(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172225
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】包装体入り水性医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/335 20060101AFI20221108BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221108BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221108BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221108BHJP
A61J 1/00 20060101ALI20221108BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61K31/335
A61P37/08
A61P43/00 113
A61P29/00
A61P11/02
A61P27/02
A61K9/08
A61J1/00 B
A61J1/05 311
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135010
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2020182447の分割
【原出願日】2015-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2014096180
(32)【優先日】2014-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015011342
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古宮 千夏
(72)【発明者】
【氏名】堀田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】松村 泰子
(57)【要約】
【課題】本発明は、光によるオロパタジンの分解を抑制できる水性医薬製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、
該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなり、
前記包装体の材質がオレフィン系樹脂である、
包装体入り水性医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体入り水性医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オロパタジンは、抗アレルギー作用とともに抗ヒスタミン活性を有し、アレルギー性又は炎症性障害の治療薬として水性組成物に使用されている(特許文献1)。
【0003】
他方で、オロパタジンは、経口投与用の医薬品製剤の製造に多用される賦形剤、崩壊剤、結合剤及び滑沢剤等の添加物により保存時に経時的に分解されることが知られており(特許文献2)、オロパタジンの安定化を図った製剤設計が検討されている(特許文献3)。
【0004】
特許文献4では、オロパタジンを含む固形製剤において、結晶セルロースを含有させないことで、オロパタジン製剤の安定性を向上させる方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-536096号公報
【特許文献2】特許第3828247号公報
【特許文献3】特表2011-105694号公報
【特許文献4】特表2011-20960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光によるオロパタジンの分解を抑制できる水性医薬製剤を提供することを目的とする。また、本発明は、オロパタジンの光による分解を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、波長280~320nmの光線を遮断することによって、光によるオロパタジンの分解を抑制できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤を提供する。
【0009】
上記包装体入り水性医薬製剤は、オロパタジンが光によって分解することを抑制することができる。
【0010】
上記包装体は、波長280~320nmの波長領域の平均光透過率が25%以下であることが好ましい。上記範囲の波長領域の平均光透過率が25%以下であることにより、効率的により確実にオロパタジンの分解を抑制することができる。
【0011】
本発明はまた、波長310~320nmの光線を遮断する包装体と、該包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤とからなる、包装体入り水性医薬製剤を提供する。上記包装体入り水性医薬製剤は、オロパタジンが光によって分解することを抑制することができる。
【0012】
上記包装体入り水性医薬製剤は、包装体の波長310~320nmの波長領域の平均光透過率が25%以下であることが好ましい。上記範囲の波長領域の平均光透過率が25%以下であることにより、効率的により確実にオロパタジンの分解を抑制することができる。
【0013】
上記包装体の波長400~700nmの最大光透過率は60%以上であることが好ましい。波長400~700nmの最大光透過率が60%以上であることにより、包装体の内部を容易に視認することができる。
【0014】
上記包装体入り水性医薬製剤は、点眼剤、洗眼剤、注射剤、皮膚外用剤、点鼻剤又はコンタクトレンズ用組成物とすることができる。
【0015】
上記包装体の材質は、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。また、上記包装体の材質は、ポリエチレンテレフタレートであることが更に好ましい。
【0016】
また、本発明は、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の、光による分解を抑制する方法であって、オロパタジン又はその塩を含有する水性医薬製剤を、波長280~320nmの光線を遮断する包装体に収容する工程を含む方法を提供する。本発明の方法によって、オロパタジンの光分解を抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤の液切れを改善する方法であって、該水性医薬製剤を材質がポリエステル系樹脂又はスチレン系樹脂である包装体に収容する工程を含む方法を提供する。包装体の材質が上記種類であることにより、水性医薬製剤と包装体との濡れ性を低下させ、使用時及び/又は保管時の液切れを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光暴露により引き起こされるオロパタジンの光分解を顕著に抑制することができ、オロパタジンを含有する水性医薬製剤の保存安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】試験例4における着色度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書において水性医薬製剤(又は水性医薬組成物)とは、製剤(又は組成物)中に水を少なくとも5質量%以上、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上含有するものを意味する。
【0021】
本明細書において、略号「POE」はポリオキシエチレンを、略号「POP」はポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る包装体入り水性医薬製剤は、波長280~320nmの光線を遮断する包装体と、前記包装体に収容された、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種(以下、「(A)成分」ともいう。)を含有する水性医薬製剤とからなるものである。(A)成分を含有する水性医薬製剤を、波長280~320nmの光線を遮断する包装体に収容することによって、水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解を抑制することができ、また、水性医薬製剤の着色又は変色及び析出を抑制することができる。
【0023】
オロパタジンは、化学名が(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]-オキセピン-2-酢酸である公知化合物である。オロパタジンは、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
【0024】
オロパタジンの塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩としては、例えば、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム-オルトリン酸塩、カリウム水素硫酸塩等)、有機酸との塩(例えば、酢酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸塩、桂皮酸塩、サリチル酸塩、2-フェノキシ安息香酸塩等)が挙げられる。
【0025】
