(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172346
(43)【公開日】2022-11-15
(54)【発明の名称】電子装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20221108BHJP
H02J 50/23 20160101ALI20221108BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/23
H02J50/80
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022143258
(22)【出願日】2022-09-08
(62)【分割の表示】P 2018202840の分割
【原出願日】2018-10-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】三友 敏也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健太郎
(57)【要約】
【課題】安全性と高効率な給電を両立する無線給電装置、無線給電システムおよび無線給電方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態としての無線給電装置は、複数のアンテナ素子で第1無線信号のビームを送信する給電回路と、前記複数のアンテナ素子で第2無線信号を受信する計測回路と、複数の時刻に受信された前記第2無線信号に基づいて前記ビームの方向における物体の有無を推定し、前記物体があると推定された場合には、前記アンテナ素子に入力される前記第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御し、前記ビームの形状を変更する制御回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子から第1無線信号のビームを送信する電力伝送回路と、
少なくとも1つの受電装置から送られた伝搬路情報を含む第2無線信号を受信する計測回路と、
複数の時刻に受信された前記第2無線信号に基づいて前記ビームの方向における、前記複数のアンテナ素子と前記少なくとも1つの受電装置との間に位置する物体を検出し、前記複数のアンテナ素子に入力される前記第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御することにより、前記伝搬路情報に基づいて検出された前記物体に応じて前記ビームの形状を変更する制御回路とを備えた
電子装置。
【請求項2】
前記制御回路は、複数の時刻に受信された前記第2無線信号の時間領域波形または周波数領域波形の少なくともいずれかに基づいて前記ビームの方向における物体を検出する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記物体が検出された方向の前記ビームのゲインを低減する、
請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記物体が検出されなかった方向の前記ビームのゲインを増大させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記制御回路は、複数の角度からの前記第2無線信号を受信し、複数の時刻にある回転方向に対して隣接する角度で前記物体が検出された場合には、前記回転方向に前記物体が移動していると判断し、前記物体が移動している方向における前記ビームのゲインを低減する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記制御回路は、あらかじめ定義された複数の前記ビームの中から、送信される前記ビームを選択する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記物体が前記ビームの方向にあることが検出された場合に、前記第1無線信号の送信電力を低下させる処理か、前記第1無線信号のデューティ比を小さくする処理の少なくともいずれかを実行する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記制御回路は、給電処理と計測処理を交互に実行し、
前記電力伝送回路は、前記給電処理を行っている間に前記ビームを送信し、
前記計測回路は、前記第2無線信号を受信して前記ビームの方向にある前記物体を検出し、前記制御回路は、前記計測処理を行っている間に前記複数のアンテナ素子に供給された前記第1無線信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御することにより、前記ビームの形状を変更する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記制御回路は、それぞれ異なる指向性を有する複数の前記ビームを含む第1順序を用いて、前記給電処理の実行回ごとに送信される前記ビームの指向性を変更する、
請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
前記制御回路は、前記第1順序に含まれる複数の前記ビームのうち少なくとも一つの方向で前記物体を検出し、前記第1順序の一部であって、検出された前記物体の方向に指向性を持つ前記ビームを含まない第2順序を用いて、前記給電処理の際に伝送される前記ビームの指向性を変更する、
請求項9に記載の電子装置。
【請求項11】
前記制御回路は、前記第1順序に含まれる複数の前記ビームのうち少なくとも一つの方向に前記物体が検出されないことを確認し、前記第1順序を用いて、前記給電処理のそれぞれで送信される前記ビームの指向性を変更する、
請求項10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記制御回路は、受信時における前記複数のアンテナ素子の指向性を高める処理または第2無線信号の受信時間をより長く設定する処理の少なくともいずれかを実行してから、前記物体の方向を検出する、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項13】
前記物体を検出するセンサ回路を備え、
前記制御回路は、さらに前記センサ回路の信号に基づいて前記ビームの方向における物体を検出し、前記複数のアンテナ素子に設けられる前記第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御し、前記ビームの形状を変更する、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項14】
複数のアンテナ素子から第1無線信号のビームを送信する電子装置と、
第2無線信号を送信するとともに、前記第1無線信号のビームによって供給された電力を受信する受電装置と、を備え、
前記電子装置は、前記複数のアンテナ素子からの前記第2無線信号を受信し、複数の時刻に受信された前記第2無線信号に基づいて前記ビームの方向における前記電子装置及び前記受電装置の間に位置する物体を検出し、前記複数のアンテナ素子のそれぞれに設けられる前記第1無線信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御することにより、伝搬路情報に基づいて検出された前記物体に応じて前記ビームの形状を変更する、
システム。
【請求項15】
前記第2無線信号を伝送する無線通信装置をさらに備える、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
複数のアンテナ素子から第1無線信号のビームを送信する電力伝送装置と、
前記第1無線信号のビームによって供給された電力を受信する受電装置と、を備え、
前記受電装置は、第2無線信号を送信し、
前記電力伝送装置は、前記複数のアンテナ素子で前記第2無線信号を受信し、
前記電力伝送装置は、複数の時刻に受信された前記第2無線信号に基づいて、前記ビームの方向における前記複数のアンテナ素子及び前記受電装置の間に位置する物体を検出し、
前記電力伝送装置は、前記複数のアンテナ素子のうち各アンテナ素子に設けられる前記第1無線信号の振幅又は位相の少なくとも一方を制御することにより、伝搬路情報に基づいて検出された物体に応じて、前記ビームの形状を変更する、
方法。
【請求項17】
