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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172468
(43)【公開日】2022-11-16
(54)【発明の名称】層状構造
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/40 20060101AFI20221109BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20221109BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C30B29/40 502H
C23C14/06 A
C23C14/14 D
H01L21/203 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076219
(22)【出願日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】2106335.9
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】502209109
【氏名又は名称】アイキューイー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】IQE plc
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アンドルー
(72)【発明者】
【氏名】ダルジス,リティス
【テーマコード(参考)】
4G077
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077BA01
4G077BB10
4G077DA11
4G077ED05
4G077ED06
4G077EF02
4G077HA02
4G077HA11
4G077SA04
4G077SB01
4G077TK08
4K029AA06
4K029AA24
4K029BA11
4K029BA58
4K029BB09
4K029BD01
4K029CA05
4K029CA06
5F103AA08
5F103BB22
5F103DD01
5F103GG01
5F103HH03
5F103HH07
5F103LL01
5F103RR06
(57)【要約】
【課題】 層状構造を提供する。
【解決手段】 [100]結晶方位の基板と、[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14と、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層に結晶学的に一致する金属含有層16とを含む層状構造10。有利なことに、当産業で一般的な基板上に高品質金属含有層を成長させることができ、これによって一体化及びコストの利点が得られる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[100]結晶方位の、又は最大20°のミスカットを有する基板(12)と;
前記基板(12)上に配置、成長、又は堆積が行われた[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)と;
前記結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)に結晶学的に一致する金属含有層(16)と、
を含む、層状構造(10)。
【請求項2】
前記基板(12)がシリコンを含む、請求項1に記載の層状構造(10)。
【請求項3】
前記結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)がエピタキシャルである、請求項1又は請求項2に記載の層状構造(10)。
【請求項4】
前記結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)が結晶性希土類酸化物層(14)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の層状構造(10)。
【請求項5】
前記結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)が酸化スカンジウム(Sc)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の層状構造(10)。
【請求項6】
前記金属含有層(16)がエピタキシャルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の層状構造(10)。
【請求項7】
前記金属含有層(16)が、III-N材料;GaN;AlN;又はモリブデンである、請求項6に記載の層状構造(10)。
【請求項8】
前記金属含有層(16)がスパッタリングされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の層状構造(10)。
【請求項9】
前記金属含有層(16)が、モリブデン;III-N;AlN;GaNである、請求項8に記載の層状構造(10)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の層状構造(10)を含む、フォトニックデバイス。
【請求項11】
