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特開2022-172211インクジェット印刷システムおよび発光要素の光出力効率を高める技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172211
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】インクジェット印刷システムおよび発光要素の光出力効率を高める技術
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20221108BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221108BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20221108BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20221108BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
H05B33/28
H05B33/10
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133693
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019543836の分割
【原出願日】2018-02-20
(31)【優先権主張番号】62/461,186
(32)【優先日】2017-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513317345
【氏名又は名称】カティーバ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140833
【弁理士】
【氏名又は名称】岡東 保
(72)【発明者】
【氏名】プシェニツカ, フロリアン
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】本教示は、インク組成物の様々な実施形態に関する。インク組成物は、基板110上に印刷し、硬化させると、第1の屈折率(RI)を有する第1のパターンのポリマーエリアが第1のパターンのポリマーエリアのRIよりも高いRIを有する第2のパターンのポリマーエリア内に、点在する連続複合膜層130を形成する。
【効果】このようにして基板上に形成された複合薄膜層の様々な実施形態では、限定はされないが、OLED表示装置またはOLED照明装置などの本教示による各種発光素子において、光出力、すなわち光抽出を高効率に行えるように適応させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子素子であって、前記光電子素子は、
光電子素子基板と、
前記光電子素子基板上の複合ポリマー膜であって、前記複合ポリマー膜は、前記基板と接触する第1のパターン化されたポリマー材料と、ナノ粒子を含み前記基板と接触する第2のパターン化されたポリマー材料とを含む、複合ポリマー膜と、
前記複合ポリマー膜上の層であって、前記第1のパターン化されたポリマー材料は、前記光電子素子基板の屈折率と一致またはほぼ一致する屈折率を有し、前記第2のパターン化されたポリマー材料は、前記層の屈折率と一致またはほぼ一致する屈折率を有する層と、を備え、
前記層は、金属ナノワイヤを含むアノード層である光電子素子。
【請求項2】
前記第1のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記光電子素子基板の前記屈折率の5%以内であり、前記第2のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記アノード層の前記屈折率の5%以内であり、またはその両方である、請求項1記載の光電子素子。
【請求項3】
前記アノード層は透明である、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項4】
前記光電子素子は、有機発光ダイオードを含む、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項5】
前記第1のパターン化されたポリマー材料は前記光電子素子基板および前記アノード層とに接触し、前記第2のパターン化されたポリマー材料は前記光電子素子基板および前記アノード層とに接触する、請求項1記載の光電子素子。
【請求項6】
前記第1のパターン化されたポリマー材料は、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマーの重合生成物を含む、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項7】
前記第2のパターン化されたポリマー材料は、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマーの重合生成物を含む、請求項6に記載の光電子素子。
【請求項8】
前記第1のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記光電子素子基板の前記屈折率の1%以内であり、前記第2のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記アノード層の前記屈折率の1%以内、またはその両方である、請求項1記載の光電子素子。
【請求項9】
前記第1のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記光電子素子基板の前記屈折率と実質的に同じであり、前記第2のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率は、前記アノード層の屈折率と実質的に同じであり、またはその両方である、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項10】
光電子素子であって、前記光電子素子は、
光電子素子基板と、
前記光電子素子基板上の複合ポリマー膜であって、前記複合ポリマー膜は、前記基板と接触する第1のパターン化されたポリマー材料と、前記基板と接触する第2のパターン化されたポリマー材料とを有する複合ポリマー膜と、
前記複合ポリマー膜上の層であって、前記第1のパターン化されたポリマー材料は、前記光電子素子基板の屈折率と実質的に同じ屈折率を有し、前記第2のパターン化されたポリマー材料は、前記層の屈折率と実質的に同じ屈折率を有する層と、を備え、
前記層は、金属ナノワイヤを含むアノード層である光電子素子。
【請求項11】
前記第1のパターン化されたポリマー材料および前記第2のパターン化されたポリマー材料は、いずれも前記アノード層と直接接触している、請求項10に記載の光電子素子。
【請求項12】
前記アノード層は透明である、請求項10に記載の光電子素子。
【請求項13】
前記光電子素子は、有機発光ダイオードを含む、請求項10に記載の光電子素子。
【請求項14】
前記第1のパターン化されたポリマー材料は、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマーの重合生成物を含み、前記第2のパターン化されたポリマー材料は、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマーの重合生成物を含む、または両方を含む、請求項10に記載の光電子素子。
