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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172266
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】異方導電性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/00 20060101AFI20221108BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139156
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2018126648の分割
【原出願日】2018-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】荻野 勉
(57)【要約】
【課題】シート表面から突出した導電線の導電部の折れ曲がりが防止された、異方導電性シートを提供する。
【解決手段】第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シート10であって、樹脂からなる基材シート1と、前記基材シートの一方の主面1aから他方の主面1bへ貫通する複数の導電線2と、を備え、前記導電線の少なくとも一方の端部2aが、前記主面の少なくとも一方から突出した突出部Pを形成し、前記突出部の側面Psの全部又は一部は、前記突出部の根元Pzの周囲を構成する前記樹脂が前記主面からせり上がった被覆部Cによって被覆されている、異方導電性シート10。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートの製造方法であって、
樹脂からなる基材シートと、前記基材シートの一方の主面から他方の主面へ貫通する複数の導電線と、を備えた異方導電性シート前駆体を準備し、
前記異方導電性シート前駆体の2つの主面のうち少なくとも一方に対して、前記導電線を融解し難く、前記主面を構成する前記樹脂を融解し易いレーザー光を照射することによって、
前記導電線の一方の端部が前記一方の主面から突出した、突出部を形成するとともに、
前記突出部の側面の全部又は一部を被覆する、前記突出部の根元の周囲を構成する前記樹脂が前記一方の主面からせり上がった被覆部を同時に形成する、異方導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光を照射する際に、前記異方導電性シート前駆体及びその周辺の温度を0~25℃に保つ、請求項1に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記異方導電性シート前駆体を金属製ステージに載置する、請求項2に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記金属製ステージは、ステージ表面を冷却する機構を備えている、請求項3に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記異方導電性シート前駆体の周囲の空気を強制的に換気する、請求項1~4の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光の照射によって、前記被覆部の形状を、先端へ向けて徐々に縮径した形状とする、請求項1~5の何れか一項に記載の異方導電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子デバイス同士を接続するために、微細な電極同士を接続するシート状の圧接型コネクター(以下、異方導電性シート)が用いられている。一般に、異方導電性シートは、基材シートと、基材シートを貫通する複数の導電線とを備え、第一デバイスの接続端子と第二デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続する。接続対象であるデバイスが有する接続端子は、デバイスの表面から陥没した凹部内に配置されていることがある。このような陥没電極に対して異方導電性シートの表面に露出した導電線を押し込んで接続することを容易にするために、シート表面から突出した導電線を備えた異方導電性シートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-140574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シート表面から突出した突出部を有する導電線は、接続対象の陥没電極に接続しやすい利点がある一方、接続時に導電線に加わる応力によって導電線の突出部が折れ曲がることがある。異方導電性シートの耐久性を向上させる観点から、導電線の突出部の折れ曲がりを防止することが求められている。
【0005】
