(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017252
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】拡張可能、印刷可能である、パターン化された可撓性基板上における高移動度グラフェンシート
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20220118BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20220118BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20220118BHJP
C01B 32/186 20170101ALI20220118BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20220118BHJP
H01L 29/16 20060101ALI20220118BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220118BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220118BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220118BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220118BHJP
H01L 51/40 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B05D1/26 A
B05D3/10 E
B05D1/26 Z
B05D1/28
C01B32/186
C01B32/194
H01L29/16
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L29/28 100A
H01L29/28 250E
H01L29/28 310E
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021163908
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2020034480の分割
【原出願日】2015-04-23
(31)【優先権主張番号】61/983,014
(32)【優先日】2014-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、アラン、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ガディバンデ、ラジャテッシュ、アール.
(72)【発明者】
【氏名】チー、ジェンキン、ジョン
【テーマコード(参考)】
4D075
4G146
5F110
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC23
4D075AC25
4D075AC41
4D075AC45
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5F110AA01
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5F110QQ06
5F110QQ16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】商業用装置に用いられるよう有用な特性を保ちながら、グラフェンを成長触媒から別の表面に転写する方法を提供する。
【解決手段】グラフェン/触媒膜二重層を形成するため触媒膜上に構造欠陥のない単層の連続的なグラフェンを成長させる工程と、前記グラフェン表面上に第一の材料層を接着する工程、前記触媒膜から前記グラフェンを剥がす工程とを有し、前記第一の材料層は残りの工程中にわたり折りや引き裂きに耐えるに十分な硬さを有する材料である、方法を提供する。
【選択図】
図5a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された構造を形成する方法であって、前記方法は、
基板上にグラフェン層を形成する工程であって、前記基板上の前記グラフェン層を形成する工程は、化学気相成長法を用いて前記グラフェン層を付着する工程を有する、前記形成する工程と、
前記グラフェン層に、所定のパターンを有するパターン化された層を結合させる工程と、および
前記パターン化された層に結合された前記グラフェン層の第1の部分を、前記基板と、前記パターン化された層に結合されていない前記グラフェン層の第2の部分とから分離する工程と、
を有し、前記分離する工程が、前記グラフェン層の前記第1の部分を前記パターン化された層の前記所定のパターンに対応するパターンにパターン化し、前記パターン化された層が前記グラフェン層の前記第1の部分に構造的な支持を提供する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記パターン化された層は、前記グラフェン層上に形成される、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記基板と、前記第2の部分とから前記グラフェン層の前記第1の部分を分離する工程は、前記パターン化された層の前記所定のパターンに従って前記グラフェン層部分を剥がす工程を有する、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記基板から前記グラフェン層の前記第1の部分を分離する工程は、前記グラフェン層の前記第1の部分から前記基板をデカップリングする工程を有する、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