前記フォトニックデバイスが、光エミッタ;光検出器;光エミッタと光検出器との統合されたもの;発光ダイオード(LED)、又はマイクロ発光ダイオード(μLED)である、請求項10に記載のフォトニックデバイス。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の層状構造(10)を含む、電子デバイス;無線周波数(RF)フィルタ;又は高電子移動度トランジスタ(HEMT)。
【請求項13】
層状構造(10)の製造方法であって:
[100]結晶方位の基板(12)上に[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物(14)をエピタキシャル堆積するステップと;
前記結晶性ビクスビ鉱型酸化物層(14)の上に金属含有層(16)を堆積するステップと、
を含む製造方法。
【請求項14】
前記金属含有層(16)を堆積する前記ステップがエピタキシャル堆積を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属含有層(16)を堆積する前記ステップがスパッタリングを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特に限定するものではないが、Si(100)基板上にIII-N材料を成長させるため、又はSi(100)基板上に金属含有材料を成長させるための層状構造。
【背景技術】
【0002】
多くの用途では、上に1つ以上のデバイス層を成長させるため、又は配置するための良好な品質のIII-N層が必要である。例えば、適切な性質を得るために窒化ガリウム(GaN)層上に、無線周波数(RF)スイッチをエピタキシャル成長させることができる。典型的には、GaN層の下の基板上に複数の層が存在する。
【0003】
エピタキシャル成長の場合、層の結晶構造は、その下の層と一致又は適合する必要がある。各層の結晶配列は、その材料の最低エネルギー状態と、その下の層の結晶方位とによって決定される。例えば、ホモエピタキシー(前の層と同じ材料の成長)の場合、結晶方位は同一となり、ほとんどのヘテロエピタキシー(前の層と異なる材料の成長)の場合も、結晶方位は同じとなる。引き続く層の結晶構造が異なる場合、例えば立方晶であるシリコン上に成長させた六方晶のGaNの場合、次の層は適合する結晶方位で成長する。したがって、GaNは、Si(111)上には極性[0001]方位で成長するが、(110)希土類酸化物の前の層の上には半極性[11-20]方位で成長する。
【0004】
結晶性希土類酸化物は、それらの下にある層とは異なる結晶方位でエピタキシャル成長することが、これまでに確認されている。本出願人はこれを「epi Twist(商標)」と呼ぶ。格子定数がほぼ一致するのであれば、又は上層が、下層の格子定数の整数倍である格子定数を有するのであれば、これを、基板又は前の層とは異なる結晶方位で次の層を成長させるために使用することができる。
【0005】
二重バッファを用いてSi(111)基板上にGaN(0001)を成長させることが知られている(米国特許第7,012,016号)。これは図1中に示されている。
【0006】
米国特許第8846504号より、(110)にねじれる第1の酸化ガドリニウム層と、GaN(11-20)に近い格子定数を有する第2の酸化エルビウム層とを用いることによって、Si(100)上にGaN(11-20)を成長させることも知られている。これは図2中に示されている。
【0007】
GaN[0001]などのウルツ鉱型(c方向)III-N材料は、電子デバイス及びフォトニックデバイスの産業において好ましい。電子デバイスの場合、この形態のGaNの極性の性質は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)の製造に必要となる。広く利用可能であり、したがって安価であるという理由で、Si(100)基板の使用も好ましい。これらは、Si(111)などのシリコンの別の方位よりも大きい、最大300mmの直径で市販もされている。さらに、Si(100)によって、フォトニックデバイスを、Si(100)上で一般に製造される電子デバイスと一体化する可能性が得られる。
【0008】
現行のGaNチップに関連する問題の1つは、駆動エレクトロニクスを有するモジュール中でそれらを一体化するために、Si(100)上のモジュールにGaNチップを結合させ、次にそれらをワイヤと接続することが必要なことである。これによって、さらなる故障モード及び損失が生じる。これによって、デバイスの速度がワイヤの現在の能力に制限されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の問題を防止又は克服する層構造の提供を探求している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、[100]方位の、又は最大20°のミスカットを有する基板と;基板上に配置、成長、又は堆積が行われた[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物(bixbyite oxide)層と;結晶性ビクスビ鉱型酸化物層に結晶学的に一致する金属含有層とを含む層状構造を提供する。
【0011】
[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物層は、これによって[100]方位の基板上に高品質金属又は金属含有材料の成長が可能となるので、有利である。有利なことにフォトニックデバイス及びパワーデバイスを、このような材料の上に成長させることができる。例えば、HEMT、RFスイッチ、記憶素子、アクチュエータ、及びセンサのすべての、高品質金属又は金属含有層の上への成長、堆積、又は結合が可能となる。有利なことに、より高い結晶品質によって、デバイス性能が改善される。例えば、面外方位の1つの結晶方位によって、RFフィルタ及びHEMTの所望の結晶学的方向でより強い圧電界が得られる。
