(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172460
(43)【公開日】2022-11-16
(54)【発明の名称】組織開創器デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076050
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】63/183,232
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521301079
【氏名又は名称】ネクストレミティ ソルーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEXTREMITY SOLUTIONS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ホルトン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA01
4C160AA12
4C160AA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外科的処置の際に切開部を開口状態に維持するために使用される留置式の環状の組織開創器デバイスを提供する。
【解決手段】組織開創器デバイス100は、第1の開創器110、第2の開創器140、及び第1の開創器と第2の開創器との間を伸びるバンド170を備えている。第1及び第2の開創器は切開部の創縁部を把持するように構成される一方、バンドは解剖学的空間を形成して患者の身体部分に巻き付くように構成されている、一方。第1の開創器及び第2の開創器のうち少なくとも一方は、第1の弓状部分114、第1の接続部分118、及び第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置する第1のカム部分116を備えている。第1のカム部分は、切開部の外側で患者の皮膚と接触するためのカム表面を備えている。第1の開創器と第2の開創器との間を伸びるバンドの長さは調整可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は、第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は手術の際に切開部の外側で皮膚と接触するように構成された第1のカム表面を備えており、第1の弓状部分は切開部の第1の創縁部を把持するように構成されている、第1の開創器と、
第2の開創器であって、切開部の第2の創縁部を把持するように構成されている、第2の開創器と、
バンドであって、前記バンドは患者の身体部分に巻き付くように構成されており、前記バンドは前記第1の開創器の第1の接続部分と前記第2の開創器との間を伸びて解剖学的空間を形成し、
患者の身体部分は手術の際に解剖学的空間内に受承され、
前記第1の開創器の第1の接続部分は貫通孔を備え、該貫通孔は、解剖学的空間の大きさを調整するために前記バンドの通過を可能とする大きさに作られた第1の部分と、前記バンドを保持する大きさに作られた第2の部分とを備えている、バンドと
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項2】
貫通孔は、貫通孔の第1の部分から貫通孔の第2の部分まで伸びるテーパ状のスロットを備えている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項3】
前記バンドは留め具によって前記第2の開創器に保持されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項4】
第1のカム表面は、前記バンドにより作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項5】
第1のカム表面はU字型である、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項6】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項7】
組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は第1のカム表面を備えている、第1の開創器、
第2の開創器、
バンドであって、前記バンドは前記第1の開創器の第1の接続部分と前記第2の開創器との間を伸びている、バンド、並びに、
調整部材であって、前記調整部材は前記バンドの一部を受承するための少なくとも1つの貫通孔を画成している本体を備えており、前記調整部材は、前記第1の開創器と前記第2の開創器との間の距離を変化させるために、前記バンドのループ状部分に沿って前記第1の開創器又は前記第2の開創器のうち少なくとも一方に向かうように、及び離れるように、摺動可能である、調整部材
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項8】
第1のカム表面は、前記バンドに沿った前記調整部材の摺動により作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項9】
第1のカム表面はU字型である、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項10】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項11】
前記調整部材の貫通孔は摩擦内部表面を備えている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項12】
前記調整部材の貫通孔はテーパ状をなしている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項13】
第2のバンドに接続された第3の開創器をさらに具備しており、第2のバンドは前記バンドに接続されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項14】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は軟組織パドルを備え、軟組織パドルは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項15】
留置式の環状の組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は第1のカム表面を備えている、第1の開創器、
第2の開創器、
第1のバンドであって、前記第1のバンドは第1の端部及び第2の端部を備えており、前記第1のバンドの第1の端部は前記第1の開創器に結合されて、前記第1のバンドは前記第1の開創器から伸びている、第1のバンド、
第2のバンドであって、前記第2のバンドは第1の端部及び第2の端部を備えており、前記第2のバンドの第1の端部は前記第2の開創器に結合されて、前記第2のバンドは前記第2の開創器から伸びている、第2のバンド、
調整部材であって、前記調整部材は本体を備えており、本体は第1の側及び第2の側を備えており、本体は貫通孔を画成しており、前記第1のバンドの一部は前記調整部材の本体の第1の側から貫通孔を通過しており、前記第2のバンドの一部は前記調整部材の本体の第1の側から貫通孔を通過しており、前記第1のバンドの第2の端部及び前記第2のバンドの第2の端部は前記調整部材の第2の端部から伸び出ている、調整部材
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項16】
前記第1のバンドの第2の端部は前記第2のバンドの第2の端部に接続してループ部を作っている、請求項15に記載の留置式の環状の組織開創器デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[本発明の背景]
本出願は、2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,232号(代理人整理番号第3768.107P1号)に基づく優先権を主張する。米国仮特許出願第63/183,232号は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して組織開創器デバイスに関し、より詳細には、外科的処置の際に切開部を開口状態に維持するために使用される留置式の環状の組織開創器デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
組織及び解剖学的構造の開創は、あらゆる種類の外科手術において極めて重要である。例えば観察対象の組織又は臓器を外科医に見えるようにするために、開創には組織の適切な牽引及び対牽引が要求される。
【0004】
外科用開創器は、外科医及び手術室の医療従事者が外科的処置の際に切開部又は創傷部を開口状態に保つ助けとなる。外科用開創器は、臓器又は組織を内部に留め、かつ見えるようにするのを助け、その見えている部位の視認性を高めて接触しやすいようにする。
【0005】
現在のところ、一般に使用されているのは2種類の外科用開創器、すなわち手持ち式開創器及び留置式開創器である。手持ち式開創器は、外科的処置の際に助手、ロボット、又は外科医が手で支持しなければならない。この種類の開創器は扱いが難しく、軟組織については保持力及び開創器の可動性が制限される。さらに、手持ち式開創器は大型で重く、X線透視下での画像化の妨げとなる。
【0006】
留置式開創器は、助手、ロボット、又は外科医の助力無しにそれ自体で開いた状態を保つことにより、切開部の開口を保とうとする。典型的には、留置式開創器は、外科医の両手が空くようにするための、組織を単独で支持するスクリュー又は一種のクランプを必要とする。今日使用されているいくつかの留置式開創器の例は、ウェイトラナー(Weitlaner)開創器、小脳開創器、ベックマン(Beckmann)開創器及びウィリアムス(Willams)開創器である。しかしながら、現行の留置式開創器は柔軟性に欠け、一平面内又は二平面内での開創しか行えない。さらに、現行の留置式開創器はX線透視による画像化の妨げとなる。
【0007】