記基板と、前記第2の部分とから前記グラフェン層の前記第1の部分を分離する工程は、泡転写工程、機械的分離工程、またはこれらの組合せを有する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記基板と、前記第2の部分とから前記グラフェン層の前記第1の部分を分離する工程は、前記グラフェン層のエッチングを必要としない、または伴うものではない、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記グラフェン層は、グラフェン単層またはグラフェンの連続層を有する、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記グラフェン層に、前記所定のパターンを有する前記パターン化された層を結合させる工程は、レーザー印刷、インクジェット印刷、3D印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、ナノインプリントリソグラフィ、またはこれらの任意の組み合わせを有する、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記グラフェン層に、前記所定のパターンを有する前記
パターン化された層を結合させる工程は、材料の選択的焼結を有する、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記グラフェン層に、前記所定のパターンを有する前記パターン化された層を結合させる工程は、液体結合材料を粉末床層に選択的に付着する工程を有する、方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、さらに、前記基板と、前記第2の部分とから前記グラフェン層の前記第1の部分を分離する工程の前に、前記パターン化された層上に材料の層を形成する工程を有する、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記材料の層は、パターン化されていない、方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、さらに、前記分離されたグラフェン層の第1の部分をベース基板上に接着させる工程を有する、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記分離されたグラフェン層の第1の部分は、前記ベース基板上の前記パターン化された層に接着される、方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、前記ベース基板は、パターン化された、またはパターン化されていない材料の層を有する、方法。
【請求項16】
パターン化された構造であって、
所定のパターンを有するパターン化された層と、
前記パターン化された層に結合したグラフェン層の第1の部分と、を有し、
前記グラフェン層は、前記パターン化された層の前記所定のパターンに対応するパターンで、基板と、前記パターン化された層に結合されていない前記グラフェン層の第2の部分とから分離されるように構成され、前記グラフェン層の前記第1の部分は、前記基板と、前記グラフェン層の前記第2の部分とからの分離によって、前記パターン化された層の前記所定のパターンでパターン化されるように構成され、前記グラフェン層の前記第1の部分および前記グラフェン層の前記第2の部分は、化学気相成長されたグラフェンを有し、および前記パターン化された層が前記グラフェン層の前記第1の部分に支持を提供する、パターン化された構造。
【請求項17】
請求項16記載のパターン化された構造において、前記パターン化された構造は、自立構造である、パターン化された構造。
【請求項18】
請求項16記載のパターン化された構造において、前記パターン化された構造は、ベース基板に結合するよう構成される、パターン化された構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年4月23日に提出された米国特許出願第61/983,014号の優先権を主張するものであり、前述の出願は、その引用により本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
ここで開示される本発明はナノ/バイオインターフェースセンターNSF NSECによって授与された授与/契約/助成金番号DMR08-32802号の下、政府からの支援によって成されたものである。政府は本発明の一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は一つまたはそれ以上の基板から別の基板へ膜を転写基板またはその他のものから膜の転写を行う手法または装置に関するものであって、この転写される膜はこの転写工程中にパターン化されるものである。
【0004】
2004年のグラフェンの最初の分離以来、この材料への関心が、研究界および、グラフェンの製造と用途における最初の商業的企業が登場し始めたことにより、商業界においても高まっている。グラフェンは、ハチの巣のような六角形格子で構成される1原子厚さの炭素原子シートであり、この二次元構造と芳香族の化学構造により特異的な性質を有する。この材料の特異的なバンド構造は低エネルギーにおいて直線的分散関係を示し、その正孔と電子の有効質量がゼロとなることによって相対論的粒子のように振る舞うのである。これにより、室温において測定移動度200,000cm2/V-sおよびマイクロメートル単位における弾道のような移動など、驚異的な電気特性を示す。さらに、本材料の高い引っ張り強さは曲げや変形の下でも高い電気特性を可能にする。これらの素晴らしい特性により、高性能ナノエレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクス、および環境学的/生物学的モニタリングへの応用に関する関心が高まっている。
【0005】