【0012】
結晶性ビクスビ鉱型酸化物層は、基板上に直接配置、成長、又は堆積が可能である。したがって、介在層は存在しない。
【0013】
基板はシリコン(Si)を含むことができる。有利なことに、Si(100)は、大きな直径のウエハで広く入手可能であり、電子デバイスに一般に使用される。有利なことに、本発明による層状構造上に成長させたデバイスは、Si(100)上に直接成長させた別のデバイスと一体化することができ、ヘテロインテグレーションとして知られている。Si(100)上で成長させるデバイスが、本明細書に記載の層状構造上に成長させるもののための駆動パワー電子デバイスである場合、これによって、デバイスを接続するための配線の必要性をなくすことができる。有利なことに、配線ではなく、デバイス性能が速度制限要因になる。有利なことに、配線を省くことで、潜在的な故障モードが解消される。
【0014】
結晶性ビクスビ鉱型酸化物はエピタキシャルであってよい。有利なことに、エピタキシャル堆積又は成長によって良好な結晶性を得ることがより容易になる。
【0015】
結晶性ビクスビ鉱型酸化物は希土類酸化物であってよい。結晶性ビクスビ鉱型酸化物は酸化スカンジウム(Sc)であってよい。有利なことに、酸化スカンジウムは、Si(100)上に[111]方位で成長する。有利なことに、Sc(111)上に有益な方位で高品質金属又は金属含有材料を成長させることができる。
【0016】
金属含有層はエピタキシャルであってよい。有利なことに、同じツールで結晶性ビクスビ鉱型酸化物層の直後に金属含有層の成長、堆積を行うことができる。有利なことに、層の間に汚染が導入される危険性が軽減される、又は解消される。
【0017】
金属含有層はIII-N材料であってよい。これは窒化ガリウム(GaN)であってよい。有利なことに、これは例えばHEMT用の良好な材料となる。これは窒化アルミニウム(AlN)であってよい。これは無線周波数フィルタなどの圧電デバイス用の良好な材料となる。これはモリブデン(Mo)であってよい。これはフィルタの裏面電極用、又はフォトニックデバイスの有効な反射層若しくはバックコンタクト用の良好な材料となる。これは、フィルタ中のHEMTのバリア用のIII-(RE)-N材料の後の成長のための良好な材料でもある。
【0018】
金属含有層はスパッタリングすることができる。有利なことに、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層を有する基板はテンプレートとして提供することができる。金属含有層は、同じ又は異なる製造場所でテンプレート上にスパッタリングすることができる。例えば、あるグループがテンプレートを製造することができ、第2のグループがそのテンプレートを受け取ってその上に金属含有層をスパッタリングすることができる。或いは、テンプレートはある場所で製造することができ、金属含有層のその上へのスパッタリングを同じ企業又は関連企業による別の場所で行うことができる。幾つかの場合では、金属含有層のスパッタリングは、エピタキシャル成長又は別の堆積方法よりも安価及び/又は迅速になる場合がある。
【0019】
スパッタリングされる金属含有層はMoであってよい。有利なことに、Moは当産業において一般的にスパッタリングされ、したがってMoのスパッタリングプロセスは成熟しており、再現性がある。或いは、スパッタリングされる材料は、GaN又はAlNなどのIII-N材料であってよい。
【0020】
本発明は、記載の層状構造を含むフォトニックデバイスも提供する。フォトニックデバイスは、光エミッタ;光検出器;又は光エミッタと光検出器との統合されたものであってよい。これはLED又はマイクロLEDであってよい。有利なことに、これらの用途のそれぞれは、ヘテロインテグレーションの利点、及び/又は本発明の層状構造の高品質金属含有層の利点が得られる。
【0021】
本発明は、記載の層状構造を含む電子デバイス;無線周波数フィルタ;又は高電子移動度トランジスタも提供する。有利なことに、これらの用途のそれぞれは、ヘテロインテグレーションの利点及び/又は本発明の層状構造の高品質金属含有層の利点が得られる。
【0022】
本発明は、層状構造の製造方法であって、[100]の結晶方位の基板又は最大20°でミスカットされた基板上に[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物をエピタキシャル堆積するステップと;結晶性ビクスビ鉱型酸化物層の上に金属含有層を堆積するステップとを含む製造方法も提供する。
【0023】
有利なことに、この方法によって、一般に使用される方位の基板上に、より高品質の金属又は金属含有材料を形成することができる。有利なことに、より高い結晶品質によって、デバイス性能が改善される。例えば、面外方位の1つの結晶方位によって、RFフィルタ及びHEMTの所望の結晶学的方向でより強い圧電界を得ることができる。
【0024】
金属含有層を堆積するステップは、エピタキシャル堆積を含むことができる。有利なことに、これは、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層をエピタキシャル堆積するステップの直後に同じツール中で行うことができる。
【0025】
或いは、金属含有層を堆積するステップは、スパッタリングを含むことができる。有利なことに、この層は、異なる時間及び/又は場所で加えることができる。有利なことに、スパッタリングは当産業において成熟したプロセスであり、安価で再現性のある結果が得られる。