本発明は、シート表面から突出した導電線の導電部の折れ曲がりが防止された、異方導電性シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートであって、樹脂からなる基材シートと、前記基材シートの一方の主面から他方の主面へ貫通する複数の導電線と、を備え、前記導電線の少なくとも一方の端部が、前記主面の少なくとも一方から突出した突出部を形成し、前記突出部の側面の全部又は一部は、前記突出部の根元の周囲を構成する前記樹脂が前記主面からせり上がった被覆部によって被覆されている、異方導電性シート。
[2] 前記被覆部が前記突出部の側面を周回している、[1]に記載の異方導電性シート。
[3] 前記被覆部の厚みが、前記突出部の先端へ向けて徐々に薄くなっている、[1]又は[2]に記載の異方導電性シート。
[4] 前記突出部の少なくとも先端がメッキ層を有する、[1]~[3]の何れか一項に記載の異方導電性シート。
[5] 隣接する前記突出部の先端同士の距離が10μm~200μmである、[1]~[4]の何れか一項に記載の異方導電性シート。
[6] 前記一方の主面における前記導電線の配線密度が、25本/mm~10000本/mmである、[1]~[5]の何れか一項に記載の異方導電性シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の異方導電性シートによれば、接続対象であるデバイスに圧接する際の、シート表面から突出した導電線の導電部の折れ曲がりを防止することができる。この結果、異方導電性シートの耐久性が向上するので、繰り返して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一例である異方導電性シート10の斜視図である。
図2図1の異方導電性シート10のII-II断面図である。
図3】異方導電性シート10の突出部Pの先端にメッキ層3が設けられた場合の部分断面図である。
図4】実施例で製造した異方導電性シートの一例を示す部分断面図(a)と、一方の主面のSEM像(b)である。
図5】実施例で製造した異方導電性シートの一例を示す部分断面図(a)と、一方の主面のSEM像(b)である。
図6】実施例で製造した異方導電性シートの一例を示す部分断面図(a)と、一方の主面のSEM像(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、第一電子デバイスの接続端子と、第二電子デバイスの接続端子との間に配置され、これらを電気的に接続するための異方導電性シートである。本発明の異方導電性シートは、樹脂からなる基材シートと、前記基材シートの一方の主面から他方の主面へ貫通する複数の導電線とを備え、前記導電線の少なくとも一方の端部が、前記主面の少なくとも一方から突出した突出部を形成し、前記突出部の側面の全部又は一部は、前記突出部の根元の周囲を構成する前記樹脂が前記主面からせり上がった被覆部によって被覆されている。以下、図面を参照して本発明の実施形態の例を説明する。
【0010】
<異方導電性シートの形態>
図1は、本発明の一例である異方導電性シート10の一方の主面1aを示す。異方導電性シート10は、矩形のシート状であり、その短手方向をα方向、その長手方向をβ方向、その主面に対する垂線方向(すなわちシートの厚さ方向)をγ方向とする。
異方導電性シート10の他方の主面1bは、一方の主面の反対側の面であり、一方の主面と同様の構成である。異方導電性シート10は複数の略円柱状の導電線2からなる導電部とそれ以外の絶縁部とを備え、導電部が島部分で、絶縁部が海部分である海島構造を形成している。各導電線は互いに独立し、絶縁部によって互いの絶縁性が保たれている。各導電線2は、一方の主面1aから他方の主面1bへ貫通する配線を形成している。各導電線2の長さ方向は、一方の主面及び他方の主面に対して、垂直でもよいし、傾いていてもよい。
【0011】
基材シート1を構成する樹脂は、公知の樹脂によって形成されている。例えば、エラストマー、光重合性樹脂、熱重合性樹脂、活性エネルギー線重合性樹脂、触媒重合性樹脂等の公知の硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、未硬化状態で適度な粘性を呈するエラストマーが好ましい。
前記エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化後の寸法変化や反りが生じ難く、圧縮永久歪が小さく、耐熱性が高い、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムは、縮合型、付加型のいずれでもよい。
基材シートを構成する樹脂には、公知の添加剤、例えば樹脂の重合を促す触媒、樹脂同士の架橋を促す架橋剤、抗酸化剤、染料、顔料、充填剤、レベリング剤等が含まれていてもよい。
【0012】
導電線2の材料は、導電性物質であればよく、公知の導電線が適用される。具体的な導電性物質としては、例えば、真鍮、銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、タングステン、ベリリウム銅、りん青銅、ニッケルチタン合金等の金属、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ紡績糸等の炭素材料が挙げられる。
