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特開2022-172276抗HLA-DQ2.5抗体およびセリアック病の治療のためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172276
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】抗HLA-DQ2.5抗体およびセリアック病の治療のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221108BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221108BHJP
   C07K 16/16 20060101ALI20221108BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221108BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221108BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221108BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/46 ZNA
C07K16/16
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139889
(22)【出願日】2022-09-02
(62)【分割の表示】P 2021151709の分割
【原出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2020157873
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】井川 佑理
(72)【発明者】
【氏名】大倉 有生
(72)【発明者】
【氏名】溝呂木 暁彦
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗HLA-DQ2.5抗体およびセリアック病の治療のためのその使用に関する。
【解決手段】本発明は、改変されている抗HLA-DQ2.5抗体を提供する。本発明の抗HLA-DQ2.5抗体は、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対して結合活性を有するが、HLA-DQ2.5と無関係なペプチドとによって形成された複合体に対しては結合活性を実質的に有しない。さらに本発明の抗体は、グルテンペプチドによるT細胞活性化に対する阻害効果を有することが示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の抗体可変領域を含む第1の抗原結合部分ならびに第3および第4の抗体可変領域を含む第2の抗原結合部分を含む、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成される複合体に結合する多重特異性抗原結合分子であって、以下の(1)~(14)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(2) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(3) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(4) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(5) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(6) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(7) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(8) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(9) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(10) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(11) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(12) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(13) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(14) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域。
【請求項2】
以下の(1)~(14)からなる群より選択される4本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成される複合体に結合する多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(2) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(3) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(4) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(5) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(6) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(7) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(8) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(9) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(10) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(11) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(12) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(13) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(14) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖。
【請求項3】
二重特異性抗体である、請求項1または2記載の多重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の多重特異性抗原結合分子をコードする、核酸。
【請求項5】
請求項4記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項6】
請求項4記載の核酸または請求項5記載のベクターを含む、細胞。
【請求項7】
前記多重特異性抗原結合分子が産生されるように請求項6記載の細胞を培養する工程を含む、多重特異性抗原結合分子を産生する方法。
【請求項8】
前記細胞の培養物から前記多重特異性抗原結合分子を回収する工程をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項記載の多重特異性抗原結合分子、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
セリアック病の治療および/または予防における使用のための薬学的組成物である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
医薬品の製造における、請求項1~3のいずれか一項記載の多重特異性抗原結合分子の使用。
【請求項12】
前記医薬品が、セリアック病の治療および/または予防のための医薬品である、請求項11記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HLA-DQ2.5抗体およびセリアック病の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セリアック病(celiac diseaseまたはcoeliac disease)は、遺伝的感受性患者においてグルテンの摂取が小腸への損傷を引き起こす自己免疫疾患である(非特許文献1~5)。欧米の人口の約1%、すなわち米国および欧州連合では800万人がセリアック病に罹患していると考えられる;しかしながら、1940年代にこの疾患が認識されて以降、著しい治療上の進歩は達成されていない。
主要組織適合性複合体(MHC)クラスIIに属するヒト白血球抗原(HLA)は、HLA-DR、HLA-DPおよびHLA-DQ分子、例えばHLA-DQ2.5アイソフォーム(本明細書において、以降「HLA-DQ2.5」と呼ぶ)を含み、これらは細胞表面上でα鎖とβ鎖から構成されるヘテロ二量体を形成している。セリアック病患者の大多数(>90%)はHLA-DQ2.5ハプロタイプの対立遺伝子を有している(非特許文献6)。このアイソフォームは、グルテンペプチドに対して、より強いアフィニティを有すると考えられる。他のアイソフォームと同様に、HLA-DQ2.5は、外因性源に由来するプロセシングされた抗原を、T細胞上のT細胞受容体(TCR)に提示する。セリアック病患者では、パンなどの高グルテン食品の消化の結果として、免疫原性のグルテンペプチド、例えばグリアジンペプチドが形成される(非特許文献2)。該ペプチドは小腸上皮を通って粘膜固有層に輸送され、トランスグルタミナーゼ2(TG2)のような組織トランスグルタミナーゼによって脱アミド化される。脱アミド化されたグリアジンペプチドは抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされ、APCがそれらをHLA-DQ2.5にロードする。ロードされたペプチドはHLA-DQ2.5拘束性T細胞に提示され、自然免疫反応と適応免疫反応を活性化する。これは、小腸粘膜の炎症性損傷ならびに様々なタイプの胃腸障害、栄養欠乏症、および全身症状を含む症状を引き起こす(非特許文献8、9、および10)。抗HLA DQ中和抗体はセリアック病患者に由来するT細胞のグルテンペプチド依存性活性化を阻害することが報告されている(非特許文献7)。
現在実施可能なセリアック病治療法は、生涯にわたるグルテンフリー食(GFD)の順守である。しかし、現実的には、GFDを用いたとしてもグルテン曝露を完全に排除することは困難である。これらの患者に対する許容グルテン量はわずか約10~50mg/日である(非特許文献11)。GFD製造では二次汚染が広範囲に生じる可能性があり、GFDを十分に順守している患者においてさえも、微量のグルテンがセリアック病の症状を引き起こすことがある。このような意図しないグルテン曝露のリスクの存在下で、GFDに対する補助療法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】N Engl J Med 2007; 357:1731-1743
【非特許文献2】J Biomed Sci. 2012; 19(1): 88
【非特許文献3】N Engl J Med 2003; 348:2517-2524
【非特許文献4】Gut 2003; 52:960-965
【非特許文献5】Dig Dis Sci 2004; 49:1479-1484
【非特許文献6】Gastroenterology 2011; 141:610-620
【非特許文献7】Gut 2005; 54:1217-1223
【非特許文献8】Gastroenterology 2014; 146:1649-58
【非特許文献9】Nutrients 2013 Oct 5(10): 3975-3992
【非特許文献10】J Clin Invest. 2007; 117(1):41-49
【非特許文献11】Am J Clin Nutr 2007; 85: 160-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
技術的課題
補助療法を必要とする上記の状況下において、本発明は抗HLA-DQ2.5抗原結合分子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題の解決
本発明の抗原結合分子は改変されており、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された2つ以上の複合体に結合することができる。
【0006】
より具体的には、本発明は以下を提供する。
[1] (i) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第1の抗原結合部分;および
(ii) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第2の抗原結合部分
を含む多重特異性抗原結合分子であって、
該抗原結合分子が、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとの2つ以上の複合体に結合し、
第1の抗原結合部分が結合する複合体中のグルテンペプチドの少なくとも1つが、第2の抗原結合部分が結合する複合体中のグルテンペプチドの少なくとも1つとは異なり;ならびに
該抗原結合分子が、HLA-DQ2.5陽性PBMC B細胞およびHLA-DQ2.5を発現するBa/F3細胞のいずれかまたは両方に対して結合活性を実質的に有せず、
該抗原結合分子が、ヒト化されており、かつ
該多重特異性抗原結合分子における第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖中の1つまたは複数のアミノ酸が、改変されている、
多重特異性抗原結合分子。
[1a] 前記抗原結合分子が、HLA-DQ2.2を発現するBa/F3細胞に対して結合活性を実質的に有しない、[1]の多重特異性抗原結合分子。
[1-1] 多重特異性抗原結合分子における第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖中の1つまたは複数のアミノ酸が、置換されている、[1]または[1a]の多重特異性抗原結合分子。
[1-2] 重鎖の可変領域における少なくとも1つのアミノ酸置換;重鎖の定常領域における少なくとも1つのアミノ酸置換;軽鎖の可変領域における少なくとも1つのアミノ酸置換;および軽鎖の定常領域における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、[1-1]の多重特異性抗原結合分子。
[2] グルテンペプチドが、セリアック病に関連する免疫優性ペプチドである、[1]~[1-2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[3] グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドからなる群より選択される、[1]~[2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[3-1] グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個、または全てである、[1]~[2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[3-2] グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドからなる群より選択される、[1]~[2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[3-3] グルテンペプチドが、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18個、または全てである、[1]~[2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[4] 無関係なペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、該無関係なペプチドが、CLIPペプチド、B型肝炎ウイルス1ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)ペプチド、およびチロペルオキシダーゼペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのペプチドである、[1]~[3-3]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[4-1] 無関係なペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、該無関係なペプチドが、CLIPペプチド、B型肝炎ウイルス1ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチド、およびチロペルオキシダーゼペプチドの全てである、[1]~[3-3]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[5] HLA-DP、HLA-DR、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、HLA-DQ7.5、およびHLA-DQ8に対して結合活性を実質的に有しない、[1]~[4-1]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[6] (i)HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用、および/または、(ii)HLA-DQ2.2/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.2/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする、[1]~[5]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[6-2] グルテンペプチドが、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、γ3グリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4dグリアジンペプチド、およびBCホルデインペプチドからなる群より選択される、[6]の多重特異性抗原結合分子。
[7] 前記ヒト化および改変の前と比較して、前記抗原結合分子が、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対して増強された結合活性を有する、[1]~[6-2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[8] 前記ヒト化および改変の前と比較して、前記抗原結合分子が、グルテンペプチドに対して増強された交差反応性を有する、[1]~[7]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[8-1] グルテンペプチドが、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、およびγ4dグリアジンペプチドである、[8]の多重特異性抗原結合分子。
[9] 抗原結合分子の重鎖および軽鎖における以下の(a)~(d)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、または全てのアミノ酸残基セットが、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基である、[1]~[8-1]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子:
(a) EUナンバリングに従って175位である、重鎖定常領域(CH1)中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位である、軽鎖定常領域(CL)中のアミノ酸残基、
(b) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って160位である、CL中のアミノ酸残基、
(c) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基、
(d) EUナンバリングに従って147位および175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基。
[10] さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基が、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基である、[9]の多重特異性抗原結合分子。
[11] 互いに静電気的に反発するアミノ酸残基が、以下の(a)および(b)のアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つまたは2つのアミノ酸残基セットである、[10]の多重特異性抗原結合分子:
(a) Kabatナンバリングに従って39位である、重鎖可変領域中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って38位である、軽鎖可変領域中のアミノ酸残基、
(b) Kabatナンバリングに従って45位である、重鎖可変領域中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って44位である、軽鎖可変領域中のアミノ酸残基。
[12] 互いに静電気的に反発するアミノ酸残基が、以下の(X)または(Y)のいずれかのセットに含まれるアミノ酸残基から選択される、[9]~[11]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子:
(X) グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y) リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
[13] 天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低下した結合アフィニティを示すFcドメインをさらに含む、[9]~[12]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[14] Fcドメインが、235位のArgおよび236位のArgを含み、アミノ酸位置が、EUナンバリングに従って番号付けされている、[13]の多重特異性抗原結合分子。
[15] Fcドメインが、安定な会合が可能な第1のFc領域サブユニットと第2のFc領域サブユニットから構成される、[13]または[14]の多重特異性抗原結合分子。
[16] Fcドメインが、以下の(e1)または(e2)を含み、アミノ酸位置が、EUナンバリングに従って番号付けされている、[15]の多重特異性抗原結合分子:
(e1) 349位のCys、366位のSer、368位のAla、および407位のValを含む第1のFc領域サブユニット、ならびに354位のCysおよび366位のTrpを含む第2のFc領域;
(e2) 439位のGluを含む第1のFc領域サブユニット、ならびに356位のLysを含む第2のFc領域。
[17] Fcドメインが、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcRnに対してより強いFcRn結合アフィニティをさらに示す、[13]~[16]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[18] 第1のおよび/または第2のFc領域サブユニットが、428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGluを含み、アミノ酸位置が、EUナンバリングに従って番号付けされている、[16]の多重特異性抗原結合分子。
[19] 以下の(i)~(xii)のアミノ酸残基の1つまたは複数を含む、[1]~[8]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子:
(i) 重鎖定常領域中の175位(EUナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(ii) 重鎖定常領域中の147位(EUナンバリング)のグルタミン酸;
(iii) 軽鎖定常領域中の131位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(iv) 軽鎖定常領域中の160位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(v) 重鎖定常領域中の235位(EUナンバリング)のアルギニン;
(vi) 重鎖定常領域中の236位(EUナンバリング)のアルギニン;
(vii) 重鎖定常領域中の356位(EUナンバリング)のリジン;
(viii) 重鎖定常領域中の428位(EUナンバリング)のロイシン;
(ix) 重鎖定常領域中の434位(EUナンバリング)のアラニン;
(x) 重鎖定常領域中の438位(EUナンバリング)のアルギニン;
(xi) 重鎖定常領域中の439位(EUナンバリング)のグルタミン酸;
(xii) 重鎖定常領域中の440位(EUナンバリング)のグルタミン酸。
[19-1] 以下を含む二重特異性抗体である、[19]の多重特異性抗原結合分子:
175位(EUナンバリング)のリジン、235位(EUナンバリング)のアルギニン、236位(EUナンバリング)のアルギニン、428位(EUナンバリング)のロイシン、434位(EUナンバリング)のアラニン、438位(EUナンバリング)のアルギニン、439位(EUナンバリング)のグルタミン酸、および440位(EUナンバリング)のグルタミン酸を含む第1の重鎖;
131位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸および160位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸を含む第1の軽鎖;
147位(EUナンバリング)のグルタミン酸、175位(EUナンバリング)のグルタミン酸、235位(EUナンバリング)のアルギニン、236位(EUナンバリング)のアルギニン、356位(EUナンバリング)のリジン、428位(EUナンバリング)のロイシン、434位(EUナンバリング)のアラニン、438位(EUナンバリング)のアルギニン、および440位(EUナンバリング)のグルタミン酸を含む第2の重鎖;ならびに
131位(Kabatナンバリング)のリジンおよび160位(Kabatナンバリング)のリジンを含む第2の軽鎖。
[19-2] 第1の重鎖が、419位(EUナンバリング)のグルタミン酸および445位(EUナンバリング)のプロリン、ならびに446位および447位(EUナンバリング)でのアミノ酸欠失をさらに含み;かつ
第2の重鎖が、196位(EUナンバリング)のリジン、445位(EUナンバリング)のプロリン、ならびに446位および447位(EUナンバリング)でのアミノ酸欠失をさらに含む、
[19-1]の多重特異性抗原結合分子。
[19-3] 第1の重鎖が、16位(Kabatナンバリング)のグリシン、32位(Kabatナンバリング)のアラニン、61位(Kabatナンバリング)のリジン、35a位(Kabatナンバリング)のバリン、50位(Kabatナンバリング)のアラニン、64位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、73位(Kabatナンバリング)のスレオニン、95位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、および102位(Kabatナンバリング)のバリンをさらに含み;
第1の軽鎖が、28位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、55位(Kabatナンバリング)のチロシン、56位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはチロシン、92位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、94位(Kabatナンバリング)のバリン、および95a位(Kabatナンバリング)のアラニンをさらに含み;
第2の重鎖が、28位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、30位(Kabatナンバリング)のアラニンまたはグルタミン酸、31位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、32位(Kabatナンバリング)のトリプトファン、34位(Kabatナンバリング)のフェニルアラニン、35位(Kabatナンバリング)のメチオニン、35a位(Kabatナンバリング)のセリン、50位(Kabatナンバリング)のセリン、61位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはグリシン、64位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、および65位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸をさらに含み;かつ
第2の軽鎖が、25位(Kabatナンバリング)のスレオニン、54位(Kabatナンバリング)のリジン、56位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、67位(Kabatナンバリング)のロイシン、79位(Kabatナンバリング)のグルタミン、および94位(Kabatナンバリング)のリジンをさらに含む、
[19-1]または[19-2]の多重特異性抗原結合分子。
[19a] グルテンペプチドそれ自体に対しては結合活性を実質的に有しない、[1]~[19-3]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[20] 第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(a1)~(a3)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(a1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(a2) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(a3) (a1)または(a2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(a1)または(a2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
[21] 第2の抗原結合部分が、以下の(b1)~(b8)のいずれか1つを含む、[20]の多重特異性抗原結合分子:
(b1) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b2) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b3) 配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b4) 配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b5) 配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b6) 配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b7) 配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(b8) (b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[21-2] 第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第2の抗原結合部分が、以下の(b1)~(b8)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(b1) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b2) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b3) 配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b4) 配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b5) 配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b6) 配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(b7) 配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(b8) (b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
[22] 第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(c1)~(c3):
(c1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(c2) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(c3) (c1)または(c2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(c1)または(c2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列
のいずれか1つを含み、
第2の抗原結合部分が、以下の(d1)~(d8):
(d1) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d2) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d3) 配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d4) 配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d5) 配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d6) 配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d7) 配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(d8) (d1)~(d7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(d1)~(d7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
[22-2] 第1および第2の抗体可変領域を含む第1の抗原結合部分ならびに第3および第4の抗体可変領域を含む第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、以下の(1)~(15)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(2) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(3) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(4) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(5) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(6) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(7) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(8) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(9) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(10) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(11) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(12) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(13) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(14) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域;配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[23] 第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分に含まれる抗体可変領域が、ヒト抗体フレームワークまたはヒト化抗体フレームワークを含む、[20]~[22-2]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子。
[24] 第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(e1)~(e3)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(e1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;
(e2) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(e3) (e1)または(e2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(e1)または(e2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
[25] 第2の抗原結合部分が、以下の(f1)~(f8)のいずれか1つを含む、[24]の多重特異性抗原結合分子:
(f1) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f2) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f3) 配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f4) 配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f5) 配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f6) 配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f7) 配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(f8) (f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[26] 第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(e1)~(e3):
(e1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;
(e2) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(e3) (e1)または(e2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(e1)または(e2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
のいずれか1つを含み、かつ
第2の抗原結合部分が、以下の(f1)~(f8):
(f1) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f2) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f3) 配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f4) 配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f5) 配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f6) 配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f7) 配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(f8) (f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子。
[26-2] 第1および第2の抗体可変領域を含む第1の抗原結合部分ならびに第3および第4の抗体可変領域を含む第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、以下の(1)~(15)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(2) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(3) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(4) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(5) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(6) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(7) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(8) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(9) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(10) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(11) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(12) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(13) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(14) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[27] 以下の(A1)~(A3)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子:
(A1) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;
(A2) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;ならびに
(A3) (A1)または(A2)に記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(A1)または(A2)に記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
[27-2] 以下の(A1)~(A3)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子:
(A1) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;
(A2) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;ならびに
(A3) (A1)または(A2)に記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(A1)または(A2)に記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
[28] 以下の(B1)~(B8)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせをさらに含む、[27]または[27-2]の多重特異性抗原結合分子:
