(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172227
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】液体ワイヤ
(51)【国際特許分類】
H01B 1/02 20060101AFI20221108BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
H01B1/02 Z
H05K1/03 610H
H05K1/03 670
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135340
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2018545999の分割
【原出願日】2017-02-27
(31)【優先権主張番号】62/301,622
(32)【優先日】2016-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
2.LABVIEW
(71)【出願人】
【識別番号】518307097
【氏名又は名称】リキッド ワイヤ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LIQUID WIRE LLC
【住所又は居所原語表記】6267 NE Carillon Dr., Unity 104, Hillsboro, Oregon 97124, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】518307101
【氏名又は名称】ローナイ, マーク
【氏名又は名称原語表記】RONAY, Mark
【住所又は居所原語表記】6267 NE Carillon Dr., Unity 104, Hillsboro, Oregon 97124, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ローナイ, マーク
(57)【要約】
【課題】簡単に加工することができ、酸化から保護され、基板が摩耗し始めたときでも機能し続けることができる自己治癒特性を有する流体を提供すること。
【解決手段】導電性ずり減粘ゲル組成及びそのような組成を製造する方法が開示される。導電性ずり減粘ゲル組成は、共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物を含み、共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物は、重量パーセント(wt%)で約59.9%から約99.9%の共晶ガリウム合金と、wt%で約0.1%から約2.0%の酸化ガリウムを含む。また、ずり減粘ゲル組成を含む製品とずり減粘ゲル組成を有する製品を製造する方法も開示される。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ずり減粘ゲル組成であって、
共晶ガリウム合金と、
前記ガリウム合金内にマイクロ構造として分布する酸化ガリウムシートと
を備え、共晶ガリウム合金と酸化ガリウムとの混合物は、重量パーセント(wt%)で約59.9%から約99.9%の共晶ガリウム合金と、wt%で約0.1%から約2.0%の酸化ガリウムとを有する、
導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項2】
前記混合物内に分散される1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに備え、前記マイクロ粒子は、前記組成内にwt%で約0.001%から約40.0%のマイクロ粒子を有する、請求項1の電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項3】
前記ガリウム合金はガリウム及びインジウムを含む、請求項1又は2の導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項4】
前記ガリウム-インジウム合金内のガリウムの重量パーセンテージは、約40%から約95%であり、前記ガリウム-インジウム合金内のインジウムの重量パーセンテージは、約5%から約60%である、請求項1~3のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項5】
前記ガリウム合金はスズを含む、請求項3又は請求項4の導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項6】
前記ガリウム合金内のスズの重量パーセンテージは、約.001%から約50%である、請求項5の導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項7】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項8】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である、請求項1~7のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項9】
前記マイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、銀コーティング銅球、銀コーティング銅フレーク、銅フレーク又は銅球を含む、請求項7又は8のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項10】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロンのサイズ範囲にある、請求項1~9のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項11】
前記組成は、ビンガム塑性体の特性を有する、請求項1~9のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項12】
前記組成は、低剪断下で10,000,000センチポアズから約40,000,000センチポアズにわたる粘度を有し、高剪断下で約150から180センチポアズにわたる粘度を有する、請求項1~11のいずれかの導電性ずり減粘ゲル組成。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかのずり減粘ゲル組成を有する、製品。