【請求項15】
ナノ粒子を含み、前記ナノ粒子は、前記第2のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率を前記アノード層の前記屈折率に一致またはほぼ一致させるように選択された量で存在する、請求項10に記載の光電子素子。
【請求項16】
基板上に膜を形成する方法であって、前記方法は、
前記基板上に複合ポリマー膜を形成することを含み、さらに、
前記基板上に、第1のインクを、第1のパターンで堆積させることと、
前記基板上に、第1のインクと非混和性である第2のインクを、第2のパターンで堆積させることと、
前記第1のインクを乾燥または硬化させて、第1のパターン化されたポリマー材料を形成することと、
前記第2のインクを乾燥または硬化させて、第2のパターン化されたポリマー材料を形成することと、
前記複合ポリマー膜上に金属ナノワイヤを含むアノード層を堆積させることとをふくみ、
前記第1のパターン化されたポリマー材料は、前記基板の屈折率と一致またはほぼ一致する屈折率を有し、前記第2のパターン化されたポリマー材料は、前記アノード層の屈折率と一致またはほぼ一致する屈折率を有する、方法。
【請求項17】
前記第1のインクの乾燥または硬化、および前記第2のインクの乾燥または硬化は、前記第1のインクの堆積、および前記第2のインクの堆積の後に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のインクおよび前記第2のインクは、非混和性の溶媒、非混和性のモノマー、またはその両方を使用することによって非混和性にされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のパターン化されたポリマー材料の前記屈折率を前記アノード層の前記屈折率に一致またはほぼ一致させるように、前記第2のインクにナノ粒子を有することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のインクは、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマーを含み、前記第2のインクは、環状基または芳香族基を有するアクリレートモノマー、またはその両方を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(概要)
各種有機発光ダイオード(OLED)表示装置またはOLED照明装置などの種々の発光素子は、発光層を取り囲む多数の機能層を有する構造となっている。各機能層の屈折率が異なる場合があり、そのため装置構造を画定する各層内の内面反射により導波性が生じ、その結果、発光素子からの発光量が低減することがある。
【発明の概要】
【0002】
本発明者らは、インクジェット印刷技術を用いて、発光素子から光を効率よく出力させることができ、それによって素子性能を高めた発光素子を提供できることを認識した。
【図面の簡単な説明】
【0003】
添付の図面を参照すれば、本開示の特徴および利点をよりよく理解することができよう。なお、図面は、本教示を例示するものであり、限定するものではない。各図は、必ずしも原寸に比例して描かれておらず、また、異なる図中の同じ符号は同様の構成要素を示すことがある。同じ符号に異なる添字を付すことによって、同様の構成要素の異なる例を示すことがある。
【0004】
図1】本教示の技術および素子の様々な実施形態による表示装置の概要を示す概略図である。
図2】本教示の技術および素子の様々な実施形態による工程フローおよび素子の概略図である。
図3】本教示による高効率な光出力をさらに説明する図2の素子の拡大図である。
図4】本教示の技術および素子の様々な実施形態による工程フローおよび素子の概略図である。
図5】本教示の様々な実施形態によるインクの調合に使用できるモノマーの概要を示す表である。
図6】本教示による様々なインク組成物の配合方法を示すフローチャートである。
図7】本教示のシステムおよび方法の様々な実施形態による印刷システムの例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本教示は、インク組成物の様々な実施形態に関する。インク組成物は、基板上に印刷し、硬化させると、第1 の屈折率( R I ) を有する第1 のパターンのポリマー材料が、第1のパターンのポリマー材料よりも高いR I を有する第2 のパターンのポリマー材料内に、点在する連続複合膜層を形成することができる。基板上にこのように形成された組成物薄膜の様々な実施形態では、非限定的な例として、底面発光表示装置、各種O L E D 照明装置、および関連する発光素子などの光出力、すなわち光抽出を高効率に行えるように適応させることができる。
【0006】
本教示によると、基板上に堆積させた複合膜層の第1 のパターンのポリマー材料の実効屈折率を、素子の発光層から出射した光が透過する素子基板の屈折率と一致またはほぼ一致ように適応させることができる。さらに、基板上に堆積させた複合膜層の第2 のパターンのポリマー材料の実効屈折率を、内面反射のため内部で導波性が生じる表示装置の積層体の各層のより高い屈折率と一致またはほぼ一致ように適応させることができ、その結果、出射光をより効率よく基板に向かわせ、基板の屈折率と一致またはほぼ一致するように適応させた第1 のパターンのポリマー材料を介して、その出射光を基板から透過させることができる。したがって、本教示に係る複合膜層の様々な実施形態は、例えば、表示装置だけでなく、様々な発光装置からの、R I が異なる個別の領域を形成する基板上の複合ポリマー層を介する効率的な光出力を提供することが可能であり、複合ポリマー層は、基板を介する視方向の光の効率的な出力を可能とする。複合膜層は、第1 領域の屈折率が、上に重ねられた素子層の屈折率よりも基板の屈折率に近く、第2 領域の屈折率が、基板の屈折率よりも上に重ねられた素子層の屈折率に近くなるように作製される。
【0007】
本教示によるインクの様々な実施形態では、ガス格納部に収容可能な工業用インクジェット印刷システムを用いてインクを印刷することができる。このガス格納部は、内部を画定し、この内部は、不活性かつ実質的に低粒子の処理環境として維持される制御環境を有する。本教示による複合膜層の基板上、例えば、限定はされないが、OLED素子基板上へのパターン印刷を、このように制御された環境下で行うことによって、種々の発光素子を高生産量かつ高収率で得られる工程が可能になる。
【0008】
図1に、底面発光の発光素子の概略を示す。OLED表示装置またはOLED発光素子などの素子を製造する際、電圧が印加されると特定のピーク波長の光を発するOLED膜積層体を形成することができる。図1に示すように、アノードとカソードの間のOLED膜積層構造体は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、および電子注入層(EIL)を備えることができる。図1に示すように、OLED膜積層構造体のいくつかの実施形態では、電子輸送層(ETL)を電子注入層(EIL)と組み合わせてETL/EIL層を形成してもよい。以下でより詳しく説明するように、図1に示すような底面発光素子のアノード材料は、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明膜材料、または金属ナノワイヤパターン構造体とすることができる。
