明細書に記載の1つ以上の生体材料、インプラント、またはそれらの構成成分を含む。例えば、キットは、生体材料組成物のパテ、ゲル、ストリップ、クランチ、および/またはボートバージョンを含み得る。キットは、同じまたは異なるタイプの生体材料組成物を含み得る。加えて、キットは、担体または足場、ケージまたは椎体間デバイス(例えば、チタンおよび/またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)スペーサー)、同種移植片スペーサー、細胞培養培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、組織培養基質、骨移植片採取ツール、骨髄穿刺回収ツールなどを含むが、これらに限定されない当技術分野で既知の他の構成成分を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明、ならびにそれに付随する利点および特徴のより完全な理解は、添付図面と併せて考慮されるときに、以下の詳細な説明の参照によって、より容易に理解されるであろう。
【
図1】一実施形態による、脱灰皮質繊維同種移植片を生成するためのステップのプロセスフローチャートを示す。
【
図2】一実施形態による、脱灰皮質繊維および非脱灰皮質海綿状チップ同種移植片を生成するためのステップのプロセスフローチャートを示す。
【
図3A】一実施形態による、ストリップ形態の同種移植片を描写する。
【
図3B】一実施形態による、ストリップ形態の同種移植片を描写する。
【
図3C】一実施形態による、ストリップ形態の同種移植片を描写する。
【
図4A】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図4B】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図4C】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図4D】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図4E】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図4F】一実施形態による、ボート形態の同種移植片を描写する。
【
図5】一実施形態による、ゲル、パテ、クランチ、またはストリップ形態の同種移植片を生成するためのステップのプロセスフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、概して、生体材料およびそれから作製されるインプラント、生体材料およびインプラントを作製する方法、生体材料またはインプラントを哺乳動物に投与することによって哺乳動物の骨または創傷治癒を促進する方法に関し、生体材料、インプラント、またはそれらの構成成分のうちの1つ以上を含むキットも提供される。
【0014】
本発明の例示的な実施形態の追加の態様、利点、および/または他の特徴は、以下の詳細な説明を考慮して明らかになるであろう。本明細書で提供される記載の実施形態は、単に例示的かつ例的なものであり、限定的なものではないことは当業者には明らかであろう。その修正の多くの実施形態が、本開示およびその均等物の範囲内に入ると企図される。
【0015】
例示的な実施形態の説明では、明確にするために特定の用語が用いられる。しかしながら、実施形態は、この特定の用語に限定されることを意図していない。別途断りがない限り、専門用語は、慣習的な使用に従って使用される。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、包括的または無制限であり、追加の言及されていない要素、組成的構成成分、または方法ステップを除外しない。したがって、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、より限定的な用語「~から本質的になる」および「~からなる」を包含する。
【0017】
別途指定がない限り、本明細書で提供されるすべての値は、指定されたエンドポイントまでを含み、かつそのポイントを含み、本組成物の構成物質または構成成分の値は、本組成物中の各成分の重量パーセントまたは重量%で表される。
【0018】
本明細書で使用される各化合物は、その化学式、化学名、略語などに関して交換可能に議論され得る。例えば、PEGは、ポリエチレングリコールと交換可能に使用され得る。
【0019】