【請求項14】
前記製品は、生地、プラスチックフィルム及び/又は膜を含む、請求項13の製品。
【請求項15】
前記製品は、
基布と、
前記ずり減粘ゲル組成が配置された1以上の要素と
を含む、ボディウェア製品を含む、請求項13の製品。
【請求項16】
前記製品は電子デバイスを含む、請求項13の製品。
【請求項17】
ずり減粘ゲル組成を有する製品を製造する方法であって、
前記製品の少なくとも1つの面に請求項1~12のずり減粘ゲル組成を印刷する、
方法。
【請求項18】
前記製品は生地を含む、請求項16の方法。
【請求項19】
前記製品はボディウェア製品を含む、請求項16の方法。
【請求項20】
前記製品は電子デバイスを含む、請求項16の方法。
【請求項21】
前記電子デバイスはセンサを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
導電性ずり減粘ゲル組成を製造する方法であって、
ガリウム合金流体の表面に形成される表面酸化ガリウムを前記ガリウム合金流体のバルクに前記表面酸化物と合金との界面の剪断混合により混ぜ合わせ、
前記表面酸化物に架橋マイクロ構造を誘導し、これにより導電性ずり減粘ゲル組成を形成する、
方法。
【請求項23】
共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物は、重量パーセント(wt%)で約59.9%から約99.9%の共晶ガリウム合金と、wt%で約0.1%から約2.0%の酸化ガリウムを含む、請求項22の方法。
【請求項24】
前記混合物内に分散される1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに備え、前記マイクロ粒子は、前記組成内にwt%で約0.001%から約40.0%のマイクロ粒子を有する、請求項22の方法。
【請求項25】
前記ガリウム合金はガリウム及びインジウムを含む、請求項22の方法。
【請求項26】
前記ガリウム-インジウム合金内のガリウムの重量パーセンテージは、約40%から約95%であり、前記ガリウム-インジウム合金内のインジウムの重量パーセンテージは、約5%から約60%である、請求項22の方法。
【請求項27】
前記ガリウム合金はスズを含む、請求項22の方法。
【請求項28】
前記ガリウム合金内のスズの重量パーセンテージは、約.001%から約50%である、請求項22の方法。
【請求項29】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅又はこれらの組み合わせを含む、請求項22の方法。
【請求項30】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である、請求項22の方法。
【請求項31】
前記マイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、銀コーティング銅球、銀コーティング銅フレーク、銅フレーク又は銅球を含む、請求項22の方法。
【請求項32】
前記1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロンのサイズ範囲にある、請求項22の方法。
【請求項33】
前記組成は、ビンガム塑性体の特性を有する、請求項22の方法。
【請求項34】
前記組成は、低剪断下で10,000,000センチポアズから約40,000,000センチポアズにわたる粘度を有し、高剪断下で約150から180センチポアズにわたる粘度を有する、請求項22の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2016年2月29日に提出された米国仮特許出願第62/301622号の先の出願日に対する優先権の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願はその全体が参照により本明細書に特に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書における実施形態は、液体ワイヤに関し、より詳細には、一体型マイクロ構造を有し、ガリウムインジウム合金を含む液体ワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0003】
曲げたり伸ばしたりすることができて柔らかいことが期待される衣服や布地をはじめとする日用品に電子機器を組む込むことに関心が高まっている。柔らかい電子機器であれば、人体に滑らかに結びつくことができ、ウェアラブルデバイス、医療デバイス、人間や繊細な物とより安全に相互作用することができるコンフォーマルロボティクス又は「ソフトマシーン」の候補に対して多くの新しい用途を開拓することができる。(例えば、Dickey、ACS Appl Mater Interfaces、2014年11月12日、6巻21号、18369-18379ページを参照)。
【0004】
これらの柔軟な電子デバイスを製造するために、特に3D印刷のような、これまでとは異なる多くの製造方法が考えられている。しかしながら、大きなネックは、高い導電性を有し、簡単に加工することができる伸縮可能な導体が存在しないことである。
【0005】
伸縮可能な導体に対して多くの試みがなされてきた。最も成功した例の1つは、常温液体金属で満たされたマイクロ流体チャネルであった。ポリジメチルシロキサン(PDMS)にマイクロメートルオーダーのチャネルをエッチングし、それらのチャネルを封止した後、金属合金をチャネルに注入して導電経路を生成することにより機能的デバイスが生成される。これらの合金は、-19℃と低い融点を有するため、通常の条件下では流体を維持し得る。金属導体が流体であるため、これらの金属導体は、導体を含むチャネルを形成する材料によってのみ制限される程度に変形可能であり、また完全に復元することが可能である。さらに、金属導体の抵抗の変化は、ワイヤ長さと断面に対して純粋に機械的な関数となるため、線形的である。これにより、導電経路をセンサとしても機能させることができるという大きな利点が得られる。
【0006】