【0009】
本発明者らは、インクジェット印刷によって、本教示による複合膜層の様々な実施形態の形成に適したパターン印刷が可能になることを認識した。本教示による複合膜層は、例えば、ガラス基板、またはポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマーなどのポリマー類から形成された基板などの各種ポリマー基板など、多様な素子基板上に印刷することができる。
【0010】
本教示による複合膜層に使用する種々のインクには、ポリマー、またはポリマー成分、例えば、各種ポリエチレングリコールモノマー材料、単座もしくは多座アクリレートなどのアクリレート、単座もしくは多座メタクリレートなどのメタクリレート、または他の材料、またそれら材料のコポリマーおよび混合物が含まれるが、それだけに限定されるものではない。本教示による複合膜層の作製に使用される各種インクには、素子積層体の発光層から出射し、複合膜層を介して基板から透過した光を効率よく抽出することを目的としてナノ粒子を配合することができる。ナノ粒子は、典型的には、1次元または複数次元の寸法が1000nm未満であることを特徴とする。本教示による各種インク組成物は、熱処理(例えば、焼成)、紫外線(UV)曝露、およびそれらの組合せを用いて硬化させることができる。本明細書では、ポリマーおよびコポリマーには、インクに配合可能であり、基板上で硬化すると複合膜層を形成する任意の形態のポリマー成分が含まれ得る。そのようなポリマー成分として、ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの前駆体、例えば、モノマー、オリゴマー、樹脂が挙げられるが、それだけに限定されるものではない。
【0011】
本教示によると、インクジェット印刷によっていくつかの利点が得られる。まず、インクジェットを利用したこのような膜層作製は、大気圧下で行うことができるため、一連の真空処理操作が不要になる。さらに、インクジェット印刷工程中、第1のインクから形成された第1領域と、第2のインクから形成された第2領域とを含み得る複合膜層を、インクジェット印刷を用いて容易に作製することができ、したがって本教示による複合膜層の様々な実施形態が可能となる。インクジェット印刷を用いた標的パターン形成によって、材料の無駄がなくなり、本教示による複合層のパターン形成を実現するために通常必要となる追加の処理、例えば、RIが異なる領域からなる複雑なパターン形成のために多数のマスクを使用した処理などが不要となる。
【0012】
本教示による複合膜の各領域の屈折率を選択的に調整するために、各インク組成物にナノ粒子(NP)を含めることができる。本教示による複合膜層の各領域にNPが導入されると、それらのNPは、形成領域の屈折率(RI)を所望の実効屈折率に調整することにより、より効率的な光抽出を実現することが可能である。NPの非限定的な例として、酸化ジルコニウム(すなわちジルコニア)、二酸化チタン(すなわちチタニア)、酸化アルミニウム(すなわちアルミナ)などの金属酸化物NPを含めた無機ナノ粒子が挙げられる。各種ナノ粒子をインク組成物に含め、インクジェット印刷によって堆積させることによって、発光素子基板上に形成される複合膜の各領域にNPを導入することができる。噴射可能なインクに使用可能なナノ粒子は、約10nmから約100nmの有効径から選択することができる。本明細書でより詳しく説明するように、発光装置の基板上に形成される複合膜層のNP含有領域を印刷する際に使用されるインク組成物の様々な実施形態は、NPを約1wt%から約60wt%の範囲における濃度で添加することができる。
【0013】
図2に、本教示の技術および素子の様々な実施形態による工程フローおよび素子100Aの概要を示す一連の断面図を示す。図2の部分図Iに示すように、堆積インクにより所定のパターンが形成されるように、第1のインクの液滴120を基板110上に堆積させることができる。この堆積インクが硬化すると、例えば、図2の部分図IIに示すように、ドーム状または小型レンズ状のポリマー構造体132のパターンが形成される。インクジェット印刷により、任意のパターンのポリマー構造体132を基板110上に作製することができる。つまり、規則的またはランダムなパターンにて、基板110の表面上に堆積させることができる。図2の部分図IIIに示すように、第2のインクの液滴125を、基板110上に形成されたポリマー構造体132の上に堆積させることができる。このインクが硬化すると、第1の屈折率が基板110の屈折率と一致またはほぼ一致したポリマー構造体132と、屈折率が透明電極層140と一致またはほぼ一致したポリマーマトリクス134とを含む複合膜層130が形成される。複合膜層130は、基板110上に形成されると表面が平坦になり、膜層140などのアノード層(図1参照)を堆積させることができる。本明細書で先に説明したように、膜層140は、ITOなどの透明電極材料とすることができる。さらに、本教示による発光素子の様々な実施形態のアノードは、金属ナノワイヤパターン構造体を用いて形成してもよい。したがって、図2に示すように、複合膜層130などの本教示による複合膜層の様々な実施形態では、複合膜層は、基板110と接し、かつ第1の屈折率を有する、第1のインクを堆積させて形成した領域と、基板110と接し、かつ第2の屈折率を有する、第2のインクを堆積させて形成した領域とを有する。
【0014】
本教示によると、第1のインクは、ポリマーまたはポリマー成分、例えば、限定はされないが、各種ポリエチレングリコールモノマー材料、単座もしくは多座アクリレートなどのアクリレート、単座もしくは多座メタクリレートなどのメタクリレート、または他の材料、ならびにそれら材料のコポリマーおよび混合物を含む組成物とすることができる。そのようなポリマーインクによると、約1.45から約1.50の屈折率を有するポリマー構造体132を形成することができ、したがって、ポリマー構造体132の屈折率は、基板110の屈折率と一致またはほぼ一致する。基板110は、ガラス材料、またはポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマーなどのポリマー類の各種ポリマー材料製とすることができる。本教示によると、第2のインクは、第1のインクの様々な実施形態として説明したポリマーマトリクスを含み得るが、第2のインクの実効屈折率は、インク組成物の一部として特定のNPを選択し添加することによって、約1.6から約1.9の範囲に調整することができる。
【0015】
