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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172176
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
   B65B 39/00 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B65B39/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130981
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2021190709の分割
【原出願日】2019-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2018101787
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】西澤 翔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノズル先端付近に液滴として付着した液体が乾燥して固化する充填ノズルの詰まりを防止し、活性成分として抗体などのタンパク質を高濃度で含有する液体医薬製剤を安定して製造する。
【解決手段】シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を用いた、充填ノズル11、または、医薬溶液を供給するための管路13を有し、管路13の下端に充填口部15を備え、管路13および充填口部15の周断面が円形であり、充填口部流路19の内径がその上流の管路13の内径より大きい、充填ノズル11を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬溶液を供給するための管路を有するノズル本体と、該管路の下端に連続して形成された流路を有する充填口部を備え、充填口部の先端から医薬溶液を吐出する充填ノズルであって、
ノズル本体の管路および充填口部の流路の周断面が円形であり、充填口部の流路の内径がその上流の管路の内径より大きく、下流方向に内径が大きくなる傾斜部を介して充填口部流路に管路が接続し、ノズル本体の管路の直径が1~5mmであり、充填口部流路の長さが1~10mmであり、及び、充填口の末端の内径に対する充填口の充填ノズル長手方向長さの比が0.7~1.8であり、
断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度(f)が、約90°であり、
水接触角が50~120°である材料を用いて形成されている、充填ノズル。
【請求項2】
管路または傾斜部への接続箇所における充填口部の流路の内径が、管路の流路または傾斜部への接続箇所の内径より大きい、請求項1記載の充填ノズル。
【請求項3】
材料が、水接触角が80~94°である樹脂である、請求項1または2に記載の充填ノズル。
【請求項4】
材料が、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載の充填ノズル。
【請求項5】
材料が、環状オレフィンとオレフィンの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィン開環重合体、およびシクロオレフィン開環重合体の水素添加物、から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の充填ノズル。
【請求項6】
材料が、エチレン・ノルボルネンコポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填ノズル。
【請求項7】
エチレン・ノルボルネンコポリマーが、ノルボルネンの付加重合反応由来の繰り返し構造を含む、請求項6に記載の充填ノズル。
【請求項8】
材料が、C1-6アルキルで置換されていてもよいノルボルネン開環重合体、および該開環重合体の水素添加物から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の充填ノズル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の充填ノズルを用いて、医薬溶液を容器に充填する工程を含む、液体医薬製剤の製造方法。
【請求項10】
医薬溶液に含まれる活性成分が抗体である、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を容器に充填するための充填ノズルに関する。また本発明は、液体の充填工程を含む製品の製造方法に関する。特に本発明は、医薬溶液を容器に充填するための充填ノズル、および医薬溶液の容器への充填工程を含む液体医薬製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、日用品、医薬品などの製造において、液体を容器に充填する工程では、ポンプを用いて充填タンク内の溶液を充填チューブおよび充填ノズルを通じて容器に充填する。医薬品の製造において使用される充填ノズルを形成する材料として、一般に、ステンレスあるいはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂が用いられる。
【0003】
充填工程では、一定の液量を連続的に容器に充填するときには、充填ノズルの先端の液だれが問題となる。充填ノズル先からの液だれにより、製品の汚染や製造環境の汚染、充填精度の低下につながり、製品の品質低下や生産性低下の原因となる。液だれを防止するための充填ノズルの開発について検討がされている(特許文献1~3)。
【0004】
液体医薬製剤の製造では、医薬溶液をバイアル、シリンジ、カートリッジ、アンプル、デバイス、バッグ、ボトル、エラストメリックリザーバー、チューブなどの容器に充填する。充填工程は高度に無菌を維持した環境下で行われる。特に、タンパク質の溶液である液体医薬製剤は、充填後に加熱や放射線照射による滅菌工程に付すことができない。そのため、タンパク質を活性成分とする液体医薬製剤の製造において、タンパク質の溶液は膜フィルターによる無菌ろ過後に直ちに容器に充填される。
【0005】
医薬品製造の無菌環境下では、高性能エアフィルター(HEPAフィルター)を通じた空気が循環しており、充填ノズルの先端に付着した医薬溶液が乾燥するという問題がある。充填ノズルの先端に乾燥した医薬成分が付着することにより、充填精度の低下、製品の汚染、製造環境の汚染、充填ノズルの詰まり(Clogging)が生じ、製品の品質低下や生産性低下の原因となる。特に、乾燥した医薬成分の付着による充填ノズルの詰まりが生じた場合は、充填ノズルからの医薬溶液の吐出ができなくなり製造を継続することができなくなる。そのような場合には、復旧のために医薬品製造または無菌環境を一旦中断することとなるため、製造ロットの廃棄や調製した医薬溶液の廃棄や無菌環境の除染をすることとなり、経済的にも時間的にも大きな損失が生じることとなる。
【0006】
液体医薬製剤製造においては、充填ノズルの詰まり防止のために、一般に、医薬溶液の充填後にポンプを逆回転させて充填ノズル内の溶液を引き戻すという手法(サックバック)が採用されている。しかしながら、サックバックを採用してもなお、充填ノズル内壁に付着した液が充填ノズル先端に移動して滞留し、乾燥した医薬成分が蓄積して詰まりが発生する場合がある。このような詰まりを防止するための方法について研究結果が報告されている(非特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-237734号
【特許文献2】特開2004-217215号
【特許文献3】特開2010-189029号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】PDA J Pharm Sci Technol. (2014) Mar-Apr;68(2):153-63.
【非特許文献2】PDA J Pharm Sci Technol. (2015) May-Jun;69(3):417-26.
【非特許文献3】PDA J Pharm Sci Technol. (2016) Mar-Apr;70(2):143-156
【非特許文献4】J Pharm Sci. 2017 Dec;106(12):3651-3653.
【非特許文献5】J Pharm Sci. 2019 Mar;108(3):1130-1138)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
充填精度や充填効率の向上の観点から、溶液の吐出後の液切れを改善し液だれを防止する方法について検討がされており、例えば、特許文献2において特定の形状の充填ノズルが開示されている(図3~6)。このような形状を有することによりノズル先端の吐出部において液滴が水平方向に広げられ表面張力で保持されるため、吐出部が液溜まりとして作用し、液状物の液だれが防止される(特許文献2、段落番号[0021])。しかし、液体医薬製剤を製造するために調製する医薬溶液、特に高濃度のタンパク質の溶液は、乾燥による固体成分の付着が生じやすい。液溜まりを有するこのような形状の充填ノズルは、液溜まりにおいて乾燥した固体成分が詰まりを頻繁に引き起こすこととなるため、液体医薬製剤の製造に使用することはできない。
【0010】
また医薬製剤の原料として用いる抗体などのタンパク質は製造コストが高く、製造中断が発生することによって高濃度のタンパク質溶液を廃棄する場合の経済的損失は極めて大きい。上述のように、液体医薬製剤の製造における充填ノズルの詰まりを防止する方法について検討がされている(非特許文献1~5)。しかし、サックバックを行った場合においても、流路に残る医薬溶液が下流方向に移動して、ノズルの先端付近に液滴として付着することとなる。このノズル先端付近に液滴として付着した液体が乾燥して固化し、充填ノズルの詰まりとなる。また、液体医薬製剤、特に活性成分として抗体などのタンパク質を高濃度で含有する液体医薬製剤の安定した製造を担保する観点から、十分な解決手段を提供するものとはいえず、充填ノズルの詰まりを防止するためのさらなる手段が求められている。
【0011】
さらに、充填ノズルの詰まりにより生じる異物や微粒子が医薬製剤に混入すれば、製品の品質低下、製品廃棄や製造ロット廃棄の原因となる。クリーンな環境の汚染の防止の観点からも、生産性の妨げにならない簡便な手段による充填ノズルの詰まりの防止方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の形状を有し、および/または特定の材料により製造された充填ノズルにおいて、ノズル先端での医薬溶液の滞留が抑制されることを見いだし、本発明を完成させた。
【0013】
本発明の1つの側面により、以下の発明(1-1)~(1-15)が提供される。
(1-1)医薬溶液を供給するための管路を有するノズル本体と、該管路の下端に形成された充填口部を備え、充填口部から医薬溶液を吐出する充填ノズルであって、
シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を材料として用いて形成されている、充填ノズル。
(1-2)樹脂が、環状オレフィンとオレフィンの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィン開環重合体、およびシクロオレフィン開環重合体の水素添加物から選択される、(1-1)に記載の充填ノズル。
(1-3)樹脂が、エチレン・ノルボルネンコポリマーである、(1-1)または(1-2)に記載の充填ノズル。
(1-4)エチレン・ノルボルネンコポリマーが、ノルボルネンの付加重合反応由来の繰り返し構造を含む、(1-3)に記載の充填ノズル。
(1-5)管路の内径が0.6~5.0mmである、(1-1)~(1-4)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-6)管路の内径が0.8~4.0mmである、(1-1)~(1-5)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-7)管路の内径が1.0~3.0mmである、(1-1)~(1-6)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-8)管路が全体において一定の内径を有する、(1-1)~(1-7)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-9)充填ノズルの長手方向長さが10.0~300.0mmである、(1-1)
~(1-8)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-10)充填ノズル外径と管路内径の差が、5mm以内である、(1-1)~(1-9)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-11)充填ノズル外径と管路内径の差が、0.1~3.0mmである、(1-1)~(1-10)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-12)充填ノズル外径と管路内径の差が、0.2~2.0mmである、(1-1)~(1-11)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-13)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~75°である、(1-1)~(1-12)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-14)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~60°である、(1-1)~(1-13)のいずれかに記載の充填ノズル。
(1-15)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~45°である、(1-1)~(1-14)のいずれかに記載の充填ノズル。
【0014】
本発明の別の側面により、以下の発明(2-1)~(2-45)が提供される。
(2-1)医薬溶液を供給するための管路を有するノズル本体と、該管路の下端に連続して形成された流路を有する充填口部を備え、充填口部の先端から医薬溶液を吐出する充填ノズルであって、
ノズル本体の管路および充填口部の流路の周断面が円形であり、充填口部の流路の内径がその上流の管路の内径より大きく、
水接触角が50°以上である材料を用いて形成されている充填ノズル。
(2-2)下流方向に内径が大きくなる傾斜部を介して充填口部流路に管路が接続する、(2-1)に記載の充填ノズル。