無線通信装置は、前記第2無線信号を送信し、
前記無線通信装置は、前記電力伝送装置及び前記受電装置とは別個に設けられる、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記計測回路は、前記電力伝送回路からの前記第1無線信号によって送信された電力を受信しない無線通信装置から送信された前記第2無線信号を受信する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項19】
前記電力伝送回路は、前記複数のアンテナ素子とのデータ通信用の第3無線信号を送信し、
前記受電装置は、前記第3無線信号を受信するとともに、前記第1無線信号のビームによる電力伝送を受信する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項20】
前記電子装置は、前記複数のアンテナ素子とのデータ通信用の第3無線信号を送信し、
前記受電装置は、前記第3無線信号を受信するとともに、前記第2無線信号を送信する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項21】
前記電力伝送装置は、前記複数のアンテナ素子とのデータ通信用の第3無線信号を送信し、
前記受電装置は、前記第3無線信号を受信して、前記第2無線信号を送信する、
請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記計測回路は、前記複数のアンテナ素子で前記第2無線信号を受信する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項23】
前記伝搬路情報に基づいて前記ビームの方向における、前記複数のアンテナ素子と少なくとも一つの受電装置との間に位置する前記物体を検出し、前記伝搬路情報は、複数の時刻で受信された前記第2無線信号の、時間領域波形、振幅、位相、周波数領域波形、又は到来方向の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項24】
前記制御回路は、前記物体が存在すると判断された場合、前記第1無線信号の伝送電力の削減、又は前記第1無線信号のデューティ比の削減の少なくとも一方を含む処理を実行する、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項25】
前記電力伝送装置は、前記物体が存在すると判断された場合、前記第1無線信号の送信電力の削減、又は前記第1無線信号のデューティ比の削減の少なくとも一方を含む処理を実行する、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線給電装置、無線給電システムおよび無線給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送はワイヤレスな給電を実現するため、幅広い分野への適用が進められている。しかしながら、環境中の物体が電磁波に曝露される安全上のリスクがある。例えば、人体に対する安全性を担保するため、空間内における電磁界強度を防護指針の範囲内に抑えることが好ましい。また、強い電磁波によって電子機器の故障や誤動作を惹き起こすおそれもある。
【0003】
そこで、無線電力伝送が行われている空間内における物体を検出し、物体が検出された場合に給電用無線信号の送信の停止や、送信電力の低減を行う技術が開発されている。しかし、これらの技術では、給電効率が低下してしまい、安全性の確保と効率的な機器の給電を両立するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5320138号公報
【特許文献2】特許第6265761号公報
【特許文献3】特許第6273546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、安全性と高効率な給電を両立する無線給電装置、無線給電システムおよび無線給電方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態としての無線給電装置は、複数のアンテナ素子で第1無線信号のビームを送信する給電回路と、前記複数のアンテナ素子で第2無線信号を受信する計測回路と、複数の時刻に受信された前記第2無線信号に基づいて前記ビームの方向における物体の有無を推定し、前記物体があると推定された場合には、前記アンテナ素子に入力される前記第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御し、前記ビームの形状を変更する制御回路とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】無線給電システムの構成例を示したブロック図。
【
図2】給電装置による第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図3】受電装置から送信される第2無線信号の到来方向の例を示した平面図。
【
図4】第2無線信号による人体の検出例を示した平面図。
【
図5】給電処理と計測処理の実行タイミングの例を示したタイムチャート。
【
図6】送信電力を低下させた場合における第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図7】人体の検出有無による処理内容の変更の例を示したタイムチャート。
【
図8】第1の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャート。
【
図9】第1の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャート。
【
図10】受電装置#1の方向への指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図11】受電装置#2の方向への指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図12】受電装置#3の方向への指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図13】受電装置#4の方向への指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図14】人体の検出有無による処理内容の違いを示したタイムチャート。
【
図15】第2の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャート。
【
図16】第2の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャート。
【
図17】第1グループへの指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図18】第2グループへの指向性が高められた第1無線信号の合成波ビームの例を示した平面図。
【
図19】第3の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したタイムチャート。
【
図20】歩行者の移動に伴う合成波ビームの変更処理の例を示した平面図。
【
図21】歩行者の移動に伴う合成波ビームの変更処理の例を示した平面図。
【
図22】合成波ビームの変更が遅れた場合の例を示した平面図。
【
図23】歩行者の移動に伴う合成波ビームの変更処理の例を示した平面図。
【
図24】歩行者の移動に伴う合成波ビームの変更処理の例を示した平面図。
【
図25】第5の実施形態に係る給電装置の構成例を示したブロック図。
【
図26】第6の実施形態に係る無線給電システムの例を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。また、図面において同一の構成要素は、同じ番号を付し、説明は、適宜省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、無線給電システムの構成例を示したブロック図である。無線給電システムは、少なくとも1台の給電装置(無線給電装置)と、少なくとも1台の受電装置(無線受電装置)を含むものとする。また、給電装置と受電装置との間の空間は、給電装置が送信する給電用の無線信号(以下、第1無線信号という)と、受電装置から送信される無線信号(以下、第2無線信号という)を含む、各種の無線信号の伝搬路となるが、物体が侵入することがある。