理論または説明に縛られるものではないが、図3により、本教示による複合膜層の様々な実施形態において表示装置から光を効率よく出力させる仕組みを説明する。ITO層の様々な実施形態では、屈折率が約1.6から約1.9となり得る。さらに、図1に示すように、アノード、HIL、HTL、およびEMLを含む表示装置の積層体の各層は、屈折率が1.6から1.9の範囲となり得る。一方、図3の基板110の様々な実施形態、例えば、ガラス基板、またはポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマーなどのポリマー類から形成された基板などの各種ポリマー基板では、屈折率が1.45から1.5の範囲となり得る。屈折率の差異により、基板110よりも高い屈折率を有する膜層を介して内面反射が生じることがある。しかし、図3の複合膜層130のような本教示による複合膜の様々な実施形態では、光(図中点線で示す)は、HIL層、HTL層、EML層などの有機膜層(図1参照)を透過し、まずITO層140にて屈折し、そして屈折率が透明電極層140の屈折率と一致またはほぼ一致するようにNPを添加したポリマーマトリクス134を透過して伝播する。この光は、屈折率が基板110と一致またはほぼ一致したポリマー構造体132と相互作用することによって、基板を透過して表示装置の視方向に効率よく出力される。一例として、2つの材料間のRIの差が10%以下である場合に、一方の材料のRIが他方のRIと近いとみなすことができる。つまり、2つの材料間のRIの差が5%以下である実施形態、さらには2つの材料間のRIの差が1%以下である実施形態も含まれる。
【0016】
図4に、本教示の技術および素子の様々な実施形態による工程フローおよび素子100Bの概要を示す一連の断面図を示す。図2の工程および素子と同様に、図4の部分図Iでは、堆積インクによりパターンが形成されるように、第1のインクの液滴120を基板110上に堆積させることができる。しかし、図4の工程および素子の様々な実施形態では、第2のインクを堆積させる前に第1のインクの液滴を硬化させず、図4の部分図IIに示すように、連続した印刷工程において、基板上に堆積させた第1のインクの液滴120の上に第2のインクの液滴125を堆積させることができる。したがって、図4の部分図IIIに概略を示すように、複合インク層127が、第1のインクの第1のパターンおよび第2のインクの第2のパターンとして形成される。複合インク層127の堆積から硬化までの間に、多少の拡散が生じ得るが、複合インク層127が硬化すると複合膜層135が形成されるようにインクおよび工程を設定することができる。本実施形態による方法においては、第1および第2のインクは、インク堆積工程の時間において完全に混合または実質的に完全に混合することがない程度に十分な非混和性を有する。これらのインクは、例えば、溶媒および/またはモノマーを選択することによって、非混和性にすることができる。複合膜層135は、第1の屈折率が基板110の屈折率と一致またはほぼ一致したポリマー領域132と、屈折率が透明電極層140と一致またはほぼ一致したポリマー領域134とを含み得る。図2の素子100Aについて本明細書にて先に説明したように、複合膜層135は、基板110上に形成されると表面が平坦になり、膜層140などのアノード層(図1参照)を堆積させることができる。本明細書で先に説明したように、膜層140は、ITOなどの透明電極材料とすることができる。さらに、本教示の表示装置の様々な実施形態によるアノードは、金属ナノワイヤパターン構造体を用いて形成してもよい。したがって、図4に示すように、複合膜層135などの本教示による複合膜層の様々な実施形態では、複合膜層は、基板110と接し、かつ第1の屈折率を有する、第1のインクを堆積させて形成した領域と、基板110と接し、かつ第2の屈折率を有する、第2のインクを堆積させて形成した領域とを有する。本教示によると、図4の複合膜層の様々な実施形態では、図3に概略を示したものと同様の構成を有し得る。
【0017】
屈折率が互いに異なる領域を有する複合膜を形成する方法の一実施形態においては、基板上に第1のインクを第1の形成パターンで堆積させ、前記第1の形成パターンが、基板上に第2の形成パターンを形成するように構成し、第1のインクが、基板の屈折率と実質的に同じ屈折率を有する第1のパターン膜を形成するように構成すること、基板上に第2のインクを第2の形成パターンで堆積させ、第2のインクにより、基板の屈折率よりも高い屈折率を有する第2のパターン膜を形成するように構成すること、および基板上に第2のパターン膜の屈折率と実質的に同じ屈折率を有する少なくとも1つの薄膜層を堆積させることによって、基板上に膜を形成する。
【0018】
インク組成物
【0019】
以下の教示は、インク組成物の様々な実施形態に関する。インク組成物は、印刷し、乾燥または硬化させると、光電子素子基板、例えば、限定はされないが、OLED表示装置またはOLED照明装置などの発光素子の基板上にポリマー薄層を形成することができる。インク組成物の様々な実施形態では、ガス格納部に収容可能な工業用インクジェット印刷システムを用いてインク組成物を印刷することができる。このガス格納部は、不活性かつ実質的に低粒子の処理環境を維持するように内部が制御されている。このように制御された環境下での発光素子作製において、パターン印刷により複合層を基板上に形成することによって、例えば、限定はされないが、OLED表示装置またはOLED照明装置などの種々の発光素子を高生産量かつ高収率で得られる工程が可能になる。本教示によると、NPを含有し得る高RI領域内に低RI領域が点在したパターン印刷を行うように適応された各種インク組成物を用いてインクジェット印刷を行うことができる。
【0020】
インク組成物には、例えば、単座もしくは多座アクリレートなどの各種アクリレートモノマー、単座もしくは多座メタクリレートなどの各種メタクリレートモノマー、ならびにそれら材料のコポリマーおよび混合物が含まれるが、それだけに限定されるものではない。第1および第2のパターン領域を基板上に形成するために使用するインクは、第1のインクを乾燥または硬化させた後に第2のインクを堆積させる場合のように、同じモノマーを含んでもよい。あるいは、インクは、両インクとも堆積させた後に乾燥または硬化させる場合のように、異なるモノマーを含んでもよい。ポリマー成分は、熱処理(例えば、焼成)、紫外線(UV)曝露、およびそれらの組合せを用いて硬化させることができる。本明細書では、ポリマーおよびコポリマーには、インクに配合可能であり、基板上で硬化すると複合膜層を形成する任意の形態のポリマー成分が含まれ得る。そのようなポリマー成分として、ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの前駆体、例えば、モノマー、オリゴマー、樹脂が挙げられるが、それだけに限定されるものではない。本明細書で先に説明したように、本教示によるインク組成物の様々な実施形態では、本教示による複合膜層の各領域のRIを調整するナノ粒子(NP)がさらに含まれる。
【0021】
本教示によると、インクジェット印刷によっていくつかの利点が得られる。まず、インクジェットを利用したこのような膜層作製は、大気圧下で行うことができるため、一連の真空処理操作が不要になる。さらに、インクジェット印刷工程中、プリント層を基板上に正確に配置し、パターン形成することができる。さらに、図3から図7に示すように、インクジェット印刷を用いて、粒子密度、膜厚、またはその両方を、印刷層の長さに沿って変えることができる。
【0022】
複合膜インク組成物および方法
【0023】
本教示によるインク組成物の様々な実施形態では、例えば、限定されるものではないが、OLED表示装置またはOLED照明装置などの発光素子上の標的印刷エリアにインク組成物を印刷し、本教示による各種発光素子からの光出力効率を高めることが可能な複合ポリマー膜層を形成することができる。
【0024】