しかしながら、これらのマイクロ流体チャネルを有するデバイスを製造することは非常に難しいことである。PDMSは好ましい基板であるが、チャネルの周囲に適切なシールを形成するのにコストがかかり、チャネルを取り囲むためのキャップ層を付着させるために、チャネルを含む層を酸素プラズマに曝す必要がある。作製後は、2シリンジシステムを介してチャネルが充填されていなければならない。この2シリンジシステムにおいては、一方のシリンジは液体合金を注入し、他方のシリンジは既に存在している空気を排出する。作製中の故障率は非常に高い。個々の事例に基づけば、20回の製造試行を行った場合に約1回だけ成功することが報告されている。このように、他の「液体」金属に対する需要が存在している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の実施形態は、添付図面と特許請求の範囲とともに以下の詳細な説明により容易に理解できるであろう。実施形態は例として示されているのであって、添付図面の図に限定するものとして示されているわけではない。
【0008】
【
図1A】
図1Aは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【
図1B】
図1Bは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【
図1C】
図1Cは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【
図1D】
図1Dは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【
図1E】
図1Eは、様々な実施形態による配合を含む様々なガリウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像のデジタル画像である。
【0009】
【0010】
【
図3】
図3は、金属ゲルパターンの高い忠実度の接触転写の初期観察のデジタル画像である。
【0011】
【
図4A】
図4Aは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
【
図4B】
図4Bは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
【
図4C】
図4Cは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
【
図4D】
図4Dは、粒子充填金属ゲルを有する試験接触転写パターンのデジタル画像である。パターンは、様々な実施形態による0.5mmほどの微細なトレース幅と0.25mmほどの微細なピッチを有する。
【0012】
【
図5】
図5は、様々な実施形態によるパターン化された圧力センサのデジタル画像である。
【0013】
【
図6】
図6は、シリコーン内に封止された金属ゲルの8インチトレースの歪み試験のグラフであり、歪みの程度に対する抵抗の線形性を示している。
【0014】
【
図7】
図7は、経方向又は緯方向に沿う歪みによる変化に向けられた可変抵抗を図示したものである。
【0015】
【
図8】
図8は、10個の可変抵抗と4つのアナログ出力要素A,B,C,Dとを有する単純な1×3のグリッドである。出力要素のすべての一意なペアリングが6要素ベクトルを生成する。それぞれの可変抵抗の抵抗範囲を適切に重み付けすることにより、出力ベクトルによって任意の忠実度に対してすべての可能な抵抗の組み合わせを一意にエンコードすることを保証することができる。
【0016】
【
図9】
図9は、本明細書に開示される実施形態による、金属ゲルから印刷された990MHzアンテナのデジタル画像である。
【0017】
【
図10】
図10A~
図10Dは、トレースパターンの例である。
図10Aは、経路に平行な歪みとともに変化する可変抵抗として機能する単純なラインである。
図10Bは、互いに近いi/oポートで信号を読めるようにする戻り経路を有している。垂直に接続するバーは、メインのトレースに平行に測定される歪みに対する無視し得る抵抗変化を生じる。
図10Cでは、ジグザグパターンは、トレースの方向に対して垂直な歪みに対して抵抗/歪みフィードバックを増す。
図10Dは、戻り経路と水平部における抵抗/歪みフィードバック乗算器とを有するトレースである。このトレースは、その方向に平行な歪みに対しては敏感であるが、垂直な歪みに対しては敏感ではない。
【0018】
【
図11】
図11は、1.4ミル(35μm)厚さのCu基準トレースと75μmの厚さの金属ゲルラインについての6GHzに対する測定挿入損失のグラフである。挿入損失は、表皮効果から両方の材料について増加している。
【0019】
【
図12】
図12A~
図12Dは、ラインの封止を示す模式図である。
図12Aは、シースに囲まれた複数のコードを有する標準パラシュートラインを示している。
図12Bでは、金属ゲル(1)がナイロンコードでシース内に収容されている。
図12Cでは、単一のパラシュートライン内に複数の導体を形成するために、個々の内側ナイロンコードを金属ゲルでコーティングし、熱硬化性ポリウレタンのような絶縁体内に封止してもよい。あるいは、
図12Dでは、複数の金属ゲル導体(3)を熱可塑性ポリウレタン内に収容し、パラシュートラインシースの外側に付着させてもよい。
【0020】
【
図13】
図13は、長さL
Sの1対の金属ゲルワイヤを用いた基本歪みセンサのブロック図である。2つのワイヤは、合成抵抗R
S=R
S1+R
S2=V
S/I
Sを有している。ここで、V
S及びI
Sは、ホイートストンブリッジ検知ポートでの直流電圧及び電流である。ホイートストンブリッジは、デジタル歪みデータ出力を生成するためにADCに供給されるR
Sに比例する出力V
0を有している。
【0021】
【
図14】
図14は、どのようにしてL
dを介して歪みセンサループにDC電流I
Sを流すことを可能とし、RF信号がC
dによりループに結合され、C
1及びC
2により除去されるのかを示すブロック図である。また、インダクタL
dは、RF信号が短絡することを防止する。
【0022】
【
図15】
図15A~
図15Cは、金属ゲルを用いて制御インピーダンス伝送ラインを形成する3つの方法を示している。
図15Aは、絶縁封止層金属ゲル外側層(2)により最終外側封止層で覆われた金属ゲル中心(1)導体(コーティングされたナイロンコードであってもよい)との同軸相互接続部を示している。
図15Bは、「平行二線型」(「二本」とも呼ばれる)構成における2つの金属ゲルラインを示している。