よって、例えば、患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて留置時の長さ及び/又は張力が可変的である、外科的処置に使用される組織開創器が必要とされている。X線透視下での画像化を妨げにくい組織開創器も必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
簡潔に述べると、本発明の1以上の態様に従って構築された開創器デバイスは、外科的処置の際に患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて、患者の組織にかかる留置時の張力を可変的にするという必要性を満たす。本発明の1以上の態様に従って構築された開創器デバイスはさらに、X線透視下での画像化を妨げにくいという必要性を満たす。
【0009】
1つの実施形態では、組織開創器デバイスは、第1の開創器、第2の開創器及びバンドを備えている。第1の開創器は、第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えている。第1のカム部分は、第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置している。第1のカム部分は第1のカム表面を備えている。第1の弓状部分は切開部の第1の創縁部を把持するように構成されている。第2の開創器は、切開部の第2の創縁部を把持するように構成されている。バンドは、患者の身体部分に巻き付くように構成されている。バンドは、第1の開創器の第1の接続部分と第2の開創器との間を、解剖学的空間を形成するように伸びている。患者の身体部分は手術の際に解剖学的空間の内部に受承される。第1の開創器及び第2の開創器のうち少なくとも一方は貫通孔を備えている。貫通孔は、バンドが通過できる大きさに作られた第1の部分と、バンドを保持する大きさに作られた第2の部分とを備えている。
【0010】
一例において、貫通孔は、貫通孔の第1の部分から貫通孔の第2の部分まで伸びるテーパ状のスロットを備えている。
【0011】
別の例では、第1のカム表面は、バンドにより作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている。さらに別の例では、カム表面はU字型である。
【0012】
別の例では、前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、該複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている。
別の例では、組織開創器デバイスは切開部の同じ創縁部を把持する複数の開創器を有していてもよい。
【0013】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点は、本発明の様々な態様についての以降の詳細な説明を添付図面と合わせれば明白となろう。
【0014】
本発明は、本明細書中以下に記載の詳細な説明から、及び添付された本発明の一定の実施形態の図面からより十分に理解されるであろうが、詳細な説明及び図面は、本発明を限定すると解釈されるべきではなく、単に説明、例証及び理解のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの一実施形態を示す斜視図。
【
図2】
図1に示された組織開創器デバイスの側面図。
【
図2A】本発明の1以上の態様に従って構築された別例の組織開創器デバイスの側面図。
【
図3】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの別の実施形態を示す斜視図。
【
図4A】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の一実施形態を示す斜視図。
【
図4B】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の側面図。
【
図5A】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスのためのバンド保持用の貫通孔の代替例を示す斜視図。
【
図6】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の別の実施形態を示す斜視図。
【
図7】本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材の一実施形態を示す側面図。
【
図8A】本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材の代替実施形態を示す斜視図。
【
図8B】
図8Aに例証された調整部材を、同部材から一例のバンドのループ状部分が伸びている状態で示す側面図。
【
図8C】
図8Aに例証された調整部材を、同部材から2本のバンドが伸びている状態で示す側面図。
【
図9】患者の足の開口切開部に使用した状態の、本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの一例を示す斜視図。
【
図10】
図9に示された面9-9に沿って得られた、使用時の組織開創器デバイスを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、添付図面を参照しながら本発明による様々な例示の実施形態という観点で以下に詳細に議論する。以降の詳細な説明において、数多くの具体的詳細が本発明の完全な理解のために示される。しかしながら、本発明がそれらの具体的詳細の一部を伴わずに実行されうることは当業者には明白であろう。他の実例では、周知の構造物は本発明を不必要に不明瞭とするのを回避するため詳細には示されない。
【0017】
したがって、以下に記載される実装は全て、当業者が本開示の実施形態を作製又は使用することを可能にするために提供される例示の実装であり、特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定するようには意図されていない。本明細書中で使用されるように、「例示の」又は「例証の」又は「例」という語、及びこれらの派生語は、「例、実例、又は例証としての役割を果たしている」ことを意味する。本明細書中で「例示の」又は「例証の」又は「例」、及びその派生語として記載された任意の実装は、必ずしも他の実装よりも好適又は有利であるとは限らず、かつ他の実装よりも好適又は有利であると解釈されるべきではない。さらに、本項の説明において、用語「上方」、「下方」、「左」、「後」、「右」、「前」、「垂直」、「水平」、及びこれらの派生語は、
図1の方向に置かれた本発明に関するものとする。
【0018】
更に、先述の技術分野、背景、概要、又は以降の詳細な説明において示されるどのような明示又は黙示の理論によっても拘束される意図はない。また、添付図面において例証され、かつ以降の明細書中に記載される具体的なデバイス及び方法は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の概念の例示の実施形態にすぎないということも共通認識である。従って、本明細書中に開示された実施形態に関する具体的な寸法及びその他の物理的特性は、特許請求の範囲に明示的に別段の定めがないかぎり、限定と見なされるべきではない。本発明は多数の様々な形態の実施形態により成立するが、本開示は本発明の原理及び態様の典型と見なすべきであって本発明を例証された実施形態に限定するようには意図されていないという認識のもと、本発明の1以上の実施形態が、図面に示され、かつ本明細書中で詳細に説明される予定である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される。
【0019】
簡潔に述べれば、本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスは、例えば、外科的処置の際に患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて、患者の組織にかかる留置時の張力を様々に変化させる。本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスはさらに、X線透視下での画像化を妨げにくいという必要性を満たす。
【0020】
ここで
図1及び2を参照すると、本発明の1以上の態様に従って構築された一例の組織開創器デバイス100が示されている。組織開創器デバイス100は、手術の際に例えば足、下肢、上肢、手、胴体及び/又は頭部などの身体部位に対して使用するのに適している。
【0021】
図1及び2に例証されるように、組織開創器デバイス100は、第1の開創器110、第2の開創器140、及び第1の開創器110と第2の開創器140との間を伸びるバンド170を備えている。組織開創器デバイス100はさらに、以降により詳細に説明されるように、バンド170の一部分を摺動自在に受承及び保持して第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に向かって近づいたり離れたりする、調整部材180も備えることができる。代替実施形態では、以降により詳細に議論されるように、第1及び第2の開創器110、140の間のバンド170の長さ及び張力は、バンド170の少なくとも一方の端部が第1及び第2の開創器110、140のうち少なくとも一方に摺動自在に結合する場合に調整することができる。
【0022】
第1の開創器110の一例が
図4A及び4Bに例証されている。この例では、第1の開創器110は、弓状部114、カム部116、及び接続部118を具備している本体112を備えている。弓状部114は、カム部分116から複数のフィンガーフック又はプロング120に向かって上向きかつ外側へと伸びている。フィンガーフック又はプロング120は曲り部122を通って伸び、かつ互いに間隔を置いた平行な関係に配置構成されて、例えば軟組織用の空間124を形成する。フィンガーフック又はプロング120は、組み合わさってラックのような構造を形成してもよい。フィンガー又はプロング120が間隔を置いた平行な関係に配置されることにより、組織が軟組織用の空間124の内側に効率よく把持され、同時にその空間に収容される組織の損傷は最小限となる。一例において、フィンガー又はプロング120はそれぞれ、組織の把持及び/又は保持の助けとなるように、内表面から外側へと伸びる1以上のリブ(図示せず)を備えた把持面126を備えていてもよい。各フィンガー又はプロング120の端部がさらにテーパ状をなして、組織を把持又は支持するための形状に作られた楔形を形成していてもよい。