(2-3)直径を横切る長手方向断面形状において、傾斜部の内面と充填口部流路の内面のなす角が45~170°である、(2-2)に記載の充填ノズル。
(2-4)前記傾斜部の内面と充填口部流路の内面のなす角が90~150°である、(2-3)に記載の充填ノズル。
(2-5)前記傾斜部の内面と充填口部流路の内面のなす角が90~135°である、(2-3)または(2-4)に記載の充填ノズル。
(2-6)水接触角が58°以上である、(2-1)~(2-5)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-7)水接触角が58~120°である、(2-1)~(2-6)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-8)水接触角が80~100°である、(2-1)~(2-7)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-9)水接触角が80~94°である、(2-1)~(2-8)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-10)透明な材料を用いて形成されている、(2-1)~(2-9)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-11)材料が、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂である、(2-1)~(2-10)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-12)樹脂が、環状オレフィンとオレフィンの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィン開環重合体、およびシクロオレフィン開環重合体の水素添加物から選択される、(2-11)に記載の充填ノズル。
(2-13)樹脂が、エチレン・ノルボルネンコポリマーである、(2-11)または(2-12)に記載の充填ノズル。
(2-14)エチレン・ノルボルネンコポリマーが、ノルボルネンの付加重合反応由来の繰り返し構造を含む、(2-13)に記載の充填ノズル。
(2-15)充填口部流路の内径が1.0~6.0mmである、(2-1)~(2-14)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-16)充填口部流路の内径が1.2~4.0mmである、(2-1)~(2-15)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-17)充填口部流路の長手方向長さが1.0~10.0mmである、(2-1)~(2-16)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-18)充填口部流路の長手方向長さが2.1~7.0mmである、(2-1)~(2-17)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-19)充填口部流路の長手方向長さが2.1~6.0mmである、(2-1)~(2-18)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-20)充填口部流路の長手方向長さが2.1~5.0mmである、(2-1)~(2-19)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-21)充填口部流路の長手方向長さが3.0~5.0mmである、(2-1)~(2-20)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-22)充填口部流路が全体において一定の内径を有する、(2-1)~(2-21)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-23)管路の内径が0.8~4.0mmである、(2-1)~(2-22)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-24)管路の内径が1.0~3.0mmである、(2-1)~(2-23)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-25)管路が全体において一定の内径を有する、(2-1)~(2-24)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-26)充填ノズルの長手方向長さが10.0~300.0mmである、(2-1
)~(2-25)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-27)充填口部流路の内径(c)に対する充填口流路の長手方向長さ(d)の比がd/c=0.4~3.9である、(2-1)~(2-26)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-28)充填口部流路の内径(c)に対する充填口流路の長手方向長さ(d)の比がd/c=0.7~2.7である、(2-1)~(2-27)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-29)充填口部流路の内径(c)に対する充填口流路の長手方向長さ(d)の比がd/c=1.1~2.0である、(2-1)~(2-28)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-30)充填口部流路の内径と管路の内径の差が0.2~5.0mmである、(2-1)~(2-29)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-31)充填ノズル外径と充填口部流路内径の差が、5mm以内である、(2-1)~(2-30)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-32)充填ノズル外径と充填口部流路内径の差が、0.1~3.0mmである、(2-1)~(2-31)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-33)充填ノズル外径と充填口部流路内径の差が、0.2~2.0mmである、(2-1)~(2-32)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-34)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~75°である、(2-1)~(2-33)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-35)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~60°である、(2-1)~(2-34)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-36)充填口部下端の表面がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0~45°である、(2-1)~(2-35)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-37)管路または傾斜部への接続箇所における充填口部の流路の内径が、管路の流路または傾斜部への接続箇所の内径より大きい、(2-1)~(2-36)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-38)管路が上流方向に内径が大きくなる形状を有する、(2-1)~(2-24)、および(2-26)~(2-37)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-39)充填ノズルの長手方向長さが100.0~140.0mmである、(2-
1)~(2-38)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-40)充填口部の長手方向流路の長さが3.0~4.0mmである、(2-1)
~(2-39)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-41)充填口部流路に管路が傾斜部を介さずに接続する、(2-1)、および(2-4)~(2-39)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-42)下流方向に内径が大きくなる傾斜部を介して充填口部流路に管路が接続し、直径を横切る長手方向断面形状において、傾斜部の内面と充填口部流路の内面のなす角が107.5~117.5°である、(2-1)~(2-40)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-43)管路または傾斜部への接続箇所における充填口部の流路の内径が2.0~
3.0mmである、(2-1)~(2-42)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-44)流路または傾斜部への接続箇所における管路の内径が1.1~2.1mm
である、(2-1)~(2-43)のいずれかに記載の充填ノズル。
(2-45)材料が、シクロオレフィンポリマーから選択される樹脂である、(2-1)~(2-12)および(2-15)~(2-44)のいずれかに記載の充填ノズル。
【0015】
本発明の別の側面により、以下の発明(3-1)~(3-14)が提供される。
(3-1)(1-1)~(1-15)および(2-1)~(2-45)のいずれかに記載の充填ノズルを用いて、医薬溶液を容器に充填する工程を含む、液体医薬製剤の製造方法。
(3-2)液体医薬製剤が含有する医薬溶液の量が0.1~50.0mLである、(3-1)に記載の製造方法。
(3-3)充填する医薬溶液の粘度が、1~1000cPである、(3-1)または(3-2)に記載の製造方法。
(3-4)充填する医薬溶液における活性成分の濃度が、30~350mg/mLである、(3-1)~(3-3)のいずれかに記載の製造方法。
(3-5)充填する医薬溶液における表面張力が、30~72mN/mである、(3-1)~(3-4)のいずれかに記載の製造方法。
(3-6)充填する医薬溶液が活性成分としてタンパク質を含有する、(3-1)~(3-5)のいずれかに記載の製造方法。
(3-7)充填する医薬溶液が活性成分として抗体を含有する、(3-1)~(3-6)に記載の製造方法。
(3-8)医薬溶液が添加剤として界面活性剤を含有する、(3-1)~(3-7)のいずれかに記載の製造方法。
(3-9)容器がバイアル、シリンジ、カートリッジ、アンプル、デバイス、バッグ、ボトル、エラストメリックリザーバー、またはチューブである、(3-1)~(3-8)のいずれかに記載の製造方法。
(3-10)医薬溶液の充填速度が0.1~1000mL/分である、(3-1)~(
3-9)のいずれかに記載の製造方法。
(3-11)医薬溶液の充填後にポンプを逆回転させて、充填ノズル内の医薬溶液を引き戻す工程を更に含む、(3-1)~(3-10)のいずれかに記載の製造方法。
(3-12)医薬溶液の充填後にポンプを逆回転させて、充填ノズル内の医薬溶液を引き戻す工程を含まない、(3-1)~(3-10)のいずれかに記載の製造方法。
(3-13)クリーンルーム環境下またはクリーン設備内で行われる、(3-1)~(3-12)のいずれかに記載の製造方法。
(3-14)無菌医薬品製造区域内で行われる、(3-1)~(3-12)のいずれかに記載の製造方法のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
本発明の別の側面により、以下の発明(4-1)~(4-5)が提供される。
(4-1)(1-1)~(1-15)および(2-1)~(2-45)のいずれかに記載の充填ノズルを備える、液体医薬の充填装置。
(4-2)充填チューブを更に備え、充填チューブは充填ノズルに医薬溶液を供給可能なように充填ノズルに連結する、(4-1)に記載の充填装置。
(4-3)充填ポンプを更に備え、充填ポンプは充填チューブの上流側に連結する、(4-2)に記載の充填装置。
(4-4)充填ポンプが充填ポンプは、シリンジ式ポンプ、ピンチバルブ式ポンプ、重量充填ポンプ、マスフロー式ポンプ、ダイヤフラム式ポンプ、スムーズフローポンプ、およびペリスタルティックポンプから選択される、(4-3)に記載の充填装置。
(4-5)充填タンクを更に備え、充填タンク内の医薬溶液が充填ポンプにより充填チューブを経て充填ノズルに供給可能なように連結される、(4-4)に記載の充填装置。
【0017】
本発明の別の側面により、以下の発明(5-1)~(5-12)が提供される。
(5-1)医薬溶液を供給するための管路を有するノズル本体と、該管路の下端に連続して形成された流路を有する充填口部を備え、充填口部の先端から医薬溶液を吐出する充填ノズルであって、
ノズル本体の管路および充填口部の流路の周断面が円形であり、充填口部の流路の内径がその上流の管路の内径より大きく、
水接触角が50~120°である材料を用いて形成されている、充填ノズル。
(5-2)下流方向に内径が大きくなる傾斜部を介して充填口部流路に管路が接続する、(5-1)に記載の充填ノズル。
(5-3)管路または傾斜部への接続箇所における充填口部の流路の内径が、管路の流路または傾斜部への接続箇所の内径より大きい、(5-1)または(5-2)に記載の充填ノズル。
(5-4)材料が、水接触角が80~94°である樹脂である、(5-1)~(5-3)のいずれかに記載の充填ノズル。
(5-5)材料が、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂である、(5-1)~(5-4)のいずれかに記載の充填ノズル。
(5-6)医薬溶液を供給するための管路を有するノズル本体と、該管路の下端に形成された充填口部を備え、充填口部から医薬溶液を吐出する充填ノズルであって、
シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を材料として用いて形成されている、充填ノズル。
(5-7)材料が、環状オレフィンとオレフィンの共重合体であるシクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィン開環重合体、およびシクロオレフィン開環重合体の水素添加物、から選択される、(5-1)~(5-6)のいずれかに記載の充填ノズル。
(5-8)材料が、エチレン・ノルボルネンコポリマーである、(5-1)~(5-7)のいずれかに記載の充填ノズル。
(5-9)エチレン・ノルボルネンコポリマーが、ノルボルネンの付加重合反応由来の繰り返し構造を含む、(5-8)に記載の充填ノズル。