薄層インク組成物には、多官能性架橋剤に加えて、1種または複数種のモノ(メタ)アクリレートモノマー、1種または複数種のジ(メタ)アクリレートモノマー、あるいはモノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーの組合せが含まれる。本明細書では、用語「(メタ)アクリレートモノマー」とは、記載のモノマーがアクリレートでもメタクリレートでもよいことを示す。インク組成物のいくつかの実施形態では、光開始剤、熱開始剤、電子ビーム開始剤などの硬化開始剤がさらに含まれる。本教示による複合膜層の様々な実施形態に使用する1種または複数種のインク組成物の印刷に使用できるこの種のインクジェット可能なインク組成物が、2015年7月22日出願の米国特許出願公開第2016/0024322号、2016年7月19日出願の米国特許出願公開第2017/0062762号、2016年6月10日出願の米国特許出願公開第2017/0358775号、および2017年10月6日出願の米国特許出願第15/727,551号に記載されている。上記特許の全体を参照により本明細書に援用する。
【0025】
モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーは、インクジェット印刷の用途に適した特性を有する。インク組成物の成分として、これらのモノマーは、室温を含むインクジェット印刷の温度範囲で噴射可能な組成物を生成することができる。一般に、インクジェット印刷の用途に有用なインク組成物では、印刷時の温度(例えば、室温、約22℃以上、例えば約50℃までの温度)において、印刷ノズルから組成物が乾燥せず、またはノズルを詰まらせることなく分配されるよう、インク組成物の表面張力、粘性、および湿潤性を調整しなければならない。インク組成物の様々な実施形態では、配合後、22℃から50℃の温度範囲において、粘度が約2cpsから約30cps(例えば、約10cpsから約27cps、および約14cpsから約25cpsを含む)、22℃から50℃の温度範囲において、表面張力が約25ダイン/cmから約45ダイン/cm(例えば、約30ダイン/cmから約42ダイン/cm、および約28ダイン/cmから約38ダイン/cmを含む)となり得る。インク組成物に使用される個々のモノマーの適切な粘度および表面張力は、所与のインク組成物中に存在する他の成分の粘度および表面張力、ならびにそのインク組成物の各成分の相対量に応じて決まる。しかし、一般に、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーは、22℃から50℃の温度範囲において粘度が約4cpsから約18cpsの範囲を含め、22℃から50℃の温度範囲において約4cpsから約22cpsの範囲であり、22℃から50℃の温度範囲において表面張力が約32ダイン/cmから約41ダイン/cmの範囲を含め、22℃から50℃の温度範囲において約30ダイン/cmから約41ダイン/cmの範囲である。粘度および表面張力の測定方法は周知であり、市販の流量計(例えば、ブルックフィールド社のDV-I Prime流量計)および表面張力計(例えば、SITA泡圧式表面張力計)の使用が可能である
【0026】
ナノ粒子を多く添加したインク組成物のいくつかの実施形態では、有機溶剤を使用しないためインク組成物の粘度および/または表面張力が上記範囲から逸脱する場合には、有機溶剤を加えることで、インク組成物の粘度および/または表面張力を調整することができる。適切な有機溶剤として、エステルおよびエーテルが挙げられる。インク組成物に含めることができる有機溶剤の例として、沸点が200℃以上の有機溶剤を含めた高沸点有機溶剤が挙げられる。こうした有機溶剤には、沸点が230℃以上、250℃以上、さらには280℃以上の有機溶剤が含まれる。使用可能な高沸点有機溶剤の例として、プロパンジオール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのジオールおよびグリコールが挙げられる。沸点が240℃以上の非プロトン性溶剤など、高沸点非プロトン性溶剤も使用することができる。比較的高沸点の非プロトン性溶媒の例として、スルホラン、2,3,4,5-テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(別名テトラメチレンスルホン)が挙げられる。他の非限定的な有機溶剤の例として、トルエン、キシレン、メシチレン、プロピレングリコールメチルエーテル、メチルナフタレン、安息香酸メチル、テトラヒドロナフタレン、ジメチルホルムアミド、テルピネオール、フェノキシエタノール、ブチロフェノンが挙げられる。
【0027】
モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、直鎖状脂肪族モノ(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレートでもよく、または環状基および/または芳香族基も含まれ得る。インクジェット印刷可能なインク組成物の様々な実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはジ(メタ)アクリレートモノマーは、ポリエーテルである。インクジェット印刷可能なインク組成物の様々な実施形態では、ジ(メタ)アクリレートモノマーは、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレートモノマーである。これには、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、およびネオペンチルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレート、例えばネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレートおよびネオペンチルグリコールエトキシレートジ(メタ)アクリレートなどのアルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートが含まれる。ネオペンチルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレートの様々な実施形態では、数平均分子量が約200g/モルから約400g/モルの範囲である。つまり、数平均分子量が約280g/モルから約350g/モルの範囲のネオペンチルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレートが含まれ、さらには、数平均分子量が約300g/モルから約330g/モルの範囲のネオペンチルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレートが含まれる。種々のネオペンチルグリコール基含有ジ(メタ)アクリレートモノマーが市販されている。例えば、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレートは、サートマー(Sartomer)社から商品名SR9003Bとして、また、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社から商品名Aldrich-412147(約330g/モル、24℃で粘度約18cps、24℃で表面張力約34ダイン/cm)として購入可能である。ネオペンチルグリコールジアクリレートもまた、シグマアルドリッチ社から商品名Aldrich-408255(約212g/モル、粘度約7cps、表面張力約33ダイン/cm)として購入可能である。
【0028】