図15Cは、放射を低減し、2つのラインを電磁干渉(EMI)から遮蔽する低いインピーダンスを可能とするために、
図15Bにおける構造に適用した外側金属ゲル層を示している。1つ目の構成(
図15A)は、30から100オームの範囲のインピーダンス同軸伝送ラインを形成するために、絶縁中心導体(1)の周囲に形成された金属ゲル(2)からなる外側導体を有している。
【詳細な説明】
【0023】
以下の詳細な説明においては、本出願の一部を構成する添付図面が参照され、この添付図面においては、実施され得る実施形態が一例として示されている。本開示の趣旨又は範囲を逸脱することなく、他の実施形態を利用したり、構造的又は論理的な変更をしたりすることができることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味に解釈すべきではなく、実施形態の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物により規定される。
【0024】
特に説明しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、開示される主題の属する技術分野における当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。化学用語においてよく用いられる語の定義は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1985年)、The Condensed Chemical Dictionary(1981年)に見つけることができる。そうでないと言及している場合を除いて、本開示に係る方法及び手法は、一般的に、当該分野においてよく知られている従来の方法により実施され、本明細書を通して引用され述べられる様々な一般文献及びより具体的な文献において述べられているように実施される。例えば、Loudon著、Organic Chemistry、第4版、ニューヨーク:オックスフォード大学出版局、2002年、360~361ページ及び1084~1085ページ、Smith及びMarch著、March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure、第5版、ワイリー・インターサイエンス、2001年、又はVogel著、A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis、第4版、ニューヨーク:ロングマン、1978年を参照されたい。
【0025】
様々な作業は、実施形態を理解するのに役立ち得るように、複数の別個の作業として順番に述べられていることがある。しかしながら、説明の順序は、これらの作業が順序通りであることを示唆しているものではないと解釈すべきである。
【0026】
本説明では、上/下、後/前、及び上部/底部などの相対的な記述を用いることがある。そのような記述は、説明を簡単にするために使用されているだけであり、開示されている実施形態の適用を制限することを意図しているものではない。
【0027】
「連結」及び「接続」という用語及びその派生語が使用されることがある。これらの用語は、互いの同義語として使用しているのではないことを理解すべきである。むしろ、特定の実施形態においては、「接続」は、2つ以上の要素が互いに物理的に直接接触することを示すために使用されることがある。「連結」は、2つ以上の要素が物理的に直接接触することを意味し得るが、「連結」は、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、互いに協働又は相互作用することを意味することもある。
【0028】
本明細書において使用される場合には、文脈が明確にそうではないと示していない限り、単数の語は、複数の指示対象を含んでいる。同様に、「又は」の語は、文脈が明確にそうではないと示していない限り、「及び」を含むことを意図している。また、本明細書において使用される場合には、「備える」という用語は「含む」を意味する。したがって、「A又はBを備える」はAを含むこと、Bを含むこと、又はAとBとを含むことを意味している。
【0029】
そうでないと言及している場合を除いて、いずれの定量値も、「約」又は「およそ」などの語が付いているかいないかにかかわらず、およその値である。本明細書で述べられる材料、方法、及び実施例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図しているものではない。いずれの分子量又は分子質量値も、およその値であり、説明のためだけのものである。
【0030】
本説明では、「実施形態」という用語を使用することがあるが、これらの語は、それぞれ同一の実施形態又は異なる実施形態のうち1つ以上の実施形態を意味している場合がある。さらに、「備える」、「含む」、「有する」などの用語は、実施形態に関して使用される場合には、同義である。
【0031】
A.概説
フレキシブル導体は、電子機器における数多くの用途で必要とされている。ウェアラブルデバイス、適合センサ、フレキシブルディスプレイ、ソフトロボットアクチュエータ及び伸縮可能な相互接続部は、いずれも、曲げたり伸ばしたりすることを両方とも繰り返してできるような導電媒体を必要とする。理想的には、フレキシブル導体は、伸ばしたり曲げたりする数多くのサイクルの間、導通を維持しつつ、導体が付着している基板の運動に対してそれほど抵抗を生じないものである必要がある。理想的には、液体導体がこのタスクに適している。
【0032】
上記で簡単に述べたが、「液体」金属導体は、通常、インジウムと混合されたガリウムとスズの共晶合金を用いており、これらの共晶合金は、マイクロ流体チャネル内に埋め込まれる。典型的には、これらの合金は、ガリウム-インジウム(通常75%のガリウムと25%のインジウム)及びガリウム-インジウム-スズ(最も一般的には68.5%のガリウムと21.5%のインジウムと10%のスズ)を含んでいる。ガリウム合金流体は、粘度が低く、表面張力が大きい。これらの合金は良好な導体であり得るが、広く採用されることを阻害する大きな問題がある。例えば、合金自体が加工しづらい。加えて、合金からなる基板が疲労を受ける状態で埋め込まれている場合には、マイクロ流体チャネルは、不可逆的に漏れたり壊れたりしやすい。最後に、合金は、大気に露出すると酸化層を形成し、この酸化層は、導電性がなく、フレキシブルワイヤと固い構成要素との間の接続部での故障を引き起こす可能性がある。このように、簡単に加工することができ、酸化から保護され、その基板が摩耗し始めたときでも機能し続けることを可能とする自己治癒特性を有する流体を提供できれば、当該分野に対して重要な進歩となり得るであろう。本開示は、これらの需要を満たすものである。
