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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172523
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】シールド部材
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/47 20210101AFI20221110BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
D03D15/00 D
H05K9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078331
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
【テーマコード(参考)】
4L048
5E321
【Fターム(参考)】
4L048AA04
4L048AA14
4L048AA19
4L048AB07
4L048AC13
4L048BA02
5E321AA21
5E321BB41
5E321BB44
5E321CC16
5E321GG09
(57)【要約】
【課題】シールド部材の接続相手に対する電気的接続の安定性を向上させる。
【解決手段】シールド部材10は、X方向に延びる複数の絶縁性線材20と、X方向と交差するY方向に延び、絶縁性線材20に編み込まれる複数の導電性線材30と、を備える。導電性線材30がX方向に幅を有し、X方向及びY方向に直交するZ方向に厚さを有するとしたときに、導電性線材30の幅WTは、導電性線材30の厚さTCよりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に延びる複数の絶縁性線材と、
前記X方向と交差するY方向に延び、前記絶縁性線材に編み込まれる複数の導電性線材と、を備えるシールド部材であって、
前記導電性線材が前記X方向に幅を有し、前記X方向及び前記Y方向に直交するZ方向に厚さを有するとしたときに、
前記導電性線材の幅は、前記導電性線材の厚さよりも大きいシールド部材。
【請求項2】
前記導電性線材の幅は、前記X方向に隣接する前記導電性線材間の間隔よりも大きい請求項1に記載のシールド部材。
【請求項3】
前記導電性線材は、金属線であり、
前記絶縁性線材は、樹脂線である請求項1又は請求項2に記載のシールド部材。
【請求項4】
前記導電性線材は、金属素線の束である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシールド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、布体からなる筒形状のシールドスリーブが開示されている。布体は、縦糸と横糸からなる。縦糸は、金属線と非導電性糸とからなる。横糸は、熱可塑性樹脂のモノフィラメントからなる支持糸と、金属層を少なくとも連続して備える高分子材料の繊維からなる導電性糸とからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-207760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような絶縁性線材(非導電性糸)を有するシールド部材(シールドスリーブ)は、絶縁性線材を有する分、導電性線材が接続相手と接触しにくくなり、電気的な接続が不安定になることが懸念される。
【0005】
そこで、本開示は、シールド部材の接続相手に対する電気的接続の安定性を向上させることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のシールド部材は、X方向に延びる複数の絶縁性線材と、前記X方向と交差するY方向に延び、前記絶縁性線材に編み込まれる複数の導電性線材と、を備えるシールド部材であって、前記導電性線材が前記X方向に幅を有し、前記X方向及び前記Y方向に直交するZ方向に厚さを有するとしたときに、前記導電性線材の幅は、前記導電性線材の厚さよりも大きいシールド部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールド部材の接続相手に対する電気的接続の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のシールド部材が電線の外周を覆った状態の斜視図である。
図2図2は、シールド部材の外周面の拡大図である。
図3図3は、シールド部材の断面の一部を概念的に示す説明図である。
図4図4は、シールド部材が固定部材によって接続相手に固定された状態を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のシールド部材は、
(1)X方向に延びる複数の絶縁性線材と、前記X方向と交差するY方向に延び、前記絶縁性線材に編み込まれる複数の導電性線材と、を備えるシールド部材であって、前記導電性線材が前記X方向に幅を有し、前記X方向及び前記Y方向に直交するZ方向に厚さを有するとしたときに、前記導電性線材の幅は、前記導電性線材の厚さよりも大きいシールド部材である。
【0011】
この構成によれば、導電性線材における接続相手との接触面積が大きくなるため、接続相手に対する電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0012】
(2)前記導電性線材の幅は、前記X方向に隣接する前記導電性線材間の間隔よりも大きいことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、導電性線材をX方向に密に配置することができるため、接続相手に導電性線材がより接触しやすくなる。
【0014】
(3)前記導電性線材は、金属線であり、前記絶縁性線材は、樹脂線であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、全てを金属線で構成する場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0016】