(B1) 配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B2) 配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B3) 配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B4) 配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B5) 配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B6) 配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B7) 配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(B8) (B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[28-2] 以下の(B1)~(B8)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせをさらに含む、[27]または[27-2]の多重特異性抗原結合分子:
(B1) 配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B2) 配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B3) 配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B4) 配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B5) 配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B6) 配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B7) 配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(B8) (B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[29] 以下の(1)~(15)からなる群より選択される4本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(2) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(3) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(4) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(5) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(6) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(7) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(8) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(9) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(10) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(11) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(12) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(13) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(14) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[29-2] 以下の(1)~(15)からなる群より選択される4本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子:
(1) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(2) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(3) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(4) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(5) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(6) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(7) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(8) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(9) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(10) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(11) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(12) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(13) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(14) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
[29a] 以下の(i)~(iii)のいずれか1つの組み合わせ:
(i) [20]の(a1)~(a3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および[21]の(b1)~(b8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子;
(ii) [24]の(e1)~(e3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および[25]の(f1)~(f8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子;ならびに
(iii) [27]または[27-2]の(A1)~(A3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および[28]または[28-2]の(B1)~(B8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子。
[30] [1]~[29]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子をコードする、核酸。
[31] [30]の核酸を含む、ベクター。
[32] [30]の核酸または[31]のベクターを含む、細胞。
[33] 前記多重特異性抗原結合分子が産生されるように[32]の細胞を培養する工程を含む、多重特異性抗原結合分子を産生する方法。
[34] 前記細胞の培養物から前記多重特異性抗原結合分子を回収する工程をさらに含む、[33]の方法。
[35] [1]~[29]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子または[29a]の組み合わせ、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[36] セリアック病の治療および/または予防における使用のための薬学的組成物である、[35]の組成物。
[37] 医薬品の製造における、[1]~[29]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子または[29a]の組み合わせの使用。
[38] 前記医薬品が、セリアック病の治療および/または予防のための医薬品である、[37]の使用。
[39] セリアック病を有する個体を治療する方法であって、[1]~[29]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子または[29a]の組み合わせの有効量を該個体に投与する工程を含む、方法。
[40] 少なくとも[1]~[29]のいずれか1つの多重特異性抗原結合分子または[29a]の組み合わせ、および使用説明書を含む、セリアック病の治療および/または予防における使用のためのキット。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1-1】図1-1は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05マイクログラム(μg)/mLで試験し、対照のDQN0139bb(DQN0139bb-SG181)(WO2018/155692)およびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。グルテンペプチドの示される名称において、「a」、「g」、および「w」は、それぞれ「α」、「γ」、および「ω」を意味する。
図1-2】図1-2は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-3】図1-3は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-4】図1-4は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-5】図1-5は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-6】図1-6は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-7】図1-7は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-8】図1-8は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-9】図1-9は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-10】図1-10は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-11】図1-11は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1251/L0605-F6)の結合の結果を示す(抗体は、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した;(#) HLA-DQ2.5およびHLA-DQ2.5/hCLIPについては、抗体を0.313μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、20μg/mLで試験した)。
図1-12】図1-12は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6)の結合の結果を示す(抗体は、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した;(#) HLA-DQ2.5およびHLA-DQ2.5/hCLIPについては、抗体を0.313μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、20μg/mLで試験した)。
図1-13】図1-13は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対する抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6)の結合の結果を示す(抗体は、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した;(#) HLA-DQ2.5およびHLA-DQ2.5/hCLIPについては、抗体を0.313μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、20μg/mLで試験した)。
図1-14】図1-14は、HLA-DP、DR、DQ5.1、およびDQ6.3に対する抗HLA-DQ抗体(バリアント)の結合の結果を示す(抗体は全て、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した)。
図1-15】図1-15は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対するDQN0139bbの結合の結果を示す(対照のDQN0139bbを、1μg/mLで試験した)。
図1-16】図1-16は、HLAクラスIIを発現するBa/F3細胞株に対するIC17dKの結果を示す(対照のIC17dKを、1μg/mLで試験した)。
図2図2は、PBMC由来のCD19+ B細胞に対する抗体結合の結果を示す(抗体は、0.05μg/mLで試験し、対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、1μg/mLで試験した;(#) HLA-DQ2.5およびHLA-DQ2.5-CLIPについては、抗体を0.313μg/mLで試験し;対照のDQN0139bbおよびIC17dKは、20 ug/mLで試験した)。
図3-1】図3-1は、HLA-DQ2.5/α1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-2】図3-2は、HLA-DQ2.5/α2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-3】図3-3は、HLA-DQ2.5/α1bグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-4】図3-4は、HLA-DQ2.5/ω1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-5】図3-5は、HLA-DQ2.5/ω2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-6】図3-6は、HLA-DQ2.5/BCホルデイン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-7】図3-7は、HLA-DQ2.5/γ1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-8】図3-8は、HLA-DQ2.5/γ2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-9】図3-9は、HLA-DQ2.5/γ3グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図3-10】図3-10は、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-1】図4-1は、HLA-DQ2.5/α1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-2】図4-2は、HLA-DQ2.5/α2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-3】図4-3は、HLA-DQ2.5/α1bグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-4】図4-4は、HLA-DQ2.5/ω1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-5】図4-5は、HLA-DQ2.5/ω2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-6】図4-6は、HLA-DQ2.5/BCホルデイン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-7】図4-7は、HLA-DQ2.5/γ1グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-8】図4-8は、HLA-DQ2.5/γ2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-9】図4-9は、HLA-DQ2.5/γ3グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図4-10】図4-10は、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図5-1】図5-1は、33merグリアジンにより媒介されるHLA-DQ2.2/α1aグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化を示す。
図5-2】図5-2は、33merグリアジンにより媒介されるHLA-DQ2.2/α2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化を示す。
図5-3】図5-3は、HLA-DQ2.2/α1aグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
図5-4】図5-4は、HLA-DQ2.2/α2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の阻害効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
態様の説明
本明細書に記載または言及される技術および手順は、一般的によく理解されており、例えば以下に記載の広く利用される方法論などの従来の方法論を用いて当業者により常用されている:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984);Methods in Molecular Biology, Humana Press;Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press;Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987);Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press;Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997);Antibodies (P. Finch, 1997);Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989);Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999);The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0009】
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
【0010】
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
【0011】
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
【0012】
用語「抗原結合部分」または「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部または全部に特異的に結合する、かつそれに対して相補性である区域を含む、抗体の一部のことを言う。抗原結合部分/ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供され得る。好ましくは、抗原結合部分/ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を両方とも含有する。
【0013】
用語「抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)」は、充分なアフィニティでHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された1つもしくは複数の複合体と結合することのできる抗原結合分子(抗体)であって、その結果その抗体がHLA-DQ2.5を標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗原結合分子(抗体)のことをいう。一態様において、無関係な抗原への抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により測定したとき、抗体のHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体への結合の約10%未満である。特定の態様において、HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体に対して「結合活性」を有する抗体は、≦1マイクロモル(μM)、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0014】
本明細書で使用する用語「抗原結合分子」は、抗原結合部位を含む任意の分子または抗原への結合活性を有する任意の分子のことをいい、さらに、約5アミノ酸以上の長さを有するペプチドまたはタンパク質などの分子のことをいうことがある。ペプチドおよびタンパク質は生物由来のものに限定されず、例えば、それらは人工的に設計された配列から産生されたポリペプチドであり得る。それらは、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、組換えポリペプチドなどのいずれであってもよい。また、足場としてα/βバレルなどの既知の安定した立体構造を含む足場分子(ここで、該分子の一部は抗原結合部位になる)も、本明細書に記載の抗原結合分子の一態様である。いくつかの態様において、「抗原結合分子」は抗体である。本明細書において用語「抗原結合分子」および「抗体」は最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および、所望の抗原結合活性を示す限り抗体フラグメントを含むがこれらに限定されない、さまざまな抗体構造を包含する。いくつかの態様において、該抗体は多重特異性抗体である。いくつかの態様において、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。
【0015】
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0016】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原へする結合を50%以上ブロックする抗体のことをいい、また逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原へする結合を50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
【0017】
「自己免疫疾患」は、その個体自身の組織から生じかつその個体自身の組織に対して向けられる非悪性疾患または障害のことをいう。本明細書で、自己免疫疾患は、悪性またはがん性の疾患または状態を明確に除外するものであり、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病 (acute lymphoblastic leukemia: ALL)、慢性リンパ球性白血病 (chronic lymphocytic leukemia: CLL)、ヘアリー細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病を除外する。自己免疫疾患または障害の例は、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:セリアック病、乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症性反応;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する反応(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;adult respiratory distress syndrome: ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;例えば湿疹および喘息ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う他の状態などのアレルギー性状態;アテローム硬化;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus: SLE) (ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);糖尿病(例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、および血管炎において見られるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫反応;悪性貧血(アジソン病);白血球の漏出を伴う疾患;中枢神経系 (central nervous system: CNS) 炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症またはクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原‐抗体複合体介在性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート‐イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性ニューロパシー;免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura: ITP)または自己免疫性血小板減少症。
【0018】
用語「セリアック病」は、食品に含まれるグルテンを摂取した時に小腸での損傷によって引き起こされる遺伝性の自己免疫疾患のことをいう。セリアック病の症状には、腹痛、下痢、胃食道逆流などの胃腸障害、ビタミン欠乏、ミネラル欠乏、疲労感および不安うつ病などの中枢神経系(CNS)の症状、骨軟化症および骨粗しょう症などの骨の症状、皮膚炎などの皮膚の症状、貧血およびリンパ球減少症などの血液の症状、ならびに、不妊症、性腺機能低下症、および子供の成長障害と低身長などの他の症状が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
【0020】
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
【0021】
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
【0022】
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(残基Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
【0023】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0024】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
【0025】
本明細書では、用語「グルテン」は、小麦および他の関連穀物において見出される、プロラミンと呼ばれる貯蔵タンパク質の複合物のことを集合的に指す。腸管内腔において、グルテンはいわゆるグルテンペプチドへと分解される。グルテンペプチドには、コムギ由来のグリアジン、オオムギ由来のホルデイン、およびライムギ由来のセカリン、およびカラスムギ由来のアベニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
セリアック病において、グルテンペプチドはT細胞により認識される抗原性ペプチドであって、この病気の原因となる。ところで、免疫優性(immune dominance)とは、免疫応答が比較的少数の抗原性ペプチドによって主に引き起こされる現象である。そのような抗原性ペプチドは「免疫優性ペプチド」と呼ばれる。セリアック病では、そのような免疫優性ペプチドには、例えば、α1グリアジン(「α1aグリアジン」とも呼ばれ得る)およびα2グリアジン(いずれも33merグリアジンの配列に含まれる)、ならびに、ω1グリアジン、ω2グリアジン、およびBCホルデイン(合計5種のペプチド)が含まれる(Science Translational Medicine 21 Jul 2010:Vol. 2, Issue 41, pp. 41ra51)。あるいは、免疫優性ペプチドには、α1グリアジン、α2グリアジン、ω1グリアジン、ω2グリアジン、BCホルデイン、γ1グリアジン、およびγ2グリアジン(合計7種のペプチド)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書では、そのような免疫優性ペプチドを「セリアック病に関連する免疫優性ペプチド」と呼ぶことがある。それらがセリアック病に優性に関連している限り、該ペプチドの種類と総数は特に限定されない。
【0027】
本明細書で使用する語句「結合活性が実質的にない」は、非特異的結合またはバックグラウンド結合を含むが特異的結合を含まない結合レベルで、目的でない抗原に結合する抗体の活性のことをいう。言い換えれば、そのような抗体は、目的でない抗原に対して「特異的/有意な結合活性を有しない」。特異性は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。上記の非特異的結合またはバックグラウンド結合のレベルは、ゼロであってもよく、ゼロではないがゼロに近くてもよく、または当業者が技術的に無視するに足るほど非常に低くてもよい。例えば、当業者が、適切な結合アッセイにおいて抗体と目的でない抗原との間の結合についていかなる有意な(または比較的強い)シグナルも検出または観察できない場合、該抗体は、目的でない抗原に対して「結合活性を実質的に有しない」、または「特異的/有意な結合活性を有しない」と言える。あるいは、「結合活性が実質的にない」または「特異的/有意な結合活性がない」は、(目的でない抗原に)「特異的に/有意に/実質的に結合しない」と言い換えることができる。時には、「結合活性がない」という語句は、当技術分野では「結合活性が実質的にない」または「特異的/有意な結合活性がない」という語句と実質的に同じ意味を有する。
【0028】
本明細書において、「HLA-DR/DP」は、「HLA-DRおよびHLA-DP」または「HLA-DRまたはHLA-DP」を意味する。これらのHLAは、ヒトにおけるMHCクラスII遺伝子座上の対応するハプロタイプの対立遺伝子によってコードされるMHCクラスII分子である。「HLA-DQ」は、HLA-DQ2.5、HLA-DQ7.5、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、およびHLA-DQ8を含むHLA-DQアイソフォームのことを集合的に指す。本発明において、HLA-DQ2.5に加えて、HLA-DQ分子は、これらに限定されるものではないが、HLA-DQ2.2、HLA-DQ2.3、HLA-DQ4.3、HLA-DQ4.4、HLA-DQ5.1、HLA-DQ5.2、HLA-DQ5.3、HLA-DQ5.4、HLA-DQ6.1、HLA-DQ6.2、HLA-DQ6.3、HLA-DQ6.4、HLA-DQ6.9、HLA-DQ7.2、HLA-DQ7.3、HLA-DQ7.4、HLA-DQ7.5、HLA-DQ7.6、HLA-DQ8、HLA-DQ9.2、およびHLA-DQ9.3などの、公知のサブタイプ(アイソフォーム)のHLA-DQ分子を含む。同様に、「HLA-DR(DP)」はHLA-DR(DP)アイソフォームのことをいう。
【0029】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された「細胞」(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
【0030】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
【0031】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。当該フレームワークを指すために、用語「ヒト抗体フレームワーク」が使用されてもよい。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
【0032】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
【0033】
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
一態様において、HVR残基は本明細書において示されたものを含む。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
【0034】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0035】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様において、個体または被験体は、ヒトである。
【0036】
本発明において、HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、およびHLA-DQ7.5などのHLA-DQ分子に対する抗HLA-DQ2.5抗体の結合を評価するときに、上記で言及された適切なHLA-DQ分子と一緒にCLIPペプチドを用いてもよい。
【0037】
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
【0038】
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
【0039】
「抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)をコードする単離された核酸」(また、単に「抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)をコードする核酸」とも呼ばれる)は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
【0040】
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作製されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0041】
「裸抗体」は、異種の部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
【0042】
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
【0043】
用語「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」には、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質が含まれる。各ヌクレオチドは、塩基、具体的にはプリンまたはピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)またはウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、およびリン酸基で構成されている。多くの場合、核酸分子は塩基の配列によって記述され、ここで、これらの塩基は核酸分子の一次構造(線形構造)を表している。塩基の配列は通常、5'から3'へ表される。本明細書では、核酸分子という用語は、例えば相補的DNA(cDNA)およびゲノムDNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNAまたはRNAの合成形態、およびこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は線状または環状であり得る。さらに、核酸分子という用語は、センス鎖とアンチセンス鎖の両方、ならびに一本鎖および二本鎖形態を含む。さらに、本明細書に記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドまたは天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。天然に存在しないヌクレオチドの例には、誘導体化された糖もしくはリン酸骨格結合または化学的に修飾された残基を含む修飾ヌクレオチド塩基が含まれる。核酸分子にはまた、インビトロおよび/またはインビボで、例えば宿主または患者において、本発明の抗体を直接発現させるためのベクターとして適切な、DNAおよびRNA分子が含まれる。そのようなDNA(例えば、cDNA)またはRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾されていなくても、修飾されていてもよい。例えば、mRNAを化学的に修飾して、RNAベクターの安定性および/またはコードされた分子の発現を高めることができ、その結果として、mRNAを対象に注入してインビボで抗体を産生させることができる(例えば、Stadler et al, Nature Medicine 2017, 2017年6月12日オンライン公開, doi:10.1038/nm.4356またはEP 2 101 823 B1を参照されたい)。
【0044】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0045】
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:
分率X/Yの100倍。
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
【0046】
用語「薬学的製剤」または「薬学的組成物」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤/組成物が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
【0047】
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤/組成物中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
【0048】
本明細書でいう用語「HLA-DQ2.5」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型HLA-DQ2.5のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないHLA-DQ2.5も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のHLA-DQ2.5も包含する。この用語はまた、自然に生じるHLA-DQ2.5の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なHLA-DQ2.5のアミノ酸配列は、Research Collaboratory for Structural Bioinformatics(RCSB)Protein Data Bank(PDB)アクセッションコード4OZGおよびIPD-IMGT/データベースにおいて公に入手可能である
【0049】
本明細書において、「TCR」は「T細胞受容体」を意味し、これは、T細胞(例えば、HLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞)の表面に位置する膜タンパク質であり、かつHLA-DQ2.5を含むMHC分子上に提示された抗原断片(例えば、グルテンペプチド)を認識する。
【0050】
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0051】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
【0052】
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
【0053】
アミノ酸改変
本発明の抗原結合分子(または抗体)は、1つまたは複数の改変を含んでもよい。そのような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/またはアミノ酸配列中への挿入、および/またはアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば抗原結合を備えるという条件で、最終構築物に達するように、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせがなされ得る。
【0054】
本発明の抗原結合分子(または抗体)は、アミノ酸置換を含んでもよい。保存的置換を、表1-1において「好ましい置換」という見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1-1において「例示的な置換」という見出しの下に、およびアミノ酸側鎖クラスに関して以下にさらに記載されるように提供する。アミノ酸置換が、目的の抗体中に導入されてもよく、生成物が、所望の活性、例えば抗原結合についてスクリーニングされてもよい。
【0055】
(表1-1)
【0056】
本明細書において、アミノ酸の改変を示す表現として、特定の位置を示す数字の前および後に、それぞれ改変前および改変後のアミノ酸の1文字コードまたは3文字コードを示す表現が、適切に用いられてもよい。例えば、抗体可変領域に含有されるアミノ酸を置換する場合に用いられる改変N100bLまたはAsn100bLeuは、(Kabatナンバリングに従って)100b位のAsnのLeuでの置換を示す。すなわち、数字は、Kabatナンバリングに従うアミノ酸位置を示し、数字の前に書かれた1文字または3文字のアミノ酸コードは、置換前のアミノ酸を示し、数字の後に書かれた1文字または3文字のアミノ酸コードは、置換後のアミノ酸を示す。同様に、抗体定常領域に含有されるFc領域のアミノ酸を置換する場合に用いられる改変P238DまたはPro238Aspは、(EUナンバリングに従って)238位のProのAspでの置換を示す。すなわち、数字は、EUナンバリングに従うアミノ酸位置を示し、数字の前に書かれた1文字または3文字のアミノ酸コードは、置換前のアミノ酸を示し、数字の後に書かれた1文字または3文字のアミノ酸コードは、置換後のアミノ酸を示す。
【0057】
多重特異性抗原結合分子/抗体
用語「多重特異性抗原結合分子(抗体)」は、1つよりも多い抗原(例えば、ペプチド)またはエピトープに特異的に結合する抗原結合分子(抗体)のことをいう。いくつかの態様において、抗原結合分子(抗体)は、少なくとも、1つまたは複数の抗原(例えば、ペプチド)に結合することができる第1の抗原結合部分/ドメイン、および1つまたは複数の抗原(例えば、ペプチド)に結合することができる第2の抗原結合部分/ドメインを有する。第1の抗原結合部分/ドメインが結合する抗原のいくつかまたは全ては、第2の抗原結合部分/ドメインが結合する抗原のいくつかまたは全てとは異なっていてもよい。あるいは、第1の抗原結合部分/ドメインが結合する抗原のいくつかは、第2の抗原結合部分/ドメインが結合する抗原のいくつかと同一であってもよい。
【0058】
本発明の文脈において、「多重特異性抗原結合分子(抗体)」は、異なるタイプの抗原またはエピトープに特異的に結合し得る。より具体的には、多重特異性抗原結合分子(抗体)は、少なくとも2つの異なるタイプの抗原またはエピトープに対して特異性を有するものであり、異なる抗原を認識する分子/抗体に加えて、同じ抗原上の異なるエピトープを認識する分子/抗体も含まれる。例えば、普通は、そのような分子は、2つの抗原またはエピトープに結合する(「二重特異性抗原結合分子(抗体)」;「デュアル特異性抗原結合分子(抗体)」と同じ意味を有するように本記載で用いられる)が、より多くの抗原またはエピトープ(例えば、3つ以上のタイプの抗原)に対する特異性までも有していてもよい。
【0059】
本明細書において、「多重特異性」および「二重特異性」などの用語は、ある抗原結合ドメイン/領域の特異性が別の抗原結合ドメイン/領域の特異性とは異なることを意味する。すなわち、これらの用語は、1つの抗原結合分子に2つ以上の特異性があることを意味する。例えば、「二重特異性」抗原結合分子(抗体)において、第1の抗原結合部分/ドメインは、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体の第1のグループに結合し得、第2の抗原結合部分/ドメインは、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体の第2のグループに結合し得る。2つのグループのメンバー(すなわち、複合体)は、重複していてもよいが、同一でなくてもよい。すなわち、いくつかの複合体は、グループの両方に含まれていてよい。「多重特異性」および「二重特異性」などの用語は、この状況を包含し得る。同じことが、第1/第2の抗原結合部分/ドメインが結合しない複合体の第1および第2のグループに適用される。
【0060】
用語「二重特異性」は、抗原結合分子が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合できることを意味する。本発明の「多重特異性抗原結合分子」の好ましい態様の例には、多重特異性抗体が含まれる。低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域が、多重特異性抗体Fc領域として用いられる場合には、多重特異性抗体に由来するFc領域が、適切に用いられてもよい。二重特異性抗体は、本発明の多重特異性抗体として特に好ましい。この場合、二重特異性抗体は、2つの異なる特異性を有する抗体である。IgGタイプの二重特異性抗体は、IgG抗体を産生する2タイプのハイブリドーマを融合させることによって産生されるハイブリッドハイブリドーマ(クアドローマ)から分泌させることができる(Milstein et al., Nature (1983) 305, 537-540)。