図1の例では、給電装置と受電装置との間に人体10が侵入しているが、侵入する物体の種類はこれに限定されない。例えば、侵入する物体は車両、ドローンなどの移動体であってもよいし、植物、動物などの生物であってもよい。また、金属、木材、樹脂、セラミックなどの異物であってもよい。給電装置は、第2無線信号を受信し、当該空間に侵入した物体を検出する。物体が検出された場合、給電装置は複数のアンテナ素子によって送信される第1無線信号のビーム(合成波ビーム)の形状を変更する。
【0010】
図1の無線給電システムには、給電装置1と、受電装置2A(受電装置#1)と、受電装置2B(受電装置#2)が含まれているが、この構成は一例にしか過ぎない。例えば、給電装置が複数台あってもよいし、受電装置の台数Nは
図1とは異なっていてもよい。
【0011】
給電装置1は、複数の素子を含むアレーアンテナを備えた無線通信装置である。受電装置2A、2B(受電装置#1、#2)は給電装置1から送信された第1無線信号によって無線給電される無線通信装置である。
【0012】
次に、給電装置1の構成について説明する。給電装置1は、電源回路11と、制御回路12と、記憶部13と、給電回路14と、計測回路15とを備えている。電源回路11は、電力を給電装置1の他の構成要素に供給する。電源回路11は、外部電源から供給された交流の電力を、整流器によって直流の電力に変換してもよい。また、電源回路11はDC-DCコンバータによって昇圧または降圧を行ってもよい。制御回路12は、給電装置1の他の構成要素の制御を行う。制御回路12は、各種の命令またはプログラムを実行可能なプロセッサを備えていてもよい。また、制御回路12は、例えばASIC、FPGA、PLDなどのハードウェア回路を備えていてもよい。制御回路12は、記憶部13にデータの読み書きを行うことができる。制御回路12が実行する命令、プログラムまたは命令、プログラムの実行に使われるデータは記憶部13に保存される。制御回路12が実行する処理の詳細については後述する。
【0013】
記憶部13は、各種のデータを保存可能な記憶領域を提供する。記憶部13は、例えばSRAM、DRAMなどの揮発性メモリであってもよいし、NAND、MRAM、FRAMなどの不揮発性メモリでもよい。またハードディスク、SSDなどのストレージ装置や、外部の記憶装置であってもよく、デバイスの種類については特に限定しない。また、記憶部13は複数の種類のメモリデバイスやストレージデバイスの組み合わせであってもよい。
【0014】
給電回路14は、複数のアンテナ素子で第1無線信号のビームを送信する。給電回路14は、複数の送信回路14aを備えている。また、それぞれの送信回路14aはアンテナ素子14bを備えている。各送信回路14aはアンテナ素子14bを使って無線信号を送信する。また、各送信回路14aは可変位相器および可変増幅器を備えている。制御回路12は、可変位相器を制御することによって、送信回路14aのアンテナ素子14bから送信される無線信号の位相を所望の値に設定することができる。また、制御回路12は、可変増幅器を制御することによって、送信回路14aのアンテナ素子14bから送信される無線信号の振幅を所望の値に設定することができる。なお、制御回路12は、記憶部13に保存されている、複数時刻に受信された第2無線信号に関する情報(以下、伝搬路情報という)に基づいて、複数の送信回路14aのアンテナ素子14bから送信される無線信号の位相と振幅を決定することができる。各アンテナ素子から送信される無線信号の位相と振幅を含む情報を送信設定とよぶ。伝搬路情報の例としては、第2無線信号の時間領域波形、振幅、位相、周波数領域波形、到来方向、チャネル行列などが挙げられる。
【0015】
給電回路14の複数のアンテナ素子14bを、アレーアンテナとして使うことができる。すなわち、各アンテナ素子14bから送信する無線信号の位相や振幅を制御することによって、送信される合成波ビームの指向性や強度を変更することができる。
図2は、合成波ビームの一例(合成波ビーム#0)を示した平面図である。
図2の例では、アレーアンテナ16を備えた給電装置1と、受電装置2A~2B(受電装置#1~#4)が示されている。アレーアンテナ16は、例えば、
図1のアンテナ素子14b、15bを含むものとする。
図2では、電磁界強度の平均値が等しい点を結んだ線40が示されている。以降では、平面図において合成波ビームの方向や強度を、電磁界強度の平均値が等しい点を結んだ線で示すものとする。給電装置1は線40で示された合成波ビーム#0を送信することによって、受電装置2A~2D(受電装置#1~#4)に無線給電を行うことができる。
【0016】
給電回路14のアンテナ素子14b(送信回路14a)の数については特に問わない。また、給電回路14におけるアンテナ素子14bの配置は必ず
図2のような直線状(リニア)でなくてもよい。例えば、複数のアンテナ素子が平面状や曲面状のアレーアンテナを形成していてもよい。
【0017】
なお、給電回路14のアンテナ素子14bから送信される無線信号は給電用の無線信号(第1無線信号)であってもよいし、データ通信用の無線信号であってもよい。また、送信される無線信号が給電とデータ通信の目的を兼ねていてもよい。すなわち、給電回路14は、変調器、符号化器を備えていてもよい。例えば、給電回路14は制御回路12の命令を受けて、受電装置に第2無線信号の送信を要求する制御信号を送信してもよい。
【0018】
アンテナ素子14bから送信される無線信号の周波数帯域や通信規格の種類については特に限定しない。例えば、給電回路14はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調された無線信号を送信するOFDM送信器であってもよい。また、給電回路14はMIMO(Multiple-Input and Multiple Output)によるデータ送信を行ってもよい。
【0019】
計測回路15は、複数のアンテナ素子で第2無線信号を受信する。計測回路15は、複数の受信回路15aを備えている。また、各受信回路15aはアンテナ素子15bを備えている。各受信回路15aはアンテナ素子15bを使って無線信号を受信する。計測回路15の複数のアンテナ素子15bをアレーアンテナとして使うことができる。計測回路15のアンテナ素子15b(受信回路15a)の数については特に問わない。また、計測回路15におけるアンテナ素子15bの配置は必ず直線状(リニア)でなくてもよい。例えば、複数のアンテナ素子15bが平面状や曲面状のアレーアンテナを形成していてもよい。
【0020】
なお、
図1では送信用と受信用で異なるアンテナ素子が用いられているが、送信用と受信用で少なくとも一部のアンテナ素子を共用にしてもよい。すなわち、計測回路15と給電回路14は共通のアレーアンテナを使って無線信号の送受信を行ってもよい。この場合、スイッチを使って、アンテナ素子(アレーアンテナ)の接続先を送信回路14aと、受信回路15aとの間で切り替えることができる。
【0021】
計測回路15は、受電装置2A、2B(受電装置#1、#2)から送信された無線信号(第2無線信号)を受信回路15aのアンテナ素子15bを介して受信する。そして、制御回路12は複数の時刻に受信された第2無線信号に基づいてビームの方向における物体の有無を推定する。制御回路は、例えば複数の時刻に受信された第2無線信号の時間領域波形または周波数領域波形の少なくともいずれかに基づいてビームの方向における物体の有無を推定することができる。制御回路12はビームの方向に物体があると推定した場合、アンテナ素子に入力される第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御し、ビームの形状を変更する。以下では、制御回路12が実行する処理の詳細について説明する。
【0022】
計測回路15が計測した時間領域波形は制御回路12に転送される。制御回路12は、計測された時間波形に基づいて、第2無線信号の振幅、位相を求めたり、フーリエ変換によって第2無線信号の周波数領域波形を求めたりすることができる。振幅については例えば最大値、平均値を使うことができるが、波高値などその他の代表的な値を求めてもよい。制御回路12は時刻とともに上述の情報を記憶部13に保存する。
【0023】