本明細書に記載の実施形態は、概して、生体材料、それから作製されるインプラント、それを作製する方法、および骨の治癒または融合を促進するためのそれを使用する方法を対象とし得る。生体材料またはインプラントは個別に議論され得るが、記載の生体材料は、そのままでおよびそれ自体で使用され得るか、またはいくつかの異なる臨床結果のために異なる形状、サイズ、および配向のインプラントを作成するために使用され得ることは当業者に理解されるであろう。したがって、生体材料の議論は、インプラントに関する議論にも等しく当てはまり得、その逆もあり得る。
【0020】
生体材料組成物は、骨伝導性、骨誘導性、骨形成性、および/または骨刺激性であり得、骨の治癒および修復に有利であり得る。生体材料は、材料が新しい骨の成長のための表面積を提供する足場として機能する場合、骨伝導性であり得る。生体材料は、骨前駆細胞を刺激するか、または間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化し、次に新しい骨の形成を開始するように誘導する場合、骨誘導性であり得る。生体材料は、骨再生が可能である細胞(例えば、生存細胞)を含む場合、骨形成性であり得る。生体材料が骨形成プロセスを加速する場合、材料は骨刺激性であり得る。
【0021】
本組成物は、特定の用途において適切な宿主応答で機能するか、または宿主の生物系に対して局所的もしくは全身的に毒性、さもなければ有害な影響を有することなく少なくとも機能する(例えば、組成物または材料の)能力を指す用語として、「生体適合性」であり得る。生体材料および/またはインプラントは、材料が患者の体内で細胞吸収および/または加水分解によって分解され得るという点で、「生物学的に分解可能」であり得る。いくつかの実施形態によれば、生体材料が十分な骨伝導性、多孔性、機械的強度、および分解時間を保有することが望ましい場合がある。
【0022】
一実施形態によれば、生体材料組成物は、標的修復部位での骨の修復または再生を容易にするように構成され得る。標的修復部位は、例えば、患者の体内の空隙、ギャップ、もしくは他の欠損、または外科医が骨、骨の間、もしく他の骨構造に作成した開口部であり得る。例えば、生体材料組成物は、患者の体内の脊椎、骨盤、四肢、頭蓋骨、または別の骨、骨の間、もしくは骨構造の標的修復部位で骨の成長を容易にするように構成され得る。生体材料組成物は、標的修復部位に直接インプラントされるか、さもなければ標的修復部位に配置されるか、またはそれと接触するように構成され得る。
【0023】
生体材料組成物は、脱灰骨マトリックス(例えば、繊維、チップ、または粒子の形態)、および任意に、1つ以上の追加の構成成分を含み得、それらの各々が本明細書でより詳細に記載される。脱灰骨マトリックス(DBMとしても既知)は、骨伝導性、骨誘導性、および/または骨形成特性を提供し得る。したがって、それは、骨組織の形成を誘導する。本明細書で使用される場合、「脱灰骨」、「脱灰骨マトリックス」、および「DBM」という用語は、交換可能に使用され得る。例えば、繊維、チップ、および/または粒子の形態の脱灰骨は、生体材料組成物上に配置され、その中へ埋め込まれ、かつ/またはその中で混合され得る。
【0024】
脱灰骨マトリックスは、例えば、繊維、糸、ストリップ、チップ、破片、シート、細長い粒子、粉末、または粒子状の形態であり得る。脱灰骨マトリックスは、規則的、不規則、またはランダムな形状を保有する様々な形状、サイズ、厚さ、および構成の骨片を含み得る。いくつかの実施形態では、脱灰骨マトリックスを製造するために使用される骨は、皮質、海綿状、皮質-海綿状の自家、同種、異種、またはトランスジェニック起源であり得る。したがって、繊維、チップ、または粒子には、別途指定がない限り、例えば、皮質、海綿状、または皮質-海綿状骨が含まれ得る。
【0025】
骨マトリックスを調製するために、骨材料は、骨マトリックスを洗浄、脱脂、滅菌、ウイルス不活性化、消毒、脱灰、脱水、および/または乾燥するように処理され得る。脱灰骨マトリックスを調製するための方法には、骨を薄い削りくずもしくは繊維に削ること、骨をチップまたは粒子に摩砕、粉砕、または破砕することなどが含まれ得るが、これらに限定されない。骨を処理する前または後に、骨材料は、無機含有量を低レベルに低減するように脱灰に供され得る。例えば、脱灰骨は、ヒトまたは動物の骨からの無機ミネラルの酸抽出、熱凍結、照射、または物理的抽出によって生成され得る。酸抽出では、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、またはギ酸、酢酸、過酢酸、クエン酸、プロピオン酸などの有機酸が使用され得る。当業者によって理解されるように、骨表面への脱灰の量および深さは、治療時間、脱灰溶液の温度、脱灰溶液の濃度、治療中の攪拌強度などを調整することによって制御され得る。
