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  • 特開-スケート靴の上部構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172487
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】スケート靴の上部構造体
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/16 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
A43B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078245
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】521193049
【氏名又は名称】橋口 清彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】橋口 清彦
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA28
4F050BB01
4F050BC03
4F050BC07
4F050BC14
4F050HA55
4F050JA15
(57)【要約】
【課題】スケータの足を確実に保持しつつ脚部全体の円滑な動きを十分に可能にしたスケート靴の上部構造を提供する。
【解決手段】表皮で覆われ下面にブレードが取着されるスケート靴の上部構造体を、靴芯1、ベロ2、足甲3およびクルブシ4の少なくとも4つの部材から構成し、靴芯1は、スケータの足の裏を覆う底部11、スケータの足のツマ先を除く両側下部を覆う縁部12およびスケータの足のかかと部の背後からアキレス腱部を覆う背部13、および背部13から下方へ突出するヒール部14を備え、足甲3は、靴芯1の底部11に装着されてスケータの足の甲の両側部を覆うものであり、ベロ2は、靴芯1の先端15に装着されてスケータのつま先を覆うとともに先端15から延びてスケータの足の甲の中央部を覆うものであり、クルブシ4は、靴芯1の背部13に外方より装着されてスケータの足の両側のくるぶし部を覆うものである
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮で覆われ下面にブレードが取着されるスケート靴の上部構造体を、靴芯、ベロ、足甲およびクルブシの少なくとも4つの部材から構成し、
前記靴芯は、スケータの足の裏を覆う底部、スケータの足のツマ先を除く両側下部を覆う縁部およびスケータの足のかかと部の背後からアキレス腱部を覆う背部、および前記背部から下方へ突出するヒール部を備え、
前記足甲は、前記靴芯の底部に装着されてスケータの足の甲の両側部を覆うものであり、
前記ベロは、前記靴芯の先端に装着されてスケータのつま先を覆うとともに前記先端から延びてスケータの足の甲の中央部を覆うものであり、
前記クルブシは、前記靴芯の前記背部に外方より装着されてスケータの足の両側のくるぶし部を覆うものである、
ことを特徴とするスケート靴の上部構造体。
【請求項2】
前記足甲は、左右一対の側縁部をこれらの下縁で連結して一体化された構造を有し、左右の前記側縁部を外方へ開いて下方から前記靴芯の底部に装着され、左右の前記側縁部によってスケータの足の甲の両側部を覆う請求項1に記載のスケート靴の上部構造体。
【請求項3】
前記ベロは、「つ」字状に屈曲する基端部が前記靴芯の先端に装着されて当該基端部によってスケータのつま先を覆い、当該基端部から所定幅で延びる延出部によってスケータの足の甲の中央部を上方から覆う請求項1又は2に記載のスケート靴の上部構造体。
【請求項4】
前記クルブシは下端部が、一部が切り離されて略U字形に湾曲する筒状に成形されており、前記下端部から上方へ延びる本体部が、上端で左右に湾曲展開してスケータの足の両側のくるぶしに沿った形状の保護カバーとなり、筒状の前記下端部を開いて前記靴芯のヒール部に装着され、左右に湾曲展開する前記保護カバーによってスケータの足の両側のくるぶし部を覆う請求項1ないし3のいずれかに記載のスケート靴の上部構造体。
【請求項5】
