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<図1>
  • 特開-マスク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172498
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20221110BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A41D13/11 A
A62B18/02 C
A41D13/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078284
(22)【出願日】2021-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】521193120
【氏名又は名称】マ ナムピル
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】マ ナムピル
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】顎の動きによる上下方向のずれが発生し難いマスクを提供すること。
【解決手段】着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う通気性を備えた本体部(2)と、この本体部(2)の左右両端部に夫々結合されて左右の耳に掛ける1対の耳掛け部(3a,3b)を有するマスク(1)において、本体部(2)は、上部シート(4)と、この上部シート(4)と別部材で構成された下部シート(6)と、上部シート(4)に下部シート(6)を連結する上下方向への伸縮性を備えた中間シート(8)とを有し、会話中には顎と共に下方移動する下部シート(6)が中間シート(8)の伸縮を介して上部シート(4)に対して移動することで上部シート(4)が移動しないように構成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う通気性を備えた本体部と、この本体部の左右両端部分に夫々結合されて左右の耳に掛ける1対の耳掛け部を有するマスクにおいて、
前記本体部は、上部シートと、この上部シートと別部材で構成された下部シートと、前記上部シートに前記下部シートを連結すると共に上下方向への伸縮性を備えた中間シートとを有し、
会話中には顎と共に下方移動する前記下部シートが前記中間シートの伸縮を介して前記上部シートに対して移動することで前記上部シートが移動しないように構成されたことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記中間シートは、前記下部シートと一体の一体シートであり、この一体シートの上端部が前記上部シートの上端近傍部に固着されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記中間シートは、前記下部シートと別体の別体シートで構成され、この別体シートの下端部が前記下部シートの上端部に固着され且つ前記別体シートの上端部が前記上部シートの上端近傍部に固着されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記上部シートが、上部シートアウタと、この上部シートアウタの後面側上部に配設された上部シートインナとを備え、
前記上部シートインナが上端開放の2つ折りに形成され、前記上部シートインナの後側上端部の左右方向中央部分に形状保持部材が装備されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記下部シートの内面側に下部シートインナを備え、
前記下部シートの下端側部分に前記下部シートインナの下端側部分が固着され、前記下部シートインナの上端部分を引き出したときに前記下部シートと前記下部シートインナとで顎を収容する顎ポケットが形成されることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用のマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鼻と口を覆う衛生用のマスクが広く利用されている。マスクは、例えばガーゼや不織布等、複数枚の布を重ねて形成された本体部と、本体部の左右両端部に耳に掛けるための1対の耳掛け部を備えている。このようなマスクの機能は、本体部を通る空気中の細かい粒子を捕集することであり、例えば花粉等の細かい粒子をマスク着用者が吸い込まないようにしたり、マスク着用者のくしゃみ等による飛沫が飛散しないようにしたりしている。
【0003】
人間の顔面には複雑な凹凸があるので、マスク着用時には、例えば鼻筋から両頬にわたってマスクと顔面の間に隙間ができてしまう。この隙間は、空気と共に細かい粒子が出入り可能なので、マスクの上記機能を低下させる。それ故、鼻筋から両頬にわたるマスクと顔面の間の隙間を小さくするために、容易に変形させてその形状を保持することができるノーズフィッターを装備したマスクが広く利用されている。
【0004】
また、例えばプリーツ型又は立体型のように、鼻の下から口の前方にわたって空間を確保すると共に、マスクの外縁部分を顔面に密着させ易くしたマスクが広く利用されている。そして、例えば特許文献1のように、細かい粒子を捕集する主シートの内側(顔面側)に形成された伸縮性を有する上部ポケット部と下部ポケット部に鼻と顎を夫々収容することによって、顔面に密着させる技術が知られている。
【0005】
一方、マスクを着用した状態で、例えば会話のために口を開閉すると、顎の動きに合わせてマスクが動くため、マスクが上下方向にずれる場合がある。特許文献2には、マスクと顔面の間の摩擦力不足によりずれが発生する課題に対し、顎が当接するマスクの部位に摩擦力が大きいゴム等の摩擦抵抗材を設けることによってずれ難くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4635129号公報
