(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172540
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20221110BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221110BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
G03G21/00 370
B41J29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078380
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川津 憲治
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061BB08
2C061BB11
2C061CF01
2C061CF06
2C061CF07
2H270KA57
2H270LA19
2H270LD03
2H270LD16
2H270MD02
2H270MD15
2H270ME03
2H270MH09
2H270QA44
2H270ZC04
5C072AA01
5C072BA20
5C072DA04
5C072DA21
5C072EA04
5C072NA01
5C072RA16
5C072UA02
5C072XA04
(57)【要約】
【課題】スキャナなどの読取部を備えた場合に、その読取部のメンテナンスや補正を容易に行うことを可能にする。
【解決手段】連続した長尺の印刷媒体を搬送する搬送路の読取り位置に配置され、印刷媒体に形成された画像を読取る読取部を備えた場合に、印刷媒体を読取部の読取り位置か退避させる退避部を設ける。退避部は、読取部による読取り時に、印刷媒体を読取り位置に配置させ、読取部による読取り終了時に、印刷媒体を読取り位置から退避させて、読取部と印刷媒体との間に所定の空間を確保して、読取部のメンテナンスが行えるようにする。また、所定の空間が確保された状態で、シェーディングユニットを読取部の近傍に移動させて、シェーディング補正を行うこともできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した長尺の印刷媒体を搬送する搬送路の読取り位置に配置され、前記印刷媒体に形成された画像を読取る読取部と、
前記読取部に配置されたイメージセンサの読取値を補正するシェーディング補正を行うための基準色部材を有するシェーディングユニットと、
前記シェーディングユニットを前記読取部の読取り位置と後退位置との間に移動させる移動部と、
前記読取部の読取り位置から前記印刷媒体を退避させる退避部と、を備え、
前記退避部は、前記読取部による読取り時に、前記印刷媒体を前記読取部の読取り位置に配置させ、前記読取部による読取り終了時に、前記印刷媒体を前記読取部の印読取り位置から退避させて、前記読取部と前記印刷媒体との間に所定の空間を確保することを特徴とする
画像読取装置。
【請求項2】
前記退避部による退避を行った長尺の前記印刷媒体の搬送を前記搬送路が継続して行うことで、前記画像読取装置に接続された画像形成装置での前記印刷媒体への画像形成を、前記退避部による退避中に継続して行えることを特徴とする
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記印刷媒体の読取りを中止して、前記退避部により前記印刷媒体を前記読取部の印読取り位置から退避させてから、前記退避部により前記印刷媒体を前記読取部の印読取り位置に復帰させるまで、前記画像読取装置に接続された画像形成装置での前記印刷媒体への画像形成を停止することを特徴とする
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記退避部による退避を行った長尺の前記印刷媒体の搬送を前記搬送路が継続して行うことで、前記画像読取装置に接続された画像形成装置での前記印刷媒体への画像形成を、前記退避部による退避中に継続して行う第1処理と、
前記印刷媒体の読取りを中止して、前記退避部により前記印刷媒体を前記読取部の印読取り位置から退避させてから、前記退避部により前記印刷媒体を前記読取部の読取り位置に復帰させるまで、前記画像読取装置に接続された画像形成装置での前記印刷媒体への画像形成を停止する第2処理と、を選択できるようにしたことを特徴とする
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記退避部により前記印刷媒体を退避させる場合と退避させない場合とで、前記搬送路により搬送される前記印刷媒体の搬送長をほぼ等しくしたことを特徴とする
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記退避部は、手動操作又は所定の操作指示に基づいた駆動によって前記読取部の読取り位置から前記印刷媒体を退避させることを可能とすることを特徴とする