(4)前記導電性線材は、金属素線の束であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、束にする金属素線の数を調整することによって、導電性線材の厚さを調整することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態1>
図1には、シールド部材10が電線11の外周を覆った状態が開示されている。電線11は、芯線12と、被覆13と、を有する。芯線12は、導電性を有する。被覆13は、絶縁性を有し、芯線12の外周を覆う。
【0020】
シールド部材10は、筒状、より具体的には円筒状をなしている。シールド部材10は、図2に示すように、複数の絶縁性線材20と、複数の導電性線材30と、を備える。絶縁性線材20と導電性線材30は互いに波状に編み込まれる。絶縁性線材20は、横糸であり、導電性線材30は、縦糸である。
【0021】
複数の絶縁性線材20の各々は、図2に示すように、X方向に沿って延び、Y方向に沿って並んで配置される。本実施形態では、X方向は、シールド部材10の周方向であり、Y方向は、シールド部材10の延び方向である。X方向及びY方向は互いに交差する方向であればよい。また、X方向に直交し且つY方向に直交する方向をZ方向とする。本実施形態では、Z方向は、シールド部材10の径方向である。絶縁性線材20は、Y方向に幅を有し、Z方向に厚さを有する。絶縁性線材20は、全体が樹脂線である。樹脂の種類は限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートである。絶縁性線材20は、複数の樹脂素線21の束である。樹脂素線21は、横断面円形である。
【0022】
複数の導電性線材30は、図2に示すように、Y方向に沿って延び、X方向に沿って並んで配置される。導電性線材30の横断面形状の幅WCは、X方向に隣接する導電性線材30間の間隔GCよりも大きい。幅WCは、絶縁性線材20のX方向の最大幅寸法である。間隔GCは、導電性線材30間の最小の間隔である。導電性線材30は、X方向に幅を有し、Z方向に厚さを有する。導電性線材30は、金属線であり、複数の金属素線31の束である。金属素線31は、例えば錫メッキの銅線である。金属素線31は、横断面円形である。金属素線31の径は、本実施形態では、樹脂素線21の径よりも小さいが、樹脂素線21の径と同じであってもよいし、樹脂素線21の径よりも大きくてもよい。
【0023】
1つの導電性線材30を構成する金属素線31の本数は、本実施形態では、1つの絶縁性線材20を構成する樹脂素線21の本数よりも多いが、1つの絶縁性線材20を構成する樹脂素線21の本数と同じであってもよいし、1つの絶縁性線材20を構成する樹脂素線21の本数よりも少なくてもよい。
【0024】
1つの導電性線材30において、金属素線31は、導電性線材30の幅方向に広がって配置され、且つ導電性線材30の厚さ方向(Z方向)に積み重なって配置される。1つの絶縁性線材20において、樹脂素線21は、絶縁性線材20の幅方向にのみ広がって配置され、積み重なって配置されない。これにより、図3に示すように、1つの導電性線材30の横断面形状の厚さTCは、1つの絶縁性線材20の横断面形状の厚さTIよりも大きくなっている。
【0025】
図2に示すように、絶縁性線材20は、凹凸を繰り返す波状部22を有する。導電性線材30は、凹凸を繰り返す波状部32を有する。図3に示すように、波状部22の凹部23には、波状部32の凸部34が位置する。凸部34は、凹部23の底に接した状態で凹部23に入り込む。波状部32の凸部34における横断面形状の厚さTCは、波状部22の凹部23の深さDIよりも大きい。厚さTCは、凸部34におけるZ方向の最大外径寸法に相当する。深さDIは、凹部23の最大深さである。
【0026】
1つの導電性線材30において、幅方向に広がって配置される金属素線31の数は、厚さ方向に積み重なって配置される金属素線31の数よりも多い。このため、導電性線材30の横断面形状の幅WCは、導電性線材30の横断面形状の厚さTCよりも大きい。
【0027】
シールド部材10は、例えば導電性線材30に対して絶縁性線材20を編み込んだシート状部材を筒状にすることで形成される。筒状に保持する方法は、例えば特許文献1のように絶縁性線材20を熱可塑性樹脂のモノフィラメントとし、筒状にした後、適切な加熱を行うことで形状を保持させる方法であってもよい。また、別の方法として、特開2008-147476号公報のように接着層によって周方向の一端側と他端側を接着させる方法であってもよい。
【0028】
シールド部材10は、図1のように、複数の電線11の外周を覆った形態をなす。図4に示すように、シールド部材10の端部は、接続相手である筒状部材50に電気的に接続される。筒状部材50は、金属製である。筒状部材50は、円筒状をなし、シールド部材10と電線11との間に配置される。筒状部材50は、シールド部材10の内周面10Aが電気的に接続される外周面51を有する。シールド部材10は、筒状部材50の外周側に配置され、固定部材60によって固定される。固定部材60は、例えば金属製のカシメリングである。固定部材60は、シールド部材10の外周側から圧着される。
【0029】
固定部材60の幅WF(Y方向の幅寸法)は、隣り合う絶縁性線材20の間隔GIよりも大きい。このため、固定部材60と筒状部材50との間には、固定部材60を圧着する位置に関わらず、シールド部材10の絶縁性線材20が介在する。よって、シールド部材10の導電性線材30と筒状部材50との電気的接続の安定性が懸念される。
【0030】
しかし、このシールド部材10は、上述したように導電性線材30の凸部34における横断面形状の厚さTCが、絶縁性線材20の凹部23の深さDIよりも大きいため、導電性線材30の凸部34が絶縁性線材20の凹部23の開口端よりも張り出す部分を形成しやすい。よって、シールド部材10が接続される筒状部材50に対して導電性線材30が接触しやすくなり、その結果、筒状部材50に対する電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0031】