【0033】
本発明者により発見された、ガリウム合金と酸化ガリウム組成を含む新しい複合材料であって、バルクガリウム合金内の酸化ガリウムから形成される分散されたマイクロ構造を含む新しい複合材料が本明細書に開示される。実施形態においては、マイクロ構造は、ガリウム合金に混合される際に分散されたマイクロ構造を引き起こすためにバルクガリウムの表面に形成された酸化ガリウムのシートから形成される。合金は、通常の水をベースとするゲルにおけるポリマーゲル化剤と同様の目的を果たす酸化物リボンの架橋ナノ構造に結合する。ゲルは、サブミクロンのスケールの粒子を用いることにより安定化され、高粘度で、濡れやすく、漏れにくいビンガム塑性体(剪断力が作用するまで固体の特性を呈する流体)が作製される。このビンガム塑性体は、室温で多くの表面に一貫してパターン化することができる。パターン化されると、その結果、その基板の材料特性に影響を与えない高導電性流体相互接続部が得られる。このゲルは、室温で流体であり、-5℃の凝固点を有する。最終材料は、必要とされる安定性の程度に応じて2~8×105S/mのスケールの導電性を有し、100μmの厚さまで導体をパターン化することは比較的簡単であるため、得られるシート抵抗は他のフレキシブル導体に比べて非常に低い。本開示に係る組成は、一般的に、ペースト状の材料を形成する。酸化ガリウムは、ガリウム合金流体と協働して、マイクロ・ナノ構造を形成する。これらの構造は、これらの幾何的構造に応じて、少量の力に耐えることができる。不規則に整形された酸化ガリウムからなる非常に多くのマイクロ・ナノ構造を大量のガリウム合金流体に分散させることにより、高粘度で非ニュートンレオロジー特性を有する新しい新規な複合流体を生成することができる。この流体は、ビンガム塑性体と同様の振る舞いをし、応力が作用するまで構造を保持する。本明細書に開示されているように、これらのマイクロ・ナノ構造の生成と分散を複数の方法により実現することができる。一実施形態においては、酸化ガリウムのマイクロ・ナノ構造の生成と分散は、酸化ガリウムに包まれたガリウム-インジウム-スズ内にナノ粒子及び/又はマイクロ粒子をコーティングし、加振又は混合により剪断を作用させることでこれらをガリウム-インジウム-スズの流体に懸濁させることにより実現される。
【0034】
B.いくつかの実施形態の概要
本開示に係る側面は、例えば、ペースト程度の粘度を有し、共晶ガリウム合金に混合される酸化ガリウムにより提供される構造を、共晶ガリウム合金のバルク材料特性を変えることができるマイクロ又はナノ構造が得られるように利用することにより生成される導電組成に関するものである。ある実施形態においては、導電組成は、導電性のずり減粘ゲル組成又はビンガム塑性体の特性を有する材料として特徴付けることができる。実施形態においては、本開示に係る組成は、低剪断下で約10,000,000センチポアズから約40,000,000センチポアズにわたる粘度、高剪断下で約150から約180センチポアズにわたる粘度を有する。例えば、低剪断の条件下では、この組成は、約10,000,000センチポアズ、約15,000,000センチポアズ、約20,000,000センチポアズ、約25,000,000センチポアズ、約30,000,000センチポアズ、約45,000,000センチポアズ、又は約40,000,000センチポアズの粘度を有する。高剪断の条件下では、この組成は、約150センチポアズ、約155センチポアズ、約160センチポアズ、165センチポアズ、約170センチポアズ、約175センチポアズ、又は約180センチポアズの粘度を有する。
【0035】
実施形態においては、本開示に係る組成は、共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物を含んでおり、この共晶ガリウム合金と酸化ガリウムの混合物は、重量パーセント(wt%)で約59.9%から約99.9%、例えば約67%から約90%の共晶ガリウム合金と、wt%で約0.1%から約2.0%、例えば約0.2から約1%の酸化ガリウムとを有している。例えば、本開示に係る組成は、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれより多く、例えば約99.9%の共晶ガリウム合金と、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%。及び約2.0%の酸化ガリウムを含むことができる。
【0036】
実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム又はガリウム-インジウム-スズを任意の元素比で含むことができる。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムを含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム-インジウム合金中の重量パーセントで約40%から約95%、例えば約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%のガリウムを含んでいる。
【0037】
ある実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム-インジウム合金中の重量パーセントで約5%から約60%、例えば約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、又は約60%のインジウムを含んでいる。
【0038】
ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとスズを含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、合金中の重量パーセントで約0.001%から約50%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、又は約50%のスズを含んでいる。
【0039】