【特許文献2】特開2013-233400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、伸縮性のある材料で上部ポケットと下部ポケットを形成すると、夫々鼻と顎に密着させることができるので、マスクと顔面の間の隙間ができ難くなる。しかし、会話等による顎の動きによって、顎を収容した下部ポケットに主シートが引っ張られて動き、マスクがずれる場合がある。特許文献2のマスクは顎との間の摩擦力を強くするものなので、特許文献1のような下部ポケットを有するマスクに適用してもマスクのずれを防ぐことができない。
【0008】
本発明の目的は、顎の動きによる上下方向のずれが発生し難いマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明のマスクは、着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う通気性を備えた本体部と、この本体部の左右両端部分に夫々結合されて左右の耳に掛ける1対の耳掛け部を有するマスクにおいて、前記本体部は、上部シートと、この上部シートと別部材で構成された下部シートと、前記上部シートに前記下部シートを連結すると共に上下方向への伸縮性を備えた中間シートとを有し、会話中には顎と共に下方移動する前記下部シートが前記中間シートの伸縮を介して前記上部シートに対して移動することで前記上部シートが移動しないように構成されたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、通気性を有するマスクの本体部が、上部シートと下部シートとこれらを連結する中間シートによって構成されている。そして下部シートは会話中には顎と共に下方移動するが、中間シートが上下方向に伸縮可能なので、下部シートの下方移動を中間シートが伸長することにより上部シートに伝えないようにすることができる。それ故、マスク着用者が会話しているときに、上部シートには顎の移動が伝わらない又は伝わり難いので、上部シートは移動せず、マスクの上下方向のずれを防ぐことができる。
【0011】
請求項2の発明のマスクは、請求項1の発明において、前記中間シートは、前記下部シートと一体の一体シートであり、この一体シートの上端部が前記上部シートの上端近傍部に固着されたことを特徴としている。
上記構成によれば、中間シートと下部シートが一体化されているので、マスクの製造が容易になる。また、下部シートが中間シートと同様の伸縮性を有している場合には、下部シートが顎の形状に沿って密着し易くなるので、マスク下部における顔面との間の隙間の発生を抑制することができる。
【0012】
請求項3の発明のマスクは、請求項1の発明において、前記中間シートは、前記下部シートと別体の別体シートで構成され、この別体シートの下端部が前記下部シートの上端部に固着され且つ前記別体シートの上端部が前記上部シートの上端近傍部に固着されたことを特徴としている。
上記構成によれば、伸縮する中間シートと擦れる顔面部分が小さくなる。それ故、例えば刺激に対して肌が敏感な人、化粧をしている人が着用し易くなる。
【0013】
請求項4の発明のマスクは、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記上部シートが、上部シートアウタと、この上部シートアウタの後面側上部に配設された上部シートインナとを備え、前記上部シートインナが上端開放の2つ折りに形成され、前記上部シートインナの後側上端部の左右方向中央部分に形状保持部材が装備されたことを特徴としている。
上記構成によれば、上部シートアウタの後面側上部で上部シートインナが上端開放の2つ折りにされているので、上部シートアウタから顔面側に上部シートインナの左右方向中央部分を容易に引き出すことができ、上部シートアウタと顔面の間の隙間をこの引き出した上部シートインナで覆って小さくすることができる。また、形状保持部材によって上部シートインナを鼻筋から両頬にわたって顔面の形状に沿わせて、上部シートインナと顔面の間の隙間を小さくすることができる。
【0014】
請求項5の発明のマスクは、請求項1~4の何れか1項の発明において、前記下部シートの内面側に下部シートインナを備え、前記下部シートの下端部に前記下部シートインナの下端部が固着され、前記下部シートインナの上端部分を引き出したときに前記下部シートと前記下部シートインナとで顎を収容する顎ポケットが形成されることを特徴としている。
上記構成によれば、下部シートと下部シートインナとで顎ポケットが形成され、着用者が口を開くと着用者の顎と共に顎ポケットが下方に移動する。このとき、下部シートインナが顎によって下方に押されて下部シートを下方に引っ張るので、下部シートを顎の移動に容易に追従させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマスクによれば、顎の動きによる上下方向のずれを発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係るマスクの前面図である。
図2図1のマスクの後面図である。
図3図2のIII-III線断面を示す図である。
図4図1のマスクの着用者が口を閉じている状態のマスクの断面模式図である。
図5図1のマスクの着用者が口を開いている状態のマスクの断面模式図である。
図6図1のマスクの着用者を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0018】
図1は着用時に外側に露出するマスク1の前面図である。図2は着用時に肌に触れる内側となるマスク1の後面図である。図3図2のIII-III線断面の説明図である。図中の矢印Uはマスク1の上方を示し、矢印Lはマスク1の左方を示し、矢印Fはマスク1の前方を示す。このマスク1は、通気性を備え且つ通過する空気中の細かい粒子(例えば花粉、飛沫)を捕集する本体部2と、本体部2の左右両端部に1対の耳掛け部3a,3bを有する。