また、制御回路12は、計測回路15から転送された時間領域波形に基づいて、第2無線信号の到来方向を推定してもよい。到来方向推定法の例としては、フーリエ変換に基づくビームフォーマ(beamformer)法、Capon法、線形予測(linear prediction)法、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などが挙げられるが、どのような手法を使ってもよい。制御回路12は各受電装置から送信された第2無線信号の伝搬路推定を行い、チャネル行列を求めてもよい。制御回路12は時刻とともに上述の伝搬路情報を記憶部13に保存する。
【0024】
図3は、複数の受電装置から給電装置1に向けて送信される第2無線信号の例を示した平面図である。
図3には、直線状の(リニアな)アレーアンテナ16を備えた給電装置1と、受電装置2A~2B(受電装置#1~#4)が示されている。また、アレーアンテナ16に対して垂直な破線41が示されている。
図3の平面図では、各受電装置が送信した第2無線信号の到来方向が、破線41に対する角度で示されている。
【0025】
ここで、θi(i=1,2,...,N)は破線41に対する角度の大きさであり、時計周りの角度を正値、反時計周りの角度を負値で示すものとする。例えば、受電装置2A(受電装置#1)が送信する第2無線信号は、破線41に対してθ1の角度でアレーアンテナ16によって受信される。受電装置2B(受電装置#2)が送信する第2無線信号は、破線41に対してθ2の角度でアレーアンテナ16によって受信される。受電装置2C(受電装置#3)が送信する第2無線信号は、破線41に対して-θ3の角度でアレーアンテナ16によって受信される。受電装置2D(受電装置#4)が送信する第2無線信号は、破線41に対して-θ4の角度でアレーアンテナ16によって受信される。
【0026】
なお、受電装置が送信する第2無線信号は、データ送信用の無線信号であってもよいし、送信元の無線通信装置に関する情報(例えば、識別子)を含むビーコン信号であってもよい。この場合、給電装置1の制御回路12はビーコン信号の送信元の無線通信装置に関する情報(例えば、識別子)を記憶部13に保存する。
【0027】
計測回路15は、復号化器、復調器を備えていてもよい。また、計測回路15のアンテナ素子15bが受信する無線信号の周波数帯域や通信規格の種類については特に限定しない。例えば、計測回路15はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調された無線信号を受信するOFDM受信器であってもよい。また、計測回路15はMIMO(Multiple-Input and Multiple Output)によって送信されたデータを受信してもよい。
【0028】
次に、受電装置2A(受電装置#1)の構成について説明する。受電装置2B(受電装置#2)を含む、その他の受電装置の構成は受電装置2A(受電装置#1)と同様であるものとする。受電装置2Aは、受信回路21aと、アンテナ21bと、送信回路22aと、アンテナ22bと、制御回路23と、整流回路24と、二次電池25とを備えている。
【0029】
受信回路21aは、アンテナ21bを介して無線信号を受信する。受信回路21aが受信する無線信号は給電用の無線信号(第1無線信号)であってもよいし、データ通信用の無線信号であってもよい。また、前者と後者の用途を兼ねた無線信号を受信してもよい。受信回路21aは、復号化器、復調器を備えていてもよい。受信回路21aが受信する無線信号の周波数帯域および通信規格については特に問わない。受信回路21aがデータの受信に使われる場合、受信されたデータは制御回路23に転送される。受信回路21aが受信した無線信号(第1無線信号)が給電に使われる場合、受信した信号を整流回路24に入力する。そして、整流回路24は、整流後の信号を二次電池25に入力する。整流後の信号により、二次電池25の充電が行われる。
【0030】
整流回路24の例としては、フルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路などのブリッジ型整流回路が挙げられるが、整流回路の種類については特に問わない。また、
図1には示されていないが、受電装置2A(受電装置#1)はDC-DCコンバータを備えていてもよい。DC-DCコンバータは二次電池25に入力される信号の降圧または昇圧を行う。二次電池25の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池などが挙げられるが、どのような種類の電池であってもよい。
【0031】
送信回路22aは、アンテナ22bを介して第2無線信号を送信する。第2無線信号はビーコン信号であってもよいし、データ転送用の信号であってもよい。第2無線信号は送信元の受電装置を示す情報(例えば、識別子)を含んでいてもよい。送信回路22aは、変調器、符号化器を備えていてもよい。アンテナ22bから送信される第2無線信号の周波数帯域や通信規格の種類については特に限定しない。例えば、送信回路22aはOFDM変調された無線信号を送信するOFDM送信器であってもよい。
【0032】
制御回路23は、受電装置2A(受電装置#1)の各構成要素の制御を行う。例えば、制御回路23はアンテナ21bおよび受信回路21aを介して給電装置1から送信された制御信号を受信する。そして、制御信号が第2無線信号の送信要求を含んでいる場合、制御回路23は、送信回路22aおよびアンテナ22bを介して、第2無線信号を給電装置1に向けて送信する。第2無線信号は、二次電池25の放電時の出力電圧、放電時の出力電流、残容量などの情報(バッテリー情報)を含んでいてもよい。第2無線信号を受信した給電装置1は、バッテリー情報に基づいて各受電装置に対して無線給電を行う順序や優先度を決定することができる。
【0033】
また、制御回路23は、二次電池25の充電・放電の制御や監視を行ってもよい。整流回路24にスイッチが設けられている場合、制御回路23は当該スイッチのON/OFFを切り替えることによって、二次電池25への給電用信号の供給の開始操作と停止操作を行うことができる。制御回路23は、各種の命令またはプログラムを実行可能なプロセッサを備えていてもよい。なお、制御回路23は、例えばASIC、FPGA、PLDなどのハードウェア回路を備えていてもよい。また、制御回路23は制御回路12が実行する命令、プログラムまたは命令、プログラムの実行に使われるデータを保存するメモリやストレージを備えていてもよい。
【0034】
図4は、第2無線信号による人体の検出例を示している。
図4の平面図では、受電装置2B(受電装置#2)と給電装置1との間に人体10が侵入している。人体10は歩行者であってもよいし、静止していてもよい。人体10は、受電装置2B(受電装置#2)と給電装置1との間の伝搬路に位置しているものとする。したがって、受電装置2B(受電装置#2)と給電装置1との間における無線信号の伝搬において、人体10は障害物となる。
図4の例において、給電装置1が受信する第2無線信号は、物体による電磁波の反射、吸収などの影響で伝搬路に物体がないときと比べて変化する。
【0035】
そこで、給電装置1の制御回路12は、記憶部13に保存されている複数の時刻に取得された伝搬路情報に基づいて各受電装置との間の伝搬路における人体10(物体)の有無を推定することができる。推定処理には各種の基準を用いることができる。例えば、第2無線信号の振幅の代表値の減少量がしきい値以上である場合に、伝搬路に人体10があると推定してもよい。また、第2無線信号の位相の変化量がしきい値以上である場合に、伝搬路に人体10があると推定してもよい。また、過去に取得された第2無線信号の平均的な波形と、直近の時刻に係る第2無線信号の波形との間の相関に基づいて、伝搬路における人体10の有無を推定してもよい。この場合、波形は時間領域波形と周波数領域波形のいずれであってもよい。また、上述とは異なる基準を使ってもよいし、複数の基準を組み合わせて判定を行ってもよい。
【0036】
図4の位置に人体10があるときに、給電装置1が
図1の合成波ビーム#0(破線40)の第1無線信号を送信すると、人体10が強い電磁波に曝露され、人体10の安全性が担保できなくなるおそれがある。人体10の位置にその他の物体がある場合にも、各種のリスクが生ずる。例えば、電磁波への曝露によって、電子機器の故障や誤動作が起こる可能性もある。また、金属など導電性の物体が人体10の位置にある場合、電磁界強度によっては物体が異常発熱するおそれもある。