これらのオロパタジン及び/又はその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解を抑制するという効果の観点から、(A)成分としては、オロパタジン又はその無機酸との塩が好ましく、塩酸オロパタジンがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る水性医薬製剤における(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、水性医薬製剤が収容される容器の形状、該水性医薬製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.002~1w/v%であることが好ましく、0.005~0.8w/v%であることがより好ましく、0.005~0.5w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.22w/v%であることが更により好ましく、0.01~0.2w/v%であることが特に好ましく、0.02~0.11w/v%であることが最も好ましい。水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解を抑制するという効果の観点から、上記(A)成分の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る水性医薬製剤に、上記(A)成分の他に、オロパタジンに光安定性を付与する化合物を配合することによって、(A)成分の光による分解をより顕著に抑制することが可能となる。
【0028】
オロパタジンに光安定性を付与する化合物として、(B)ブロムフェナク及びその塩、ベルベリン及びその塩、アラントイン類、並びに、亜鉛及び亜鉛化合物からなる群から選択される少なくとも1種を例示できる。
【0029】
ブロムフェナクは、2-アミノ-3-(4-ブロモベンゾイル)フェニル酢酸とも称される公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
【0030】
ブロムフェナクの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩としては、有機酸塩(例えば、モノカルボン酸塩[酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等]、多価カルボン酸塩[フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等]、オキシカルボン酸塩[乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等]、有機スルホン酸塩[メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等]等)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩(例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属[ナトリウム、カリウム等]、アルカリ土類金属[カルシウム、マグネシウム等]、アルミニウム等の金属との塩等)等の各種の塩が挙げられる。
【0031】
これらのブロムフェナク及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ブロムフェナク又はその塩には、それらの溶媒和物(例えば、水和物)の形態も包含される。溶媒和物の形態としては、例えば、1/2水和物、1水和物、3/2水和物等が挙げられるが、これらに限定されない。ブロムフェナク及び/又はその塩としては、水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解抑制を図るという観点から、ブロムフェナク、その無機塩基との塩、又はこれらの溶媒和物が好ましく、ブロムフェナク若しくはそのアルカリ金属塩、又はそれらの溶媒和物がより好ましく、ブロムフェナクナトリウム、又はその水和物が更に好ましく、ブロムフェナクナトリウムの3/2水和物が特に好ましい。
【0032】
ベルベリンは、ベンジルイソキノリン骨格を有する公知化合物であり、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
【0033】
ベルベリンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩としては、例えば、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリン等が挙げられる。
【0034】
これらのベルベリン及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ベルベリン又はその塩には、それらの溶媒和物(例えば、水和物)の形態も包含される。水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、ベルベリン及び/又はその塩としては、硫酸ベルベリン又は塩化ベルベリンが好ましく、硫酸ベルベリンがより好ましい。
【0035】
アラントインは、5-ウレイドヒダントインとも称される公知化合物である。アラントイン類としては、アラントイン若しくはその塩、又は、アラントイン誘導体若しくはその塩が挙げられる。
【0036】
アラントイン類としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。アラントイン類としては、具体的に、アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントイングリチルレチン、アラントインアセチル-DL-メチオニン、アラントイン-DL-パントテニルアルコール、及びアラントインポリガラクツロン酸等が挙げられる。
【0037】
これらのアラントイン類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、アラントイン類としては、アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、又はアラントインクロルヒドロキシアルミニウムが好ましく、アラントインがより好ましい。
【0038】
亜鉛又は亜鉛化合物とは、少なくとも1つの亜鉛原子を含む単体又は化合物であり、亜鉛、無機亜鉛塩、有機亜鉛塩、及びこれらの水和物等のいずれの形態であっても使用することができる。
【0039】
亜鉛又は亜鉛化合物としては、亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、2-オキソグルタル酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、アルミン酸亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、クロム酸亜鉛、安息香酸亜鉛、酢酸亜鉛、パラアミノ安息香酸亜鉛、パラジメチルアミノ安息香酸亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、パラメトキシ桂皮酸亜鉛、2-メルカプトピリジン-N-オキシド亜鉛、ピクリン酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、セバシン酸亜鉛、トリポリリン酸亜鉛ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、カプリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ポリホスホン酸亜鉛、コンドロイチン硫酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、アスコルビン酸亜鉛、ジンクピリチオン、ヒノキチオール亜鉛、亜鉛ジピコリネート、亜鉛グリセロレート錯体、ビスヒスチジン亜鉛錯体、亜鉛-3,4-ジヒドロキシ安息香酸錯体、及びこれらの水和物等が挙げられる。
【0040】
これらの亜鉛及び亜鉛化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。亜鉛又は亜鉛化合物には、それらの溶媒和物(例えば、水和物)の形態も包含される。溶媒和物の形態としては、例えば、7水和物等が挙げられるが、これらに限定されない。水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、亜鉛及び/又は亜鉛化合物としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、又はそれらの水和物が好ましく、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はそれらの水和物がより好ましく、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、又はそれらの水和物が更に好ましく、硫酸亜鉛7水和物が特に好ましい。
【0041】
本実施形態に係る水性医薬製剤における(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、併用する(A)成分の種類及び含有量、該水性医薬製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、0.0001~5w/v%であることが好ましく、0.0002~3w/v%であることがより好ましく、0.0005~1w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.5w/v%であることが特に好ましい。
【0042】