グラフェンは、触媒金属上で化学気相成長法によって工業規模で高品質シートとして成長させることが出来、複数の企業によって進められているグラフェンの商業化の機会を表している。従来の手法では、グラフェンは機械的安定性を提供するため薄いポリマー層(例えば、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate:PMMA)によってコーティングされ、その後、銅の成長触媒から除去され、別の触媒に完全なシートとして転写され、そして電気製品などへとパターン化される。これには、例えば、PMMA層は非常に薄く可撓性があるため、転写工程中にグラフェンに皺がよってしまう、洗浄後PMMA残留物で前記グラフェンが汚染されてしまう、そしてその後のパターン化工程中にグラフェンが化学的汚染に晒されるなど、いくつかの欠点が存在する。これらの各々が、グラフェンの物理的特性(キャリア移動度を含む)を損なわせてしまう。商業用装置に用いられるよう有用な特性を保ちながらグラフェンを成長触媒から別の表面に転写する方法が求められている。
【0006】
したがって、成長触媒から別の表面へグラフェンを転写することが出来る方法が必要である。グラフェンの他にも(例えば、多層グラフェン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、他の遷移金属ダイカルコゲナイドや、同様のもの)より改善された膜転写方法が求められている材料が存在する。本開示はこれらや他の重要なニーズに向けられるものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は材料を形成する方法を提供し、前記方法は、グラフェン/触媒膜二重層を形成するため触媒膜上に構造欠陥のない単層の連続的なグラフェンを成長させる工程と、前記グラフェン表面上に第一の材料層を接着する工程、前記触媒膜から前記グラフェンを剥がす工程とを有し、前記第一の材料層は残りの工程中にわたり折りや引き裂きに耐えるに十分な硬さを有する材料である、方法を提供する。これによって、この工程はこのグラフェン膜がその顕著に高い電子的および構造的品質を維持することを保証する。さらには、グラフェンの他にも(例えば、多層グラフェン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、他の遷移金属ダイカルコゲナイドや、同様のもの)より改善された膜転写方法が求められている材料が存在する。本開示はこれらや他の重要なニーズに向けられるものである。
【0008】
本開示はまた、基板、この基板上に配置されたパターン化されたグラフェン層、および前記グラフェン上に配置されたパターン化された材料層を有する加工物も提供する。本開示はまた、この加工物を有する電子装置も提供する。
【0009】
本開示はまた、基板、この基板上に配置された構造欠陥のない単層の連続的なグラフェン層、そして前記グラフェンに配置されたパターン化された材料層を有する加工物も、提供する。
【0010】
本開示はまた、パターン化されたグラフェン層および、このグラフェンに配置されたパターン化された第一の材料層を有する加工物も、提供する。
【0011】
全般的な説明および以下の詳細な説明は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、例示であり説明のためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本開示の他の態様は、本明細書で提供される本発明の詳細な説明を考慮すれば、当業者には明らかなはずである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
発明の概要、および以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と共に読まれることによってより良く理解されるものである。本発明の説明の目的のため、図面内に本発明の例示的な実施形態が表されるが、しかし、本発明は開示される特定の方法、組成物、および装置に限定されるものではない。さらに、図面は必ずしも縮尺に従って描かれているものでない。
【
図1】
図1は、加工物に向けられた本発明の一実施形態を表す。左上の加工物はグラフェンの上層および銅の下層に有するものである。中央左の加工物は左上の加工物と上にポリマー層を有する以外は、同じ加工物である。
【
図2】
図2は、様々な個体のおよび可撓性の基板上における加工物に向けられた本発明の代替的実施形態を表す。
【
図3】
図3は、加工物に向けられた本発明の例示的実施形態を表す。
【
図4】
図4は、加工物に向けられた本発明の例示的一実施形態を表す。
【
図5a】
図5aは、加工物を有する電子装置に向けられた本発明の例示的実施形態を表す。
【
図5b】
図5bは、加工物を有する電子装置に向けられた本発明の一実施形態の電子試験データを提供する。
【
図6】
図6は、一実施形態が、対象基板に適用される加工物を有する電子装置である工程を提供する。この図では、左上における加工物はグラフェン単層である上層および銅の下層を有する。左中央の加工物は、ポリマーの上層、グラフェン単層の中央層および銅の下層を有する。左下の加工物は銅の上層、グラフェン単層の第二層、ポリマーの第三層および前記非処理基板である下層を有する。右の加工物は、前記対象基板を下層に、ポリマーを中央層にそしてグラフェン単層を上層に有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本開示の一部である付随する図面および実施例と共に以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されることが出来る。本発明は、本明細書に記載および/または示される特定の装置、方法、応用、条件またはパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は例示としてのみ特定の実施形態を説明するためのものであり、ここで請求される発明の限定を意図するものではないことが理解されるべきである。また、添付の特許請求の範囲を含む、明細書内で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれ、特定の数値への言及は、文脈上明らかにそうでない限り、少なくともその特定の数値を含むものである。本明細書で使用する「plurality」という用語は、1より大きい数を意味する。ある範囲の値が示されるとき、別の実施形態は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるべきである。全ての範囲は包括的であり、組み合わせ可能なものである。