【0037】
そこで、給電装置1の制御回路12によって、少なくともいずれかの受電装置との間の伝搬路において人体などの物体が検出された場合には、送信電力を低下させた第1無線信号を送信することができる。
図5の平面図には、
図1の合成波ビーム#0と比べ低い送信電力で送信された合成波ビーム#7の例が示されている。給電装置1は合成波ビーム#0の代わりに合成波ビーム#7を送信することにより、人体10などの物体が電磁波に曝露されることによって生ずる各種のリスクを軽減することができる。
【0038】
なお、第1無線信号の送信電力の低減は、給電装置1と少なくともいずれかの受電装置との間の伝搬路において人体などの物体が検出された場合に実行される処理の一例にしかすぎない。例えば、給電装置1は人体などの物体が検出されなくなるまで、第1無線信号の送信を停止してもよい。また、パルス状の第1無線信号が送信される場合には、パルス幅を短くして、波形のデューティ比をより小さい値に変更してもよい。すなわち、給電装置1は単位時間当たりに送信される電磁波のエネルギー量を減少させるために、第1無線信号の送信設定を変更し、送信される合成波ビームの形状を変えることができる。例えば、給電装置1の制御回路12は、物体がビームの方向にあると推定した場合、第1無線信号の送信電力を低下させる処理か、第1無線信号のデューティ比を小さくする処理の少なくともいずれかを実行することができる。
【0039】
図6には、給電処理と計測処理の実行タイミングの例を示したタイムチャート30が示されている。タイムチャート30の横軸は時間を示している。ここで、給電処理とは、給電回路14がビームを送信する処理のことをいう。また、計測処理とは、計測回路15が第2無線信号を受信してビームの方向における物体の有無を推定し、物体があると推定された場合には、複数のアンテナ素子に入力される第1無線信号の振幅または位相の少なくともいずれかを制御してビームの形状を変更する処理のことをいう。
【0040】
計測処理の期間内では、複数の受電装置が給電装置1に向けて同時に第2無線信号を送信してもよい。また、計測処理の期間内において、第2無線信号の送信タイミングが重ならないよう、各受電装置が順次第2無線信号を送信してもよい。この場合、計測処理の期間内において各受電装置が第2無線信号を送信する順序については特に問わない。また、計測処理の期間内において、すべての受電装置が第2無線信号を送信してもよいし、一部の受電装置のみが第2無線信号を送信してもよい。タイムチャート30では、給電処理と計測処理が交互に実行されている。給電装置1の処理開始時において先に給電処理を実行してもよいし、先に計測処理を実行してもよい。ただし、人体などの物体への電磁波を軽減するために、給電装置1の処理開始時においては、計測処理を給電処理より先に実行することが望ましい。
【0041】
なお、計測処理において給電装置1と少なくともいずれかの受電装置との間の伝搬路において人体などの物体が検出された場合には、第1無線信号の送信設定を変更することができる。例えば、
図7のタイムチャート35では、計測処理で物体が検出された場合、次の給電処理で合成波ビーム#7が送信されている。また、タイムチャート35では、計測処理で物体が検出されていない場合には、次の給電処理で合成波ビーム#0が送信されている。
【0042】
次に、給電装置1が実行する処理の一例について説明する。
図8および
図9は第1の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャートである。以下では、
図8および
図9を参照しながら、処理を説明する。
【0043】
まず、給電装置1は変数iに1を代入する(ステップS101)。変数iには、受電装置の番号が格納される。そして、変数iの値が受電装置の台数Nより小さいか否かが判定される(ステップS102)。
【0044】
変数iの値が受電装置の台数Nより小さい場合(ステップS102のYES)、給電装置1は受電装置#iから送信された第2無線信号を受信し、伝搬路情報を取得する(ステップS103)。ステップS103で給電装置1は、受電装置#iに向けて第2無線信号の送信を要求する制御信号を送信してもよい。伝搬路情報は、受電装置#iの識別子、時刻とともに記憶部13に保存される(ステップS104)。識別子の例としては、MACアドレス、シリアル番号、製造番号などがあるが、識別子の形式については特に問わない。そして、給電装置1は変数iをインクリメントする(ステップS105)。これにより、変数iの値は1大きくなる。ステップS105の処理が実行されたら、再びステップS102の判定が行われ、判定の結果によって処理が分岐する。
【0045】
変数iの値が受電装置の台数Nより大きい場合(ステップS102のNO)、給電装置1の記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されているか否かを確認する(ステップS106)。記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されていない場合(ステップS106のNO)、再びステップS101以降の処理が実行される。
【0046】
記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されている場合(ステップS106のYES)、変数iの値を1にリセットする(ステップS107)。そして、変数iの値が受電装置の台数Nより小さいか否かが判定される(ステップS108)。
【0047】
変数iの値が受電装置の台数Nより大きい場合(ステップS108のYES)、給電装置1は記憶部13を参照し、受電装置#iの直近の時刻に係る伝搬路情報と以前の時刻に係る伝搬路情報とを比較する(ステップS109)。以前の時刻に係る伝搬路情報は、特定の時刻に係る伝搬路情報であってもよいし、直近の時刻を除く複数の時刻に係る伝搬路情報であってもよい。また、複数の時刻に係る伝搬路情報から計算された平均値と、直近の時刻に係る伝搬路情報を比較してもよい。ステップS109で実行される処理の詳細は
図4の説明で述べた通りである。
【0048】
そして、給電装置1はステップS109における比較の結果、受電装置#iとの間の伝搬路に物体があるか否かを判定する(ステップS110)。給電装置1は受電装置#iとの間の伝搬路に物体があると判定した場合(ステップS110のYES)、受電装置#iとの間の伝搬路に物体が検出されたことを示す情報を記憶部13に保存する(ステップS111)。なお、伝搬路に物体があると判定された場合、制御回路12は第2無線信号の受信時におけるアレーアンテナ16の指向性を高め、より高精度で物体の位置や到来方向の推定が行えるようにしてもよい。また、制御回路12は第2無線信号の受信時間をより長く設定し、到来方向の推定精度を高めてもよい。制御回路12は、前者の処理と後者の処理の少なくともいずれかを実行してから物体の位置や方向などを推定することができる。
【0049】
給電装置1は受電装置#iとの間の伝搬路に物体がないと判定した場合(ステップS110のNO)またはステップS111の処理が実行された場合、給電装置1は変数iをインクリメントする(ステップS112)。ステップS112の処理が実行されたら、再びステップS108の判定が行われ、判定の結果によって処理が分岐する。
【0050】
変数iの値が受電装置の台数Nより小さい場合(ステップS108のNO)、給電装置1は記憶部13を参照し、少なくともいずれかの受電装置との間の伝搬路に物体が検出された場合には、ステップS114で送信される第1無線信号の合成波ビームを変更する(ステップS113)。給電装置1はいずれかの受電装置との間の伝搬路に物体があると推定した場合には、第1無線信号の送信設定を変更する。一方、給電装置1はいずれの受電装置との間の伝搬路に物体がないと推定した場合には、第1無線信号の送信設定を変更しなくてもよい。そして、給電装置1はN台の受電装置に向けて給電用の第1無線信号を送信する(ステップS114)。次のステップS115では、給電処理を終了するか否かを判定する。給電処理を終了する場合、給電装置1は
図8、
図9の処理を終了する。給電処理を継続する場合、給電装置1はステップS101以降の処理を再び実行する。