ブロムフェナク及び/又はその塩の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、ブロムフェナク及び/又はその塩の総含有量が、0.0005~1w/v%であることが好ましく、0.001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.005~0.2w/v%であることが更に好ましい。
【0043】
ベルベリン及び/又はその塩の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、ベルベリン及び/又はその塩の総含有量が、0.0001~0.1w/v%であることが好ましく、0.0005~0.05w/v%であることがより好ましく、0.001~0.025w/v%であることが更に好ましい。
【0044】
アラントイン類の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、アラントイン類の総含有量が、0.001~1w/v%であることが好ましく、0.005~0.5w/v%であることがより好ましく、0.01~0.3w/v%であることが更に好ましい。
【0045】
亜鉛及び/又は亜鉛化合物の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、亜鉛及び/又は亜鉛化合物の総含有量が、0.0001~1w/v%であることが好ましく、0.0002~0.7w/v%であることがより好ましく、0.001~0.5w/v%であることが更に好ましく、0.01~0.25w/v%であることが更により好ましい。
【0046】
水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、(B)成分の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態に係る水性医薬製剤における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、該水性医薬製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.0005~2000質量部であることが好ましく、0.002~500質量部であることがより好ましく、0.005~100質量部であることが更に好ましく、0.01~50質量部であることが特に好ましい。
【0048】
水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、上記(A)成分に対する(B)成分の含有比率を上記範囲とすることが好ましい。
【0049】
ブロムフェナク及び/又はその塩の(A)成分に対する含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ブロムフェナク及び/又はその塩の総含有量が、0.0005~500質量部であることが好ましく、0.002~100質量部であることがより好ましく、0.01~20質量部であることが更に好ましく、0.05~10質量部であることが特に好ましい。
【0050】
ベルベリン及び/又はその塩の(A)成分に対する含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、ベルベリン及び/又はその塩の総含有量が、0.0001~50質量部であることが好ましく、0.0005~10質量部であることがより好ましく、0.002~5質量部であることが更に好ましく、0.01~1質量部であることが特に好ましい。
【0051】
アラントイン類の(A)成分に対する含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、アラントイン類の総含有量が、0.001~500質量部であることが好ましく、0.005~100質量部であることがより好ましく、0.02~50質量部であることが更に好ましく、0.1~15質量部であることが特に好ましい。
【0052】
亜鉛及び/又は亜鉛化合物の(A)成分に対する含有比率としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、亜鉛及び/又は亜鉛化合物の総含有量が、0.0001~500質量部であることが好ましく、0.0005~100質量部であることがより好ましく、0.001~50質量部であることが更に好ましく、0.002~50質量部であることが更により好ましく、0.1~10質量部であることが特に好ましい。
【0053】
水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解をより一層抑制するという観点から、上記(A)成分に対する各(B)成分の含有比率を上記範囲とすることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る水性医薬製剤は、本願効果をより顕著に奏する観点から、更にテルペノイドを含有することが好ましい。本実施形態に係る水性医薬製剤に用いられるテルペノイドは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本実施形態に係る水性医薬製剤に用いられるテルペノイドとして、例えば、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等を用いることができる。これらの化合物はd体、l体及びdl体のいずれであってもよい。また、本実施形態に係る水性医薬製剤において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。
【0055】
これらのテルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。オロパタジンの光分解を抑制するという観点から、テルペノイドとしては、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオールが好ましく、メントール、カンフル、ボルネオールがより好ましく、メントール、カンフルが更に好ましく、l-メントール、dl-メントール等のメントールが更により好ましい。
【0056】
本実施形態に係る水性医薬製剤におけるテルペノイドの含有量は特に限定されず、併用する(A)成分及び(B)成分の種類並びに含有量、該水性医薬製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。テルペノイドの含有量として、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準に、テルペノイドの総含有量が、0.0001~0.2w/v%であることが好ましく、0.0005~0.1w/v%であることがより好ましく、0.001~0.08w/v%であることが更に好ましい。なお、テルペノイドを含む精油を使用する場合は、水性医薬製剤中に含有される精油中のテルペノイドが上記含有量を満たすように設定することができる。オロパタジンの光分解を抑制するという観点から、上記テルペノイドの含有量を上記範囲とすることが可能である。
【0057】
本実施形態に係る水性医薬製剤は、更に緩衝剤を含有することができる。これにより、水性医薬製剤のpHを調整できる。緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸等が挙げられる。これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸、又はホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等のホウ酸塩が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸、又はリン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等のリン酸塩が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸、又は炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等の炭酸塩が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸、又はクエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。トリス緩衝剤としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(トロメタモール)等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤又はリン酸緩衝剤として、ホウ酸塩又はリン酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等);クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等);アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等)等が例示できる。これらの緩衝剤の中でも、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤(例えば、ホウ酸とホウ砂の組合せ等)、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムの組合せ等)が特に好ましく、ホウ酸緩衝剤が最も好ましい。
【0058】