【0014】
明瞭性のために本明細書において別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることが出来ることが理解されるべきである。逆に、簡潔性のため単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の部分的組み合わせによって提供されてもよい。さらに、範囲内に記載された値への言及は、その範囲内の各値全てを含むものである。
【0015】
一実施形態では、本開示は、材料の高い固有移動度(~10,000cm2/V-s)を維持しながら、単層グラフェンを可撓性ポリマー基板上に任意の形状にパターン化する拡張可能な印刷をベースとした方法を提供するものである。本発明の一実施形態では、ポリマー材料上のグラフェンは、成長基板から皺なしで剥がすことが出来るように、銅箔基板上に化学気相成長法によって成長させたグラフェン上に印刷用トナーをパターンにレーザー印刷する工程によって製造されることが可能である。得られたポリマー上のグラフェン構造は高品質グラフェンの高い移動度および環境感度特性を維持しこの構造をフレキシブル/折り畳み可能エレクトロニクス、環境モニタリングのための着用可能な蒸気センサ、容易な医療の診断のための印刷可能であるバイオセンサ、またはより安価な次世代エネルギー素材(スーパーキャパシタ、透明電極)における数多くの応用に適応させることを可能としている。
【0016】
一実施形態では、本発明は加工物を形成する方法を提供する。これらの方法は、グラフェン(例えば、構造欠陥のない単層の連続的なグラフェン)を触媒膜上に成長させてグラフェン/触媒膜二重層を形成することを含むものである。前記方法はまた、前記グラフェン表面上に第一の材料層を配置させて前記触媒膜からこのグラフェンを剥がすことを含むことが出来る。いくつかの実施形態では、触媒膜上におけるグラフェンの成長は、大気圧または低圧のいずれかでの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって行われる。いくつかの実施形態では、前記触媒膜はCuまたはPt箔を有することが出来、グラフェンを成長させることができる触媒材料は、当業者に知られている。いくつかの実施形態では、触媒箔はロールを有することが出来、グラフェンの成長は、CVD工程を組み込むことが出来る「ロール・ツー・ロール」システムによって起こすことが可能である。
【0017】
前記グラフェン上の第一の材料層はパターン化されているまたはパターン化されていない層として配置することが出来、いくつかの実施形態ではこれはパターン化を可能にする印刷工程によって、例えば、インクジェットプリンタにおいてポリマーインクを使って前記グラフェン表面に印刷する、3Dプリンタにおいて材料の選択的焼結(選択的加熱焼結、選択的レーザー焼結、また両方)する、または3Dプリンタの粉末床層に液体結合材料を選択的に付着することによって、レーザープリンタを用いて前記グラフェン表面上に印刷して形成されるものである。当業者に知られているように他の印刷方法を使用することも可能である。この印刷工程は、例えば、前記グラフェンを酸素存在下において過剰に高い温度に晒す焼結工程の使用を通してなどによって起こり得る、前記グラフェンの損傷または破壊を回避するように設計されるべきである。好ましくは(必要ではないが)、グラフェンの電子特性を損なう可能性があるため前記第一の材料層は、フォトレジスト材料を使用せずに必要ならば配置またはパターン化されるべきである。剥がされたグラフェンを構造的に支持するため前記第一の材料層は個体であって前記グラフェンに結合しなければならない。固化することが出来、前記グラフェンに結合することが出来る、あらゆる材料による第一の層を配置することが出来るどのような印刷工程であってもよい。いくつかの実施形態では、前記第一の材料層の上に第二の材料層が配置されることが出来る。好ましい方法においては、前記第二の材料層は前記グラフェンに接触しない実質的にパターン化されていない層である。前記グラフェンを前記触媒膜から剥がす工程は、Gaoらによる"Repeated growth and bubbling transfer of graphene with millimetre-size single-crystal grains using platinum," Nature Communications 3(2012):699において説明される、泡による転写工程によって行われることが出来るものであり、これはここで参照することにより本明細書に組み込まれるものである。実質的に前記グラフェンに接触しない第二の材料層を用いる方法では、前記泡転写工程は前記第一の材料層と接触していない全てのグラフェンを剥がすことになる。いくつかの実施形態では、前記方法はさらに前記剥がされたグラフェンを基板に接着する工程を有し、これはガラス、シリコン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、サファイア、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、シリコンとアルミニウムの合金、ゲルマニウム、PET、ポリイミド、他のプラスティック、または絹のうち一つまたはそれ以上を有することが可能である。一つの好ましい実施形態では、前記基板はSi/SiO2を有し、前記グラフェンは前記基板のSiO2表面に接着している。