【0061】
多重特異性抗原結合分子(抗体)は、少なくとも2つの抗原結合部分/ドメインを含み得る。二重特異性抗原結合分子(抗体)は、第1の抗原結合部分/ドメインおよび第2の抗原結合部分/ドメインを含み得る。
二重特異性抗原結合分子(または二重特異性抗体)は、第1の抗原結合部分/ドメインおよび第2の抗原結合部分/ドメインを含み得る。第1の抗原結合部分/ドメインは、第1の抗体可変領域および第2の抗体可変領域を含み得る。第1の抗体可変領域は、第2の抗体可変領域と会合する。第1の抗体可変領域と第2の抗体可変領域との間の会合により、第1の抗原結合部分/ドメインの第1の抗原/エピトープに対する結合が可能になる。同様に、第2の抗原結合部分/ドメインは、第3の抗体可変領域および第4の抗体可変領域を含み得る。第3の抗体可変領域は、第4の抗体可変領域と会合する。第3の抗体可変領域と第4の抗体可変領域との間の会合により、第2の抗原結合部分/ドメインの第2の抗原/エピトープに対する結合が可能になる。いくつかの態様において、第1の抗体可変領域は、重鎖(H鎖)可変領域(VH)(「第1の重鎖(H鎖)可変領域(VH)」と呼ばれ得る)であり、第2の抗体可変領域は、軽鎖(L鎖)可変領域(VL)(「第1の軽鎖(L鎖)可変領域(VL)」と呼ばれ得る)である。いくつかの態様において、第3の抗体可変領域は、重鎖(H鎖)可変領域(VH)(「第2の重鎖(H鎖)可変領域(VH)」と呼ばれ得る)であり、第4の抗体可変領域は、軽鎖(L鎖)可変領域(VL)(「第2の軽鎖(L鎖)可変領域(VL)」と呼ばれ得る)である。第1の重鎖(H鎖)可変領域(VH)は、第1の抗原/エピトープに対する結合のために、第1の軽鎖(L鎖)可変領域(VL)と会合する。第2の重鎖(H鎖)可変領域(VH)は、第2の抗原/エピトープに対する結合のために、第2の軽鎖(L鎖)可変領域(VL)と会合する。可変領域の間の(すなわち、VHとVLとの間の)会合(あるいは「相互作用」と称される)は、当技術分野において公知のようにVH/VL境界面上の構造(例えば、アミノ酸残基)に依拠する。本発明において、好ましくは、二重特異性抗原結合分子(抗体)は、2つ以上のグルテンペプチド(またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体)に結合することができる。いくつかの態様において、二重特異性抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された1つまたは複数の複合体に結合する第1の抗原結合部分/ドメイン(第1の抗体可変領域および第2の抗体可変領域を含む(上記))、およびHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された1つまたは複数の複合体に結合する第2の抗原結合部分/ドメイン(第3の抗体可変領域および第4の抗体可変領域を含む(上記))を含む。この文脈において、好ましくは、第1の抗原結合部分/ドメインが結合する複合体中の少なくとも1つのグルテンペプチドは、第2の抗原結合部分/ドメインが結合する複合体中の少なくとも1つのグルテンペプチドとは異なる。言い換えれば、第1の抗原結合部分/ドメインが結合する複合体中のグルテンペプチドのメンバーと、第2の抗原結合部分/ドメインが結合する複合体中のグルテンペプチドのメンバーは、重複していてもよいが、完全に同一でなくてもよい。第1/第2の抗原結合部分/ドメインが結合する複合体中のグルテンペプチドは、本明細書に記載の任意のグルテンペプチドから選択され得る。好ましくは、第1/第2の抗原結合部分/ドメインは、1タイプのグルテンペプチド、または2タイプ以上のグルテンペプチドに結合することができる。
【0062】
本開示の文脈において、簡単にするために、「抗原結合分子」と言うよりもむしろ、用語「抗体」が用いられてもよい。しかし、当業者は、用語「抗体」が、適用可能な場合には「抗原結合分子」で置き換えられ得ることを理解できる。
【0063】
一局面において、本発明は、T細胞にグルテンペプチドを提示するHLA-DQ2.5に対する抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の結合に、一部基づくものである。特定の態様において、HLA-DQ2.5に結合する抗体が提供される。
【0064】
一局面において、本発明は、HLA-DQ2.5、またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された1つもしくは複数の複合体に対して結合活性を有する、抗原結合分子または抗体を提供する。特定の態様において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、下述の機能/特徴を有する。
【0065】
抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5(すなわち、HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に対して結合活性を有する。より好ましくは、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5(すなわち、HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に対して特異的な結合活性を有する。
【0066】
抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ5.1/DQ6.3/DQ7.3/DQ7.5/DQ8/DR/DPなどの、目的でない抗原に対して結合活性を実質的に有せず、すなわち、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、目的でない抗原に実質的に結合しない。例えば、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DR/DPに対して特異的な結合活性を有しないか、またはHLA-DR/DPに対して有意な結合活性を有しない。すなわち、抗体は、HLA-DR/DPに特異的に結合しないか、またはHLA-DR/DPに有意に結合しない。同様に、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、およびHLA-DQ7.3などのHLA-DQ分子に対して結合活性を実質的に有せず、すなわち、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、およびHLA-DQ7.3などのHLA-DQ分子に実質的に結合しない。言い換えれば、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、およびHLA-DQ7.3などのHLA-DQ分子に対して特異的/有意な結合活性を有しない。すなわち、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、およびHLA-DQ7.3などのHLA-DQ分子に特異的/有意に結合しない。
これらの非標的MHCクラスII分子に対するいずれかの実質的な阻害効果を防止するため、かつHLA-DQ2.5を有するセリアック病患者の抗体PKを改善するために、これらの特徴(「結合活性が実質的にない」)は好ましい。
「結合活性が実質的にない」という特性は、例えば、本明細書に記載のFACS結果を用いて定義することができる。特定の抗原に対して「結合活性を実質的に有しない」抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載の測定条件下で、陰性対照のMFI(平均蛍光強度)値の250%以下、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下であるMFI値を有し得る。
【0067】
ある局面において、二重特異性抗原結合分子(抗体)について、特定の抗原に対して「結合活性を実質的に有しない」抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載の測定条件下で、IC17dKのMFI値を0%とし、DQN0139bbのMFI値を100%としたとき、2%以下、より好ましくは1%以下であるMFI値を有する。DQN0139bbは、例えば、WO2018/155692に開示されている。
【0068】
抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載のグルテンペプチドとの複合体にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する。本明細書において、HLA-DQ2.5分子とグルテンペプチドとの間で形成された複合体は、「HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体」、「HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体」、または「HLA-DQ2.5/グルテンペプチド」と呼ばれる。それはまた、例えば、「グルテンペプチドが負荷されたHLA-DQ2.5」、「グルテンペプチド負荷HLA-DQ2.5」、「グルテンペプチドが結合したHLA-DQ2.5」、「グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5」、および「HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとの複合体」と言い換えることもできる。上記の文言(例えば、「HLA-DQ2.5と・・・[ペプチド]とによって形成された複合体」)はまた、以下のようなペプチドにも適用される:33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド(「α1aグリアジンペプチド」とも呼ばれ得る)、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチド、14mer 1ペプチド、CLIP(hCLIP)ペプチド、B型肝炎ウイルス1(HBV1)ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビス(M.ボビス)ペプチド、チロペルオキシダーゼ(TPO)ペプチド、など。
【0069】
一方、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、「無関係な」ペプチドに対して結合活性を実質的に有しない。本明細書において、「無関係な」ペプチドには、HLA-DQ2.5上に提示され得ることが報告されているが、セリアック病とは無関係であるか、または本発明とは無関係であるもの、すなわち、上述の目的のグルテンペプチドではないものが含まれる。例えば、無関係なペプチドには、CLIP(hCLIP)ペプチド、B型肝炎ウイルス1(HBV1)ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビス(M.ボビス)ペプチド、チロペルオキシダーゼ(TPO)ペプチドなどが含まれるが、これらに限定されない。
これらの非標的MHCクラスII分子および無関係なペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対するいずれかの実質的な阻害効果を防止するため、かつセリアック病患者の抗体PKを改善するために、これらの特徴(「結合活性が実質的にない」)は好ましい。
「結合活性」という特性は、例えば、本明細書に記載のFACS結果を用いて定義することができる。特定の抗原に対して「結合活性」を有する抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載の測定条件下で、陰性対照のMFI(平均蛍光強度)値の300%以上、好ましくは500%以上、より好ましくは1000%以上であるMFI値を有し得る。
【0070】
ある局面において、二重特異性抗原結合分子(抗体)について、特定の抗原に対して「結合活性」を有する抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載の測定条件下で、IC17dKのMFI値を0%とし、DQN0139bbのMFI値を100%としたとき、3%以上、好ましくは6%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であるMFI値を有する。
【0071】
結合の特異性に特に言及する場合、「結合活性」は、「特異的結合活性」と言い換えることができる。
本発明の抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に記載のHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された1つまたは複数の複合体に対する結合について、5×10-7 M以下、好ましくは4×10-7 M以下、好ましくは3×10-7 M以下、好ましくは2×10-7 M以下、好ましくは1×10-7 M以下、好ましくは9×10-8 M以下、好ましくは8×10-8 M以下、好ましくは7×10-8 M以下、好ましくは6×10-8 M以下、好ましくは5×10-8 M以下、好ましくは4×10-8 M以下、好ましくは3×10-8 M以下、好ましくは2×10-8 M以下、好ましくは1×10-8 M以下、好ましくは9×10-9 M以下、好ましくは8×10-9 M以下、好ましくは7×10-9 M以下、好ましくは6×10-9 M以下、好ましくは5×10-9 M以下、好ましくは4×10-9 M以下、好ましくは3×10-9 M以下、好ましくは2×10-9 M以下の解離定数(Kd)を有する。
【0072】
本発明の適切な多重特異性抗原結合分子は、以下を含む:
(1) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体可変領域を含む部分/ドメイン;
(2) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体可変領域を含む部分/ドメイン;および
(3) その構造に限定されない、上述の低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域を含む部分/ドメイン。
本発明において、上述のドメインの各々を、ペプチド結合によって直接連結することができる。例えば、(1)および(2)の抗体可変領域を含むドメインとしてF(ab')2、ならびに(3)の低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域を含むドメインとしてこれらのFc領域を用いる場合には、(1)および(2)の抗体可変領域含有ドメインと、(3)のFc領域含有ドメインとをペプチド結合により連結することによって形成されたポリペプチドは、抗体構造を形成するであろう。そのような抗体は、上述のハイブリドーマ培養培地からの精製によって、およびまた抗体を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを安定に保有する所望の宿主細胞の培養培地から抗体を精製することによっても、産生させることができる。
【0073】
グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体可変領域に含有される本発明の好ましい抗体H鎖可変領域の例には、本明細書に記載の抗体H鎖可変領域、またはそのCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列が、本明細書に記載のH鎖可変領域に含有されるCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列と同じであるCDR配列を有する抗体H鎖可変領域、または上述の可変領域と機能的に等価である抗体H鎖可変領域のいずれかが含まれる。
【0074】
本発明のT細胞受容体複合体結合活性を有する好ましい抗体可変領域の例には、グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する抗体可変領域が含まれる。そのような抗体可変領域に含有される抗体H鎖可変領域の例には、本明細書に記載の抗体H鎖可変領域、そのCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列が、本明細書に記載の抗体H鎖可変領域に含有されるCDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列と同じであるCDR配列を有する抗体H鎖可変領域、ならびに上述の可変領域と機能的に等価である抗体H鎖可変領域が含まれる。
【0075】
本発明において、語句「機能的に等価」は、多重特異性抗原結合分子として用いられる場合に、抗原に対する結合アフィニティが等価であることを意味するか、または代替的に、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドを発現する細胞(またはこれらの細胞を含有する組織)に対する中和活性が等価であることを意味する。結合アフィニティおよび中和活性は、本明細書における記載に基づいて測定することができる。活性の測定のために用いられる細胞は、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドを発現する所望のもの(またはこれらの細胞を含有する所望の組織)であってもよく、任意の好適な細胞株を用いることができる。抗体定常領域に関して、この語句は、Fcγ受容体結合活性の減少が等価であることを意味し得る。
【0076】
例えば、本明細書に記載の抗体H鎖可変領域(すなわち、元のH鎖可変領域)と機能的に等価の抗体H鎖可変領域は、この領域が、元のH鎖とペアを形成する本明細書に記載の抗体L鎖可変領域と組み合わせられた場合に、同じ結合アフィニティを有すること、または代替的に、領域が、多重特異性抗原結合分子に用いられた場合に、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドを発現する細胞(またはこれらの細胞を含有する組織)に対して同じ中和活性を有することを意味する。さらに、本明細書に記載の抗体L鎖可変領域(すなわち、元のL鎖可変領域)と機能的に等価の抗体L鎖可変領域は、この領域が、元のL鎖とペアを形成する本明細書に記載の抗体H鎖可変領域と組み合わせられた場合に、同じ結合アフィニティを有すること、または代替的に、領域が、多重特異性抗原結合分子に用いられた場合に、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドを発現する細胞(またはこれらの細胞を含有する組織)に対して同じ中和活性を有することを意味する。
【0077】
用語「等価」は、必ずしも同じ程度の活性を意味しなければならないことはなく、活性が増強されていてもよい。具体的には、抗原結合アフィニティについて、例には、対照として働く抗体可変領域の結合アフィニティ(親KD値)との比較によって得られた値(KD値/親KD値)が1.5以下である場合が含まれる。KD値/親KD値の値は、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、または0.5以下である。下限はないが、例には、10-1、10-2、10-3、10-4、10-5、または10-6が含まれる。より具体的には、本発明において、KD値/親KD値の値は、好ましくは10-6~1.5×10-0、より好ましくは10-6~10-1、いっそうより好ましくは10-6~10-2、さらにいっそうより好ましくは10-6~10-3である。
【0078】
HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対して結合活性を有する抗体可変領域を含む部分/ドメインに関して、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対するKD値は、例えば、2×10-8 M以下、1×10-8 M以下、9×10-9 M以下、8×10-9 M以下、7×10-9 M以下、6×10-9 M以下、5×10-9 M以下、4×10-9 M以下、3×10-9 M以下、2×10-9 M以下、または1×10-9 M以下であり得る。
【0079】
本発明において、「機能的に等価」である抗体可変領域は、それらが上記の条件を満たす抗体H鎖および/または抗体L鎖の可変領域である限り、特に限定されない。そのような抗体可変領域の例には、上述の表1~3の可変領域のアミノ酸配列中に1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、または10個のアミノ酸)の置換、欠失、付加、および/または挿入を導入することによって産生される領域が含まれる。アミノ酸配列中に1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または挿入を導入するための当業者に周知の方法は、タンパク質中に変異を導入する方法である。例えば、当業者は、部位特異的変異導入などの方法を用いてアミノ酸配列中に変異を適切に導入することによって、上述の機能を有する抗体可変領域と機能的に等価である可変領域を調製することができる(Hashimoto-Gotoh, T., Mizuno, T., Ogasahara, Y., and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275;Zoller, M.J., and Smith, M. (1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468-500;Kramer, W., Drutsa, V., Jansen, H.W., Kramer, B., Pflugfelder, M., and Fritz, H.J. (1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456;Kramer, W., and Fritz, H.J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367;およびKunkel, T.A. (1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection. Proc Natl Acad. Sci. U S A. 82, 488-492)。
【0080】
アミノ酸残基を改変する場合、アミノ酸を、好ましくは、アミノ酸側鎖の特性を保存する異なるアミノ酸に変異させる。アミノ酸側鎖の特性の例は、以下である:疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、およびV)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、およびT)、脂肪族側鎖を含有するアミノ酸(G、A、V、L、I、およびP)、水酸基含有側鎖を含有するアミノ酸(S、T、およびY)、硫黄原子含有側鎖を含有するアミノ酸(CおよびM)、カルボン酸含有かつアミド含有側鎖を含有するアミノ酸(D、N、E、およびQ)、塩基性側鎖を含有するアミノ酸(R、K、およびH)、ならびに芳香族側鎖を含有するアミノ酸(H、F、Y、およびW)(アミノ酸を括弧中に1文字コードにより表す)。これらのグループの各々内でのアミノ酸置換は、保存的置換と呼ばれる。所与のアミノ酸配列における1つまたは複数のアミノ酸残基が、欠失している、付加されている、および/または他のアミノ酸で置換されている改変されたアミノ酸配列を含有するポリペプチドが、元の生物学的活性を保持し得ることは既知である(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA; (1984) 81: 5662-6;Zoller, M. J. and Smith, M., Nucleic Acids Res. (1982) 10: 6487-500;Wang, A. et al., Science (1984) 224: 1431-3;Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79: 6409-13)。そのようなアミノ酸改変を含有する本発明の可変領域は、改変前の可変領域のCDR配列、FR配列、または全可変領域のアミノ酸配列と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、いっそうより好ましくは少なくとも80%、もっとより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。本明細書において、配列同一性は、配列を整列させ、必要なら配列同一性を最大にするためにギャップを適切に導入した後に決定された、H鎖可変領域またはL鎖可変領域の元のアミノ酸配列中の残基と同一の残基の百分率比として定義される。アミノ酸配列の同一性は、下記の方法によって決定することができる。
【0081】
さらに、「機能的に等価の抗体可変領域」は、例えば、上述の表1~3における可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸から得ることができる。可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸を単離するためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、例えば、6 M尿素、0.4% SDS、0.5×SSC、および37℃の条件、またはそれと等価のストリンジェンシーを有するハイブリダイゼーション条件が含まれる。ずっとより高い相同性を有する核酸の単離は、よりストリンジェントな条件、例えば、6 M尿素、0.4% SDS、0.1×SSC、および42℃の条件で期待することができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄条件は、例えば、60℃で0.5×SSC(1×SSCは、pH7.0の0.15 M NaClおよび0.015 Mクエン酸ナトリウム)および0.1% SDSを用いた洗浄、より好ましくは60℃で0.2×SSCおよび0.1% SDSを用いた洗浄、いっそうより好ましくは62℃で0.2×SSCおよび0.1% SDSを用いた洗浄、さらにいっそうより好ましくは65℃で0.2×SSCおよび0.1% SDSを用いた洗浄、もっとより好ましくは65℃で0.1×SSCおよび0.1% SDSを用いた洗浄である。単離された核酸の配列は、下記の公知の方法によって決定することができる。単離された核酸の全体的なヌクレオチド配列相同性は、少なくとも50%またはそれ以上、好ましくは70%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性である。
【0082】
可変領域のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸はまた、ハイブリダイゼーション手法を用いた上記の方法の代わりに、可変領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の情報に基づいて合成されたプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの遺伝子増幅法の使用によって、単離することもできる。
【0083】
1つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の別のものに対する同一性は、Karlin and Altschul (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 5873-7)によるアルゴリズムBLASTを用いて決定することができる。BLASTNおよびBLASTXと呼ばれるプログラムが、このアルゴリズムに基づいて開発された(Altschul et al., J. Mol. Biol. (1990) 215: 403-10)。BLASTに基づくBLASTNに従ってヌクレオチド配列を解析するためには、パラメーターを、例えば、score=100およびwordlength=12と設定する。他方、BLASTに基づくBLASTXによるアミノ酸配列の解析に用いられるパラメーターには、例えば、score=50およびwordlength=3が含まれる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムについてのデフォルトパラメーターを用いる。そのような解析のための具体的手法は、当技術分野において公知である(National Center for Biotechnology Information (NCBI), Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)のウェブサイト;http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと)。
【0084】
本発明の多重特異性抗原結合分子に含まれるFc領域は、それが低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域である限り、特に限定されず、本発明の好ましいFc領域の例には、本明細書に記載のFc領域部分の組み合わせが含まれる。
【0085】
本発明の好ましい多重特異性抗原結合分子の例には、グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第1の抗体可変領域、およびグルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第2の抗体可変領域を含む二重特異性抗体が含まれる。そのような二重特異性抗体の例には、本明細書に記載のH鎖およびL鎖を含む二重特異性抗体、ならびに上記の抗体が結合するエピトープと重複するエピトープに結合し、かつ低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域を含有する二重特異性抗体が含まれる。
【0086】
抗体が、別の抗体が認識するエピトープと重複するエピトープを認識するかどうかは、エピトープに対する2つの抗体間の競合によって確認することができる。抗体間の競合は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、蛍光エネルギー移動法(FRET)、および蛍光微量アッセイ技術(FMAT(登録商標))などの手段を用いた競合結合アッセイによって評価することができる。抗原に結合した抗体の量は、重複するエピトープに競合的に結合する候補競合抗体(試験抗体)の結合能と間接的に相関する。言い換えれば、重複するエピトープに対する試験抗体の量またはアフィニティが増加するにつれて、抗原に結合した抗体の量は減少し、抗原に結合した試験抗体の量は増加する。具体的には、適切に標識された抗体および評価されるべき抗体を、抗原に同時に添加し、結果として結合した抗体を、標識を用いて検出する。抗原に結合した抗体の量は、あらかじめ抗体を標識することによって、容易に決定することができる。この標識は、特に限定されず、標識法は、用いられるアッセイ手法に従って選択される。具体的には、標識法には、蛍光標識、放射性標識、酵素標識などが含まれる。
【0087】
例えば、蛍光標識抗体および未標識抗体または試験抗体を、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドが固定化されたビーズに同時に添加し、標識抗体を、蛍光微量アッセイ技術によって検出する。
【0088】
本明細書において、「重複するエピトープに結合する抗体」は、結合した標識抗体の量を、結合した標識抗体の量の50%を非標識抗体が低下させる濃度(IC50)よりも通常100倍高い、好ましくは80倍高い、より好ましくは50倍高い、いっそうより好ましくは30倍高い、もっとより好ましくは10倍高い濃度で、少なくとも50%低下させることができる試験抗体のことをいう。
【0089】
上述の抗体が結合するエピトープと重複するエピトープに結合する抗体の抗原結合部位を有する多重特異性抗原結合分子は、優れた結合活性または中和活性を生じることができる。
【0090】
本発明の多重特異性抗原結合分子は、本明細書で述べられる組換え抗体を産生するための方法と同じ手法によって産生される。
【0091】
特定の態様において、上記で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の任意の1つまたは複数のアミノ酸は、重鎖および/または軽鎖定常および/または可変領域またはドメインのいずれかにおいて置換されている。
【0092】
特定の態様において、本明細書で提供される置換は、保存的置換である。
【0093】
ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
【0094】
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0095】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0096】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
【0097】
キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
【0098】
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
【0099】
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェイシング」を記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
【0100】
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
【0101】
上記態様の任意のものにおいて、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、ヒト化されている。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、上記態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。別の態様において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、上記態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、本明細書に示されるFR1、FR2、FR3、またはFR4配列を含む。本明細書において、「ヒトフレームワーク」は、抗体がヒト化される事実に焦点を合わせて「ヒト化フレームワーク」とも呼ばれ得る。
【0102】
いくつかの態様において、本発明の多重特異性抗原結合分子は、
(i) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第1の抗原結合部分;および
(ii) グルテンペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を有する第2の抗原結合部分
を含み、
該抗原結合分子は、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとの2つ以上の複合体に結合し、
第1の抗原結合部分が結合する複合体中のグルテンペプチドの少なくとも1つは、第2の抗原結合部分が結合する複合体中のグルテンペプチドの少なくとも1つとは異なり;ならびに
該抗原結合分子は、HLA-DQ2.5陽性PBMC B細胞およびHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2を発現するBa/F3細胞のいずれかまたは両方に対して結合活性を実質的に有せず、
該抗原結合分子は、ヒト化されており、かつ
該多重特異性抗原結合分子における第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分における重鎖および/または軽鎖定常および/または可変領域中の1つまたは複数のアミノ酸は、改変されている。
【0103】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、多重特異性抗原結合分子における第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖中の1つまたは複数のアミノ酸は、置換されている。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、重鎖の可変領域中の少なくとも1つのアミノ酸置換;重鎖の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸置換;軽鎖の可変領域中の少なくとも1つのアミノ酸置換;および軽鎖の定常領域中の少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
いくつかの態様において、グルテンペプチドは、セリアック病に関連する免疫優性ペプチドである。
いくつかの態様において、グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドからなる群より選択される。
いくつかの態様において、グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個、または全てである。
いくつかの態様において、グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドからなる群より選択される。
いくつかの態様において、グルテンペプチドは、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18個、または全てである。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、グルテンペプチドそれ自体またはグルテンペプチドそれら自体に対して結合活性を実質的に有しない。この文脈において、用語「それ自体」および「それら自体」は、グルテンペプチドがHLA-DQ2.5との複合体を形成しない状態のことをいう。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、無関係なペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、該無関係なペプチドは、CLIP(hCLIP)ペプチド、B型肝炎ウイルス1ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチド、およびチロペルオキシダーゼペプチドからなる群より選択される少なくとも1つのペプチドである。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、無関係なペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有せず、該無関係なペプチドは、CLIP(hCLIP)ペプチド、B型肝炎ウイルス1ペプチド、サルモネラペプチド、マイコバクテリウム・ボビスペプチド、およびチロペルオキシダーゼペプチドの全てである。
いくつかの態様において、抗原結合分子は、前記ヒト化および改変の前と比較して、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対して増強された結合活性を有する。この文脈において、「増強された結合活性」は、抗原結合分子が、修飾、すなわち、ヒト化および改変の前の事前抗体よりも強く、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に結合することを意味する。
いくつかの態様において、抗原結合分子は、前記ヒト化および改変の前と比較して、グルテンペプチドに対して増強された交差反応性を有する。いくつかの態様において、グルテンペプチドは、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、およびγ4dグリアジンペプチドである。この文脈において、「グルテンペプチドに対して増強された交差反応性」は、抗原結合分子が、修飾、すなわち、ヒト化および改変の前の事前抗体よりも多いグルテンペプチドに対して、結合するかまたは中和活性を示すことを意味する。
【0104】
別の局面において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に開示される重鎖可変ドメイン(VH)配列のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照(すなわち、元の)配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ2.5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、参照(すなわち、元の)配列に対して置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に開示されるVH配列、またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。ある特定の態様において、VHは、(a) 本明細書に開示されるHVR-H1、(b) 本明細書に開示されるHVR-H2、および(c) 本明細書に開示されるHVR-H3より選択される、1、2、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0105】
本発明のアミノ酸配列に含有されるアミノ酸は、翻訳後修飾されていてもよい(例えば、N末端グルタミンのピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾は、当業者によく知られている)。当然、そのような翻訳後修飾されたアミノ酸は、本発明におけるアミノ酸配列に含まれる。
【0106】
別の局面において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が提供され、該分子/抗体は、本明細書に開示される軽鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照(すなわち、元の)配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、当該配列を含む抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、HLA-DQ2.5に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、参照(すなわち、元の)配列に対して置換、挿入、および/または欠失されている。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、本明細書に開示されるVL配列、またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。ある特定の態様において、VLは、(a) 本明細書に開示されるHVR-L1;(b) 本明細書に開示されるHVR-L2;および(c) 本明細書に開示されるHVR-L3より選択される、1、2、または3つのHVRを含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0107】
別の局面において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が提供され、該分子/抗体は、上記で提供される態様の任意のものにおけるVH、および上記で提供される態様の任意のものにおけるVLを含む。一態様において、分子/抗体は、本明細書に開示されるVH配列またはその翻訳後修飾を含む配列、および本明細書に開示されるVL配列またはその翻訳後修飾を含む配列を含む。翻訳後修飾は、重鎖または軽鎖のN末端のグルタミンまたはグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
【0108】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)と同じエピトープに結合する抗原結合分子(抗体)を提供する。例えば、特定の態様において、本明細書に記載の分子/抗体のいずれかと同じエピトープに結合する分子/抗体が提供される。特定の態様において、約8個から17個のアミノ酸からなるHLA-DQ2.5の断片内の、またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体内の、エピトープに結合する分子/抗体が提供される。この文脈において、グルテンペプチドは、本明細書に記載のグルテンペプチドのいずれかであり得る。
【0109】
さらなる局面において、本発明は、HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対する結合について、別の抗原結合分子(抗体)と競合する抗原結合分子(抗体)を提供する。例えば、特定の態様において、HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対する結合について、本明細書に記載の分子/抗体のいずれかと競合する分子/抗体が提供される。この文脈において、グルテンペプチドは、本明細書に記載のグルテンペプチドのいずれかであり得る。
【0110】
本発明のさらなる局面において、上記の態様の任意のものによる抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗原結合分子(抗体)を含む、モノクローナル抗原結合分子(抗体)である。好ましい態様において、本発明の抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、ヒト化抗原結合分子(抗体)である。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2断片の、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG1抗体、または本明細書で定義された他の抗体クラスもしくはアイソタイプの、全長抗体である。
【0111】