導電線2は、前記導電性物質からなる芯線の外周を被覆する導電性の被覆層を有していてもよい。被覆層の材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅等が挙げられる。芯線の材料と被覆層の材料は互いに異なることが好ましい。
導電線2の直径は、例えば、5μm~50μmとすることができる。ここで、導電線2の直径は前記導電性の被覆層を含む直径である。
導電線2の長さ方向に対して直交する方向の断面の形状は、特に制限されず、略円形、略楕円形、略四角形、その他の多角形等が挙げられる。安定した接続を得る観点から、略円形又は略楕円形であることが好ましい。導電線2の直径は、前記断面を含む最小円の直径である。
異方導電性シート10が有する複数の導電線2の直径、断面形状及び構成材料は、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
異方導電性シート10の平面視の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形、多角形、その他の任意の形状が採用できる。
異方導電性シート10の縦×横のサイズは特に限定されず、例えば、0.5cm×0.5cm~5cm×5cmとすることができる。
異方導電性シート10の厚さは、例えば、50μm以上2000μm以下とすることができる。ここで、異方導電性シート10の厚さは、両主面から突出した導電線2の突出部Pの高さを含む。
異方導電性シート10の形態、サイズ、厚さ等は、各主面にそれぞれ接続する電子デバイスの形状や端子の配置に合わせて適宜設定される。
【0014】
異方導電性シート10の各主面における導電線2の配置は、X列×Y行の2次元アレイ状の配置である。導電線2の配置はこの例に限定されず、任意の配置パターンが採用される。X列×Y行において、例えば、X,Yはそれぞれ独立に10~1000の任意の整数とすることができる。配置パターンは、2次元アレイ状でもよく、ジグザグ状でもよく、その他の任意のパターンでもよく、無作為なランダム配置でもよい。
【0015】
図1及び図2に示すように、異方導電性シート10の各導電線2の一方の端部2a及び他方の端部2bは、基材シート1の一方の主面1a及び他方の主面1bからそれぞれ突出している。主面から突出した部分の全体が突出部Pである。
【0016】
各突出部Pの側面Psの一部は、突出部Pの根元Pzの周囲を構成する、基材シート1の樹脂が各主面からせり上がった被覆部Cによって、被覆されている。突出部Pの側面Psは、略円柱状の導電線2の長さ方向に沿う面であり、導電線2の先端における略円形の頂面及び底面を除いた側面に含まれる。
【0017】
突出部Pの高さh1は、基材シート1の主面を基準として、例えば、1μm~100μmが好ましく、5μm~60μmがより好ましく、10μm~40μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象であるデバイスの接続端子に突出部Pが接触しやすくなり、接続性が向上する。また、突出部Pの柔軟性が高まるので、接続時に突出部Pがデバイスの接続端子を傷付ける恐れが低減する。
上記範囲の上限値以下であると、接続時に突出部Pが折れ曲がることをより一層防止することができる。また、接続時に突出部Pが側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
突出部Pの高さh1は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの高さh1を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pの各々の高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
基材シート1の主面を基準として、被覆部Cの高さh2は、突出部Pの高さh1と同じでもよいし、低くてもよい。高さh1に対する高さh2の比(h2/h1)は、例えば、0.3~1.0が好ましく、0.5~0.95がより好ましく、0.7~0.9がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスの接続端子から導電線2の突出部Pに対して応力が加わる際に、被覆部Cが突出部Pを支持して、突出部Pの折れ曲がりをより効果的に抑制することができる。上記範囲の上限値以下であると、デバイスの接続端子に対する突出部Pの接触がより確実となるので、接続性が向上する。
被覆部Cの高さh2は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの各々について、被覆部Cの最も高い箇所の高さh2を測定した値の平均値として求められる。
複数の突出部Pが有する各々の被覆部Cの高さは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
被覆部Cの突出部Pに対する支持力を向上する観点から、図示の様に、被覆部Cは突出部Pの側面Psを周回していることが好ましい。