本実施形態に係る水性医薬製剤に緩衝剤を配合する場合、その含有量は、該緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該水性医薬製剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、例えば、本実施形態に係る水性医薬製剤の総量を基準として、該緩衝剤の総含有量が、0.01~15w/v%であることが好ましく、0.05~10w/v%であることがより好ましく、0.1~7.5w/v%であることが更に好ましく、0.5~5w/v%であることが特に好ましく、0.5~2.5w/v%であることが最も好ましい。
【0059】
本実施形態に係る水性医薬製剤のpHについては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されない。水性医薬製剤のpHとしては、例えば、4.0~9.5であることが好ましく、5.0~9.0であることがより好ましく、5.5~8.5であることが更に好ましく、6.5~8.0であることが特に好ましく、6.8~7.8であることが最も好ましい。pHは6.0~8.0であってもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る水性医薬製剤の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。水性医薬製剤の浸透圧比としては、例えば、0.5~5.0であることが好ましく、0.6~3.0であることがより好ましく、0.7~2.0であることが更に好ましく、0.9~1.55であることが特に好ましい。浸透圧の調整は、無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十六改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0061】
本実施形態に係る水性医薬製剤の粘度については、生体に許容される範囲内であれば特に制限されない。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター:1°34’xR24)で測定した25℃における粘度が、例えば、0.01~1000mPa・sであることが好ましく、0.05~100mPa・sであることがより好ましく、0.1~10mPa・sであることが更に好ましい。
【0062】
また、本実施形態に係る水性医薬製剤は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分又は生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
【0063】
抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤:例えば、ケトチフェン、イプロヘプチン、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、ペミロラストカリウム、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト等。
【0064】
充血除去剤:例えば、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン等。
【0065】
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピン等。
【0066】
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド等。
【0067】
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
【0068】
アミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等。
【0069】
消炎剤:例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アズレンスルホン酸、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、リゾチーム、甘草、プラノプロフェン等。
【0070】
その他:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナク、紫根、セイヨウトチノキ、及びこれらの塩等。
【0071】
また、本実施形態に係る水性医薬製剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途及び製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
【0072】
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性担体。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等。これらはD体、L体及びDL体のいずれでもよい。
【0073】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
【0074】
安定化剤:例えばトロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン等。
【0075】
界面活性剤:例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)、POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油10、POEヒマシ油35等のPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル;POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のPOE・POPブロックコポリマー;ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤(上記で例示する化合物において、括弧内の数字は付加モル数を示す。)、アルキルジアミノエチルグリシン又はその塩(例えば、塩酸塩等)等の両性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の陽イオン性界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等の陰イオン性界面活性剤等。
【0076】
粘稠剤:例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン(K25、K30、K90等)、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(BASF Wyandotte Coproration、プルロニック、テトロニック等)、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース[2208、2906、2910等]、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等)、ポリエチレングリコール(マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、デキストラン(40、70等)、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ブドウ糖、ソルビトール等。
【0077】
等張化剤:例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等。
【0078】
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
【0079】
本実施形態に係る水性医薬製剤は、上記(A)成分、及び必要に応じて(B)成分、他の配合成分を所望の濃度となるように担体に添加することにより調製される。例えば、眼科用製剤の場合、精製水で前記成分を溶解又は懸濁させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。疎水性の高い成分を配合する場合には、予め界面活性剤等の溶解補助作用のある成分とあわせて攪拌を行なってから、更に精製水を加えて溶解又は懸濁させてもよい。
【0080】
(包装体)
上記水性医薬製剤を収容する容器について以下説明する。上記容器は、波長280~320nmの光線を遮断する包装体である。
【0081】
上記包装体は、主として上記水性医薬製剤を直接収容する包装体(一次包装体)を意味するが、水性医薬製剤を収容した一次包装体を更に収容し、水性医薬製剤を二重又はそれ以上に包装するための包装体(二次包装体)をも含む。また、包装体は、包装体本体部のみを備えていてもよく、包装体本体部と蓋部及び/又は抽出口部を備えていてもよい。
【0082】
二次包装体を有する包装体入り水性医薬製剤の場合であれば、一次包装体と二次包装体の中のいずれか少なくとも一つの包装体が、上記光線を遮断すればよい。流通時及び保管時だけでなく、使用時においても、包装体中のオロパタジンの分解を抑制するという観点から、一次包装体が上記光線を遮断するものであることが望ましい。
【0083】
上記包装体の形態は、上記水性医薬製剤を収容できるものであれば特に制限されず、収容する水性医薬製剤の形態及び用途、一次包装体又は二次包装体の別等に応じて適宜選択できる。当該包装体の形態の一例は、一次包装体としては、チューブ状容器、ボトル状容器、点眼剤容器等が挙げられ、二次包装体としては、ピロー、包装袋等が挙げられる。
【0084】
