(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172432
(43)【公開日】2022-11-16
(54)【発明の名称】医療用簡易コルセット
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
A61F5/02 D
A61F5/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078229
(22)【出願日】2021-05-04
(71)【出願人】
【識別番号】514163169
【氏名又は名称】株式会社P.O.イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】見木 太郎
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB02
4C098BC03
4C098BC12
4C098BC13
4C098DD23
(57)【要約】
【課題】採型をせずに患者に簡単に装着できる医療表簡易コルセットを提供すること。
【解決手段】医療表簡易コルセット60は、患者81の体幹部を支持するものである。医療表簡易コルセット60は、患者81の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェル61と、この前シェル61とは別体で患者81の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェル71と、この後シェル71に前シェル61を留めるベルト66と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体幹部を支持する医療用簡易コルセットであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、を備えていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項2】
請求項1記載の医療用簡易コルセットであって、
前記後シェルは、前記患者の腰から背中にかけて支持する後面部と、この後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに前記患者の側部を支持する側面湾曲部と、を備え、
前記前シェルは、前記患者の腹から胸にかけて支持する前面部と、この前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに前記後シェルの前記側面湾曲部を覆う側面覆い部と、を備えていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の医療用簡易コルセットであって、
前記後シェルは、前記後面部の上部に連続して前記患者の背中の上部を支持する後上支持部を備え、
前記前シェルは、前記前面部の上部に連続して前記患者の胸の上部を支持する前上支持部を備えていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の医療用簡易コルセットであって、
前記後シェル及び前記前シェルの材質は合成樹脂であり、前記後シェルは前記前シェルよりも硬く構成されていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の医療用簡易コルセットあって、
前記後面部の内側には、前記医療用簡易コルセットを前記患者に装着した際に、前記患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項記載の医療用簡易コルセットあって、
前記後面部には、前記医療用簡易コルセットを前記患者に装着した際に、前記患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように内側に膨らむ背骨横内凸部を形成されていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項記載の医療用簡易コルセットあって、
前記前シェルの前記前面部及び前記後シェルの前記後面部には、前記ベルトを保持するベルト保持部が設けられ、前記ベルトは面ファスナーにより着脱可能に設けられていることを特徴とする医療用簡易コルセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体幹部を支持する医療用簡易コルセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者などに、骨粗しょう症を発症するケースが増加している。骨粗しょう症は自覚症状がなく、気がつかないうちに骨折していることがあり、高齢になるほど椎体骨折(脊柱の骨折)を発症する傾向がある。例えば、脊柱の一部が押しつぶされて骨折すると、寝たきりになることで認知症を発症するリスクが高くなる。このため、寝たきりになることを予防しつつ治療やリハビリテーションが行われる。