【0026】
「脱灰」という用語は、元のミネラル含有量(例えば、カルシウム含有量)よりも少ない骨または骨材料含有を指し、「実質的に脱灰」、「部分的に脱灰」、および「完全に脱灰」された骨材料を包含し得る。例えば、脱灰骨は、骨の元のミネラル含有量(例えば、カルシウム含有量)の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満を含み得る。
【0027】
一実施形態によれば、脱灰骨マトリックスは、脱灰皮質骨繊維のみを含み、それらは、浮遊し、絡み合い、圧縮されて脱灰皮質繊維ストリップを形成する。このプロセスは、化学的架橋または追加の担体を必要とせずに、外科的用途、例えば、骨空隙充填剤として使用するための理想的な取り扱い特徴を備えた同種移植片を生成する。脱灰皮質骨繊維同種移植片は、構造的完全性、柔軟性、圧縮性、骨伝導性、および骨誘導性の可能性を維持する成形ストリップの形態であり得る。脱灰皮質繊維ストリップはまた、成形された同種移植片内の皮質繊維の物理的寸法に起因する潜在的な細胞接着および移動のための高表面積の足場も提供する。
【0028】
ここで
図1を参照すると、脱灰皮質繊維ストリップを調製するためのプロセス10は、以下のステップのうちの1つ以上を含み得る。全骨は、ステップ12で得られる。全骨には、大腿骨、脛骨、上腕骨、橈骨、および尺骨などの長管骨、または他の好適な骨が含まれ得る。骨は、ヒトまたは他の動物の供給源から得ることができる。全骨は、ステップ14で分割および創傷清拭され得る。全骨は、例えば、約10~50mm、約20~40mm、約20~30mm、または約28~30mmの長さの皮質リングに分割され得る。次に、液体処理の準備として、各皮質リングの中心管は、創傷清拭または清澄化され得る。皮質リングは、繊維生成の前に、ステップ16で洗浄され得る。例えば、皮質リングは、正常なヒト組織に関連する骨髄および脂質要素を低減させる化学的および/または物理的洗浄処置で洗浄され得る。洗浄処置では、1つ以上の液体溶液を好適な期間使用して、完全な洗浄を確実にし得る。例えば、皮質リングは、0.1%v/vデオキシコール酸ナトリウム/滅菌生理食塩水溶液、3%過酸化水素溶液、70%イソプロピルアルコール溶液、温水の滅菌水、これらの組み合わせ、または他の好適な溶液で洗浄され得る。
【0029】
ステップ18では、非脱灰皮質リングは、皮質繊維に機械加工される。皮質繊維は、例えば、横型摩砕機で生成され得る。一実施形態では、皮質繊維は、約0~30度の螺旋角を有するエンド摩砕機で生成される。皮質リングは機械の万力に装填され、切断表面全体に供給されて、皮質繊維が生成され得る。一実施形態では、皮質リングの壁の厚さの約3分の2が摩砕され、残りの3分の1は廃棄される。皮質壁の厚さ全体またはその任意の好適な部分が摩砕され得ることが理解されるであろう。ステップ18では、非脱灰皮質リングは、例えば、約10~50mmの長さ、約0.5~2mmの幅、および約0.1~1mmの厚さの細い繊維に機械加工され得る。繊維の生成では、寸法の多少の変更が可能であることが理解されるであろう。
【0030】
次に、非脱灰皮質繊維は、ステップ20で脱灰プロセスを受けて、骨のミネラル構成成分が除去される。例えば、脱灰は、0.6N~1Nの塩酸処理による酸処理を含み得る。酸処理は、続いて、緩衝液すすぎによって、中性pH(例えば、6.8~7.4)を得ることができる。脱灰後、脱灰皮質繊維は、ステップ22において型内で浮遊し、絡み合い、圧縮される。脱灰皮質繊維は、水溶液中に浮遊し得る。水溶液は、水および任意の溶質を含み得る。例えば、繊維は、滅菌水、脱イオン水、蒸留水、または精製水中に浮遊し得る。溶液中にある間、脱灰皮質繊維は、自然に、または攪拌によって絡み合うことがある。繊維が絡み合った溶液は、型内で圧縮される。型は、余分な水を除去するための排水穴を含み得る。各金型キャビティは、1:1~2:1の皮質繊維対型の体積(cc)比率で詰めることができる。次にステップ24では、詰められた型は凍結され、凍結乾燥機に入れられて、最終的な凍結乾燥ストリップ製品が生成される。
【0031】
乾燥した同種移植片は、使用時に、例えば、5分未満で再構成され得る。例えば、同種移植片は、許容可能な滅菌洗浄剤(例えば、生理食塩水)で再構成され得る。乾燥した同種移植片は、軟骨細胞、赤血球、白血球、血小板、血漿、骨髄細胞、間葉幹細胞、多能性細胞、骨芽細胞、破骨細胞、ならびに線維芽細胞、上皮細胞、および内皮細胞などの細胞材料で再構成され得る。
【0032】
