(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172519
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】乳様香味付与組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20221110BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221110BHJP
A23C 9/156 20060101ALN20221110BHJP
A23C 19/09 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
A23L27/20 D
A61K47/12
A23C9/156
A23C19/09
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078323
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B047
4C076
【Fターム(参考)】
4B001AC06
4B001AC43
4B001EC01
4B047LF02
4B047LF03
4B047LF04
4B047LF05
4B047LF06
4B047LF07
4B047LF08
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG08
4C076AA11
4C076BB01
4C076DD43T
4C076FF52
(57)【要約】
【課題】乳様香味を付与可能な乳様香味付与組成物を提供する。
【解決手段】3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物を提供する。好ましくは、3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体比が(R)体:(S)体=40:60~100:0である。好ましくは、乳様香味は乳のコク感である。さらには、当該乳様香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加することを含む、香味付与組成物の乳様香味付与方法、当該乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、消費財の乳様香味付与方法、および当該乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、乳様香味の付与された消費財の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物。
【請求項2】
前記3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体((R)体および(S)体)の比(R):(S)が20:80~100:0である、請求項1に記載の乳様香味付与組成物。
【請求項3】
乳様香味が乳のコク感である、請求項1または2に記載の乳様香味付与組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乳様香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加することを含む、香味付与組成物の乳様香味付与方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、消費財の乳様香味付与方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、乳様香味の付与された消費財の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳様香味を付与可能な組成物に関し、より詳しくは、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、乳様香味付与に用いるための化合物が複数提案されている。例えば、特許文献1には、メチル2-メチル-3-フリルジスルフィド、ビス(2-メチル-3-フリル)ジスルフィド、メチルフルフリルジスルフィド及びジフルフリルジスルフィドからなる群より選ばれた1種又は2種以上のジスルフィド化合物を含有する香料組成物によって、乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、又は乳製品代用品のナチュラル感、フレッシュ感、ふくよかな乳感を付与増強できることが記載され、特許文献2には、12-メチルトリデカナールをバター、チーズ、牛乳などの乳製品等に1ppt~100ppmの濃度で含有させることによって、乳脂肪感、ボディ感、コク味などが増強できることが記載され、特許文献3には、(E)-6-ノネナールを有効成分とする乳風味付与乃至乳風味改善剤を0.05ppt~2ppbの濃度で乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、又は乳製品代用品を含有させることによって、乳特有の濃厚なコクや乳脂肪感を付与乃至改善できることが記載されている。
【0003】
乳の成分は大きく分けて水分、乳脂肪分、無脂乳固形分(タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラルを含む)で構成され、乳脂肪分および無脂乳固形分はどちらも乳様香味に重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、上述したような従来の化合物は、乳様香味に重要な要素である、無脂乳固形分を多く含む脱脂乳の香味のような、濃厚でコクのある香味の付与効果は不十分であって、従来の乳様香味付与素材を用いても、乳様香味全体としてコク感などが不十分に感じられる場合があり、乳様香味の付与に関し、より優れた素材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-92890号公報
【特許文献2】特開2010-158210号公報
【特許文献3】特開2017-18025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財に添加した際に、その消費財に乳様香味を付与できる香味付与組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、3-ヒドロキシヘキサン酸が乳様香味付与に有効なことを見出した。
【0007】
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1] 3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物。
[2] 前記3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体((R)体および(S)体)の比((R):(S))が20:80~100:0である、[1]に記載の乳様香味付与組成物。
[3] 乳様香味が乳のコク感である、[1]または[2]に記載の乳様香味付与組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の乳様香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加することを含む、香味付与組成物の乳様香味付与方法。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、消費財の乳様香味付与方法。