【0051】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る給電装置は給電処理において複数の受電装置が無線給電できるよう、第1無線信号を送信していた。ただし、給電装置は必ず複数の受電装置に向けて第1無線信号を送信しなくてもよい。また、第1の実施形態に係る給電装置はいずれかの受電装置との間の伝搬路に人体などの物体が検出された場合、給電装置1は単位時間当たりに送信される電磁波のエネルギー量が減少するよう、送信設定の変更を行っていた。第2の実施形態では送信される電磁波の指向性の変更を含む処理の例について述べる。なお、第2の実施形態に係る給電装置および受電装置(無線給電システム)の構成は第1の実施形態と同様であるものとする。以降では第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
第2の実施形態に係る給電装置は、各無線通信装置の方向への指向性を高めた第1無線信号の合成波ビームを送信する。
図10~
図13にはこのような合成波ビームの例が示されている。
【0053】
例えば、給電装置1の制御回路12は、
図3の角度θ
1への指向性を高くなるよう、各送信回路14aから送信される信号(各アンテナ素子14bに入力される信号)の位相と振幅を制御する。これにより、
図10の平面図に示したような受電装置2A(受電装置#1)の方向における電磁界強度が高い合成波ビーム#1を生成することができる。合成波ビーム#1によって、受電装置2A(受電装置#1)に対する効率的な無線給電を行うことが可能となる。
【0054】
また、給電装置1の制御回路12は、
図3の角度θ
2への指向性を高くなるよう、各送信回路14aから送信される信号(各アンテナ素子14bに入力される信号)の位相と振幅を制御する。これにより、
図11の平面図に示したような受電装置2B(受電装置#2)の方向における電磁界強度が高い合成波ビーム#2を生成することができる。合成波ビーム#2によって、受電装置2B(受電装置#2)に対する効率的な無線給電を行うことが可能となる。
【0055】
図10、
図11の例の場合、人体10に電磁界強度が高い合成波ビームが照射されてしまう。そこで、人体10に合成波ビームが照射されない合成波ビームの例についても説明する。
【0056】
給電装置1の制御回路12は、
図3の角度-θ
3への指向性を高くなるよう、各送信回路14aから送信される信号(各アンテナ素子14bに入力される信号)の位相と振幅を制御する。これにより、
図12の平面図に示したような受電装置2C(受電装置#3)の方向における電磁界強度が高い合成波ビーム#3を生成することができる。これにより、受電装置2C(受電装置#3)に対する効率的な無線給電を行うことが可能となる。同様に、給電装置1の制御回路12は、
図3の角度-θ
4への指向性を高くなるよう、各送信回路14aから送信される信号(各アンテナ素子14bに入力される信号)の位相と振幅を制御する。これにより、
図13の平面図に示したような受電装置2D(受電装置#4)の方向における電磁界強度が高い合成波ビーム#4を生成することができる。これにより、受電装置2D(受電装置#4)に対する効率的な無線給電を行うことが可能となる。
【0057】
図12、
図13の例の場合、人体10に合成波ビームが照射されるのを回避することができる。
【0058】
給電装置1の制御回路12は、記憶部13に各合成波ビームの指向性が高くなる角度の情報と、対応する合成波ビームを送信するときに各アンテナ素子14bに入力される無線信号の位相、振幅の情報(送信設定)とを保存してもよい。例えば
図10~
図13の場合、合成波ビーム#1の送信設定と角度θ
1、合成波ビーム#2の送信設定と角度θ
2、合成波ビーム#3の送信設定と角度-θ
3、合成波ビーム#4の送信設定と角度-θ
4とが記憶部13に保存される。
【0059】
また、給電装置1の制御回路12は、記憶部13に各合成波ビームの利得が低くなる角度の情報を保存してもよい。例えば
図10~
図13の場合、記憶部13に合成波ビーム#1の利得は角度-θ
3、-θ
4で低くなり、合成波ビーム#1、#2の利得は角度-θ
3、-θ
4で低くなり、合成波ビーム#3、#4の利得は角度θ
1、θ
2で低くなることを示す情報が保存される。給電装置1の制御回路12は、記憶部13を参照し、給電処理において送信する合成ビームをあらかじめ定義された複数の合成波ビームの中から選択する。送信する合成波ビームの選択は、無線給電の優先度が高い受電装置がある角度に関する情報、人体などの物体が検出された角度の情報の少なくともいずれかに基づいて行うことが可能である。
【0060】
次に、第2の実施形態に係る給電装置による給電処理および計測処理の例について説明する。
図14には、給電装置1が受電装置との間の伝搬路において物体(例えば、人体)を検出していない場合におけるタイムチャート31と、給電装置1がいずれかの受電装置との間の伝搬路において物体(例えば、人体)が検出されている場合におけるタイムチャート32とが示されている。タイムチャート31、32の横軸はいずれも時間を示している。
【0061】
タイムチャート31、32においても、給電装置1は給電処理と計測処理を交互に実行している。ただし、タイムチャート31、32を参照すると給電処理が実行される各期間において、送信される合成波ビームが所定の順序となっていることがわかる。タイムチャート31では、一番目の期間で合成波ビーム#1が送信され、二番目の期間で合成波ビーム#2が送信され、三番目の期間で合成波ビーム#3が送信され、四番目の期間で合成波ビーム#4が送信されている。五番目の期間では再び合成波ビーム#1が送信される。すなわち、給電装置1の制御回路12は給電処理の実行回ごとに、所定の順序(第1順序)に基づいて送信されるビームを異なる指向性を有するものに変更することができる。
【0062】
タイムチャート32では、一番目の期間で合成波ビーム#3が送信され、二番目の期間で合成波ビーム#4が送信されている。そして、三番目の期間で再び合成波ビーム#3が送信され、四番目の期間で再び合成波ビーム#4が送信されている。タイムチャート32では、合成波ビーム#1、#2が送信されないため、
図10~
図13に示した位置に人体10が立っている場合でも、人体10に照射される電磁波を減らすことができる。すなわち、給電装置1の制御回路12は計測処理で第1順序に含まれるいずれかのビームの方向に物体を検出した場合に、第1順序に代わり、第1順序より計測処理で検出された物体の角度に指向性を有するビームを削除した、第2順序を使うことができる。
【0063】
なお、給電装置1の制御回路12は第1順序に含まれるビームの方向に物体が検出されなくなったら、再び第1順序に基づいて、給電処理の実行回ごとに、送信されるビームを変更してもよい。
【0064】
給電装置1の制御回路12は、物体が送信されるビームの方向にあると推定した場合に、送信されるビームを、物体の検出されていない方向における指向性が元のビームより高いビームに変更することができる。また、給電装置1の制御回路12は、物体が送信されるビームの方向にあると推定した場合に、送信されるビームを、物体の検出されていない方向における指向性が元のビームより高いビームに変更してもよい。
【0065】
図15および
図16は第2の実施形態に係る給電装置が実行する処理の例を示したフローチャートである。以下では、
図15および
図16を参照しながら、処理を説明する。
【0066】
まず、給電装置1は変数iに1を代入する(ステップS201)。変数iには、受電装置の番号が格納される。そして、変数iの値が受電装置の台数Nより小さいか否かが判定される(ステップS202)。
【0067】
変数iの値が受電装置の台数Nより小さい場合(ステップS202のYES)、給電装置1は受電装置#iから送信された第2無線信号を受信し、伝搬路情報を取得する(ステップS203)。ステップS203で給電装置1は、受電装置#iに向けて第2無線信号の送信を要求する制御信号を送信してもよい。伝搬路情報は、受電装置#iの識別子、時刻とともに記憶部13に保存される(ステップS204)。識別子の例としては、MACアドレス、シリアル番号、製造番号などがあるが、識別子の形式については特に問わない。そして、給電装置1は変数iをインクリメントする(ステップS205)。これにより、変数iの値は1大きくなる。ステップS205の処理が実行されたら、再びステップS202の判定が行われ、判定の結果によって処理が分岐する。
【0068】