(5-10)材料が、C1-6アルキルで置換されていてもよいノルボルネン開環重合体
、および該開環重合体の水素添加物から選択される、(5-1)~(5-9)のいずれかに記載の充填ノズル。
(5-11)(5-1)~(5-10)のいずれかに記載の充填ノズルを用いて、医薬溶液を容器に充填する工程を含む、液体医薬製剤の製造方法。
(5-12)医薬溶液に含まれる活性成分が抗体である、(5-11)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により提供される充填ノズルを使用することにより、医薬溶液の乾燥により生じる固体成分が充填ノズルの先端部分に付着することが抑制され、液体医薬製剤の安定した製造が可能となる。さらに、本発明により提供される液体医薬製剤の製造方法により、効率的かつ経済的な液体医薬製剤の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2a図2aは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図2b図2bは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図3図3は本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図4図4は本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図である。
図5a図5aは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図であり、充填ノズルの形状の特徴となる部位の長さおよび角度を表示する。
図5b図5bは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略断面図であり、充填ノズルの形状の特徴となる部位の長さおよび角度を表示する。
図6図6はステンレス製(a)、PEEK製(b)、およびCOC製(c)の充填ノズルの充填口付近を拡大した写真である。
図7図7は、充填ノズルの材質の水接触角を静滴法(θ/2法)で測定するときの画像の例である。シクロオレフィンコポリマー(COC)製の充填ノズル(coc_1、内径a=1.6mm、外径3.2mm)の外表面を利用して測定を行った。
図8図8は充填ノズル内部に滞留する溶液の下端である液面高さが、ノズル先端から3mmの位置にある状態を示す写真である。シクロオレフィンコポリマー(COC)製の充填ノズル(coc_1、内径a=1.6mm、外径3.2mm)を用いた。
図9図9はポリプロピレン製の充填ノズル(pp_1、内径a=1.6mm、外径3.2mm)とペリスタルティック充填ポンプを用いて充填速度200rpmで医薬溶液を充填し、その後サックバックを行った直後の充填ノズルのノズル本体の下端付近を拡大した写真である。正常に充填を行った後のサックバックの完了直後の様子((a)→(b)→(c))が例示されている。サックバックを行った場合においても、流路に残る医薬溶液が下流方向に移動して、ノズルの先端付近に液滴として付着することとなる。液面高さはサックバック完了後の(c)の時の液面位置を測定する。
図10図10はステンレス製の充填ノズルを用いて医薬溶液を充填するときの充填ノズルの下端付近を拡大した写真の一例である。正常に充填するときの医薬溶液の吐出から充填完了までが(a)、(b)、(c)の順で示されている。
図11図11はステンレス製の充填ノズルを用いて医薬溶液を充填するときの充填ノズルの充填口付近を拡大した写真であり、液体医薬製剤の製造における充填ノズルの詰まりの例である。充填ノズルの詰まりの発生により、例えば、充填するときに医薬溶液の飛散((a)または(b))、医薬溶液の充填精度低下、医薬溶液の斜め方向への吐出((c)または(d))、または医薬溶液の固化(e)、または乾燥した医薬溶液によるノズル流路の閉塞による医薬溶液が吐出停止(f)などが確認される。
図12図12は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後、そのまま2時間静置した充填ノズルの詰まりの発生状況(各溶液についてN=3)を示すグラフである。充填ノズルは、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)を用いた。医薬溶液には抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤Dを用いた。
図13図13は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端位置について示すグラフである。充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示す。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、およびシクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図14図14は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)の平均値(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、およびシクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図15図15は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)、アクリル材質のの充填ノズル(ac_2)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)、およびポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_2))を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図16図16は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)の平均値(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)、アクリル材質の充填ノズル(ac_2)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)、およびポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_2)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図17図17は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、ポリプロピレン材質での充填ノズル(pp_1)、およびシクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)を用いた。医薬溶液には抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤Dを用いた。
図18図18は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_3、ac_1、ac_4、ac_5、およびac_6)、およびアクリル材質の充填ノズル(ac_7、ac_2、ac_8、ac_9、およびac_10)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図19図19は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm未満3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_1、およびac_4)、およびアクリル材質の充填ノズル(ac_11、ac_2、ac_12、ac_13、ac_14、ac_15、およびac_16)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図20図20は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質の充填ノズル(ac_4)、およびアクリル材質の充填ノズル(ac_17、ac_18、ac_8、ac_19、ac_20、ac_21、およびac_22)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図21図21は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満になるそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、アクリル材質で内径(a=2.0mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(ac_4)と、アクリル材質の充填ノズル(ac_23、ac_24、ac_8、ac_25、およびac_26)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図22図22は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後、そのまま2時間静置した充填ノズルの詰まりの発生状況(N=5)を示すグラフである。充填ノズルは、ステンレス材質の充填ノズル(sus_1)、PEEK材質の充填ノズル(peek_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_2)、およびシクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
図23a図23aは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略図および概略断面図である。
図23b図23bは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示す概略図および概略断面図である。
図23c図23cは本発明の充填ノズルの実施形態の一例を示すCOP製の充填ノズルの写真である。
図24図24はシクロオレフィンポリマー製の充填ノズル(cop_1:a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°)とペリスタルティック充填ポンプを用いて充填速度200rpmで医薬溶液を充填し、その後サックバックを行った直後の充填ノズルのノズル本体の下端付近を拡大した写真である。正常に充填を行った後のサックバックの完了直後の様子((a)→(b)→(c))が例示されている。サックバックを行った場合においても、流路に残る医薬溶液が下流方向に移動して、ノズルの先端付近に液滴として付着することとなる。充填ノズルcop_1では、サックバック完了後の(c)のときに液面高さは充填口部下端よりも高い液面位置に液が滞留する。
図25図25は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後の、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルは、ポリプロピレン材質での充填ノズル(pp_1)、およびシクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)、およびシクロオレフィンポリマー材質の充填ノズル(cop_1)を用いた。医薬溶液には抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、抗体製剤D、抗体製剤E、および製剤Fを用いた。
図26図26は抗体を含有する医薬溶液(約1.2mL)をペリスタルティックポンプを用いて容器に充填した後、そのまま2時間静置した充填ノズルの詰まりの発生状況(N=5)を示すグラフである。充填ノズルは、ステンレス材質の充填ノズル(sus_1)、PEEK材質の充填ノズル(peek_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_1)、ポリプロピレン材質の充填ノズル(pp_2)、シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズル(coc_2)、およびシクロオレフィンポリマー材質の充填ノズル(cop_1)を用いた。医薬溶液には抗体製剤Aを用いた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の充填ノズルについて一実施形態を例に挙げて説明する。
【0021】
図1は、周断面が円形である本発明の充填ノズルの周断面の直径を通る長手方向の断面図である。図1に示される充填ノズル1は、シクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を用いて形成され、ノズル本体2には充填口部4に連続した管路3が設けられている。ノズル本体2の管路3を流れた溶液は充填口部4を経て容器内へ供給される。
【0022】
図2aに示される充填ノズル11はノズル本体12の下端14に連続して充填口部15が設けられている。充填口15は、ノズル本体12に設けられた管路13の内径よりも大きい内径の流路19を有している。ノズル本体12の管路13を流れた溶液は充填口部15の流路19を経て容器内へ供給される。
【0023】
図2bに示される充填ノズル11はノズル本体12の下端14に連続して充填口部15が設けられている。ここで管路13は下流から上流方向に向かうにつれて内径が大きくなる形状を有している。充填口15が有する流路19は、管路への接続箇所における内径が流路への接続箇所における管路の内径より大きい形状を有している。ノズル本体12の管路13を流れた溶液は充填口部15の流路19を経て容器内へ供給される。本明細書において特に特定がなければ、管路および/または流路の内径が一定ではない場合、管路と流路の内径は両者の接続箇所、または両者の傾斜部への接続箇所において比較する。
【0024】
図3に示される充填ノズル21は、ノズル本体22の管路23と充填口部25の流路29が傾斜部27を介して連結している。断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度(f)は、約90°(図2a、図2b)であってもよく、90°以上(図3)であってもよく、90°未満であってもよい。例えば、角度fは、10~170°、具体的には45~170°、より具体的には90~135°であってもよい。
【0025】