【0003】
患者が腰部疾患や脊椎疾患を患った際の治療やリハビリテーションには、患部に負担をかけないようにするために装具や医療用コルセットが使用されることがある。特に、高齢者に多い脊柱圧迫骨折の治療にはジュエット型装具が用いられてきた。このような、ジュエット型装具として、特許文献1の装具(医療用コルセット)が知られている。
【0004】
特許文献1の医療用コルセットは、脊柱に支障を有する患者の上体の上部を支持する上部支持体と、患者の上体の下部を支持する下部支持体と、上部支持体と下部支持体との間を連結する連結体と、を備えている。また、医療用コルセットには、連結体は、連なるように設けられた4本の連結片と、4本の連結片の端部間を枢支すると共に枢支される連結片の枢支角度が変更自在とされた3つの枢支部と、を備えている。
【0005】
ところで、医療用の装具は患者の体形や治療の進行具合に合わせて作製されるため、整形外科などの医師の指示に従って装具事業者が患者に対して採型する必要がある。装具事業者が採型して1週間後に患者に引き渡すことが通例であったところ、近年では、早期リハビリテーション(以下、早期リハビリという)、早期退院、早期社会復帰という流れが尊重されるようになってきており、特に早期リハビリを行うために、1週間以内で装具の引渡しを医療機関から求められるようになってきている。通常、装具の作製には1週間かかるところ、この急ぎの要求に応えるために夜遅くまで残業などで対処していた。
【0006】
この点、特許文献1の医療用コルセットでは、患者の体形に合わせて各部品のサイズ調整や取り付け位置の調整が必要であり、作製から引渡しまでの時間がかかってしまう。このため、採型して作製した医療用コルセットの引渡しまでを繋ぐ簡易的な装具を採型時に渡して装着できれば治療やリハビリテーションを前倒しで行うことができ好ましい。
【0007】
また、特許文献1の医療用コルセットは、患者に装着するためのベルトが後側にある点や装着前の状態で各部品が繋がっている点から、医療従事者がベッドに寝ている状態の患者に医療用コルセットを装着する装着作業に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、採型をせずに患者に簡単に装着できる医療表簡易コルセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によれば、患者の体幹部を支持する医療用簡易コルセットであって、
前記患者の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェルと、この前シェルとは別体で前記患者の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェルと、この後シェルに前シェルを留めるベルトと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、医療用簡易コルセットは、殻状の前シェルと殻状の後シェルとが別体であるので、患者の体幹部(胴体)の後側に後シェルを当てた状態で体幹部の前側に前シェルを当てるだけで、前シェルの側部と後シェルの側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にぴったり合う。このため、医療表簡易コルセットを採型せずに患者に簡単に装着することができる。
【0012】
好ましくは、前記後シェルは、前記患者の腰から背中にかけて支持する後面部と、この後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに前記患者の側部を支持する側面湾曲部と、を備え、
前記前シェルは、前記患者の腹から胸にかけて支持する前面部と、この前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに前記後シェルの前記側面湾曲部を覆う側面覆い部と、を備えている。
【0013】
かかる構成によれば、後シェルは後面部の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者の側部を支持する側面湾曲部を備え、前シェルは前面部の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェルの側面湾曲部を覆う側面覆い部を備えている。このため、患者の側部が側面湾曲部及び側面覆い部で支持され、患者の体幹部の周囲全体を支持することができる。さらに、後シェルの側面湾曲部に、これを覆う側面覆い部が重なっているだけであるので、前シェルの側部と後シェルの側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にぴったり合う。このため、医療表簡易コルセットを採型せずに患者に簡単に装着することができる。
【0014】