さらなる局面において、上記の態様の任意のものによる抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、単独または組み合わせのいずれでも、下記の特性の任意のものを取り込んでもよい。
【0112】
抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1マイクロモル(μM)、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
【0113】
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5マイクログラム(μg)/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150マイクロリットル(μL)/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
【0114】
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定化されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μL/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μL/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM~500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
【0115】
抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0116】
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
【0117】
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
【0118】
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
【0119】
Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0120】
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
【0121】
Fc領域
本明細書では、用語「Fc領域」または「Fcドメイン」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列のFc領域および変異体Fc領域が含まれる。一態様において、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びている。ただし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)またはグリシン-リジン(残基446~447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書で特に指定しない限り、Fc領域または定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載の、EUインデックスとも呼ばれるEUナンバリングシステムにしたがう。
【0122】
Fc受容体
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体のことをいう。ある態様において、FcRは天然のヒトFcRである。ある態様において、FcRは、IgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これには、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライス形態も含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインにおいて異なっている類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照されたい)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994); およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)でレビューされている。今後同定されるものを含めて、他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。
【0123】
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、新生児受容体FcRnも含み、これは母体IgGの胎児への移行(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))および免疫グロブリンの恒常性の調節に関与している。FcRnへの結合を測定する方法は、公知である(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO 2004/92219 (Hinton et al.)を参照されたい)。
【0124】
インビボでのヒトFcRnへの結合、およびヒトFcRn高アフィニティ結合ポリペプチドの血漿半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株において、または変異体Fc領域を含むポリペプチドが投与された霊長類において、アッセイすることができる。WO 2000/42072 (Presta)は、FcRに対する結合が増加または減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001)も参照されたい。
【0125】
Fcγ受容体
Fcγ受容体は、モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメインに結合することができる受容体のことをいい、Fcγ受容体遺伝子によって実質的にコードされるタンパク質のファミリーに属する全てのメンバーを含む。ヒトでは、このファミリーは、FcγRI(CD64)、例えば、アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、およびFcγRIc;FcγRII(CD32)、例えば、アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)、およびFcγRIIc;ならびにFcγRIII(CD16)、例えば、アイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)、およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む);ならびに全ての未同定のヒトFcγ受容体、Fcγ受容体アイソフォーム、およびそれらのアロタイプを含む。しかし、Fcγ受容体はこれらの例に限定されない。これらに限定されることなく、Fcγ受容体には、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサル由来のものが含まれる。Fcγ受容体は、いかなる生物に由来してもよい。マウスFcγ受容体には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、およびFcγRIII-2(CD16-2)、ならびに、全ての未同定のマウスFcγ受容体、Fcγ受容体アイソフォーム、およびそれらのアロタイプが含まれるが、これらに限定されない。そのような好ましいFcγ受容体には、例えば、ヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16)、および/またはFcγRIIIB(CD16)が含まれる。Fcγ受容体がモノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメインへの結合活性を有するか否かは、上述したFACSおよびELISAフォーマットに加えて、ALPHA screen(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay:増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ)、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくBIACORE法など(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103(11), 4005-4010)により、評価することができる。
【0126】
一方、「Fcリガンド」または「エフェクターリガンド」は、抗体Fcドメインに結合してFc/Fcリガンド複合体を形成する分子、好ましくはポリペプチドのことをいう。該分子は、いかなる生物に由来してもよい。FcリガンドのFcへの結合は、好ましくは、1つまたは複数のエフェクター機能を誘導する。そのようなFcリガンドには、Fc受容体、Fcγ受容体、Fcα受容体、Fcβ受容体、FcRn、C1q、およびC3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌(Staphylococcus)プロテインA、ブドウ球菌プロテインG、ならびにウイルスFcγ受容体が含まれるが、これらに限定されない。Fcリガンドには、Fc受容体ホモログ(FcRH)(Davis et al., (2002) Immunological Reviews 190, 123-136)も含まれ、これらはFcγ受容体に相同なFc受容体のファミリーである。Fcリガンドには、Fcに結合する未同定の分子も含まれる。
【0127】
Fcγ受容体結合活性
Fcγ受容体FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、および/またはFcγRIIIBのいずれかへのFcドメインの結合活性の低下は、上述したFACSおよびELISAフォーマット、ならびにALPHA screen(増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ)および表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくBIACORE法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103(11), 4005-4010)を用いることによって評価することができる。
【0128】
ALPHA screenは、ドナービーズとアクセプタービーズの2種類のビーズを用いる、後述の原理に基づいたALPHA技術により、行われる。ドナービーズに連結された分子がアクセプタービーズに連結された分子と生物学的に相互作用する場合かつこれら2つのビーズが近接して配置されている場合にのみ、発光シグナルが検出される。レーザービームで励起されると、ドナービーズ内の光増感剤が、ビーズの周囲の酸素を励起一重項酸素に変換する。一重項酸素がドナービーズの周囲に拡散して、近接して配置されたアクセプタービーズに到達すると、アクセプタービーズ内で化学発光反応が誘導される。この反応は最終的に発光をもたらす。ドナービーズに連結された分子がアクセプタービーズに連結された分子と相互作用しないと、ドナービーズによって生成された一重項酸素はアクセプタービーズに到達せず、化学発光反応は起こらない。
【0129】
例えば、ビオチン標識した抗原結合分子または抗体をドナービーズに固定化し、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ付きFcγ受容体をアクセプタービーズに固定化する。競合する変異体Fcドメインを含む抗原結合分子および抗体の非存在下では、Fcγ受容体は野生型Fcドメインを含む抗原結合分子または抗体と相互作用し、結果として520~620nmのシグナルを誘導する。タグ付きでない変異体Fcドメインを有する抗原結合分子または抗体は、Fcγ受容体との相互作用について、野生型Fcドメインを含む抗原結合分子または抗体と競合する。相対的な結合アフィニティは、競合の結果としての蛍光の減少を定量化することによって測定することができる。抗原結合分子または抗体、例えば抗体を、スルホ-NHS-ビオチンなどを用いてビオチン化する方法は公知である。GSTタグをFcγ受容体に付加するための適切な方法には、Fcγ受容体をコードするポリペプチドとGSTをインフレームで融合させること、融合した遺伝子を担持するベクターを導入した細胞を用いて該遺伝子を発現させること、およびその後、グルタチオンカラムを用いて精製することを含む方法が含まれる。誘導されたシグナルは、好ましくは、例えば、GRAPHPAD PRISM(GraphPad; San Diego)などのソフトウェアを用いて、非線形回帰分析に基づく1サイト競合モデルにフィッティングさせることによって、解析することができる。
【0130】
それらの相互作用を観察するための物質の一方は、リガンドとしてセンサーチップの金薄層上に固定化される。金薄層とガラスの界面で全反射が起こるようにセンサーチップの裏面に光を当てると、特定の部位で反射光の強度が部分的に低下する(SPRシグナル)。それらの相互作用を観察するためのもう一方の物質は、分析物としてセンサーチップの表面に注入される。固定化されたリガンド分子の質量は、分析物が該リガンドに結合すると増加する。これにより、センサーチップの表面上の溶媒の屈折率が変化する。屈折率の変化は、SPRシグナルの位置シフトを引き起こす(逆に、解離によってシグナルが元の位置に戻される)。Biacoreシステムでは、上記のシフト量(すなわち、センサーチップ表面での質量の変化)を縦軸にプロットし、したがって質量の経時変化が実測データ(センサーグラム)として表示される。速度論的パラメーター(会合速度定数(ka)および解離速度定数(kd))はセンサーグラムの曲線から決定され、アフィニティ(KD)はこれら2つの定数間の比率から決定される。阻害アッセイは、BIACORE法において使用することが好ましい。そのような阻害アッセイの例は、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103(11), 4005-4010に記載されている。
【0131】
低下したFcγ受容体結合活性を有するFc領域
本明細書において、「低下したFcγ受容体結合活性」とは、例えば、上記の解析方法に基づいて、試験抗原結合分子または抗体の競合活性が、対照抗原結合分子または抗体の競合活性に比べて、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、または15%以下、特に好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下であることを意味する。
【0132】
モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体のFcドメインを含む抗原結合分子または抗体は、対照抗原結合分子または抗体として適切に使用することができる。Fcドメイン構造は、RefSeqアクセッション番号AAC82527.1、RefSeqアクセッション番号AAB59393.1、RefSeqアクセッション番号CAA27268.1、およびRefSeqアクセッション番号AAB59394.1に示される。さらに、特定のアイソタイプの抗体のFcドメイン変異体を含む抗原結合分子または抗体を試験物質として使用する場合、Fcγ受容体結合活性に対する該変異体の変異の影響は、対照として、同じアイソタイプのFcドメインを含む抗原結合分子または抗体を用いて評価される。上述したように、Fcγ受容体結合活性が低下していると判断されたFcドメイン変異体を含む抗原結合分子または抗体が好適に調製される。
【0133】
そのような既知の変異体には、例えば、アミノ酸231A~238S(EUナンバリング)の欠失を有する変異体(WO2009/011941)、ならびに変異体C226S、C229S、P238S、(C220S)(J. Rheumatol (2007) 34, 11);C226SおよびC229S(Hum. Antibod. Hybridomas (1990) 1(1), 47-54);C226S、C229S、E233P、L234V、およびL235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)が含まれる。
【0134】
具体的には、好ましい抗原結合分子または抗体には、特定のアイソタイプの抗体のFcドメインを形成するアミノ酸におけるアミノ酸位置:220、226、229、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、264、265、266、267、269、270、295、296、297、298、299、300、325、327、328、329、330、331、または332(EUナンバリング)から選択される少なくとも1つのアミノ酸の変異(置換など)を有するFcドメインを含むものが含まれる。Fcドメインの由来となる抗体のアイソタイプは特に限定されず、モノクローナルIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体に由来する適切なFcドメインを使用することが可能である。IgG1抗体に由来するFcドメインを使用することが好ましい。
【0135】
本発明において、SG181が、Fcγ受容体に対するFc結合を弱めるFcγ受容体サイレンシングFcとして用いられてもよい。いくつかの態様において、SG181.S3n(配列番号:101)およびSG181.S3p(配列番号:102)が、重鎖定常領域配列として用いられてもよい。これらの重鎖定常領域配列を、低下したFcγ受容体結合のために本発明の抗原結合分子または抗体に含めてもよい。
【0136】
他の好ましい抗原結合分子または抗体には、例えば、IgG1抗体のFcドメインを形成するアミノ酸における位置233、234、235、236、237、327、330、または331(EUナンバリング)の任意のアミノ酸が、対応するIgG2またはIgG4中のEUナンバリングにおいて対応する位置のアミノ酸で置換されているFcドメインを含むものが含まれる。
【0137】
いくつかの態様において、本発明の多重特異性抗原結合分子は、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低下した結合アフィニティを示すFcドメインをさらに含む。いくつかの態様では、本発明の多重特異性抗原結合分子において、Fcドメインは、235位のArgおよび236位のArgを含み、アミノ酸位置は、EUナンバリングに従って番号付けされている。
【0138】
H鎖/L鎖の会合および他の特性の調節
本発明の別の態様は、重鎖と軽鎖との会合が調節されている抗原結合分子、重鎖と軽鎖との会合が調節されている抗原結合分子を製造する方法、および抗原結合分子において重鎖と軽鎖との会合を調節する方法に関する。
【0139】
本発明の抗原結合分子は、重鎖と軽鎖との会合が調節されている、抗原結合分子を構成する重鎖および軽鎖が目的の重鎖と軽鎖との組み合わせである、ならびに重鎖の定常領域(CH1)および軽鎖の定常領域(CL)における所与の場所のアミノ酸残基が、互いに電気的に反発するアミノ酸残基(同じ電荷を有する)である、抗原結合分子に関する。
【0140】
本発明において、重鎖と軽鎖との望ましくない組み合わせのCH1およびCLにおける所与の場所のアミノ酸残基を、互いに電気的に反発する(すなわち、同じ電荷を有する)アミノ酸残基にすることによって、重鎖と軽鎖との望ましくない組み合わせの形成を、この電荷反発の利用により阻止することができ、結果として、重鎖と軽鎖との望ましい組み合わせを形成することができる。
【0141】
本発明において、語句「会合を調節すること」および「会合が調節される」は、所望の会合条件を達成するための調節のことをいい、より具体的には、重鎖と軽鎖との間に望ましくない会合が形成されないような調節のことをいう。
【0142】
本発明において、用語「境界面」は、通常、会合(相互作用)に起因する会合面のことをいい、境界面を形成するアミノ酸残基は、普通は、会合に関わるポリペプチド領域に含まれる1つまたは複数のアミノ酸残基であり、より好ましくは、会合中に互いに接近して、相互作用に関与するアミノ酸残基である。より具体的には、この相互作用には、例えば、アミノ酸残基が、互いに水素結合、静電相互作用、または塩橋を形成するように会合中に近づく場合が含まれる。
【0143】
本発明において、語句「境界面を形成するアミノ酸残基」は、より具体的には、境界面を構成するポリペプチド領域に含まれるアミノ酸残基のことをいう。例えば、境界面を構成するポリペプチド領域は、例えば抗原結合分子(例えば、抗体)、リガンド、受容体、または基質における、分子間の選択的結合を担うポリペプチド領域のことをいう。より具体的には、抗原結合分子において、そのような例には、重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、および軽鎖可変領域が含まれる。
【0144】
本発明の抗原結合分子の好ましい態様において、抗原結合分子は、会合調節前の重鎖と軽鎖との望ましくない組み合わせのCH1およびCL中の所与の場所に、電気的に反発する(同じ電荷を有する)アミノ酸残基を有する。
【0145】
前述の抗原結合分子におけるアミノ酸残基を改変して、互いに電気的に反発する(同じ電荷を有する)アミノ酸残基にすることによって、これらのアミノ酸残基の会合は、電荷の反発力によって阻害されると考えられる。
【0146】
したがって、前述の抗原結合分子において、改変されるアミノ酸残基は、好ましくは、境界面を形成するポリペプチド領域において、会合時に互いに接近するアミノ酸残基である。
【0147】
会合中に接近するアミノ酸残基は、例えば、ポリペプチドの三次元構造を解析すること、およびポリペプチド会合中に境界面を形成するポリペプチド領域のアミノ酸配列を調べることによって、決定することができる。互いに接近する境界面のアミノ酸残基は、互いに、本発明の抗原結合分子における「改変」の好ましい標的である。
【0148】
いくつかのアミノ酸は、荷電していることが公知である。一般的に、リジン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)は、正電荷を有するアミノ酸(正荷電アミノ酸)であることが公知である。アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)などは、負電荷を有するアミノ酸(負荷電アミノ酸)であることが公知である。加えて、アラニン(A)、アスパラギン(N)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、バリン(V)などは、電荷を有さないアミノ酸、または非極性アミノ酸であることが公知である。
【0149】
したがって、本発明における互いに電気的に反発する(同じ電荷を有する)アミノ酸は、以下のことをいう:
(1) アミノ酸の一方が正荷電アミノ酸であり、他方のアミノ酸も正荷電アミノ酸である、アミノ酸、および
(2) アミノ酸の一方が負荷電アミノ酸であり、他方のアミノ酸も負荷電アミノ酸である、アミノ酸。
【0150】
アミノ酸改変の例には、非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸の正荷電アミノ酸への改変、非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸の負荷電アミノ酸への改変、正荷電アミノ酸の負荷電アミノ酸への改変、および負荷電アミノ酸の正荷電アミノ酸への改変が含まれる。さらに、非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸の異なる非荷電または非極性アミノ酸への改変、正荷電アミノ酸の異なる正荷電アミノ酸への改変、および負荷電アミノ酸の異なる負荷電アミノ酸への改変もまた、本発明のアミノ酸改変に含まれる。
【0151】
本発明におけるアミノ酸を改変することは、重鎖および軽鎖の各々において1つの改変を行うこと、または重鎖および軽鎖の各々に対して複数の改変を行うことを含む。加えて、重鎖および軽鎖に加えられる改変の数は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0152】
本発明におけるアミノ酸を改変することは、重鎖または軽鎖のいずれか上で正荷電アミノ酸への複数の改変を行うこと、および他方の鎖上で負荷電アミノ酸への複数の改変を行うことを含む。さらに、正荷電アミノ酸への複数の改変および負荷電アミノ酸への複数の改変は、同じ重鎖または軽鎖上で行われてもよい。これらの改変において、非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸への改変および非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸の改変もまた、好適に組み合わされてもよい。
【0153】
本発明の改変において、例えば、鎖の一方上のアミノ酸を、改変されることのない状態で用いることができ、そのような場合には、重鎖および軽鎖は、両方とも改変される必要はなく、鎖の一方のみが改変されてもよい。
【0154】
本発明の抗原結合分子の軽鎖定常領域は、好ましくはヒト軽鎖定常領域である。抗体軽鎖定常領域の例には、IgK(κ)、IgL1、IgL2、IgL3、IgL6、およびIgL7(λ)タイプの定常領域が含まれる。本発明の抗原結合分子の軽鎖定常領域は、特に限定されず;複数タイプの軽鎖を用いる場合には、軽鎖は、異なるタイプの軽鎖、例えば、κおよびλであってもよい。遺伝子多型によって得られるいくつかのアロタイプ配列が、ヒトIgK(κ)定常領域およびヒトIgL7(λ)定常領域としてSequences of Proteins of Immunological Interest, NIH Publication No. 91-3242に記載されており、これらのうちの任意のものが、本発明において用いられてもよい。
【0155】
抗体定常領域、特に、重鎖定常領域は、抗原結合分子の機能または安定性を改善するために、必要に応じて改変されてもよい。抗原結合分子の機能を改善するための改変の例には、抗原結合分子とFcγ受容体(「FcγR」)との間の結合を強くするかまたは弱くする改変、抗原結合分子とFcRnとの間の結合を強くするかまたは弱くする改変、抗原結合分子の細胞傷害活性(例えばADCC活性およびCDC活性)を強くするかまたは弱くする改変などが含まれる。加えて、抗原結合分子の不均一性を改善する改変、ならびに非免疫原性および/または薬物動態を改善する改変もまた、含まれ得る。
【0156】
さらに、IgG抗体の重鎖C末端配列の不均一性として、C末端アミノ酸であるリジン残基の欠失による、または2つのC末端アミノ酸であるグリシンおよびリジンの欠失によるC末端カルボキシル基のアミド化が報告されている(Anal. Biochem. 2007 Jan 1:360(1):75-83)。
したがって、本発明において、重鎖C末端の不均一性を低くするために、C末端のリジンまたはC末端のリジンおよびグリシンが欠失しているIgGを用いることが好ましい。
ヒト由来の配列を用いるキメラ抗体およびヒト化抗体は、ヒト身体におけるそれらの抗原性が弱められているため、治療的目的などでヒトに投与される場合に有用であることが期待される。
【0157】
本発明の抗原結合分子の好ましい例は、2タイプ以上のCH1および2タイプ以上のCLを有するヘテロマー多量体である。このヘテロマー多量体は、好ましくは、2タイプ以上のエピトープに結合し、その例は、多重特異性抗体である。
【0158】
本発明の多重特異性抗体の好ましい例は、二重特異性抗体である。したがって、本発明の抗原結合分子の好ましい態様の例は、2タイプの重鎖(第1の重鎖および第2の重鎖)ならびに2タイプの軽鎖(第1の軽鎖および第2の軽鎖)から構成される二重特異性抗体である。
【0159】
本発明の抗原結合分子の好ましい態様の「二重特異性抗体」をより正確に説明すると、上述の「第1の重鎖」は、抗体を形成する2本の重鎖(H鎖)のうちの一方のことをいい、「第2のH鎖」は、第1のH鎖とは異なる他方のH鎖のことをいう。すなわち、2本のH鎖について、そのうちの一方を任意に第1のH鎖として定義することができ、他方を第2のH鎖として定義することができる。同様に、「第1の軽鎖」は、二重特異性抗体を形成する2本の軽鎖(L鎖)のうちの一方のことをいい、「第2のL鎖」は、第1のL鎖とは異なる他方のL鎖のことをいう。2本のL鎖について、そのうちの一方を任意に第1のL鎖として定義することができ、他方を第2のL鎖として定義することができる。普通は、第1のL鎖および第1のH鎖は、特定の抗原(またはエピトープ)に結合する同じ抗体に由来し、第2のL鎖および第2のH鎖もまた、特定の抗原(またはエピトープ)に結合する同じ抗体に由来する。本明細書において、第1のH鎖とL鎖とによって形成されたL鎖-H鎖ペアは、第1のペアと呼ばれ、第2のH鎖とL鎖とによって形成されたL鎖-H鎖ペアは、第2のペアと呼ばれる。第2のペアが由来する抗体を産生するために用いられる抗原(またはエピトープ)は、好ましくは、第1のペアが由来する抗体を産生するために用いられる抗原とは異なる。より具体的には、第1のペアおよび第2のペアによって認識される抗原は、同じであってもよいが、好ましくは、ペアは、異なる抗原(またはエピトープ)に結合する。この場合には、第1のペアおよび第2のペアのH鎖とL鎖は、好ましくは、互いとは異なるアミノ酸配列を有する。第1のペアおよび第2のペアが異なるエピトープに結合する場合、第1のペアおよび第2のペアは、完全に異なる抗原を認識してもよく、または、同じ抗原上の異なる部位(異なるエピトープ)を認識してもよい。さらに、それらの一方は、タンパク質、ペプチド、遺伝子、または糖などの抗原を認識してもよく、他方は、放射性物質、化学療法剤、または細胞由来毒素などの細胞傷害性物質を認識してもよい。しかし、H鎖とL鎖との特定の組み合わせによって形成されるペアを有する抗体を産生することを望む場合、それらの特定のH鎖およびL鎖が、第1のペアおよび第2のペアであると任意に決定されてもよい。
【0160】
より詳細な説明を、2タイプの重鎖定常領域CH1(CH1-AおよびCH1-B)ならびに2タイプの軽鎖定常領域(CL-AおよびCL-B)を有するIgGタイプの二重特異性抗体の場合について以下に提供する;しかし、本発明は、他の抗体にも同様に適用され得る。
【0161】
第1のCH1-Aおよび第1のCL-Aによって1つのエピトープを認識し、第2のCH1-Bおよび第2のCL-Bによって別のエピトープに結合するであろう二重特異性抗体を得ることを望む場合、理論的に、その抗体を産生するために4タイプの鎖の各々を発現させると、10タイプの抗体分子が産生され得る可能性がある。
【0162】
この場合に、例えば、CH1-AとCL-Bのおよび/またはCH1-BとCL-Aとの間の会合が阻害されるように会合が調節されるならば、所望の抗体分子を優先的に獲得することができる。
【0163】
例は、CH1-AとCL-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基を改変して、正荷電アミノ酸残基にすること、およびCH1-BとCL-Aとの間の境界面を形成するアミノ酸残基を改変して、負荷電アミノ酸残基にすることである。これらの改変の結果として、CH1-AとCL-Bとの間の意図されない会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が両方とも正に荷電しているために阻害され、かつCH1-BとCL-Aとの間の会合もまた、境界面を形成するアミノ酸残基が両方とも負に荷電しているために阻害される。このように、意図されないCH1-AとCL-Bとの間の会合およびCH1-BとCL-Aとの間の会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が互いに同じ電荷を有するために阻害される。結果として、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合およびCH1-BとCL-Bとの間の意図された会合を有する抗体を、効率的に獲得することができる。さらに、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が互いとは異なるタイプの電荷を有するために促進され;かつCH1-BとCL-Bとの間の意図された会合もまた、境界面を形成するアミノ酸残基が互いとは異なるタイプの電荷を有するために促進される。結果的に、意図された会合を有する抗体を、効率的に得ることができる。
【0164】
別の例は、CL-AとCH1-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基が、互いに非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸である場合に、CH1-AとCL-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基を改変して、正荷電アミノ酸残基にすることである。この改変の結果として、CH1-AとCL-Bとの間の意図されない会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が両方とも正に荷電しているために阻害される。他方、境界面を形成するアミノ酸残基が、互いに電気的に反発しないアミノ酸であるため、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合およびCH1-BとCL-Bとの間の意図された会合は、アミノ酸が電気的に反発する場合よりも容易に起こると考えられる。結果的に、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合およびCH1-BとCL-Bとの間の意図された会合を有する抗体を、効率的に得ることができる。一方、この例において、CL-AとCH1-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基が、互いに非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸ではない場合には、それらは、互いに非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸になるように改変されてもよい。
【0165】
さらに、別の例において、CL-BとCH1-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基が、CH1-Bにおいて非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸である場合には、CH1-AとCL-Aとの間の境界面を形成するアミノ酸残基の一方を改変して正荷電アミノ酸残基にすると同時に、他方を改変して負荷電アミノ残基にし;かつCL-BにおけるCL-BとCH1-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基を、CH1-Aに対して行われた改変と同じ電荷を有するように改変する。この改変の結果として、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が正電荷と負電荷との組み合わせであるために促進されるが、CH1-BとCL-Bとの間の意図された会合は、境界面を形成するアミノ酸残基が互いに電気的に反発しないアミノ酸であるために阻害されない。結果として、CH1-AとCL-Aとの間の意図された会合、およびCH1-BとCL-Bとの間の意図された会合を有する抗体を、効率的に得ることができる。一方、この例において、CL-BとCH1-Bとの間の境界面を形成するアミノ酸残基が、CH1-Bにおいて非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸ではない場合には、それらは、非荷電アミノ酸または非極性アミノ酸になるように改変されてもよい。
【0166】
加えて、本発明の会合調節の使用により、CH1(CH1-AとCH1-B)の間の会合、またはCL(CL-AとCL-B)の間の会合を抑制することが可能になる。
【0167】
当業者は、本発明による会合の調節が望ましい所望のポリペプチドにおいて、CH1とCLとの境界面で会合中に近づくアミノ酸残基のタイプを好適に決定することができるであろう。
【0168】
さらに、当業者はまた、公的データベースなどを用いることによって、ヒト、サル、マウス、ウサギなどのような生物における抗体のCH1またはCLとして用いられ得る配列も、好適に獲得することができる。より具体的には、CH1またはCLのアミノ酸配列情報を、下記の実施例に記載される手段によって獲得することができる。
【0169】
例えば、以下の実施例に記載される二重特異性抗体に関して、会合時にCH1とCLとの境界面で近づく(対面するかまたは接触する)アミノ酸残基の具体例には、以下に示される組み合わせが含まれる:
‐CH1中のEUナンバリングに従って175位のグルタミン(Q)、ならびに対面する(接触する)CL中のKabatナンバリングに従って160位のグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E);
‐CH1中のEUナンバリングに従って175位のグルタミン(Q)、ならびに対面する(接触する)CL中のKabatナンバリングに従って131位のスレオニン(T)またはセリン(S);
‐CH1中のEUナンバリングに従って175位のグルタミン(Q)、ならびに対面する(接触する)CL中のKabatナンバリングに従って131位のセリン(S)またはスレオニン(T)および160位のグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E);ならびに、
‐CH1中のEUナンバリングに従って147位のリジン(K)および175位のグルタミン(Q)、ならびに対面する(接触する)CL中のKabatナンバリングに従って131位のセリン(S)またはスレオニン(T)および160位のグルタミン(Q)またはグルタミン酸(E)。
【0170】
本発明においてEUナンバリングで記載される数字は、EUナンバリング(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No. 91-3242)に従って示される。本発明において、語句「EUナンバリングに従ってX位のアミノ酸残基」および「EUナンバリングに従ってX位のアミノ酸」(Xは任意の数字である)はまた、「EUナンバリングに従ってX位に対応するアミノ酸残基」および「EUナンバリングに従ってX位に対応するアミノ酸」と読むこともできる。下記の実施例に示されるように、所望の抗原結合分子は、これらのアミノ酸残基を改変すること、および本発明の方法を実施することによって、優先的に獲得することができる。
【0171】
ある態様において、本発明は、重鎖と軽鎖との会合が調節されている抗原結合分子であって、該抗原結合分子の重鎖および軽鎖における以下の(a)~(c)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つまたは2つまたはそれ以上のアミノ酸残基セットが、互いに電気的に反発するアミノ酸残基である、抗原結合分子を提供する:
(a) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c) EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;ならびに
(d) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基。
【0172】
前述の抗原結合分子において、「互いに電気的に反発するアミノ酸残基」または「同じ電荷を有するアミノ酸残基」は、好ましくは、例えば、以下の(X)または(Y)のセットのいずれかに含有されるアミノ酸残基から選択される:
(X) グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D);または
(Y) リジン(K)、アルギニン(R)、もしくはヒスチジン(H)。
【0173】
前述の抗原結合分子において、互いに電気的に反発するアミノ酸残基セットの具体例には、以下のアミノ酸残基セットが含まれる:
(a) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにEUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c) EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(d) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基。
【0174】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、抗原結合分子の重鎖および軽鎖における以下の(a)~(d)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つ、2つ、3つ、または全てのアミノ酸残基セットは、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基である:
(a) EUナンバリングに従って175位である、重鎖定常領域(CH1)中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位である、軽鎖定常領域(CL)中のアミノ酸残基、
(b) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って160位である、CL中のアミノ酸残基、
(c) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基、
(d) EUナンバリングに従って147位および175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基。
【0175】
本発明は、抗原結合分子の重鎖および軽鎖における以下の(a1)~(c2)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つまたは2つまたはそれ以上のアミノ酸残基セットが、互いに電気的に反発するアミノ酸残基である、抗原結合分子を提供する:
(a1) グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(a2) リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにリジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b1) グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b2) リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにリジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c1) 各々グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c2) 各々リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基。
【0176】
前述の抗原結合分子において、互いに電気的に反発するアミノ酸残基の具体例には、以下のアミノ酸残基が含まれる:
(a1) グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(a2) リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにリジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b1) グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(b2) リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびにリジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c1) 各々グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c2) 各々リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って147位および175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(d1) グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々グルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(d2) リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、ならびに各々リジン(K)、ヒスチジン(H)、またはアルギニン(R)である、EUナンバリングに従って131位および160位の、CLに含有されるアミノ酸残基。
【0177】
上記に加えて、CH1とCLとの間の境界面上に電荷反発を導入することによって、目的でない会合したCH1/CLを阻害するための手法(WO 2013/065708)を、本発明の抗原結合分子にさらに適用することができる。より具体的には、本発明は、CH1およびCLを有する抗原結合分子であって、以下の(a)~(d)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つまたは2つまたはそれ以上のアミノ酸残基セットが、互いに電気的に反発する、抗原結合分子を提供する:
(a) EUナンバリングに従って147位の、重鎖定常領域(CH1)に含有されるアミノ酸残基、およびEUナンバリングに従って160位の、軽鎖定常領域(CL)に含有されるアミノ酸残基;
(b) EUナンバリングに従って147位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、およびEUナンバリングに従って131位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(c) EUナンバリングに従って175位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、およびEUナンバリングに従って160位の、CLに含有されるアミノ酸残基;