被覆部Cに被覆された突出部Pの弾性力を充分に発揮させて、突出部Pが接続対象であるデバイスの接続端子を傷付けることを充分に抑制する観点から、図示の様に、突出部Pの先端(頂面、底面)へ向けて、被覆部Cの厚みが徐々に薄くなっていることが好ましい。ここで「被覆部Cの厚み」は、導電線2の長さ方向に対して直交する向きの被覆部Cの厚みを意味する。被覆部Cの厚みが先端へ向けて徐々に薄くなっており、且つ被覆部Cが側面Psの周囲を周回しているので、被覆部Cは先端へ向けて徐々に縮径している。
被覆部Cの厚みは、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10本の突出部Pの各々について、被覆部Cの外観を観察することにより判断することができる。
より正確を期す場合には、図示の様に導電線2の長さ方向に沿う異方導電性シート10の断面を切り出して、その断面を拡大観察手段で観察し、被覆部Cの厚みを測定して求められる。
複数の突出部Pが有する各々の被覆部Cの厚みは、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
図3に示すように、突出部Pの少なくとも先端は、導電線2が有していてもよい前記導電性の被覆層とは別に、メッキ層3を有していてもよい。メッキ層3は突出部Pの露出した側面Psに設けられていてもよい。突出部Pがメッキ層3を備えることによって、接続対象のデバイスの接続端子に対する接続性を向上させることができる。また、突出部Pの側面Psの少なくとも一部は被覆部Cによって被覆されているので、メッキ層3の形成時に、隣接する突出部P同士をメッキ層がブリッジする(架橋する)ことが防止されている。つまり、メッキ層3が突出部Pの側方へ向けて成長することが、被覆部Cによって抑制される。メッキ層3は、公知方法により形成される。
【0021】
隣接する突出部Pの先端同士の距離L1は、例えば、10μm~200μmが好ましく、20μm~100μmがより好ましく、30μm~60μmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスの接続端子から突出部Pが応力を受けて側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
上記範囲の上限値以下であると、接続対象のデバイスが有する接続端子同士の狭ピッチに対応することが容易になる。
前記距離L1は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、任意に選択した10組の突出部Pの先端の中心同士の距離を測定した値の平均値として求められる。
【0022】
基材シート1の一方の主面1aにおける導電線2の配線密度は、例えば、25本/mm~10000本/mmが好ましく、100本/mm~5000本/mmがより好ましく、300本/mm~2500本/mmがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、接続対象のデバイスが有する接続端子同士の狭ピッチに対応することが容易になる。
上記範囲の上限値以下であると、接続対象のデバイスの接続端子から突出部Pが応力を受けて側方へ反った場合に、反った突出部Pが隣の別の突出部Pへ接触することを防止することができる。
前記配線密度は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、基材シート1の一方の主面を観察して、任意の領域にある配線の本数を数えて、単位面積(mm)当たりの配線の本数に換算することにより求められる。前記「任意の領域」の面積は、5mm角~50mm角の範囲とする。
【0023】
異方導電性シート10の片方の主面において、導電線2が配置された全領域のうち、導電線2の突出部Pに被覆部Cが形成されている領域の割合は、例えば、5~100%が好ましく、50~100%がより好ましく、80~100%がさらに好ましく、95~100%が最も好ましい。
前記割合は、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、基材シート1の任意の主面における導電線2が配置された領域の全体を観察して、最も外側にある導電線2同士を結んだ領域を全体領域として、被覆部Cを有しない導電線2を除外した領域を識別することにより求められる。前記割合は、異方導電性シート10の一方の主面1aと他方の主面1bとで同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
基材シート1の一方の主面1a及び他方の主面1bにおいて、主面の一部の領域が他部の領域よりも高くされていてもよい。つまり、異方導電性シート10の主面の厚さは、シートの全領域にわたって同一であってもよいし、一部の領域が厚くなっていてもよいし、一部の領域が薄くなっていてもよい。
基材シート1の厚さとしては、例えば、0.05mm~2.0mmとすることができる。
基材シート1の厚さは、測定顕微鏡などの拡大観察手段によって、基材シート1の厚さ方向の断面から任意に選択した10箇所の厚さを測定した値の平均値として求められる。
【0025】
<異方導電性シートの製造方法>
突出部P及び被覆部Cを形成する前の異方導電性シートは、公知方法により製造される。例えば、特許文献1に記載の製造方法が挙げられる。