【0023】
第1の開創器110のカム部116は、使用時にはバンド170がもたらす張力に応じて切開部から近距離のところで皮膚と枢動自在に接触するように、カム表面128を有するU字型の構成を備えていてもよい。U字型のカム表面128は、皮膚と滑らかに接触して皮膚の穿刺を回避する。カム表面128は、外科医がバンド170に加えた張力に応じて第1の開創器110の弓状部分114に梃子の作用をもたらす。
【0024】
接続部118は、カム部116から上向きかつ外側へと伸びている。貫通孔130が本体112の接続部116に形成されてもよい。孔130は接続部118の中央にあってよく、バンド170を受承するのに十分な大きさの直径を備えている。一例において、バンド170の端部176は孔130に受承され、使用中にバンド170が孔130から抜け落ちるのを防止する保持用留め具132によって定位置に保持される。
【0025】
図5A及び5Bに例証された代替実施形態では、貫通孔530はバンド170の直径よりもやや大きな直径を有することができる。この例では、スロット532が孔530と通じており、かつ接続部118の外縁119に向かって後方へ伸びることができる。スロット532は、孔530の内部に至る広端開口部534と、外縁119に隣接する狭小端部536とを有するテーパ状をなして、鍵穴形状の開口部を形成してもよい。狭小端部536は、バンド170を弾性的に保持又は支持してバンド170が移動するのを防止するために、バンド170の直径よりも小さな直径を備えることができる。スロット532は、バンド170の端部172に下向きに押す力がかかるとバンド170の端部172が狭小端部536の中の適所に圧縮的又は弾性的に固定されるように、構成されていてもよい。この実施形態では、個別の調整部材は必要ではないし要求もされない。その一方、バンド170は第1の開創器110から第2の開創器140までの間を伸びる。患者の手足の周りのバンド170の張力、及び患者の手足を受承するための解剖学的空間は、バンド170の端部172をさらに孔530に通して引き寄せ、かつスロット532を通って狭小端部536の内部で定位置に固定することにより、調整される。
【0026】
図6は、本発明の1以上の態様に従って構築された別例の第1の開創器600を示す。この例では、第1の開創器600は、弓状部614、カム部616、及び接続部618を具備している本体612を備えている。弓状部614は、カム部分616から平滑な軟組織パドル620に向かって上向きかつ外側へと伸びる。カム部616及び接続部618は、第1の開創器110のカム部116及び接続部118のように構築されてもよいし、又は類似の構成を有してもよい。
【0027】
第2の開創器140も、第1の開創器110及び/又は600と同様に構築されてもよいし、第1の開創器と類似の構成を有してもよい。例えば、第2の開創器140は、弓状部144、カム部146、及び接続部148を具備している本体142を備えている。弓状部144は、カム部分146から複数のフィンガーフック又はプロング150に向かって上向きかつ外側へと伸びている。フィンガーフック又はプロング150は曲り部152を通って伸び、かつ互いに間隔を置いた平行な関係に配置構成されて、例えば軟組織用の空間154を形成する。フィンガー又はプロング150が間隔を置いた平行な関係に配置されることにより、組織が軟組織用の空間154の内側に効率よく把持され、同時にその中に収容される組織の損傷は最小限となる。一例において、フィンガー又はプロング150はそれぞれ、組織の把持及び/又は保持の助けとなるように、内表面から外側へと伸びる1以上のリブ(図示せず)を備えた把持面156を備えていてもよい。
【0028】
第2の開創器140のカム部146は、使用時には切開部から近距離のところで皮膚と枢動自在に接触するように、カム表面158を有するU字型の構成を備えていてもよい。接続部148は、カム部146から上向きかつ外側へと伸びている。貫通孔160が本体142の接続部146に形成されてもよい。孔160は接続部148の中央にあってよく、バンド170を受承するのに十分な大きさの直径を備えることができる。一例において、バンド170の端部178は孔160に受承され、使用中にバンド170が孔160から抜け落ちるのを防止する保持用留め具162によって定位置に保持される。代替実施形態では、貫通孔は、
図5A及び5Bに例証された貫通孔530、スロット532及び狭小端部536と同様に構築及び構成されてもよい。この場合、患者の手足の周りのバンド170の張力は、バンド170の端部178をさらに孔530に通して引き寄せ、かつスロット532を通って狭小端部536の内部で定位置に固定することにより、調整される。さらに別の実施形態では、第1の開創器110及び第2の開創器140のうち一方のみがそのような貫通孔を備え、他方は保持用留め具の使用によりバンド170の端部を保持する一般的な貫通孔を備えている。
【0029】
図1及び2に例証されるように、第1の開創器110及び第2の開創器140はバンド170によって接合されて解剖学的空間105を形成している。バンド170は、使用時にパテント(patent)の身体構造(例えば足)が解剖学的空間105の内部に位置する状態でその身体構造の周りに巻き付けられる、弾性又は非弾性のストリップであってよい。一例において、バンド170は、例えばノンラテックスのゴム管材料のような、外科用の管材料であってよい。バンド170の端部176、178はそれぞれ、第1の開創器110及び第2の開創器140の接続部116、146に形成された孔130、160をそれぞれ通して引き出され、留め具132、162によって支持される。
【0030】
図1及び2に例証された一例では、バンド170は、第1の開創器110から伸びている第1の開創器部分172、第2の開創器140から伸びている第2の開創器部分174、及び第1の開創器部分172と第2の開創器部分174とを接続しているループ部分176を備えることができる。この例では、組織開創器デバイス100は調整部材180を備えている。調整部材180は、バンド170のループ状部分176に沿って調整部材180を摺動させることで組織開創器デバイス100によって形成される解剖学的空間105を拡大又は縮小するために、使用することができる。
【0031】
図1及び7に例証されるような一実施形態では、調整部材180は、第1の側181と第2の側183との間を伸びておりバンド170のループ部分176の一部が中を通って伸びる開口部184を有している、円筒状本体182を備えることができる。バンド170のループ部分176の一部が開口部184を通って第2の側183から外に伸びている状態で、調整部材180は、第1の開創器110及び/又は第2の開創器140により近づくように、又はより離れるように、バンド170に沿って摺動させることができる。調整部材180の円筒状本体182は、外科医の手又は指が調整部材180をよりしっかりと掴めるように、1以上のナーリング加工188を有する外側表面186を備えている。
【0032】
調整部材180が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に近づくように摺動自在に移動されると、解剖学的空間105の大きさは縮小し、かつ調整部材180の第2の側183から伸び出ているループ部分176は多くなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで堅く締まり、かつ第1及び第2の開創器110、140に対してより高い張力を加えることになる。調整部材180が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140から離れるように摺動自在に移動されると、解剖学的空間105は拡大し、かつ調整部材180の第2の側183から伸び出ているループ部分176は少なくなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで緩み、かつ加える張力はより低くなる。
【0033】
図2Aに例証された代替実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から伸びて調整部材180の開口部184を通って調整部材180の第2の側183から抜け出ており、かつ第2の開創器部分174は第2の開創器110から伸びて調整部材180の開口部184を通って調整部材180の第2の側183から抜け出ている。この実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174は接続していない。その代わりに、第1の開創器部分172は自由端272を備え、第2の開創器部分174は自由端274を備えている。自由端272、274は、外科医が両方一緒に又は別々に掴み、その一方でバンド170の第1及びセクション(section)の開創器部分172、174に沿って調整部材180を摺動させるために、調整部材180の第2の側183を越えた先まで伸びている。
【0034】
1つの実施形態では、調整部材180の貫通孔184は、バンド170に沿って手動で摺動せしめられていない時はバンド170を所望の場所に弾性的に保持するように、テーパ状をなしていてもよく、及び/又は内部摩擦表面189を備えていてもよい。本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材180を使用することにより、開創された切開部に対して第1の開創器110及び第2の開創器140によってかかる張力は、バンド170に沿って調整部材180を摺動させることにより容易に制御される。使用時、調整部材180は、切開部位に対する、及び/又は切開部位における第1及び第2の開創器110、140若しくは組織の関わり合いに対する、何らかの妨げとなるのを回避するために、切開部からみて身体構造の反対側に位置付けられることになろう。
【0035】
調整部材の代替実施例800は
