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特開2022-172504電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172504
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20221110BHJP
【FI】
H02J50/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078295
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
(57)【要約】
【課題】負荷のインピーダンスが変化しても伝送効率の低下が抑えられる電界型無線電力伝送結合器3を提供する。
【解決手段】第1の送電側伝送線101、第2の送電側伝送線102、第1の受電側伝送線201及び第2の受電側伝送線202と、一対の送電側伝送線を結ぶ送電側コンデンサC12と、一対の受電側伝送線を結ぶ受電側コンデンサC22と、第1の送電側電極11と第1の受電側電極21とで容量を形成する第1のカップリング部Cm1と、第2の送電側電極12と第2の受電側電極22とで容量を形成する第2のカップリング部Cm2と、を備え、第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値とに基づいて算出される代表値と、送電側コンデンサC12の容量値と、受電側コンデンサC22の容量値と、の内の何れかを基準値として、他の値と基準値との差が基準値の10%以内に収まるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送電側伝送線、第2の送電側伝送線、第1の受電側伝送線及び第2の受電側伝送線と、
前記第1の送電側伝送線と前記第2の送電側伝送線とを結ぶ送電側コンデンサと、
前記第1の受電側伝送線と前記第2の受電側伝送線とを結ぶ受電側コンデンサと、
第1の送電側電極、第2の送電側電極、第1の受電側電極及び第2の受電側電極を有し、前記第1の送電側電極と第2の送電側電極との間に電界の形成に伴う送電側の浮遊容量を形成するとともに、第1の受電側電極と第2の受電側電極との間に電界の形成に伴う受電側の浮遊容量を形成し、第1の送電側電極と第1の受電側電極とで容量を形成する第1のカップリング部を有し、第2の送電側電極と第2の受電側電極とで容量を形成する第2のカップリング部を有するカプラと、
を備え、
前記第1のカップリング部の容量値と前記第2のカップリング部の容量値とに基づいて算出されるカップリング部の容量値の大きさを示す代表値と、
前記送電側コンデンサの容量値と前記送電側の浮遊容量の容量値との和と、
前記受電側コンデンサの容量値と前記受電側の浮遊容量の容量値との和と、
の内の何れか1つを基準値として、他の2つの値と基準値との差が基準値の10%以内に収まるように構成される電界型無線電力伝送結合器。
【請求項2】
前記代表値と、
前記送電側コンデンサの容量値と前記送電側の浮遊容量の容量値との和と、
前記受電側コンデンサの容量値と前記受電側の浮遊容量の容量値との和と、
が等しいように構成される請求項1に記載の電界型無線電力伝送結合器。
【請求項3】
前記代表値が前記第1のカップリング部の容量値と前記第2のカップリング部の容量値との代表値である請求項1又は請求項2に記載の電界型無線電力伝送結合器。
【請求項4】
前記第1のカップリング部の前記容量値と前記第2のカップリング部の前記容量値とが等しい請求項1から3の何れか1項に記載の電界型無線電力伝送結合器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の電界型無線電力伝送結合器を備える電界型無線電力伝送システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や電気自動車等の普及に伴い、無線で電力を供給する、電界型無線電力伝送システムの開発が積極的になされている。送電側の電極と受電側の電極とからなるカプラにて電界を通して無線で電力伝送する技術が提案されるに至っている。この種の技術が記載されるものとして特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】:特許第5590237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
負荷インピーダンスが、例えば消費電力の変化に伴って、変化した場合に、電源出力におけるリアクタンス成分が生じる。インピーダンスの不整合が生じ、電源から見ると力率が悪い負荷が接続されることになり、多くの配電が必要となる或いは伝送効率が低下するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、負荷のインピーダンスが変化しても伝送効率の低下が抑えられる電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる電界型無線電力伝送結合器は、第1の送電側伝送線、第2の送電側伝送線、第1の受電側伝送線及び第2の受電側伝送線と、第1の送電側伝送線と第2の送電側伝送線とを結ぶ送電側コンデンサと、第1の受電側伝送線と第2の受電側伝送線とを結ぶ受電側コンデンサと、第1の送電側電極、第2の送電側電極、第1の受電側電極及び第2の受電側電極を有し、第1の送電側電極と第2の送電側電極との間に電界の形成に伴う送電側の浮遊容量を形成するとともに、第1の受電側電極と第2の受電側電極との間に電界の形成に伴う受電側の浮遊容量を形成し、第1の送電側電極と第1の受電側電極とで容量を形成する第1のカップリング部を有し、第2の送電側電極と第2の受電側電極とで容量を形成する第2のカップリング部を有するカプラと、を備え、第1のカップリング部の容量値と第2のカップリング部の容量値とに基づいて算出される代表値と、送電側コンデンサの容量値と送電側の浮遊容量の容量値との和と、受電側コンデンサの容量値と受電側の浮遊容量の容量値との和と、の内の何れか1つを基準値として、他の2つの値と基準値との差が基準値の±10%以内に収まるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷のインピーダンスが変化しても伝送効率の低下が抑えられた電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システム回路構成の模式図である。