前記足甲、前記ベロ、および前記クルブシは前記靴芯への装着部が当該靴芯に接着されている請求項1ないし4のいずれかに記載のスケート靴の上部構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスケート靴の上部構造体に関し、特にスケータの足を確実に保持しつつ脚部全体の円滑な動きを可能にするスケート靴の上部構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スケート靴の上部構造体を、スケータの足の各部に応じた、つま先部、かかと部、甲部、内側部、外側部、第1および第2のくるぶし部にそれぞれ分けて、各部に適した繊維強化樹脂材を使用して上記上部構造体を構成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-216943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記特許文献1に記載の構造では、スケータの足を確実に保持しつつ脚部全体の円滑な動きを可能にすることが未だ十分でないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題を解決するもので、スケータの足を確実に保持しつつ脚部全体の円滑な動きを十分に可能にしたスケート靴の上部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、表皮で覆われ下面にブレードが取着されるスケート靴の上部構造体を、靴芯(1)、ベロ(2)、足甲(3)およびクルブシ(4)の少なくとも4つの部材から構成し、前記靴芯(1)は、スケータの足の裏を覆う底部(11)、スケータの足のツマ先を除く両側下部を覆う縁部(12)およびスケータの足のかかと部の背後からアキレス腱部を覆う背部(13)、および前記背部(13)から下方へ突出するヒール部(14)を備え、前記足甲(3)は、前記靴芯(1)の底部(11)に装着されてスケータの足の甲の両側部を覆うものであり、前記ベロ(2)は、前記靴芯(1)の先端(15)に装着されてスケータのつま先を覆うとともに前記先端(15)から延びてスケータの足の甲の中央部を覆うものであり、前記クルブシ(4)は、前記靴芯(1)の前記背部(13)に外方より装着されてスケータの足の両側のくるぶし部を覆うものであることを特徴とする。
【0007】
本第1発明によれば、スケータの足裏から足の両側下部、さらにかかと部の背後からアキレス腱部を覆う靴芯によって、スケータの荷重が確実に支持されその足を確実に保持することができる。さらに軟質のベロ2、足甲3、クルブシ4に分割されていることから特に足首のねじれ運動に良好に対応して脚部全体の円滑な動きを十分に保証することができる。
【0008】
本第2発明では、前記足甲(3)は、左右一対の側縁部(31,32)をこれらの下縁で連結して一体化された構造を有し、左右の前記側縁部(31,32)を外方へ開いて下方から前記靴芯(1)の底部(11)に装着され、左右の前記側縁部(31,32)によってスケータの足の甲の両側部を覆う。
【0009】
本第3発明では、前記ベロ(2)は、「つ」字状に屈曲する基端部(21)が前記靴芯(1)の先端(15)に装着されて当該基端部(21)によってスケータのつま先を覆い、当該基端部(21)から所定幅で延びる延出部(22)によってスケータの足の甲の中央部を上方から覆う。
【0010】
本第4発明では、前記クルブシ(4)は下端部(41)が、一部が切り離されて略U字形に湾曲する筒状に成形されており、前記下端部(41)から上方へ延びる本体部(42)が、上端で左右に湾曲展開してスケータの足の両側のくるぶしに沿った形状の保護カバー(421,422)となり、筒状の前記下端部(41)を開いて前記靴芯(1)のヒール部(14)に装着され、左右に湾曲展開する前記保護カバー(421,422)によってスケータの足の両側のくるぶし部を覆う。
【0011】
本第5発明では、前記足甲(3)、前記ベロ(2)、および前記クルブシ(4)は前記靴芯(1)への装着部が当該靴芯(1)に接着されている。
【0012】
本第5発明によれば、足甲、ベロ、およびクルブシの靴芯への固定が確実になされるとともに、接着部以外の部分の変形が可能であるから脚部全体の円滑な動きは十分に保証される。
【0013】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスケート靴の上部構造によれば、スケータの足を確実に保持しつつ脚部全体の円滑な動きを十分に保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】スケート靴の上部構造の全体側面図である。
図2】スケート靴の上部構造の平面図である。
図3】スケート靴の上部構造の底面図である。
図4】スケート靴の上部構造の正面図である。
図5】靴芯の側面図である。
図6】下方から見た靴芯の斜視図である。
図7】ベロを下方から見た斜視図である。
図8】足甲を側方から見た斜視図である。
図9】足甲を下方か見た斜視図である。
図10】クルブシの側面図である。
図11】クルブシを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