本発明の異方導電性シートは、公知方法で得た異方導電性シートの一方の主面及び他方の主面のうち少なくとも一方に対して、導電線2を融解し難く、主面を構成する樹脂を融解し易い種類のレーザー光を照射することによって突出部Pを形成するとともに、被覆部Cを同時に形成することによって得られる。突出部Pを形成するレーザー照射方法としては、基本的には従来と同様でよく、例えば、特許文献1の記載に基づき、炭酸ガスレーザーを用いる方法が挙げられる。レーザー照射の際に、出力、繰り返し周波数、ビーム径、レーザー走査速度等を適宜調整することにより被覆部Cを形成することができる。
また、被覆部Cの形成を容易にする観点から、レーザー照射中の異方導電性シート及びその周辺の温度を低く保つこと、例えば0~25℃の温度範囲とすることが好ましい。被覆部Cの形成に温度が関与するメカニズムは次のように推測される。一般に、レーザー照射された異方導電性シートの主面は加熱され、主面を構成する樹脂が燃焼したり蒸発したりする。この際に、異方導電性シート自体又はその周辺の温度を前記加熱の温度よりも低く保つことによって、前記樹脂と異なる材料からなり、熱伝導性が前記樹脂よりも高い導電線2の周囲の温度が、導電線2から離れた部分よりも低くなる。そうすると、導電線2の周囲における主面の樹脂の除去が、導電線2から離れた部分の樹脂の除去よりも相対的に遅くなる。この結果、導電線2の突出部Pの周囲に被覆部Cが容易に形成されると考えられる。異方導電性シート自体又はその周辺の温度を低く保つ方法として、例えば、異方導電性シートを金属製のステージに載置する、異方導電性シートの周囲の空気を強制的に換気する等の方法が挙げられる。金属製のステージは、さらにステージ表面を冷却する冷却機構を備えていてもよい。冷却機構としては、例えば、水、空気等の冷媒をステージ表面の近傍に流通させる機構が挙げられる。
【0026】
[異方導電性シートの使用方法]
異方導電性シート10の用途としては、公知の圧接型コネクタと同じ用途が挙げられる。電子デバイスの端子の導通試験を行う検査用途の他、例えば、電子機器内に備えられた複数の電子デバイス同士を接続する等のいわゆる実装用途にも適用できる。
【実施例0027】
特許文献1に記載された方法を参照して以下に説明するように、突出部Pを形成する前の異方導電性シート(異方導電性シート前駆体)を得た。
まず、ポリエステルフィルムの上に未硬化のシリコーンゴムコンパウンド(信越化学工業社製)からなる厚さ約0.03mmの塗膜を形成し、この塗膜上に直径40μm程度の金属線を0.1mm程度の間隔でそれぞれ平行に配置した。これらの金属線を覆う、別のシリコーンゴムコンパウント層を形成し、加熱硬化することにより、コアシートを得た。
次に、複数枚のコアシートを準備して、互いの金属線の長さ方向を平行に揃えて積層することにより、積層ブロック体を得た。続いて、積層ブロック体が有する金属線の長さ方向に対して直交する向きで積層ブロック体をスライスカットすることにより、突出部Pを形成する前の異方導電性シートを得た。
【0028】
次に、金属製ステージに密着させた異方導電性シート前駆体の主面に対して炭酸ガスレーザーを一様に照射し、主面の表層のシリコーンゴムを燃焼させてエッチングすることにより、突出部P及び被覆部Cを形成し、本発明の異方導電性シートを製造した。
レーザー照射の時間等を変更して製造した複数の異方導電性シートについて、各例の主面のSEM像を図4~6に示す。
【0029】
図4(a)は、1つの突出部P及び被覆部Cの厚さ方向の断面図であり、図4(b)が一方の主面のSEM像である。本例では、突出部Pの側面の周囲を周回する被覆部Cが形成されており、突出部Pの高さh1と被覆部Cの高さh2の比(h2/h1)は0.9であった。被覆部Cは突出部Pの頂面に向けて縮径していた。突出部Pの頂面の一部には、シリコーンゴムの燃焼カスが付着していたが、これはアルコールで洗浄することにより、容易に取り除けた。
【0030】
図5(a)は、1つの突出部P及び被覆部Cの厚さ方向の断面図であり、図5(b)が一方の主面のSEM像である。本例では、突出部Pの側面の周囲を周回する被覆部Cが形成されており、突出部Pの高さh1と被覆部Cの高さh2の比(h2/h1)は0.5であった。被覆部Cは突出部Pの頂面に向けて縮径していた。突出部Pの頂面は、切り出し時の刃の入れ方が図4の場合と異なるため、平坦ではなかった。
【0031】
図6(a)は、1つの突出部P及び被覆部Cの厚さ方向の断面図であり、図6(b)が一方の主面のSEM像である。SEM像は、公知の無電解メッキ法により、突出部Pの先端にメッキ層3を形成した後に撮像した。本例では、突出部Pの側面の周囲を周回する被覆部Cが形成されており、突出部Pの高さh1と被覆部Cの高さh2の比(h2/h1)は0.9であった。被覆部Cは突出部Pの頂面に向けて縮径していた。突出部Pの側面は被覆部Cによって被覆されているので、メッキ層3は突出部Pの側方へ成長せず、隣接する突出部P同士をブリッジすることが防止されていた。
【符号の説明】
【0032】
1…基材シート、1a…一方の主面、1b…他方の主面、2…導電線、2a…導電線の端
部、2b…導電線の端部、3…メッキ層、10…異方導電性シート、C…被覆部、P…突
出部、Ps…突出部の側面、Pz…突出部の根元
図1
図2
図3
図4
図5
図6