【0019】
右側の耳掛け部3aは、例えば1本の紐の両端を本体部2の右端部に夫々結合して、この紐と本体部2とで輪になるように形成されている。マスク1の着用者に合わせて紐の長さを調整可能なように、紐が伸縮性を備えていてもよく、長さ調整機構を装備していてもよい。左側の耳掛け部3bも上記の耳掛け部3aと同様にして、本体部2の左端部に形成されている。
【0020】
本体部2は、マスク1の着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う部分である。本体部2は、上部シート4と、下部シート6と、上部シート4と下部シート6を連結する中間シート8を備えている。上部シート4、下部シート6、中間シート8は、細い合成繊維又は天然繊維を薄い平面状に加工した通気性を有する布(例えば不織布、織物又は編物)又は通気性を有する合成樹脂シートを夫々適切な形状に加工して形成されている。尚、上部シート4、下部シート6、中間シート8は、夫々通気性を有する複数枚の布又は合成樹脂シートが積層されて形成されていてもよい。
【0021】
本体部2は、別部材として形成された上部シート4と下部シート6と中間シート8を、例えば縫製、溶着又は接着によって固着して形成される。尚、本実施例では、合成繊維製の複数の布と紐を溶着により固着させており、固着箇所がドットで示されている。
【0022】
上部シート4は矩形状に形成され、後面側に折り畳まれた上部シート4の上半部がその上下方向中央位置を折り目にして再度後面側に折り畳まれて、上端開放の2つ折りの上部シートインナ4aが形成されている。上部シート4の下半部は、本体部2の最前面に位置する上部シートアウタ4bとなる。
【0023】
下部シート6は、マスク1の着用者の顎に触れる部分であり、上端と左右両端が直線状に且つ下端が下方に凸となる円弧状に形成されている。この下部シート6は、下部シート6の上部が上部シートアウタ4bの下部と重なるように、上部シートアウタ4bの後面側に配設されている。
【0024】
中間シート8は、伸縮性を備え、下部シート6と別体の矩形状の別体シートに形成されている。この中間シート8は、上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aの間に配設されている。この上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aに挟まれた中間シート8の上端側部分は、上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aの折り目である上部シートアウタ4bの上縁部と平行に、上部シートアウタ4bの上部に固着されている。
【0025】
中間シート8の下端側部分は、下部シート6の上端と平行に下部シート6の上部に固着されている。このとき、中間シート8は、中間シート8の後面側が下部シート6の前面側に固着されていることが、中間シート8と肌との接触面積を小さくできるので好ましい。尚、中間シート8は、下部シート6と一体の伸縮性を有する一体シートであってもよく、この場合には中間シート8と下部シート6を固着する工程を省いて製造が容易になる。
【0026】
上部シート4と中間シート8と下部シート6の左右方向の長さ(自然長)は同等に形成されている。これらの左右両端を揃えた左右両端部分において、中間シート8が上下方向に伸長していない状態で、中間シート8と下部シート6が、2つ折りされた上部シートインナ4aと共に上部シートアウタ4bに固着されている。この固着箇所を夫々右固着部4c、左固着部4dとし、右固着部4cと左固着部4dの固着時に、1対の耳掛け部3a,3bも本体部2(上部シートアウタ4b)の前面側に固着される。
【0027】
上部シートインナ4aは、2つ折りの折り目を下端にして左右両端部が右固着部4c、左固着部4dにおいて夫々固着されているが、左右方向中央部分を上部シートアウタ4bに対して後方に引き出すことが可能である。この上部シートインナ4aの後面側の左右方向中央部分の上端部には、左右方向に延びるノーズフィッター9(形状保持部材)が装備されている。
【0028】
ノーズフィッター9は、顔面形状に沿うように容易に変形させることができ、その変形させた形状を維持することができる金属製又は合成樹脂製の細長い部材である。このノーズフィッター9は上部シートインナ4a内に導入され、ノーズフィッター9の移動を防ぐために上部シートインナ4aのノーズフィッター9を囲む部分が溶着されている。
【0029】
下部シート6の後面側には、下部シートインナ7が配設されている。下部シートインナ7の下端は、下部シート6の下端と同じ円弧状に形成されている。下部シートインナ7の上端は、上方に凸となる円弧状に形成されている。
【0030】
下部シートインナ7の下端部は、同じ円弧状の下部シート6の下縁に沿うように下部シート6の下端部に固着されている。この固着部を第1固着部7aとすると、第1固着部7aの円弧の内側で第1固着部7aよりも径が小さい円弧状に、下部シートインナ7が下部シート6に固着されている。この第1固着部7aの円弧の内側の固着部を第2固着部7bとする。下部シートインナ7は、第1、第2固着部7a,7bにおいて下部シート6に固着されているが、第2固着部7bの内側の上端部分を下部シート6に対して後方に引き出して、顎を収容する顎ポケットを形成することが可能である。
【0031】
図4は、マスク1の着用者を左方から見て、マスク1の着用者が口を閉じているときのマスク1の左右方向中央部分の断面を示す図である。図5は、図4のマスク1の着用者が口を開いているときのマスク1の左右方向中央部分の断面を示す図である。図6は、マスク1の着用者を上方から見た図である。本体部2は、左右方向中央部分が鼻と顎に接触すると共に、左右両端部が後方(内側)に引き寄せられることにより前方凸状に湾曲して両頬に接触する。本体部2の上下方向についても鼻の下から口の前方に空間が形成されるように、本体部2が前方凸状に湾曲してもよい。