点眼剤、洗眼剤、注射剤等の医薬製剤では、品質管理において異物確認試験が薬事法上(日本薬局方で)規定されており、医薬製剤の容器は内部を観察できる透明の包装体(容器)であることが要求されている。また、使用者にとっては、残存量の確認のためにも内部を肉眼で観察できる程度の透明性を備えている包装体(容器)が望ましいといえる。よって、包装体は、品質管理における異物確認試験の観点から、内部を肉眼で観察可能な程度の内部視認性(透明性)を有する包装体であることが好ましい。内部視認性(透明性)を有する包装体は、特に、品質管理において異物確認試験が薬事法上(日本薬局方で)規定されている、点眼剤、洗眼剤、注射剤等に適している。一方、残存量の確認の観点からも、全ての種類の水性医薬製剤において、内部視認性(透明性)を有する包装体に収容されていることが好ましい。
【0085】
内部視認性(透明性)を有する包装体としては、具体的に、波長400~700nmの可視光領域での光透過率の最大値(以下、「最大光透過率」ともいう)が、60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である包装体を例示できる。なお、本発明において、光透過率の測定方法は、実施例に記載の方法に準じる。また、波長400~700nmの可視光領域における最大透過率は、例えば、波長400~700nmの間で10nm毎に光透過率を測定し、得られる各光透過率から求めることができる。
【0086】
なお、本実施形態において、包装体が視認性を有する包装体である場合、少なくとも包装体の一部分に上記の内部視認性(透明性)が確保されていれば、包装体内の製剤を視認可能であるので、包装体の内部視認性(透明性)については必ずしも包装体の全面において確保されている必要はない。例えば、収容する水性医薬製剤が点眼剤又は注射剤である場合、日本薬局方における点眼剤の製剤総則の規定、及び注射剤の不溶性異物検査法を実施するという観点からは、容器(包装体)の総面積の少なくとも20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上において、透明部分が占めていればよい。また、例えば、流通段階であれば、本実施形態において使用する包装体は、包装体表面に成分及び商品名を表示するためのラベルが施されることより包装体の内部視認性(透明性)が損なわれることを妨げるものではないが、該包装体において、内部視認性(透明性)を有する部分が、使用者にとって包装体内部の製剤の量を確認できる程度に確保されていることが望ましい。また、包装体入り製剤が二重以上に包装されたものである場合、全ての包装体が上述の透明性を有することが好ましい。
【0087】
本発明において、波長280~320nmの光線を遮断するとは、例えば、波長280~320nmの全範囲の光透過率の平均(以下、「平均光透過率」ともいう)が25%以下であることを意味する。ここで、280~320nmの波長領域の光透過率は、波長400~700nmの可視光領域における最大光透過率の場合と同様、本願実施例に規定の方法に準じて測定できる。また、280~320nmの波長領域の平均光透過率は、例えば、280~320nmの間で、10nm毎に光透過率を測定し、得られた各光透過率からそれらの平均値を算出することによって求めることができる。
【0088】
オロパタジンの光による分解をより効果的に抑制するという観点からは、包装体の280~320nmの波長領域の平均光透過率は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、更に特に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。
【0089】
(A)成分を含有する水性医薬製剤に、さらにより一層優れた光分解抑制効果を備えさせるためには、包装体が波長300~320nmの光線を遮断できるものであることが望ましい。すなわち、波長300~320nmの光透過率の平均(平均光透過率)が、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、更により好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、更に特に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である包装体が、より好適である。ここで、波長300~320nmの平均光透過率の測定方法については、280~320nmの平均光透過率の測定方法と同様である。
【0090】
(A)成分を含有する水性医薬製剤に、特により一層優れた光分解抑制効果を備えさせるためには、包装体が波長310~320nmの光線を遮断できるものであることが望ましい。すなわち、波長310~320nmの光透過率の平均(平均光透過率)が、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは25%以下、更により好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、更に特に好ましくは5%以下、更により特に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である包装体が、より好適である。ここで、波長310~320nmの平均光透過率の測定方法については、280~320nmの平均光透過率の測定方法と同様である。
【0091】
このように、包装体が波長280~320nm(好ましくは300~320nm、更に好ましくは310~320nm)の光を遮断して、当該波長領域の光が容器内に透過することを防止することによって、包装体内のオロパタジンの光分解を抑制することが可能となる。
【0092】
本発明の別の実施形態に係る包装体入り水性医薬製剤は、波長310~320nmの光線を遮断する包装体と、前記包装体に収容された、(A)成分を含有する水性医薬製剤とからなるものである。(A)成分を含有する水性医薬製剤を、波長310~320nmの光線を遮断する包装体に収容することによって、水性医薬製剤におけるオロパタジンの光分解を抑制することができ、また、水性医薬製剤の着色又は変色及び析出を抑制することができる。本実施形態において使用するオロパタジン又はその塩の種類、水性医薬製剤中の含有割合、水性医薬製剤に配合される他の成分、水性医薬製剤の形態、包装体等については、包装体が遮断する光線の波長以外は上記に詳述したものと同様の態様を適用することができる。
【0093】
(A)成分を含有する水性医薬製剤に、特により一層優れた光分解抑制効果を備えさせるためには、包装体が、波長280~320nmの光線を遮断し、かつ波長310~320nmの光線を遮断するものであることが望ましい。波長280~320nmの光線を遮断し、かつ波長310~320nmの光線を遮断するとは、波長280~320nmの全範囲の平均光透過率が例えば25%以下、20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下であって、かつ波長310~320nmの全範囲の平均光透過率が例えば45%以下、40%以下、25以下、20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下であることを意味する。
【0094】
(A)成分を含有する水性医薬製剤に、特により一層優れたオロパタジンの光分解抑制作用を備えさせるためには、包装体が波長280~320nm(好ましくは300~320nm、更に好ましくは310~320nm)の光線を遮断できることに加えて、更に波長340nm~350nmの光線も遮断できるものであることが好ましい。すなわち、包装体が波長280~320nm(好ましくは300~320nm、更に好ましくは310~320nm)の光線を遮断できることに加えて、波長340~350nmの光透過率の平均(平均光透過率)が、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下であることが、更に好適である。ここで、波長340~350nmの平均光透過率の測定方法については、280~320nmの平均光透過率の測定方法と同様である。
【0095】
上述のように波長280~320nmの光を遮断する手段については、特に制限されないが、例えば、包装体を構成する材料中に波長280~320nmの光線を遮断する物質を練り込む方法、包装体に波長280~320nmの光線を遮断する物質を塗布する方法、波長280~320nmの光線を遮断する物質を練り込んだフィルムを包装体に装着する方法等が挙げられ、これらの方法の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて適用できる。上記フィルムを容器に装着する方法として、具体的には、波長280~320nmの光線を遮断する熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)を包装体に被せ、これを加熱することにより該フィルムを包装体に密着被覆させる方法を例示できる。波長340~350nm等のその他の光を遮断する手段についても、上記方法において遮断する波長を目的の波長に対応させる他は上記方法と同様である。
【0096】
本実施形態で使用される包装体は、その材質については制限されず、ガラス製、プラスチック製、セルロース製、パルプ製、ゴム製等のいずれであってもよい。本願効果をより顕著に奏する観点、並びにスクイズ性及び耐久性の観点からは、プラスチック製の包装体が好ましい。
【0097】