また、このシールド部材10は、導電性線材30における横断面形状の厚さTCが、絶縁性線材20における横断面形状の厚さTIよりも大きいため、導電性線材30の凸部34が絶縁性線材20の凹部23の開口端よりも張り出す部分を形成しやすい。よって、シールド部材10が接続される筒状部材50に対して導電性線材30が接触しやすくなり、その結果、筒状部材50に対する電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0032】
また、このシールド部材10は、導電性線材30の横断面形状の幅WCが、導電性線材30の横断面形状の厚さTCよりも大きい。この構成によれば、導電性線材30における筒状部材50との接触面積が大きくなるため、筒状部材50に対する電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0033】
更に、導電性線材30の凸部34は、凸部34が位置する絶縁性線材20の凹部23の開口端24から張り出す張出部35を有する。このため、シールド部材10が接続される筒状部材50に対して導電性線材30をより確実に接触させることができ、その結果、シールド部材10の筒状部材50に対する電気的接続の安定性をより向上させることができる。
【0034】
更に、シールド部材10におけるZ方向の最も端には、導電性線材30の凸部34が配置されている。このため、シールド部材10が接続される筒状部材50に対して導電性線材30をより確実に接触させることができ、その結果、シールド部材10の筒状部材50に対する電気的接続の安定性をより向上させることができる。
【0035】
更に、導電性線材30は、金属線であり、絶縁性線材20は、樹脂線である。このため、全てを金属線で構成する場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0036】
更に、導電性線材30は、金属素線31の束である。このため、束にする金属素線31の数を調整することによって、導電性線材30の横断面形状の幅WC及び厚さTCを調整することができる。
【0037】
更に、金属素線31の本数は樹脂素線21の本数よりも多い。このため、金属素線31の径の大きさに関わらず、導電性線材30の横断面形状の厚さTCを絶縁性線材20の横断面形状の厚さTIよりも大きくする構成を容易に実現することができる。
【0038】
更に、導電性線材30の横断面形状の幅WCは、X方向に隣接する導電性線材30間の間隔GCよりも大きい。このため、導電性線材30をX方向に密に配置することができるため、筒状部材50に導電性線材30がより接触しやすくなる。
【0039】
更に、全ての導電性線材30の全ての凸部34は、凸部34が位置する絶縁性線材20の凹部23の開口端24から張り出す張出部35を有する。このため、一部の導電性線材30の凸部34のみが、絶縁性線材20の凹部23の開口端24から張り出す張出部35を有する構成と比較して、筒状部材50に接触する導電性線材30の接触面積を大きくすることができ、その結果、シールド部材10の筒状部材50に対する電気的接続の安定性をより向上させることができる。
【0040】
更に、全ての導電性線材30の全ての凸部34は、シールド部材10におけるZ方向の最も端側に配置されている。つまり、全ての導電性線材30の全ての凸部34は、シールド部材10を構成する導電性線材30以外の部材よりもZ方向の端側に配置されている。このため、全ての導電性線材30の凸部34をより確実に筒状部材50に接触させることができ、その結果、シールド部材10の筒状部材50に対する電気的接続の安定性をより向上させることができる。
【0041】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態のシールド部材は、シート状部材を筒状にすることで形成される構成であったが、導電性線材と絶縁性線材を筒状に編み込むことで筒状に構成されるものであってもよい。
(2)上記実施形態の絶縁性線材は、樹脂線であったが、樹脂線以外の絶縁性線材であってもよい。
(3)上記実施形態の絶縁性線材は、樹脂素線の束であったが、1本の素線からなるものであってもよい。
(4)上記実施形態の導電性線材は、金属線であったが、金属線以外の導電性線材であってもよい。
(5)上記実施形態の導電性線材が、金属素線の束であったが、1本の素線からなるものであってもよい。
(6)上記実施形態では、シールド部材を折り返さずに接続相手に電気的に接続させる構成であったが、シールド部材の先端側を折り返し、折り返した部位の内周側に配置した接続相手に対して折り返した部位を電気的に接続させる構成であってもよい。
(7)上記実施形態の固定部材は、金属製のカシメリングであったが、樹脂製の結束バンドなどであってもよい。
(8)導電性線材の厚さは、絶縁性線材の厚さより大きくなくてもよい。例えば、導電性線材の厚さは、絶縁性線材の厚さと同じであってもよいし、絶縁性線材の厚さより小さくてもよい。
(9)上記実施形態のシールド部材は、内周面が接続相手に接触して電気的に接続される構成であったが、外周面が接続相手に接触して電気的に接続される構成であってもよいし、内周面及び外周面の両面が接続相手に接触して電気的に接続される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…シールド部材
10A…シールド部材の内周面
11…電線
12…芯線
13…被覆
20…絶縁性線材
21…樹脂素線
22…絶縁性線材の波状部
23…絶縁性線材の波状部の凹部
24…開口端
30…導電性線材
31…金属素線
32…導電性線材の波状部
34…導電性線材の波状部の凸部
35…張出部
50…筒状部材
51…筒状部材の外周面
60…固定部材
DI…凹部の深さ
GC…導電性線材間の間隔
GI…絶縁性線材間の間隔
TC…凸部の厚さ(導電性線材の厚さ)
TI…絶縁性線材の厚さ
WC…導電性線材の幅
WF…固定部材の幅
図1
図2
図3
図4