【0032】
マスク1を着用する場合には、1対の耳掛け部3a,3bを耳に掛けると共に、上部シートインナ4aを後方(内側)に引き出して、上部シートインナ4aによって鼻筋から両頬にわたって上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を覆う。そして、ノーズフィッター9を鼻筋から両頬の形状に沿わせて変形させて、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間を小さくすると共に、上部シートインナ4aの位置を安定させる。また、下部シートインナ7を後方(内側)に引き出して、下部シート6と下部シートインナ7によって形成した顎ポッケットに顎を収容する。
【0033】
本体部2から引き出された上部シートインナ4aは、鼻筋から両頬にわたって顔面との隙間を小さくすることによって、隙間からの細かい粒子の出入りを抑制する。この上部シートインナ4aは、2つ折りにされているため後方(内側)への引き出し量を容易に調整することができる。それ故、鼻筋から両頬にわたって大きさが一定ではない上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を容易に覆うことができる。
【0034】
顎ポケットにマスク1の着用者の顎が収容されたときに、下部シートインナ7の円弧状の第2固着部7bに沿うように下部シート6が前方凸状に湾曲するが、下部シートインナ7も顎に沿って下方凸状に湾曲する。それ故、下部シート6の前方凸状の湾曲が一層大きくなって顎に密着し易くなり、下部シート6と顔面の間の隙間ができ難くなる。
【0035】
上部シート4の上部シートアウタ4bには、下端部に下部シート6が連結された中間シート8の上端部が連結されると共に、下部シート6と中間シート8の左右方向両端部分が右固着部4c、左固着部4dにおいて夫々固着されて、本体部2が形成されている。この本体部2の左右方向中央部分は、中間シート8の伸縮を介して下部シート6が上部シート4(上部シートアウタ4b)に対して移動可能である。
【0036】
マスク1の着用者が口を閉じた状態では、上部シート4に対して下部シート6の下方への移動量は小さい。一方、マスク1の着用者が口を開くと、顎ポケットに収容された顎の後側下方への移動によって、下部シート6は中間シート8を伸長させながら左右方向中央部分が後側下方に移動する。そしてマスク1の着用者が口を閉じるときには、顎の移動と共に中間シート8が収縮して下部シート6が前側上方に移動する。
【0037】
下部シート6が上部シート4に対して中間シート8の伸縮を介して移動したときに、マスク1の外側と内側が連通する開口部はできないので、マスク1の機能は損なわれない。また、中間シート8の伸縮によって下部シート6の移動が上部シート4に伝わらない又は伝わり難いので、下部シート6が上下に移動しても上部シート4は移動しない。
【0038】
ノーズフィッター9によって上部シートインナ4aの位置が安定し、上部シート4の位置がずれ難いので、マスク1の着用者が口を開閉しても、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間は小さいままに維持される。下部シート6は、顎ポケットに収容された顎と共に動くので、マスク1の着用者が口を開閉しても顎に対して位置がずれない。
【0039】
従って、マスク1の着用者が例えば会話のために口を開いたり閉じたりしても、本体部2の上部シート4の位置がずれない。中間シート8は、口の開閉に合わせて伸縮するので、下部シート6が顎と共に移動しても、上部シート4と下部シート6の間に細かい粒子が通過する開口部はできず、マスク1の機能は損なわれない。
【0040】
上記マスク1の作用、効果について説明する。
マスク1の本体部2が上部シート4と下部シート6とこれらを連結する中間シート8によって構成されている。そして下部シート6は会話中には顎と共に下方移動するが、中間シート8が上下方向に伸縮可能なので、下部シート6の下方移動を、中間シート8が伸長することによって上部シート4に伝えないようにすることができる。それ故、マスク1の着用者が会話しているときに、上部シート4には顎の移動が伝わり難いので、上部シート4は着用された位置から移動しない。従って、上部シート4と下部シート6は夫々の着用位置から移動せず、上部シート4に対して下部シート6が中間シート8の伸縮を介して移動するので、マスク1のずれを防ぐことができ、マスク1の機能を損なうこともない。
【0041】
中間シート8と下部シート6が一体化された一体シートの場合には、別体の場合と比べてマスク1の製造が容易になる。また、下部シート6が中間シート8と同様の伸縮性を有している場合には、下部シート6が顎の形状に沿って密着し易くなるので、本体部2の下部において顔面との間に隙間ができないようにすることができる。
【0042】
中間シート8が下部シート6と別体の別体シートで構成された場合には、この別体シート(中間シート8)の下端部が下部シート6の上端部に固着され、且つ別体シート(中間シート8)の上端部が上部シート4の上端近傍部に固着されている。伸縮する中間シート8と擦れる肌の部分が小さくなり、例えば刺激に対して肌が敏感な人、化粧をしている人がマスク1を着用し易くなる。
【0043】
上部シート4は、上部シートアウタ4bの後面側(内面側)上部に、上部シート4の上半部を上端開放の2つ折りにして形成された上部シートインナ4aを備え、上部シートインナ4aの後側上端部の左右方向中央部分にノーズフィッター9が装備されている。上部シートインナ4aが上端開放の2つ折りにされているので、上部シートアウタ4bから顔面側に上部シートインナ4aの左右方向中央部分を容易に引き出すことができ、上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を引き出した上部シートインナ4aで覆って小さくすることができる。また、上部シートインナ4aをノーズフィッター9によって鼻筋から両頬にわたる顔面の形状に沿わせて変形させてこの形状を保持させ、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間を小さくすることができる。