図4に示される充填ノズル31は、ノズル本体32の管路33と充填口部35の流路39が傾斜部37を介して連結している。断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度(f)は、図3と同様である。充填口部下端面40がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度が0°を上回る角度となっており、流路の表面と充填口部下端面がなす角度は90°未満となっている。
【0026】
本発明の充填ノズルは、医薬溶液を医薬品に用いられる容器、例えば、バイアル、シリンジ、カートリッジ、アンプル、バッグ、ボドル、ビン、チューブ、ジャー、カプセル、エラストメリックリザーバー、デバイスなどの容器に充填するために用いられる。通常、容器に充填される医薬溶液の量は、例えば0.01~1000mL、具体的には0.1~50mL、より具体的には0.1~20mLである。本発明の充填ノズルは好ましくはバイアルへの医薬溶液の充填に用いることができる。その際充填される医薬溶液の量は、例えば0.05~100mL、具体的には0.1~50mL、より具体的には0.1~20mLである。本発明の充填ノズルは好ましくはシリンジへの医薬溶液の充填に用いることができる。その際充填される医薬溶液の量は、例えば0.05~100mL、具体的には0.1~5mL、より具体的には0.2~2.4mLである。
【0027】
図5aにおいて示される本発明の充填ノズルの寸法は、医薬溶液の充填に適していれば特に限定されない。当該図において、aはノズル本体の管路の直径、bはノズル本体の外径、cは充填口部流路の直径、dは充填口部流路の長さ、eは充填ノズル全体の長さ、fは断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度をそれぞれ表す。ここで、aは例えば、例えば0.5~10mm、具体的には0.8~5.0mm、より具体的には1.0~3.0mmである。bは例えば、例えば0.6~12mm、具体的には1.6~6.6mm、より具体的には2.6~3.6mmである。cは例えば、例えば0.6~11.5mm、具体的には1.1~5.6mm、より具体的には1.2~3.6mmである。dは例えば、例えば0.1~10mm、具体的には2~10mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。fは、約90°であってもよく、90°以上であってもよく、90°未満であってもよい。例えば、角度fは、10~170°、具体的には45~170°、より具体的には90~135°であってもよい。
【0028】
本発明の充填ノズルは好ましくはバイアルへの医薬溶液の充填に用いることができる。その際のaは例えば、0.5~5.0mm、具体的には0.8~3.2mm、より具体的には0.8~2.6mmである。bは例えば、例えば0.6~6.0mm、具体的には1.0~4.0mm、より具体的には1.0~3.2mmである。cは例えば、例えば0.6~5.8mm、具体的には0.7~4.8mm、より具体的には0.9~3.2mmである。dは例えば、例えば0.1~10mm、具体的には2~7mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。cとaの差は、例えば0.1~5.0mm、具体的には0.2~2.0mm、より具体的には0.2~0.6mmである。dとcの比は、例えばd/c=0.4~3.8、具体的にはd/c=0.7~1.9、より具体的にはd/c=1.1~2.0である。bとcの差は、例えば、5mm以内、具体的には3.0~0.1mm、より具体的には2.0~0.2mmである。
【0029】
本発明の充填ノズルはより好ましくはシリンジへの医薬溶液の充填に用いることができる。その際のaは例えば、例えば0.5~5.0mm、具体的には0.8~3.2mm、より具体的には0.8~2.6mmである。bは例えば、例えば0.7~6.0mm、具体的には1.0~4.0mm、より具体的には1.0~3.2mmである。cは例えば、例えば0.6~5.8mm、具体的には0.7~4.8mm、より具体的には0.9~3.2mmである。dは例えば、例えば0.1~10mm、具体的には2~7mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。cとaの差は、例えば0.1~5.0mm、具体的には0.2~2.0mm、より具体的には0.2~0.6mmである。dとcの比は、例えばd/c=0.4~3.8、具体的にはd/c=0.7~1.9、より具体的にはd/c=1.1~2.0である。bとcの差は、例えば、5mm以内、具体的には3.0~0.1mm、より具体的には2.0~0.2mmである。
【0030】
図5bにおいて示される本発明の充填ノズルの寸法は、図5aと同様に医薬溶液の充填に適していれば特に限定されない。図5bにおいて、aはノズル本体の管路の直径、bはノズル本体の外径、cは充填口部流路の直径、dは充填口部流路の長さ、eは充填ノズル全体の長さ、fは断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度、gは充填口部下端の表面(充填口部下端面)がノズル長手方向に対する垂直方向となす角度をそれぞれ表す。ここで、aは例えば、例えば0.5~10mm、具体的には0.8~5.0mm、より具体的には1.0~3.0mmである。bは例えば、例えば0.6~12mm、具体的には1.6~6.6mm、より具体的には2.6~3.6mmである。cは例えば、例えば0.6~11.5mm、具体的には1.1~5.6mm、より具体的には1.2~3.6mmである。dは例えば、例えば0.1~10mm、具体的には2~10mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。fは、約90°であってもよく、90°以上であってもよく、90°未満であってもよい。例えば、角度fは、10~170°、具体的には45~170°、より具体的には90~135°であってもよい。充填口の末端と外径の表面に続く表面がなす外面の角度は、例えば、gは0~75°、具体的には0~60°、より具体的には30~60°、さらに具体的には45~60°である。
【0031】
図23aにおいて示される本発明の充填ノズルの寸法は、図5bと同様に医薬溶液の充填に適していれば特に限定されない。図23aにおいて、aはノズル本体の管路の直径、bはノズル本体の外径、cは充填口部流路の直径、dは充填口部流路の長さ、eは充填ノズル全体の長さ、fは断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度をそれぞれ表す。ここで、aは例えば、0.5~10mm、具体的には0.8~5.0mm、より具体的には1.0~3.0mmである。bは例えば、0.6~12mm、具体的には1.6~6.6mm、より具体的には2.6~3.6mmである。cは例えば、0.6~11.5mm、具体的には1.1~5.6mm、より具体的には1.2~3.6mmである。dは例えば、0.1~10mm、具体的には2~10mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。fは、約90°であってもよく、90°を上回っていてもよく、90°未満であってもよい。例えば、角度fは、10~170°、具体的には45~170°、より具体的には90~135°であってもよい。よりさらに具体的には、a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°である。aは、ノズル本体の管路内径であり、該内径は管路全体で一定であってもよく、変動してもよい。例えば、該内径は下流から上流方向にかけて縮小する部分を1以上有していてもよく、ノズル本体の管路の内径が下流から上流方向にかけて拡大する部分を1以上有していてもよい。具体的にはノズル本体の管路における内径が縮小する部分は、下流から上流方向にかけて10°以下、8°以下、5°以下、3°以下、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下テーパーで縮小してもよい。好ましくはノズル本体の管路における内径が拡大する部分は、下流から上流方向にかけて10°以下、8°以下、5°以下、3°以下、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下のテーパーで拡大してもよい。さらに好ましくは管路の内径は均一であってもよい。一つの態様において、ノズル本体の下端から20mm以上、30mm以上、または50mm以上の流路は、内径が一定であるか、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下のテーパーで内径が拡大する部分を有する。
【0032】
図23bにおいて示される本発明の充填ノズルの寸法は、図5-2と同様に医薬溶液の充填に適していれば特に限定されない。図23aにおいて、aはノズル本体の管路の直径、bはノズル本体の外径、cは充填口部流路の直径、dは充填口部流路の長さ、eは充填ノズル全体の長さ、fは断面図において傾斜部の表面とそれに続く流路の表面がなす角度をそれぞれ表す。ここで、aは例えば、0.5~10mm、具体的には0.8~5.0mm、より具体的には1.0~3.0mmである。bは例えば、0.6~12mm、具体的には1.6~6.6mm、より具体的には2.6~3.6mmである。cは例えば、0.6~11.5mm、具体的には1.1~5.6mm、より具体的には1.2~3.6mmである。dは例えば、0.1~10mm、具体的には2~10mm、より具体的には3~5mmである。eは例えば、2mm以上、具体的には2~300mm、より具体的には10~200mm、さらに具体的には30~150mmである。fは、約90°であってもよく、90°を上回っていてもよく、90°未満であってもよい。例えば、角度fは、10~170°、具体的には45~170°、より具体的には90~135°であってもよい。よりさらに具体的には、a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=112.5°である。aは、ノズル本体の管路内径であり、該内径は管路全体で一定であってもよく、変動してもよい。例えば、該内径は下流から上流方向にかけて縮小する部分を1以上有していてもよく、ノズル本体の管路の内径が下流から上流方向にかけて拡大する部分を1以上有していてもよい。具体的にはノズル本体の管路における内径が縮小する部分は、下流から上流方向にかけて10°以下、8°以下、5°以下、3°以下、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下テーパーで縮小してもよい。好ましくはノズル本体の管路における内径が拡大する部分は、下流から上流方向にかけて10°以下、8°以下、5°以下、3°以下、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下のテーパーで拡大してもよい。さらに好ましくは管路の内径は均一であってもよい。一つの態様において、ノズル本体の下端から20mm以上、30mm以上、または50mm以上の流路は、内径が一定であるか、2°以下、1°以下、0.5°以下、または0.1°以下のテーパーで内径が拡大する部分を有する。
【0033】
本発明の1つの態様において、充填ノズルがシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を用いて形成される。当該態様に係る充填ノズルは、ステンレス、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはポリプロピレンを用いて形成された充填ノズルと比べ、充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が3mm以上になる割合が高くなり、また充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が上方となり、溶液成分の固化や詰まりを防ぐことができる。
【0034】
本発明の1つの態様において、充填ノズルがシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂を用いて形成され、充填ノズルの管路内径aが1~5mmで、例えばシクロオレフィンコポリマーで内径aが1.6mmである。当該態様に係る充填ノズルは、ステンレスやポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル、ポリプロピレンの充填ノズルと比べ、充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が3mm以上になる割合が高くなり、また充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が上方となり、溶液成分の固化や詰まりを防ぐことができる。
【0035】
本発明の1つの態様において、充填ノズルの管路内径aが1~5mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~2mm広く、流路長さdが1~10mmで、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上のとき、例えば流路内径cが管路内径aより0.6mmまたはそれ以上大きく水接触角50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°の材料である、そのような形状と材質を有するとき、充填ノズル先端を拡張していない充填ノズルと比べ、充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が3mm以上になる確率が高くなり、また充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端の位置が上方となり、溶液成分の固化や詰まりを防ぐことができる。
【0036】
特定の形状を有する本発明の充填ノズルを形成するための材料は、液体医薬製剤の製造器具を作成するための材料として適したものであれば、特に限定されない。その例としては、ガラス、金属(例えば、ステンレス(SUS))、および樹脂などが挙げられる。材料として用いられる樹脂の例としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィン(PO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニ
ルアルコール(PVA)、ナイロン、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン(PS)、四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))などが挙げられる。