本実施形態で使用されるプラスチック製包装体に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)等)などが例示できる。好ましい樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂であり、本願発明の効果を顕著に奏することから、更に好ましい樹脂は、ポリエステル系樹脂又はポリカーボネート系樹脂であり、特に好ましい樹脂は、ポリエステル系樹脂である。
【0098】
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分(フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分など)とジオール成分とを含む成分を用いて得られた樹脂が使用できる。具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリC2-4アルキレンテレフタレートなど)、ポリアルキレンナフタレート(ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等のポリC2-4アルキレンナフタレートなど)、ポリシクロアルキレンテレフタレート(ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)等)、ポリアリレート類(ビスフェノール類[ビスフェノール-A等]とフタル酸類[フタル酸、テレフタル酸]とで構成された樹脂など))のホモポリエステルなどが挙げられる。また、ポリエステル系樹脂には、前記ホモポリエステル単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル、前記ホモポリエステルの共重合体(PETとPCTとの共重合体など)なども含まれる。ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノール-Aなど)をベースとする芳香族ポリカーボネートである。
【0099】
本実施形態においてプラスチック製包装体は、強度、光透過性、ガス又は水蒸気バリア性(透湿性)等に悪影響を及ぼさない限り、ポリマーアロイ(ポリマーブレンドなど)を含んでいてもよい。好ましいポリマーアロイには、複数の合成樹脂のポリマーブレンド(例えば、PETとPENとのポリマーブレンドなど)が含まれる。包装体の材質がポリマーアロイである場合は、上記ポリエステル系樹脂を主成分として含む(例えば、50%以上)ことが好ましい。包装体を構成する樹脂は、スクイズ性が良好で、繰り返しの押圧に対して耐久性を有する包装体とすることができるものであることが好ましい。
【0100】
本願発明の効果を顕著に奏することから、包装体の材質は、ポリエステル系樹脂の中でも、好ましくはポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンナフタレートであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンナフタレート(PEN)である。包装体の材質は、これらを含むホモポリエステル又はコポリエステルであってもよく、該ホモポリエステル又はコポリエステルを含有するポリマーアロイであってもよい。
【0101】
また、水性医薬製剤の液切れを改善する観点からは、包装体の材質は、ポリエステル系樹脂又はスチレン系樹脂であることが好ましく、PET又はPSであることがより好ましく、PETであることが更に好ましい。これらの樹脂を材質とする包装体を用いることにより、(A)成分を含有する水性医薬製剤と包装体との濡れ性が低減され、使用時及び/又は保管時の液切れを向上させ、水性医薬製剤の容器中の液残りを防ぐことができる。
【0102】
本実施形態に係る包装体は、紫外線遮断剤を添加した材質を用いたものであってもよく、紫外線遮断剤をコーティングした包装体であってもよい。例えば、ガラス又は合成樹脂などに紫外線遮断剤を添加した後に成型した包装体、合成樹脂などをシート状に加工してから紫外線遮断剤をコーティングしその後成型した包装体、ガラス又は合成樹脂などを最終包装体形状に成型した後に紫外線遮断剤をコーティングした包装体などが挙げられる。また、紫外線遮断剤を添加又はコーティングしたシート状合成樹脂などを、成型後の包装体にシュリンク包装したものであってもよい。
【0103】
紫外線遮断剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、トリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、置換アクリロニトリル系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ニッケル錯体系化合物、商品名チヌビン(登録商標)328、チヌビン(R)384-2、チヌビン(R)400、チヌビン(R)400-2、チヌビン(R)900、チヌビン(R)928、チヌビン(R)1130等のベンゾトリアゾール系化合物;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、グアイアズレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン、パラヒドロキシアニソール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。また、リボフラビン、アントラキノン系色素(1-アミノ-4-メチルアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、アントラキノン系イエローなど)、フタロシアニン系色素(フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue15;C.I.74160;青色404号)、フタロシアニングリーン(C.I.Pigment Green7)など)などが挙げられる。
【0104】
紫外線遮断剤は、好ましくは酸化亜鉛、酸化チタン、チヌビン(登録商標)328、チヌビン(R)384-2、チヌビン(R)400、チヌビン(R)400-2、チヌビン(R)900、チヌビン(R)928、チヌビン(R)1130、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシルが挙げられ、特に好ましくは酸化亜鉛、酸化チタン、チヌビン(R)328、チヌビン(R)384-2、チヌビン(R)400、チヌビン(R)400-2、チヌビン(R)900、チヌビン(R)928、チヌビン(R)1130である。酸化亜鉛、酸化チタンは、更にシリカ、シリコン、ケイ酸亜鉛などで被覆されていてもよい。
【0105】
本実施形態に係る包装体において、包装体を構成する材料に紫外線遮断剤を添加する場合、添加する紫外線遮断剤の割合は、例えば、材料全量に対して0.05~5.0重量%、好ましくは0.1~3.0重量%である。紫外線遮断剤をコーティングした包装体は、例えば、紫外線吸収剤を含有するコーティング塗料を成型後の包装体又は合成樹脂シートなどに塗布することで製造することができる。ここで、コーティング塗料としては、ラジカル重合系のアクリル型(例えば、ポリエステルポリアクリレート、ウレタンポリアクリレート、エポキシポリアクリレート、ポリエーテルポリアクリレート、側鎖アクリロイル型アクリル樹脂等)、チオールエン型(例えば、ポリチオールアクリル型オリゴマー、ポリチオールスピロアセタール型等)、不飽和ポリエステル又はカチオン重合系のエポキシ樹脂等を用いることができる。また、包装体を構成する素材をフィルム状に展延し、このフィルムを接着積層したシートから成型したものであってもよい。
【0106】
本実施形態に係る包装体は、着色剤を添加又はコーティングした材質(包装体)であってもよい。着色剤としては、無機顔料、レーキ顔料、有機顔料等を使用することができる。
【0107】
本発明の水性医薬製剤は、光安定性に優れているので、複数回に亘り投与する形態で包装され、かつ使用者が継続的に使用するマルチドーズの点眼剤として有用であるが、ユニットドーズの点眼剤とすることもできる。
【0108】
上述のように、波長280~320nmの光線を遮断する包装体は、オロパタジンの光による分解を抑制することができる。よって、本発明は更に、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤を、波長280~320nmの光線を遮断する包装体に収容する工程を含む、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の光分解抑制方法を提供する。また、本発明は、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤を、波長310~320nmの光線を遮断する包装体に収容する工程を含む、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の光分解抑制方法を提供する。
【0109】
上記方法において、使用するオロパタジン又はその塩の種類、水性医薬製剤中の含有割合、水性医薬製剤に配合される他の成分、水性医薬製剤の形態、波長280~320nm等の光線を遮断する包装体等については、上記包装体入り水性医薬製剤に関して詳述したものと同様の態様を適用することができる。
【0110】
本発明はまた、オロパタジン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性医薬製剤の液切れを改善する方法であって、該水性医薬製剤を材質がスチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂である包装体に収容する工程を含む方法を提供する。(A)成分を含有する水性医薬製剤を収容する容器として材質が上記の種類である包装体を用いることによって、水性医薬製剤と包装体との濡れ性が低減され、使用時の液切れを向上させ、水性医薬製剤の容器中への液残りを減少させることができる。液切れに優れることは、特に一回の使用量が少量である眼科用組成物、中でも点眼剤において特に有用である。スチレン系樹脂又はポリエステル系樹脂の詳細は、上記包装体入り水性医薬製剤に関して詳述したものと同様である。また、上記方法において、(A)成分の含有量を高めることにより、更に使用時の液切れを向上させることができる。