脱灰皮質繊維同種移植片の特性は、他の組成物よりも低い皮質繊維密度で構造的完全性、柔軟性、および圧縮性を維持する。このプロセスにより、製品ごとに一貫した密度および機械的特性が生み出される。皮質繊維構造は、海綿状骨、および海綿状または皮質繊維チップを有する他の脱灰骨マトリックス製品よりも大きな表面積を提供し、これによって、皮質繊維同種移植片は他の同種移植片よりも優れた骨伝導性足場になる。
【0033】
別の実施形態によれば、骨移植片は、骨誘導性脱灰皮質骨繊維と骨伝導性皮質海綿状チップとの混合物である。患者から得られた自家移植片は、新しい骨の生成に望ましい場合がある。しかしながら、可用性および供与部位の罹患率が限られていることに起因して、自家移植には欠点がある。したがって、骨再生を促進する骨伝導性および骨誘導性構成成分を保有するマトリックスの開発は、骨の修復の分野で望ましい。脱灰骨マトリックスは、骨内の骨形成タンパク質(BMP)などの固有の成長因子に起因する骨誘導性特性を有する。この実施形態では、骨再生を助けるために、骨伝導性および骨誘導性特性を有する足場が使用される。脱灰皮質繊維により、製品の表面積の増加が可能となり、インプラント後の細胞接着および成長因子との相互作用が促進される。
【0034】
図2を参照すると、脱灰皮質繊維および非脱灰皮質海綿状骨移植片を調製するためのプロセス30は、以下のステップのうちの1つ以上を含み得る。全骨は、ステップ32で得られる。大腿骨、脛骨、橈骨、および尺骨を含む長管骨、または他の好適な骨などの全骨が処理され得る。骨は、ヒトまたは他の動物の供給源から得ることができる。ステップ34では、皮質幹から長管骨の顆が分離される。皮質幹は完全に洗浄されて、一切の脂肪組織および骨髄が除去される。皮質幹は、その後皮質リングに分割される。ステップ36では、顆はより小さなくさび形に切断され、例えば、骨摩砕機を使用して粉砕されて、皮質海綿状チップおよび/または海綿状チップが生成される。皮質海綿状チップのサイズは、約1mm未満、約100μm~1mm、または約100~500μmであり得る。製品は、皮質海綿状チップを含んでも、含んでいなくてもよい。ステップ38では、皮質リングは、皮質繊維に機械加工される。次に、皮質繊維はステップ40で脱灰される。皮質繊維は、酸抽出、例えば、0.5~1Nの塩酸を使用して脱灰され得る。ステップ42では、非脱灰皮質海綿状チップと脱灰皮質繊維とが組み合わされる。混合物は、約50~100%、約66~100%、約66~80%、約60~70%、または約66%の量の脱灰皮質繊維を含み得る。混合物は、約0~50%、約0~33%、約20~33%、約30~40%、または約33%の量の海綿状チップを含み得る。一実施形態では、配合物は、2:1の比率で予め混合された脱灰皮質繊維および非脱灰皮質海綿状チップを含む。
【0035】
骨移植片は、例えば、パテ、ストリップ、またはボートの形態であり得る。パテ、ストリップ、またはボートの配合物は各々、同じベース混合物を使用し得る。ストリップおよびボートの場合、ステップ44で、混合物は、型に移される。生体材料組成物は型に添加されて、成形生体材料組成物が形成され得る。フォームまたは型は、所望の形状のインプラントまたはその一部を得るような任意の好適なサイズおよび形状であり得る。型は、圧縮されたインプラントを形成するのに必要な所定の圧力および温度下で提供され得る。本組成物は、所望の形状のインプラントまたはその一部を作成するのに十分な時間および圧力で圧縮され得る。生体材料組成物に加えられる圧力により、構成成分が互いに接触し、共に接着し得る。型は、生体材料を固体形態に圧縮するのに十分な高圧(すなわち、大気圧より高い)下で提供され得る。代替的に、本組成物は、圧縮せずに型に入れてもよい。必要に応じて、パターンまたはデザインは、他の所望の形状を形成するように成形インプラントに、または成形インプラントから切り取られ得る。ステップ46では、本組成物は、凍結乾燥される。凍結乾燥は、生体材料を(例えば、液体窒素中で)凍結することと、周囲圧力を低減して、材料中の凍結水を固相から気相に直接昇華させることと、を含み得る。使用前に、乾燥した同種移植片は、例えば、生理食塩水または好適な細胞材料で再構成され得る。
【0036】
パテ、ストリップ、およびボートは、長さ、厚さ、および幅を有する。
図3A~3Cは、ストリップ50の側面図および斜視図をそれぞれ示す。ストリップ50は、概して、形状が四辺形(例えば、長方形)であり得る。得られるインプラントは、実質的に平面の側壁を有するように成形され得る。
図3A~3Cに示されるように、上部および下部の骨係合表面は、実質的に平坦または平面であり得る。上部および下部の骨係合表面は、隣接する椎骨の解剖学的構造により良好に適合するように、湾曲、角度、または任意の好適な形状であり得ることもまた想定される。代替的に、骨係合表面は、突起、歯などを含み得る。