実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子が、ガリウム合金及び酸化ガリウムと混ぜ合わせられる。実施形態においては、これらの粒子は、共晶ガリウム合金又はガリウムのいずれかに被覆されて酸化ガリウム内に封止された状態、あるいは、先に述べたようには被覆されない状態で、共晶ガリウム合金流体内に懸濁される。これらの粒子のサイズは、ナノメートルからマイクロメートルにわたることがあり、ガリウム、ガリウム-インジウム合金、又はガリウム-インジウム-スズ合金内で懸濁され得る。流体特性を変えるために合金に対する粒子の比を変えることができる。実施形態においては、マイクロ・ナノ構造が混合物内で超音波処理又は他の機械的手段により混ぜ合わされる。実施形態においては、本開示に係る組成は、ガリウム合金/酸化ガリウム混合物内にマイクロ・ナノ構造の懸濁コロイドを含んでいる。
【0040】
実施形態においては、本開示に係る組成は、混合物内に分散された1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子をさらに含んでいる。これは、粒子を、共晶ガリウム合金又はガリウムのいずれかに被覆された酸化ガリウム内に封止された状態、あるいは、先に述べたようには被覆されない状態で、共晶ガリウム合金流体内に懸濁させることにより行うことができる。これらの粒子のサイズは、ナノメートルからマイクロメートルにわたることがあり、ガリウム、ガリウム-インジウム合金、又はガリウム-インジウム-スズ合金内で懸濁され得る。流体特性を変えるために合金に対する粒子の比を変えることができる。加えて、その物理的、電気的又は熱的特性を向上又は修正するために、懸濁コロイド又はガリウム合金ペーストへ補助材料が追加される。共晶ガリウム合金内でのマイクロ・ナノ構造の分散は、粒子を加えることなく、音波処理又は他の機械的手段により行うことができる。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロン粒子が、約0.001%から約40.0%、例えば、約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、又は約40%のwt%のマイクロ粒子が存在するように混合物に混ぜ合わされる。
【0041】
実施形態においては、粒子は、ソーダガラス、シリカ、ホウケイ酸ガラス、石英、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅球や銀コーティング銅フレークのような銀コーティング銅、銅フレーク、又は銅球、あるいはこれらの組み合わせ、あるいはガリウムに濡れることができる他の任意の材料であり得る。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロン、例えば、約0.5ミクロン、約0.6ミクロン、約0.7ミクロン、約0.8ミクロン、約0.9ミクロン、約1ミクロン、約1.5ミクロン、約2ミクロン、約3ミクロン、約4ミクロン、約5ミクロン、約6ミクロン、約7ミクロン、約8ミクロン、約9ミクロン、約10ミクロン、約11ミクロン、約12ミクロン、約13ミクロン、約14ミクロン、約15ミクロン、約16ミクロン、約17ミクロン、約18ミクロン、約19ミクロン、約20ミクロン、約21ミクロン、約22ミクロン、約23ミクロン、約24ミクロン、約25ミクロン、約26ミクロン、約27ミクロン、約28ミクロン、約29ミクロン、約30ミクロン、約31ミクロン、約32ミクロン、約33ミクロン、約34ミクロン、約35ミクロン、約36ミクロン、約37ミクロン、約38ミクロン、約39ミクロン、約40ミクロン、約41ミクロン、約42ミクロン、約43ミクロン、約44ミクロン、約45ミクロン、約46ミクロン、約47ミクロン、約48ミクロン、約49ミクロン、約50ミクロン、約51ミクロン、約52ミクロン、約53ミクロン、約54ミクロン、約55ミクロン、約56ミクロン、約57ミクロン、約58ミクロン、約59ミクロン、又は約60ミクロンのサイズ範囲にある。
【0042】
本開示に係る側面は、さらに、導電性ずり減粘ゲル組成を作製する方法に関係している。実施形態においては、この方法では、ガリウム合金流体の表面に形成された表面酸化物をガリウム合金流体のバルクに、表面酸化物と合金との界面の剪断混合により混ぜ合わせ、表面酸化物に架橋マイクロ構造を誘導し、これにより導電性ずり減粘ゲル組成を形成する。実施形態においては、マイクロ構造の懸濁コロイドが、ガリウム合金/酸化ガリウムの混合物内に、例えば、酸化ガリウム粒子及び/又は酸化ガリウムシートとして形成される。
【0043】
実施形態においては、約0.1%から約2.0%(重量パーセント)の酸化ガリウムに対して約59.9%から約99.9%(重量パーセント)の共晶ガリウム合金の比で表面酸化物が混ぜ合わせされる。例えば、酸化ガリウムに混ぜ合わせられるガリウム合金の重量パーセントは、約60%、61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれよりも多く、例えば約99.9%の共晶ガリウム合金であり、酸化ガリウムの重量パーセントは、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、及び約2.0%の酸化ガリウムである。実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウム-インジウム又はガリウム-インジウム-スズを任意の元素比で含むことができる。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムを含んでいる。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム合金内のガリウムの重量パーセントは、約40%から約95%、例えば約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、又は約95%である。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム合金内のインジウムの重量パーセントは、約5%から約60%、例えば約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、又は約60%である。ある実施形態においては、共晶ガリウム合金は、ガリウムとインジウムとスズを含んでいる。ある実施形態においては、ガリウム-インジウム-スズ合金内のスズの重量パーセントは、約0.001%から約50%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、又は約50%である。