【0044】
下部シート6の内面側に下部シートインナ7を備え、下部シート6の下端部に下部シートインナ7の下端部が固着され、下部シートインナ7の上端側部分を引き出したときに下部シート6と下部シートインナ7とで顎を収容する顎ポケットが形成される。マスク1の着用者が口を開くと顎ポケットに収容された顎と共に顎ポケットが下方に動かされる。このとき、下部シートインナ7が顎によって下方に押されて下部シート6を下方に引っ張るので、下部シート6を顎の移動に容易に追従させることができる。
【0045】
上部シート4は、夫々別体に形成された上部シートインナ4aと上部シートアウタ4bが固着されて形成されてもよい。上部シートアウタ4bの下端は、非着用の状態で下部シート6の下端に揃うように円弧状に形成されていてもよく、プリーツ状に形成されて着用時には左右方向中央部分を下方に伸ばせるようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 :マスク
2 :本体部
3a,3b :耳掛け部
4 :上部シート
4a :上部シートインナ
4b :上部シートアウタ
6 :下部シート
7 :下部シートインナ
7a :第1固着部
7b :第2固着部
8 :中間シート
9 :ノーズフィッター(形状保持部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う通気性を備えた本体部と、この本体部の左右両端部分に夫々結合されて左右の耳に掛ける1対の耳掛け部を有するマスクにおいて、
前記本体部は、上部シートと、この上部シートと別部材で構成された下部シートと、前記上部シート及び下部シートと別部材で構成され且つ上下方向への伸縮性を備えた素材で構成された中間シートであって、前記上部シートに前記下部シートを連結する中間シートとを有し、
前記上部シートが、上部シートアウタと、この上部シートアウタの後面側上部に配設された上部シートインナとを備え、
前記中間シートの上端側部分は前記上部シートアウタと上部シートインナの間に配設され、前記中間シートの上端部が前記上部シートアウタの上端部に固着され、前記中間シートの下端部が前記上部シートアウタの内面側において前記下部シートの上端部の前面に固着され、
会話中には顎と共に下方移動する前記下部シートが前記中間シートの伸縮を介して前記上部シートに対して相対移動することで前記上部シートが下方移動しないように構成されたことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記上部シートインナが上端開放の2つ折りに形成され、前記上部シートインナの後側上端部の左右方向中央部分に形状保持部材が装備されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記下部シートの内面側に下部シートインナを備え、
前記下部シートの下端側部分に前記下部シートインナの下端側部分が固着され、前記下部シートインナの上端部分を引き出したときに前記下部シートと前記下部シートインナとで顎を収容する顎ポケットが形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用のマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鼻と口を覆う衛生用のマスクが広く利用されている。マスクは、例えばガーゼや不織布等、複数枚の布を重ねて形成された本体部と、本体部の左右両端部に耳に掛けるための1対の耳掛け部を備えている。このようなマスクの機能は、本体部を通る空気中の細かい粒子を捕集することであり、例えば花粉等の細かい粒子をマスク着用者が吸い込まないようにしたり、マスク着用者のくしゃみ等による飛沫が飛散しないようにしたりしている。
【0003】
人間の顔面には複雑な凹凸があるので、マスク着用時には、例えば鼻筋から両頬にわたってマスクと顔面の間に隙間ができてしまう。この隙間は、空気と共に細かい粒子が出入り可能なので、マスクの上記機能を低下させる。それ故、鼻筋から両頬にわたるマスクと顔面の間の隙間を小さくするために、容易に変形させてその形状を保持することができるノーズフィッターを装備したマスクが広く利用されている。
【0004】
また、例えばプリーツ型又は立体型のように、鼻の下から口の前方にわたって空間を確保すると共に、マスクの外縁部分を顔面に密着させ易くしたマスクが広く利用されている。そして、例えば特許文献1のように、細かい粒子を捕集する主シートの内側(顔面側)に形成された伸縮性を有する上部ポケット部と下部ポケット部に鼻と顎を夫々収容することによって、顔面に密着させる技術が知られている。
【0005】
一方、マスクを着用した状態で、例えば会話のために口を開閉すると、顎の動きに合わせてマスクが動くため、マスクが上下方向にずれる場合がある。特許文献2には、マスクと顔面の間の摩擦力不足によりずれが発生する課題に対し、顎が当接するマスクの部位に摩擦力が大きいゴム等の摩擦抵抗材を設けることによってずれ難くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4635129号公報
【特許文献2】特開2013-233400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、伸縮性のある材料で上部ポケットと下部ポケットを形成すると、夫々鼻と顎に密着させることができるので、マスクと顔面の間の隙間ができ難くなる。しかし、会話等による顎の動きによって、顎を収容した下部ポケットに主シートが引っ張られて動き、マスクがずれる場合がある。特許文献2のマスクは顎との間の摩擦力を強くするものなので、特許文献1のような下部ポケットを有するマスクに適用してもマスクのずれを防ぐことができない。