【0037】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは水接触角50°以上、具体的には58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には58~100°、さらにより具体的には80~100°、特に具体的には80~94°の材料からを用いて形成されている。材料は表面の水接触角が、50°以上、具体的には58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には58~100°、さらにより具体的には80~100°、特に具体的には80~94°となるよう、表面の改質や、表面の化学的処理による被覆や、表面の微細な凹凸加工や、複合面の形成などによって、材質の濡れ性を制御してもよい。ここで、水接触角は常法の静滴法(θ/2法)、例えばJISR3257の方法により測定することができる。例えば、1μLの水を材料の上に添加して1分以内の液滴のサイズを画像から測定することにより水接触角を測定することができる。
【0038】
本発明の充填ノズルの好ましい材料として、例えば、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。COCの例としては、ノルボルネンとエチレンなどのオレフィンを原料とした共重合体(例えば、ノルボルネンの付加重合に由来する繰り返し単位を含むノルボルネン・エチレン付加重合体)、およびテトラシクロドデセンとエチレンなどのオレフィンを原料とした共重合体(例えば、テトラシクロドデセンの付加重合に由来する繰り返し単位を含むノルボルネン・エチレン付加重合体)が挙げられる。COPの例としては、シクロオレフィン開環重合体およびシクロオレフィンの開環重合後に水素添加して得られる水素添加物、より具体的には、ノルボルネンの開環重合体およびノルボルネンの開環重合後に水素添加して得られる水素添加物が挙げられる。このようなCOCおよびCOPは例えば特開平5-300939号あるいは特開平5-317411号に記載されている。このような好ましいCOC、COPの構造を以下に示す。
【0039】
【化1】
【0040】
COCおよびCOPの製造に使用されるシクロオレフィンは、ポリマーの製造に使用可能である、二重結合を1つ以上有する環状オレフィンであれば特に限定されない。シクロオレフィンの例としては、上記のノルボルネンおよび置換基を有するノルボルネンが挙げられる。ここで、低級アルキル基は、Cmn基で、例えば、C1-6アルキル、特にC1-4アルキル、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルなどが挙げられる。
【0041】
COCは、例えば日本化成工業のオプトレッツ(登録商標)、ポリプラスチックスのト
ーパス(登録商標)、三井化学のアペル(登録商標)を使用することができる。またCOPは、例えば日本ゼオンのゼオネックス(登録商標)又はゼオノア(登録商標)、日本合成ゴム(JSR)のアートン、大協精工製のDaikyo Resin CZ(登録商標)として市販さ
れているものを使用することができる。COCおよびCOPは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度、低溶出性などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示す点においても好ましく、機械特性、耐薬品性、精密成型、高強度、低吸着、低不純物、低吸湿性、耐滅菌性、バリア性、高透明性などの特性を示す点においても医薬溶液の充填ノズルに使用する樹脂として好ましい材質である。
【0042】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが0.5~2.0mmで、外径bが0.7~4.0mmで、eが30~150mmで、充填ノズルを形成する材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂の材料である。例えば、外径bは管路内径aより0.2~2.0mm大きい。
【0043】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが2.0~5.0mmで、外径bが2.2~6.0mmで、eが30~150mmで、充填ノズルを形成する材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂の材料である。例えば、外径bは管路内径aより0.2~2.0mm大きい。
【0044】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが0.5~1.0mmで、外径bが0.8~2.0mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.0mm、具体的には0.2~0.8mm、より具体的には0.2~0.6mm広く、流路長さdが2~7mm、具体的には2~5mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°であり、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーである。
【0045】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが1.0~2.0mmで、外径bが1.4~3.0mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.0mm、具体的には0.2~0.8mm、より具体的には0.2~0.6mm広く、流路長さdが2~7mm、具体的には2~5mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°であり、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーである。
【0046】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが1.5~2.0mmで、外径bが2.0~3.0mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.0mm、具体的には0.2~0.8mm、より具体的には0.2~0.6mm広く、流路長さdが2~7mm、具体的には2~5mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーである。
【0047】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが2.0~3.0mmで、外径bが2.4~4.0mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.0mm、具体的には0.2~0.8mm、より具体的には0.2~0.6mm広く、流路長さ
dが2~7mm、具体的には2~5mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーである。
【0048】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが3.0~4.0mmで、外径bが3.4~5.0mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.0mm、具体的には0.2~0.8mm、より具体的には0.2~0.6mm広く、流路長さdが2~7mm、具体的には2~5mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーから選択される樹脂の材料である、そのような形状と材質を有する充填ノズルがある。
【0049】
本発明の1つの態様において、充填ノズルは管路内径aが4.0~5.0mmで、外径bが4.4~6.5mmで、充填口部流路内径cが管路内径aより0.2mm~1.5mm、具体的には0.4~1.0mm、より具体的には0.5~0.8mm広く、流路長さdが3~7mm、より具体的には3~5mmで、eが30~150mmで、fが90~135°で、gが0~60°で、充填ノズルを形成する材質の水接触角が50°以上、具体的にはは58°以上、より具体的には58~120°、さらに具体的には80~100°、さらにより具体的には80~94°、特に具体的には当該材質がシクロオレフィンポリマーまたはシクロオレフィンコポリマーである。
【0050】
本発明の1つの側面において、充填ノズルの材料として透明な樹脂が用いられる。図6にはステンレス製(a)、PEEK製(b)、およびCOC製(c)の充填ノズルの充填口付近を拡大した写真を示す。透明な樹脂で形成される充填ノズルを用いることで、充填ノズルの管および充填口部の内部の液面高さの視認性を向上させ、充填ノズルの先端の液だれや液の滞留が発生した場合に、目視により簡便にかつ素早く検出することができ、充填ノズル先端の液だれおよび液の滞留および充填ノズル先端の乾燥による詰まりおよび充填精度の低下を効果的に防ぐことができる。
【0051】
本発明において、医薬溶液は特に限定されず、活性成分として低分子化合物を含んでいてもよく、またはタンパク質(例えば、抗体またはその断片)、ペプチド、または核酸を含んでいてもよい。一般に、液体医薬製剤中の活性成分の濃度は、例えば0.001~1000mg/mL、具体的には0.01~300mg/mL、より具体的には1~200mg/mLである。一般に、充填する医薬溶液の粘度は、例えば、1~2000mPa・s(1~2000cP)、具体的には、1~100mPa・sである。本明細書中、粘度は電磁スピニング粘度計法(Journal of Artificial Organs (2013) Sep; 16, (3): 359-367)で測定された値で示される。一般に、充填する医薬溶液の表面張力は、例えば30~72mN/m、具体的には35~50mN/m、より具体的には40~50mN/m、さらに具体的には45~50mN/mである。本明細書中、表面張力は常法のプレート法で測定された値で示され、測定プレートが液体表面に触れたときに、測定プレートの周囲に沿ってはたらく表面張力により測定プレートを液中に引き込もうとする力を読み取ることにより測定できる。
【0052】
本発明の1つに態様において、医薬溶液は生理活性タンパク質を活性成分として含む。生理活性タンパク質の例としては、抗体が挙げられる。好ましい態様において、本発明は、高濃度の抗体を含有する抗体含有液体医薬製剤の製造に適用される。
【0053】
本発明において、抗体濃度は、例えば50mg/mL以上であり、具体的には80mg/mL以上であり、より具体的には100mg/mL以上であり、さらに具体的には120mg/mL以上であり、さらに具体的には150mg/mL以上である。また、抗体含有溶液製剤中の抗体濃度の上限は、例えば1000mg/mLであり、具体的には600mg/mLであり、さらに具体的には400mg/mLであり、さらに具体的には350mg/mLであり、特に具体的には200mg/mLである。よって、高濃度抗体溶液の抗体濃度は例えば50~1000mg/mLであり、具体的には100~350mg/mLであり、さらに具体的には120~250mg/mLであり、特に具体的には150~240mg/mLである。一般に、抗体などのタンパク質濃度が100mg/mL以上や、120mg/mL以上の溶液、あるいは粘度4mPa・s以上や、粘度6mPa・s以上の溶液の充填では、ノズル先端で乾燥による成分の固化、さらにそれによる詰まりが起こりやすく、製造上のトラブルの発生が多くなる。
【0054】
本発明に使用される抗体は、所望の抗原と結合する限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。
【0055】
本発明で使用されるモノクローナル抗体としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、サル等の動物由来のモノクローナル抗体だけでなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、バイスペシフィック抗体など人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。さらに、血中滞留性や体内動態の改善を目的とした抗体分子の物性の改変(具体的には、等電点(pI)改変、Fc受容体の親和性改変等)を行うために抗体の定常領域等を人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。また、本発明で使用される抗体の免疫グロブリンクラスは特に限定されるものではなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、IgA、IgD、IgE、IgMなどいずれのクラスでもよいが、IgG及びIgMが好ましい。
【0056】
さらに本発明で使用される抗体には、定常領域と可変領域を有する抗体(全長抗体)だけでなく、Fv、Fab、F(ab)2などの抗体断片や、抗体の可変領域をペプチドリンカー等の
リンカーで結合させた1価または2価以上の一本鎖Fv(scFv、sc(Fv)2)やscFvダイマーな
どのダイアボディ等などの低分子化抗体なども含まれるが、全長抗体が好ましい。
【0057】
上述した本発明で使用される抗体は、当業者に周知の方法により作製することができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46 )等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
【0058】
また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAを得たら、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0059】
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体な
どを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAを
ヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に
導入し産生させることにより得ることができる。
【0060】
さらに、本発明で使用される抗体には、抗体修飾物が含まれる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や細胞障害性薬剤等の各種分子と結合した抗体を使用することもでき
る(Farmaco. 1999 Aug 30;54(8):497-516.、Cancer J. 2008 May-Jun;14(3):154-69.)