図2】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図3】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図4】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図5】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:10オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図6】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:10オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図7】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:10オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)と同一)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図8】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図9】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。スミスチャートである。
図10】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図11】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図12】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図13】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より5%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図14】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図15】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。スミスチャートである。
図16】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図17】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図18】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図19】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より10%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図20】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図21】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。スミスチャートである。
図22】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%大きい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図23】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図24】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図25】本発明の一実施形態(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム、送電側コンデンサ及び受電側コンデンサの容量がカップリング部の容量(基準値)より20%小さい)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図26】比較例1(負荷インピーダンス:50オーム、電源インピーダンス:50オーム)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図27】比較例2(負荷インピーダンス:25オーム、電源インピーダンス:50オーム)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
図28】比較例3(負荷インピーダンス:100オーム、電源インピーダンス:50オーム)にかかる電界型無線電力伝送システムの伝送状態を示すスミスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態にかかる電界型無線電力伝送結合器及び電界型無線電力伝送システムについて図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付す。
【0010】
以下、実施の形態に係る電界型無線電力伝送結合器3及び電界型無線電力伝送システムSを図1から図28を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本本発明の一実施形態にかかる電界型無線電力伝送システムSは、無線送電装置1と無線受電装置2とを有する。無線送電装置1は、送電側カプラ本体部301と送電側リアクタンス調整回路31と電源4とを有する。無線受電装置2は、受電側カプラ本体部302と受電側リアクタンス調整回路32と負荷5とを有する。