変数iの値が受電装置の台数Nより大きい場合(ステップS202のNO)、給電装置1の記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されているか否かを確認する(ステップS206)。記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されていない場合(ステップS206のNO)、再びステップS201以降の処理が実行される。
【0069】
記憶部13に複数の時刻に係る伝搬路情報が保存されている場合(ステップS206のYES)、変数iの値を1にリセットする(ステップS207)。そして、変数iの値が受電装置の台数Nより小さいか否かが判定される(ステップS208)。
【0070】
変数iの値が受電装置の台数Nより大きい場合(ステップS208のYES)、給電装置1は記憶部13を参照し、受電装置#iの直近の時刻に係る伝搬路情報と以前の時刻に係る伝搬路情報とを比較する(ステップS209)。以前の時刻に係る伝搬路情報は、特定の時刻に係る伝搬路情報であってもよいし、直近の時刻以外の複数の時刻に係る伝搬路情報であってもよい。また、複数の時刻に係る伝搬路情報の平均値であってもよい。ステップS209で実行される処理の詳細は
図4の説明で述べた通りである。
【0071】
そして、給電装置1はステップS209における比較の結果、受電装置#iとの間の伝搬路に物体があるか否かを判定する(ステップS210)。給電装置1は受電装置#iとの間の伝搬路に物体があると判定した場合(ステップS210のYES)、記憶部13に保存された伝搬路情報に基づき、物体の存在する角度を推定する(ステップS211)。物体の存在する角度は、伝搬路に物体があると判定されたときに、第2無線信号の到来方向の推定を行い求められた角度であってもよい。また、給電装置1は伝搬路に物体がないときに、第2無線信号の到来方向の推定によって求めた、受電装置#iの給電装置1に対する角度を物体の存在する角度として使ってもよい。
【0072】
また、給電装置1はその他の方法で物体の存在する角度を推定してもよい。なお、伝搬路に物体があると判定された場合、第2無線信号の受信時におけるアレーアンテナ16の指向性を高め、より高精度で到来方向の推定が行えるようにしてもよい。また、第2無線信号をより長い期間受信し、到来方向の推定精度を高めてもよい。
【0073】
そして、給電装置1は、ステップS211で推定した物体の存在する角度に基づき、ステップS214で受電装置#iの給電に使われる合成波ビームを変更する(ステップS212)。給電装置1の制御回路12は記憶部13を参照し、既存の合成波ビームの中から物体の存在する角度における利得が低い合成波ビームを選択してもよい。物体の存在する角度における利得が低い合成波ビームが複数ある場合には、最優先で無線給電をすべき受電装置の角度における指向性が高い方の合成波ビームを選択することができる。
【0074】
なお、ステップS212では各アンテナ素子に入力される無線信号の位相と振幅を調整し、合成波ビームの指向性を変更してもよいし、送信電力の変更、第1無線信号のデューティ比の変更、第1無線信号のON/OFFタイミングの変更、周波数帯域の変更などその他の処理を組み合わせて実行してもよい。
【0075】
給電装置1は受電装置#iとの間の伝搬路に物体がないと判定した場合(ステップS210のNO)またはステップS212の処理が実行された場合、給電装置1は変数iをインクリメントする(ステップS213)。ステップS213の処理が実行されたら、再びステップS208の判定が行われ、判定の結果によって処理が分岐する。
【0076】
変数iの値が受電装置の台数Nより小さい場合(ステップS208のNO)、給電装置1は各受電装置に向けて給電用の第1無線信号を送信する(ステップS214)。ステップS214では、給電処理が実行される各期間において、所定の順序に基づいて送信する合成波ビームを選択することができる(例えば、
図14のタイムチャート31、32)。次に給電装置1は給電処理を終了するか否かを判定する(ステップS215)。給電処理を終了する場合、給電装置1は
図15、
図16の処理を終了する。給電処理を継続する場合、給電装置1はステップS201以降の処理を再び実行する。
【0077】
(第3の実施形態)
第2の実施形態に係る給電装置は、各受電装置の位置する角度に向けて指向性の高い合成波ビームを送信し、効率的な無線給電を実現していた。複数の受電装置が近い角度に位置しているのであれば、給電装置からみて近い角度にある受電装置のグループごとに無線給電を行ってもよい。第3の実施形態では第1、第2の実施形態とは異なる処理の例について述べる。なお、第3の実施形態に係る給電装置および受電装置(無線給電システム)の構成は第1の実施形態と同様であるものとする。したがって、以降では第1、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0078】
図3を参照すると、受電装置2A(受電装置#1)と受電装置2B(受電装置#2)は破線41に対して時計周りの方向(角度θが正値)にある。これに対して、受電装置2C(受電装置#3)と、受電装置2D(受電装置#4)は破線41に対して反時計周りの方向(角度θが負値)にある。そこで、ここでは、受電装置2A(受電装置#1)と受電装置2B(受電装置#2)を給電処理における第1グループとし、受電装置2C(受電装置#3)と受電装置2D(受電装置#4)を給電処理における第2グループに設定するものとする。第1グループ、第2グループなど、受電装置のグループに関する情報を給電装置1の記憶部13に保存してもよい。
【0079】
図17は、上述の第1グループの受電装置の方向への指向性を高めた、第1無線信号の合成波ビーム#5の例を示した平面図である。給電装置1は、
図3のθ
1とθ
2の間の角度における指向性が高くなるよう、合成波ビーム#5を生成している。給電装置1は合成波ビーム#5を送信することにより、受電装置2A(受電装置#1)と受電装置2B(受電装置#2)に対して効率的に無線給電を行うことができる。
【0080】
図18は、上述の第2グループの受電装置の方向への指向性を高めた、第1無線信号の合成波ビーム#6の例を示した平面図である。給電装置1は、
図3の-θ
3と-θ
4の間の角度における指向性が高くなるよう、合成波ビーム#6を生成している。給電装置1は合成波ビーム#6を送信することにより、受電装置2C(受電装置#3)と受電装置2D(受電装置#4)に対して効率的に無線給電を行うことができる。
【0081】
図17を参照すると、給電装置1が合成波ビーム#5を送信すると、人体10が合成波ビーム#5の電磁波に曝露されてしまう。一方、
図18では、人体10が合成波ビーム#6の電磁波に曝露することが避けられている。
【0082】
給電装置1の記憶部13に、合成波ビーム#5、#6を送信するときの送信設定(各アンテナ素子に入力される無線信号の位相と振幅)、各合成波ビームの指向性が高くなる角度の情報、各合成波ビームの利得が低下する角度の情報を保存してもよい。第2の実施形態と同様、制御回路12は記憶部13に保存された情報と人体(物体)の検出状況に基づいて送信する合成波ビームを選択することができる。また、無線給電の優先度が高い受電装置がある角度に関する情報に基づいて合成波ビームを選択してもよい。
【0083】
図19には、給電装置1が受電装置との間の伝搬路において物体(例えば、人体)を検出していない場合におけるタイムチャート33と、給電装置1が受電装置との間の伝搬路において物体(例えば、人体)が検出している場合のタイムチャート34とが示されている。タイムチャート33、34の横軸はいずれも時間を示している。
【0084】
タイムチャート33、34においても、給電装置1は給電処理と計測処理を交互に実行している。タイムチャート33、34では給電処理が実行される各期間において、送信される合成波ビームが所定の順序で決められている。
【0085】