【0111】
本実施形態に係る水性医薬製剤は、医薬品、医薬部外品等の製剤として使用でき、例えば、眼科用医薬製剤又は耳鼻科用医薬製剤として用いることができる。眼科用医薬製剤には、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む。)、人工涙液、洗眼剤(洗眼液又は洗眼薬ともいう。また、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む。)、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物(コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物[コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤]等)が含まれる。なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。耳鼻科用医薬製剤には、例えば、点鼻剤、鼻洗浄液等が含まれる。
【0112】
上記水性医薬製剤は、注射薬、坐薬、内服薬、吸入用製剤等であってもよく、また、患者に適用した際に光に曝露されやすい局所適用される水性医薬製剤であってもよい。また、皮膚適用のみならず、刺激を感じやすい粘膜(角膜及び結膜等の眼粘膜、歯茎、舌、口唇、口腔粘膜、鼻腔粘膜、咽頭部粘膜等)への適用される水性医薬製剤であってもよい。例えば、上記水性医薬製剤の一例として、皮膚外用剤(外皮用軟膏、外皮用クリーム、外皮用液剤等)、点眼薬(点眼剤)、洗眼薬(洗眼剤)、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューションなど)、点鼻薬(点鼻剤)、鼻洗浄液、口腔咽頭薬、含嗽薬、点耳薬などが挙げられる。なお、本明細書において、コンタクトレンズとは、ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズも含む)、ソフトコンタクトレンズなどのあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する。これらの中で、好ましくは点眼薬(点眼剤)、洗眼薬(洗眼剤)、注射剤、皮膚外用剤、点鼻剤及びコンタクトレンズ用剤を挙げることができる。
【0113】
特に、包装体が視認性を有する包装体である場合、外部から容器内の医薬製剤を肉眼で観察して異物の有無の検査が可能であり、日本薬局方における点眼剤の製剤総則の規定や注射剤の不溶性異物検査法を好適に実施できるという本発明の効果に鑑みれば、好ましい医薬製剤として、例えば、点眼剤、洗眼剤、注射剤等を挙げることができる。また、複数回の投与量を含む製剤では、使用毎に使用者が製剤の残存量を視認できるので、好適である。複数回の投与量を含む製剤の具体例としては、点眼剤、洗眼剤、皮膚外用剤、点鼻剤及びコンタクトレンズ用剤を例示できる。
包装体が視認性を有する包装体である場合、上記の理由から、点眼剤及び洗眼剤が特に好ましい。
【実施例0114】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0115】
[試験例1-1:オロパタジンの光分解抑制確認試験]
表1に示す処方例1に従ってオロパタジン含有水性医薬製剤(点眼剤)を調製し、表2に示す各種容器に5mLずつ収容し、密閉した。表1中の処方例の各成分の割合は水性医薬製剤全量を基準とし、単位はw/v%である。容器としては、無色又は有色の、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、ポリエチレンナフタレート(PEN)製容器、ポリカーボネート(PC)製容器、ポリエチレン(PE)製容器、ポリプロピレン(PP)製容器又はガラス製容器を用いた。このように得られた各種容器入りオロパタジン含有水性医薬製剤に、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65蛍光ランプを光源として、室温25℃の下、0.5万lxの光を120時間連続照射することにより、積算照射量60万lx・hの光を曝光した。その後、各水性医薬製剤中のオロパタジン濃度を高速液体クロマトグラフィーで分析し、オロパタジンの残存濃度を定量した。測定したオロパタジンの残存濃度から、光照射前のオロパタジン濃度に対する残存率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0116】
試験に使用した容器の光透過性を評価するために、各容器の一部を切り取り、これを検体として、マイクロプレートリーダー(「SH-9000」、コロナ電気株式会社製)により波長200~700nmの範囲で10nm毎に光透過率を測定し、容器の所定の波長における平均光透過率及び波長400~700nmにおける最大透過率を求めた。なお、測定部分にラベル等があり測定の障害となる場合には、それらを剥がした後に測定した。
【0117】
試験に使用した容器の内部視認性について、下記評価基準に基づいて評価した。評価は、白色光源を用い、3000~5000lxの明るさの位置で、肉眼で観察して行った。結果を表2に示す。
<評価基準>
◎ 内部の水性医薬製剤の量及び異物を明瞭に視認できる
○ 内部の水性医薬製剤の量及び異物を視認できる
△ 内部の水性医薬製剤の量については視認できるが、異物については視認しにくい
× 内部の水性医薬製剤の量及び異物を視認できない
【0118】
【0119】
【0120】
試験に使用した各種容器の内、波長400~700nmの最大光透過率が60%以上のものは、内部に収容した水性医薬製剤を外部から視認することができ、透明性を十分に備えていた。
【0121】
光照射後のオロパタジンの残存率は、波長280~320nmの光が遮断されている容器に収容したオロパタジン含有水性医薬製剤では顕著に高い値を示した。波長280~320nmの範囲内でも、特に波長300~320nm、及び310~320nmの波長領域の光透過率が低い程、オロパタジンの分解が抑制され、オロパタジンが容器内で安定に保持されることが確認された。なお、このことは、例えば、上記表2中に示した各波長範囲の平均光透過率の、オロパタジン残存率における決定係数R2を比較することによっても確認することができる。また、波長280~320nmの光が遮断されていることに加えて、340~350nmの光も遮断されている容器においては、一層、オロパタジンの分解が抑制され、安定に保持されることが確認された。
【0122】
以上の結果から、オロパタジンの光暴露による分解には、280~320nmの光線が関与していることが明らかとなり、上記波長領域の光を遮断することによって、オロパタジンの光暴露による分解を抑制できることが確認された。さらに、オロパタジン含有水性医薬製剤を収容する容器の波長400~700nmの最大光透過率が60%以上であれば、内部の良好な視認性を確保できることが確認された。
【0123】
[試験例1-2:オロパタジンの光分解抑制確認試験]
表3に示す処方例2及び3に従ってオロパタジン含有水性医薬製剤(点眼剤)を調製し、表2に示す実施例6-1-1(無色のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器)及び実施例7-1-1(ポリカーボネート(PC)製容器)で用いたものと同種の容器に5mLずつ収容し、密栓した。表3中の処方例の各成分の割合は水性医薬製剤全量を基準とし、単位はw/v%である。得られた各種容器入りオロパタジン含有水性医薬製剤について、上述の試験例1-1と同様の方法で、光照射、及び曝光後のオロパタジン残存濃度定量を行い、光照射前のオロパタジン濃度に対する残存率(%)を算出した。結果を表4に示す。処方例1からpHを変更した処方例2、3についても、実施例の容器を用いることにより、光照射後のオロパタジン残存率が顕著に高い値を示した。
【0124】
【0125】
【0126】
[試験例2 オロパタジンの光分解抑制確認試験]
塩酸オロパタジン0.11w/v%、塩化ベンザルコニウム、無水リン酸一水素ナトリウム、pH調節剤及び等張化剤を含み、pH7.0、浸透圧比0.9~1.1であるオロパタジン含有水性医薬製剤(パタノール点眼液0.1% 製造販売元:日本アルコン社)を用い、この5mLを、表2に示す実施例6-1-1、比較例3-1で用いたものと同種の容器に収容して密栓し、それぞれ実施例6-2、比較例3-2とした。
【0127】
このようにして得られた各種容器入りオロパタジン含有水性医薬製剤に、光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65蛍光ランプを光源として、室温25℃の下、0.5万lxの光を120時間連続照射することにより、積算照射量60万lx・hの光を曝光した。その後、各水性医薬製剤中のオロパタジン濃度を高速液体クロマトグラフィーで分析し、オロパタジンの残存濃度を定量した。測定したオロパタジンの残存濃度から、光照射前のオロパタジン濃度に対する残存率(%)を算出した。
【0128】