図4A~4Fは、ボート60の上面図、側面図、底面図、正面図、および斜視図をそれぞれ示す。ボート60は、縁の周りに隆起した周辺64を提供するくぼみ62を中心に有し得る。ボート60の中心にあるくぼみ62により、外科医がその中に骨材料(例えば、自家骨)を詰めることを可能にし得る。ストリップおよびボートは、最大約200mmの長さ、約4~10mmの厚さ、および約10~25mmの幅になり得る。ボート60の中心にある大きなくぼみ62は、各縁から約2~10mm、深さは約2~5mmであり得る。パテは、最大約200mmの長さ、約4~15mmの厚さ、および約5~25mmの幅になり得る。
【0037】
生体材料は、所望の用途のために特定のサイズおよび形状に形成され得る。例えば、インプラントは、頸部、胸部、または腰部への適用に好適なフットプリントを有し得る。インプラントは、例えば、ストリップ、ボート、リング、シリンダー、プラグなどの形態に成形され得る。インプラントには、本明細書に記載の生体材料または当技術分野で既知の他の移植材料を充填するのに好適な、1つ以上の開口部または窓が提供され得る。インプラントは、単独で、またはケージ、フレーム、同種移植片、自家移植片、移植片材料、もしくは当技術分野で既知の他の生体材料と組み合わせて使用され得る。インプラントは、前方、後方、外側、斜め、前外側、経椎間孔アプローチ、または当技術分野で既知の他の好適なアプローチに好適であり得る。
【0038】
脱灰皮質繊維を使用すると、細胞および局所環境との相互作用により大きな表面積が提供され得る。脱灰プロセスにより、繊維内の天然の成長因子が露出され、骨の修復を促進するのに役立つ場合がある。海綿状チップは、細胞が製品に接着するための追加の足場、ならびに製品の追加の充填材料を提供する。チップは、製品の圧縮に抵抗するのに役立つ場合があり、繊維の圧縮性に起因して、利用される体積が本来よりも少ないという認識を緩和する。これらの構成成分が連携して、パテ形態にまとまりのあるパテのような取り扱い特徴を提供する。ストリップおよびボートの場合、凍結乾燥され、絡み合った構成成分により、利用時に構造的完全性を維持しながら、適用部位の骨の解剖学的構造の輪郭に適合するのに十分な柔軟性もある製品が可能になる。
【0039】
別の実施形態によれば、骨移植片は、脱灰繊維、非脱灰および/または脱灰皮質海綿状チップ、ならびに任意の担体の混合物である。担体は、材料の全体的な取り扱いに影響を与える可能性があり、材料の安全性、有効性、および機能性(例えば、骨誘導性)に影響を及ぼす可能性がある。好ましくは、担体は不活性であるか、または本組成物の骨形成、骨誘導性、骨伝導性、および/もしくは骨刺激特性を増強する。好適な担体、足場、または添加剤には、ポロキサマー、ヒドロゲル、リン脂質、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、グリセリン、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、同じファミリーの他のコポリマー、およびそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
例として、担体は、ポロキサマー(例えば、PEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー)などの逆相ヒドロゲルまたは温度感受性ヒドロゲルを含むヒドロゲルを含み得る。特に、ポロキサマーは、ポロキサマー407、ポロキサマーP188、ポロキサマーP338などを含み得る。ポロキサマーはまた、化学的に修飾されていてもよく、例えば、末端ヒドロキシル基の1つ以上がメトキシ基で置換されている。他の好適な材料には、例えば、ヒアルロン酸(HA)、アルギン酸ナトリウム、生理食塩水、または骨髄穿刺液が含まれ得る。担体、足場材料、または加工添加剤は、水ベースまたは非水ベースのいずれかであり得る。
【0041】
ポロキサマー、ヒアルロン酸、またはアルギネートなどのヒドロゲルの場合、材料は、体積膨張可能であり得る。例えば、担体(例えば、ポロキサマー)は、水、緩衝液、または担体の体積膨張を引き起こす塩酸、硝酸、硫酸などの酸と混合され得る。当業者に理解されるように、ヒドロゲルの膨張は、温度、表面積、分子量、架橋度、pHなどのいくつかの要因によって影響を受ける可能性がある。
【0042】