【0018】
本開示はまた、加工物を提供する。これらの加工物は、基板、前記基板上に配置されたパターン化されたグラフェン層、前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料の層とを有することが出来る。いくつかの実施形態では、加工物はさらに、前記パターン化された第一の材料層上に配置されたパターン化されていない第二の材料層を有することが出来、このパターン化されていない材料層は実質的に前記グラフェン層や前記基板とは接触しないものである。前記基板は、ガラス、シリコン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、サファイア、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、シリコンとゲルマニウムの合金、および同様のもののうち一つまたはそれ以上を有することが可能である。前記加工物は好ましくは約5,500cm2/V-sより大きなキャリア移動度を持つグラフェンを有する。好ましい実施形態では、前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層は、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満の厚さを有する。またさらに別の好ましい実施形態において、前記グラフェン上に配置された前記パターン化された第一の材料層、前記パターン化された材料層上に配置されたパターン化されていない第二の材料層、各自約10マイクロメートル未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では前記加工物は約10マイクロメートル未満の特性長さを有する前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層を有することが可能である。
【0019】
本発明は本明細書に記載される前記加工物を含む電子装置もまた提供する。このような電子装置は、電極接触部と共に半導体基板上に結合した前記加工物を有することが出来る。
【0020】
本発明は代替的な加工物もまた提供するものである。このような加工物は好適には基板、前記基板上に配置された前記グラフェン層(例えば、構造欠陥のない単層の連続的なグラフェン)、および前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層を含むものである。前記基板はまた、グラフェンの成長を支援することが出来る触媒膜を有することが出来、これはいくつかの実施形態ではCuまたはPt箔であって、グラフェンの成長を支持することが出来る触媒材料は通常の当業者に知られているものである。好ましい実施形態では、この第一の材料はポリマーまたはプラスチック材料を有することが出来る。さらに好ましい実施形態では、前記第一の材料は可撓性ポリマーを有することが出来る。好ましい実施形態では、前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層は約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、またはさらに約5マイクロメートル未満の厚さを有することが出来る。
【0021】
他の実施形態では、本発明は加工物を提供し、パターン化されたグラフェン層、および前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層を有する。いくつかの実施形態では、前記加工物はさらに前記パターン化された第一の材料層の上に配置されたパターン化されていない第二の材料層を有し、前記パターン化されていない第二の材料層は実質的にグラフェンの層と接触しない。好ましくは、この第一の材料、第二の材料、またはその両方は可撓性ポリマーを有する。好適な可撓性ポリマーには、市販のプリンタ用トナー、ポリマーインク、または3D印刷による配置後にも可撓性である材料を有する。前記グラフェン上に配置されたパターン化された第一の材料層、前記パターン化された材料層の上に配置されたパターン化されていない第二の材料層、または各自は約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満の厚さも有することが出来る。
【0022】
本開示は、以下の限定的でない実施例によって例示される。
【実施例0023】
一つの観点によれば、印刷工程によって特徴づけられる、あらゆる求められるパターンの薄く、可撓性のあるトナーまたはポリマー基板上に構造欠陥のないグラフェン層を作成する方法を提供する。
【0024】
まず、大気圧または低圧で化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)により、構造欠陥のない単層の連続的なグラフェンを銅膜上で成長させて銅膜/グラフェン二重層を作製する。次に、前記銅膜/グラフェン二重層を好適な支持体に接着して印刷装置に挿入し前記グラフェン表面にパターン化された材料を接着する。一実施形態では、前記銅膜/グラフェン二重層は通常のプリンタ用紙にテープによって接着してレーザプリンタ内に挿入する。他の実施形態では、前記銅膜/グラフェン二重層は好適な支持体に接着して3Dプリンタ内に挿入する。さらに他の実施形態では、グラフェンは、「ロール・ツー・ロール」工程などによって、ロール状の触媒箔の上において形成することが出来、その後印刷装置にかける。パターンは様々な印刷装置と技術を用いることにより前記グラフェンを損傷することなく、うまく印刷することが出来る。これらの技術は、前記グラフェン表面上に固体ポリマー層のパターンを作製する。一実施形態では、従来のレーザプリンタが用いられる。