【0012】
送電側カプラ本体部301は第1の送電側電極11と第2の送電側電極12とを有する。受電側カプラ本体部302は第1の受電側電極21と第2の受電側電極22とを有する。送電側カプラ本体部301と受電側カプラ本体部302とによりカプラ300が構成される。
【0013】
第1の送電側電極11と第1の受電側電極21とが容量を形成して第1のカップリング部Cm1を構成し、第2の送電側電極12と第2の受電側電極22とが容量を形成して第2のカップリング部Cm2を構成する
【0014】
第1の送電側電極11と第2の送電側電極12との間に電界の形成に伴う送電側の浮遊容量C11が形成されるとともに、第1の受電側電極21と第2の受電側電極22との間に電界の形成に伴う受電側の浮遊容量C21が形成される。
【0015】
電界型無線電力伝送結合器3は、第1の送電側伝送線101、第2の送電側伝送線102、第1の受電側伝送線201及び第2の受電側伝送線202と、カプラ300と、第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102とを結ぶ送電側コンデンサC12と、第1の受電側伝送線201と第2の受電側伝送線202とを結ぶ受電側コンデンサC22とを有する。
【0016】
第1の送電側電極11、第2の送電側電極12、第1の受電側電極21、第2の受電側電極22は、平板電極であることが好ましいが、これに限られない。
【0017】
第1の送電側電極11は第1の送電側伝送線101及び第1の送電側コイルL11をこの順に介して電源4の第1の出力端401に接続される。第2の送電側電極12は第2の送電側伝送線102及び第2の送電側コイルL12をこの順に介して電源4の第2の出力端402に接続される。第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102とは、送電側コンデンサC12を介して接続されている。第1の送電側コイルL11、第2の送電側コイルL12、送電側コンデンサC12によって送電側リアクタンス調整回路31が形成されている。
【0018】
第1の受電側電極21は第1の受電側伝送線201及び第1の受電側コイルL21をこの順に介して負荷5の第1の入力端501に接続される。第2の受電側電極22は第2の受電側伝送線202及び第2の受電側コイルL22をこの順に介して負荷5における第2の入力端502に接続される。第1の受電側伝送線201と第2の受電側伝送線202とは、受電側コンデンサC22を介して接続されている。第1の受電側コイルL21、第2の受電側コイルL22、受電側コンデンサC22によって受電側リアクタンス調整回路32が形成されている。
【0019】
上記のように、コイルとコンデンサとが設けられる容量結合型の無線電力伝送方式は、電界方式と称されるものである。
【0020】
図1に示す電源4からは交流が送電される。プラスの電圧が送出されて、第1の送電側電極11に電源からプラス電荷が蓄積されると、第1のカップリング部Cm1を介して、第1の受電側電極21にマイナス電荷が誘起される。そして、マイナス電圧が受電側に伝達される。マイナスの電圧が送出されて、第1の送電側電極11に電源からマイナス電荷が蓄積されると、第1のカップリング部Cm1を介して、第1の受電側電極21にプラス電荷が誘起される。そして、プラス電圧が受電側に伝達される。そして、交流電力が受電側に伝達される。第2の送電側電極12と第2の受電側電極22との間においても同様に交流電力が伝達される。以上のように、送電側からの電力は、第1のカップリング部Cm1及び第2のカップリング部Cm2を通して、受電側装置に伝達される。そして、第2の負荷52に電力が供給される。
【0021】
負荷5とは、例えば蓄電池であり、産業機器や携帯電子機器等に採用されている。産業機器としては、電気自動車、携帯電子機器としては、ラップトップパソコン、スマートフォン、携帯音楽プレーヤ等が挙げられる。
【0022】
送電側の浮遊容量C11の容量値をc11、送電側コンデンサC12の容量値をc12、第1のカップリング部Cm1の容量値をcm1、第2のカップリング部Cm2の容量値をcm2、受電側の浮遊容量C21の容量値をc21、受電側コンデンサC22の容量値をc22とする。
【0023】
本発明の第1の実施の形態にかかる電界型無線電力伝送結合器3及び電界型無線電力伝送システムSにおいて、式(1)が満たされる。但し、後述するように、完全に等号が満たされる必要はない。
c11+c12 = (cm1+cm2)/2 =c21+c22 (式1)
【0024】
また、電界型無線電力伝送結合器3及び電界型無線電力伝送システムSにおいて、式(2)が満たされることが好ましい。但し、後述するように、完全に等号が満たされる必要はない。
cm1=cm2 (式2)
この場合には、電界型無線電力伝送結合器3及び電界型無線電力伝送システムSにおいて、式(3)が満たされる。但し、後述するように、完全に等号が満たされる必要はない。
c11+c12=cm1=cm2=c21+c22 (式3)
【0025】
送電側リアクタンス調整回路31が有する第1の送電側コイルL11及び第2の送電側コイルL12のインダクタンスが最適化され、且つ、受電側リアクタンス調整回路32が有する第1の受電側コイルL21及び第2の受電側コイルL22のインダクタンスが最適化される。そして、電界型無線電力伝送システムSにおいて、電源4のインピーダンスと電源4から見た電界型無線電力伝送システムSのインピーダンスとが一致する。
【0026】
図2から7は、式1、式2、式3が厳密に満たされる場合における電力伝送の様子をスミスチャートにて示す。
【0027】
図2から4は、負荷5の初期のインピーダンスが50オーム、電源4のインピーダンスが50オームの場合におけるインピーダンスの様子を示す。
【0028】