適切な他の(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレートおよびフェノキシメチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、それだけに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリレートモノマーのうちいくつかについて、構造、室温粘度、および室温表面張力を図5に示す。適切なさらに他のモノおよびジ(メタ)アクリレートモノマーとして、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートモノマーが、数平均分子量が約230g/モルから約440g/モルの範囲のものを含め、挙げられる。例えば、インク組成物には、数平均分子量が約330g/モルのポリエチレングリコール200ジメタクリレートおよび/またはポリエチレングリコール200ジアクリレートが含まれ得る。インク組成物の様々な実施形態に含まれ得る他のモノおよびジ(メタ)アクリレートモノマーとしては、単体または組合せで、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(DCPOEA)、イソボルニルアクリレート(ISOBA)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)、イソボルニルメタアクリレート(ISOBMA)、N-オクタデシルメタクリレート(OctaM)が挙げられる。環上のメチル基の1つまたは複数が水素で置換されたISOBAおよびISOBMAの同族体(「ISOB(M)A」同族体と総称する)も使用可能である。
【0029】
多官能性(メタ)アクリレート架橋剤は、(メタ)アクリレート基または、ビニル基などの架橋可能な少なくとも3つの反応基を有することが好ましい。したがって、多官能性(メタ)アクリレート架橋剤は、例えば、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、および/またはそれよりも高次の官能基を有する(メタ)アクリレートであってもよい。主要架橋剤として使用可能な多官能性(メタ)アクリレートの例として、ペンタエリスリトールテトラアクリレートまたはペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラメタクリレートが挙げられる。用語「主要」とは、本明細書では、インク組成物の他の成分も架橋に寄与し得るが、機能的には架橋が主な目的ではないことを意図する。重合化工程を開始するための光開始剤をインク組成物に適宜含めてもよい。
【0030】
インク組成物のいくつかの実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーは、重量基準で、インク組成物の主成分である。これらのインク組成物の様々な実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量が約70wt%から約96wt%の範囲である。すなわち、モノ(メタ)アクリレートモノマーとジ(メタ)アクリレートモノマーとを合わせた重量がインク組成物の約70wt%から約96wt%を占める。つまり、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマー含有量が約75wt%から約95wt%の範囲のインク組成物の実施形態、さらにはモノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマー含有量が約80wt%から約90wt%の範囲のインク組成物の実施形態が含まれる。インク組成物のいくつかの実施形態では、単一のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは単一のジ(メタ)アクリレートモノマーのみ含まれ、また他の実施形態では、2種以上のモノ(メタ)アクリレートモノマーおよび/または2種以上のジ(メタ)アクリレートモノマーの混合物が含まれる。例えば、インク組成物の様々な実施形態には、2種のモノ(メタ)アクリレートモノマー、2種のジ(メタ)アクリレートモノマー、またはモノ(メタ)アクリレートモノマーとジ(メタ)アクリレートモノマーとの組合せが含まれる。2種のモノマーの重量比は、インク組成物の粘度、表面張力、および膜形成特性を調整するために大きく変更することができる。例として、2種のモノまたはジ(メタ)アクリレートモノマーを含むインク組成物のいくつかの実施形態では、第1のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第1のジ(メタ)アクリレートモノマーと第2のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第2のジ(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が、12:5から1:2の範囲である場合を含め、95:1から1:2の範囲で含まれる。つまり、第1のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第1のジ(メタ)アクリレートモノマーと、第2のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第2のジ(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が、12:5から4:5の範囲であるインク組成物の実施形態、さらに第1のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第1のジ(メタ)アクリレートモノマーと、第2のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第2のジ(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が、5:4から1:2の範囲であるインク組成物の実施形態、さらには第1のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第1のジ(メタ)アクリレートモノマーと、第2のモノ(メタ)アクリレートモノマーまたは第2のジ(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が、5:1から5:4の範囲であるインク組成物の実施形態が含まれる。本段落に記載の重量百分率および重量比では、インク組成物に存在する任意の架橋配位子は、モノ(メタ)アクリレートモノマーまたはジ(メタ)アクリレートモノマーとはみなされない。
【0031】
本教示によるインク組成物に1種または複数種の架橋剤が含まれる場合には、典型的には、架橋剤はインク組成物の約2wt%から約8wt%を含め、インク組成物の約1wt%から約10wt%を占める。
【0032】