[6] [1]~[3]のいずれかに記載の乳様香味付与組成物を消費財に添加することを含む、乳様香味の付与された消費財の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、乳様香味の付与に有効な組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、具体例を挙げつつさらに詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、濃度(ppt、ppb、ppmなど)および%は特に断りのない限りそれぞれ質量濃度および質量%を表すものとする。
(乳様香味付与組成物)
本発明の一形態に係る乳様香味付与組成物(以下、本発明の乳様香味付与組成物ということもある)は、下記式(1)で表される3-ヒドロキシヘキサン酸を有効成分として含有することを特徴とし、飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財に添加することで、その消費財に乳様香味を付与することができる。
【0010】
【0011】
3-ヒドロキシヘキサン酸(3-hydroxyhexanoic acid)は、数十年前にマンゴー、パパイヤの分析(Z.Lebensm.Unters.Forsch.180(1985),394-397)、豚の脂の分析(Agric.Biol.Chem.33(1969),1411-1418)、イチゴの分析(J.Agric.Food Chem.23(1975),482-484)において同定された各種成分のひとつとして、また、遠心処理した乳の上清および/または乳脂画分から同定された炭素数6~10、12、14および16の各種ヒドロキシ酸のうち、上清から同定されたもののひとつとして報告されている(J.Dairy Sci.(1977),60(5),718-20)ほか、ポリマーの材料としての利用が知られている(例えば、特開2019-19071号公報および国際公開第2014/133088号)ものの、乳様香味付与に有効であるということは全く報告されてこなかった化合物である。この化合物を各種消費財に適量添加することで優れた乳様香味付与効果を発揮できることは全く予想外のことであった。
【0012】
3-ヒドロキシヘキサン酸において、光学異性体は(R)体のみ、(S)体のみ、これらの混合物のいずれであってもよく、好ましくは(R)体のみまたは(R)体と(S)体との混合物であり、より好ましくは(R)体と(S)体との混合物である。本明細書において、単に「3-ヒドロキシヘキサン酸」というときは、特に断りのない限りは、(R)体のみ、(S)体のみ、およびこれらの任意の比率の混合物を総称したものを意味する。
【0013】
3-ヒドロキシヘキサン酸は、(R)体、(S)体ともにそれ自体はクミン様のスパイシーでややフルーティーな香りを有するが、(S)体は、(R)体よりもややクミン様、汗様の香りが強く感じられるという相違があるため、所望の賦香効果に応じて、(R)体と(S)体との比率を調整することができる。
【0014】
3-ヒドロキシヘキサン酸の(R)体と(S)体との混合物において、(R)体と(S)体の比((R):(S))は任意であり、(R):(S)が10:90(換言すれば(R)体が10%、(S)体が90%)、20:80((R)体20%、(S)体80%)、40:60((R)体40%、(S)体60%)、50:50((R)体50%、(S)体50%、すなわちラセミ体)、60:40((R)60%、(S)体40%)、70:30((R)70%、(S)体30%)、80:20((R)80%、(S)体20%)、90:10((R)体90%、(S)体10%)の態様が例示できる。乳様香味の質の観点からは、上述の(S)体のやや強いクミン様、汗様の香りが過度に強調されないよう、好ましくは、(R):(S)=20:80~100:0(換言すれば前記混合物中(R)体が20%以上100%以下)の範囲内、より好ましくは(R):(S)=40:60~100:0(換言すれば(R)体が40%以上100%以下)の範囲内であり、好ましい比率の具体例としては、(R):(S)=40:60、50:50(ラセミ体ともいう)、60:40、70:30、80:20、90:10、または100:0が挙げられる。
【0015】
3-ヒドロキシヘキサン酸の(R)体、(S)体、およびそれらの混合物の入手方法は特に限定されず、市販品を購入して得ても、以下に挙げる文献を参考にして合成して得てもよい。(R)体および/または(S)体の合成は、特許公報第3704731号、J.Org.Chem.,52,2201-2206(1987)、Enzyme Microb.Technol.,13(8),655-660(1991)、J.Org.Chem.,59(23),6882-4(1994)、Helvetica Chimica Acta,69(7),1699-703(1986)、J.Am.Chem.Soc.,103(8),2127-2129(1981)、国際公開第2008/113190号、特許第3579352号などを参照して実施できるが、これらの文献に限定されず、任意の方法で合成することができる。
【0016】
本明細書において、乳様香味とは、牛乳、ヤギ乳など各種動物性乳(以降、単に乳と呼ぶことがある)、またはそれを用いて製造された各種乳製品を想起させる香味をいう。乳製品の例として、成分調整乳、加工乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、乳飲料、発酵乳(ヨーグルト等)、バター、チーズ、クリーム、アイスクリーム、練乳、粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダーが挙げられ、好ましくは脱脂乳または脱脂濃縮乳であるが、これらに限定されない。本発明の一形態において、乳様香味は、好ましくは生乳感、乳脂感、乳のコク感、乳のボリューム感、乳のうま味感の1以上を含み、より好ましくは少なくとも乳のコク感を含む。本明細書において、生乳感とは、無加工の自然な乳のような感覚を意味し;乳のコク感とは、乳または乳製品を喫食した際に感じられる乳独特のまろやかで舌に残る厚みのある感覚であって、好ましくは、無脂乳固形分由来のコク感(例えば、無脂乳固形分を多く含む脱脂乳または脱脂濃縮乳様のコクのある香味)を感じさせることを含む感覚を意味し;乳のボリューム感とは、乳様香味が全体的に強くなり香味の余韻が豊かに続くような感覚を意味し;乳のうま味感とは、基本五味の一種としてのうま味であって、生乳の他、特に発酵乳で強く感じられるようなうま味感を意味する。3-ヒドロキシヘキサン酸を含有する乳様香味付与組成物を消費財に添加することで、その消費財に乳様香味を付与、好ましくは生乳感、乳脂感、乳のコク感、乳のボリューム感、乳のうま味感の1以上を含む乳様香味を付与でき、それによってその消費財の乳様香味全体を、より自然で満足感があり香味の余韻が豊かな乳様香味とすることができる。喫食しない消費財(香料組成物や香粧品など、味でなく香気を知覚するもの)については、乳様香気を付与、特に好ましくは乳のボリューム感を含む乳様香気を有効に付与でき、それによってその消費財の乳様香気全体を、より自然で満足感があり香気の余韻が豊かな乳様香気とすることができる。消費財の例として、飲食品、香粧品、医薬衛生品、他の香味付与組成物が挙げられ、好ましい例として、乳様香味を有する飲食品、香粧品、保健衛生品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において、香味とは、香りによって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。本明細書において、用語「香味を付与」とは、前記香味を新たに加える、または増強することを含む。また、「香味の付与」の結果、香味が改善されてもよい。さらには、香味の付与の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、炭酸感や辛さなどの刺激感、などを増強、抑制、または改善するものであってもよい。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。本明細書において、添加とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0018】