図2は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源のインピーダンスが50オームの場合におけるインピーダンスの様子を示している。図2中のプロット点は、図1中の負荷5の第1の入力端501、aからdの場所、及び電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスの状態を示している。aは第1の受電側コイルL21の電源側、bは第1の受電側電極21の負荷5側、cは第1の送電側電極11の電源側、dは第1の送電側コイルL11の負荷5側をそれぞれ表す。
【0029】
負荷5の第1の入力端501においては、負荷インピーダンスが50オームのため、スミスチャートの中央に状態がプロットされる。第1の受電側コイルL21によりリアクタンスが生じ、図1のa点においては、図2に示すようにスミスチャート上で大きく右下に移動する(a点)。更に、受電側コンデンサC22及び受電側の浮遊容量C21の影響で、右上に移動する(b点)。次に、第1のカップリング部Cm1の影響で上方に移動し(c点)、送電側の浮遊容量C11及び送電側コンデンサC12の影響で左上に移動し(d)、第1の送電側コイルL11の影響で、電源のインピーダンスが50オームに合致するように移動する。
【0030】
即ち、電源のインピーダンスと電源から見た電界型無線電力伝送システムのインピーダンスが一致して50オームである。
【0031】
伝送効率は、電源4の第1の出力端401における出力の力率で見積もることが出来る。力率は伝送される電力における電圧と電流との位相差θの余弦(cosθ)である。力率が1の場合に有効に使える電力が最大となる。力率が小さい場合には、同じ電力を供給しようとすると電圧を上げざるを得なくなり、伝送効率が下がる。以下、力率を適宜用いて効率を論じる。
【0032】
図2に示されるように、電源4の第1の出力端401において虚部はなく、力率は1であり、最大効率が実現される。
【0033】
図3に負荷5のインピーダンスが25オームに低減した場合の影響を示す。負荷5が25オームのため、スミスチャートの0.5の位置に負荷5はプロットされる。負荷5が低減されたにも関わらず電源4の第1の出力端401におけるプロット点は、スミスチャートの横軸線上に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じていない。図3に示されるように、電源4の第1の出力端401において力率は1であり、最大効率が実現される。
【0034】
図4に負荷5のインピーダンスが100オームに増加した場合の影響を示す。負荷5が100オームのため、スミスチャートの2の位置に負荷5の第1の入力端501のインピーダンスはプロットされる。負荷5が低減されたにも関わらず電源4の第1の出力端401におけるプロット点は、スミスチャートの横軸線上に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じていない。図4に示されるように、電源4の第1の出力端401において力率は1であり、最大効率が実現される。
【0035】
図5から7に、負荷5の初期のインピーダンスが100オーム、電源のインピーダンスが10オームの場合について、負荷5のインピーダンスが100オームから50オーム、25オームと変化した場合のインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0036】
図5は、負荷5のインピーダンスが100オーム、電源のインピーダンスが10オームの場合におけるインピーダンスの様子を示している。図5中のプロット点は、図1中の負荷5の第1の入力端501、aからdの場所、及び電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスを示している。aは第1の受電側コイルL21の電源側、bは第1の受電側電極21の負荷5側、cは第1の送電側電極11の電源側、dは第1の送電側コイルL11の負荷5側をそれぞれ表す。
【0037】
負荷5の第1の入力端501においては、負荷インピーダンスが100オームのため、スミスチャートの2(即ち50オームの2倍)に状態がプロットされる。第1の受電側コイルL21によりリアクタンスが生じ、図5のa点においては、図5に示すようにスミスチャート上で右上に移動する(a点)。更に、受電側コンデンサC22及び受電側の浮遊容量C21の影響で、下方に移動する(b点)。次に、第1のカップリング部Cm1の影響で右方に移動し(c点)、送電側の浮遊容量C11及び送電側コンデンサC12の影響で左下に移動し(d)、第1の送電側コイルL11のインダクタンスを調整してあることから、電源4のインピーダンスが10オームに合致するように移動する。
【0038】
即ち、電源4のインピーダンスと電源4から見た電界型無線電力伝送システムSのインピーダンスが一致して10オームである。図5に示されるように、電源4の第1の出力端401において虚部はなく、力率は1であり、最大効率が実現される。
【0039】
図6に負荷5のインピーダンスが50オームに低減した場合の影響を示す。負荷5のインピーダンスが50オームのため、スミスチャートの1の位置に負荷5の第1の入力端501のインピーダンスはプロットされる。負荷5のインピーダンスが低減されたにも関わらず電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスのプロット点は、スミスチャートの横軸線上に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じていない。図6に示されるように、電源4の第1の出力端401において、力率は1であり、最大効率が実現される。
【0040】
図7に負荷5のインピーダンスが25オームに更に低減した場合の影響を示す。負荷5のインピーダンスが25オームのため、スミスチャートの0.5の位置に負荷5の第1の入力端501におけるインピーダンスはプロットされる。負荷5のインピーダンスが低減されたにも関わらず電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスのプロット点は、スミスチャートの横軸線上に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じていない。図7に示されるように、電源4の第1の出力端401において、力率は1であり、最大効率が実現される。