本教示によると、本明細書で先に説明したように、NP含有インク組成物は、2種以上のNPを含み得る。ここで、異なる種類のNPとは、公称粒径、粒子形状、粒子材料、またはそれらの組合せが異なり得るNPである。NPの非限定的な例として、酸化ジルコニウム(すなわちジルコニア)、二酸化チタン(すなわちチタニア)、酸化アルミニウム(すなわちアルミナ)などの金属酸化物NPが挙げられる。複合膜層のNP含有領域を発光素子基板上に印刷して形成するために使用するインク組成物の実施形態では、約10nmから約100nmのNPを、約1wt%から約60wt%の濃度範囲で添加することができる。その結果、インク組成物のモノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマー含有量は、上述した含有量よりも少なくなり得る。例えば、複合膜層を発光素子基板上に形成するためのNP含有インク組成物の様々な実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーを約50wt%から約90wt%の範囲で含有し得る。つまり、モノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量が約60wt%から80wt%の範囲のインク組成物の実施形態、さらにはモノ(メタ)アクリレートモノマーおよびジ(メタ)アクリレートモノマーの含有量が約65wt%から75wt%の範囲のインク組成物の実施形態が含まれる。
【0033】
本明細書で先に説明したように、これらのインク組成物に有機溶剤を加えて、上述したようにインクジェット印刷に適した粘度および/または表面張力を与えてもよい。適切な有機溶剤として、エステルおよびエーテルが挙げられる。インク組成物に含めることができる有機溶剤の例として、沸点が200℃以上の有機溶剤を含めた高沸点有機溶剤が挙げられる。こうした有機溶剤には、沸点が230℃以上、250℃以上、さらには280℃以上の有機溶剤が含まれる。使用可能な高沸点有機溶剤の例として、プロパンジオール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのジオールおよびグリコールが挙げられる。沸点が240℃以上の非プロトン性溶剤など、高沸点非プロトン性溶剤も使用することができる。比較的高沸点の非プロトン性溶媒の例として、スルホラン、2,3,4,5-テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(別名テトラメチレンスルホン)が挙げられる。他の非限定的な有機溶剤の例として、トルエン、キシレン、メシチレン、プロピレングリコールメチルエーテル、メチルナフタレン、安息香酸メチル、テトラヒドロナフタレン、ジメチルホルムアミド、テルピネオール、フェノキシエタノール、ブチロフェノンが挙げられる。インク組成物に有機溶剤が含まれる場合には、上記のNP濃度およびモノマー濃度はインク組成物の固体含有量に基づく。
【0034】
本教示によるインク組成物の様々な実施形態では、多官能性(メタ)アクリレート架橋剤は、インク組成物の約4wt%から約10wt%を占め得る。一般に、光開始剤などの硬化開始剤は、約0.1wt%から約8wt%の範囲の量を含め、約0.1wt%から約10wt%の量で含まれる。つまり、光開始剤の量が約1wt%から約6wt%の範囲の実施形態、さらに光開始剤の量が約3wt%から約6wt%の範囲の実施形態、さらには光開始剤の量が約3.75wt%から約4.25wt%の範囲の実施形態が含まれ得る。
【0035】
所与のインク組成物に使用する特定の光開始剤は、限定はされないが、OLED表示装置またはOLED照明装置などの発光素子の作製に使用する材料など、素子の作製に使用する材料を損傷しない波長で活性化するように選択することが好ましい。光開始剤は、電磁スペクトルのUV領域、可視スペクトルの青色領域、またはそれらの両領域の波長で初期重合化が誘起されるように選択することができる。例えば、本教示による様々なインク組成物では、電磁スペクトルの青色領域の波長で重合化を引き起こす光開始剤を使用することができる。したがって、本教示による複合膜層は、青色光を発する光源を使用すれば、完全に硬化できる。例えば、約395nmのピーク強度を有するLED光源が使用できる。
【0036】
アシルホスフィンオキシド光開始剤を使用してもよいが、多様な光開始剤を使用できることを理解されたい。例えば、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、およびα-アミノケトン類の光開始剤の使用も考えられるが、それだけに限定されるものではない。フリーラジカル系重合化を開始するには、各種の光開始剤は、約200nmから約400nmの吸収特性を有するとよい。本明細書に開示のインク組成物および印刷方法の様々な実施形態では、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィネートが好ましい特性を有する。アシルホスフィン光開始剤の例として、商品名Irgacure(登録商標)TPO(以前の商品名はLucirin(登録商標)TPO)として販売されているUV硬化開始剤である、380nmで吸収するI型溶血性開始剤Irgacure(登録商標)TPO、380nmで吸収するI型光開始剤Irgacure(登録商標)TPO‐L、370nmで吸収するIrgacure(登録商標)819が挙げられる。TPO光開始剤を含むインク組成物を硬化させるには、例として、1.5J/cmまでの放射エネルギー密度で350nmから395nmの範囲の公称波長の光を発する光源を使用することができる。適切なエネルギー源を使用することで高度の硬化が可能になる。例えば、本教示による複合膜のいくつかの実施形態では、硬化後、例えば、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって測定すると90%以上の硬化度を有し得る。
【0037】
重合化の開始が光によって誘起されるため、インク組成物は、光に晒されないように調合するとよい。本教示による各種組成物の調合に関して、各組成物の安定性を確保するために、各組成物を暗室またはごく薄暗い部屋、あるいは重合化を誘起し得る波長を排除するように調光された施設内で調合することができる。そのような波長として、一般に約500nm未満の波長が含まれる。
【0038】
本教示によるインク組成物の配合方法のフローチャートを図6に示す。インク組成物を配合するには、モノ(メタ)アクリレートモノマー、ジ(メタ)アクリレートモノマー、およびそれらの組合せである混合体2202、ならびに多官能性(メタ)アクリレート架橋剤を光開始剤2203と混合して初期の硬化性モノマー配合体2206を生成する。インク組成物に架橋配位子2204を含める場合には、架橋配位子2204も硬化性モノマー配合体2206に加えることができる。NP2208を硬化性モノマー配合体2206に分散させることにより、分散体2209を生成することができる。各種NPを、水性または非水性の有機溶剤系分散体の形で加えてもよい。その場合、水または有機溶剤を分散体2209から適宜除去することにより第2の分散体2210を生成してもよい。その後、このインク組成物は使用可能状態となり、光を避けて保存しなければならない。インク組成物の調合後、インク組成物を分子篩ビーズ中に一日以上混合させておくことで脱水し、その後圧縮乾燥空気雰囲気などの乾燥した不活性雰囲気下で保存することができる。
【0039】
これらのインク組成物は、以下で説明する印刷システムを用いて印刷することができる。印刷システムについては、米国特許第9,343,678号および同第9,579,905号にも記載があり、上記特許の全体を本明細書に援用する。上記膜は、不活性窒素環境下でUV照射を用いて硬化させることができる。インク組成物は、インクジェット印刷によって塗布されるように設計され、したがって噴射可能であることを特徴とする。噴射可能なインク組成物は、印刷ヘッドのノズルから連続して噴射された場合に、経時的に一定または実質的に一定の液滴速度、液滴容量、および液滴軌道を示す。さらに、インク組成物は、優れたレイテンシ特性を有することが好ましい。レイテンシとは、性能の顕著な低下、例えば、画質に著しく影響を及ぼすことになる液滴速度または液滴容量の低減、および/または軌道の変化が生じるまで、ノズルを覆わずに待機できる時間を指す。