(d) EUナンバリングに従って213位の、CH1に含有されるアミノ酸残基、およびEUナンバリングに従って123位の、CLに含有されるアミノ酸残基。
【0178】
重鎖間の望ましくない会合を抑制するように、重鎖の第2の定常領域(CH2)もしくは重鎖の第3の定常領域(CH3)の境界面中に電気的反発を導入するための手法、重鎖と軽鎖との間の意図されない会合を抑制するように、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との境界面中に電気的反発を導入するための手法、または、重鎖と軽鎖との間の意図されない会合を抑制するように、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との境界面に存在する疎水性コアを形成するアミノ酸残基を改変して、電荷を有する極性アミノ酸にするための手法を、本発明の抗原結合分子にさらに適用することができる(WO 2006/106905を参照のこと)。
【0179】
CH2またはCH3の境界面に電気的反発を導入することによって重鎖間の意図されない会合を抑制する手法において、重鎖の他の定常領域の境界面で接触するアミノ酸残基の例には、CH3領域における356位(EUナンバリング)および439位(EUナンバリング)、357位(EUナンバリング)および370位(EUナンバリング)、ならびに399位(EUナンバリング)および409位(EUナンバリング)が含まれる。抗体定常領域の番号付けについては、Kabatらによる刊行物(Kabat, E.A., et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, NIH)を参照してもよく;重鎖定常領域の番号付けについては、EUナンバリングが示される。
【0180】
より具体的には、例えば、2タイプの重鎖CH3領域を含有する抗原結合分子において、以下の(1)~(3)のアミノ酸残基セットから選択される第1の重鎖CH3領域における1つから3つのアミノ酸残基セットは、互いに電気的に反発するように作製されてもよい:
(1) EUナンバリングに従って356位および439位の、重鎖CH3領域に含有されるアミノ酸残基;
(2) EUナンバリングに従って357位および370位の、重鎖CH3領域に含有されるアミノ酸残基;ならびに
(3) EUナンバリングに従って399位および409位の、重鎖CH3領域に含有されるアミノ酸残基。
【0181】
さらに、抗体は、前述の第1の重鎖CH3領域とは別個の、第2の重鎖CH3領域におけるアミノ酸残基セットを有する抗体であることができ、該アミノ酸残基セットは、上記の(1)~(3)に示されるアミノ酸残基セットから選択され、かつ、第1の重鎖CH3領域において互いに電気的に反発する、上記の(1)~(3)に示されるアミノ酸残基セットに対応する1つから3つのアミノ酸残基セットは、第1の重鎖CH3領域における対応するアミノ酸残基とは電気的に反発しない。
【0182】
上記の(1)~(3)に記載されるアミノ酸残基は、会合時に互いに接近する。当業者は、市販されているソフトウェアを用いたホモロジーモデリングなどによって、所望の重鎖CH3領域または重鎖定常領域のための上述の(1)~(3)に記載されるアミノ酸残基に対応する部位を見出し、かつそれらの部位のアミノ酸残基を好適に改変することができるであろう。
【0183】
前述の抗原結合分子において、「電気的に反発する」、「同じ電荷を有する」、または「同じ電荷を保有する」とは、例えば、任意の2つ以上のアミノ酸残基が、本明細書で述べられる(X)および(Y)のいずれか1つの群に含有されるアミノ酸残基を有することを意味する。
【0184】
前述の抗原結合分子の好ましい態様において、第1の重鎖CH3領域と第2の重鎖CH3領域とは、ジスルフィド結合によって架橋されてもよい。
【0185】
本発明において、「改変」に供されるアミノ酸残基は、上述の抗原結合分子可変領域または抗体定常領域のアミノ酸残基に限定されない。当業者は、市販されているソフトウェアを用いたホモロジーモデリングなどによって、ポリペプチドバリアントまたはヘテロマー多量体において境界面を形成するアミノ酸残基を見出し、かつ会合を調節するためにそれらの部位のアミノ酸残基を改変することができるであろう。ホモロジーモデリングは、市販されているソフトウェアを用いてタンパク質の三次元構造を予測するための手法である。未知の三次元構造を有するタンパク質の構造を構築する場合、最初に、タンパク質に対して高い相同性の三次元構造を有すると判定されているタンパク質を検索する。次に、この三次元構造を鋳型として用いて、未知の構造を有するタンパク質の構造を構築し、分子動力学法などによって構造をさらに最適化して、未知のタンパク質の三次元構造を予測する。
【0186】
重鎖と軽鎖との望ましくない会合を抑制するように、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との境界面中に電気的反発を導入するための手法において、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)との境界面で接触するアミノ酸残基の例には、VH(FR2領域)中のKabatナンバリングに従って39位のグルタミン(Q)、および対面する(接触する)VL(FR2領域)中のKabatナンバリングに従って38位のグルタミン(Q)が含まれる。さらに、好ましい例は、VH(FR2)中のKabatナンバリングに従って45位のロイシン(L)、および対面するVL(FR2)中のKabatナンバリングに従って44位のプロリン(P)である。Kabatらによる刊行物(Kabat, E.A., et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, NIH)を、これらの部位の番号付けのために参照した。
【0187】
これらのアミノ酸残基は、ヒトおよびマウスにおいて高度に保存されていることが公知である(J. Mol. Recognit. 2003; 16: 113-120)ため、抗原結合分子の可変領域の会合を、上述のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基を改変することによって、実施例に示されるもの以外の抗原結合分子のVH-VL会合のために調節することができる。
【0188】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、さらに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基は、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基である。
【0189】
具体例は、VHとVLとの境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基が、互いに電気的に反発するアミノ酸残基である、抗原結合分子である。より具体的には、例には、以下の(a)または(b)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つのアミノ酸残基セットまたは2つのアミノ酸残基セットを有する抗原結合分子が含まれる:
(a) Kabatナンバリングに従って39位の、VHに含有されるアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って38位の、VLに含有されるアミノ酸残基;または
(b) Kabatナンバリングに従って45位の、VHに含有されるアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って44位の、VLに含有されるアミノ酸残基。
【0190】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基は、以下の(a)および(b)のアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つまたは2つのアミノ酸残基セットである:
(a) Kabatナンバリングに従って39位である、重鎖可変領域中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って38位である、軽鎖可変領域中のアミノ酸残基、
(b) Kabatナンバリングに従って45位である、重鎖可変領域中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って44位である、軽鎖可変領域中のアミノ酸残基。
【0191】
前述の(a)または(b)に記載されるアミノ酸残基の各々は、会合時に互いに接近する。当業者は、市販されているソフトウェアを用いたホモロジーモデリングなどによって、所望のVHまたはVLにおける前述の(a)または(b)に記載されるアミノ酸残基に対応する部位を見出し、かつそれらの部位のアミノ酸残基を好適に改変することができるであろう。
【0192】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基は、以下の(X)または(Y)のいずれかのセットに含まれるアミノ酸残基から選択される:
(X) グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(Y) リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。
【0193】
重鎖と軽鎖との意図されない会合を抑制するように、VHとVLとの境界面に存在する疎水性コアを形成するアミノ酸残基を改変して、電荷を有する極性アミノ酸にするための手法において、VHとVLとの境界面で疎水性コアを形成することができるアミノ酸残基の好ましい例には、VH(FR2)中のKabatナンバリングに従って45位のロイシン(L)、および対面するVL(FR2)中のKabatナンバリングに従って44位のプロリン(P)が含まれる。これらの部位の番号付けについては、Kabatら(Kabat, E.A., et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, NIH)を参照として用いた。
【0194】
一般的に、用語「疎水性コア」は、会合したポリペプチドの内部に疎水性アミノ酸側鎖の集合によって形成される部分のことをいう。疎水性アミノ酸の例には、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、およびバリンが含まれる。さらに、疎水性アミノ酸以外のアミノ酸残基(例えば、チロシン)が、疎水性コアの形成に関与し得る。この疎水性コアは、親水性アミノ酸側鎖が外部に曝露されている親水性表面と共に、水溶性ポリペプチドの会合を促進するための駆動力になる。2つの異なるドメインの疎水性アミノ酸が、分子表面上に存在し、かつ水分子に曝露される場合には、エントロピーが増大し、かつ自由エネルギーが増大するであろう。したがって、2つのドメインは、自由エネルギーを減少させて安定になるために互いと会合し、境界面の疎水性アミノ酸は、疎水性コアを形成するように分子の内部中に埋められることになる。
【0195】
ポリペプチド会合が起こる場合に、疎水性コアを形成する疎水性アミノ酸を改変して、電荷を有する極性アミノ酸にすることによって、疎水性コアの形成が阻害されると考えられ;結果的に、ペプチド会合が阻害されると考えられる。
【0196】
当業者は、所望の抗原結合分子についてのアミノ酸配列を解析することによって、疎水性コアの有無、形成部位(領域)などを認識することができるであろう。すなわち、本発明の抗原結合分子は、境界面で疎水性コアを形成することができるアミノ酸残基が改変されて、電荷を有するアミノ酸残基になっていることを特徴とする抗原結合分子である。より具体的には、例には、以下の(1)または(2)のいずれかに示されるアミノ酸残基が、電荷を有するアミノ酸残基である、抗原結合分子が含まれる。以下の(1)および(2)に示されるアミノ酸残基の側鎖は、互いに隣接し、疎水性コアを形成することができる:
(1) Kabatナンバリングに従って45位の、VHに含有されるアミノ酸残基;および
(2) Kabatナンバリングに従って44位の、VLに含有されるアミノ酸残基。
【0197】
前述の抗原結合分子における電荷を有するアミノ酸残基の好ましい例には、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、リジン(K)、アルギニン(R)、およびヒスチジン(H)が含まれる。より好ましい例には、グルタミン酸(E)およびリジン(K)が含まれる。
【0198】
一般的に、ヒトおよびマウスにおける前述の(1)および(2)に記載されるアミノ酸残基は、それぞれ以下である:
(1) ロイシン(L)、および
(2) プロリン(P)。
したがって、本発明の好ましい態様において、これらのアミノ酸残基は、改変(例えば、電荷を有するアミノ酸での置換)に供される。さらに、(1)および(2)の前述のアミノ酸残基のタイプは、必ずしも前述のアミノ酸残基に限定されないが、これらのアミノ酸残基と等価の他のアミノ酸であってもよい。
【0199】
他の公知の手法を、本発明の抗原結合分子に適用することができる。例えば、第1のVH(VH1)と第1のVL(VL1)および/または第2のVH(VH2)と第2のVL(VL2)との会合を促進するために、H鎖の一方の可変領域中に存在するアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(ノブ(knob))で置換することができ、他方のH鎖の向かい合う可変領域中に存在するアミノ酸側鎖を、より小さい側鎖(ホール(hole))で置換することができ、これにより、ノブがホール中に配置されてもよく、VH1とVL1および/またはVH2とVL2との会合が促進され;かつ結果的に、VH1とVL2および/またはVH2とVL1との会合を、さらに抑制することができる。
【0200】
例えば、ヒトIgG1の場合に、一方のH鎖のCH3領域中のアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(ノブ)にするために、Y349CおよびT366Wの改変が行われ、他方のH鎖のCH3領域中のアミノ酸側鎖をより小さい側鎖にするために、D356C、T336S、L368A、およびY407Vの改変が行われる。
【0201】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、Fcドメインは、安定な会合が可能である第1のFc領域サブユニットおよび第2のFc領域サブユニットから構成される。
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、Fcドメインは、以下の(e1)または(e2)を含む:
(e1) 349位のCys、366位のSer、368位のAla、および407位のValを含む第1のFc領域サブユニット、ならびに354位のCysおよび366位のTrpを含む第2のFc領域;
(e2) 439位のGluを含む第1のFc領域サブユニット、ならびに356位のLysを含む第2のFc領域
(アミノ酸位置は、EUナンバリングに従って番号付けされている)。
【0202】
例えば、ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)技術は、例えば、US 5731168;US 7695936;Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)およびCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載されている。一般的に、方法は、第1のポリペプチドの境界面に突起(「ノブ」)を、および第2のポリペプチドの境界面に対応する空洞(「ホール」)を、ヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨げるために、突起が空洞中に位置できるように導入することを含む。突起は、第1のポリペプチドの境界面由来の小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築する。突起と同一または類似のサイズの代償的空洞は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの境界面に作り出す。
【0203】
さらに他の公知の手法を、本発明の抗原結合分子に適用することができる。抗原結合分子の一方のH鎖のCH3の一部分を、その部分に対応するIgAに由来する配列に変更し、他方のH鎖のCH3の相補的部分に、その部分に対応するIgAに由来する配列を導入する、鎖交換操作ドメインCH3を用いたCH3の相補的会合によって、標的抗原結合分子を効率的に調製することができる(Protein Engineering Design & Selection, 23: 195-202, 2010)。
【0204】
さらに他の公知の手法を、本発明の抗原結合分子に適用することができる。二重特異性抗体を産生する場合には、例えば、2タイプのH鎖の可変領域の各々に異なるアミノ酸改変を行うことにより等電点の違いを与えること、およびイオン交換クロマトグラフィーによる精製のためにその等電点の違いを利用することによって、標的二重特異性抗体を調製することができる(WO 2007/114325)。
【0205】
IgGとプロテインAとの間の結合に関連する部位である、EUナンバリングに従って435位のアミノ酸残基を改変して、プロテインAに対して異なる結合強度を有するアミノ酸、例えばArgにする手法もまた、前述の手法と組み合わせて本発明の抗原結合分子に対して用いられてもよい。この手法を用いることによって、H鎖とプロテインAとの間の相互作用を変更することができ、ヘテロ二量体抗原結合分子のみを、プロテインAカラムを用いて効率的に精製することができる。この手法はまた、前述の手法と組み合わせずに独立して用いることもできる。
【0206】
本発明の改変を、以下のもの、例えば、第1のVH(VH1)と第1のVL(VL1)および/または第2のVH(VH2)と第2のVL(VL2)との会合を促進するために、VH1が第1のCH1を通してFc領域に連結され、VL1が第1のCLに連結されている、かつVH2が第2のCLを通して別のFc領域に連結され、VL2が第2のCH1に連結されている構造を有する抗原結合分子などの、抗原結合分子に対して用いることができる(WO 09/80254)。
【0207】
複数の、例えば、2つ以上の前述の公知の手法を、本発明の抗原結合分子のために組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の抗原結合分子は、前述の公知の手法の改変が行われている抗体に基づいて調製されてもよい。
【0208】
加えて、本発明は、重鎖と軽鎖との間の会合が調節されている、抗原結合分子を産生するための方法を提供する。本発明の産生方法の好ましい態様は、以下の工程を含む、重鎖と軽鎖との間の会合が調節されている抗原結合分子を産生するための方法である:
(1) 以下の(a)~(c)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つのアミノ酸残基セットまたは2つ以上のアミノ酸残基セットが、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基であるように、CH1およびCLをコードする核酸を改変する工程:
(a) EUナンバリングに従って175位である、重鎖定常領域(CH1)中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位である、軽鎖定常領域(CL)中のアミノ酸残基、
(b) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って160位である、CL中のアミノ酸残基、
(c) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基、
(d) EUナンバリングに従って147位および175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにKabatナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基、
(2) 改変された核酸を宿主細胞中に導入する工程、および該核酸が発現されるように宿主細胞を培養する工程;ならびに
(3) 宿主細胞の細胞培養物から抗原結合分子を回収する工程。
【0209】
加えて、本発明は、前述の工程(1)において、互いに電気的に反発するアミノ酸残基が、前述の(X)および(Y)の群のいずれかに含有されるアミノ酸残基の中から選択されるように、核酸を改変することを含む、産生方法に関する。
【0210】
さらに、本発明は、前述の工程(1)において、VHとVLとの境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基が、互いに電気的に反発するアミノ酸残基であるように、核酸を改変することを含む、産生方法に関する。好ましくは、互いに電気的に反発するアミノ酸残基は、例えば、以下の(a)および(b)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される任意のアミノ酸残基セットである:
(a) Kabatナンバリングに従って39位の、VHに含有されるアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って38位の、VLに含有されるアミノ酸残基;または
(b) Kabatナンバリングに従って45位の、VHに含有されるアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って44位の、VLに含有されるアミノ酸残基。
【0211】
互いに電気的に反発する前述のアミノ酸残基は、好ましくは、前述の(X)および(Y)のいずれかのセットに含有されるアミノ酸残基から選択される。
【0212】
加えて、本発明は、抗原結合分子の重鎖と軽鎖との会合を調節するための方法を提供する。本発明の会合を調節するための方法の好ましい態様は、以下の(a)~(c)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される1つのアミノ酸残基セットまたは2つ以上のアミノ酸残基セットが、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基であるように、核酸を改変する工程を含む、抗原結合分子の重鎖と軽鎖との会合を調節するための方法である:
(a) EUナンバリングに従って175位である、重鎖定常領域(CH1)中のアミノ酸残基、ならびにEUナンバリングに従って131位である、軽鎖定常領域(CL)中のアミノ酸残基、
(b) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにEUナンバリングに従って160位である、CL中のアミノ酸残基、
(c) EUナンバリングに従って175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにEUナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基、
(d) EUナンバリングに従って147位および175位である、CH1中のアミノ酸残基、ならびにEUナンバリングに従って131位および160位である、CL中のアミノ酸残基。
【0213】
加えて、本発明は、前述の工程(1)において、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基が、(X)または(Y)のいずれかの前述の群に含有されるアミノ酸残基から選択されるように、核酸を改変することを含む、会合を調節するための方法に関する。
【0214】
さらに、本発明は、前述の工程(1)において、VH-VL境界面を形成する2つ以上のアミノ酸残基が、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基であるように、核酸を改変することを含む、会合を調節するための方法に関する。ここで、互いに静電気的に反発するアミノ酸残基は、好ましくは、例えば、以下の(a)および(b)に示されるアミノ酸残基セットからなる群より選択される任意の1つのアミノ酸残基セットである:
(a) Kabatナンバリングに従って39位である、VH中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って38位である、VL中のアミノ酸残基、
(b) Kabatナンバリングに従って45位である、VH中のアミノ酸残基、およびKabatナンバリングに従って44位である、VL中のアミノ酸残基。
【0215】
本発明の会合を調節するための方法に従って、所望の二重特異性抗体を、以前に記載されたように優先的にかつ効率的に得ることができる。すなわち、二重特異性抗体の形態にある所望のヘテロマー多量体を、単量体混合物から効率的に形成させることができる。
【0216】
本発明の上述の方法における語句「核酸を改変する」は、核酸を、本発明の「改変」によって導かれるアミノ酸残基にそれらが対応するように改変することをいう。より具体的には、これは、元の(改変前の)アミノ酸残基をコードする核酸を改変して、改変により導かれるべきアミノ酸残基をコードする核酸にすることをいう。普通は、これは、目的のアミノ酸残基をコードするコドンが形成されるように、元の核酸に対して少なくとも1つのヌクレオチド挿入、欠失、または置換を結果としてもたらすであろう遺伝子操作または変異処理を行うことを意味する。より具体的には、元のアミノ酸残基をコードするコドンを、改変により導かれるべきアミノ酸残基をコードするコドンで置換する。そのような核酸改変は、部位特異的変異導入およびPCR変異導入などの公知の手法を用いて、当業者が好適に行うことができる。加えて、本発明は、本発明の抗原結合分子をコードする核酸を提供する。さらに、核酸を保有するベクターもまた、本発明に含まれる。
【0217】
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含むポリペプチド鎖のペアからなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、二量体であり、その各サブユニットは、CH2およびCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一態様において、本明細書に記載の多重特異性抗原結合分子は、1つ以下のFcドメインを含む。
【0218】
本明細書に記載の一態様において、多重特異性抗原結合分子のFcドメインは、IgG Fcドメインである。ある特定の態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。別の態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。さらなる特定の態様において、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fc領域である。
【0219】
いくつかの態様において、本開示は、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低下した結合アフィニティを示すFcドメインをさらに含む多重特異性抗原結合分子を提供し、該Fcドメインは、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcRnに対してより強いFcRn結合アフィニティをさらに示す。
【0220】
いくつかの態様において、本開示は、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低下した結合アフィニティを示すFcドメインをさらに含む多重特異性抗原結合分子を提供し、該Fcドメインに含まれる第1のおよび/または第2のFc領域サブユニットは、428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGluを含み、アミノ酸位置は、EUナンバリングに従って番号付けされている。
【0221】
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、Fcドメインは、天然型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcRnに対してより強いFcRn結合アフィニティをさらに示す。
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において、第1のおよび/または第2のFc領域サブユニットは、428位のLeu、434位のAla、438位のArg、および440位のGluを含み、アミノ酸位置は、EUナンバリングに従って番号付けされている。
【0222】
IgGタイプの二重特異性抗体は、目的の2タイプのIgGを構成するL鎖およびH鎖の遺伝子、すなわち合計で4つの遺伝子を細胞中に導入すること、およびそれらを共発現させることによって分泌される。しかし、これらの方法によって産生され得るIgGのH鎖とL鎖との組み合わせの数は、理論的には10個の組み合わせである。したがって、10タイプのIgGから、所望のH鎖とL鎖との組み合わせを含むIgGを精製することは、困難である。さらに、理論的には、所望の組み合わせを有するIgGの分泌量は、著しく減少すると考えられ、したがって、大規模培養が必要であり、生産コストがさらに増加するであろう。
【0223】
したがって、所望の組み合わせを有するH鎖間およびL鎖とH鎖との間の会合を促進するための手法を、本発明の多重特異性抗原結合分子に適用することができる。
例えば、抗体H鎖の第2の定常領域または第3の定常領域(CH2またはCH3)の境界面に静電反発を導入することによって望ましくないH鎖会合を抑制するための手法を、多重特異性抗体会合に適用することができる(WO2006/106905)。
【0224】
本発明において、改変に供されるアミノ酸残基は、抗体可変領域または抗体定常領域の上述のアミノ酸残基に限定されない。当業者は、市販されているソフトウェアを用いたホモロジーモデリングなどによって、変異体ポリペプチドまたはヘテロ多量体において境界面を形成するアミノ酸残基を特定することができ;次いで、これらの位置のアミノ酸残基を、会合を調節するために改変に供することができる。
【0225】
他の公知の手法もまた、本発明の多重特異性抗体の会合のために用いることができる。抗体のH鎖Fc領域の一方中に存在するアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(ノブ)で置換し、かつ他方のH鎖の対応するFc領域中に存在するアミノ酸側鎖を、より小さい側鎖(ホール)で置換して、ホール内へのノブの配置を可能にすることによって、異なるアミノ酸を含むFc領域含有ポリペプチドを、互いに効率的に会合させることができる。ノブ・イントゥ・ホール法は、本明細書の他の箇所で議論される。
【0226】
加えて、他の公知の手法もまた、本発明の多重特異性抗体の形成のために用いることができる。抗体のH鎖CH3の一方の一部を、対応するIgA由来の配列に変更すること、および対応するIgA由来の配列を、他方のH鎖CH3の相補的部分中に導入することによって産生される、鎖交換操作ドメインCH3を用いたCH3の相補的会合によって、異なる配列を有するポリペプチドの会合を、効率的に誘導することができる(Protein Engineering Design & Selection, 23; 195-202, 2010)。この公知の手法もまた、目的の多重特異性抗体を効率的に形成するために用いることができる。
【0227】
加えて、WO 2011/028952、WO2014/018572、およびNat Biotechnol. 2014 Feb; 32(2):191-8に記載されているような、抗体CH1とCLとの会合およびVHとVLとの会合を用いた抗体産生のための技術;WO2008/119353およびWO2011/131746に記載されているような、別々に調製されたモノクローナル抗体を組み合わせて用いて二重特異性抗体を産生するための技術(Fabアーム交換);WO2012/058768およびWO2013/063702に記載されているような、抗体重鎖CH3の間の会合を調節するための技術;WO2012/023053に記載されているような、2タイプの軽鎖および1タイプの重鎖から構成される二重特異性抗体を産生するための技術;Christoph et al. (Nature Biotechnology Vol. 31, p 753-758 (2013))により記載されているような、単一のH鎖および単一のL鎖を含む抗体の鎖の一方を個々に発現する2つの細菌細胞株を用いて二重特異性抗体を産生するための技術などが、多重特異性抗体の形成のために用いられてもよい。
【0228】
あるいは、目的の多重特異性抗体を効率的に形成させることができない場合でも、産生された抗体から目的の多重特異性抗体を分離することおよび精製することによって、本発明の多重特異性抗体を得ることができる。例えば、2タイプのH鎖の可変領域中にアミノ酸置換を導入することにより等電点の違いを与えることによって、イオン交換クロマトグラフィーによる2タイプのホモマー形態および目的のヘテロマー抗体の精製を可能にするための方法が、報告されている(WO2007114325)。現在までに、ヘテロマー抗体を精製するための方法として、プロテインAを用いて、プロテインAに結合するマウスIgG2a H鎖とプロテインAに結合しないラットIgG2b H鎖とを含むヘテロ二量体抗体を精製する方法が、報告されている(WO98050431およびWO95033844)。さらに、ヘテロ二量体抗体は、IgG-プロテインA結合部位であるEUナンバリング435位および436位のアミノ酸残基の、異なるプロテインAアフィニティを生じるアミノ酸であるTyr、Hisなどでの置換を含むH鎖を用いること、またはH鎖の各々とプロテインAとの相互作用を変化させるために、参考実施例5の方法に従って得られた異なるプロテインAアフィニティを有するH鎖を用いること、および次いで、プロテインAカラムを用いることによって、それ自体で効率的に精製することができる。
【0229】
さらに、そのFc領域C末端の不均一性が改善されているFc領域を、本発明のFc領域として適切に用いることができる。より具体的には、本発明は、EUナンバリングによって指定される446位のグリシンおよび447位のリジンを、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するFc領域を構成する2つのポリペプチドのアミノ酸配列から欠失させることによって産生されるFc領域を提供する。
【0230】
複数の、例えば2つ以上のこれらの技術を、組み合わせて用いることができる。さらに、これらの技術を、会合されるべき2本のH鎖に適切にかつ別々に適用することができる。さらに、これらの手法を、Fcγ受容体に対して低下した結合活性を有する上述のFc領域と組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の抗原結合分子は、上記の改変に供された抗原結合分子に基づいて、同じアミノ酸配列を有するように別々に産生された分子であってもよい。
【0231】
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、以下の(i)~(xii)のアミノ酸残基の1つまたは複数を含む:
(i) 重鎖定常領域中の175位(EUナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(ii) 重鎖定常領域中の147位(EUナンバリング)のグルタミン酸;
(iii) 軽鎖定常領域中の131位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(iv) 軽鎖定常領域中の160位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはリジン;
(v) 重鎖定常領域中の235位(EUナンバリング)のアルギニン;
(vi) 重鎖定常領域中の236位(EUナンバリング)のアルギニン;
(vii) 重鎖定常領域中の356位(EUナンバリング)のリジン;
(viii) 重鎖定常領域中の428位(EUナンバリング)のロイシン;
(ix) 重鎖定常領域中の434位(EUナンバリング)のアラニン;
(x) 重鎖定常領域中の438位(EUナンバリング)のアルギニン;
(xi) 重鎖定常領域中の439位(EUナンバリング)のグルタミン酸;
(xii) 重鎖定常領域中の440位(EUナンバリング)のグルタミン酸。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、以下を含む二重特異性抗体である:
175位(EUナンバリング)のリジン、235位(EUナンバリング)のアルギニン、236位(EUナンバリング)のアルギニン、428位(EUナンバリング)のロイシン、434位(EUナンバリング)のアラニン、438位(EUナンバリング)のアルギニン、439位(EUナンバリング)のグルタミン酸、および440位(EUナンバリング)のグルタミン酸を含む第1の重鎖;
131位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸および160位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸を含む第1の軽鎖;
147位(EUナンバリング)のグルタミン酸、175位(EUナンバリング)のグルタミン酸、235位(EUナンバリング)のアルギニン、236位(EUナンバリング)のアルギニン、356位(EUナンバリング)のリジン、428位(EUナンバリング)のロイシン、434位(EUナンバリング)のアラニン、438位(EUナンバリング)のアルギニン、および440位(EUナンバリング)のグルタミン酸を含む第2の重鎖;ならびに
131位(Kabatナンバリング)のリジン酸および160位(Kabatナンバリング)のリジンを含む第2の軽鎖。
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において:
第1の重鎖は、419位(EUナンバリング)のグルタミン酸および445位(EUナンバリング)のプロリン、ならびに446位および447位(EUナンバリング)でのアミノ酸欠失をさらに含み;かつ
第2の重鎖は、196位(EUナンバリング)のリジン、445位(EUナンバリング)のプロリン、ならびに446位および447位(EUナンバリング)でのアミノ酸欠失をさらに含む。
いくつかの態様では、多重特異性抗原結合分子において:
第1の重鎖は、16位(Kabatナンバリング)のグリシン、32位(Kabatナンバリング)のアラニン、35a位(Kabatナンバリング)のバリン、50位(Kabatナンバリング)のアラニン、61位(Kabatナンバリング)のリジン、64位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、73位(Kabatナンバリング)のスレオニン、95位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、および102位(Kabatナンバリング)のバリンをさらに含み;
第1の軽鎖は、28位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、55位(Kabatナンバリング)のチロシン、56位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはチロシン、92位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、94位(Kabatナンバリング)のバリン、および95a位(Kabatナンバリング)のアラニンをさらに含み;
第2の重鎖は、28位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、30位(Kabatナンバリング)のアラニンまたはグルタミン酸、31位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、32位(Kabatナンバリング)のトリプトファン、34位(Kabatナンバリング)のフェニルアラニン、および35位(Kabatナンバリング)のメチオニン、35a位(Kabatナンバリング)のセリン、50位(Kabatナンバリング)のセリン、61位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸またはグリシン、64位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、および65位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸をさらに含み;かつ
第2の軽鎖は、25位(Kabatナンバリング)のスレオニン、54位(Kabatナンバリング)のリジン、56位(Kabatナンバリング)のグルタミン酸、67位(Kabatナンバリング)のロイシン、79位(Kabatナンバリング)のグルタミン、および94位(Kabatナンバリング)のリジンをさらに含む。
【0232】
ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特徴を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
【0233】
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
【0234】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
【0235】
グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
【0236】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
【0237】
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位~300位の間のあたりに位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
【0238】
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
【0239】
好ましい態様において、上述の抗体は、ジスルフィド結合によって架橋された、それらの第1のH鎖CH3領域および第2のH鎖CH3領域を有し得る。
【0240】
本明細書に記載されるように調製された多重特異性抗原結合分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどのような当技術分野で公知の手法によって精製されてもよい。特定のタンパク質を精製するために用いられる実際の条件は、正味の電荷、疎水性、親水性などのファクターに一部依存すると考えられ、当業者に明らかであろう。アフィニティクロマトグラフィー精製のためには、多重特異性抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体、または抗原を用いることができる。例えば、本発明の多重特異性抗原結合分子のアフィニティクロマトグラフィー精製のためには、プロテインAまたはプロテインGを有するマトリクスが用いられてもよい。連続したプロテインAまたはGアフィニティクロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを、多重特異性抗原結合分子を単離するために用いることができる。多重特異性抗原結合分子の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む様々な周知の分析法のいずれかによって決定することができる。
【0241】
システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
【0242】
抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、2つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
【0243】
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
【0244】
組換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)を作製する方法が提供される。
【0245】
抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の組換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
【0246】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
【0247】
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
【0248】
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
【0249】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
【0250】
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR- CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
【0251】
測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について特徴決定されてもよい。
【0252】
結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
【0253】
別の局面において、HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)への結合に関して、例えば、上述の抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体は、上述の抗体が結合するのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