本発明の乳様香味付与組成物は、消費財への添加によってその消費財に乳様香味を付与できるものであればよく、乳様香味付与組成物自体の香味は、乳様香味を感じさせるものであっても、乳様香味とは別の香味を感じさせるものであってもよい。
【0019】
本発明の乳様香味付与組成物の例として、飲食品、香粧品、保健衛生品、他の香味付与組成物など各種消費財に香味を付与できる組成物(代表例として香料組成物が挙げられる);各種消費財に香味を付与できる各種エキス;各種飲食品に香味を付与できるその他食品添加物;各種香粧品や医薬衛生品に香味を付与できる添加物;などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の乳様香味付与組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、3-ヒドロキシヘキサン酸の他にも、乳様香味付与の他の有効成分、他の香味付与の有効成分、溶剤や抗酸化剤などの任意の成分を含んでよいが、実質的に3-ヒドロキシヘキサン酸のみからなるものであってもよい。本発明の乳様香味付与組成物が3-ヒドロキシヘキサン酸以外の成分も含む場合、本発明の乳様香味付与組成物中の3-ヒドロキシヘキサン酸((R)体、(S)体、またはこれらの任意の割合の混合物)の濃度は、乳様香味付与組成物の香気特性や添加対象に応じて任意に決定できる。なお、本明細書において、濃度とは特に断りのない限り最終濃度とする。
【0021】
本発明の乳様香味付与組成物が3-ヒドロキシヘキサン酸およびその溶媒(具体例は後述する)以外の成分を実質的に含まない場合は、本発明の乳様香味付与組成物中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度は、0.1%~99.9%の範囲内が例示できる。好ましい例として1%~99.9%、10%~99.9%、20%~99.9%、50%~99.9%、70%~99.9%、80%~99.9%、90%~99.9%、95%~99.9%、および99%~99.9%の範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
当該濃度の例として、特に、本発明の乳様香味付与組成物が、3-ヒドロキシヘキサン酸以外の香味付与有効成分を含む場合は、本発明の乳様香味付与組成物中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度は、0.1ppt~0.1%、好ましくは10ppt~0.1%、より好ましくは0.1ppb~100ppmの範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppt、1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppmのいずれかとし、上限値を0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10ppt、1pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。特に、本発明の乳様香味付与組成物が乳様香味を有する場合は、これらの濃度範囲とすることが好ましい。本発明の乳様香味付与組成物中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度が0.1ppt以上であれば当該化合物の添加効果が感じられ、0.1%以下であれば当該化合物由来の香りが突出し過ぎることなく当該乳様香味付与組成物に乳様香味を付与できるが、乳様香味付与組成物の処方や香味特性などによっては、前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度を採用してもよい。
【0023】
また、本発明の乳様香味付与組成物において、3-ヒドロキシヘキサン酸のほかに含有し得る他の任意の化合物または成分の例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、香料化合物などを挙げることができる。
【0024】
香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0025】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの飽和または不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、テルピネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0026】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの飽和または不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0027】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトインなどの飽和または不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0028】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0029】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、3-メチル酪酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプロン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルペニルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、酪酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0030】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの飽和または不飽和ラクトンが挙げられる。
【0031】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、イソバレル酸、カプロン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和または不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0032】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0033】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、およびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0034】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0035】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0036】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、グレープフルーツ、ライム、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0037】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0038】