【0008】
本発明の目的は、顎の動きによる上下方向のずれが発生し難いマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明のマスクは、着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う通気性を備えた本体部と、この本体部の左右両端部分に夫々結合されて左右の耳に掛ける1対の耳掛け部を有するマスクにおいて、前記本体部は、上部シートと、この上部シートと別部材で構成された下部シートと、前記上部シート及び下部シートと別部材で構成され且つ上下方向への伸縮性を備えた素材で構成された中間シートであって、前記上部シートに前記下部シートを連結する中間シートとを有し、前記上部シートが、上部シートアウタと、この上部シートアウタの後面側上部に配設された上部シートインナとを備え、前記中間シートの上端側部分は前記上部シートアウタと上部シートインナの間に配設され、前記中間シートの上端部が前記上部シートアウタの上端部に固着され、前記中間シートの下端部が前記上部シートアウタの内面側において前記下部シートの上端部の前面に固着され、会話中には顎と共に下方移動する前記下部シートが前記中間シートの伸縮を介して前記上部シートに対して相対移動することで前記上部シートが下方移動しないように構成されたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、通気性を有するマスクの本体部が、上部シートと下部シートとこれらを連結する中間シートによって構成されている。そして下部シートは会話中には顎と共に下方移動するが、中間シートが上下方向に伸縮可能なので、下部シートの下方移動を中間シートが伸長することにより上部シートに伝えないようにすることができる。それ故、マスク着用者が会話しているときに、上部シートには顎の移動が伝わらない又は伝わり難いので、上部シートは移動せず、マスクの上下方向のずれを防ぐことができる。
【0011】
【0012】
【0013】
請求項の発明のマスクは、請求項1の発明において、前記上部シートが、上部シートアウタと、この上部シートアウタの後面側上部に配設された上部シートインナとを備え、前記上部シートインナが上端開放の2つ折りに形成され、前記上部シートインナの後側上端部の左右方向中央部分に形状保持部材が装備されたことを特徴としている。
上記構成によれば、上部シートアウタの後面側上部で上部シートインナが上端開放の2つ折りにされているので、上部シートアウタから顔面側に上部シートインナの左右方向中央部分を容易に引き出すことができ、上部シートアウタと顔面の間の隙間をこの引き出した上部シートインナで覆って小さくすることができる。また、形状保持部材によって上部シートインナを鼻筋から両頬にわたって顔面の形状に沿わせて、上部シートインナと顔面の間の隙間を小さくすることができる。
【0014】
請求項の発明のマスクは、請求項1又は2の発明において、前記下部シートの内面側に下部シートインナを備え、前記下部シートの下端部に前記下部シートインナの下端部が固着され、前記下部シートインナの上端部分を引き出したときに前記下部シートと前記下部シートインナとで顎を収容する顎ポケットが形成されることを特徴としている。
上記構成によれば、下部シートと下部シートインナとで顎ポケットが形成され、着用者が口を開くと着用者の顎と共に顎ポケットが下方に移動する。このとき、下部シートインナが顎によって下方に押されて下部シートを下方に引っ張るので、下部シートを顎の移動に容易に追従させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマスクによれば、顎の動きによる上下方向のずれを発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係るマスクの前面図である。
図2図1のマスクの後面図である。
図3図2のIII-III線断面を示す図である。
図4図1のマスクの着用者が口を閉じている状態のマスクの断面模式図である。
図5図1のマスクの着用者が口を開いている状態のマスクの断面模式図である。
図6図1のマスクの着用者を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0018】
図1は着用時に外側に露出するマスク1の前面図である。図2は着用時に肌に触れる内側となるマスク1の後面図である。図3図2のIII-III線断面の説明図である。図中の矢印Uはマスク1の上方を示し、矢印Lはマスク1の左方を示し、矢印Fはマスク1の前方を示す。このマスク1は、通気性を備え且つ通過する空気中の細かい粒子(例えば花粉、飛沫)を捕集する本体部2と、本体部2の左右両端部に1対の耳掛け部3a,3bを有する。
【0019】
右側の耳掛け部3aは、例えば1本の紐の両端を本体部2の右端部に夫々結合して、この紐と本体部2とで輪になるように形成されている。マスク1の着用者に合わせて紐の長さを調整可能なように、紐が伸縮性を備えていてもよく、長さ調整機構を装備していてもよい。左側の耳掛け部3bも上記の耳掛け部3aと同様にして、本体部2の左端部に形成されている。
【0020】
本体部2は、マスク1の着用者の鼻と口を含む顔面下半部を覆う部分である。本体部2は、上部シート4と、下部シート6と、上部シート4と下部シート6を連結する中間シート8を備えている。上部シート4、下部シート6、中間シート8は、細い合成繊維又は天然繊維を薄い平面状に加工した通気性を有する布(例えば不織布、織物又は編物)又は通気性を有する合成樹脂シートを夫々適切な形状に加工して形成されている。尚、上部シート4、下部シート6、中間シート8は、夫々通気性を有する複数枚の布又は合成樹脂シートが積層されて形成されていてもよい。
【0021】