図8A及び8Bに例証されている。この実施形態では、調整部材800は、第1の側812と第2の側814との間を伸びておりバンド170の一部が中を通って伸びる第1の開口部820及び第2の開口部822を有している、本体810を備えることができる。バンド170の一部が第1の開口部820を通って伸び、かつバンド170の別の一部が第2の開口部を通って伸びている状態で(例えば
図8Bを参照)、調整部材800は、第1の開創器110及び/又は第2の開創器140により近づくように、又はより離れるように、バンド170に沿って摺動させることができる。第1及び第2の開口部820、822は、バンド170に沿って手動で摺動せしめられていない時はバンド170を所望の場所に弾性的に保持するように、テーパ状をなしていてもよく、及び/又は内部摩擦表面を備えていてもよい。
【0036】
調整部材800が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に近づくように摺動自在に動かされると、解剖学的空間105の大きさは縮小し、かつ調整部材800の第2の側814から伸び出ているループ部分176は多くなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで堅く締まり、かつ第1及び第2の開創器110、140に対してより高い張力を加えることになる。調整部材800が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140から離れるように摺動自在に動かされると、解剖学的空間105は拡大し、かつ調整部材800の第2の側814から伸び出ているループ部分176は少なくなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで緩み、かつ加える張力はより低くなる。
【0037】
別例では、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から伸びて調整部材800の第1の開口部820を通って調整部材800の第2の側814から抜け出ており、かつ第2の開創器部分174は第2の開創器110から伸び、調整部材800の第2の開口部822を通って調整部材800の第2の側814から抜け出ている。この実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174は接続していない。その代わりに、第1の開創器部分172は自由端272を備え、第2の開創器部分174は自由端274を備えている。自由端272、274は、外科医が両方一緒に又は別々に掴みながら、その一方でバンド170の第1及びセクション(section)の開創器部分172、174に沿って調整部材800を摺動させるために、調整部材800の第2の側184を越えた先まで伸びている。
【0038】
調整部材180及び800は、解剖学的空間105の大きさ及び第1の開創器110と第2の開創器140との間のバンド170の張力を調整するために使用することが考えられる構造物の例にすぎない。バンド170の一部を受承するための、1以上の貫通孔を備えた代替設計案、例えばピンチ、ローラー、スライド、スクリュークランプ若しくはフランジクランプ、クリップ又はタイを、解剖学的空間105の大きさ及び第1の開創器110と第2の開創器140との間のバンド170の張力を調整するという同じ目的を達成するために、使用することができる。
【0039】
図3は、別の例の組織開創器デバイス300を例証している。この例では、より大きな切開部の追加部分をさらに開創する助けとなるように、第3の開創器310を使用することができる。第3の開創器310は、第3の開創器310の接続部318から伸びて接合される第2のバンド370によってバンド170に接続される、及び/又はその他の方法でバンド170に接続される。別の例において、第2のバンド370はバンド170と一体的に形成されてもよい。代替実施形態では、追加の開創器(
図4A及び6に例証された開創器又はその他の開創器の形状及び構成など)が、必要に応じて、及び/又は切開部の大きさに応じて、組織開創器デバイス100の一方の側に提供又は使用されてバンド170に接続されてもよい。
【0040】
図9及び10は、外科的処置に関連した組織開創器デバイス100の使用について示す。
図9及び10では、足背の切開部910が患者の足900の上の皮膚902に形成されている。この切開部910が作られると、皮膚は、第1の創縁部912と、第1の創縁部912に相対しており第1の創縁部912から切り離された第2の創縁部914とを有することになる。切開部910が作られた後、第1の開創器110が第1の創縁部912の上に置かれて、第1の開創器110のフィンガーフック又はプロング120が皮膚902の内表面に隣接して位置する状態に伸びるように、かつ切開部910の第1の創縁部912が弓状部分114によって形成された軟組織用の空間124の内側に位置するようにすることが可能である。弓状部分114は、切開された皮膚の第1の創縁部912を越えて上向きかつ第1の創縁部912から後方へと切開部910から離れるように、次いでカム部分116に向かって下向きに、伸びている。
図10に見られるように、第1の開創器110のカム部分116は、切開部910の第1の創縁部912より外側で少し距離をおいて皮膚902と接触する。
【0041】
留め具132によって第1の開創器110の接続部分118に支持されたバンド170は、貫通孔130を通り、患者の足の足裏部分をまわって第2の開創器140まで伸びる。例証されるように、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から調整部材180まで伸び、バンド170の第2の開創器部分174は第2の開創器140から調整部材180まで伸び、かつバンド170のループ部分176は開口部184を通って調整部材180の第2の側185から出て伸びている。より詳細に以下に議論されるように、バンド170のループ部分176の少なくとも一部は、外科医がつかんで第1及び第2の開創器110、140にかかる張力を調整することが可能となるように、調整部材180の第2の側183から伸び出て、出た状態にとどまっている。バンド170の第2の開創器部分174の端部178は、接続部分148の貫通孔を通り抜けて留め具162によって定位置に支持される。
【0042】
図2Aに例証された代替実施形態では、第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174はいずれも第1及び第2の開創器110、140からそれぞれ伸びて、調整部材180の第1の側181から開口部184を通って調整部材180の第2の側185の外に出る。第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174それぞれの端部272、274は、調整部材180の第2の側185から伸び出て、かつ出た状態にとどまっていて、外科医がつかんで第1及び第2の開創器110、140にかかる張力を調整することが可能となっている。
【0043】
第2の開創器140は、第1の開創器110が第1の創縁部912を把持したのと同じようにして、切開部の第2の創縁部914を把持する。
図9及び10に例証されるように、第2の開創器140のカム部分146は切開部910の第2の創縁部912の外側で少し距離を置いて皮膚902と接触する。開創器の数、及び/又は、各開創器のフック若しくはプロング、若しくは代替実施形態ではパドル若しくはその他の開創器把持構成物の数は、切開部の大きさに応じて切開部の各側につき様々であってよい。
【0044】
第1の開創器110が切開部910の第1の創縁部912を把持し、かつ第2の開創器140が切開部910の第2の創縁部914を把持した後、外科医は、一方の手又は指でループ部分176をつかみ、かつ他方の手で調整部材180を、内部表面189の摩擦を乗り越えるのに十分な力で、解剖学的空間105を縮小させるために患者の足900の底面に向かって摺動させることにより、皮膚902の第1及び第2の創縁部912、914を離れるように引っ張るための適切な張力を生み出すのに必要な所望の程度に、足900の周りのバンド170の長さを調整することができる。調整部材180が外科医によってバンド170のループ部分176に沿って摺動せしめられるにつれて、第1及び第2の開創器110、140それぞれのカム部分116、146は、切開部910から離れた外側の皮膚902の上で枢動して各開創器110、140に力を加える機械的な梃子作用を提供する。所望した程度の張力に到達すれば、バンド170は、足900の周りで、例えば内部表面189の摩擦によって、調整部材180の内部で適所に維持されることになる。
【0045】
外科医はその後、切開部910の内側で必要な外科的処置を実行してもよいし、組織開創器デバイス100が妨げとなることなく鮮明な画像化X線透視を行うこともできる。手術が完了した後、外科医は調整部材180を足900の底面から離れるように摺動させるだけで、バンド170の張力を緩和して解剖学的空間105を拡大させ、かつ第1の開創器110及び第2の開創器140を切開部910の第1及び第2の創縁部912、914からそれぞれ取り外し又は引き戻しできるようにすることが可能である。切開部910はその後、例えば縫合糸又はステープルにより、従来の外科的な方式で閉止することができる。
【0046】
さらに別の実施形態(図示せず)では、本発明の1以上の態様に従って構築された第1の開創器が、上述のように、開創される組織に付着する弓状部を備えることができる一方で、該開創器の接続部分は、手術室内の固定対象物、例えば手術台との間を伸びて該固定対象物に結合しているバンドに、結合する。この例では、バンドの一方の端部は、留め具132によるか又は
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔によって第1の開創器に結合させることが可能であり、その一方でバンドの他方の端部は、固定対象物に結び付けてもよいし、又は固定対象物に取り付けられたクランプ、クリップ若しくは他の取付機構に対して、結び付けることや、留め具若しくは
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔により、結合してもよい。バンドにかかる張力の調整は、固定対象物と第1の開創器との間を伸びるバンドの長さを調整することにより修正又は変更することができる。これは、例えば