特に乳様香味付与のために好ましく併用できる化合物等の例としては、γ-カプロラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、7-デセン-4-オリド、3-メチル-4-デセン-4-オリド、3-メチル-5-デセン-4-オリド、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、γ-トリデカラクトン、γ-テトラデカラクトン、δ-カプロラクトン、2-ヘキセン-5-オリド、2-ヘプテン-5-オリド、δ-オクタラクトン、2-オクテン-5-オリド、4-メチル-5-オクタノリド、δ-ノナラクトン、2-ノネン-5-オリド、4-メチル-5-ノナノリド、δ-デカラクトン、2-デセン-5-オリド、4-メチル-5-デカノリド、δ-ウンデカラクトン、2-ウンデセン-5-オリド、4-メチル-5-ウンデカノリド、δ-ドデカラクトン、2-ドデセン-5-オリド、4-メチル-5-ドデカノリド、δ-トリデカラクトン、2-トリデセン-5-オリド、4-メチル-5-トリデカノリド、δ-テトラデカラクトン、2-テトラデセン-5-オリド、2-ペンタデセン-5-オリド、2-ヘキサデセン-5-オリド、2-ヘプタデセン-5-オリド、2-オクタデセン-5-オリド、2-ノナデセン-5-オリド、2-エイコセン-5-オリド、ε-デカラクトン、ソトロンなどのラクトン類;プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、トランス-2-ヘキセン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、5-ヒドロキシノナン酸、カプリン酸、2-デセン酸、4-デセン酸、5-デセン酸、6-デセン酸、9-デセン酸、5-ヒドロキシデセン酸、5-ヒドロキシウンデカン酸、ラウリン酸、5-ヒドロキシドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、イソペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸などの酸類;アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、2-ブテナール、ヘキサナール、オクタナール、4-ヘプテナール、2,4-オクタジエナール、ノナナール、2-ノネナール、2,4-ノナジエナール、2,6-ノナジエナール、デカナール、2,4-デカジエナール、ウンデカナール、2,4-ウンデカジエナール、ドデカナール、ベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フルフラールなどのアルデヒド類;蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、酢酸デシル、酢酸ドデシル、酢酸フェネチル、乳酸エチル、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、3-エチル酪酸エチル、吉草酸メチル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、カプリル酸エチル、カプリル酸イソアミル、カプリル酸ヘプチル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、ウンデカン酸エチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、サリチル酸メチル、コハク酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、5-ヒドロキシヘキサン酸エチル、5-ヒドロキシデカン酸エチル、5-ヒドロキシウンデカン酸エチル、5-ヒドロキシデカン酸プロピル、5-ヒドロキシデカン酸イソプロピル、5-ヒドロキシオクタン酸2-メチルプロピル、5-ヒドロキシ-9-メチルデカン酸エチルなどのエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類;2-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、1-オクテン-3-オン、2-ノナノン、3-ノナノン、8-ノネン-2-オン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン、アセトイン、5-ヒドロキシ-4-オクタノン、ジアセチル、2,3-ペンタジオン、2,3-ヘキサジオン、2,3-ヘプタジオン、アセチルイソバレリル、p-メトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、フラネオール、マルトールなどのケトン類;フェニルエチルアンスラニレート、トリメチルアミン、インドール、スカトール、ピリジン、イソキノリン、ピラジン、メチルピラジンなどの含窒素化合物類;メチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、2,4-ジチアペンタン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、2,4-ジチアペンタン、ジメチルトリスルフィド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルスルフォン、メタンチオール、メチルスルフォニルメタン、メチルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、2-メチル-3-ブタンチオール、メチオナール、チオ酢酸エチル、チオ酪酸メチル、3-ブテニルイソチオシアネート、2-メチルチオフェン、ベンゾチアゾール、スルフロール、アセチル乳酸チオメチルエステル、プロピオニル乳酸チオメチルエステル、ブチリル乳酸チオメチルエステル、バレリル乳酸チオメチルエステル、2-メチルブチリル乳酸チオメチルエステル、デシリル乳酸チオメチルエステル、アセチル乳酸チオエチルエステル、プロピオニル乳酸チオエチルエステル、ブチリル乳酸チオエチルエステル、バレリル乳酸チオエチルエステル、イソカプロイル乳酸チオプロピルエステルなどの含硫化合物類;など公知の香料化合物が挙げられ、特に、上述したケトン類、ラクトン類、酸類が好ましく、さらには、フラネオール、マルトール、ソトロン、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、酪酸、カプリン酸、δ-デカラクトンが好ましく併用できる。
【0039】
香料化合物の他にも、乳脂のリパーゼ分解物;乳タンパク質のプロテアーゼ分解物;乳、濃縮乳、粉乳、ミルクホエイ、バター、チーズ、ヨーグルトもしくはこれらの混合物からの乳または乳加工品の分画物;などを挙げることができる。
【0040】
本発明の乳様香味付与組成物は、3-ヒドロキシヘキサン酸を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に添加して調製することができる。本発明の乳様香味付与組成物の形態としては、3-ヒドロキシヘキサン酸やその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂、ペーストなど)などが好ましい。
【0041】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0042】