好ましくは、前記後シェルは、前記後面部の上部に連続して前記患者の背中の上部を支持する後上支持部を備え、
前記前シェルは、前記前面部の上部に連続して前記患者の胸の上部を支持する前上支持部を備えている。
【0015】
かかる構成によれば、後シェルの後上支持部で患者の背中の上部を支持し、前シェルの前上支持部で患者の胸の上部を支持するので、採型して作製したコルセットと同様に体幹部の上部を支持することができる。
【0016】
好ましくは、前記後シェル及び前記前シェルの材質は合成樹脂であり、前記後シェルは前記前シェルよりも硬く構成されている。
【0017】
かかる構成によれば、後シェルは前シェルよりも硬く構成されているので、患者の背中をしっかりと支持するともに、胸側を少し柔らかくして患者のあばらが当たっても痛くならないようにすることができる。
【0018】
好ましくは、前記後面部の内側には、前記医療用簡易コルセットを前記患者に装着した際に、前記患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられている。
【0019】
かかる構成によれば、後面部の内側には、患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材が設けられているので、患者の背骨が硬質の後シェルに直接当たることなく、快適に医療用簡易コルセットを装着し続けることができる。
【0020】
好ましくは、前記後面部には、前記医療用簡易コルセットを前記患者に装着した際に、前記患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように内側に膨らむ背骨横内凸部を形成されている。
【0021】
かかる構成によれば、後面部には、患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように内側に膨らむ背骨横内凸部を形成されているので、背骨横内凸部がリブの役割を果たし、後シェルの剛性を向上させ、患者の背中をよりしっかりと支持することができる。
【0022】
好ましくは、前記前シェルの前記前面部及び前記後シェルの前記後面部には、前記ベルトを保持するベルト保持部が設けられ、前記ベルトは面ファスナーにより着脱可能に設けられている。
【0023】
かかる構成によれば、前シェルの前面部及び後シェルの後面部にはベルトを保持するベルト保持部が設けられ、ベルトは面ファスナーにより着脱可能に設けられているので、ベルトを外した状態で患者の体幹部に後シェル及び前シェルを当てることができ、その後にベルトを固定することで、医療用コルセットを患者に簡単に装着することができる。
【発明の効果】
【0024】
採型をせずに患者に簡単に装着できる医療表簡易コルセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る医療用簡易コルセットの前側からの斜視図である。
【
図2】本発明に係る医療用簡易コルセットの後側からの斜視図である。
【
図3】本発明に係る医療用簡易コルセットの横側からの斜視図である。
【
図4】本発明に係る医療用簡易コルセットの作用図である。
【
図5】本発明に係る後シェルを装着するまでの説明図である。
【
図6】本発明に係る前シェルを装着してベルトで固定するまでの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、医療用簡易コルセットの図は構成の一例を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0027】
図1~
図4に示されるように、医療用簡易コルセット60(60b)は、患者81の体幹部の前側を支持する所定サイズの殻状の前シェル61と、この前シェル61とは別体で患者81の体幹部の後側を支持する所定サイズの殻状の後シェル71と、を備えている。前シェル61、後シェル71ともに合成樹脂である。なお、後シェル71は前シェル61よりも硬いことが好ましい。これにより、患者81の背中をしっかりと支持するともに、胸側を少し柔らかくして患者81のあばらが当たっても痛くならないようにすることができる。
【0028】
後シェル71は、患者81の腰から背中にかけて支持する後面部72と、この後面部72の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者81の側部を支持する側面湾曲部73と、後面部72の上部に連続して背中の上部を支持する後上支持部74と、を備えている。
【0029】
後面部72及び後上支持部74の内側には、患者81に装着した際に、患者81の背骨の両側に沿って上下に延びるように柔軟性を有する緩衝部材75が設けられている。これにより、患者81は背骨が硬質の後シェル71に直接当たることなく、快適に医療用簡易コルセット60を装着し続けることができる。
【0030】