本体部2は、別部材として形成された上部シート4と下部シート6と中間シート8を、例えば縫製、溶着又は接着によって固着して形成される。尚、本実施例では、合成繊維製の複数の布と紐を溶着により固着させており、固着箇所がドットで示されている。
【0022】
上部シート4は矩形状に形成され、後面側に折り畳まれた上部シート4の上半部がその上下方向中央位置を折り目にして再度後面側に折り畳まれて、上端開放の2つ折りの上部シートインナ4aが形成されている。上部シート4の下半部は、本体部2の最前面に位置する上部シートアウタ4bとなる。
【0023】
下部シート6は、マスク1の着用者の顎に触れる部分であり、上端と左右両端が直線状に且つ下端が下方に凸となる円弧状に形成されている。この下部シート6は、下部シート6の上部が上部シートアウタ4bの下部と重なるように、上部シートアウタ4bの後面側に配設されている。
【0024】
中間シート8は、伸縮性を備え、下部シート6と別体の矩形状の別体シートに形成されている。この中間シート8は、上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aの間に配設されている。この上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aに挟まれた中間シート8の上端側部分は、上部シートアウタ4bと上部シートインナ4aの折り目である上部シートアウタ4bの上縁部と平行に、上部シートアウタ4bの上部に固着されている。
【0025】
中間シート8の下端側部分は、下部シート6の上端と平行に下部シート6の上部に固着されている。このとき、中間シート8は、中間シート8の後面側が下部シート6の前面側に固着されていることが、中間シート8と肌との接触面積を小さくできるので好ましい
【0026】
上部シート4と中間シート8と下部シート6の左右方向の長さ(自然長)は同等に形成されている。これらの左右両端を揃えた左右両端部分において、中間シート8が上下方向に伸長していない状態で、中間シート8と下部シート6が、2つ折りされた上部シートインナ4aと共に上部シートアウタ4bに固着されている。この固着箇所を夫々右固着部4c、左固着部4dとし、右固着部4cと左固着部4dの固着時に、1対の耳掛け部3a,3bも本体部2(上部シートアウタ4b)の前面側に固着される。
【0027】
上部シートインナ4aは、2つ折りの折り目を下端にして左右両端部が右固着部4c、左固着部4dにおいて夫々固着されているが、左右方向中央部分を上部シートアウタ4bに対して後方に引き出すことが可能である。この上部シートインナ4aの後面側の左右方向中央部分の上端部には、左右方向に延びるノーズフィッター9(形状保持部材)が装備されている。
【0028】
ノーズフィッター9は、顔面形状に沿うように容易に変形させることができ、その変形させた形状を維持することができる金属製又は合成樹脂製の細長い部材である。このノーズフィッター9は上部シートインナ4a内に導入され、ノーズフィッター9の移動を防ぐために上部シートインナ4aのノーズフィッター9を囲む部分が溶着されている。
【0029】
下部シート6の後面側には、下部シートインナ7が配設されている。下部シートインナ7の下端は、下部シート6の下端と同じ円弧状に形成されている。下部シートインナ7の上端は、上方に凸となる円弧状に形成されている。
【0030】
下部シートインナ7の下端部は、同じ円弧状の下部シート6の下縁に沿うように下部シート6の下端部に固着されている。この固着部を第1固着部7aとすると、第1固着部7aの円弧の内側で第1固着部7aよりも径が小さい円弧状に、下部シートインナ7が下部シート6に固着されている。この第1固着部7aの円弧の内側の固着部を第2固着部7bとする。下部シートインナ7は、第1、第2固着部7a,7bにおいて下部シート6に固着されているが、第2固着部7bの内側の上端部分を下部シート6に対して後方に引き出して、顎を収容する顎ポケットを形成することが可能である。
【0031】
図4は、マスク1の着用者を左方から見て、マスク1の着用者が口を閉じているときのマスク1の左右方向中央部分の断面を示す図である。図5は、図4のマスク1の着用者が口を開いているときのマスク1の左右方向中央部分の断面を示す図である。図6は、マスク1の着用者を上方から見た図である。本体部2は、左右方向中央部分が鼻と顎に接触すると共に、左右両端部が後方(内側)に引き寄せられることにより前方凸状に湾曲して両頬に接触する。本体部2の上下方向についても鼻の下から口の前方に空間が形成されるように、本体部2が前方凸状に湾曲してもよい。
【0032】
マスク1を着用する場合には、1対の耳掛け部3a,3bを耳に掛けると共に、上部シートインナ4aを後方(内側)に引き出して、上部シートインナ4aによって鼻筋から両頬にわたって上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を覆う。そして、ノーズフィッター9を鼻筋から両頬の形状に沿わせて変形させて、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間を小さくすると共に、上部シートインナ4aの位置を安定させる。また、下部シートインナ7を後方(内側)に引き出して、下部シート6と下部シートインナ7によって形成した顎ポッケットに顎を収容する。
【0033】
本体部2から引き出された上部シートインナ4aは、鼻筋から両頬にわたって顔面との隙間を小さくすることによって、隙間からの細かい粒子の出入りを抑制する。この上部シートインナ4aは、2つ折りにされているため後方(内側)への引き出し量を容易に調整することができる。それ故、鼻筋から両頬にわたって大きさが一定ではない上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を容易に覆うことができる。
【0034】