【0254】
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)は、HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に結合する第1の標識された抗体およびHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に結合した標識の量が測定される。固定化されたHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
【0255】
動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、および免疫化に適したその他の動物は、抗原(例えば、HLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)により免疫化される。該抗原は、例えば本明細書で述べられるとおり、任意の方法を用いて組換えタンパク質として調製することができる。免疫化した動物から血液および脾臓などの抗体含有サンプルを採取する。B細胞の選別のために、例えば、ビオチン化抗原を調製し、該ビオチン化抗原に抗原結合性B細胞を結合させ、そして選別のために該細胞をセルソーティングおよび培養に供する。該細胞の該抗原への特異的結合は、ELISA法などの任意の適切な方法によって評価することができる。この方法はまた、目的でない抗原に対する交差反応性の欠如を評価するためにも使用することができる。選択された抗体を単離するためまたはその配列を決定するために、例えば、細胞からRNAを精製して、抗体の領域をコードするDNAをRNAの逆転写およびPCR増幅によって調製する。さらに、さらなる分析のために、クローニングされた抗体遺伝子を適切な細胞において発現させ、該抗体を培養上清から精製することができる。
【0256】
抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が目的の抗原(例えば、本明細書に記載されたものなどのHLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体)に結合するかどうかを試験するために、結合を評価するための任意の方法を使用することができる。例えば、FACSに基づくセルソーティング方法を使用する場合には、抗原を発現する細胞を試験抗体とインキュベートし、次に試験抗体(すなわち、一次抗体)に対する適切な二次抗体を添加してインキュベートする。抗原と試験抗体との間の結合は、例えば二次抗体に付着させた発色/蛍光標識を使用して、FACS分析によって検出される(例えば、本明細書で述べられるとおり)。あるいは、本明細書中の「抗体のアフィニティ」で述べられた測定方法のいずれかを利用することができる。例えば、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイによるKdの測定は、試験抗体と本明細書で述べられる目的の抗原との間の結合を評価するために使用することができる。
【0257】
特定の態様において、本発明の方法は、抗体がHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)とTCRとの間の結合(またはHLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)とHLA-DQ2.5拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用)に対して中和活性を有するかどうかを試験する工程;および該中和活性を有する抗体を選択する工程をさらに含む。特定の態様において、本発明の方法は、抗体がHLA-DQ2.2(またはHLA-DQ2.2/グルテンペプチド複合体)とTCRとの間の結合(またはHLA-DQ2.2(またはHLA-DQ2.2/グルテンペプチド複合体)とHLA-DQ2.2拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用)に対して中和活性を有するかどうかを試験する工程;および該中和活性を有する抗体を選択する工程をさらに含む。これらの工程は、本明細書に記載されたものなどのグルテンペプチドの存在下で、すなわち該ペプチドに結合したHLA-DQ2.5またはHLA-DQ2.2を使用して、実施することができる。中和活性は、例えば本明細書で述べられるとおり、評価することができる。簡単に説明すると、プレート上への固定化のため、ビーズ、例えばストレプトアビジンでコーティングされた黄色粒子を適切に調製し、ペプチドに結合した可溶性HLA-DQを該ビーズに添加する。該プレートを洗浄してブロックし、それに抗体を添加してインキュベートする。HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)とTCRとの間の結合を評価する場合には、例えば、D2 TCR四量体-PEを添加してインキュベートすることができる。この2つの間の結合は、HLA-DQ2.5(またはHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体)に結合されたTCRの発色/蛍光標識に基づいて評価され得る。
【0258】
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、HLA-DQ2.2/グルテンペプチド複合体とHLA-DQ2.2/グルテンペプチド拘束性CD4+ T細胞との間の相互作用をブロックする。この文脈において、グルテンペプチドは、上記の抗原結合分子/ドメインのいずれかが結合する複合体中のペプチドである。
いくつかの態様において、グルテンペプチドが、α1グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、γ3グリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4dグリアジンペプチド、およびBCホルデインペプチドからなる群より選択される。
【0259】
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、HLA-DP、HLA-DR、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、HLA-DQ7.5、およびHLA-DQ8に対して結合活性を実質的に有しない。
【0260】
いくつかの態様において、本発明の抗原結合分子は、HLA-DQ2.5とグルテンペプチドとによって形成された複合体に対して増強された結合活性を有する。この文脈において、グルテンペプチドは、上記のグルテンペプチドのいずれかであり得る。増強の程度は、HLA-DQ2.5と無関係なペプチドとによって形成された複合体に対する、または目的の複合体を有さない細胞、例えば、HLA-DQ2.5陽性PBMC B細胞および/またはHLA-DQ2.5もしくはHLA-DQ2.2を発現するBa/F3細胞に対する結合活性と比較して決定されてもよい。
【0261】
本発明の二重特異性抗体は、第1のアーム/半抗体(half-antibody)の重鎖および軽鎖、ならびに第2のアーム/半抗体の重鎖および軽鎖を含む。用語「アーム」または「半抗体」は、1本の重鎖および1本の軽鎖を含む抗体の一部分のことをいう。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、第1のアーム/半抗体のVH(重鎖可変領域)およびVL(軽鎖可変領域)、ならびに第2のアーム/半抗体のVHおよびVLを含む。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、第1のアーム/半抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3、ならびに第2のアーム/半抗体のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。
【0262】
いくつかの態様において、本発明の二重特異性抗体について、第1のアーム/半抗体は、本明細書に記載のDQN0344xx(DQN0344Hx/DQN0344Lx)に由来し、第2のアーム/半抗体は、本明細書に記載のDQN0385ee(DQN0385He/DQN0385Le)に由来する。本発明の二重特異性抗体のVH、VL、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3、ならび全長重(H)鎖および軽(L)鎖の配列ID番号(配列番号)を、表2-3から2-6(下記)に示す。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:129または164の配列を含むHCDR1;配列番号:130または165の配列を含むHCDR2;および配列番号:131または166の配列を含むHCDR3を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:132または167の配列を含むLCDR1;配列番号:133または168の配列を含むLCDR2;および配列番号:134または169の配列を含むLCDR3を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:88または89の配列を含む重鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:105または162の配列を含む重鎖定常領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:90または91の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:106の配列を含む軽鎖定常領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:41、42、44、または45の配列を含む(全長)重鎖を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:43または46の配列を含む(全長)軽鎖を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:135、144、147、153、156、または159の配列を含むHCDR1;配列番号:136、145、148、154、157、または160の配列を含むHCDR2;および配列番号:137、146、149、155、158、または161の配列を含むHCDR3を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:138、141、または150の配列を含むLCDR1;配列番号:139、142、または151の配列を含むLCDR2;および配列番号:140、143、または152の配列を含むLCDR3を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:92、93、94、95、96、または97の配列を含む重鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:104または163の配列を含む重鎖定常領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:98、99、または100の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:107の配列を含む軽鎖定常領域を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:53、54、57、58、59、60、62、63、64、65、66、または67の配列を含む(全長)重鎖を含む。
いくつかの態様において、本発明の抗体は、配列番号:55、56、または61の配列を含む(全長)軽鎖を含む。
【0263】
(本発明の二重特異性抗体に含まれる)アーム/半抗体の全長H鎖およびL鎖の具体的配列を、表1-2に示す。
【0264】
(表1-2)二重特異性抗体の全長H鎖およびL鎖
H(またはL)鎖は、N末端からC末端に向かって、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3(またはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含み、これらには本表において下線が引かれている。
【0265】
いくつかの態様において、本開示は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(a1)~(a3)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(a1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(a2) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(a3) (a1)または(a2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(a1)または(a2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子において、第2の抗原結合部分が、以下の(b1)~(b8)のいずれか1つを含む:
(b1) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b2) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b3) 配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b4) 配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b5) 配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b6) 配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(b7) 配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(b8) (b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(b1)~(b7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(c1)~(c3):
(c1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;
(c2) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(c3) (c1)または(c2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(c1)または(c2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列
のいずれか1つを含み、
第2の抗原結合部分が、以下の(d1)~(d8):
(d1) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d2) 配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d3) 配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d4) 配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d5) 配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d6) 配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(d7) 配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(d8) (d1)~(d7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(d1)~(d7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、第1および第2の抗体可変領域を含む第1の抗原結合部分ならびに第3および第4の抗体可変領域を含む第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、以下の(1)~(15)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(1) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(2) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(3) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(4) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(5) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(6) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(7) 配列番号:129の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:130のCDR 2、配列番号:131のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:132のCDR 1、配列番号:133のCDR 2、配列番号:134のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(8) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:138のCDR 1、配列番号:139のCDR 2、配列番号:140のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(9) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:135の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:136のCDR 2、配列番号:137のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(10) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:144の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:145のCDR 2、配列番号:146のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(11) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:147の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:148のCDR 2、配列番号:149のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(12) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:153の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:154のCDR 2、配列番号:155のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(13) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:156の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:157のCDR 2、配列番号:158のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:150のCDR 1、配列番号:151のCDR 2、配列番号:152のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;
(14) 配列番号:164の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:165のCDR 2、配列番号:166のCDR 3を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:167のCDR 1、配列番号:168のCDR 2、配列番号:169のCDR 3を含む第2の抗体可変領域;配列番号:159の相補性決定領域(CDR)1、配列番号:160のCDR 2、配列番号:161のCDR 3を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:141のCDR 1、配列番号:142のCDR 2、配列番号:143のCDR 3を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列、(1)~(14)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子において、第1の抗原結合部分および/または第2の抗原結合部分に含まれる抗体可変領域が、ヒト抗体フレームワークまたはヒト化抗体フレームワークを含む。
いくつかの態様において、本開示は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(e1)~(e3)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(e1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;
(e2) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(e3) (e1)または(e2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(e1)または(e2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子において、第2の抗原結合部分が、以下の(f1)~(f8)のいずれか1つを含む:
(f1) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f2) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f3) 配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f4) 配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f5) 配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f6) 配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f7) 配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(f8) (f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、第1の抗原結合部分および第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、
第1の抗原結合部分が、以下の(e1)~(e3):
(e1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;
(e2) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域、および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;ならびに
(e3) (e1)または(e2)に記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(e1)または(e2)に記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
のいずれか1つを含み、かつ
第2の抗原結合部分が、以下の(f1)~(f8):
(f1) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f2) 配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f3) 配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f4) 配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f5) 配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f6) 配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(f7) 配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域、および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;ならびに
(f8) (f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(f1)~(f7)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列
のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、第1および第2の抗体可変領域を含む第1の抗原結合部分ならびに第3および第4の抗体可変領域を含む第2の抗原結合部分を含む多重特異性抗原結合分子であって、以下の(1)~(15)のいずれか1つを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(1) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(2) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(3) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(4) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(5) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(6) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(7) 配列番号:88のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:90のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(8) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:98のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(9) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;および配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:92のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(10) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:93のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(11) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:94のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(12) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:95のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(13) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:96のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:100のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(14) 配列番号:89のアミノ酸配列を含む第1の抗体可変領域;配列番号:91のアミノ酸配列を含む第2の抗体可変領域;配列番号:97のアミノ酸配列を含む第3の抗体可変領域;および配列番号:99のアミノ酸配列を含む第4の抗体可変領域;
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第3の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第4の抗体可変領域に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、以下の(A1)~(A3)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(A1) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;
(A2) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖;ならびに
(A3) (A1)または(A2)に記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列、および(A1)または(A2)に記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、以下の(B1)~(B8)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせをさらに含む:
(B1) 配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B2) 配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B3) 配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B4) 配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B5) 配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B6) 配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B7) 配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(B8) (B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、多重特異性抗原結合分子は、以下の(B1)~(B8)からなる群より選択される2本のポリペプチド鎖の組み合わせをさらに含む:
(B1) 配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B2) 配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B3) 配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B4) 配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B5) 配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B6) 配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(B7) 配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(B8) (B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列、および(B1)~(B7)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、以下の(1)~(15)からなる群より選択される4本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(1) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(2) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(3) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(4) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(5) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(6) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(7) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(8) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:54のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(9) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:58のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(10) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(11) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:65のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(12) 配列番号:42のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:67のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(13) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:63のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(14) 配列番号:45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:60のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、以下の(1)~(15)からなる群より選択される4本のポリペプチド鎖の組み合わせを含む、多重特異性抗原結合分子を提供する:
(1) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(2) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(3) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(4) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(5) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(6) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:55のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(7) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(8) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:53のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(9) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:57のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(10) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(11) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:64のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(12) 配列番号:41のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:43のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:66のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:56のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(13) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:62のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;
(14) 配列番号:44のアミノ酸配列を含む第1の重鎖および配列番号:46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、ならびに配列番号:59のアミノ酸配列を含む第2の重鎖および配列番号:61のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;ならびに
(15) (1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第1の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列;(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の重鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第3のアミノ酸配列;および(1)~(14)のいずれか1つに記述される第2の軽鎖配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する第4のアミノ酸配列。
いくつかの態様において、本開示は、以下の(i)~(iii)のいずれか1つの組み合わせを提供する:
(i) 上記の(a1)~(a3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および上記の(b1)~(b8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子;
(ii) 上記の(e1)~(e3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および上記の(f1)~(f8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子;ならびに
(iii) 上記の(A1)~(A3)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子、および上記の(B1)~(B8)のいずれか1つに記述される配列を含む多重特異性抗原結合分子。
【0266】
いくつかの態様において、本発明の抗原結合分子は、二重特異性抗原結合分子である。
いくつかの態様において、二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。
【0267】
いくつかの態様において、本開示は、本発明の抗原結合分子をコードする核酸を提供する。いくつかの態様において、核酸は、単離された核酸である。
いくつかの態様において、本開示は、核酸を含むベクターを提供する。いくつかの態様において、本開示は、その中に核酸が導入されているベクターを提供する。
いくつかの態様において、本開示は、核酸またはベクターを含む細胞を提供する。いくつかの態様において、細胞は宿主細胞である。
いくつかの態様において、本開示は、多重特異性抗原結合分子が産生されるように細胞を培養する工程を含む、本発明の多重特異性抗原結合分子を産生する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、細胞の培養物から多重特異性抗原結合分子を回収する工程をさらに含む。
【0268】
核酸、ベクター、細胞、および方法は、本開示および当技術分野における技術的知識を考慮して、好適に作製/実施することができる。
【0269】
イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0270】
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体-薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
【0271】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
【0272】
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばTc-99mもしくは123I)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄)を含み得る。
【0273】
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0274】
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
【0275】
薬学的組成物/製剤
本明細書に記載の抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の薬学的組成物/製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0276】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン-アセテート緩衝液を含んでいる。
【0277】
本明細書の組成物/製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。例えば、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)と組み合わせ得る薬剤をさらに提供することが望ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
【0278】
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0279】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
【0280】
生体内 (in vivo) 投与のために使用される組成物/製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
【0281】
治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。一局面において、医薬品としての使用のための、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が提供される。さらなる局面において、セリアック病の治療における使用のための、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)が提供される。特定の態様において、本発明は、セリアック病を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)を提供する。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。
【0282】
さらなる局面において、本発明は医薬品の製造または調製における抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の使用を提供する。一態様において、医薬品は、セリアック病の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、セリアック病を治療する方法であって、セリアック病を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。
【0283】
いくつかの態様において、本開示は、医薬品の製造における本発明の多重特異性抗原結合分子の使用を提供する。いくつかの態様において、医薬品は、セリアック病の治療および/または予防のための医薬品である。
【0284】