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔を、第1の開創器及び固定対象物に結合された取付機構のうち一方若しくは両方に対して使用すること、又は別例として、取付機構が固定対象物に結合する場所を変更して(例えば第1の開創器により近くするか、又はより遠くして)その間に伸びるバンドの長さ及び張力を変化させることにより、達成可能である。
【0047】
本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスは、従来の手動式又は留置式開創器を上回るいくつかの利点を達成する。例えば、外科的処置の妨げとなる構造物が切開部の上方に無いので、切開部には事実上障害物がなくなり、かつ画像化X線透視のためにも開けた状態になる。第1の開創器及び第2の開創器、特にカム部の独自の形状及び構成により、切開部に隣接する組織への損傷が最小限となる。
【0048】
本発明のいくつかの態様について本明細書中に説明及び図示してきたが、当業者には同じ目的を成し遂げるために別例の態様をもたらすことも可能である。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれるそのような別例の態様全てを網羅するように意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は、第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は手術の際に切開部の外側で皮膚と接触するように構成された第1のカム表面を備えており、第1の弓状部分は切開部の第1の創縁部を把持するように構成されている、第1の開創器と、
第2の開創器であって、切開部の第2の創縁部を把持するように構成されている、第2の開創器と、
バンドであって、前記バンドは患者の身体部分に巻き付くように構成されており、前記バンドは前記第1の開創器の第1の接続部分と前記第2の開創器との間を伸びて解剖学的空間を形成し、
患者の身体部分は手術の際に解剖学的空間内に受承され、
前記第1の開創器の第1の接続部分は貫通孔を備え、該貫通孔は、解剖学的空間の大きさを調整するために前記バンドの通過を可能とする大きさに作られた第1の部分と、前記バンドを保持する大きさに作られた第2の部分とを備えている、バンドと
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項2】
貫通孔は、貫通孔の第1の部分から貫通孔の第2の部分まで伸びるテーパ状のスロットを備えている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項3】
前記バンドは留め具によって前記第2の開創器に保持されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項4】
第1のカム表面は、前記バンドにより作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項5】
第1のカム表面はU字型である、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項6】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項1に記載の組織開創器デバイス。
【請求項7】
組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は第1のカム表面を備えている、第1の開創器、
第2の開創器、
バンドであって、前記バンドは前記第1の開創器の第1の接続部分と前記第2の開創器との間を伸びている、バンド、並びに、
調整部材であって、前記調整部材は前記バンドの一部を受承するための少なくとも1つの貫通孔を画成している本体を備えており、前記調整部材は、前記第1の開創器と前記第2の開創器との間の距離を変化させるために、前記バンドのループ状部分に沿って前記第1の開創器又は前記第2の開創器のうち少なくとも一方に向かうように、及び離れるように、摺動可能である、調整部材
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項8】
第1のカム表面は、前記バンドに沿った前記調整部材の摺動により作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている、請求項7に記載の組織開
創器デバイス。
【請求項9】
第1のカム表面はU字型である、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項10】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項11】
前記調整部材の貫通孔は摩擦内部表面を備えている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項12】
前記調整部材の貫通孔はテーパ状をなしている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項13】
第2のバンドに接続された第3の開創器をさらに具備しており、第2のバンドは前記バンドに接続されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項14】
前記第1の開創器の第1の弓状部分は軟組織パドルを備え、軟組織パドルは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている、請求項7に記載の組織開創器デバイス。
【請求項15】
留置式の環状の組織開創器デバイスであって、前記組織開創器デバイスは、
第1の開創器であって、前記第1の開創器は第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えており、第1のカム部分は第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置しており、第1のカム部分は第1のカム表面を備えている、第1の開創器、
第2の開創器、
第1のバンドであって、前記第1のバンドは第1の端部及び第2の端部を備えており、前記第1のバンドの第1の端部は前記第1の開創器に結合されて、前記第1のバンドは前記第1の開創器から伸びている、第1のバンド、
第2のバンドであって、前記第2のバンドは第1の端部及び第2の端部を備えており、前記第2のバンドの第1の端部は前記第2の開創器に結合されて、前記第2のバンドは前記第2の開創器から伸びている、第2のバンド、
調整部材であって、前記調整部材は本体を備えており、本体は第1の側及び第2の側を備えており、本体は貫通孔を画成しており、前記第1のバンドの一部は前記調整部材の本体の第1の側から貫通孔を通過しており、前記第2のバンドの一部は前記調整部材の本体の第1の側から貫通孔を通過しており、前記第1のバンドの第2の端部及び前記第2のバンドの第2の端部は前記調整部材の第2の側から伸び出ている、調整部材
を具備している、組織開創器デバイス。
【請求項16】
前記第1のバンドの第2の端部は前記第2のバンドの第2の端部に接続してループ部を作っている、請求項15に記載の留置式の環状の組織開創器デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[本発明の背景]
本出願は、2021年5月3日に出願された米国仮特許出願第63/183,232号(代理人整理番号第3768.107P1号)に基づく優先権を主張する。米国仮特許出願第63/183,232号は参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して組織開創器デバイスに関し、より詳細には、外科的処置の際に切開部を開口状態に維持するために使用される留置式の環状の組織開創器デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
組織及び解剖学的構造の開創は、あらゆる種類の外科手術において極めて重要である。例えば観察対象の組織又は臓器を外科医に見えるようにするために、開創には組織の適切な牽引及び対牽引が要求される。
【0004】
外科用開創器は、外科医及び手術室の医療従事者が外科的処置の際に切開部又は創傷部を開口状態に保つ助けとなる。外科用開創器は、臓器又は組織を内部に留め、かつ見えるようにするのを助け、その見えている部位の視認性を高めて接触しやすいようにする。
【0005】
現在のところ、一般に使用されているのは2種類の外科用開創器、すなわち手持ち式開創器及び留置式開創器である。手持ち式開創器は、外科的処置の際に助手、ロボット、又は外科医が手で支持しなければならない。この種類の開創器は扱いが難しく、軟組織については保持力及び開創器の可動性が制限される。さらに、手持ち式開創器は大型で重く、X線透視下での画像化の妨げとなる。
【0006】
留置式開創器は、助手、ロボット、又は外科医の助力無しにそれ自体で開いた状態を保つことにより、切開部の開口を保とうとする。典型的には、留置式開創器は、外科医の両手が空くようにするための、組織を単独で支持するスクリュー又は一種のクランプを必要とする。今日使用されているいくつかの留置式開創器の例は、ウェイトラナー(Weitlaner)開創器、小脳開創器、ベックマン(Beckmann)開創器及びウィリアムス(Willams)開創器である。しかしながら、現行の留置式開創器は柔軟性に欠け、一平面内又は二平面内での開創しか行えない。さらに、現行の留置式開創器はX線透視による画像化の妨げとなる。
【0007】
よって、例えば、患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて留置時の長さ及び/又は張力が可変的である、外科的処置に使用される組織開創器が必要とされている。X線透視下での画像化を妨げにくい組織開創器も必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
簡潔に述べると、本発明の1以上の態様に従って構築された開創器デバイスは、外科的処置の際に患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて、患者の組織にかかる留置時の張力を可変的にするという必要性を満たす。本発明の1以上の態様に従って構築された開創器デバイスはさらに、X線透視下での画像化を妨げにくいという必要性を満たす。