【0026】
添付の図面を参照しながら、例として本発明をより十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】シリコン上にIII-Nを成長させるための従来技術の層スタックである。
図2】シリコン上にIII-Nを成長させるための従来技術の層スタックである。
図3】本発明による層スタックである。
図4】希土類酸化物上のMoの従来技術の成長のRHEEDプロットである。
図5】本発明による希土類酸化物上のMoの成長のRHEEDプロットである。
図6】本発明による層スタックである。
図7】本発明による層スタックである。
図8】希土類酸化物上のAlNの従来技術の成長のXRDプロットである。
図9】本発明による希土類酸化物上のAlNの成長のXRDプロットである。
図10】本発明による層スタックである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示全体にわたって、当業者によって理解されるように、結晶方位<100>は、立方晶構造の面を意味し、ミラー指数を用いた[100]、[010]、及び[001]の方位を含む。同様に、<0001>は、材料の極性が重要となる場合を除いて、[0001]及び[000-1]を含む。いずれか1つ以上の指数の整数倍は、その指数の単位の種類のものと同等となる。例えば、(222)は、(111)と同等であり、同じである。
【0029】
特に図3を参照しながら、これより本発明を説明する。基板12、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14、及び金属含有層16を有する層構造10が示されている。基板12は、オンアクシスシリコンであり、したがって<100>結晶方位を有する。当業者によって理解されるように、結晶方位<100>は、立方晶構造の面を意味し、ミラー指数を用いた[100]、[010]及び[001]の方位を含む。本明細書におけるSi(100)への言及は、別の結晶学的方向、例えば(111)面に向かって最大20°でミスカットされるシリコン基板12も含んでいる。
【0030】
Si<100>は、処理、メモリ、又はグラフィック用のコンピュータチップなどの家庭用エレクトロニクスに使用されているので、比較的低コストで大量に容易に入手可能である。Si<100>は、その高い電荷キャリア移動度(Siの別の方位よりも高い)のため、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などのフォトニックデバイスを駆動させる電子回路にも広く使用されている。したがって、十分な結晶品質を得ることができるのであれば、間に適切な層を用いて、Si<100>上にフォトニックデバイスを成長させることによって一体化の利点が得られる。
【0031】
シリコン基板12はモノリスであってよく、バルク単結晶シリコンを全体的に含むことができる。或いは、シリコン基板12は、その厚さの一部又はすべてで多孔質シリコンを含むこともでき、例えば副層を形成することができる。基板12は、多孔質である上部と、非多孔質の下部とを含むことができる。或いは、基板12は、多孔質である1つ以上の離散的な不連続部分を含むことができ、残りの部分は(バルクシリコンの性質を有する)非多孔質であってよい。これらの部分は、副層の面内、及び/又は層の厚さを通って(成長方向の意味で水平及び/又は垂直に)不連続であってよい。これらの部分は、基板12にわたって、及び/又はそれを通って、規則的な配列又は不規則なパターンで分布することができる。多孔度は、多孔質領域内で一定の場合も変動する場合もある。多孔度が変動する場合、これは厚さを通って直線的に変化する場合があるし、又は二次関数、対数関数、若しくは階段関数などの異なる関数により変動する場合もある。
【0032】
或いは、基板は、シリコンゲルマニウム(SiGe)、例えばSi0.8Ge0.2、又はシリコンオンインシュレータ(SOI)を含むことができる。
【0033】
単結晶の結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14の基板12上への配置、成長、又は堆積が行われる。結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は希土類酸化物層であってよい。希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、並びにランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)であるすべてのランタノイド系列である。ビクスビ鉱型酸化物は、結晶構造がビクスビ鉱型である。別のビクスビ鉱型酸化物としては、酸化インジウム(In)、酸化バナジウム(V)、酸化鉄(Fe)、酸化マンガン(Mn)、及び希土類と金属と酸素との三元化合物(RE-M-O)が挙げられる。
【0034】
好ましくは、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は、エピタキシャル堆積される。結晶性ビクスビ鉱型酸化物が、基板12又は別の層に、十分な表面温度、十分低い酸素濃度、及び十分遅い成長速度で堆積される場合、これは、基板12又は前の層の方位によっては、前の層の結晶方位に一致しない。代わりに、これは別の方位で成長し、本発明者が「epi Twist(商標)」と呼ぶ方法である。ほとんどの結晶性ビクスビ鉱型酸化物をSi(100)上で成長させる場合、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は、[100]方位よりも低い表面エネルギーを有する[110]方位で成長する。