さらなる局面において、本発明は、セリアック病を治療するための方法を提供する。一態様において、方法は、セリアック病を有する個体に抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の有効量を投与する工程を含む。そのような一態様において、方法は、下記のような、少なくとも1つの追加治療剤の有効量を個体に投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0285】
いくつかの態様において、本開示は、セリアック病を有する個体を治療する方法であって、本発明の多重特異性抗原結合分子の有効量を該個体に投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの態様において、本開示は、セリアック病を有する個体を治療するための、本発明の多重特異性抗原結合分子の使用を提供する。
【0286】
さらなる局面において、本発明は、例えば、セリアック病に対する上記の治療的方法のいずれかにおける使用のための、本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)のいずれかを含む、薬学的組成物/製剤を提供する。一態様において、薬学的組成物/製剤は、本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的組成物/製剤は、本明細書で提供される抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)のいずれかと、例えば下記のような、少なくとも1つの追加治療剤とを含む。
【0287】
いくつかの態様において、本開示は、本発明の多重特異性抗原結合分子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物/製剤を提供する。いくつかの態様において、組成物/製剤は、セリアック病の治療および/または予防における使用のための、薬学的組成物/製剤である。
【0288】
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。特定の態様において、追加治療剤は、同時投与に適しており当業者が入手可能である、任意の剤である。
本発明の抗体は、療法において、単独または別の抗体との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの本発明の追加の抗体と同時投与されてもよい。特定の態様において、これらの抗体は、並行してもしくは同時に、またはその後に投与される。特定の態様において、同時投与に適しているこれらの抗体の混合物、カクテル、または組み合わせが投与される。これらの抗体は、本明細書に開示される任意の抗体であってもよい。いくつかの態様において、これらの抗体は、本明細書に開示される2つ以上のホモマー抗体、例えば、DQN0344xxおよびDQN0385ee、またはDQN0344xxおよびDQN0385eeの任意の最適化バリアントおよび/もしくはヒト化バリアントである。
【0289】
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
【0290】
本発明の抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
【0291】
本発明の抗体の2つ以上(すなわち、本発明の2つ以上の治療剤)は、治療の過程で投与され得る。それらは別個にまたは同時に投与してもよい。それらは併用して投与してもよい。併用投与では、2つ以上の抗体を同時に投与しても、別個に投与してもよい。場合によっては、ある抗体/薬剤を最初に投与し、症状をモニターし、症状に応じて、必要があれば、別の抗体/薬剤をさらに投与してもよい。あるいは、本発明の2つ以上の抗体を、複合薬/複合剤中に含めることも可能である。そのような複合薬/複合剤は、本明細書に記載されるように投与することができる。含まれる各抗体の用量/投与量は、本明細書に記載されるように適切に決定され得る。
【0292】
本発明の抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
【0293】
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
【0294】
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
【0295】
キット/製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだキットまたは製品が、提供される。キットまたは製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらにキットまたは製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様におけるキットまたは製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、キットまたは製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
【0296】
キットまたは製品のいずれについても、抗HLA-DQ2.5抗原結合分子(抗体)の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
【0297】
いくつかの態様において、本開示は、少なくとも本発明の多重特異性抗原結合分子と、使用説明書とを含む、セリアック病の治療および/または予防における使用のためのキットを提供する。
【0298】
抗原結合分子の使用方法
本開示の抗原結合分子は、さまざまな既存の医学的使用の技術と組み合わせることができる。本開示の抗原結合分子と組み合わせることができる技術の非限定的な例には、抗原結合分子をコードする核酸を、ウイルスベクターなどを用いて生体内に組み込んで該抗原結合分子を直接発現させる方法が含まれる。そのようなウイルスベクターの例としては、アデノウイルスが挙げられるが、これに限定されない。あるいは、抗原結合分子をコードする核酸を、例えばエレクトロポレーション法または核酸を直接投与する方法などにより、ウイルスベクターを用いずに直接生体内に組み込むことも可能である。あるいは、抗原結合分子を分泌/発現するように遺伝子改変された細胞を生体に投与して、該抗原結合分子を該生体内で連続的に分泌させることも可能である。
【0299】
本発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載されるが、本明細書における記載および例示は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【実施例0300】
以下は、本発明の組成物の例である。上に提供した一般的な説明を考慮すれば、他の様々な態様を実施し得ることが理解される。
【0301】
実施例1
組換えタンパク質の発現および精製
1.1. 組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体、およびHLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体の発現および精製
組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体の発現および精製
発現および精製に使用した配列は、HLA-DQA1*0501(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)およびHLA-DQB1*0201(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:170)を有する。HLA-DQA1*0501は、C47S変異、GGGGリンカー(配列番号:171)およびc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、ならびにFlagタグをHLA-DQA1*0501のC末端に有する。HLA-DQB1*0201は、33merグリアジンペプチド配列: LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(配列番号:172)、および第X因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0201のN末端に、GGGGGリンカー(配列番号:173)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:173)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0201のC末端に有する。FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher)を用いて、組換えHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を一過性に発現させた。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を発現している馴化培地を、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラム(GE healthcare)に供した。その後、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0302】
組換えHLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体の発現および精製
発現と精製のために使用した配列は、HLA-DQA1*0501(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)およびHLA-DQB1*0201(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:170)を有する。HLA-DQA1*0501は、C47S変異、3Cプロテアーゼ切断リンカー:LEVLFQGP(配列番号:174)およびGGGGリンカー(配列番号:171)、ならびにc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)およびFlagタグをHLA-DQA1*0501のC末端に有する。HLA-DQB1*0201は、γ2グリアジンペプチド配列:IIQPEQPAQLP(配列番号:175)、および第X因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0201のN末端に、3Cプロテアーゼ切断リンカー:LEVLFQGP(配列番号:174)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:173)、およびBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0201のC末端に有する。組換えHLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体は、FreeStyle293-F細胞株を用いて一過性に発現させた。HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体を発現している馴化培地をIMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲル濾過カラムに供した。その後、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0303】
組換えHLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体の発現および精製
発現と精製のために使用した配列は、HLA-DQA1*0501(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)およびHLA-DQB1*0201(Protein Data Bankアクセッションコード4OZG)であり、これらは両方ともCAMPATH-1Hシグナル配列:MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号:170)を有する。HLA-DQA1*0501は、C47S変異、3Cプロテアーゼ切断リンカー:LEVLFQGP(配列番号:174)およびGGGGリンカー(配列番号:171)、ならびにc-fosロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)およびFlagタグをHLA-DQA1*0501のC末端に有する。HLA-DQB1*0201は、BCホルデインペプチド配列:EPEQPIPEQPQPYPQQP(配列番号:176)、および第X因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025)をHLA-DQB1*0201のN末端に、3Cプロテアーゼ切断リンカー:LEVLFQGP(配列番号:174)およびc-junロイシンジッパー配列(PNAS, 1998 Sep 29;95(20): 11828-33)、GGGGGリンカー(配列番号:173)、ならびにBAP配列(BMC Biotechnol. 2008; 8: 41)、8×HisタグをHLA-DQB1*0201のC末端に有する。組換えHLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体は、FreeStyle293-F細胞株を用いて一過性に発現させた。HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体を発現している馴化培地をIMAC樹脂と共にインキュベートし、続いてイミダゾールで溶出した。HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体を含む画分を回収した後、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲルろ過カラムに供した。その後、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド複合体を含む画分をプールして、-80℃で保存した。
【0304】
実施例2
2.1 HLA-DQ2.5、HLA-DQ2.2、HLA-DQ7.5、HLA-DQ8、HLA-DQ5.1、HLA-DQ6.3、HLA-DQ7.3、HLA-DR、およびHLA-DPを発現するBa/F3細胞株の樹立
HLA-DQA1*0501 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00613)、HLA-DQA1*0201 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00607)、HLA-DQA1*0505 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00619)、HLA-DQA1*0301 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00608)、HLA-DQA1*0101 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00601)、HLA-DQA1*0103 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00604)、HLA-DQA1*0303 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00611)、HLA-DRA1*0101 cDNA(GenBankアクセッション番号NM_019111.4)、またはHLADPA1*0103 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00499)を発現ベクターpCXND3(WO2008/156083)に挿入した。
【0305】
HLA-DQB1*0201 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00622)、HLA-DQB1*0202 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00623)、HLA-DQB1*0301 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00625)、HLA-DQB1*0302 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00627)、HLA-DQB1*0501 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00638)、HLA-DQB1*0603 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00647)、HLA-DRB1*0301 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00671)、またはHLA-DPB1*0401 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00521)を発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)に挿入した。
【0306】
線状化したHLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQB1*0201-pCXZD1のそれぞれ、および線状化したHLA-DQA1*0201-pCXND3とHLA-DQB1*0202-pCXZD1、
HLA-DQA1*0505-pCXND3とHLA-DQB1*0301-pCXZD1、
HLA-DQA1*0301-pCXND3とHLA-DQB1*0302-pCXZD1、
HLA-DQA1*0101-pCXND3とHLA-DQB1*0501-pCXZD1、
HLA-DQA1*0103-pCXND3とHLA-DQB1*0603-pCXZD1、
HLA-DQA1*0303-pCXND3とHLA-DQB1*0301-pCXZD1、
HLA-DRA1*0101-pCXND3とHLA-DRB1*0301-pCXZD1、
HLA-DPA1*0103-pCXND3とHLA-DPB1*0401-pCXZD1のそれぞれを、エレクトロポレーション(LONZA、4D-Nucleofector X)によりマウスIL-3依存性プロB細胞由来細胞株Ba/F3に同時に導入した。次に、トランスフェクトされた細胞をジェネティシンとゼオシンを含む培地中で培養した。その後、培養して増殖させた細胞をHLA分子の発現についてチェックし、HLAの高発現を確認した。
【0307】
樹立された各細胞株を以下のように命名した:Ba/F3-HLA-DQ2.5(HLA-DQA1*0501、HLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.2(HLA-DQA1*0201、HLA-DQB1*0202)、Ba/F3-HLA-DQ7.5(HLA-DQA1*0505、HLA-DQB1*0301)、Ba/F3-HLA-DQ8(HLA-DQA1*0301、HLA-DQB1*0302)、Ba/F3-HLA-DQ5.1(HLA-DQA1*0101、HLA-DQB1*0501)、Ba/F3-HLA-DQ6.3(HLA-DQA1*0103、HLA-DQB1*0603)、Ba/F3-HLA-DQ7.3(HLA-DQA1*0303、HLA-DQB1*0301)、Ba/F3-HLA-DR(HLA-DRA1*0101、HLA-DRB1*0301)、Ba/F3-HLA-DP(HLA-DPA1*0103、HLA-DPB1*0401)。
【0308】
2.2 HLA-DQ2.5/CLIPペプチド、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチド、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチド、HLA-DQ2.5/チロペルオキシダーゼペプチド、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチド、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド、HLA-DQ2.5/α3グリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/γ4bグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/アベニン1ペプチド、HLA-DQ2.5/アベニン2ペプチド、HLA-DQ2.5/アベニン3ペプチド、HLA-DQ2.5/ホルデイン1ペプチド、HLA-DQ2.5/ホルデイン2ペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチド、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチド、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド、HLA-DQ2.5/26merグリアジンペプチドを発現するBa/F3細胞株の樹立
HLA-DQA1*0501 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00613)を発現ベクターpCXND3(WO2008/156083)に挿入した。
【0309】
HLA-DQB1*0201 cDNA(IMGT/HLAアクセッション番号HLA00622)を発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)に挿入した。HLA-DQ2.5/各ペプチド複合体のためのHLA-DQB1*0201は、各ペプチド配列および第X因子切断リンカー(Acta Crystallogr Sect F Struct Biol Cryst Commun. 2007 Dec 1; 63(Pt 12): 1021-1025.)をHLA-DQB1*0201のN末端に有する。具体的には、各ペプチド配列のうち、CLIP(hCLIP)ペプチド配列のためにKLPKPPKPVSKMRMATPLLMQALPMGALP(配列番号:177)を使用し;B型肝炎ウイルスペプチド配列のためにPDRVHFASPLHVAWR(配列番号:178)を使用し;サルモネラペプチド配列のためにMMAWRMMRY(配列番号:179)を使用し;チロペルオキシダーゼペプチド配列のためにYIDVWLGGLAENFLPY(配列番号:180)を使用し;マイコバクテリウム・ボビスペプチド配列のためにKPLLIIAEDVEGEY(配列番号:181)を使用し;α1グリアジンペプチド配列のためにQPFPQPELPYP(配列番号:182)を使用し;α2グリアジンペプチド配列のためにFPQPELPYPQP(配列番号:183)を使用し;γ1グリアジンペプチド配列のためにQPQQSFPEQQQ(配列番号:184)を使用し;γ2グリアジンペプチド配列のためにGIIQPEQPAQLP(配列番号:185)を使用し;ω1グリアジンペプチド配列のためにQPFPQPEQPFP(配列番号:186)を使用し;ω2グリアジンペプチド配列のためにFPQPEQPFPWQ(配列番号:187)を使用し;BCホルデインペプチド配列のためにPQQPIPEQPQPYPQQP(配列番号:188)を使用し;α3グリアジンペプチド配列のためにPFRPEQPYPQP(配列番号:189)を使用し;α1bグリアジンペプチド配列のためにLPYPQPELPYP(配列番号:190)を使用し;γ4aグリアジンペプチド配列のためにFSQPEQEFPQP(配列番号:191)を使用し;γ4bグリアジンペプチド配列のためにFPQPEQEFPQP(配列番号:192)を使用し;アベニン1ペプチド配列のためにQPYPEQEEPFV(配列番号:193)を使用し;アベニン2ペプチド配列のためにQPYPEQEQPFV(配列番号:194)を使用し;アベニン3ペプチド配列のためにQPYPEQEQPIL(配列番号:195)を使用し;ホルデイン1ペプチド配列のためにPQQPFPQPEQPFRQ(配列番号:196)を使用し;ホルデイン2ペプチド配列のためにQEFPQPEQPFPQQP(配列番号:197)を使用し;セカリン1ペプチド配列のためにPEQPFPQPEQPFPQ(配列番号:198)を使用し;セカリン2ペプチド配列のためにQPFPQPEQPFPQSQ(配列番号:199)を使用し;14mer 1ペプチド配列のためにPQQQTLQPEQPAQLP(配列番号:200)を使用し;33merグリアジンペプチド配列のためにLQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF(配列番号:201)を使用し;26merグリアジンペプチド配列のためにFLQPEQPFPEQPEQPYPEQPEQPFPQ(配列番号:202)を使用した。
【0310】
線状化したHLA-DQA1*0501-pCXND3とHLA-DQB1*0201/各ペプチド-pCXZD1のそれぞれを、エレクトロポレーション(LONZA、4D-Nucleofector X)によりマウスIL-3依存性プロB細胞由来細胞株Ba/F3に同時に導入した。次に、トランスフェクトされた細胞をジェネティシンとゼオシンを含む培地中で培養した。
【0311】
その後、培養して増殖させた細胞をHLA-DQ2.5分子の発現についてチェックし、HLA-DQ2.5の高発現を確認した。樹立された各細胞株を以下のように命名した:Ba/F3-HLA-DQ2.5/CLIP(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/CLIPペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/HBV1(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/B型肝炎ウイルスペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/サルモネラ(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/サルモネラペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/TPO(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/チロペルオキシダーゼペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/M.ボビス(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/マイコバクテリウム・ボビスペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α2グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ1グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ2グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω1グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω2グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/BCホルデイン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α3グリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α3グリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1bグリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ4bグリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/γ4bグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン1(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/アベニン1ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン2(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/アベニン2ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン3(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/アベニン3ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ホルデイン1(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ホルデイン1ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ホルデイン2(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/ホルデイン2ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン1(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/セカリン1ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン2(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/セカリン2ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/14mer 1(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/14mer 1ペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)、Ba/F3-HLA-DQ2.5/26merグリアジン(HLA-DQA1*0501、HLA-DQ2.5/26merグリアジンペプチドのHLA-DQB1*0201)。
【0312】
実施例3
リード抗体の特定
抗DQ2.5リード抗体であるDQN0344xx(重鎖:DQN0344Hx、配列番号:71および軽鎖:DQN0344Lx、配列番号:75)ならびにDQN0385ee(重鎖:DQN0385He、配列番号:79および軽鎖:DQN0385Le、配列番号:83)を、WO2019069993に記載されている手順に従って選択した。
【0313】
ヒト化
DQN0344xxおよびDQN0385eeは、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対して好ましい選択性および交差反応性を示したが、これらの抗体の可変領域は、ウサギ配列であり、したがって、免疫原性の問題のために患者中への投与には適用不可能である。そのため、これらの抗体について可変領域のヒト化を行った。
【0314】
DQN0344HxおよびDQN0385Heのフレームワークをヒト生殖系列フレームワークで置換することによって、49タイプのVHを設計した(FR1として配列番号:1、2、3、4、5、6、または7、FR2としてDNQ0344Hxについては配列番号:9およびDQN0385Heについては配列番号:10、FR3として配列番号:11、12、13、14、15、16、または17、FR4としてDNQ0344Hxについては配列番号:18およびDQN0385Heについては配列番号:19)。DQN0344LxおよびDQN0385Leのフレームワークをヒト生殖系列フレームワークで置換することによって、16タイプのVLを設計した(FR1として配列番号:20、21、22、または23、FR2としてDNQ0344Lxについては配列番号:24およびDQN0385Leについては配列番号:34、FR3として配列番号:26、27、28、または29、FR4として配列番号:30)。DQN0344Hx、DQN0385He、および設計されたVHをコードするポリヌクレオチドを、それぞれ、重鎖定常領域SG1(配列番号:31)をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター中にクローニングした。DQN0344Lx、DQN0385Le、および設計されたVLをコードするポリヌクレオチドを、それぞれ、軽鎖定常領域SK1(配列番号:32)をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター中にクローニングした。その後、DQN0344HxまたはDQN0385Heを、それぞれの設計されたVHと共に含む重鎖を、それらの対応する軽鎖であるDQN0344Lx、DQN0385Le、またはそれぞれの設計されたVLと、Expi293(Invitrogen)中で一過性に発現させ、続いてプロテインA精製を行った。
【0315】
HLA-DQ2.5/複数のグルテンペプチドに対するこれらの抗体の結合プロファイルを、FCM解析によって評価した。各抗体の結合活性を、平均蛍光強度値(MFI)によって表す。抗体を、HLA-DQ2.5-グルテンペプチド-Ba/F3細胞と共に室温で30分間インキュベートし、FACSバッファー(PBS中の2% FBS、2 mM EDTA)で洗浄した。次いで、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG, マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて、暗所、4℃で20分間インキュベートし、その後洗浄した。データ収集を、LSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)およびMicrosoft Office Excel2013を用いて解析した。
【0316】
49タイプの設計されたVHおよび16タイプの設計されたVLの中で、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対する結合および抗体発現レベルに基づいて、(表2-1に示すように)25Hおよび09Lを、DQN0344xxにおけるフレームワーク領域配列として選択し、DQN034425(DQN034425H/09L(重鎖は配列番号:84、軽鎖は配列番号:85))と命名した。しかし、FRの組み合わせのいずれも、DQN0385eeと比較してHLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対する結合活性を維持することができなかった。HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対する結合活性を損なうことなくDQN0385eeをヒト化することは、難題であるように見られる。作製された数多くのバリアントから、0054Hおよび009Lを、DQN0385HeおよびDQN0385LeのためのFRの組み合わせとして最終的に選択し(表2-1に示す)、DQN0385ee0054(DQN0385ee0054H/009L(重鎖は配列番号:87、軽鎖は配列番号:86))と命名した。
【0317】
(表2-1)ヒト化において選択されたFR配列
【0318】
Fabの最適化
HLA-DQ2.5/無関係なペプチドに対する結合を増加させることなくHLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対する結合アフィニティを改善するために、CDRにおけるおよびFR中のいくつかの位置における包括的変異導入を行った。次いで、複数の変異および変異の組み合わせを行って、無関係なペプチドを上回るHLA-DQ2.5/複数のグルテンペプチドに対する結合の選択性などの多次元の特性、ならびに抗体発現レベル、および抗体薬物動態に影響を及ぼし得るECM結合などの物理化学的特性を改善した(US2014/0080153)。
【0319】
DQN0344xxおよびDQN0385eeの両方をヒト化したが、ウサギ抗体配列に一般的に見出されるCDRH1(Kabatナンバリングに従って35a位、Kabat et al., Sequence of proteins of immunological interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))およびCDRH2(Kabatナンバリングに従って50位)に位置する2個のシステイン残基は、ジスルフィド結合形成の不均一性をもたらす可能性があった。したがって、これらのシステイン残基の他のアミノ酸への置換を行った。しかし、そのような置換(DQN034425HにおけるC35aV/C50AおよびDQN0385ee0054HにおけるC35aS/C50S)は、有意に、HLA-DQ2.5/グルテンペプチドに対する結合アフィニティを減少させ、かつ/または抗体発現レベルを減少させた。結合アフィニティを改善するために、S32A、N73T、およびD95EをDQN034425H中に導入し;N28E、A55Y、S56E、H92E、I94V、およびN95aAをDQN034409L中に導入し;S30A、S32W、W34F、およびS61GをDQN0385ee0054H中に導入し、かつA25T、L54K、およびS67LをDQN0385ee009L中に導入した。抗体発現レベルを改善するために、R16G、S61K、K64E、およびL102VをDQN034425H中に導入し、かつS31EおよびI35MをDQN0385ee0054H中に導入した。加えて、ECM結合およびHLA-DQ2.5/CLIPなどのHLA-DQ2.5/無関係なペプチドに対する結合を低下させるために、R16GおよびK64EをDQN034425H中に導入し;S56YをDQN034409L中に導入し;T28E、S30A、S61E、およびG65EをDQN0385ee0054H中に導入し、かつS56EおよびY94KをDQN0385ee009L中に導入した。pIを低下させるために、S30E、N64EをDQN0385ee0054H中に導入し、負電荷を低下させるために、E79QをDQN0385ee009L中に導入した。
【0320】
全ての抗体を、構築された遺伝子を用いて当業者に公知の方法によって哺乳動物細胞において一過性に発現させ、当業者に公知の方法によって精製した。アミノ酸置換の組み合わせを、表2-2に要約した。
【0321】
(表2-2)導入された変異の概要
【0322】
二重特異性抗体の作製
ペプチド適用範囲をさらに拡張するために、複数のHLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体に対して広い交差反応結合を示す二重特異性抗体を作製した。二重特異性抗体を作製するために、13種類の多重グルテンペプチド選択的HLA-DQ2.5二価抗体を用いた(DQN0344xx、DQN0385ee、DQN034425H/09L、DQN0385ee0054H/009L、DQN0344H0976/L0591、DQN0344H1013/L0620、DQN0385H1270/L0722、DQN0385H1521/L0605、DQN0385H1270/L0681、DQN0385H1352/L0681、DQN0385H1527/L0605、DQN0385H1353/L0681、およびDQN0385H1255/L0605)。精製されたこれらの二価抗体を、(Igawa et al. WO2016/159213に記載されているように)Fabアーム交換技術に供して、16種類の二重特異性抗体を作製した;
DQN0344xx//DQN0385ee(DQN0344xxとDQN0385eeとの二重特異性抗体)、DQN034425//DQN0385ee0054(DQN034425H/09LとDQN0385ee0054H/009Lとの二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1270/L0722との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1270/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1352/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1527/L0605との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1255/L0605との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1270/L0722との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1521/L0605との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1270/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1352/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1353/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1521/L0605-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1521/L0605との二重特異性抗体)、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6(DQN0344H0976/L0591とDQN0385H1353/L0681との二重特異性抗体)、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1255/L0605との二重特異性抗体)、およびDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1527/L0605-F6(DQN0344H1013/L0620とDQN0385H1527/L0605との二重特異性抗体)。産生された二重特異性抗体の組み合わせおよび配列を、表2-3から2-6に要約した。
【0323】
上記のように、二重特異性抗体を、Fabアーム交換技術によって作製した。あるいは、二重特異性抗体はまた、2本の異なる重鎖および2本の異なる軽鎖のプラスミドを哺乳動物細胞中にトランスフェクトすることによっても作製することができる。目的の二重特異性抗体を効率的に得るためには、所望のH鎖-L鎖会合を促進するCHI-CLドメイン境界面における公知のアミノ酸置換および組み合わせがある(WO2019065795)。そのような定常領域(DQN0344アームについての重鎖定常領域:配列番号:162、DQN0344アームについての軽鎖定常領域:配列番号:106、DQN0385アームについての重鎖定常領域:配列番号:163、DQN0385アームについての軽鎖定常領域:配列番号:107。全長の配列番号を、表2-3から2-6に要約した)を伴う上記の可変領域配列は、HLA-DQ2.5/複数のグルテンペプチドに対して類似した結合特性を示すことが知られている。
【0324】
(表2-3)二重特異性抗体の概要および配列
【0325】
(表2-4)二重特異性抗体の概要および配列
【0326】
(表2-5)二重特異性抗体の概要および配列
【0327】
(表2-6)二重特異性抗体の概要および配列
【0328】
実施例4
クラスII HLAに対する抗体の結合解析
図1-1から1-16は、FACSによって測定された、いくつかのペプチドとの複合体の形態にあるHLA-DQを発現するBa/F3細胞株のパネルに対する各抗HLA-DQ抗体の結合を示す。Ba/F3-HLA-DQ2.5、Ba/F3-HLA-DQ2.2、Ba/F3-HLA-DQ7.5、Ba/F3-HLA-DQ8、Ba/F3-HLA-DQ7.3、Ba/F3-HLA-DQ5.1、Ba/F3-HLA-DQ6.3、Ba/F3-HLA-DR、Ba/F3-HLA-DP、Ba/F3-HLA-DQ2.5/CLIP、Ba/F3-HLA-DQ2.5/HBV1、Ba/F3-HLA-DQ2.5/サルモネラ、Ba/F3-HLA-DQ2.5/TPO、Ba/F3-HLA-DQ2.5/M.ボビス、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α2グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ1グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ2グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω1グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ω2グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/BCホルデイン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α3グリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/α1bグリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/γ4bグリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン1、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン2、Ba/F3-HLA-DQ2.5/アベニン3、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ホルデイン1、Ba/F3-HLA-DQ2.5/ホルデイン2、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン1、Ba/F3-HLA-DQ2.5/セカリン2、Ba/F3-HLA-DQ2.5/33merグリアジン、Ba/F3-HLA-DQ2.5/26merグリアジンに対する抗HLA-DQ抗体の結合を、試験した。50 ng/mLの抗HLA-DQ抗体、ならびに1μg/mLの対照のDQN0139bb抗体およびIC17dK抗体を、各細胞株と共に室温で30分間インキュベートした。例外は、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6、およびDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6についてであり、Ba/F3-HLA-DQ2.5およびBa/F3-HLA-DQ2.5/CLIPに対してのみ、これらの抗HLA-DQ抗体を313 ng/mLで用い、それぞれの対照のDQN0139bb抗体およびIC17dK抗体を20μg/mLで用いた。インキュベーション後に、細胞株を、FACSバッファー(PBS中の2% FBS、2 mM EDTA)で洗浄した。次いで、ヤギF(ab')2抗ヒトIgG、マウスads-PE(Southern Biotech、カタログ番号2043-09)を加えて4℃で20分間インキュベートし、続いてこれをFACSバッファーで洗浄した。データ収集を、LSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)およびMicrosoft Office Excel2013を用いて解析した。IC17dKのMFI値を0%とし、DQN0139bbのMFI値を100%とすることによって、抗体の%MFIを決定した。