光照射後のオロパタジンの残存率の結果を表5に示す。水性医薬製剤の組成が異なる場合でも、波長280~320nmの光が遮断されている容器に収容したオロパタジン含有水性医薬製剤では、試験例1-1と同様に、光照射後のオロパタジンの残存率が顕著に高い値を示した。
【0129】
【0130】
[試験例3 オロパタジンの光分解抑制確認試験]
下記表6に示す処方例に従って水性医薬製剤を調製し、光に対するオロパタジン又はその塩の分解について評価を行った。具体的な実験手法及び結果を以下に示す。表6中の処方例の各成分の割合は水性医薬製剤全量を基準とし、単位はw/v%である。
【0131】
【0132】
まず、表6に示す各水性医薬製剤を常法により調製した。次いで各水性医薬製剤を10mL容量透明ガラスバイアル(表2に示す、比較例3-1で用いたガラス(無色)容器と同種)、又は13mL容量PET製容器に5mLずつ充填した。PET製容器の所定の波長における平均光透過率及び最大光透過率を表7に示す。光安定性試験装置(「Light-Tron LT-120 D3CJ型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、D65ランプを光源として、室温の下、5000lxの光を120時間連続照射し、水性医薬製剤に対して積算照射量60万lx・hrの光を曝光した後、試験例1-1と同じ方法でオロパタジン残存濃度定量を行い、下記式(I)及び(II)に従い、オロパタジンの光安定性改善率を算出した。結果を表6に示す。
残存率(%)=(光照射後の塩酸オロパタジン含有量)/(光照射前の塩酸オロパタジン含有量)×100 ・・・(I)
光安定性改善率(%)={(各実施例又は比較例の残存率/比較例4の残存率)-1}×100 ・・・(II)
【0133】
【0134】
表6に示すとおり、オロパタジンを含有し、ガラスバイアルに充填された比較例4~6と比較して、PET製容器(透明)に充填され、オロパタジンと共に、ブロムフェナクナトリウム及び硫酸ベルベリンを含有した水性医薬製剤においては、オロパタジンの残存率が向上し、水性医薬製剤におけるオロパタジンの光安定性が改善されることを確認した。
【0135】
[試験例4:オロパタジンの着色及び析出抑制確認試験]
試験例1-1と同様に、表1の処方例1を、表2の容器(代表的な容器を選択)に5mLずつ収容し、密閉した。実施例1-1、5-1、6-1-1、比較例1-1、2-1、3-1で用いた容器に充填したものをそれぞれ、実施例1-4、5-4、6-4、比較例1-4、2-4、3-4とした。
【0136】
このように得られた各種容器入りオロパタジン含有水性医薬製剤に、光安定性試験装置(サンテスター(SUNTEST XLS+:ATLAS社製))を用いて、765W/m
2で19時間照射することにより、積算照射量5.2万kJ/m
2の光を曝光した。光照射前後のサンプルをそれぞれ、96ウェルプレートに200μLずつ入れ、マイクロプレートリーダー(「SH-9000」コロナ電気株式会社製)により、420nmにおける吸光度を測定した。その後、光照射後のサンプルの吸光度から、光照射前のサンプルの吸光度を引いた値を算出し、着色度とした。結果を
図1に示す。
【0137】
光照射後のサンプルの色及び析出の有無を目視にて調べ、以下の基準で評価し、性状スコアを求めた。結果を表8に示す。
<評価基準>
◎ 無色、析出なし
○ ごくわずかに黄色、析出なし
△ 淡黄色、析出なし
× 濃黄色、析出なし
×× 濃黄色、析出あり
【0138】
【0139】
光照射後のオロパタジン配合水性医薬製剤の色調は、波長280~320nmの光が遮断されている容器に収容したものでは、着色が全く無い、又はわずかな黄色への着色にとどまった。一方、波長280~320nmの光が遮断されていない容器に収容した比較例では、水性医薬製剤の濃黄色への着色及び析出が確認された。
【0140】
また、波長280~320nmの光が遮断されていることに加えて、340~350nmの光も遮断されている容器に収容した水性医薬製剤においては、一層、着色が抑制されていることが確認された。一方、波長260~270nmの光透過率が低くても、波長280~320nmの光透過率が高い容器に収容したオロパタジン含有水性医薬製剤では、光照射による製剤の着色及び析出を抑制することはできないことが確認された。
【0141】
以上の結果から、オロパタジン含有水性製剤の光暴露による着色には、波長280~320nmの光線が関与していることが明らかとなり、上記波長領域の光を遮断することによって、オロパタジン含有製剤の光暴露による着色及び析出を抑制できることが確認された。
【0142】
[試験例5:オロパタジンの光分解抑制確認試験]
表9に示す処方例4及び5に従ってオロパタジン含有水性医薬製剤(点眼剤)を調製し、表2に示す実施例6-1-1(無色のポリエチレンテレフタレート(PET)製容器)及び実施例7-1-1(ポリカーボネート(PC)製容器)で用いたものと同種の容器に5mLずつ収容し、密栓した。表9中の処方例の各成分の割合は水性医薬製剤全量を基準とし、単位はw/v%である。処方例4、5はそれぞれ上記処方例2、3に更にメントールを所定量加えたものに相当する。得られた各種容器入りオロパタジン含有水性医薬製剤について、上述の試験例1-1と同様の方法で、光照射、及び曝光後のオロパタジン残存濃度定量を行い、光照射前のオロパタジン濃度に対する残存率(%)を算出した。
【0143】
【0144】
【0145】
メントールを含む処方例4、5を用いた上記実施例ではそれぞれ、処方例2、3を用いた試験例1-2における実施例よりも、光照射後のオロパタジン残存率が更に高かった。メントールを配合することにより、オロパタジンの光安定性が更に上昇することが確認された。
【0146】
[試験例6:液切れ改善確認試験]
表11に示す処方例6、7及び8に従ってオロパタジン含有水性医薬製剤を調製した。また、塩酸オロパタジン及びl-メントールを含有しない点以外は処方例6、7及び8と同様の方法で水性医薬製剤を調製し、それぞれ比較処方例6’、7’及び8’とした。処方例8及び比較処方例8’の水性医薬製剤は、10mL容量ガラス製バイアル中に70℃で5日間保存したものを下記試験に用いた。
【0147】
【0148】
接触角計DM-501(協和界面科学株式会社製)を用いて、同測定装置の拡張/収縮法の測定手順に従い、固体と液体の界面が運動する際の接触角である前進接触角を測定した。
具体的には、表12に示す各容器材質を接触角計のステージの上に置き、表13に示す処方例と容器材質との組み合わせになるように、試験液をディスペンサにセットした。試験液の液滴1μLを容器材質表面上に滴下して半球状に着滴させた。次に速やかに、半球上部にディスペンサの液吐出部の先端を着液させた。その状態で、試験液を吐出速度2μL/秒で連続的に吐出し、液滴の形状を側面から0.1秒毎に15回撮影した。各処方例に対応する比較処方例についても、同一の容器材質を使用して同一の室温下で続けて測定し、同様の方法で撮影した。
【0149】
次に、上記測定装置の解析ソフトFAMASを用いて、画像ごとに左右の接触角を求めた。ここで、接触角は、容器材質表面、試験液及び空気の接触点Pから試験液に引いた接線と、容器材質の表面に引いた接線とのなす角のうち、試験液を含む側の角を意味する。試験液を吐出することにより液滴が拡張するにつれて、接触角は変化し、次いでほぼ一定になる挙動を示した。画像ごとに左右の接触角の平均値を算出し、画像を撮影した順番に左右接触角の平均値を並べた。連続した5つの値を選択して、標準偏差が最初に2.5°以下になった最初の接触角を、本試験における前進接触角とした。液滴形状の撮影及び前進接触角の算出を各試験液について3回行い、3つの前進接触角の平均値をその試験液と容器材質間の前進接触角とした。液滴が拡張する過程で前進接触角が変化しない場合も同様にして、前進接触角を算出した。
【0150】
下記式(1)により、同種の容器材質を用いた場合における、各処方例の前進接触角の、対応する比較処方例の前進接触角からの上昇率を算出した。結果を表13に示す。
前進接触角の上昇率(%)={(各処方例の前進接触角/比較処方例の前進接触角)-1}×100・・・(1)
【0151】
【0152】
【0153】
表13に示すとおり、材質としてポリエチレン(PE)を使用したときには、(A)成分を含有する水性医薬製剤の前進接触角は、(A)成分を含有しない場合と比較して低かった。一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリスチレン(PS)の容器材質を使用したときには、全く意外なことに、(A)成分を含有する水性医薬製剤の前進接触角は、(A)成分を含有しない場合と比較して顕著に高かった。(A)成分を含有する水性医薬製剤は、PET及びPSの容器材質に対して、液が流動する際の濡れ性が顕著に低いことが確認された。すなわち、PET製又はPS製、特にPET製の容器に(A)成分を含有する水性医薬製剤が収容された場合には、水性医薬製剤を使用する際に液切れが向上し、容器等に対する濡れ残りが抑制されるという有利な効果を得られることが示された。また、水性医薬製剤中の(A)成分の濃度が高い処方例7では、(A)成分を含有しない場合と比較した前進接触角の上昇率が更に高かった。
【0154】
(製剤例)
以下に、製剤実施例を挙げる。各実施例は、浸透圧比が0.5~2.0となるように調製した。処方例9~23を実施例1-1と同種の容器(PET+紫外線遮断剤、無色)に充填したものを製剤例1~15、処方例9~23を実施例2-1と同種の容器(PET+紫外線遮断剤+着色剤、褐色)に充填したものを製剤例16~30、処方例9~23を実施例5-1と同種の容器(PEN、無色)に充填したものを製剤例31~45、処方例9~23を実施例6-1-1と同種の容器(PET、無色)に充填したものを製剤例46~60とした。
【0155】
【0156】