また、乳化製剤とするためには、3-ヒドロキシヘキサン酸を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。3-ヒドロキシヘキサン酸の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、3-ヒドロキシヘキサン酸1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0043】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0044】
本発明の乳様香味付与組成物はさらに、必要に応じて、上述した香味付与組成物、例えば香料において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
(各種消費財への乳様香味付与方法)
本発明の乳様香味付与組成物は、任意の各種消費財に添加して、添加対象の消費財に乳様香味を付与するために使用することができる。各種消費財への乳様香味付与によって、乳様香味の付与された消費財が製造される。そのため、本発明において、各種消費財への乳様香味付与方法とは、乳様香味の付与された消費財の製造方法ともいえる。本発明の乳様香味付与組成物の添加対象である各種消費財は、ある消費財の製造に用いる材料品であっても、ある消費財の製造途中の仕掛品であっても、消費者がそのまま用い得るものであってもよい。例として、飲食品、香粧品、保健衛生品、他の香味付与組成物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財に本発明の乳様香味付与組成物を添加することで、香味の付与された消費財が製造できる。また、本発明の乳様香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加してさらに香味を付与することで、乳様香味の付与された新たな香味付与組成物を製造してもよく、この新たな香味付与組成物も、本発明の乳様香味付与組成物として各種消費財の製造に用いることができる。例えば、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物は、それ自体を飲食品、香粧品、医薬衛生品などの各種消費財、または他の香味付与組成物などの各種消費財に添加してもよいし、1種または2種以上の水溶性香料、乳化香料、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上と併せて各種消費財に添加してもよい。
【0045】
本発明の乳様香味組成物を添加可能な消費財の好ましい例として、乳様香味を有する飲食品、香粧品、保健衛生品が挙げられる。乳様香味とは、上述した通りである。
【0046】
また、本発明の乳様香味付与組成物の添加対象の消費財は、乳様香味に加え別の任意の香味をさらに有していてもよい。乳様香味とは別の香味の具体的な例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味(前述の柑橘を除く);バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類、などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。
【0047】
より具体的には、柑橘を含む各種フルーツ風味を有する乳飲料や菓子用クリーム;バニラ風味を有する乳風味の冷菓(バニラアイスクリームなど);コーヒー風味を有するミルクコーヒー飲料;カカオ風味を有するココア飲料;紅茶や抹茶などの各種茶風味を有するミルクティー;各種ミント風味を有するミントミルク飲料;シナモン、ショウガなどスパイス風味を有する乳飲料;ナッツ風味を有する乳飲料;各種野菜、各種畜肉、または各種魚介や海藻風味を有するクリームまたはペースト;などが例示できるが、これらに限定されず、乳様香味と組み合わせ得る任意の香味であってよい。
【0048】
飲食品の例としては、乳様香味を含む風味を有しうる飲食品が好ましく、例えば、乳様香味を主に感じさせ得る飲食品としては、乳飲料(牛乳、低脂肪乳など)、チーズ、ヨーグルト、バター、デイリースプレッド、マーガリン、ショートニング、ナッツミルク(アーモンドミルクなど)、豆乳などの乳製品または乳製品代用品;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスなどの乳を主に用いた菓子などが例示でき、乳様香味を含む風味を感じさせ得る飲食品としては、氷菓、ゼリー、カステラ、飴玉、錠菓、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類、などの菓子類;シチューの素、スープの素などの加工飲食物類;各種酵母(ビール酵母、パン酵母など)、乳酸菌などの各種微生物による発酵品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、コーラ飲料、炭酸飲料(柑橘香味など各種香味のサイダーなど)などの嗜好飲料品;コーラ飲料、果汁飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料などの機能性飲料;各種酒類(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)風味のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などのその他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含むアルコール飲料類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物の果汁飲料や果汁入り清涼飲料、果物の果肉飲料や果粒入り果実飲料;が挙げられる。
【0049】
その他にも、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、ハンバーグ、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰などの畜肉を用いた加工飲食物類;マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;生薬やハーブを含む飲料;などを挙げることができる。
【0050】
本発明の乳様香味付与組成物を添加可能な香粧品または医薬衛生品は特に限定されないが、例として、オーデコロン、オードトワレ、オードパルファム、パルファムなどの香水類;シャンプー、リンス、整髪料(ヘアクリーム、ポマードなど)などのヘアケア製品;ファンデーション、口紅、リップクリーム、リップグロス、化粧水、化粧用乳液、化粧用クリーム、化粧用ゲル、美容液、パック剤などの化粧品類;制汗スプレー、デオドラントシート、デオドラントクリーム、デオドラントスティックなどのデオドラント製品;無機塩類系、清涼系、炭酸ガス系、スキンケア系、酵素系、生薬系などの入浴剤;サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品類;フェイス用石鹸や洗顔クリームなどの洗顔料、ボディ用石鹸やボディソープ、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤、柔軟剤、台所用洗剤、清掃用洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内や車内などの芳香消臭剤、ルームフレグランスなどの芳香製品;などを挙げることができる。使用可能な香調も特に限定されず、3-ヒドロキシヘキサン酸またはそれを含有する香味付与組成物によって香味を改善可能な任意の香調であってよいが、例えば、乳を想起させる香調や、キャラメルなどの乳を用いた菓子を想起させる香りを含む香調に好適に使用することができる。