【0041】
式(1)(2)(3)において、単純に等号で結んでいるが、完全に一致する必要はなく、±10%以内の差であることが好ましい。一般的に力率には0.9以上であることが求められるが、この条件が満たされる。図8から図25を用いて説明する。
【0042】
式1が再掲される。
c11+c12 = (cm1+cm2)/2 =c21+c22 (式1)
c11、c12、c21、c22、cm1、cm2の値が変動し、式1の等号が完全には成り立たない場合について検証する。c11+c12=c21+c22とし、c11+c12の値を(cm1+cm2)/2の値に比べて5%から20%変動させる。
【0043】
この変動は、式1が満たされるようにシステムが構築されている場合に、例えば、製造工程でのバラツキ、或いは、製造業者間でのバラツキ、或いは、標準条件としての逸脱許容範囲などに相当する。
【0044】
図8は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より5%大きい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図9は、図8の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図10は、図8の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0045】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図8に示すように、力率は0.9998である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図9に示すように力率は0.9865である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図10に示すように力率は0.977である。
【0046】
図11は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より5%小さい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図12は、図11の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図13は、図11の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0047】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図11に示すように、力率は0.9999である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図12に示すように力率は0.9802である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図13に示すように力率は0.9874である。
【0048】
図14は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より10%大きい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図15は、図14の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図16は、図14の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0049】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図14に示すように、力率は0.9957である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図15に示すように力率は0.9645である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図16に示すように力率は0.8925である。
【0050】
図17は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より10%小さい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図18は、図17の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図19は、図17の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0051】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図17に示すように、力率は0.9983である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図18に示すように力率は0.9223である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図19に示すように力率は0.9650である。
【0052】
図20は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より20%大きい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図21は、図20の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図22は、図20の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0053】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図20に示すように、力率は0.9127である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図21に示すように力率は0.9781である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図22に示すように力率は0.6002である。