【0035】
有利なことに、本発明者らは、結晶方位を変更し、後の層のために適切な表面を提供することのみが、単結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14に要求されることを明らかにした。これは、例えば図1中に示されるように、一方が結晶方位を変化させるため、他方が適切な格子整合及び品質を有する表面を提供するための2つの結晶性ビクスビ鉱型酸化物(希土類酸化物)層が必要である従来技術の層状構造とは対照的である。有利なことに、2つを成長させるよりも、1つの結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14を成長させる方が迅速で安価で容易である。有利なことに、層の間に1つ少ない界面が存在し、これは、欠陥又は層間のひずみが導入される危険性が低下することを意味する。表面エネルギーと不整合エネルギーとの間のバランスをとることは、これらの一方を解消するための一方の層と他方を管理するための他方の層とを用いる代わりに、単結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14によってより容易になる。
【0036】
有利なことに、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は、Si基板12から金属含有層16を絶縁し、それによって金属ケイ化物の形成が防止される。このようなケイ化物は、結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14を使用せずに、品質を改善するためにより高温で金属が堆積される場合に、特に形成されやすい。
【0037】
図3は、Si(100)を含む基板12を有する層構造10を示している。結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は、酸化スカンジウムScを含み、これはSi(100)上に[111]方位で成長する。金属含有層16は、モリブデンMoを含み、これはSc(111)上に[110]方位で成長する。有利なことに、これによって高品質のMoが得られ、したがって引き続くデバイス層がより良好になる。これは、例えば、フィルタ用の効率的な背面電極が形成されることを意味する。或いはこれは、フォトニックデバイス用の有効な反射層又はバックコンタクトである。Mo(110)層の表面原子の配列は、<0001>方向のAlN又はAlScNなどのIII-(RE)-N層の成長に好都合である。有利なことに、Mo(110)上で成長させた窒化物層は、Mo(112)上で成長させたものよりも良好な結晶品質を示す。図4は、Er上のMoの成長の反射高速電子線回折(Reflection High-Energy Electron Diffraction)(RHEED)パターンである。Moは、Er(110)上に[112]方位で成長する。電子の回折を示す数本の明るい縞が存在し、これらは互いに整列していないことが分かる。これは、層の面が平滑ではなくファセットが形成されていることを示している。図5は、本発明によるSc(111)上のMo(110)の成長の同様のRHEEDパターンである。1つの明るい縞と2つの一次回折の縞とが存在し、これらが平行であることが分かり、結晶品質が図4で見られるものよりも良好であることを示している。
【0038】
ランタノイド系列の元素ではない希土類酸化物である酸化スカンジウムは、驚くべきことに、その最低エネルギーの方位が[111]であるという点で、他の結晶性ビクスビ鉱型酸化物、特に希土類酸化物とは異なる挙動を示し、そのためSi(100)上にこの方位で成長する。材料の好ましい結晶方位は、その表面エネルギー、及び下の層との格子不整合によって決定される。結晶中の原子の配列も要因の1つとなるが、その理由は、これが、異なる表面上の原子間の間隔に影響を与え、酸素原子のみ、金属のみ、又は両方の組み合わせを有するかに影響を与えるからである。Scは他の希土類元素よりも小さな原子であり、Scの格子面間隔は他の結晶性ビクスビ鉱型酸化物よりも小さい。したがって、Sc(111)は、Si(100)に対して、約-9%のより大きな格子不整合を示す。このため、表面エネルギーが、結晶方位を規定するための主要な要因となり、一方、Si(100)に対してより十分に格子整合する、例えば最大±2%となる結晶性ビクスビ鉱型酸化物では、(110)方位の表面エネルギーが(111)方位の場合の2倍となりうるとしても、格子整合が主要な要因となる。
【0039】
金属含有層16は、エピタキシャル又はその他の方法で堆積することができるし、スパッタリングすることもできる。結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14の結晶性のために、これは、金属含有層16の成長又は堆積に有利な方位を有する表面を有する。したがって、このような金属含有層16は、所望のデバイスの支持により適している。
【0040】
金属含有層16は、Moとして記載されている。或いは、これは、いずれかの遷移金属、例えばタンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、若しくはニッケル(Ni)、又は周期表のIII族からVI族のいずれかの金属、例えばAl、Ga、Sn、若しくはSbであってよい。或いは、これは1つ以上の金属と1つ以上の非金属との間の合金であってもよい。