【0051】
本発明において、本発明の乳様香味付与組成物を添加した飲食品、香粧品、医薬衛生品などの各種消費財、他の香味付与組成物などの各種消費財中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度は、消費財の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
【0052】
消費財中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度の例として、他の香味付与組成物に本発明の乳様香味付与組成物を添加する場合であれば、上記「乳様香味付与組成物」の項で記載した濃度を採用できる。
【0053】
消費財中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度の例として、飲食品に本発明の乳様香味付与組成物を添加する場合であれば、飲食品の全体質量に対して、3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度として1ppt~10ppmの範囲内の濃度、より好ましくは1ppb~1ppmの範囲内の濃度が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれか、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。上記した濃度範囲以外の好ましい濃度範囲の例として、飲食品の全体質量に対して、3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度として10ppt~10ppb、10ppt~100ppb、100ppt~10ppb、100ppt~100ppb、1ppb~10ppb、1ppb~100ppb、100ppt~1ppmから、飲食品の風味特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、飲食品の種類や風味にも依存するが、飲食品中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度が1ppt以上では乳様香味付与効果が感じられ、10ppm以下では、3-ヒドロキシヘキサン酸そのものの香気が突出することなく添加対象の飲食品に乳様香味を付与できるが、添加対象の飲食品の香味などによっては、前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で添加してもよい。
【0054】
消費財中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度の例として、香粧品に本発明の乳様香味付与組成物を添加する場合であれば、香粧品の全体質量に対して、3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度として1ppt~1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を1ppt、10ppt、100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%のいずれか、上限値を1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppb、100ppt、10pptのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい濃度の例として、香粧品の全体質量に対して、3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度として、100ppb~100ppm、1ppm~100ppm、1ppm~0.1%、10ppm~0.1%の各範囲から、香粧品の香気特性に応じて選択することができるが、これらに限定されない。なお、香粧品の種類や香気にも依存するが、香粧品中の3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度が1ppt以上では、乳様香気付与効果が感じられる場合があり、1%以下では、3-ヒドロキシヘキサン酸そのものの香気が突出することなく添加対象の香粧品に乳様香気を付与できるが、添加対象の香粧品の香気などによっては、前記下限を下回る濃度または前記上限を上回る濃度で添加してもよい。
【0055】
本発明の乳様香味付与組成物を飲食品、香粧品、保健衛生品などの消費財に有効量添加することで、乳様香味を付与でき、好ましくは、本発明の乳様香味付与組成物を添加した消費財の乳様香味を改善し、嗜好性を向上することが出来る。本発明の乳様香味付与組成物によって、例えば、乳様香味のトップの香味立ち、ミドルおよびラストの香味におけるコクおよび/または香味の余韻を増強することができる。特に、ミドルおよびラストの香味におけるコクおよび香味の余韻を増強することができる。
【0056】
さらに、本発明の乳様香味付与組成物は、乳様香味付与の結果、タンパク質高含有飲食品に特有に感じられる苦み、渋み、えぐみ(これらを総称して収斂味ともいう)、タンパク臭などの異味異臭をマスキングすることにも使用できる。すなわち、本発明の香味付与組成物は、収斂味やタンパク臭などが突出し異味異臭として感じられることが問題となり得るタンパク質高含有飲食品に添加して、その飲食品の香味にコクおよび/または味の厚みなどを付与することにより、突出した異味異臭や不快味をマスキングするために使用できる。このような飲食品の具体例として、乳または乳製品を含み得る、プロテイン飲料、濃厚流動食、高栄養飲料などの各種高栄養食品、植物性タンパク質を用いた代替肉(植物肉などとも称する)などが挙げられるが、これらに限定されない。当該マスキング効果を得るために飲食品に対する3-ヒドロキシヘキサン酸の濃度を調整することができる。例えば、前述の濃度範囲1ppt~1ppmにおいて、若干高い濃度でタンパク質高飲食品に添加することで、特に乳様のコクを十分に付与でき、マスキング効果を十分に得ることができる。マスキング効果が得られやすい濃度範囲の例として、下限値を0.01ppb、0.1ppb、1ppb、10ppb、20ppb、50ppb、100ppb、200ppb、500ppbのいずれか、上限値を1ppm、500ppb、200ppb、100ppb、50ppb、20ppb、10ppb、1ppb、0.1ppbのいずれかとして、これらの任意の組合せによる濃度範囲でよく、具体的には、0.1ppb~100ppbまたは1ppb~200ppbが例示できるが、これらに限定されず、所望のマスキング効果の程度や添加対象の飲食品の香味特性に応じて決定してよい。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]香味付与組成物への添加例
(実施例1-1) 乳様香味付与組成物への添加効果
下記表1に示す一般的な処方により、乳様の香りを呈する基本乳様調合香料組成物を調製した。
【0059】
【0060】
一方で、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の10%エタノール溶液を調製し、本発明の乳様香味付与組成物(本発明品1-1)とした。さらに、比較品として、3-ヒドロキシヘキサン酸から感じられる香りであるクミンの主要香気成分であるクミンアルデヒドの10%エタノール溶液を調製して比較品1-1の香味付与組成物とし、牛乳の香気成分のひとつであるヘキサン酸の10%エタノール溶液を調製して比較品1-2の香味付与組成物とした。