。本発明で使用される抗体にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0061】
本発明で使用される抗体としては、抗組織因子抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗IL-6抗体、抗グリピカン-3抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗GPIIb/IIIa抗体、抗TNF抗体、抗CD25抗体、抗EGFR抗体、抗Her2/neu抗体、抗RSV抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗VEGF抗体、抗VLA4抗体、抗HM1.24抗原抗体、抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)、抗ガングリオシドGM3抗体、抗TPO受容体アゴニスト抗体、凝固第VIII因子代替抗体、抗IL31レセプター抗体、抗HLA抗体、抗AXL抗体、抗CXCR4抗体、抗NR10抗体、ファクターIXとファクターXとのバイスペシフィック抗体などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明で使用する抗体の例として、再構成ヒト化抗体が挙げられ、その例としては、ヒト化抗インターロイキン6(IL-6)レセプター抗体(トシリズマブ、hPM-1あるいはMRA、WO92/19759参照)、ヒト化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(WO98/14580参照)、ヒト化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(WO98/13388を参照)、ヒト化抗
組織因子抗体(WO99/51743参照)、抗グリピカン-3 ヒト化IgG1κ抗体(コドリツズマブ
、GC33、WO2006/006693参照)、抗NR10ヒト化抗体(WO2009/072604参照)、ファクターIXとファクターXとのバイスペシフィックヒト化抗体(ACE910、WO2012/067176を参照)、抗IL-31レセプターA ヒト化モノクローナル抗体ネモリズマブ(CIM331)抗体などが挙げら
れる。本発明で使用するヒト化抗体の例としては、ヒト化抗IL-6レセプター抗体、抗NR10ヒト化抗体、ファクターIXとファクターXとのバイスペシフィックヒト化抗体、ヒト化抗
ミオスタチン抗体、ヒト化IL-8抗体、及び抗IL-31レセプターA ヒト化モノクローナル抗
体ネモリズマブ(CIM331)抗体が挙げられる。
【0063】
ヒトIgM抗体の例としては、抗ガングリオシドGM3組み換え型ヒトIgM抗体(WO05/05636
参照)などが挙げられる。
【0064】
低分子化抗体の例としては、抗TPO受容体アゴニストDiabody(WO02/33072参照)、抗CD47アゴニストDiabody(WO01/66737参照)などが挙げられる。
【0065】
本発明において等電点の低い抗体(低pI抗体)とは、特に天然では存在し難い、低い等電点を有する抗体をいう。このような抗体の等電点としては例えば3.0~8.0、好ましくは
5.0~7.5、さらに好ましくは5.0~7.0、特に好ましくは5.0~6.5が挙げられるがこれらに限定されない。なお、天然の(または通常の)抗体は、通常7.5~9.5の範囲の等電点を有すると考えられる。
【0066】
さらに本発明で使用される抗体としては、抗体の表面に露出しているアミノ酸残基を改変することにより抗体のpIを低下させた、pI改変抗体が好ましい。このようなpI改変抗体とは、改変前の抗体のpIよりも1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、pIを
低下させた抗体をいう。このようなpI改変抗体としては、例えば、WO2009/041621に記載
された抗IL-6レセプター抗体であるSA237(MAb1、H鎖/配列番号:1、L鎖/配列番号:
2)、抗NR10ヒト化抗体であり、WO2009/072604の実施例12に記載の方法で作製した、完
全ヒト化NS22抗体などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
医薬溶液の活性成分が抗体の場合、充填する医薬溶液の粘度は、例えば1~2000mPa・s(1~2000cP)、具体的には1~1000mPa・s、より具体的には4~1000mPa・s、さらに具体的には4~200mPa・s、特に具体的には6~100mPa・s、さらに特に具体的には6~50mPa・sである。本明細書中、粘度は電磁スピニング粘度計法(Journal of Artificial Organs (2013) Sep; 16, (3): 359-367)で測定された値で示される。一般に、充填する医薬溶液の表面張力は、例えば30~72mN/m、具体的には35~50mN/m、より具体的には45~50mN/mである。本明細書中、表面張力は常法のプレート法で測定された値で示され、測定プレートが液体表面に触れたときに、測定プレートの周囲に沿ってはたらく表面張力により測定プレートを液中に引き込もうとする力を読み取ることにより測定できる。
【0068】
本発明において医薬溶液は、必要に応じて、界面活性剤、懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤、安定化剤、乳化剤、糖、アミノ酸などを適宜含むことができる。
【0069】
界面活性剤の例としては、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポロキサマー等のポリオキシプロピレン鎖とポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6~18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10~18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2~4でアルキル基の炭素原子数が10~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8~18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12~18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。
【0070】
懸濁剤の例としては、メチルセルロース、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどを挙げることができる。
【0071】
溶液補助剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。
【0072】
等張化剤としては例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。
【0073】
保存剤としては例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0074】
吸着防止剤としては例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188などを挙げることができる。
【0075】
pH調整剤としては例えば、クエン酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、酢酸、リン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、氷酢酸、コハク酸、リンゴ酸、αケトグルタル酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0076】
含硫還元剤としては例えば、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1~7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するものなどが挙げられる。
【0077】
酸化防止剤としては例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤などが挙げられる。
【0078】
糖としては例えば、スクロース、トレハロース、メグルミン、ソルビトール、マンニト
ール、エリスリトールなどが挙げられる。
【0079】
アミノ酸の例としては例えば、ヒスチジン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、フェニルアラニン、セリン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、リジンが挙げられる。
【0080】
本発明において医薬溶液は、例えば、アクテムラ(登録商標)皮下注162mgシリンジ、アクテムラ(登録商標)皮下注162mgオートインジェクター、イラリス(登録商標)皮下注150mg、オレンシア(登録商標)皮下注125mgシリンジ、オレンシア(登録商標)皮下注125mgオートインジェクター、ケブザラ(登録商標)皮下注150mgシリンジ、ケブザラ(登録商標)皮下注200mgシリンジ、コセンティクス(登録商標)皮下注150mgペン、コセンティクス(登録商標)皮下注150mgシリンジ、シムジア(登録商標)皮下注200mgシリンジ、シンポニー(登録商標)皮下注50mgシリンジ、ゾレア(登録商標)皮下注用75mg、ゾレア(登録商標)皮下注用150mg、デュピクセント(登録商標)300mgシリンジ、トレムフィア(登録商標)皮下注100mgシリンジ、プラルエント(登録商標)皮下注150mgシリンジ、ヘムライブラ(登録商標)皮下注150mg、ヘムライブラ(登録商標)皮下注105mg、ヘムライブラ(登録商標)皮下注90mg、ヘムライブラ(登録商標)皮下注60mg、ベンリスタ(登録商標)皮下注200mgシリンジ、ベンリスタ(登録商標)皮下注200mgオートインジェクター、レパーサ(登録商標)皮下注140mgシリンジ、レパーサ(登録商標)皮下注140mgペンなどが挙げられる。
【0081】
本発明において、医薬溶液は、バイアル、シリンジ、カートリッジ、アンプル、バッグ、ボトル、ビン、チューブ、ジャー、カプセル、エラストメリックリザーバー、またはデバイスなどの容器に充填される。一般に医薬溶液を1つの容器に充填する速度は、例えば1~1000mL/分、具体的には5~300mL/分、より具体的には20~200mL/分である。医薬製剤の製造は、クリーンルーム環境下またはクリーンブース設備内またはアイソレーター設備内などの空気の清浄度が管理されたクリーンな環境下で行われる。
【0082】
本発明の1つの態様において、液体医薬製剤はバイアルの形態であり、医薬溶液はバイアルに充填される。一般にバイアルは円筒形の部分に医薬溶液を収容する。円筒形部分の周断面の直径は例えば1~100mm、具体的には16~47mm、より具体的には18.1~30mmである。円筒形部分の長さは例えば5~150mm、具体的には35~100mm、より具体的には33~60mmである。本発明がバイアルである液体医薬製剤の製造に適用される場合、医薬溶液を1つの容器に充填する速度は、例えば1~1000mL/分、具体的には15~200mL/分、より具体的には20~150mL/分である。
【0083】
本発明の1つの態様において、液体医薬製剤はプレフィルドシリンジの形態であり、医薬溶液はシリンジに充填される。一般にシリンジは円筒形の部分に医薬溶液を収容する。円筒形部分の周断面の直径は例えば1~30mm、具体的には6.75~22.25mm、より具体的には8.05~11.05mmである。円筒形部分の内径は例えば0.9~29.9mm、具体的には4.55~19.25mm、より具体的には6.25~8.85mmである。円筒形部分の長さは例えば5~200mm、具体的には47.1~97.55mm、より具体的には53.5~54.9mmである。本発明がプレフィルドシリンジである液体医薬製剤の製造に適用される場合、医薬溶液を1つの容器に充填する速度は、例えば1~300mL/分、具体的には15~200mL/分、より具体的には20~100mL/分である。
【0084】
本発明がバイアルである液体医薬製剤の製造に適用される場合、容器に充填される医薬溶液の量は、例えば0.05~500mL、具体的には0.1~123mL、より具体的には0.2~20mLである。医薬溶液の充填は容器の円筒形部分の開口部を上方に向けて行われる。円筒形部分の底部から医薬溶液の液面までの長さは例えば0.5~150mm、具体的には1~100mm、より具体的には5~60mmである。
【0085】
本発明がプレフィルドシリンジである液体医薬製剤の製造に適用される場合、容器に充填される医薬溶液の量は、例えば0.05~100mL、具体的には0.1~5mL、より具体的には0.2~2.4mLである。医薬溶液の充填は容器の円筒形部分の開口部を上方に向けて行われる。円筒形部分の底部から医薬溶液の液面までの長さは例えば0.5~150mm、具体的には1~100mm、より具体的には5~60mmである。
【0086】
本発明において液体医薬製剤の製造は、医薬溶液を、ポンプを用いて充填チューブに押し出し、その下流の充填ノズルから容器内に充填することにより行われる。このような充填工程には、一般的な充填装置、例えば、Groninger社製の液体充填装置やBosch社製の液体充填装置やBausch社製の液体充填装置やOptima社製の液体充填装置やケーテー製作所社製の液体充填装置やVanrx社製の液体充填装置やGEA社製の液体充填装置や澁谷工業社製の液体充填装置などを用いることができ、または市販の装置、例えば、MLF4000(Bosch社製)やFLS3000(Bosch社製)やFMB210(Watson-Marlow社製)やINOVAシリーズ・液体充填装置(OPTIMA社製)やSA25(Vanrx社製)などを用いることができる。充填ポンプ
は、シリンジ式ポンプ、またはピンチバルブ式ポンプ、または重量充填ポンプ、またはマスフロー式ポンプ、またはダイヤフラム式ポンプ、スムーズフローポンプ、またはペリスタルティックポンプ、またはピペット式充填機、または分注ロボット、または充填ロボットなどを用いることができ、市販の装置、例えば、500シリーズ・プロセス・ポンプ(Watson-Marlow社製)やバイオプロセス向けチューブポンプ(Watson-Marlow社製)や300シリーズ・ラボラトリ・チューブ・ポンプ(Watson-Marlow社製)や、PFシリーズ(Flexicon社製)や、PDシリーズ(Flexicon社製)などのペリスタルティックポンプを用いることができる。
【0087】
本発明の1つの態様において、医薬溶液の容器への充填後、次の充填の前に、ポンプを逆回転させることによる医薬溶液の吸い込み(サックバック)が行われる。サックバンクの条件は、充填ノズルのサイズなどによって適宜設定することができる。サックバックを行う際のポンプ速度は、例えば0.1~300mL/分、具体的には1~150mL/分、より具体的には10~100mL/分であり、行う時間は例えば0.01~5秒、具体的には0.01~1秒、より具体的には0.1~0.5秒である。
【0088】
本発明の1つの態様において、医薬溶液の容器への充填は気体圧力によって溶液を押し出すことによって充填される。充填圧力やバルブの開閉時間などの条件は、充填ノズルのサイズや液体の粘度や充填量などによって適宜設定することができる。その際の充填圧力は、例えば、0.01~3気圧、具体的には0.1~2気圧、より具体的には0.3~1気圧である、さらにより具体的には0.3~0.6気圧である。
【0089】
サックバックを行った場合においても、流路に残る医薬溶液が下流方向に移動して、ノズルの先端付近に液滴として付着することとなる。本発明の充填ノズルでは、ノズル先端付近の液滴が、ノズル内部であって充填口部下端から離れた位置に保持されることにより、液滴の乾燥が防止されて固体成分の付着が抑制される。本発明の好ましい態様において、ノズル内部の液滴下端の液面(界面)はノズル本体の流路の下端よりも上部に保持される。充填口下端からノズル内部の液滴下端の液面までの距離を、以下、液面高さとも称する。
【実施例0090】
以下に、本発明を参考例及び実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
医薬溶液の調製
本発明の効果を確認する試験において、以下の液体製剤を医薬溶液として使用した。
・抗体製剤A:240 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度50 cP。表面張力46.8 mN/m。イオン強度2.88 mS/cm。1.081 g/cm3.