【0044】
実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子が、ガリウム合金及び酸化ガリウムと混ぜ合わせられる。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロン粒子が、組成内に約0.001%から約40.0%、例えば約0.001%、約0.005%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約1.5%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、又は約40%のwt%のマイクロ粒子となるように混合物と混ぜ合わせられる。実施形態においては、粒子は、ソーダガラス、シリカ、ホウケイ酸ガラス、石英、酸化銅、銀コーティング銅、非酸化銅、タングステン、過飽和スズ細粒、ガラス、グラファイト、銀コーティング銅球や銀コーティング銅フレークのような銀コーティング銅、銅フレーク、又は銅球、あるいはこれらの組み合わせ、あるいはガリウムに濡れることができる他の任意の材料であり得る。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、スフェロイド、ロッド、管、フレーク、板、立方体、角柱、ピラミッド形、檻形、及びデンドリマーの形状である。ある実施形態においては、1以上のマイクロ粒子又はサブミクロンスケールの粒子は、約0.5ミクロンから約60ミクロン、例えば、約0.5ミクロン、約0.6ミクロン、約0.7ミクロン、約0.8ミクロン、約0.9ミクロン、約1ミクロン、約1.5ミクロン、約2ミクロン、約3ミクロン、約4ミクロン、約5ミクロン、約6ミクロン、約7ミクロン、約8ミクロン、約9ミクロン、約10ミクロン、約11ミクロン、約12ミクロン、約13ミクロン、約14ミクロン、約15ミクロン、約16ミクロン、約17ミクロン、約18ミクロン、約19ミクロン、約20ミクロン、約21ミクロン、約22ミクロン、約23ミクロン、約24ミクロン、約25ミクロン、約26ミクロン、約27ミクロン、約28ミクロン、約29ミクロン、約30ミクロン、約31ミクロン、約32ミクロン、約33ミクロン、約34ミクロン、約35ミクロン、約36ミクロン、約37ミクロン、約38ミクロン、約39ミクロン、約40ミクロン、約41ミクロン、約42ミクロン、約43ミクロン、約44ミクロン、約45ミクロン、約46ミクロン、約47ミクロン、約48ミクロン、約49ミクロン、約50ミクロン、約51ミクロン、約52ミクロン、約53ミクロン、約54ミクロン、約55ミクロン、約56ミクロン、約57ミクロン、約58ミクロン、約59ミクロン、又は約60ミクロンのサイズ範囲にある。
【0045】
本開示に係る側面は、本開示に係る組成を含む製品及びそのような組成を作製する方法に関係している。曲げたり伸ばしたりすることができて柔らかいことが期待される衣服や布地をはじめとする日用品に電子機器を組む込むことに関心が高まっている。柔らかい電子機器であれば、人体に滑らかに結びつくことができ、ウェアラブルデバイス、医療デバイス、人間や繊細な物とより安全に相互作用することができるコンフォーマルロボティクス又は「ソフトマシーン」の候補に対して多くの新しい用途を開拓することができる。
【0046】
ある実施形態においては、製品は、電子デバイスを含んでいる。ある実施形態においては、製品は、生地、プラスチックフィルム及び/又は膜を含んでいる。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、センサ、例えば、歪み検出及び/又は剪断検知に使用されるセンサに一体化される。一例として、本開示に係る組成を有する変形液体ワイヤは、導体の幾何学的特性に応じて、抵抗、静電容量、インダクタンス、インピーダンス又は特性周波数に測定可能な変化を生じさせることができる。例えば、この組成を、任意の基板上の歪み及び/又は剪断を検出するためのセンサとして使用することができる。例えば、路肩や堤防を補強するために使用される「ジオテキシタイル」に組成を一体化することができる。そのような一例においては、本開示に係る組成から形成された長いプラスチック被覆ワイヤにより、土木構造におけるスランピングを検出することができ、倒壊の警告を早期に出すことができた。他の例においては、本開示に係る組成をパラシュート吊索上にパターン化して自動操舵可能なパラシュートを制御するために使用可能なリアルタイム歪みフィードバックを供給することができた。
【0047】
ある実施形態においては、製品は、基布と、その上に配置された、本開示に係る組成を有する1以上の要素とを備えるボディウェアを含んでいる。様々な実施形態においては、基布の上に配置され、例えば布の表面に対して外側又は内側に面する基布の表面に連結された、本開示に係る組成を有する1以上の要素を用いることができる基布、例えばボディギア用の基布が開示される。一実施形態においては、本開示に係る組成は、衣服の他の様々な要素、例えばバッテリなどの電源と、センサなどの他の一体型電子デバイスとの間で電流を流す。
【0048】
ある実施形態においては、ボディウェアは、本開示に係る組成に連結され、情報を収集及び/又は収集された情報を処理するための構成要素を含み得る。例えば、ボディウェアは、例えば、心拍数やEKG、脈拍や体温などの身体の生命兆候や移動といった装着者の1以上の身体的状況をモニタリングする構成要素を含み得る。ある実施形態においては、本開示に係る組成は、圧力センサとして構成される。
【0049】
一般的に、所望の基布機能(例えば、伸張性、ドレープ性、テクスチャ性、通気性、湿気伝達性、透気性、及び/又はウィッキング)を発揮するためには、基布の表面積を十分に露出する必要がある。例えば、露出している基布が少なすぎる場合には、湿気伝達性及び/又は透気性のような特性が、カバーしているパーセンテージに対して釣り合わないほどに損なわれることがある。
【0050】
実施形態においては、導電組成の幅は、約0.1mmから約10.0mmの範囲にあり、例えば、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、又は10.0mm(時としてこれより大きい)、あるいは任意の値であり、あるいは任意の範囲にある。