【0040】
本発明のインク組成物の様々な実施形態では、ガラス基板、またはポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマーなどのポリマー類から形成された基板などの各種ポリマー基板などの基板上に、インクをパターンエリアに印刷することによって堆積させて、本教示による複合膜層の様々な実施形態を形成することができる。
【0041】
印刷システム
(1)
図7に、非反応性ガス源と清浄乾燥空気(CDA)源とを組み合わせ、制御する格納式インクジェット印刷システム1000Aの概略を示す。この印刷システムを使用することで、例えば本明細書の別の箇所で説明した他例における制御環境が実現でき、また、この印刷システムは、製造格納部100の内部に示すインクジェット印刷システム2000に使用する加圧ガス供給部を備えることができる。さらに、図7の格納式インクジェット印刷システム1000Aには、例えば各種保守手順中に製造格納部100内でCDA環境を実現できるようにCDA供給部を含めてもよい。
(2)
図7に示すように、格納式インクジェット印刷システム1000Aでは、インクジェット印刷システム2000を製造格納部100内に収容することができる。インクジェット印刷システム2000は、印刷システム基部2150によって支持することができる。この基部は、グラナイトステージであってもよい。印刷システム基部2150は、チャック、例えば、限定はされないが、真空チャック、圧力ポートを有する基板浮揚チャック、および真空ポートおよび圧力ポートを有する基板浮揚チャックなどの基板支持装置を支持することができる。本教示の様々な実施形態では、基板支持装置は、図7に示す基板浮揚テーブル2250などの基板浮揚テーブルであってもよい。基板浮揚テーブル2250を用いると、摩擦のない基板支持が可能となる。インクジェット印刷システム2000には、低粒子発生浮揚テーブルに加えて、基板をY軸方向に摩擦なく搬送するための、エアブッシュを使用したY軸モーションシステムも設けることができる。さらに、インクジェット印刷システム2000には、X/Z軸搬送アセンブリ2310を設けてもよい。このアセンブリは、印刷システムブリッジ2130に取り付けることができる。X/Z軸搬送アセンブリ2310は、低粒子発生X軸空気軸受アセンブリによって動きを制御することができる。低粒子発生モーションシステムにおける、X軸空気軸受アセンブリなどの各構成要素は、例えば粒子が発生する直線型の各種機械軸受システムの代わりに使用することができる。本教示によるガス格納部およびシステムの様々な実施形態では、空圧操作式の多様な機器および装置を使用することによって、粒子の発生を減少させ、かつ保守の必要性を低減させることができる。
(3)
プロセスガスの供給と制御に関して、図7に示すように、格納式インクジェット印刷システム1000Aの様々な実施形態には、非反応性ガス源3201と清浄乾燥空気(CDA)源3203とを組み合わせ、制御する外部ガスループ3200を設けることができ、格納式インクジェット印刷システム1000Aの様々な動作態様で使用される。格納式インクジェット印刷システム1000Aはまた、本明細書で先に説明したように、内部粒子濾過およびガス循環システムの様々な実施形態、ならびに外部ガス浄化システムの様々な実施形態も含み得る。非反応性ガス源3201用のガスとして一般に使用される非限定的な例として、窒素、任意の貴ガス、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。本教示によるガス浄化システムの様々な実施形態では、水蒸気、酸素、オゾン、ならびに有機溶剤蒸気などの様々な反応性雰囲気ガスを含め、各種反応種のそれぞれについて、製造格納部100中の濃度を例えば100ppm以下、10ppm以下、1.0ppm以下、または0.1ppm以下に保つことができる。非反応性ガスの供給に加えて、インクジェット印刷システム2000の基板浮揚テーブル2250は、空気軸受技術を利用できるものであるが、真空システム3270も使用することができる。この真空システム3270は、弁3274が開位置にあるとき、ライン3272を介して製造格納部100と連通している。
【0042】
製造格納部100の内部圧力の制御に関して、図7に概略を示すように、圧力モニタPに結合された弁を用いるなどして、製造格納部100の内部のガス圧を所望または指定の範囲内に保つことができる。圧力モニタPでは、圧力モニタから得られる情報を用いて、弁によりガスを別の格納部、システム、または製造格納部100の内部を取り囲む領域に排出することが可能である。排出されたガスは、回収し、再処理することができる。本明細書で先に説明したように、このように規制することによって、印刷工程中、製造格納部100の内部圧力を僅かに正圧に保つ一助とすることができる。さらに、各種の空圧機器および装置の様々な要件によって、本教示による各種製造格納システムおよび方法の圧力プロファイルが不規則となることがあり、そのため一定の制御と規制が必要となる。したがって、製造格納部100の図7に示すように、圧力制御システムは、製造格納部100の圧力バランスを動的に保つように構成される。この構成により、印刷工程中、格納部の周囲環境に対して圧力バランスを僅かに正圧に保つことができる。
【0043】
本教示は、例示を意図したものであり、限定するものではない。読者が技術的開示の本質を即座に理解できるように、米国特許法施行規則第1.72条第(b)項に従い、要約を記載する。提示の要約は、特許請求の範囲または意味を解釈するためまたは限定するためのものでないことを理解されたい。また、上記の「発明を実施するための形態」では、本開示を合理化するために各種特徴をまとめて記載することがある。これは、本明細書に開示されているが、特許請求の範囲に記載のない特徴が、すべての請求項に必須であることを意図するとして解釈すべきではない。そうではなく、本発明の主題は、開示された具体的な実施形態の全ての特徴には及ばない場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、各請求項が個々の実施形態として独立したものとして、例または実施形態として「発明を実施するための形態」に組み込まれ、また、そのような実施形態は、様々な組合せまたは並べ替えで互いに組み合わせてもよいことが意図される。本発明の範囲は、特許請求の範囲の権利が与えられる均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲を参照して決定すべきである。
【0044】
本開示の範囲および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本開示の装置、方法、およびシステムに各種の改変および変形を行えることが、当業者には明白であろう。本明細書、および本明細書に開示の実施例を考慮すれば、本開示の他の実施形態が当業者には明白となろう。本明細書および各例は、単なる例示とみなされたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】