図5を参照すると、ゲル、パテ、クランチ、またはストリップの形態の骨移植片を調製するためのプロセス70は、以下のステップのうちの1つ以上を含み得る。全骨は、ステップ72で得られる。大腿骨、脛骨、上腕骨、橈骨、および尺骨を含む長骨、または他の好適な骨などの全骨が処理され得る。骨は、ヒトまたは動物の供給源から得ることができる。ステップ74では、皮質幹から長管骨の顆が分離される。皮質幹は完全に洗浄されて、一切の脂肪組織および骨髄が除去され、続いて、皮質リングに分割される。顆および/または皮質リングは、液体処理を受けることがある。液体処理は、10~15分間の抗生物質/抗真菌剤溶液、15~35分間の0.05~0.15%v/vデオキシコール酸ナトリウム溶液、15~35分間の2~6%(w/v)過酸化水素溶液、5~15分間の70%イソプロピルアルコール、滅菌水を使用した中間すすぎステップ、これらの組み合わせ、または他の好適な溶液のうちの1つ以上を含み得る。ステップ76では、顆はより小さなくさび形に切断され、例えば、骨摩砕機を使用して粉砕されて、皮質海綿状チップおよび/または海綿状チップが生成される。皮質海綿状チップのサイズは、約1.5mm未満、約100μm~1.5mm、約500~1.5mm、約100μm~1mm、または約100~500μmであり得る。皮質海綿状チップは、単峰性または二峰性の分布を有し得る。例えば、皮質海綿状チップは、2つのサイズ分布に分けることができ、第1のサイズは100~500μm、第2のサイズは500~1500μmである。製品は、皮質海綿状チップを含んでも、含んでいなくてもよい。
【0043】
ステップ78では、皮質リングは、皮質繊維に機械加工される。皮質リングは繊維生成機に通されて、例えば、約10~50mm、約20~40mm、または約15~30mmの長さの繊維が生成され得る。次に、ステップ80では、繊維および任意にチップが脱灰される。繊維および/またはチップは、酸抽出を使用して、例えば、0.5~1Nの塩酸で約15~40分間、脱灰され得る。処理の最後に、塩酸はデカントされ得、繊維/チップは25/75の一二塩基性リン酸カリウム溶液および/または脱イオン水で、pHが6.5~7.5になるまですすがれ得る。
【0044】
オプション82では、同種移植片は、ゲル形態として生成され得る。ゲルは、ステップ84で、担体と混合された脱灰皮質海綿状骨チップを含み得る。担体は、逆相ヒドロゲル担体溶液を含み得る。骨チップのサイズは、約100~500μmであり得る。担体は、ポロキサマー407、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムなどの増粘剤を有する35%(w/v)溶液として調製され得る。担体材料は、最終製品の約40~70%を構成し得る。ゲル製品は、押し出し可能な形態である。
【0045】
オプション86では、パテが形成され得る。パテは、ステップ88で、脱灰皮質繊維、非脱灰皮質海綿状チップ、および任意に担体と混合された脱灰皮質海綿状チップを含み得る。担体は、逆相ヒドロゲル担体を含み得る。担体は、ポロキサマー407、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムなどの増粘剤を有する25~45%(w/v)の溶液として調製され得る。パテは、約40~70%の脱灰皮質繊維、約20~40%の海綿状チップ(例えば、100~500μm)、および約10~40%の担体溶液を含み得る。
【0046】
オプション90では、同種移植片は、クランチ形態に生成され得る。クランチは、ステップ92で、脱灰皮質繊維、非脱灰皮質海綿状チップ、および任意に担体と混合された脱灰皮質海綿状チップを含み得る。担体は、逆相ヒドロゲル担体を含み得る。担体は、ポロキサマー407、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、またはヒアルロン酸ナトリウムなどの増粘剤を有する25~45%(w/v)の溶液として調製することができる。クランチ配合物の場合、製品は、約40~70%の皮質繊維、約10~30%の海綿状チップ(例えば、100~500μm)、約10~30%の海綿状チップ(例えば、500~1500μm)、および約10~40%の担体溶液を含み得る。したがって、クランチ組成物は、皮質海綿状チップの二峰性分布を含み得る。
【0047】
オプション94では、ストリップが形成され得る。ストリップは、ステップ96で、脱灰皮質繊維および皮質海綿状チップ(例えば、100~500μm)を含み得る。例えば、繊維およびチップは、3:1の比率で事前混合され得る。ステップ98では、混合物が型に移され得る。ステップ100では、型が凍結乾燥され得る。本組成物は、例えば、空気によってまたは凍結乾燥によって、脱水または乾燥され得る。凍結乾燥は、材料を(例えば、液体窒素中で)凍結することと、周囲圧力を低減して、材料中の凍結水を固相から気相に直接昇華させることを含み得る。
【0048】