【0329】
図1-1から1-13は、前記のようなBa/F3細胞株のパネルに対する13種類の二重特異性抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6)の結合を示す。これらの13種類の二重特異性抗HLA-DQ抗体は、試験したグルテン由来ペプチド(すなわち、33merグリアジンペプチド、α1グリアジンペプチド、α2グリアジンペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、ω1グリアジンペプチド、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、α3グリアジンペプチド、α1bグリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、γ4bグリアジンペプチド、アベニン1ペプチド、アベニン2ペプチド、アベニン3ペプチド、ホルデイン1ペプチド、ホルデイン2ペプチド、セカリン1ペプチド、セカリン2ペプチド、および26merグリアジンペプチド)との複合体の形態にある場合にのみ、HLA-DQ2.5に対して様々な程度の有意な結合活性を有する。γ2グリアジンペプチドに対する13種類の二重特異性抗HLA-DQ抗体の結合は、少なめである。他方、13種類の二重特異性抗HLA-DQ抗体は、グルテンペプチドとは無関係であるペプチドとの複合体の形態にある場合、または非HLA-DQ2.5ハロタイプに供された場合(図1-14を含む)には、HLA-DQ2.5に対して結合活性を実質的に有しない。
【0330】
図1-15および1-16は、それぞれ、陽性結合対照(DQN0139bb)および陰性結合対照(IC17dK)である。
【0331】
実施例5
HLA-DQ2.5+ PBMC B細胞に対する抗体の結合解析
図2は、FACSによって測定された、HLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対する各抗HLA-DQ抗体の結合を示す。
【0332】
ヒトFcRブロッキング試薬(Miltenyi、カタログ番号130-059-901)を加えて、4℃で10分間インキュベートした。50 ng/mLの抗HLA-DQ抗体、ならびに1μg/mLの対照のDQN0139bb抗体およびIC17dK抗体を、各細胞株と共に室温で30分間インキュベートした。例外は、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6、およびDQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6についてであり、これらの抗HLA-DQ抗体は313 ng/mLで用い、それぞれの対照のDQN0139bb抗体およびIC17dK抗体は20μg/mLで用いた。インキュベーション後に、細胞を、FACSバッファー(PBS中の2% FBS、2 mM EDTA)で洗浄した。ビオチンコンジュゲート抗ヒト抗体(Chugai、BIO12-deltaGK Ab)およびPacific Blue(商標)抗ヒトCD19抗体マウスIgG1k(Biolegend、カタログ番号302232)を、同時に加えて4℃で30分間インキュベートし、続いてこれをFACSバッファーで洗浄した。次いで、PEストレプトアビジン(Biolegend、カタログ番号405203)を加えて4℃で15分間インキュベートし、続いてこれをFACSバッファーで洗浄した。データ収集を、LSRFortessa X-20(Becton Dickinson)で行い、続いてFlowJoソフトウェア(Tree Star)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。IC17dkのMFI値を0%とし、DQN0139bbのMFI値を100%とすることによって、抗体の%MFIを決定した。
【0333】
図2は、13種類の二重特異性抗HLA-DQ抗体(バリアントDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1353/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1255/L0605-F6)が、HLA-DQ2.5陽性PBMC-B細胞に対する結合を実質的に有しないことを示す。
【0334】
実施例6
6.1 αβTCR KO Jurkat NFAT-Luc細胞株の樹立
Cas9とTCR定常領域を標的とするシングルガイドRNA(Blood. 2018;131:311-22.)とから構成されるリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体(Takara Bio)を、エレクトロポレーション(LONZA、Nucleofector 2b)によってNFAT-RE-luc2 Jurkat細胞株(Promega Corporation、CS176401)に導入した。TCRα鎖およびTCRβ鎖に対する全てのシングルガイドRNAを混合して、同時に導入した。RNPを導入した細胞を、ハイグロマイシンBを含有する培地中で培養し、続いてFACS Aria III(Becton, Dickinson and Company)でのシングルセルクローニングを行った。次いで、TCRα鎖およびTCRβ鎖の配列をチェックし、TCRα鎖およびTCRβ鎖がノックアウトされたJurkat NFAT-Luc由来のクローンを特定した。樹立されたクローンを、TCR KO Jurkat NFAT-Lucと命名した。
【0335】
6.2 HLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性TCRを一過性に発現するαβTCR KO Jurkat NFAT-Luc細胞株の樹立
TCRアミノ配列情報を、公的情報から、または物質移動合意書に基づいてOslo universityから入手した。HLA-DQ2.5/α1グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 387.9)、HLA-DQ2.5/α1bグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 370.2.25)、HLA-DQ2.5/ω1グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 442D.A.2)、HLA-DQ2.5/ω2グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 578.42)、HLA-DQ2.5/γ1グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 820.27)、HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.41)、HLA-DQ2.5/γ3グリアジン拘束性TCR(TCC ID: /.2.23)、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.36)、HLA-DQ2.5/γ4dグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.94)のアミノ酸配列情報は、物質移動合意書に基づいてOslo Universityから入手した。HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR(DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR)のアミノ酸配列情報は、Nat Struct Mol Biol. 2014;21:480-8から入手し、HLA-DQ2.5/BCホルデイン拘束性TCR(TCC ID: 1468.2)のアミノ酸配列情報は、Eur J Immunol. 2020; 50: 256-269から入手した。各TCRβ鎖配列を、2A自己切断ペプチド配列(P2A、アミノ酸配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP、配列番号:203)によって対応するTCRα鎖配列と連結させた。HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCRおよびHLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCRを除いて、全てのTCRα鎖およびTCRβ鎖は、これら自体の天然シグナルペプチド配列を有する。HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCRの天然シグナル配列は、Campathシグナル配列(MGWSCIILFLVATATGVHS、配列番号:170)により置き換えた。Campathシグナル配列をまた、HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCRのN末端にも付けた。次いで、各々のコドン最適化されたTCRβ鎖-P2A-TCRα鎖cDNAを、Genscriptで発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)中に挿入した。ベクターのαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2中へのエレクトロポレーションを、SE Cell Line 4D-Nucleofector(商標) Kitのプロトコルに従うことによって行った。
【0336】
6.3 HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(International Histocompatibility Working Group, Fred Hutch)(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα1グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0337】
図3-1および表2-7に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/α1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0338】
6.4 HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0339】
図3-2および表2-7に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0340】
6.5 HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα1bグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0341】
図3-3および表2-7に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0342】
6.6 HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とω1/2グリアジンペプチド(EQPFPQPEQPFPWQP、配列番号:204、25 uM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのω1グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0343】
図3-4および表2-7に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0344】
6.7 HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とω1/2グリアジンペプチド(EQPFPQPEQPFPWQP、配列番号:204、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのω2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0345】
図3-5および表2-7に示すように、DQN0344xxおよびDQN034425を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0346】
6.8 HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とBCホルデインペプチド(EPEQPIPEQPQPYPQQ、配列番号:205、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのBCホルデイン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0347】
図3-6および表2-7に示すように、DQN0344xxおよびDQN034425を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0348】
6.9 HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ1グリアジンペプチド(PQQPQQSFPEQEQPA、配列番号:206、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ1グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0349】
図3-7および表2-7に示すように、DQN0344xxおよびDQN034425を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0350】
6.10 HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ2グリアジンペプチド(GQGIIQPEQPAQLIR、配列番号:207、250 nM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0351】
図3-8および表2-7に示すように、DQN0344xxおよびDQN034425を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0352】
6.11 HLA-DQ2.5/γ3グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ3グリアジンペプチド(EQPFPEQPEQPYPEQPEQPFPQP、配列番号:208、100 uM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ3グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0353】
図3-9および表2-7に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/γ3グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/γ3グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0354】
6.12 HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ4aグリアジンペプチド(FSQPEQEFPQPQ、配列番号:209、25 uM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ4aグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0355】
図3-10および表2-7に示すように、DQN0344xx、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。特に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してより強い、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する中和活性を示した。
【0356】
6.13 HLA-DQ2.5/γ4dグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ4dグリアジンペプチド(WPQQQPFPQPEQPFCEQPQR、配列番号:210、100 uM)との混合物を、96ウェルプレート(Corning、3799)に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ4dグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0357】
表2-7に示すように、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054を除く全ての試験した抗HLA DQ抗体は、HLA-DQ2.5/γ4dグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する阻害効果を、用量依存的な様式により示した。
図3-1から3-10および表2-7に示すように、全ての試験したグルテンペプチドに対するDQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6の中和活性は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054よりも強かった。
【0358】
追加的に、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1527/L0605-F6、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0722-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1352/L0681-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1353/L0681-F6は、DQN0344xx、DQN0344xx//DQN0385ee、DQN034425、およびDQN034425//DQN0385ee0054と比較してずっと広範囲にわたる、グルテンペプチドに対する中和活性を示した。
【0359】
表2-7を考慮して、10種類の試験した抗HLA-DQ抗体は、特に、ω2グリアジンペプチド、BCホルデインペプチド、γ1グリアジンペプチド、γ2グリアジンペプチド、γ4aグリアジンペプチド、およびγ4dグリアジンペプチドに依存したJurkat T細胞活性化に対して、阻害効果(中和活性)を示した。本発明の改変の前の事前抗体は、これらのグルテンペプチドに対して中和活性を示さなかった。すなわち、本発明の抗原結合分子において、グルテンペプチドに対する交差反応性は、改変の前と比較して増強されている。
【0360】
(表2-7)HLA-DQ2.5/グルテンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA-DQ抗体の中和活性(阻害効果)
【0361】
実施例7
実施例7-1
pH 7.4でヒトHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体、およびHLA-DQ2.5/BCホルデイングリアジンペプチド複合体に結合する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティを、Biacore 8k機器(GE Healthcare)を用いて37℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセル上に抗ヒトFc抗体(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20 mM ACES、150 mM NaCl、0.05% Tween 20、0.005% NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。各抗体を、抗ヒトFc抗体によりセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは、200レゾナンスユニット(RU)を目指した。ヒトHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体を、2倍段階希釈によって調製した12.5~200 nMで注入し、続いて解離させた。ヒトHLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体を、2倍段階希釈によって調製した25~400 nMで注入し、続いて解離させた。ヒトHLA-DQ2.5/BCホルデイングリアジンペプチド複合体を、2倍段階希釈によって調製した25~400 nMで注入し、続いて解離させた。センサー表面を、各サイクルに3M MgCl2で再生させた。結合アフィニティは、Biacore Insight Evaluation software(GE Healthcare)を用いてデータを処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。
【0362】
ヒトHLA-DQ2.5/33merグリアジンペプチド複合体、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド複合体、およびHLA-DQ2.5/BCホルデイングリアジンペプチド複合体に結合する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティを、表3-1に示す。
【0363】
(表3-1)HLA-DQ2.5/グルテンペプチド複合体に対する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティ
【0364】
実施例7-2
pH 7.4で33merグリアジンペプチドに結合する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティを、Biacore 8k機器(GE Healthcare)を用いて25℃で測定した。アミンカップリングキット(GE Healthcare)を用いて、CM4センサーチップの全てのフローセル上に抗ヒトFc抗体(GE Healthcare)を固定化した。全ての抗体および分析物を、20 mM ACES、150 mM NaCl、0.05% Tween 20、0.005% NaN3を含有するACES pH7.4中で調製した。各抗体を、抗ヒトFc抗体によりセンサー表面上に捕捉した。抗体捕捉レベルは、600レゾナンスユニット(RU)を目指した。33merグリアジンペプチドを、2倍段階希釈によって調製した2.5~40 nMで注入し、続いて解離させた。センサー表面を、各サイクルに3M MgCl2で再生させた。結合アフィニティは、Biacore Insight Evaluation software(GE Healthcare)を用いてデータを処理し、1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。
【0365】
33merグリアジンペプチドに結合する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティを、表3-2に示す。DQN0315hhを除く試験された全ての抗体は、33merグリアジンペプチド自体に対する抗体結合を示さなかった。
【0366】
(表3-2)33merグリアジンペプチドに対する抗HLA-DQ2.5抗体のアフィニティ
【0367】
実施例8
8.1 α/βTCR KO Jurkat NFAT-Luc細胞株の樹立
Cas9とTCR定常領域を標的とするシングルガイドRNA(Blood. 2018;131:311-22.)とから構成されるリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を、エレクトロポレーション(LONZA、Nucleofector 2b)によってNFAT-RE-luc2 Jurkat細胞株(Promega corporation、CS176401)に導入した。TCRα鎖およびTCRβ鎖に対する全てのシングルガイドRNAを混合して、同時に導入した。RNPを導入した細胞を、ハイグロマイシンBを含有する培地中で培養し、続いてFACS Aria III(Becton, Dickinson and Company)でのシングルセルクローニングを行った。次いで、TCRα鎖およびTCRβ鎖の配列をチェックし、TCRα鎖およびTCRβ鎖がノックアウトされたJurkat NFAT-Luc由来のクローンを特定した。樹立されたクローンを、TCR KO Jurkat NFAT-Lucと命名した。
【0368】
8.2 HLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性TCRを一過性に発現するα/βTCR KO Jurkat NFAT-Luc細胞株の樹立
TCRアミノ配列情報を、公的情報から、または物質移動合意書に基づいてOslo universityから入手した。HLA-DQ2.5/α1aグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 387.9)、HLA-DQ2.5/α1bグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 370.2.25)、HLA-DQ2.5/ω1グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 442D.A.2)、HLA-DQ2.5/ω2グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 578.42)、HLA-DQ2.5/γ1グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 820.27)、HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.41)、HLA-DQ2.5/γ3グリアジン拘束性TCR(TCC ID: /.2.23)、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.36)、HLA-DQ2.5/γ4dグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 430.1.94)のアミノ酸配列情報は、物質移動合意書に基づいてOslo Universityから入手した。HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR(HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR)のアミノ酸配列情報は、Nat Struct Mol Biol. 2014;21:480-8から入手し、HLA-DQ2.5/BCホルデイン拘束性TCR(TCC ID: 1468.2)のアミノ酸配列情報は、Eur J Immunol. 2020; 50: 256-269から入手した。各TCRβ鎖配列を、2A自己切断ペプチド配列(P2A、アミノ酸配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP、配列番号:203)によって対応するTCRα鎖配列と連結させた。HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCRおよびHLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCRを除いて、全てのTCRα鎖およびTCRβ鎖は、これら自体の天然シグナルペプチド配列を有する。HLA-DQ2.5/γ2グリアジン拘束性TCRの天然シグナル配列は、Campathシグナル配列(MGWSCIILFLVATATGVHS、配列番号:170)により置き換えた。Campathシグナル配列をまた、HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCRのN末端にも付けた。次いで、各々のコドン最適化されたTCRβ鎖-P2A-TCRα鎖cDNAを、Genscriptで発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)中に挿入した。ベクターのαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2中へのエレクトロポレーションを、SE Cell Line 4D-Nucleofector(商標) Kitのプロトコルに従うことによって行った。
【0369】
8.3 HLA-DQ2.5/α1aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα1aグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0370】
図4-1および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/α1aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はピコグラム/mLの範囲であった。
【0371】
8.4 HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50 uLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0372】
図4-2および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はピコグラム/mLの範囲であった。
【0373】
8.5 HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα1bグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0374】
図4-3および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/α1bグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0375】
8.6 HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とω1/2グリアジンペプチド(EQPFPQPEQPFPWQP、配列番号:204、25μM)との混合物を、96ウェルプレート
に分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのω1グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0376】
図4-4および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/ω1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0377】
8.7 HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とω1/2グリアジンペプチド(EQPFPQPEQPFPWQP、配列番号:204、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのω2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0378】
図4-5および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/ω2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はピコグラム/mLの範囲であった。
【0379】
8.8 HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とBCホルデインペプチド(EPEQPIPEQPQPYPQQ、配列番号:205、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのBCホルデイン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0380】
図4-6および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/BCホルデインペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はナノグラム/mLの範囲であった。
【0381】
8.9 HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ1グリアジンペプチド(PQQPQQSFPEQEQPA、配列番号:206、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ1グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0382】
図4-7および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/γ1グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0383】
8.10 HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ2グリアジンペプチド(GQGIIQPEQPAQLIR、配列番号:207、250 nM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0384】
図4-8および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/γ2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はナノグラム/mLの範囲であった。
【0385】
8.11 HLA-DQ2.5/γ3グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ3グリアジンペプチド(EQPFPEQPEQPYPEQPEQPFPQP、配列番号:208、100μM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ3グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0386】
図4-9および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/γ3グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0387】
8.12 HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ4aグリアジンペプチド(FSQPEQEFPQPQ、配列番号:209、25μM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ4aグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0388】
図4-10および表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/γ4aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いマイクログラム/mLからナノグラム/mLの範囲であった。
【0389】
8.13 HLA-DQ2.5/γ4dグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのIHW09023細胞(8.0×104細胞/ウェル)とγ4dグリアジンペプチド(WPQQQPFPQPEQPFCEQPQR、配列番号:210、100μM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのγ4dグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Outlook Excel 2013(Microsoft)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0390】
表4に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.5/γ4dグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値はナノグラム/mLの範囲であった。
【0391】
(表4)
【0392】
実施例9
9.1 HLA-DQ2.5/グルテンペプチド拘束性TCRを一過性に発現するαβTCR KO Jurkat NFAT-Luc細胞株の樹立
TCRアミノ配列情報を、公的情報から、または物質移動合意書に基づいてOslo universityから入手した。HLA-DQ2.5/α1aグリアジン拘束性TCR(TCC ID: 387.9)のアミノ酸配列情報は、物質移動合意書に基づいてOslo Universityから入手した。HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR(HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCR)のアミノ酸配列情報は、Nat Struct Mol Biol. 2014;21:480-8から入手した。それらのTCRは、HLA-DQ2.5拘束性であるが、HLA-DQ2.2がα1aグリアジン、α2グリアジンとの複合体の形態にある場合にはHLA-DQ2.2に対して交差反応性である(図5-1および5-2)。各TCRβ鎖配列を、2A自己切断ペプチド配列(P2A、アミノ酸配列:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP、配列番号:203)によって対応するTCRα鎖配列と連結させた。HLA-DQ2.5/α1aグリアジン拘束性TCRのTCRα鎖およびTCRβ鎖は、これら自体の天然シグナルペプチド配列を有する。Campathシグナル配列(MGWSCIILFLVATATGVHS、配列番号:170)を、HLA-DQ2.5/α2グリアジン拘束性TCRのN末端に付けた。次いで、各々のコドン最適化されたTCRβ鎖-P2A-TCRα鎖cDNAを、Genscriptで発現ベクターpCXZD1(US/20090324589)中に挿入した。ベクターのαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2中へのエレクトロポレーションを、SE Cell Line 4D-Nucleofector(商標) Kitのプロトコルに従うことによって行った。
【0393】
9.2 HLA-DQ2.2+Human Blood B Booster B細胞(HBBB2.2)の樹立
HLA-DQ2.2+PBMC(Precision for Medicines)から、B細胞を単離した。次いで、単離されたB細胞を、Human Blood B Booster(登録商標)(DENDRITICS)を用いることによって不死化した。
【0394】
9.3 HLA-DQ2.2/α1aグリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのHBBB2.2細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、25μM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα1aグリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Office 365 MSOのMicrosoft(登録商標) Excel(登録商標)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
【0395】
図5-3および表5に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.2/α1aグリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0396】
9.4 HLA-DQ2.2/α2グリアジンペプチド依存性Jurkat T細胞活性化に対する抗HLA DQ抗体の阻害効果を確認した。
50μLのHBBB2.2細胞(8.0×104細胞/ウェル)と33merグリアジンペプチド(LQLQPFPQPELPYPQPELPYPQPELPYPQPQPF、配列番号:201、1μM)との混合物を、96ウェルプレートに分配した。次いで、25μLの段階希釈した抗HLA DQ抗体を加え、25μLのα2グリアジン拘束性TCRがトランスフェクトされたαβTCR-KO Jurkat-NFAT-luc2(2.0×104細胞/ウェル)を最後に加えて、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした。一晩培養後に、50μLの培養細胞を回収して、OptiPlate-96(PerkinElmer、6005299)に再分配した。次いで、50μLのBio-Glo(Promega、G7491)を加えて室温で10分間インキュベートし、Envision(PerkinElmer)で発光を測定し、続いて、Office 365 MSOのMicrosoft(登録商標) Excel(登録商標)およびGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad)を用いて解析した。抗体を伴わない抗原ペプチドの非存在下でのウェルの秒あたり平均カウント数(cps)を100%とし、抗体を伴わない抗原の存在下でのウェルのcpsを0%としたときの、抗HLA DQ抗体の阻害効果(%)を決定した。IC50値は、XLfit Excelアドインソフトウェア(IDBS)を用いて決定した。
図5-4および表5に示すように、全ての試験した抗HLA DQ抗体(DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2)は、HLA-DQ2.2/α2グリアジン依存性Jurkat T細胞活性化に対して濃度依存的な中和を媒介し、IC50値は低いナノグラム/mLの範囲であった。
【0397】
図5-3から5-4および表5に示すように、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2は、HLA-DQ2.2/α1グリアジンおよびα2グリアジンに対して濃度依存的な中和を媒介した。
【0398】
図4-1から5-4および表4、表5に示すように、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2は、全ての試験したグルテンエピトープに対して濃度依存的な中和を媒介した。加えて、表2-7および表4に示すように、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6.v2、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6.v2の中和活性は、それぞれ、DQN0344H0976/L0591//DQN0385H1255/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1521/L0605-F6、DQN0344H1013/L0620//DQN0385H1270/L0681-F6のものに匹敵していた。
【0399】
(表5)
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図1-11】
図1-12】
図1-13】
図1-14】
図1-15】
図1-16】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図3-8】
図3-9】
図3-10】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図4-7】
図4-8】
図4-9】
図4-10】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
【配列表】
2022172276000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2022172276000001.xml