【0054】
図23は、負荷5のインピーダンスが50オーム、電源インピーダンスが50オーム、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2より20%小さい場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図24は、図23の条件のうち負荷5のインピーダンスが25オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。図25は、図23の条件のうち負荷5のインピーダンスが100オームの場合におけるインピーダンスの様子をスミスチャートにて示す。
【0055】
負荷5のインピーダンスが50オームの場合には、図23に示すように、力率は0.9843である。負荷5のインピーダンスが25オームの場合には、図24に示すように力率は0.7704である。負荷5のインピーダンスが100オームの場合には、図25に示すように力率は0.9326である。
【0056】
一般的に力率として0.9以上が要求される。上記の例においては、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2に比して20%の差異があり、且つ、負荷5のインピーダンスが25オーム或いは100オームと変動した場合において、少なくとも、力率が0.9を切る組み合わせ条件が含まれる。このことから、c11+c12の値が(cm1+cm2)/2に比して±10%以内であることが好ましく、式1の等号は、±10%以内であることを意味していると言える。
【0057】
(比較例)
比較例を図26から図28に示す。式(1)が満たされず、容量値が30%程度等号から外れる場合について示す。
【0058】
負荷5の初期のインピーダンスは50オーム、電源のインピーダンスは50オームである。電源4のインピーダンスと電源4から見た電界型無線電力伝送システムSのインピーダンスが一致して50オームとなるように、送電側リアクタンス調整回路31及び受電側リアクタンス調整回路32は調整されてなる。
【0059】
ところで、本発明の実施の形態における図8図11図14図17図20図23に示す伝送状態においては、負荷5のインピーダンスが50オームであるにも拘らず力率は1には近いものの1ではない。最適された状態から意図的に条件が外された状態であるため、このような現象が生じる。比較例では、負荷5のインピーダンスが50オームである場合において最適化されており、力率は1であることに留意することが必要である。
【0060】
比較例において、負荷5のインピーダンスが初期の50オームから、25オーム或いは100オームに変動する場合について、インピーダンスの様子がスミスチャートにて示される。
【0061】
図26は、負荷5のインピーダンスが50オームの場合におけるインピーダンスの様子を示している。図26中のプロット点は、図1中の負荷5の第1の入力端501、aからdの場所、及び電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスを示している。aは第1の受電側コイルL21の電源側、bは第1の受電側電極21の負荷5側、cは第1の送電側電極11の電源側、dは第1の送電側コイルL11の負荷5側をそれぞれ表す。
【0062】
負荷5の第1の入力端501においては、負荷インピーダンスが50オームのため、スミスチャートの1にインピーダンスがプロットされる。第1の受電側コイルL21によりリアクタンスが生じ、図5のa点においては、図26に示すようにスミスチャート上で右下に移動する(a点)。更に、受電側コンデンサC22及び受電側の浮遊容量C21の影響で、右上に移動する(b点)。次に、第1のカップリング部Cm1の影響で上方に移動し(c点)、送電側の浮遊容量C11及び送電側コンデンサC12の影響で左上に移動し(d)、第1の送電側コイルL11のインダクタンスを調整してあることから、電源のインピーダンスである50オームに合致するように移動する。
【0063】
即ち、電源のインピーダンスと電源から見た電界型無線電力伝送システムのインピーダンスが一致して50オームである。
【0064】
図5に示したプロットと図26に示したプロットとを比べると大きな違いはない。何れの場合にも電源4の第1の出力端401でインピーダンスが一致するように、図1に示す送電側リアクタンス調整回路31及び受電側リアクタンス調整回路32を調整したからである。
【0065】
図27に負荷5のインピーダンスが25オームに低減した場合の影響を示す。負荷5のインピーダンスが25オームのため、スミスチャートの0.5の位置に負荷5のインピーダンスはプロットされる。第1の受電側コイルL21によりリアクタンスが生じ、図27のa点においては、図27に示すようにスミスチャート上で右上に移動する(a点)。更に、受電側コンデンサC22及び受電側の浮遊容量C21の影響で、右下に移動する(b点)。次に、第1のカップリング部Cm1の影響で左下方向に移動し(c点)、送電側の浮遊容量C11及び送電側コンデンサC12の影響で左下に移動し(d)、第1の送電側コイルL11の影響で、左上に移動する。
【0066】
図6とは異なり、電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスのプロット点は、スミスチャートの横軸線から大きく外れた上方に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じる。即ち、力率の悪化が生じる。力率は0.8226である。
【0067】
図28に負荷5のインピーダンスが100オームに増加した場合の影響を示す。負荷5が100オームのため、スミスチャートの2の位置に負荷5のインピーダンスはプロットされる。第1の受電側コイルL21によりリアクタンスが生じ、図28のa点においては、スミスチャート上で右上に移動する(a点)。更に、受電側コンデンサC22及び受電側の浮遊容量C21の影響で、右下に移動する(b点)。次に、第1のカップリング部Cm1の影響で右下方向に移動し(c点)、送電側の浮遊容量C11及び送電側コンデンサC12の影響で左下に移動し(d)、第1の送電側コイルL11の影響で、左方向に移動する。