【0041】
図6は、Si(100)を含む基板12を有する層状構造10を示している。結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14は、酸化スカンジウムScを含み、これは[111]方位で成長する。金属含有層16は、III-V半導体であり、これは1つ以上のIII族材料と1つ以上のV族材料との合金である。場合により、III-V半導体は、希土類を含むこともでき、例えばIII-RE-N材料であってもよい。III-Vは、二元又は三元の合金、例えばGaN、AlN、InGaN、AlGaN、InN、AlScN、AlYN、GaScN、GaYN、AlYbN、GaYbNであってよい。有利なことに、GaNなどの六方晶III-V材料が、(111)副層上にウルツ鉱型相で成長する。
【0042】
金属含有層16は、[0001]方位のIII-N合金である。例えば、III-Nはウルツ鉱型GaNであってよい。GaNは、電子用途及びフォトニック用途に広く使用されている。例えば、GaNは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)中、及びLEDディスプレイ用に使用される。
【0043】
HEMTなどの現行のGaNデバイスは、例えば遠隔通信又はインターネット基地局において、Si系CMOSエレクトロニクスにワイヤによって接続される。この配線は潜在的な故障モードとなる。これによって動作速度が制限されることもある。本発明によって、CMOSエレクトロニクスのホストにもなるSi(100)基板上にGaNデバイスを成長させることが可能になる。CMOSエレクトロニクスとGaNデバイスとが隣接しているので、配線が不要になり、それによって関連する故障モードがなくなり、これはデバイス性能は、デバイス自体によって左右され、接続の制限によるものではないことを意味する。有利なことに、GaN(0001)を成長させる能力は、固有の電荷が利用可能となることを意味し、その理由は、GaNは極性であり、それによってドーピングなしに圧電スイッチングが可能となるからである。GaNデバイスは、例えばマイクロプロセッサ中でステップダウン電圧変換を行うことによって、電力を管理するように構成することができる。
【0044】
同様に、LED又はμLED用途の場合、GaN系エミッタ、又はGaN系エミッタのアレイを、本発明の層状構造10によりSi(100)上に成長させることができる。各エミッタは、ディスプレイの1つのピクセルに対応する。1つ以上のエミッタは、これもSi(100)上で成長される又は実装される電子制御部品又はデバイスによって制御することができる。したがって、エミッタ及び制御は並べて配置することができ、好ましくは隣接させることができ、それによって、アレイ中の各ピクセルは、個別に容易に直接的にアドレス指定可能となる。有利なことに、ピクセルは迅速で正確に発光及び切り替えが可能である。
【0045】
例えば、図7中に示されるように、層状構造10をSi(100)基板の一部の上に成長させ、Si(100)ウエハの別の部分の上に電子制御部品を成長させることができる。ウエハの第2の部分は、[110]方位のビクスビ鉱型酸化物層18を含むことができる。ビクスビ鉱型酸化物層18は、Si(100)上で成長する場合に[110]方位にねじれる酸化エルビウム(Er)を含むことができる。次に[110]方位に適合させて層20を成長させることができる。例えば、層20はMo(112)を含むことができる。
【0046】
図8は、Er上に直接成長させた従来技術のIII-NのAlNのX線回折(X-ray Power Diffraction)(XRD)プロットである。AlNのXRDピークが存在しないことが分かるが、これは品質が非常に低いことを意味する。対照的に、AlNをSc上で成長させる場合(図9)、鋭いピークが存在し、これは良好な品質を示している。
【0047】
図10は、Si(100)を含む基板12を有する層状構造10を示している。前の例のように[111]方位の結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14を基板12上に成長させる。金属含有層16は強誘電体材料を含む。金属含有層16は窒素を含むことができる。例えば、強誘電体材料はScAlN又はScGaNであってよい。このような層は、記憶素子、強誘電体スイッチ、アクチュエータ、及びセンサに適している。これは、III-(RE)-N材料が、圧電性、強誘電性及び焦電性を併せ持つことが理由である。
【0048】
層状構造10は、Si CMOSを有するモノリス一体型RFフィルタに使用することができる。また、GaN系HEMTをSi CMOSとモノリス一体化させた。
【0049】
結晶性ビクスビ鉱型酸化物層14を、[111]方位の酸化スカンジウムとして説明してきたが、或いはこれはSi(100)上で成長する場合に[111]方位にねじれる任意のビクスビ鉱型酸化物であってよい。
【0050】
III-V金属含有層16を、GaN(0001)として説明してきたが、或いはこれはAlN、InGaN、AlGaN、InN、AlScN、AlYN、GaScN、GaYN、AlYbN、GaYbN、又は当分野において周知のあらゆるIII-V合金であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 層状構造
12 基板
14 結晶性ビクスビ鉱型酸化物層
16 金属含有層
18 ビクスビ鉱型酸化物層
20 層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】