【0061】
そして、上記基本乳様調合香料組成物に対し、下記表2に示すように3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の量をさまざまに変えて添加し、本発明の乳様香味付与組成物の一態様としての乳様香料組成物(本発明品1-2~1-7)を調製した。併せて、比較品1-1を下記表2で示すクミンアルデヒド濃度となるように基本乳様調合香料組成物に添加して比較品1-3の香料組成物を調製し、比較品1-2を下記表2に示すヘキサン酸濃度となるように基本乳様調合香料組成物に添加して比較品1-4の香料組成物を調製した。
【0062】
そして、本発明品および比較品それぞれの香料組成物について官能評価を行った。官能評価では、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名に、基本乳様調合香料組成物を対照品とした場合の本発明品および比較品の香料組成物の香気の天然感について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品と比べた香味について感じられた感覚を自由にコメントさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表2に示す。
(基準)対照品と比べた天然感について(天然感とは、乳そのものを思わせる自然な香りを意味する)
4点:非常に強い向上効果が感じられた
3点:強い向上効果が感じられた
2点:向上効果が感じられた
1点:やや向上効果が感じられた
0点:向上効果が感じられなかった
【0063】
【0064】
表2に示すように、3-ヒドロキシヘキサン酸の10%エタノール溶液である本発明の乳様香味付与組成物(本発明品1-1)を基本乳様調合香料組成物(対照品)に添加して得た3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物(本発明品1-2~1-7)は、対照品に比べ乳様香気の全体のボリューム感が増強されており、本発明の乳様香味付与組成物を他の香味付与組成物に添加することで、他の香味付与組成物に乳様香味を付与できることが確認された。3-ヒドロキシヘキサン酸の効果は、3-ヒドロキシヘキサン酸と類似の香りを呈するクミンアルデヒドや、3-ヒドロキシヘキサン酸と同様に乳中に存在するヘキサン酸からは得られない効果を含み、特に乳様香気のボリューム感、濃厚さ、および乳様香気全体の自然さにおいて優れたものであった。
【0065】
(実施例1-2)光学異性体比の検討
次に、実施例1-1で乳様香味付与効果が特に優れる乳様香味付与組成物中の濃度のひとつと評価された100ppmにおいて、3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体比(R):(S)を下記表3に示すように様々に変えて前記基本乳様調合香料組成物(対照品)に添加し、本発明の乳様香味付与組成物の一態様として乳様香料組成物(本発明品1-8~1-13)を得て、各異性体比における香味付与効果を官能評価によって確認した。官能評価では、実施例1-1と同様にして、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名に、本発明の乳様香料組成物について、対照品と比べた香気の天然感について下記基準で点数付けさせるとともに、香気について感じられた感覚を自由にコメントさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表3に示す。
(基準)対照品と比べた天然感について(天然感とは、乳そのものを思わせる自然な香りを意味する)
4点:非常に強い向上効果が感じられた
3点:強い向上効果が感じられた
2点:向上効果が感じられた
1点:やや向上効果が感じられた
0点:向上効果が感じられなかった
【0066】
【0067】
表3に示すように、いずれの光学異性体比(R):(S)でも乳様香味付与効果があるが、(R)体の割合が高いほど天然感に優れており、(R)体が20%以上において天然感が明らかに対照品より優れ、特に(R)体が40%以上において優れていることが確認された。
【0068】
[実施例2]乳製品への添加例(1)
(実施例2-1)脱脂濃縮乳への添加効果
市販の脱脂濃縮乳を用意し、水で3倍に希釈した。一方で、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の99%エタノール溶液を調製し、本発明品の乳様香味付与組成物とした(本発明品2-1)。そして、市販の脱脂濃縮乳希釈品に、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)が下記表4に記載の濃度になるように本発明品2-1の乳様香味付与組成物を添加して、本発明の乳製品を調製した(本発明品2-2~2-8)。また、ヘキサン酸の99%エタノール溶液を用意して比較品の香味付与組成物(比較品2-1)とした。そして、本発明品および比較品の乳製品について、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名により、官能評価を行った。官能評価では、パネリスト10名に下記の基準で点数付けを行わせるとともに、市販の脱脂濃縮乳希釈品を対照品として、対照品より強く感じられた香味を自由に挙げさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表3に示す。
(基準)対照品に比べたコク感付与、乳様香味の余韻増強、および嗜好性向上の各効果について(嗜好性とは、おいしいと感じ、次回もまた喫食したいと思わせる感覚を意味する)
4点:非常に強い効果が感じられた
3点:強い効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:やや効果が感じられた
0点:効果が感じられなかった
【0069】
【0070】
表4に示すように、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物(本発明品2-1)を乳製品(脱脂濃縮乳希釈品)に添加することで、当該乳製品に乳様香味を付与することができ、その香味の乳のコク感、乳様香味の余韻、嗜好性を向上できることが確認された。少なくとも飲食品中1ppt~10ppmの濃度範囲内で乳様香味付与効果が得られ、特に1ppb~100ppbで前記効果が高いことが確認された。
【0071】
(実施例2-2)光学異性体比の検討
次に、実施例2-1で乳様香味付与効果が特に高いと評価された乳製品中の濃度のひとつである10ppbにおいて、3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体比(R):(S)を下記表5に示すように様々に変えて前記脱脂濃縮乳希釈品に添加し、本発明の乳製品(本発明品2-9~2-14)を得て、各異性体比における乳様香味付与効果を官能評価によって確認した。官能評価では、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名により、市販の脱脂濃縮乳の3倍希釈品を対照品として、本発明の乳製品の香味について、下記基準で点数付けさせるとともに、香味について感じられた感覚を自由にコメントさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表5に示す。
(基準)対照品と比べた乳のコク感付与、乳様香味の余韻増強、嗜好性向上の各効果について(嗜好性とは、おいしいと感じ、次回もまた喫食したいと思わせる感覚を意味する)
4点:非常に強い効果が感じられた
3点:強い効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:やや効果が感じられた