【0009】
1つの実施形態では、組織開創器デバイスは、第1の開創器、第2の開創器及びバンドを備えている。第1の開創器は、第1の弓状部分、第1の接続部分及び第1のカム部分を備えている。第1のカム部分は、第1の弓状部分と第1の接続部分との間に位置している。第1のカム部分は第1のカム表面を備えている。第1の弓状部分は切開部の第1の創縁部を把持するように構成されている。第2の開創器は、切開部の第2の創縁部を把持するように構成されている。バンドは、患者の身体部分に巻き付くように構成されている。バンドは、第1の開創器の第1の接続部分と第2の開創器との間を、解剖学的空間を形成するように伸びている。患者の身体部分は手術の際に解剖学的空間の内部に受承される。第1の開創器及び第2の開創器のうち少なくとも一方は貫通孔を備えている。貫通孔は、バンドが通過できる大きさに作られた第1の部分と、バンドを保持する大きさに作られた第2の部分とを備えている。
【0010】
一例において、貫通孔は、貫通孔の第1の部分から貫通孔の第2の部分まで伸びるテーパ状のスロットを備えている。
【0011】
別の例では、第1のカム表面は、バンドにより作り出された張力によって切開部の外側の皮膚上で枢動するように構成されている。さらに別の例では、カム表面はU字型である。
【0012】
別の例では、前記第1の開創器の第1の弓状部分は複数のフィンガーフックを備え、該複数のフィンガーフックは切開された皮膚の創縁部を把持するように構成されている。
【0013】
別の例では、組織開創器デバイスは切開部の同じ創縁部を把持する複数の開創器を有していてもよい。
【0014】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点は、本発明の様々な態様についての以降の詳細な説明を添付図面と合わせれば明白となろう。
【0015】
本発明は、本明細書中以下に記載の詳細な説明から、及び添付された本発明の一定の実施形態の図面からより十分に理解されるであろうが、詳細な説明及び図面は、本発明を限定すると解釈されるべきではなく、単に説明、例証及び理解のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの一実施形態を示す斜視図。
【0017】
【
図2】
図1に示された組織開創器デバイスの側面図。
【0018】
【
図2A】本発明の1以上の態様に従って構築された別例の組織開創器デバイスの側面図。
【0019】
【
図3】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの別の実施形態を示す斜視図。
【0020】
【
図4A】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の一実施形態を示す斜視図。
【0021】
【
図4B】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の側面図。
【0022】
【
図5A】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスのためのバンド保持用の貫通孔の代替例を示す斜視図。
【0023】
【0024】
【
図6】本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器の別の実施形態を示す斜視図。
【0025】
【
図7】本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材の一実施形態を示す側面図。
【0026】
【
図8A】本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材の代替実施形態を示す斜視図。
【0027】
【
図8B】
図8Aに例証された調整部材を、同部材から一例のバンドのループ状部分が伸びている状態で示す側面図。
【0028】
【
図8C】
図8Aに例証された調整部材を、同部材から2本のバンドが伸びている状態で示す側面図。
【0029】
【
図9】患者の足の開口切開部に使用した状態の、本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスの一例を示す斜視図。
【0030】
【
図10】
図9に示された面9-9に沿って得られた、使用時の組織開創器デバイスを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明について、添付図面を参照しながら本発明による様々な例示の実施形態という観点で以下に詳細に議論する。以降の詳細な説明において、数多くの具体的詳細が本発明の完全な理解のために示される。しかしながら、本発明がそれらの具体的詳細の一部を伴わずに実行されうることは当業者には明白であろう。他の実例では、周知の構造物は本発明を不必要に不明瞭とするのを回避するため詳細には示されない。
【0032】
したがって、以下に記載される実装は全て、当業者が本開示の実施形態を作製又は使用することを可能にするために提供される例示の実装であり、特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定するようには意図されていない。本明細書中で使用されるように、「例示の」又は「例証の」又は「例」という語、及びこれらの派生語は、「例、実例、又は例証としての役割を果たしている」ことを意味する。本明細書中で「例示の」又は「例証の」又は「例」、及びその派生語として記載された任意の実装は、必ずしも他の実装よりも好適又は有利であるとは限らず、かつ他の実装よりも好適又は有利であると解釈されるべきではない。さらに、本項の説明において、用語「上方」、「下方」、「左」、「後」、「右」、「前」、「垂直」、「水平」、及びこれらの派生語は、
図1の方向に置かれた本発明に関するものとする。
【0033】
更に、先述の技術分野、背景、概要、又は以降の詳細な説明において示されるどのような明示又は黙示の理論によっても拘束される意図はない。また、添付図面において例証され、かつ以降の明細書中に記載される具体的なデバイス及び方法は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の概念の例示の実施形態にすぎないということも共通認識である。従って、本明細書中に開示された実施形態に関する具体的な寸法及びその他の物理的特性は、特許請求の範囲に明示的に別段の定めがないかぎり、限定と見なされるべきではない。本発明は多数の様々な形態の実施形態により成立するが、本開示は本発明の原理及び態様の典型と見なすべきであって本発明を例証された実施形態に限定するようには意図されていないという認識のもと、本発明の1以上の実施形態が、図面に示され、かつ本明細書中で詳細に説明される予定である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される。
【0034】
簡潔に述べれば、本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスは、例えば、外科的処置の際に患者の組織に合わせた複数平面内で屈曲及び移動する能力を備えて、患者の組織にかかる留置時の張力を様々に変化させる。本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスはさらに、X線透視下での画像化を妨げにくいという必要性を満たす。
【0035】
ここで
図1及び2を参照すると、本発明の1以上の態様に従って構築された一例の組織開創器デバイス100が示されている。組織開創器デバイス100は、手術の際に例えば足、下肢、上肢、手、胴体及び/又は頭部などの身体部位に対して使用するのに適している。
【0036】
図1及び2に例証されるように、組織開創器デバイス100は、第1の開創器110、第2の開創器140、及び第1の開創器110と第2の開創器140との間を伸びるバンド170を備えている。組織開創器デバイス100はさらに、以降により詳細に説明されるように、バンド170の一部分を摺動自在に受承及び保持して第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に向かって近づいたり離れたりする、調整部材180も備えることができる。代替実施形態では、以降により詳細に議論されるように、第1及び第2の開創器110、140の間のバンド170の長さ及び張力は、バンド170の少なくとも一方の端部が第1及び第2の開創器110、140のうち少なくとも一方に摺動自在に結合する場合に調整することができる。
【0037】
第1の開創器110の一例が
図4A及び4Bに例証されている。この例では、第1の開創器110は、弓状部114、カム部116、及び接続部118を具備している本体112を備えている。弓状部114は、カム部分116から複数のフィンガーフック又はプロング120に向かって上向きかつ外側へと伸びている。フィンガーフック又はプロング120は曲り部122を通って伸び、かつ互いに間隔を置いた平行な関係に配置構成されて、例えば軟組織用の空間124を形成する。フィンガーフック又はプロング120は、組み合わさってラックのような構造を形成してもよい。フィンガー又はプロング120が間隔を置いた平行な関係に配置されることにより、組織が軟組織用の空間124の内側に効率よく把持され、同時にその空間に収容される組織の損傷は最小限となる。一例において、フィンガー又はプロング120はそれぞれ、組織の把持及び/又は保持の助けとなるように、内表面から外側へと伸びる1以上のリブ(図示せず)を備えた把持面126を備えていてもよい。各フィンガー又はプロング120の端部がさらにテーパ状をなして、組織を把持又は支持するための形状に作られた楔形を形成していてもよい。
【0038】
第1の開創器110のカム部116は、使用時にはバンド170がもたらす張力に応じて切開部から近距離のところで皮膚と枢動自在に接触するように、カム表面128を有するU字型の構成を備えていてもよい。U字型のカム表面128は、皮膚と滑らかに接触して皮膚の穿刺を回避する。カム表面128は、外科医がバンド170に加えた張力に応じて第1の開創器110の弓状部分114に梃子の作用をもたらす。
【0039】