また、後面部72には、患者81に装着した際に、患者81の背骨の両側に沿って上下に延びるように内側に膨らむ背骨横内凸部76を形成してもよい。これにより、後シェル71に、緩衝部材75がなくても緩衝部材75と同様の効果を持たせることができる。なお、後シェル71は、背骨横内凸部76を形成した上で、緩衝部材75を設けてもよい。背骨横内凸部76がリブの役割を果たし、後シェルの剛性を向上させ、患者の背中をよりしっかりと支持することができる。
【0031】
前シェル61は、患者81の腹から胸にかけて支持する前面部62と、この前面部62の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェル71の側面湾曲部73を覆う側面覆い部63と、前面部62の上部に連続して胸の上部を支持する前上支持部64と、を備えている。
【0032】
前面部62にはベルト66を保持するベルト保持部65が設けられ、後面部72にはベルト66を保持するベルト保持部77が設けられ、ベルト66は面ファスナーにより着脱可能に設けられている。なお、
図1~
図4に示す医療用簡易コルセット60(60b)は、ベルト66を上下2段に設けたショートシェルタイプである。
図5、
図6で後述する医療用簡易コルセット60はベルト66を上下3段に設け上下方向に少し長く形成されたロングシェルタイプである。ショートシェルタイプとロングシェルタイプは、上下方向の長さとベルト66の段数が異なる以外は、同様の構成である。
【0033】
次に医療用簡易コルセット60の作用について説明する。
【0034】
図4(A)に示されるように、医療用簡易コルセット60の前シェル61によって、患者81の体幹部の前側が支持されている。さらに前上支持部64によって患者81の胸が支持されている。
【0035】
図4(B)に示されるように、患者81の体幹部を前シェル61と後シェル71とで挟み込む状態にし、ベルト66で後シェル71に対して前シェル61を固定する。これにより、患者81の前後左右を支持することができる。さらに、前シェル61と後シェル71とで患者81を挟み込む構造としたことで、患者81が細くても太くても体型によらず、医療用簡易コルセット60しっかりと患者81の体幹部を支持することができる。さらには、患者81をベッドに寝かせたまま後シェル71を装着し、患者81をベッド上で寝返りをうつように回転させ、前シェル61を装着することで、患者81がベッドに寝たままであっても医療用簡易コルセット60を装着することができる。
【0036】
図4(C)に示されるように、医療用簡易コルセット60の後シェル71によって、患者81の体幹部の後側が支持されている。さらに後上支持部74によって患者81の背中の上部が支持されている。柔軟性を有する緩衝部材75によって、患者81の背骨が後シェル71にあたることを防止するとともに、患者81の体の動きや多少の凹凸を吸収し、医療用簡易コルセット60の装着を快適にすることができる。
【0037】
次に医療従事者91がベッド80に寝た状態の患者81に医療用簡易コルセット60を装着するまでの作業を説明する。
【0038】
図5(A)に示されるように、医療従事者91は、ベッド80に寝た状態の患者81の体が横を向くように動かす。この状態で後シェル71を患者81の腰及び背中に当てる。このとき、医療従事者91は、後シェル71の下側の側面湾曲部73を患者81の体の脇(体の下)に滑らせるように挿入する。
【0039】
図5(B)に示されるように、医療従事者91は、後シェル71の上側の側面湾曲部73を患者81の体の脇(体の上)に載せ、患者81の背中及び腰に対する側面湾曲部73の位置を調整する。このとき、側面湾曲部73は患者81の体幹部に沿うように曲がっているため、患者81からずり落ちることなく容易に位置合わせすることができる。
【0040】
図5(C)に示されるように、医療従事者91は、後シェル71の患者81に対する位置がずれないようにして患者81を仰向けにさせる。このとき、ベルト66が患者81の下敷きにならず外方に出るようにする。
【0041】
図6(A)に示されるように、医療従事者91は、前シェル61を患者81の腹部及び胸の上に当てる。このとき、前シェル61の側面覆い部63が、後シェル71の側面湾曲部73の外側を覆うように配置する。
【0042】
図6(B)に示されるように、医療従事者91は、ベルト66を前シェル61のベルト保持部65のベルト通し部分(矩形状のリング部分)に通して折り返し、面ファスナーで留める。前シェル61と後シェル71とが別体であり、後シェル71の湾曲した側面湾曲部73に、これを覆う湾曲した側面覆い部63が重なっているだけであるので、前シェル61の側部と後シェル71の側部が互いに移動を制限せずに患者81の体幹部の周長が調整されて体幹部にぴったり合う。このように、容易に医療用簡易コルセット60を患者81に装着することができる。
【0043】
次に以上に述べた医療用簡易コルセット60の効果を説明する。
【0044】