【0068】
図7とは異なり、電源4の第1の出力端401におけるインピーダンスのプロット点は、スミスチャートの横軸線から大きく外れた下方に位置する。即ち、電源4の第1の出力端401において、リアクタンス或いは虚部が生じる。即ち、力率の悪化が生じる。力率は0.8226である。
【0069】
図26図27及び図28の結果をまとめる。負荷インピーダンス5が50オームの場合に対して、第1の出力のインピーダンスが50オームとなるように、即ち力率が1となるように、第1の送電側コイルL11、第2の送電側コイルL12等を調整してなる。しかしながら、この調整にもかかわらず、負荷インピーダンス5が25オームと減った場合にも100オームと増えた場合にも力率は0.9を切り、伝送効率の低下は問題となるレベルである。
【0070】
以上説明したように、電界型無線電力伝送システムが式(1)を満たしてなることにより、負荷インピーダンスの変動に対して、力率の悪化が抑えられる。そして、これにより、負荷5のインピーダンスが変動した場合にあっても、高い伝送効率が維持される。
【0071】
送電側の浮遊容量C11及び受電側の浮遊容量C21は系によっては第1のカップリング部Cm1或いは第2のカップリング部Cm2に比して1/10以下のように小さい場合がある。このような場合には、式(1)において、送電側の浮遊容量C11の容量値c11及び受電側の浮遊容量C21の容量値c21を無視することが出来る。
【0072】
以上説明した実施形態にかかる電界型無線電力伝送結合器によれば以下のような効果を奏する。
【0073】
電界型無線電力伝送結合器3は、第1の送電側伝送線101、第2の送電側伝送線102、第1の受電側伝送線201及び第2の受電側伝送線202と、第1の送電側伝送線101と第2の送電側伝送線102とを結ぶ送電側コンデンサC12と、第1の受電側伝送線201と第2の受電側伝送線202とを結ぶ受電側コンデンサC22と、第1の送電側電極11、第2の送電側電極12、第1の受電側電極21及び第2の受電側電極22を有し、第1の送電側電極11と第2の送電側電極12との間に電界の形成に伴う送電側の浮遊容量C11を形成するとともに、第1の受電側電極21と第2の受電側電極22との間に電界の形成に伴う受電側の浮遊容量C21を形成し、第1の送電側電極11と第1の受電側電極21とで容量を形成する第1のカップリング部Cm1を有し、第2の送電側電極12と第2の受電側電極22とで容量を形成する第2のカップリング部Cm2を有するカプラ3と、を備え、第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値とに基づいて算出される第1のカップリング部Cm1と第2のカップリング部Cm2の大きさを示す代表値と、送電側コンデンサC12の容量値と送電側の浮遊容量C11の容量値との和と、受電側コンデンサC22の容量値と受電側の浮遊容量C21の容量値との和と、の内の何れか1つを基準値として、他の2つの値と基準値との差が基準値の10%以内に収まるように構成される。
【0074】
負荷5のインピーダンスが変動した場合にあっても、高い伝送効率が維持される。
【0075】
電界型無線電力伝送結合器3にあって、第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値とに基づいて算出される代表値と、送電側コンデンサC12の容量値と送電側の浮遊容量C11の容量値との和と、受電側コンデンサC22の容量値と受電側の浮遊容量C21の容量値との和と、が等しいように構成される。
【0076】
負荷5のインピーダンスが変動した場合にあっても、伝送効率の低下がより確実に抑えられる。
【0077】
電界型無線電力伝送結合器3にあって、第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値とに基づいて算出される代表値は、第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値との平均値である。
【0078】
第1のカップリング部Cm1を構成する第1の送電側電極11と第1の受電側電極との間の距離、及び、第2のカップリング部Cm2を構成する第2の送電側電極12と第2の受電側電極22との間の距離が変動する場合において、伝送効率の低下が抑えられる。
【0079】
電界型無線電力伝送結合器3にあって、 第1のカップリング部Cm1の容量値と第2のカップリング部Cm2の容量値とが等しい。
【0080】
第1のカップリング部Cm1と第2のカップリング部Cm2とが同一の構造体により構成される。部品の共通化を図ることが出来る。電界型無線電力伝送結合器3の構成が対称となるため、インピーダンスの整合を取りやすくなる。
【0081】
電界型無線電力伝送システムSが上記の電界型無線電力伝送結合器3を具備してなる。
【0082】
負荷5のインピーダンスが変動した場合にあっても、高い伝送効率が維持される。
【0083】
本開示は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。即ち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0084】
1 無線送電装置、2 無線受電装置、3 電界型無線電力伝送結合器、4 電源、5 負荷、11 第1の送電側電極、12 第2の送電側電極、21 第1の受電側電極、22 第2の受電側電極、101 第1の送電側伝送線、102 第2の送電側伝送線、201 第1の受電側伝送線、202 第2の受電側伝送線、C11 送電側の浮遊容量、300 カプラ、C12 送電側コンデンサ、C21 受電側の浮遊容量、C22 受電側コンデンサ、Cm1 第1のカップリング部、Cm2 第2のカップリング部、S 電界型無線電力伝送システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28