顎ポケットにマスク1の着用者の顎が収容されたときに、下部シートインナ7の円弧状の第2固着部7bに沿うように下部シート6が前方凸状に湾曲するが、下部シートインナ7も顎に沿って下方凸状に湾曲する。それ故、下部シート6の前方凸状の湾曲が一層大きくなって顎に密着し易くなり、下部シート6と顔面の間の隙間ができ難くなる。
【0035】
上部シート4の上部シートアウタ4bには、下端部に下部シート6が連結された中間シート8の上端部が連結されると共に、下部シート6と中間シート8の左右方向両端部分が右固着部4c、左固着部4dにおいて夫々固着されて、本体部2が形成されている。この本体部2の左右方向中央部分は、中間シート8の伸縮を介して下部シート6が上部シート4(上部シートアウタ4b)に対して移動可能である。
【0036】
マスク1の着用者が口を閉じた状態では、上部シート4に対して下部シート6の下方への移動量は小さい。一方、マスク1の着用者が口を開くと、顎ポケットに収容された顎の後側下方への移動によって、下部シート6は中間シート8を伸長させながら左右方向中央部分が後側下方に移動する。そしてマスク1の着用者が口を閉じるときには、顎の移動と共に中間シート8が収縮して下部シート6が前側上方に移動する。
【0037】
下部シート6が上部シート4に対して中間シート8の伸縮を介して移動したときに、マスク1の外側と内側が連通する開口部はできないので、マスク1の機能は損なわれない。また、中間シート8の伸縮によって下部シート6の移動が上部シート4に伝わらない又は伝わり難いので、下部シート6が上下に移動しても上部シート4は移動しない。
【0038】
ノーズフィッター9によって上部シートインナ4aの位置が安定し、上部シート4の位置がずれ難いので、マスク1の着用者が口を開閉しても、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間は小さいままに維持される。下部シート6は、顎ポケットに収容された顎と共に動くので、マスク1の着用者が口を開閉しても顎に対して位置がずれない。
【0039】
従って、マスク1の着用者が例えば会話のために口を開いたり閉じたりしても、本体部2の上部シート4の位置がずれない。中間シート8は、口の開閉に合わせて伸縮するので、下部シート6が顎と共に移動しても、上部シート4と下部シート6の間に細かい粒子が通過する開口部はできず、マスク1の機能は損なわれない。
【0040】
上記マスク1の作用、効果について説明する。
マスク1の本体部2が上部シート4と下部シート6とこれらを連結する中間シート8によって構成されている。そして下部シート6は会話中には顎と共に下方移動するが、中間シート8が上下方向に伸縮可能なので、下部シート6の下方移動を、中間シート8が伸長することによって上部シート4に伝えないようにすることができる。それ故、マスク1の着用者が会話しているときに、上部シート4には顎の移動が伝わり難いので、上部シート4は着用された位置から移動しない。従って、上部シート4と下部シート6は夫々の着用位置から移動せず、上部シート4に対して下部シート6が中間シート8の伸縮を介して移動するので、マスク1のずれを防ぐことができ、マスク1の機能を損なうこともない。
【0041】
部シート6が中間シート8と同様の伸縮性を有している場合には、下部シート6が顎の形状に沿って密着し易くなるので、本体部2の下部において顔面との間に隙間ができないようにすることができる。
【0042】
中間シート8が下部シート6と別体の別体シートで構成された場合には、この別体シート(中間シート8)の下端部が下部シート6の上端部に固着され、且つ別体シート(中間シート8)の上端部が上部シート4の上端近傍部に固着されている。伸縮する中間シート8と擦れる肌の部分が小さくなり、例えば刺激に対して肌が敏感な人、化粧をしている人がマスク1を着用し易くなる。
【0043】
上部シート4は、上部シートアウタ4bの後面側(内面側)上部に、上部シート4の上半部を上端開放の2つ折りにして形成された上部シートインナ4aを備え、上部シートインナ4aの後側上端部の左右方向中央部分にノーズフィッター9が装備されている。上部シートインナ4aが上端開放の2つ折りにされているので、上部シートアウタ4bから顔面側に上部シートインナ4aの左右方向中央部分を容易に引き出すことができ、上部シートアウタ4bと顔面の間の隙間を引き出した上部シートインナ4aで覆って小さくすることができる。また、上部シートインナ4aをノーズフィッター9によって鼻筋から両頬にわたる顔面の形状に沿わせて変形させてこの形状を保持させ、上部シートインナ4aと顔面の間の隙間を小さくすることができる。
【0044】
下部シート6の内面側に下部シートインナ7を備え、下部シート6の下端部に下部シートインナ7の下端部が固着され、下部シートインナ7の上端側部分を引き出したときに下部シート6と下部シートインナ7とで顎を収容する顎ポケットが形成される。マスク1の着用者が口を開くと顎ポケットに収容された顎と共に顎ポケットが下方に動かされる。このとき、下部シートインナ7が顎によって下方に押されて下部シート6を下方に引っ張るので、下部シート6を顎の移動に容易に追従させることができる。
【0045】
上部シート4は、夫々別体に形成された上部シートインナ4aと上部シートアウタ4bが固着されて形成されてもよい。上部シートアウタ4bの下端は、非着用の状態で下部シート6の下端に揃うように円弧状に形成されていてもよく、プリーツ状に形成されて着用時には左右方向中央部分を下方に伸ばせるようにしてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 :マスク
2 :本体部
3a,3b :耳掛け部
4 :上部シート
4a :上部シートインナ
4b :上部シートアウタ
6 :下部シート
7 :下部シートインナ
7a :第1固着部
7b :第2固着部
8 :中間シート
9 :ノーズフィッター(形状保持部材)
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2