図1にはスケート靴の上部構造(以下、単に上部構造という)の全体側面図を示し、図2図3図4にはそれぞれ上部構造の平面図、底面図、正面図を示す。各図において、上部構造は、靴芯1、ベロ2、足甲3およびクルブシ4の4つの部材から構成されている。なお、これら各部材1,2,3,4は、スケータの足部分を3Dスキャンし、3DスキャンデータをCADソフトで読み込んで上記各部材1~4に分割した後、3Dプリンタに出力して成形する。これにより、各部材1~4はスケータの各自の足形状に沿った最適な形状のものが得られる。
【0018】
上記靴芯1の側面図を図5に示し、下方から見た靴芯1の斜視図を図6に示す。靴芯1は相対的に硬い樹脂材、例えばPLA樹脂やABS樹脂で成形されることが好ましい。靴芯1は、スケータの足の裏を覆う底部11、スケータの足のツマ先を除く両側下部を覆う縁部12およびスケータの足のかかと部の背後からアキレス腱部を覆う背部13、さらに背部から下方へ突出するヒール部14を備えている。
【0019】
ベロ2を下方から見た斜視図を図7に示す。ベロ2は相対的に柔らかい樹脂材、例えばTPU樹脂で成形されていることが好ましい。ベロ2は、基端部21が「つ」字状に屈曲し、当該基端部21から後方へ所定幅で長く延びその先端が屈曲する延出部22を有している。
【0020】
ベロ2はその基端部21が靴芯1の先端15に装着されて(図1図3図4参照)当該基端部21によってスケータのつま先を覆う。延出部22はスケータの足の甲の中央部を上方から覆うとともに、本実施形態ではスケータの足首から脛まで覆う長さを有している(図4)。
【0021】
足甲3を側方から見た斜視図を図8に示し、下方から見た斜視図を図9に示す。足甲3はベロ2と同材のTPU樹脂で成形されることが好ましく、略円弧状に内方へ向けて湾曲する左右一対の側縁部31,32を有し、これら側縁部31,32の下縁が、前後に間隔をおいて形成した複数の帯状連結部(図9)で連結されて一体化されている。
【0022】
足甲3は、左右の側縁部31,32を外方へ開いて下方から靴芯1の底部11に装着され(図3参照)、底部11の溝内に篏入した帯状連結部33は当該底部11に接着される。この際、各側縁部31,32の下縁も靴芯1に接着すると良い。この状態で、足甲3の左右の側縁部31,32は、スケータの足の甲の中央部を覆うベロ2の延出部22を挟んで足の甲の両側部に沿ってこれを覆う(図2図4参照)。
【0023】
クルブシ4の側面図を図10に示し、下方から見たその斜視図を図11に示す。クルブシ4はベロ2と同材のTPU樹脂で成形されることが好ましく、下端部41は、一部が切り離されて略U字形に湾曲する筒状に成形されており、この下端部41から上方へ延びる本体部42は、上端で左右に湾曲展開して、スケータの足の両側のくるぶしに沿った形状の保護カバー421,422となっている(図10)。
【0024】
クルブシ4は、筒状の下端部41を開いて後方より靴芯1のヒール部14に装着され(図1図5参照)ここに接着される。この状態で、クルブシ4の本体部42は靴芯1の背部13(図5参照)を覆うとともに、左右に湾曲展開するその保護カバー421,422はスケータの足の両側のくるぶし部を覆う。
【0025】
以上のようにして完成された上部構造の靴芯1の底面にはブレードが直接固定される。そして上部構造の表面は皮革等の表皮で覆われる。
【0026】
このような上部構造によれば、スケータの足裏から足の両側下部、さらにかかと部の背後からアキレス腱部を覆う硬質の靴芯1によって、スケータの荷重が確実に支持されてその足を確実に保持することができる。さらに軟質のベロ2、足甲3、クルブシ4に分割されていることから、特に足首のねじれ運動に良好に対応して脚部全体の円滑な動きを十分に保証することができる。
【0027】
なお、足甲3には靴ひもを通す穴が開けられ、靴ひもを締めることによってスケータの足の左右動をさらに確実に規制することができる。クルブシ4の保護カバー421,422には靴ひもを掛けるフックが設けられて、靴ひもを締めることによって特に足首の左右動が規制される。
【0028】
靴芯1の露出する表面、およびベロ2、足甲3およびクルブシ4の上記靴芯1を覆う部分の表面にはカーボン繊維を編んだ布等を張設して補強することが好ましい。さらにベロ2には内側にスケータの足を保護するためのクッション材を貼るのが好ましく、また芯材を入れてそのへたりを防止すると良い。
【0029】
足甲3やクルブシ4で覆われていない靴芯1の表面部分16(図1参照)を、足甲3等と同材の樹脂製補強片で覆うようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
1…靴芯、11…底部、12…縁部、13…背部、14…ヒール部、15…先端、2…ベロ、21…基端部、22…延出部、3…足甲、31,32…側縁部、4…クルブシ、41…下端部、42…本体部、421,422…保護カバー。
図1
図2
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