【0051】
ある実施形態においては、導電組成の量及び/又は配置は、コストを抑え、見た目の美しい材料を生成するように選択される。実施形態において、導電組成の厚さは、約0.05mmから約5mmの範囲にあり、例えば、約0.05、約0.1、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0mm、又は任意の値であり、あるいは任意の範囲にあるが、これよりも小さな厚さや大きな厚さも考えられる。
【0052】
様々な実施形態によれば、基布は、任意の形態のボディウェア、毛布、テント、レインフライ、傘、又は日除けのようなボディギア又は任意の材料又は装置の一部であってもよい。本明細書で使用される場合には、ボディウェアは、圧着衣服のような運動着、Tシャツ、ショーツ、タイツ、スリーブス、ヘッドバンドなど、ジャケットのような上着、パンツ、レギンス、シャツ、帽子など、及び履物などの身体に着用する任意のものを含んでいるが、これらに限られるものではない。
【0053】
様々な実施形態においては、導電組成の量及び/又は配置は、1以上の所望の特性又は特徴を有する基布上に配置され得る。例えば、基布は、室内用及び室外用の両方の用途において使用されるボディウェアに必要とされる透気性、湿気伝達性、及び/又はウィック性などの特性を有し得る。ある実施形態においては、基布は、耐摩耗性、静電防止特性、抗菌活性、撥水性、防炎性、親水性、疎水性、耐風性、太陽光保護、SPF保護、弾力性、耐汚染性、防しわ性などの他の所望の属性を有し得る。他の実施形態においては、導電組成の量を分離することにより、基布に所望のドレープ性、見た目、及び/又はテクスチャを持たせることができる場合がある。好適な基布は、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、綿、スパンデックス、羊毛、絹、又はこれらの混紡、又は所望の見た目、触感、重さ、厚さ、織り方、テクスチャ、又は他の所望の特性を有する任意の他の材料を含み得る。
【0054】
様々な実施形態においては、単一層の基布を用いて基布を構成してもよく、他の実施形態では、1以上の他の層に連結された基布の層を含む複数層の生地を用いることがある。
【0055】
様々な実施形態においては、導電組成の配置、パターン、量が変化し得る。様々な実施形態においては、導電組成の量のパターン及び/又は配置は、対称的、順序通り、ランダム、及び/又は非対称的であり得る。
【0056】
本開示に係る側面は、さらに、上記で開示されたずり減粘ゲル組成を有する製品を作製する方法に関係している。そのような方法においては、ずり減粘ゲル組成は、製品の少なくとも1つの面に印刷される。
【0057】
ある実施形態においては、本開示に係る組成は、基板に印刷あるいは転写される。ある実施形態においては、印刷は、スクリーン印刷を含んでいる。一部の例では、印刷は、例えばシリコーンゴム及び/又はポリウレタンゴムのスタンプである3D印刷スタンプ金型を用いて接触転写によりなされる。転写接触におけるパラメータは、転写される材料、接触パッド及び基板の表面エネルギーである。流体は、一般的に、自身の表面エネルギーよりも高いエネルギーで表面に対して濡れ、さらに高いエネルギーで基板に対して優先的に濡れる。シリコンゴム(PDMS)は、異常に表面エネルギーが低く、接触転写印刷においては転写媒介として用いられることが多い。他の実施形態においては、本開示に係る組成は、飽和したスポンジをマスクに押し付け材料を転写することで基板に転写される。スポンジを使う方法については、数多くのポリウレタンフォーム及びPDMSフォームを利用することができる。
【0058】
本開示に係る主題は、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【実施例0059】
材料形成の方法
最初に、市販のガリウム-インジウム-スズ(68.5、21.5、10)の合金(ガリンスタン)で実験したところ、ガリウム系合金は、大気中で酸化物層を非常に早く形成することが観察された。液体金属をPDMSマイクロ流体チャネルに注入するプロセス中に、塩酸(HCL)を用いて試料上の酸化物層を還元し、不要物を減らすことで、「清浄な」非酸化デバイスを作ることができた。このプロセスの間、HCLにより還元される際に試料に奇妙な物理的挙動が生じることが観察された。例えば、試料が通常のガリンスタンを形成せず、高粘度の材料が作製された。この材料は、市販されていたガリンスタン試料から少量得られることができた。
【0060】
最初の試行は、30ミクロンのガラスビーズに混ぜ合わせることによりガリンスタンから発泡体に似た材料を合成した。酸素の存在下において、ガリンスタンは、その酸化物層を介してガラスに対して簡単に濡れた。最初は、このようにガラスビーズに対してガリンスタンが「濡れ」、ガリンスタンとガラスのスラリがこのように形成されることを望んでいた。このスラリは、粘度が高く、任意の形状に簡単に形成できる。
【0061】
ガリウム-インジウム及び関連する合金が任意の非金属面に対して濡れる唯一のメカニズムは、その酸化物層の付着と、その結果得られるその層の下の流体のトラップとによることが過去に報告されている。ガリウム-インジウム-スズは、ガラスと直接接触する流体金属の薄い層によりビーズに対するように濡れ、酸化物層により適切な場所でトラップされるという仮説があった。混合を通じて、ガラスビーズは繰り返し大気と接触し、ガリウム-インジウム-スズの酸化物トラップ連続層からなる連続層を形成する。これらの構造が再び浸漬されると、混合からの剪断力が酸化物層の破壊を引き起こし、散乱構造を形成し、ガラスビーズの懸濁コロイドを実現して、流体の粘度を上げると思われる。
【0062】
この方法は、ミクロンのビーズと他の様々なサイズのビーズでうまく機能した。これは、連結ガリウム-酸化物構造の微細なネットワークが、ガリウム-インジウム合金を吸収し、粘度を上げる流体の内部構造を提供するという発見につながった。粘度が高くなると、流体はより簡単に押し出し成形することが可能となり、ノズル成膜やステンシル印刷のような従来の印刷手法を用いて導電性を有する幾何学的構成に確実に形成することができた。得られる高粘度流体は、ガリウム-インジウムゲル、ガリウム-インジウム合金ゲル、金属ゲル、あるいは単にゲルなど様々に呼ばれる。