他の印刷方法には、カラー用レーザプリンタおよびポリマーまたはポリマー複合体のインクを用いるインクジェット印刷を含む。さらに別の実施形態においては、3Dプリンタを用いて前記グラフェンの表面にパターン化された材料層を形成することが出来、プリンタは選択的加熱焼結または選択的レーザー焼結を使用、または代替的に粉末床層への液体結合材料の選択的な付着を使用することが出来る。この印刷工程は、例えば、前記グラフェンを過剰に高い温度に晒す焼結工程の使用を通してなどによって起こる、前記グラフェンの損傷または破壊を回避するように設計されるべきである。この印刷された層の厚さは用いられる印刷装置によって決定し、レーザープリンタ用トナーの場合、約10マイクロメートル前後であって、約500ナノメートル~約100マイクロメートルの範囲内の他の厚さもまた好適であるが、この厚さは特定の用途によって変更することが可能である。これは前記印刷工程の設計を通して調整することが出来る。前記パターンの線幅は前記プリンタの解像度により決定し、これは、例えば、最新のレーザープリンタでは、1マイクロメートル、5マイクロメートル、またはさらに10マイクロメートルの大きさであることが出来る。その後の処理は必要でない。この後の「泡転写」によって剥がす工程が前記印刷材料の薄膜に接着したパターン化されたグラフェン層を生じるため、フォトレジストの使用は必要にならない。
【0025】
加工物を従来のレーザープリンタを用いて作製する工程が
図1に概略的に示される。
【0026】
次に、グラフェンは好適な技術を用い、前記銅膜より剥がされる。これは前記グラフェンに機械的支持を提供する追加の層を用いることなく行われることが可能である。いくつかの実施形態では、Gaoらによる"Repeated growth and bubbling transfer of graphene with millimetre-size single-crystal grains using platinum," Nature Communications 3(2012):699において説明される、「泡転写」法が用いられ、ここでの参照により本明細書に組み込まれるものである。例えば前記触媒箔の溶解など、機械的支持を提供する追加の層を用いない他の方法もまた好適である。パターン化された印刷材料層がその上に配置されているグラフェンはその後、完全な状態で前記銅箔から転写し、一方で支持されていないグラフェンはこの工程中に分解してしまう。よって、この転写工程に耐えうる材料が前記印刷工程中に作成された、当該パターン化されたグラフェンと材料の複合体である。
【0027】
この材料上におけるグラフェン構造は転写槽からピンセット、またはPETシートによって回収して、標準的な工程によって洗浄した。この印刷材料は硬質の骨格としてその下にあるグラフェン層に機械的支持を提供する役割を果たす。従来のレーザープリンタによって、本明細書に記載の方法を用いて製造され、その後いくつかの固体および可撓性の基板に転写された加工物を
図2に示す。グラフェンを銅触媒箔上で合成し、銅膜/グラフェン二重層を形成した。この二重層を透明なテープで標準の8.5インチ×11インチ(21.59cm×27.94cm)用紙に、前記銅層がこの用紙側で前記グラフェン層が露出するように接着した。この用紙は、二重層が接着したまま、従来のレーザープリンタ内に挿入して、パターンを商業用黒色レーザープリンタ用トナーまたはカラーレーザープリンタ用トナーによって印刷した。この加工物は
図2に示すような半径0.5mmの物体など、物体の周りに巻くことが可能である。巻いてある状態から解かれた後も、目に見える損傷の兆候はなく、また巻かれる前後の前記グラフェンの電気特性を測定したが、この巻く工程によって前記電気特性を損なわせることはなかった。本明細書に記載される方法を用いて作製された複数の加工物が
図3に示され、ここには、パターン化されたポリマー上のグラフェン加工物が後の使用の保存のためガラススライドの上に置かれたものを含む。本明細書に記載される方法を用いて、様々なカラー印刷用トナーと共にカラーレーザープリンタによって追加の加工物が作製され、これらは同様の結果をもたらした。
いくつかの実施形態では、実施例1で用いられたように3Dプリンタを使用するが、前記パターン化された材料層の上に第二の材料層を接着する工程を伴う。実施例1のように、構造欠陥のない単層の連続的なグラフェンを大気圧または低圧のいずれかにおいての化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって触媒膜上成長させて、触媒膜/グラフェン二重層を作製した。次に、前記触媒膜/グラフェン二重層を好適な支持体に接着して3D印刷装置に挿入して、前記グラフェン表面にパターン化された材料を接着した。この3Dプリンタ内において、前記触媒膜/グラフェン二重層におけるグラフェン表面上側にパターン化された層を配置した。
このパターン化された材料層の形成後、第二の、パターン化されていない層を前記パターン化された材料層上に形成させることが出来る。このパターン化されていない層は前記パターン化された材料層および前記パターン中に配置する焼結されていないまたは結合していない3Dプリンタの造形材料にわたって置くことが出来る。その結果、前記パターン化されていない層は前記グラフェンに接触することなく前記第一の材料層に配置することが出来る。もし、前記「泡転写」によって剥がす方法が用いられる場合、焼結されていないまたは結合していない造形材料は、第一の層が配置されていない崩壊していくグラフェンと共に除去されるため、前記第一の材料層と一致するパターン化されたグラフェンのみが残る。このようにして、この残されたグラフェンのパターンは、第二の材料層を用いない実施例1の工程によって作成されるものと同じものになる。この第二の、パターン化されていない層は、とりわけ、前記加工物に構造的な支持を提供し、真空、吸引、またはベルヌーイグリッパなどのウェハ処理システムにおける使用を可能にしている。