本発明の実施例では、医療用簡易コルセット60は、殻状の前シェル61と殻状の後シェル71とが別体であるので、患者81の体幹部(胴体)の後側に後シェル71を当てた状態で体幹部の前側に前シェル61を当てるだけで、前シェル61の側部と後シェル71の側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にぴったり合う。このため、医療表簡易コルセット10を採型せずに患者に簡単に装着することができる。
【0045】
さらに、後シェル71は後面部72の左右から前方に湾曲して延びるとともに患者81の側部を支持する側面湾曲部73を備え、前シェル61は前面部62の左右から後方に湾曲して延びるとともに後シェル71の側面湾曲部73を覆う側面覆い部63を備えている。このため、患者81の側部が側面湾曲部73及び側面覆い部63で支持され、患者81の体幹部の周囲全体を支持することができる。さらに、後シェル71の側面湾曲部73に、これを覆う側面覆い部63が重なっているだけであるので、前シェル61の側部と後シェル71の側部が互いに移動を制限せずに体幹部の周長が調整されて体幹部にぴったり合う。このため、医療表簡易コルセット10を採型せずに患者81に簡単に装着することができる。
【0046】
さらに、後シェル71の後上支持部74で患者81の背中の上部を支持し、前シェル61の前上支持部64で患者の胸の上部を支持するので、採型して作製したコルセットと同様に体幹部の上部を支持することができる。
【0047】
さらに、後シェル71は前シェル61よりも硬く構成されているので、患者81の背中をしっかりと支持するともに、胸側を少し柔らかくして患者81のあばらが当たっても痛くならないようにすることができる。
【0048】
さらに、後面部72の内側には、患者81の背骨の両側に沿って上下に延びるように形成された柔軟性を有する緩衝部材81が設けられているので、患者81の背骨が硬質の後シェル71に直接当たることなく、快適に医療用簡易コルセット60を装着し続けることができる。
【0049】
さらに、後面部72には、患者の背骨の両側に沿って上下に延びるように内側に膨らむ背骨横内凸部76を形成されているので、背骨横内凸部76がリブの役割を果たし、後シェル71の剛性を向上させ、患者81の背中をよりしっかりと支持することができる。
【0050】
さらに、前シェル61の前面部62及び後シェル71の後面部72にはベルト66を保持するベルト保持部65、77が設けられ、ベルト66は面ファスナーにより着脱可能に設けられているので、ベルト66を外した状態で患者81の体幹部に後シェル71及び前シェル61を当てることができ、その後にベルト66を固定することで、医療用コルセット60を患者に簡単に装着することができる。
【0051】
また、本発明の実施例による医療用簡易コルセット60により、従来、1週間は患者81を寝かせていたが、昨今では手術の翌日もしくは翌々日には医師により歩行リハビリの許可がでることも多くなっており、採型後1週間を待たずしてリハビリを開始できる状態になっている。つまり、本発明の貸出用として使用可能な医療用簡易コルセット60があることで3日、もしくは4日早く患者81の身体を起こすことができる。さらに、年末など装具事業者や医療機関が休みに入る直前に怪我や手術を行った患者81の長期貸出用としても使用できる。
【0052】
また、患者81にとっては、寝たきりではなくベッド上で身体を起して食事したり、1週間のベッド上生活から早めに解放されたりできる。医療用簡易コルセット60を付けて歩いてトイレに行くこともできる。リハビリを早く始めることで、寝たままにならずに筋力も落ちずに済む。リハビリが早まることにより退院も早くできる。例えば4日退院が早まることで、その分の入院費用を抑えることができる。
【0053】
また、看護師にとっては、ベッド上での患者81の排泄物の処理が少なくなり、トイレに連れていくだけで済むようになり負担が軽減される。食事も患者81の身体を起こすことにより、よりスムーズに食事を取らせることができる。また、医師にとっては、リハビリを早めることで、限りある医療資源(入院ベッド)を効率的に運営することができ、結果より多くの患者81の治療にあたることができる。
【0054】
尚、実施例では、後シェル71に緩衝部材75と背骨横内凸部76を設けたが、これに限定されず、緩衝部材75と背骨横内凸部76のいずれか一方又は両方を設けない後シェル71としてもよい。また、実施例では、ベルト66を面ファスナーで留めたが、これに限定されず、ベルト66を金具などの留め具で留めてもよい。
【0055】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
60…医療用簡易コルセット(ポストオペシェル)、61…前シェル、62…前面部、63…側面覆い部、64…前上支持部、65…ベルト保持部、66…ベルト、71…後シェル、72…後面部、73…側面湾曲部、74…後上支持部、75…緩衝部材、76…背骨横内凸部、77…ベルト保持部、80…ベッド、81…患者、91…医療従事者。