・抗体製剤B:180 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度8 cP。表面張力45.4 mN/m。イオン強度7.58 mS/cm。密度1.058 g/cm3
・抗体製剤C:150mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水
溶液。粘度6cP。表面張力48.0 mN/m。イオン強度4.09 mS/cm。密度1.061 g/cm3
・抗体製剤D:120 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度4cP。表面張力49.6 mN/m。イオン強度4.42 mS/cm。密度1.051 g/cm3
・抗体製剤E:241 mg/mLのモノクローナル抗体および添加剤を含む水溶液。粘度62 cP。表面張力63.7 mN/m。イオン強度3.36 mS/cm。密度1.093 g/cm3
・製剤F:添加剤および界面活性剤を含む水溶液。粘度1cP。表面張力 42.8 mN/m。イ
オン強度5.64 mS/cm。密度1.019 g/cm3
【0092】
充填ノズルの調製
アクリル樹脂(Acryl)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)を材料として充填ノズルを作成した。アクリル樹脂の充填ノズルは、3Dプリンター(HD3500MAX, Xtreme High Definition Mode;3D systems社製)を使用して、VisiJet(登録商標) M3を用いて造形した。PPの充填ノズルは、Combitip Advanced(登録商標)0.1mL(Eppendorf製)を加工し65mmの長さを有する形で用いた。先端形状の加工には、充填口部の内形および流路の長さが所定のサイズとなるようにるドリルで削った。ドリルには、φ2.2mmのハイス鋼ドリル(MITSUBISHI MATERIALS製)を用いた。加工後のサイズは定規で確認した。
【0093】
COC(TOPAS(登録商標)、6013M-07、ポリプラスチックス)の樹脂を、押
出成形によりa=1.6mm、b=3.2mmとなるよう加工して65mmのチューブを得た。先端形状の加工には、充填口部の内形および流路の長さが所定のサイズとなるようにるドリルで削った。ドリルには、φ2.5mmのハイス鋼ドリル(藤原産業株式会社製)を用いた。加工後のサイズは定規で確認した。
【0094】
COPの充填ノズルは、COP(ゼオネックス(登録商標)480R、日本ゼオン)の樹脂を材料として、金型を使用して成形した。加工後のサイズは、ノギスおよび定規で確認した。
【0095】
本実施例の試験においては、以下の充填ノズルを使用した。
(シクロオレフィンコポリマー製)
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°。
【0096】
(ポリプロピレン製)
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°。
【0097】
(アクリル樹脂製製)
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_3:a=1.0mm,b=2.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_5:a=3.0mm,b=4.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_6:a=5.0mm,b=6.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_7:a=1.0mm,b=2.6mm,c=1.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_9:a=3.0mm,b=4.6mm,c=3.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_10:a=5.0mm,b=6.6mm,c=5.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
ac_11:a=1.5mm,b=2.7mm,c=1.7mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_12:a=1.5mm,b=3.5mm,c=2.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_13:a=1.5mm,b=4.5mm,c=3.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_14:a=2.0mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_15:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_16:a=2.0mm,b=5.0mm,c=4.0mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_17:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=1mm,e=75mm,f=135°、
ac_18:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=2mm,e=75mm,f=135°、
ac_19:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=4mm,e=75mm,f=135°、
ac_20:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=5mm,e=75mm,f=135°、
ac_21:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=7mm,e=75mm,f=135°、
ac_22:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=10mm,e=75mm,f=135°、
ac_23:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=45°、
ac_24:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=90°、
ac_25:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=150°、
ac_26:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=170°。
【0098】
(ステンレス製)
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm,内径は一定。
【0099】
(PEEK製)
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm,内径は一定。
【0100】
(シクロオレフィンポリマー製)
cop_1:a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°。 作成した充填ノズルの各材質の水接触角は静滴法(θ/2法)により測定した。充填ノズルの外側の固体表面上に1μLの超純水を滴下し、形成した液滴のなす角度、接触角θを液滴のサイズから測定した。液を滴下して0.2分後の液滴を撮影した。解析は、撮影した画像の液滴のサイズから、液滴の材質固体表面における直径2rと液滴高さhの距離を測定し、θ=2arctan(h/r)により水接触角θを解析した。本測定で利用した充填ノズルの外側の固体表面と内側(管路や充填口付近)の固体表面の状態は同等である。図7は、COCの充填ノズル(coc_1:a=1.5mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定)の外表面を用いて水接触角を測定した例である。水接触角は、3箇所測定した結果の平均値と標準偏差値を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
充填に使用した器具
充填ポンプA:ペリスタルティック式、サックバック機能付。Watson-Marlow社製。
充填ポンプB:ペリスタルティック式、サックバック機能付。Flexicon社製。
充填チューブ:ポンプ駆動部:内径1.6mm外径6.4mmシリコンチューブおよび内径1.6mm
、外径3.2mmのFEPチューブ、およびコネクターで構成される約3mのチューブ。
【0103】
液面高さの測定方法
充填ノズル(充填口部)の下端と充填ノズル内部に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の距離を定規で測定し、液面高さとした。充填ノズル内に液面が存在している場合を正の値とし、充填ノズル下端からから溶液が露出している場合は負の値とした(図8)。液面高さは、充填後に充填ノズル内に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の位置が落ち着いた時に測定し、滞留する溶液(液滴)に液面が複数存在する場合には充填ノズル下端に最も近い液面からの距離を測定した(図9(c))。
【0104】
充填ノズルの詰まり
医薬溶液を充填時に、充填ノズル(充填口部)の下端を目視で観察し、充填ノズルの詰まりの有無を判定した。正常な充填において、医薬溶液は充填ノズルの長手方向にまっすぐに吐出される(図10)。詰まりの例として、医薬溶液を充填する際の医薬溶液の飛散
、医薬溶液の充填速度低下、充填精度低下、医薬溶液の吐出方向の変化、医薬溶液の乾燥による固形物の形成、付着、堆積、もしくは落下、または当該固形物によるノズル吐出口の閉塞が挙げられる。ノズル吐出口の閉塞より医薬溶液が吐出できないなどの状態があり、このような正常な充填と異なる状態が観察された時に充填ノズルの詰まりとして判定した(図11)。
【0105】
[試験例1]
HEPAフィルターを使用した風速約0.5m/sの換気条件下のクリーンブース内にて試験を行った。充填ポンプAを用いて抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL)を容器に充填した後、所定の液面高さとなった状態の充填ノズルをそのまま2時間静置して充填ノズルの詰まりの発生状況を確認した(N=3)。充填時にはサックバックを行った。液面高さは、サックバック後、静置前に測定し、2時間後に充填ノズルの詰まりの有無を再度充填を行うことにより目視で観察して判定した。充填ノズルは、ポリプロピレン材質で内径が上端から下端まで一定の充填ノズル(pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,充填口部なし)を用いた。
【0106】
結果を図12に示す。120mg/mL以上の抗体を含む医薬溶液において、液面高さが1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満のとき、充填口付近に滞留する医薬溶液が乾燥し、充填ノズルの詰まりが発生した。一方、液面高さが3mm以上のとき、充填ノズルの詰まりは発生しなかった。液面高さを3mm以上にすることにより充填ノズルの詰まりを防ぐことができることが確認された。
【0107】
[試験例2]
充填ノズルの材質とノズル内部での溶液滞留位置の関係について以下の試験を行った。
シクロオレフィンコポリマー材質の充填ノズルの内部での溶液滞留位置について以下の試験を行った。図13は、充填ポンプBを用いて抗体製剤A(約1.2mL(1.111mL~1.260mL))を容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離を測定し、3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填ノズルは、アクリル材質で内径(a=1.5mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(ac_1)、ポリプロピレン材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(pp_1)、シクロオレフィンコポリマー材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル(coc_1)を用いた。
【0108】
結果を図13に示す。充填ノズルの材質をシクロオレフィンコポリマーとした場合に、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さが3mm以上となる割合が高かった。
【0109】
[試験例3]
上記の試験例2において、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離である液面高さ(mm)の平均値(N=100)を図14のグラフに示す。充填ノズルの材質をシクロオレフィンコポリマーにすることにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを高い位置で保持できることが確認された。
【0110】
[試験例4]
充填ノズルの形状とノズル内部での溶液滞留位置の関係について以下の試験を行った。充填ポンプBを用いて医薬溶液(約1.2mL(1.106mL~1.260mL))を容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離を測定し、3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。充填時のポンプの速度は
200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填ノズルは、充填ノズルac_1(アクリル材質で内径(a=1.5mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル)、充填ノズルpp_1(ポリプロピレン材質で内径(a=1.6mm)が上端から下端まで一定の充填ノズル)、充填ノズルcoc_1(シクロオレフィンコポリマーの樹脂を用いた充填ノズル)、充填ノズルac_2(アクリル材質で充填口流路内径c=2.1mmで流路長さd=3mmの充填ノズル)、充填ノズルcoc_2(シクロオレフィンコポリマー材質で充填口流路内径c=2.5mmで流路長さd=4mmの充填ノズル)、充填ノズルpp_2(ポリプロピレン材質で充填口流路内径c=2.2mmで、流路長さd=3mmの充填ノズル)を用いた。
【0111】
結果を図15に示す。充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。また、充填ノズルのすべての材料において、具体的には水接触角が58°以上となる材料を使用して充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。
【0112】
[試験例5]