0点:効果が感じられなかった
【0072】
【0073】
表5に示すように、いずれの光学異性体比(R):(S)においても乳様香味付与効果があるが、(R)体の割合が高いほど乳のコク感付与、乳様香味の余韻増強および嗜好性向上に優れており、(R)体が20%以上において天然感が明らかに対照品より優れ、特に(R)体が40%以上において優れていることが確認された。
【0074】
[実施例3]乳製品への添加例(2)
(実施例3-1)チーズ風味飲食品への添加効果
市販のチーズソースを用意した。一方で、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の95%エタノール溶液を調製し、本発明の乳様香味付与組成物とした(本発明品3-1)。得られた本発明3-1を市販のチーズソースに滴下して3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)濃度が下記表6に示す濃度となるように市販のチーズソースに添加し、よく攪拌することで、本発明のチーズソースを調製した。そして、本発明品のチーズソースについて、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名により、官能評価を行った。官能評価では、下記の基準で点数付けを行わせるとともに、市販のチーズソースを対照品として、対照品と比べて強く感じられた香味を自由に挙げさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表6に示す。
(基準)対照品と比べた乳のコク感付与、乳様香味の余韻増強、および嗜好性向上の各効果について(嗜好性とは、おいしいと感じ、次回もまた喫食したいと思わせる感覚を意味する)
4点:非常に強い効果が感じられた
3点:強い効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:やや効果が感じられた
0点:効果が感じられなかった
【0075】
【0076】
表6に示すように、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物(本発明品3-1)を乳製品(チーズソース)に添加することで、当該乳製品に乳様香味を付与することができると確認された。特に1ppb~100ppbで乳様香味付与効果が高いことが確認された。
【0077】
(実施例3-2)光学異性体比の検討
次に、実施例3-1で特に乳様香味付与効果の高い乳製品中の濃度のひとつと評価された10ppbにおいて、3-ヒドロキシヘキサン酸の光学異性体比(R):(S)を下記表7に示すように様々に変えて前記市販のチーズソースに添加し、各比率における乳様香味付与効果を官能評価によって確認した。官能評価では、市販のチーズソースを対照品として、下記基準で点数付けさせるとともに、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名により、対照品と比べた香味について感じられた感覚を自由にコメントさせた。パネリストの平均点および代表的なコメントを表7に示す。
(基準)対照品と比べた乳のコク感付与、乳様香味の余韻増強、嗜好性向上の各効果について(嗜好性とは、おいしいと感じ、次回もまた喫食したいと思わせる感覚を意味する)
4点:非常に強い効果が感じられた
3点:強い効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:やや効果が感じられた
0点:効果が感じられなかった
【0078】
【0079】
表7に示すように、(R)体の割合が高いほど、コク感、余韻、および嗜好性に優れており、特に(R)体が40%以上において優れていることが確認された。
【0080】
[実施例4]乳製品への添加例(3)
市販のバターを用意し、室温下に10分放置し、柔らかくした。一方で、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の92%MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)溶液を調製し、本発明の乳様香味付与組成物とした(本発明品4-1)。柔らかくした市販のバターに本発明品4-1を滴下して3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)濃度が下記表8に示す濃度となるように市販のバターに添加し、よく混錬することで、本発明のバターを調製した(本発明品4-2~4-6)。そして、本発明品のバターについて、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト10名により、官能評価を行った。官能評価では、対照品と比べて強く感じられた香味を自由に挙げさせた。代表的なコメントを表8に示す。
【0081】
【0082】
表8に示すように、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む乳様香味付与組成物(本発明品4-1)を乳製品(バター)に添加することで、当該乳製品に乳様香味を付与できることが確認された。
【0083】
[実施例5]乳製品への添加例(4)
市販のホエイプロテイン飲料を用意し、そこに実施例1で調製した本発明の乳様香料組成物(本発明品1-7)を、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の濃度が100ppbとなるように添加して、本発明の乳製品(ホエイプロテイン飲料、本発明品5-1)を得た。
【0084】
そして、市販品を対照品として、本発明のホエイプロテイン飲料の香味について、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト5名により、官能評価を行い、感じられた香味をコメントさせた。その結果、パネリスト5名中の4名が、本発明品は、市販のホエイプロテイン飲料と比べて、苦み、渋み、えぐみが抑制されたように感じられ、飲みやすくなり嗜好性が上がったと回答した。
【0085】
[実施例6]乳様香味を含む香味を有する飲食品への添加例
市販のミルクコーヒーおよび乳入りの乳酸菌飲料を用意した。そして、実施例1で調製した本発明の乳様香料組成物(本発明品1-6)を、市販のミルクコーヒーおよび乳酸菌飲料に、3-ヒドロキシヘキサン酸((R):(S)=50:50)の濃度が100ppbとなるように添加して、本発明のミルクコーヒー(本発明品6-1)および本発明の乳酸菌飲料を得た(本発明品6-2)。そして、市販品を対照品として、本発明品の香味について、よく訓練された経験年数10年以上のパネリスト5名により、官能評価を行い、感じられた香味をコメントさせた。その結果、パネリスト5名全員が、ミルクコーヒーについては、本発明のミルクコーヒー(本発明品6-1)は、対照品に比べて乳がより多く使用されたような感覚になり、乳のコクと濃厚さが増強されつつ、油脂感は適度で良好な乳様香味が感じられ、喫食後も乳様香味の余韻がより豊かになったと回答し、乳酸菌飲料については、本発明の乳酸菌飲料(本発明品6-2)は、対照品に比べて乳がより多く使用されたような感覚になり、乳のコク感による濃厚さが増強されて満足感があり、喫食後も乳様香味の余韻がより豊かに残り、飲みごたえが増したと回答した。
【0086】
[実施例のまとめ]
実施例1~6で具体例を用いて示したように、3-ヒドロキシヘキサン酸を含む本発明の乳様香味付与組成物は、これまで十分に付与できなかった、コク感やボリューム感を含む香味を付与することができるため、従来に比べて、特に乳様のコク感、余韻、濃厚さなどを有効に付与でき、乳様香味全体の嗜好性や天然感を向上でき、乳様香味付与に非常に有用である。