接続部118は、カム部116から上向きかつ外側へと伸びている。貫通孔130が本体112の接続部118に形成されてもよい。孔130は接続部118の中央にあってよく、バンド170を受承するのに十分な大きさの直径を備えている。一例において、バンド170の端部176は孔130に受承され、使用中にバンド170が孔130から抜け落ちるのを防止する保持用留め具132によって定位置に保持される。
【0040】
図5A及び5Bに例証された代替実施形態では、貫通孔530はバンド170の直径よりもやや大きな直径を有することができる。この例では、スロット532が孔530と通じており、かつ接続部118の外縁119に向かって後方へ伸びることができる。スロット532は、孔530の内部に至る広端開口部534と、外縁119に隣接する狭小端部536とを有するテーパ状をなして、鍵穴形状の開口部を形成してもよい。狭小端部536は、バンド170を弾性的に保持又は支持してバンド170が移動するのを防止するために、バンド170の直径よりも小さな直径を備えることができる。スロット532は、バンド170の端部17
6に下向きに押す力がかかるとバンド170の端部17
6が狭小端部536の中の適所に圧縮的又は弾性的に固定されるように、構成されていてもよい。この実施形態では、個別の調整部材は必要ではないし要求もされない。その一方、バンド170は第1の開創器110から第2の開創器140までの間を伸びる。患者の手足の周りのバンド170の張力、及び患者の手足を受承するための解剖学的空間は、バンド170の端部17
6をさらに孔530に通して引き寄せ、かつスロット532を通って狭小端部536の内部で定位置に固定することにより、調整される。
【0041】
図6は、本発明の1以上の態様に従って構築された別例の第1の開創器600を示す。この例では、第1の開創器600は、弓状部614、カム部616、及び接続部618を具備している本体612を備えている。弓状部614は、カム部分616から平滑な軟組織パドル620に向かって上向きかつ外側へと伸びる。カム部616及び接続部618は、第1の開創器110のカム部116及び接続部118のように構築されてもよいし、又は類似の構成を有してもよい。
【0042】
第2の開創器140も、第1の開創器110及び/又は600と同様に構築されてもよいし、第1の開創器と類似の構成を有してもよい。例えば、第2の開創器140は、弓状部144、カム部146、及び接続部148を具備している本体142を備えている。弓状部144は、カム部分146から複数のフィンガーフック又はプロング150に向かって上向きかつ外側へと伸びている。フィンガーフック又はプロング150は曲り部152を通って伸び、かつ互いに間隔を置いた平行な関係に配置構成されて、例えば軟組織用の空間154を形成する。フィンガー又はプロング150が間隔を置いた平行な関係に配置されることにより、組織が軟組織用の空間154の内側に効率よく把持され、同時にその中に収容される組織の損傷は最小限となる。一例において、フィンガー又はプロング150はそれぞれ、組織の把持及び/又は保持の助けとなるように、内表面から外側へと伸びる1以上のリブ(図示せず)を備えた把持面156を備えていてもよい。
【0043】
第2の開創器140のカム部146は、使用時には切開部から近距離のところで皮膚と枢動自在に接触するように、カム表面158を有するU字型の構成を備えていてもよい。接続部148は、カム部146から上向きかつ外側へと伸びている。貫通孔160が本体142の接続部14
8に形成されてもよい。孔160は接続部148の中央にあってよく、バンド170を受承するのに十分な大きさの直径を備えることができる。一例において、バンド170の端部178は孔160に受承され、使用中にバンド170が孔160から抜け落ちるのを防止する保持用留め具162によって定位置に保持される。代替実施形態では、貫通孔は、
図5A及び5Bに例証された貫通孔530、スロット532及び狭小端部536と同様に構築及び構成されてもよい。この場合、患者の手足の周りのバンド170の張力は、バンド170の端部178をさらに孔530に通して引き寄せ、かつスロット532を通って狭小端部536の内部で定位置に固定することにより、調整される。さらに別の実施形態では、第1の開創器110及び第2の開創器140のうち一方のみがそのような貫通孔を備え、他方は保持用留め具の使用によりバンド170の端部を保持する一般的な貫通孔を備えている。
【0044】
図1及び2に例証されるように、第1の開創器110及び第2の開創器140はバンド170によって接合されて解剖学的空間105を形成している。バンド170は、使用時に
患者の身体構造(例えば足)が解剖学的空間105の内部に位置する状態でその身体構造の周りに巻き付けられる、弾性又は非弾性のストリップであってよい。一例において、バンド170は、例えばノンラテックスのゴム管材料のような、外科用の管材料であってよい。バンド170の端部176、178はそれぞれ、第1の開創器110及び第2の開創器140の接続部11
8、14
8に形成された孔130、160をそれぞれ通して引き出され、留め具132、162によって支持される。
【0045】
図1及び2に例証された一例では、バンド170は、第1の開創器110から伸びている第1の開創器部分172、第2の開創器140から伸びている第2の開創器部分174、及び第1の開創器部分172と第2の開創器部分174とを接続しているループ部分176を備えることができる。この例では、組織開創器デバイス100は調整部材180を備えている。調整部材180は、バンド170のループ状部分176に沿って調整部材180を摺動させることで組織開創器デバイス100によって形成される解剖学的空間105を拡大又は縮小するために、使用することができる。
【0046】
図1及び7に例証されるような一実施形態では、調整部材180は、第1の側181と第2の側183との間を伸びておりバンド170のループ部分176の一部が中を通って伸びる開口部184を有している、円筒状本体182を備えることができる。バンド170のループ部分176の一部が開口部184を通って第2の側183から外に伸びている状態で、調整部材180は、第1の開創器110及び/又は第2の開創器140により近づくように、又はより離れるように、バンド170に沿って摺動させることができる。調整部材180の円筒状本体182は、外科医の手又は指が調整部材180をよりしっかりと掴めるように、1以上のナーリング加工188を有する外側表面186を備えている。
【0047】
調整部材180が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に近づくように摺動自在に移動されると、解剖学的空間105の大きさは縮小し、かつ調整部材180の第2の側183から伸び出ているループ部分176は多くなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで堅く締まり、かつ第1及び第2の開創器110、140に対してより高い張力を加えることになる。調整部材180が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140から離れるように摺動自在に移動されると、解剖学的空間105は拡大し、かつ調整部材180の第2の側183から伸び出ているループ部分176は少なくなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで緩み、かつ加える張力はより低くなる。
【0048】
図2Aに例証された代替実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から伸びて調整部材180の開口部184を通って調整部材180の第2の側183から抜け出ており、かつ第2の開創器部分174は第2の開創器1
40から伸びて調整部材180の開口部184を通って調整部材180の第2の側183から抜け出ている。この実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174は接続していない。その代わりに、第1の開創器部分172は自由端272を備え、第2の開創器部分174は自由端274を備えている。自由端272、274は、外科医が両方一緒に又は別々に掴み、その一方でバンド170の第1及び
第2の開創器部分172、174に沿って調整部材180を摺動させるために、調整部材180の第2の側183を越えた先まで伸びている。
【0049】
1つの実施形態では、調整部材180の貫通孔184は、バンド170に沿って手動で摺動せしめられていない時はバンド170を所望の場所に弾性的に保持するように、テーパ状をなしていてもよく、及び/又は内部摩擦表面189を備えていてもよい。本発明の1以上の態様に従って構築された調整部材180を使用することにより、開創された切開部に対して第1の開創器110及び第2の開創器140によってかかる張力は、バンド170に沿って調整部材180を摺動させることにより容易に制御される。使用時、調整部材180は、切開部位に対する、及び/又は切開部位における第1及び第2の開創器110、140若しくは組織の関わり合いに対する、何らかの妨げとなるのを回避するために、切開部からみて身体構造の反対側に位置付けられることになろう。
【0050】
調整部材の代替実施例800は
図8A及び8Bに例証されている。この実施形態では、調整部材800は、第1の側812と第2の側814との間を伸びておりバンド170の一部が中を通って伸びる第1の開口部820及び第2の開口部822を有している、本体810を備えることができる。バンド170の一部が第1の開口部820を通って伸び、かつバンド170の別の一部が第2の開口部を通って伸びている状態で(例えば
図8Bを参照)、調整部材800は、第1の開創器110及び/又は第2の開創器140により近づくように、又はより離れるように、バンド170に沿って摺動させることができる。第1及び第2の開口部820、822は、バンド170に沿って手動で摺動せしめられていない時はバンド170を所望の場所に弾性的に保持するように、テーパ状をなしていてもよく、及び/又は内部摩擦表面を備えていてもよい。
【0051】