上記試験例4において、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離である液面高さ(mm)の平均値(N=100)を図16のグラフに示す。充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さをより高い位置で保持できることが確認された。また、充填ノズルのすべての材料において、具体的には水接触角が58°以上となる材料を使用して充填ノズルの充填口流路内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さをより高い位置で保持できることが確認された。
【0113】
[試験例6]
充填ノズル:pp_1およびcoc_2を用いて、抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL(1.160~1.223mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)を測定した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。
【0114】
結果を図17に示す。充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。全ての抗体製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。
【0115】
[試験例7]
充填ポンプBを用いて抗体製剤A(約1.2mL(1.084~1.293mL))を充填する際の充填ノズル内部に滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離の液面高さ(mm)を測定した(N=100)。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。使用した充填ノズルはアクリル樹脂製であり、形状は以下の通りである。
対照の充填ノズル
ac_3:a=1.0mm,b=2.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_5:a=3.0mm,b=4.0mm,e=75mm,内径は一定、
ac_6:a=5.0mm,b=6.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_7:a=1.0mm,b=2.6mm,c=1.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_9:a=3.0mm,b=4.6mm,c=3.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_10:a=5.0mm,b=6.6mm,c=5.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
【0116】
図18はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。同一の内径を有する充填ノズルとの比較において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上で保持できる割合を高くできることが確認された。
【0117】
[試験例8]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_1:a=1.5mm,b=2.5mm,e=75mm,内径は一定、
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_11:a=1.5mm,b=2.7mm,c=1.7mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_2:a=1.5mm,b=3.1mm,c=2.1mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_12:a=1.5mm,b=3.5mm,c=2.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_13:a=1.5mm,b=4.5mm,c=3.5mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_14:a=2.0mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_15:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_16:a=2.0mm,b=5.0mm,c=4.0mm,d=3mm,e=75mm,f=135°。
【0118】
図19はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満になったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。充填ノズルの充填口部の内径cを0.2~2mm拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができることが確認された。また、ノズル本体の管路と充填口部の流路との間に傾斜部を有する場合であっても、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができることが確認された。充填口の末端の内径に対する充填口の充填ノズル長手方向長さの比がd/c=0.7~1.8
の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0119】
[試験例9]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_17:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=1mm,e=75mm,f=135°、
ac_18:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=2mm,e=75mm,f=135°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_19:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=4mm,e=75mm,f=135°、
ac_20:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=5mm,e=75mm,f=135°、
ac_21:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=7mm,e=75mm,f=135°、
ac_22:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=10mm,e=75mm,f=135°。
【0120】
図20はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。充填口部流路長さが1~10mmの範囲で、望ましくは2~7mmの範囲で、より望ましくは3~7mmの範囲で、さらにより望ましくは3~5mmの範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。充填口の末端の内径に対する充填口の充填ノズル長手方向長さの比がd/c=0.4~3.9の範囲で、望ましくはd/c=0.7~2.7の範囲で、より望ましくはd/c=1.1~2.7の範囲で、さらにより望ましくはd/c=1.1~2.0の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0121】
[試験例10]
試験例7と同様の試験をアクリル樹脂製の以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
ac_4:a=2.0mm,b=3.0mm,e=75mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有する充填ノズル
ac_23:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=45°、
ac_24:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=90°、
ac_8:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=135°、
ac_25:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=75mm,f=150°、
ac_26:a=2.0mm,b=3.6mm,c=2.6mm,d=3mm,e=
75mm,f=170°。
【0122】
図21はその充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満になったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を示すグラフである。傾斜部の内面と充填口部流路内面のなす角(f)が、約90°であってもよく、90°以上であってもよく、90°未満であってもよく、角度fは45~170°、より具体的には90~135°の範囲で、充填ノズルに滞留する医薬溶液を高い位置で保持することができるという本発明の効果が確認された。
【0123】
[試験例11]
充填ノズルと医薬溶液の乾燥により生じる充填ノズルの詰まりの関係について以下の試験を行った。
図22は、充填ポンプAを用いて抗体製剤Aを約1.2mL容器に充填するとき、風速約0.5m/sのHEPAフィルター換気条件下でそのまま2時間静置した後の充填ノズルの詰まりの発生する確率(N=5)を示すグラフである。充填ノズルには、以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm、内径は一定、
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm、内径は一定、
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有するか、シクロオレフィンコポリマー製の充填ノズル
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°。
【0124】
充填ノズルの材料にシクロオレフィンコポリマーを使用することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。また、充填ノズルは、すべての材質において、具体的には水接触角が58°以上、より具体的には80~100°となる材料で成形される充填ノズルの先端形状内径cを拡張することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。
【0125】
[試験例12]
充填ノズル:cop_1を用いて、抗体製剤A(約1.2mL)を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の様子を図24に示す。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。充填後に充填ノズル内に滞留する溶液の下端液面(気液界面)の位置が落ち着いた時の滞留する溶液(液滴)の液面高さは、充填口部下端よりも高い位置に滞留することが確認された(図24(c))。
【0126】
[試験例13]
充填ノズル:pp_1、coc_2およびcop_1を用いて、抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤D(それぞれ約1.2mL(1.160~1.223mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するときの、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離(mm)を測定した。充填時のポンプの速度は200rpmとし、充填時にサックバックを行った。
【0127】
結果を図25に示す。充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面下端とノズル下端の距離が3mm以上、1mm以上3mm未満、0mm以上1mm未満、または0mm未満となったそれぞれの液面高さの割合(N=100)を確認した。全ての抗体製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を高くできることが確認された。また、充填ノズル:cop_1を用いて、抗体製剤E、および製剤F(それぞれ約1.2mL(1.167~1.258mL))を、充填ポンプBを用いて容器に充填するとき、全ての製剤において、充填ノズルの先端形状の内径cを拡張することにより、充填ノズルに滞留する医薬溶液の液面高さを3mm以上に保持できる割合を抗体製剤A、抗体製剤B、抗体製剤C、および抗体製剤Dとと同様に高くできることが確認された。
【0128】
[試験例14]
充填ノズルと医薬溶液の乾燥により生じる充填ノズルの詰まりの関係について以下の試験を行った。
図26は、充填ポンプAを用いて抗体製剤Aを約1.2mL容器に充填するとき、風速約0.5m/sのHEPAフィルター換気条件下でそのまま2時間静置した後の充填ノズルの詰まりの発生する確率(N=5)を示すグラフである。充填ノズルには、以下の形状を有する充填ノズルを用いて行った。
対照の充填ノズル
sus_1:a=1.8mm,b=2.0mm,e=163mm、内径は一定、
peek_1:a=1.6mm,b=2.0mm,e=120mm、内径は一定、
pp_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定。
aよりもcが大きい形状を有するか、シクロオレフィンコポリマー製の充填ノズル
coc_1:a=1.6mm,b=3.2mm,e=65mm,内径は一定、
pp_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.2mm,d=3mm、e=65mm,f=90°、
coc_2:a=1.6mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=4mm、e=65mm,f=90°、
cop_1:a=1.5mm,b=3.2mm,c=2.5mm,d=3.5mm、e=120mm,f=90°。
【0129】
充填ノズルの材料にシクロオレフィンコポリマーまたはシクロオレフィンポリマーを使用することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。また、充填ノズルは、すべての材質において、具体的には水接触角が58°以上、より具体的には80~100°となる材料で成形される充填ノズルの先端形状内径cを拡張することにより、充填ノズルの詰まりの発生する確率を下げることができるという本発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0130】
1、11、21、31…充填ノズル
2、12、22、32…ノズル本体
3、13、23、33…管路
14、24、34…ノズル本体の下端
15、25、35…充填口部
4、16、26、36…充填口部下端
27、37…傾斜部
28、38…充填口部上端
19、29、39…充填口部流路
4、40…充填口部下端面
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23a
図23b
図23c
図24
図25
図26