ステップ102では、凍結乾燥ストリップは、部分的にまたは完全に架橋され得る。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、またはグルタルアルデヒドなどのモノアルデヒドを含む化学架橋剤に材料を暴露することによって、架橋が起こり得る。例えば、ストリップは、0.25%グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒド溶液で約1分間架橋され、続いて、水ですすがれ、かつ追加に凍結乾燥され得る。化学的架橋はまた、エチレンオキシド、二酸化窒素、オゾンなどの化学的滅菌剤への暴露も含み得る。放射線架橋は、ガンマ線、紫外線、X線、電子線照射、および/または熱源などの滅菌源に材料を暴露することを含み得る。例えば、ストリップは、製品が約25~35kGyの電子ビーム滅菌に供される最終滅菌プロセスを通じて架橋され得る。
【0049】
脱灰皮質繊維は、細胞および局所環境との相互作用に対してより大きな表面積を提供し得る。脱灰プロセスにより、骨の修復を促進し得る繊維内の天然の成長因子が露出される。海綿状のチップは、細胞が製品に接着するための追加の足場、ならびに製品の追加の充填材料を提供する。チップは、製品の圧縮に抵抗するのに役立つ場合があり、繊維の圧縮性に起因して、利用される体積が少なくなるという認識を緩和する。構成成分の相乗効果により、パテおよびクランチ形態にまとまりのあるパテのような取り扱い特徴が提供される。ストリップの場合、架橋された構成成分により、利用時に構造的完全性を維持しながら、適用部位の骨の解剖学的構造の輪郭に適合するのに十分な柔軟性もある製品が可能になる。
【0050】
必要に応じて、生物学的薬剤が、本明細書に記載の生体材料またはインプラントのいずれかに添加され得る。これらの生物学的薬剤は、2~3例を挙げると、骨形態形成タンパク質(BMP)、ペプチド、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン由来成長因子(IDGF)、ケラチノサイト由来成長因子(KDGF)などの骨成長因子、または線維芽細胞由来成長因子(FDGF)、幹細胞、骨髄、および血小板に富んだ血漿(PRP)を含み得る。必要に応じて、1つ以上の有効な医薬品成分または医薬品も、生体材料またはインプラントに組み込まれるか、添加され得る。生物学的薬剤は、当技術分野で既知の任意の好適な薬学的に許容される有効量で添加され得る。
【0051】
本明細書に記載の生体材料およびそれから形成されるインプラントは、骨の修復部位、例えば、損傷または欠損に起因する部位に適用されることを意図している。インプラントは、整形外科、歯周、神経外科、口腔、および顎顔面外科手術の幅広い様々な処置で利用され得る。特に、生体材料は、脊椎固定および内部固定;腫瘍手術、例えば、欠損充填;椎間板切除;椎弓切除;脊柱側弯症、脊柱前弯症、および脊柱後症の治療を含む脊柱の修復に好適であり得る。可能な臨床適用には、例えば、体の脊椎円板の変性もしくは疾患、外傷性、病的、もしくはストレス性骨折、先天性欠損症もしくは骨折、または任意の骨もしくは骨間の手術欠損の治療が含まれ得る。
【0052】
本組成物およびインプラントは、患者の体内の様々な標的修復部位で使用するように構成されて、その中の骨の成長を容易にし得る。いくつかの実施形態では、本組成物は、患者の脊椎の標的修復部位で使用するように構成される。例えば、本組成物は、第1の椎骨の本体と第2の椎骨の本体との間の骨の成長を容易にして、2つの椎骨の椎体間固定を達成し得る。脊椎固定処置において、本組成物は、1つ以上の機械的支持体(例えば、ケージもしくはフレーム、スペーサー、プレート、複数のねじおよび/またはロッドなど)と組み合わせて使用され得る。脊椎が記載されているが、本組成物は、患者の体の異なる骨または骨構造の中またはそこにある標的修復部位内に、またはそこにインプラントされるように構成され得る。
【0053】
「治療する」という用語、ならびに「疾患の治療」および「状態の治療」という句は、本明細書の組成物、デバイス、および方法の使用を含み得るプロトコルを実行すること、ならびに/または1つ以上の生体材料を患者(正常もしくはその他のヒトまたは他の哺乳動物)に投与して、疾患または状態の徴候または症状を緩和するための努力をすることを指す。緩和は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前、ならびにそれらが現れた後に起こり得る。したがって、「治療する」または「治療」は、疾患または望ましくない状態を「予防すること」またはその「予防」が含まれる。加えて、「治療すること」または「治療」は、徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、病気の治癒を必要としない。