タイムチャート33では、一番目の期間で合成波ビーム#5が送信され、二番目の期間で合成波ビーム#6が送信されている。そして、三番目の期間で再び合成波ビーム#5が送信され、四番目の期間で再び合成波ビーム#6が送信されている。タイムチャート34でも、一番目の期間で合成波ビーム#5が送信され、二番目の期間で合成波ビーム#6が送信されている。しかし、期間34aに実行された計測処理において、受電装置#1または受電装置#2との間の伝搬路において人体10が検出している。そのため、期間34aの直後の給電期間では、人体10に照射される電磁波を減らすため、合成波ビーム#6が送信されている。期間34bに実行された計測処理においても、受電装置#1または受電装置#2との間の伝搬路において人体10が検出されている。したがって、期間34bの直後の給電期間でも、人体10に照射される電磁波を減らすため、合成波ビーム#6が送信されている。
【0086】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、給電装置と各受電装置との間の伝搬路に侵入した物体が移動している場合に実行される処理の例について説明する。なお、第4実施形態に係る給電装置および受電装置の構成は第1の実施形態と同様であるものとする。以降では上述の各実施形態との相違点を中心に第4の実施形態を説明する。
【0087】
図20~
図24は歩行者の移動に伴う合成波ビームの変更処理の例を示している。
図20~
図24では、人体10は給電装置1と各受電装置の間を左から右に向かって移動する歩行者であるものとする。以下では、
図20~
図24の平面図を参照しながら、実行される処理を説明する。なお、第4の実施形態においても、給電装置1の記憶部13に、各合成波ビームを送信するときにおいて、各アンテナ素子に入力される無線信号の位相と振幅に関する情報(送信設定)、各合成波ビームの利得が低下する角度の情報が保存されているものとする。給電装置1の制御回路12は記憶部13に保存された上述の情報を参照し、送信する合成波ビームの選択を行う。
【0088】
最初に、給電装置1は計測処理で受電装置2A(受電装置#1)から送信された第2無線信号を受信し、
図3における角度θ
1に人体10があることを検出する(
図20)。そこで、給電処理において電磁波が角度θ
1とは異なる方向に指向性を有する合成波ビーム#8を送信する。
【0089】
次に、給電装置1は計測処理で受電装置2B(受電装置#2)から送信された第2無線信号を受信し、
図3における角度θ
2に人体10があることを検出する(
図21)。そこで、給電装置1は第1無線信号の送信設定の変更を行い、給電処理において電磁波が角度θ
2とは異なる方向に指向性を有する合成波ビーム#6を送信する。
【0090】
給電装置1は計測処理で人体10が
図3における角度-θ
3にあることを検出してから、
図21の合成波ビーム#6に代わり、
図23の合成波ビーム#5を送信することができる。ただし、人体10が角度θ
3にあることを検出してから、第1無線信号に係る合成波ビームの指向性を変更すると、
図22に示されているように人体10が合成波ビーム#6が照射されている領域に入ってしまう期間が生じてしまう。この期間の長さによっては、人体10への電磁波の曝露量が増えてしまうおそれがある。
【0091】
そこで、給電装置1は
図20、
図21における検出結果より、人体10が平面図の左から右に向かって移動していると推定し、人体10が角度-θ
3にあることを検出する前に、
図21の合成波ビーム#6に代わり、
図23の合成波ビーム#5を送信する。これにより、人体10への電磁波の曝露量を軽減することができる。すなわち、第5の実施形態に係る制御回路12は、以前の時刻における物体の検出結果に基づいて、物体の移動する方向を推定し、推定結果に応じて送信される第1無線信号の指向性(合成波ビーム)を変更することができる。
【0092】
なお、ここでは物体(人体10)が隣接する角度θ
1、θ
2で検出されたことをもって、物体が一定の方向に移動していると推定した。ただし、物体(人体10)が
図3の角度θ
1、角度θ
2、角度-θ
3で検出されたことをもって、物体(人体10)が
図3の平面図の左から右に向かって移動していると推定してもよい。すなわち、制御回路12は、第2無線信号が到来する複数の角度を推定し、同じ回転方向に隣接する角度に物体が検出された場合には、物体の移動方向を推定し、次回の物体の検出を待たずに、送信されるビームを、移動方向における利得が元のビームより低いビームに変更してもよい。なお、物体が特定の方向に移動していると推定される基準となる、同じ回転方向に隣接する角度で継続して物体が検出される回数については特に問わない。
【0093】
上述の物体(人体10)の移動方向の推定処理を行うことにより、人体10が
図3の角度-θ
4にあるときに、給電装置1は合成波ビーム#9を送信することができる(
図24)。これにより、人体10の電磁波への曝露を抑えつつ、受電装置2A~2C(受電装置#1~#3)へ高効率の無線給電を行うことができる。
【0094】
上述の各実施形態に係る無線給電システムを用いることにより、無線給電において、安全性の確保と効率的な機器の給電を両立することが可能となる。
【0095】
(第5の実施形態)
上述の各実施形態において、給電装置は受電装置から送信された第2無線信号を受信することによって、給電装置と各受電装置との間の伝搬路に存在する人体などの物体を検出していた。ただし、給電装置はその他の手段によって給電装置と各受電装置との間の伝搬路に存在する人体などの物体を検出してもよい。
【0096】
図25は、第5の実施形態に係る給電装置の構成例を示している。
図25の給電装置1は、赤外線センサ、超音波センサ、ToFセンサ、イメージセンサなどのセンサを含むセンサ回路17を備えている。給電装置1はセンサ回路17から出力されるセンサの信号に基づいて、周囲にある物体(例えば、人体10)を検出することができる。給電装置がセンサを用いて検出した物体が、いずれかの受電装置との間の伝搬路や、アレーアンテナから送信される第1無線信号の電磁界強度がしきい値以上となる範囲に位置している場合、給電装置は上述の各実施形態で述べたように、送信する合成波ビームの形状を変更する。
【0097】
なお、給電装置はセンサによる物体検出と、第2無線信号の受信による伝搬路上の物体検出を組み合わせて実行してもよい。また、給電装置はセンサによって物体の有無の検出を行い、無線信号によって物体の位置推定や伝搬路推定を行ってもよい。なお、第5の実施形態に係る給電装置の構成は、センサを備えている点を除けば、第1の実施形態に係る給電装置と同様である。
【0098】
第5の実施形態に係る無線給電システムを用いることにより、人体などの物体の位置推定をより高い精度で行うことができる。このため、無線給電における安全性を一層高めることが可能となる。
【0099】
(第6の実施形態)
上述の各実施形態に係る無線給電システムにおいて、給電装置が物体の検出に使う第2無線信号は複数の受電装置によって送信されていた。ただし、給電装置は受電装置以外の無線通信装置から送信された第2無線信号を受信することによって、物体の検出を行ってもよい。無線通信装置を受電装置の存在しない角度に配置することにより、給電装置による物体検出の精度をさらに高めることができる。第6の実施形態に係る給電装置、受電装置の構成は第1の実施形態と同様であるものとする。
【0100】
図26の平面図は、第6の実施形態に係る無線給電システムの例を示している。
図26には、給電装置1と、受電装置2A~2D(受電装置#1~#4)と、無線通信装置3とを備えている。無線通信装置3は、例えば
図1の受電装置2Aの構成要素のうち、受信回路21aと、アンテナ21bと、送信回路22aと、アンテナ22bと、制御回路23とを備えているものとする。無線通信装置3は、給電装置1から送信された制御信号を受信し、当該制御信号に応じて第2無線信号を送信する。
【0101】
第6の実施形態に係る無線給電システムでは、給電装置1からみて受電装置が存在しない角度における物体の検出が可能となる。これにより、受電装置の台数が多くない場合においても、人体などの物体の動きをより高い精度で推定することが可能となる。
【0102】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 給電装置
2A、2B、2C、2D 受電装置
3 無線通信装置
10 人体
11 電源回路
12 制御回路
13 記憶部
14 給電回路
14a、22a 送信回路
14b、15b、アンテナ素子
15 計測回路
16 アレーアンテナ
17 センサ回路
15a、21a 受信回路
21b、22b アンテナ
23 制御回路
24 整流回路
25 二次電池
30、31、32、33、34、35 タイムチャート
34a、34b 期間
40 線
41 破線