調整部材800が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140に近づくように摺動自在に動かされると、解剖学的空間105の大きさは縮小し、かつ調整部材800の第2の側814から伸び出ているループ部分176は多くなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで堅く締まり、かつ第1及び第2の開創器110、140に対してより高い張力を加えることになる。調整部材800が第1の開創器110及び/又は第2の開創器140から離れるように摺動自在に動かされると、解剖学的空間105は拡大し、かつ調整部材800の第2の側814から伸び出ているループ部分176は少なくなって、その結果として組織開創器デバイス100は目的の身体構造の周りで緩み、かつ加える張力はより低くなる。
【0052】
別例では、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から伸びて調整部材800の第1の開口部820を通って調整部材800の第2の側814から抜け出ており、かつ第2の開創器部分174は第2の開創器140から伸び、調整部材800の第2の開口部822を通って調整部材800の第2の側814から抜け出ている。この実施形態では、バンド170の第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174は接続していない。その代わりに、第1の開創器部分172は自由端272を備え、第2の開創器部分174は自由端274を備えている。自由端272、274は、外科医が両方一緒に又は別々に掴みながら、その一方でバンド170の第1及び第2の開創器部分172、174に沿って調整部材800を摺動させるために、調整部材800の第2の側184を越えた先まで伸びている。
【0053】
調整部材180及び800は、解剖学的空間105の大きさ及び第1の開創器110と第2の開創器140との間のバンド170の張力を調整するために使用することが考えられる構造物の例にすぎない。バンド170の一部を受承するための、1以上の貫通孔を備えた代替設計案、例えばピンチ、ローラー、スライド、スクリュークランプ若しくはフランジクランプ、クリップ又はタイを、解剖学的空間105の大きさ及び第1の開創器110と第2の開創器140との間のバンド170の張力を調整するという同じ目的を達成するために、使用することができる。
【0054】
図3は、別の例の組織開創器デバイス300を例証している。この例では、より大きな切開部の追加部分をさらに開創する助けとなるように、第3の開創器310を使用することができる。第3の開創器310は、第3の開創器310の接続部318から伸びて接合される第2のバンド370によってバンド170に接続される、及び/又はその他の方法でバンド170に接続される。別の例において、第2のバンド370はバンド170と一体的に形成されてもよい。代替実施形態では、追加の開創器(
図4A及び6に例証された開創器又はその他の開創器の形状及び構成など)が、必要に応じて、及び/又は切開部の大きさに応じて、組織開創器デバイス100の一方の側に提供又は使用されてバンド170に接続されてもよい。
【0055】
図9及び10は、外科的処置に関連した組織開創器デバイス100の使用について示す。
図9及び10では、足背の切開部910が患者の足900の上の皮膚902に形成されている。この切開部910が作られると、皮膚は、第1の創縁部912と、第1の創縁部912に相対しており第1の創縁部912から切り離された第2の創縁部914とを有することになる。切開部910が作られた後、第1の開創器110が第1の創縁部912の上に置かれて、第1の開創器110のフィンガーフック又はプロング120が皮膚902の内表面に隣接して位置する状態に伸びるように、かつ切開部910の第1の創縁部912が弓状部分114によって形成された軟組織用の空間124の内側に位置するようにすることが可能である。弓状部分114は、切開された皮膚の第1の創縁部912を越えて上向きかつ第1の創縁部912から後方へと切開部910から離れるように、次いでカム部分116に向かって下向きに、伸びている。
図10に見られるように、第1の開創器110のカム部分116は、切開部910の第1の創縁部912より外側で少し距離をおいて皮膚902と接触する。
【0056】
留め具132によって第1の開創器110の接続部分118に支持されたバンド170は、貫通孔130を通り、患者の足の足裏部分をまわって第2の開創器140まで伸びる。例証されるように、バンド170の第1の開創器部分172は第1の開創器110から調整部材180まで伸び、バンド170の第2の開創器部分174は第2の開創器140から調整部材180まで伸び、かつバンド170のループ部分176は開口部184を通って調整部材180の第2の側183から出て伸びている。より詳細に以下に議論されるように、バンド170のループ部分176の少なくとも一部は、外科医がつかんで第1及び第2の開創器110、140にかかる張力を調整することが可能となるように、調整部材180の第2の側183から伸び出て、出た状態にとどまっている。バンド170の第2の開創器部分174の端部178は、接続部分148の貫通孔を通り抜けて留め具162によって定位置に支持される。
【0057】
図2Aに例証された代替実施形態では、第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174はいずれも第1及び第2の開創器110、140からそれぞれ伸びて、調整部材180の第1の側181から開口部184を通って調整部材180の第2の側18
3の外に出る。第1の開創器部分172及び第2の開創器部分174それぞれの端部272、274は、調整部材180の第2の側18
3から伸び出て、かつ出た状態にとどまっていて、外科医がつかんで第1及び第2の開創器110、140にかかる張力を調整することが可能となっている。
【0058】
第2の開創器140は、第1の開創器110が第1の創縁部912を把持したのと同じようにして、切開部の第2の創縁部914を把持する。
図9及び10に例証されるように、第2の開創器140のカム部分146は切開部910の第2の創縁部91
4の外側で少し距離を置いて皮膚902と接触する。開創器の数、及び/又は、各開創器のフック若しくはプロング、若しくは代替実施形態ではパドル若しくはその他の開創器把持構成物の数は、切開部の大きさに応じて切開部の各側につき様々であってよい。
【0059】
第1の開創器110が切開部910の第1の創縁部912を把持し、かつ第2の開創器140が切開部910の第2の創縁部914を把持した後、外科医は、一方の手又は指でループ部分176をつかみ、かつ他方の手で調整部材180を、内部表面189の摩擦を乗り越えるのに十分な力で、解剖学的空間105を縮小させるために患者の足900の底面に向かって摺動させることにより、皮膚902の第1及び第2の創縁部912、914を離れるように引っ張るための適切な張力を生み出すのに必要な所望の程度に、足900の周りのバンド170の長さを調整することができる。調整部材180が外科医によってバンド170のループ部分176に沿って摺動せしめられるにつれて、第1及び第2の開創器110、140それぞれのカム部分116、146は、切開部910から離れた外側の皮膚902の上で枢動して各開創器110、140に力を加える機械的な梃子作用を提供する。所望した程度の張力に到達すれば、バンド170は、足900の周りで、例えば内部表面189の摩擦によって、調整部材180の内部で適所に維持されることになる。
【0060】
外科医はその後、切開部910の内側で必要な外科的処置を実行してもよいし、組織開創器デバイス100が妨げとなることなく鮮明な画像化X線透視を行うこともできる。手術が完了した後、外科医は調整部材180を足900の底面から離れるように摺動させるだけで、バンド170の張力を緩和して解剖学的空間105を拡大させ、かつ第1の開創器110及び第2の開創器140を切開部910の第1及び第2の創縁部912、914からそれぞれ取り外し又は引き戻しできるようにすることが可能である。切開部910はその後、例えば縫合糸又はステープルにより、従来の外科的な方式で閉止することができる。
【0061】
さらに別の実施形態(図示せず)では、本発明の1以上の態様に従って構築された第1の開創器が、上述のように、開創される組織に付着する弓状部を備えることができる一方で、該開創器の接続部分は、手術室内の固定対象物、例えば手術台との間を伸びて該固定対象物に結合しているバンドに、結合する。この例では、バンドの一方の端部は、留め具132によるか又は
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔によって第1の開創器に結合させることが可能であり、その一方でバンドの他方の端部は、固定対象物に結び付けてもよいし、又は固定対象物に取り付けられたクランプ、クリップ若しくは他の取付機構に対して、結び付けることや、留め具若しくは
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔により、結合してもよい。バンドにかかる張力の調整は、固定対象物と第1の開創器との間を伸びるバンドの長さを調整することにより修正又は変更することができる。これは、例えば
図5A及び5Bに例証された鍵形状の孔に類似の貫通孔を、第1の開創器及び固定対象物に結合された取付機構のうち一方若しくは両方に対して使用すること、又は別例として、取付機構が固定対象物に結合する場所を変更して(例えば第1の開創器により近くするか、又はより遠くして)その間に伸びるバンドの長さ及び張力を変化させることにより、達成可能である。
【0062】
本発明の1以上の態様に従って構築された組織開創器デバイスは、従来の手動式又は留置式開創器を上回るいくつかの利点を達成する。例えば、外科的処置の妨げとなる構造物が切開部の上方に無いので、切開部には事実上障害物がなくなり、かつ画像化X線透視のためにも開けた状態になる。第1の開創器及び第2の開創器、特にカム部の独自の形状及び構成により、切開部に隣接する組織への損傷が最小限となる。
【0063】
本発明のいくつかの態様について本明細書中に説明及び図示してきたが、当業者には同じ目的を成し遂げるために別例の態様をもたらすことも可能である。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれるそのような別例の態様全てを網羅するように意図されている。
【外国語明細書】