【0054】
さらなる例示的な実施形態は、例えば、担体もしくは足場、ケージ(例えば、チタンおよび/またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)スペーサー)、同種移植片スペーサー、脱灰骨材料、細胞培養培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、組織培養基質、例えば、フラスコ、トリプシン、または混合物、骨移植片採取ツール、骨髄穿刺回収ツールなどを含む本発明の生体材料およびインプラントを作製するための構成成分を含むキットを対象とする。追加の構成成分、説明書、および/または装置も含まれ得る。
【0055】
以下の実施例は、様々な非限定的な実施形態および技法をさらに例示するために提供される。しかしながら、これらの実施例は、例示のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。当業者に明らかなように、多くの変更および修正が本発明の精神および範囲内に包含されることを意図する。
【実施例0056】
実施例1
この実施例では、脱灰皮質繊維のみを含む骨移植片を作製する方法を提示する。全骨を分割し、創面清拭して、皮質リングを形成する。皮質リングを洗浄し、10~50mmの長さ、0.5~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する皮質繊維に機械加工する。皮質リングの壁の厚さの3分の2を摩砕し、皮質リング壁の残りの3分の1を廃棄する。0.6Nの塩酸処理を使用して繊維を脱灰し、続いて、緩衝液すすぎによって、中性pH(6.8~7.4)を得る。脱灰後、皮質繊維を滅菌水中に浮遊させ、互いに絡ませる。絡み合った繊維を型内で圧縮し、型内の排水穴により一切の余分な水を排水する。型を2:1の皮質繊維対型の体積比率(cc)で詰める。詰めた型を凍結させ、凍結乾燥させて、同種移植片を得る。
【0057】
実施例2
この実施例は、脱灰皮質繊維および非脱灰皮質海綿状チップを含む骨移植片を作製する方法を提示する。全骨を顆および皮質幹に分割する。顆を100~500μmの皮質海綿状チップに粉砕する。皮質幹を洗浄し、15~30mmの長さ、0.1~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する皮質繊維に機械加工する。繊維を、15~40分間0.5~1.0Nの塩酸処理を使用して脱灰し、続いて、緩衝液すすぎによって、中性pHを得る。脱灰皮質繊維を非脱灰皮質海綿状チップと2:1の比率で混合する。混合物を型に移し、凍結乾燥させて、同種移植片を得る。同種移植片は、ストリップ、ボート、またはパテの形態であり得る。
【0058】
実施例3
この実施例は、脱灰皮質繊維および/または皮質海綿状チップを、任意の担体と共に含む骨移植片を作製する方法を提示する。全骨を顆および皮質幹に分割する。顆を、100~500μmの第1のサイズおよび500~1500μmの第2のサイズを有する皮質海綿状チップに粉砕する。皮質幹を洗浄し、15~30mmの長さ、0.1~2mmの幅、および0.1~1mmの厚さを有する皮質繊維に機械加工する。繊維および任意にチップを、15~40分間0.5~0.7Nの塩酸処理を使用して脱灰する。処理の最後に、塩酸をデカントし、繊維/チップを25/75の一二塩基性リン酸カリウム溶液および/または脱イオン水で、pHが6.5~7.5になるまですすぐ。ゲル、パテ、クランチ、およびストリップの配合は、次のとおりである。
【0059】
【0060】
ストリップを成形し、凍結乾燥させ、0.25%グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドで1分間架橋し、続いて、水ですすいで凍結乾燥させる。架橋ストリップは、柔軟でありながら構造的な完全性を提供する。ジェルは押し出しが可能で、パテおよびクランチはパテのような取り扱い特徴を有する。
【0061】
本発明の性質を説明するために記載され、かつ図示された部品の詳細、材料、および配置の様々な変更は、特許請求の範囲に明示されるように、本発明の範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得ることがさらに理解されるだろう。当業者は、上述の実施形態が非限定的であることを理解するであろう。一実施形態の1つ以上の特徴が、本明細書で記載される1つ以上の他の実施形態に部分的に、または完全に組み込まれ得ることも理解されよう。