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項7】
連続した印刷媒体を搬送する搬送路の途中の第1の箇所に配置され、前記印刷媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記搬送路の途中の前記第1の箇所よりも搬送方向の下流の第2の箇所に配置され、前記画像形成部で前記印刷媒体に形成された画像を読取る読取部と、
前記読取部に配置されたイメージセンサの読取値を補正するシェーディング補正を行うための基準色部材を有するシェーディングユニットと、
前記シェーディングユニットを前記読取部の前記第2の箇所と後退位置との間に移動させる移動部と、
前記読取部の近傍の前記第2の箇所から前記印刷媒体を退避させる退避部と、を備え、
前記退避部は、前記読取部による読取り時に、前記印刷媒体を前記第2の箇所に配置させ、前記読取部による読取り終了時に、前記印刷媒体を前記第2の箇所から退避させて、前記読取部と前記印刷媒体との間に所定の空間を確保することを特徴とする
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関し、特にイメージセンサ又は測色計を備えて画像を読取る際に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置にて、紙やフィルム等の印刷媒体に印刷を行う際には、印刷媒体に印刷された画像をスキャナなどで読取り、読取った画像データを印刷原稿データと比較して、正しく印刷できたか否かを検査している。
このような検査としては、例えば、印刷された画像全体をスキャナで読取って、印刷画像に汚れの有無やインクの付着量が正しいか等の印刷品質を判断している。
【0003】
スキャナは、定期的に印刷媒体の代わりに色見本となるシェーディング部材を読み取って、その読取値を補正するシェーディング補正を行う必要がある。
【0004】
特許文献1には、画像形成装置が備える読取部に、シェーディング補正用のシェーディング部材を移動させて、シェーディング補正を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでスキャナは、印刷媒体である用紙やフィルムと非常に近接した状態で、印刷媒体に形成された画像の読取りを行っている。具体的には、スキャナの先端と印刷媒体とは、数mm程度の距離で近接している。したがって、スキャナの先端の読取面のガラスにゴミなどが付着した場合の清掃は、一旦印刷媒体を読取装置から外して、読取面のガラスの近傍で作業者が作業できる空間を確保してから行う必要があった。このため、スキャナなどのメンテナンスには手間がかかるという問題があった。
【0007】
特に印刷媒体として、長尺のロール紙やロールフィルム等の連続印刷媒体を使用する場合には、印刷の途中で印刷媒体を装置から外すのは非常に手間と時間がかかる。このため、印刷途中でスキャナのメンテナンスが必要になると、多大な時間を必要としていた。
【0008】
また、スキャナなどの読取部では、特許文献1に記載されるようにシェーディング部材を読取部に移動させて、シェーディング補正の作業を行う必要がある。ここで、上述したようにスキャナの先端と印刷媒体との間の距離が短いので、長尺の連続印刷媒体が取り外せない状況でシェーディング補正を行う必要がある。このため、シェーディング部材を小型に構成して、わずかな隙間に配置させる必要があり、シェーディング補正用の機構が複雑化するという問題があった。
【0009】
本発明は、スキャナなどの読取部を備えた場合に、その読取部のメンテナンスや補正を容易に行うことが可能な画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像読取装置は、連続した印刷媒体を搬送する搬送路の読取り位置に配置され、印刷媒体に形成された画像を読取る読取部と、読取部に配置されたイメージセンサの読取値を補正するシェーディング補正を行うための基準色部材を有するシェーディングユニットと、シェーディングユニットを読取部の読取り位置と後退位置との間で移動させる移動部と、読取部の近傍の所定箇所から印刷媒体を退避させる退避部と、を備える。
そして、退避部は、読取部による読取り時に、印刷媒体を読取部の読取り位置に配置させ、読取部による読取り終了時に、印刷媒体を読取部の読取り位置から退避させて、読取部と印刷媒体との間に所定の空間を確保することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、連続した印刷媒体を搬送する搬送路の途中の第1の箇所に配置され、印刷媒体に画像を形成する画像形成部と、搬送路の途中の第1の箇所よりも搬送方向の下流の第2の箇所に配置され、画像形成部で印刷媒体に形成された画像を読取る読取部と、読取部に配置されたイメージセンサの読取値を補正するシェーディング補正を行うための基準色部材を有するシェーディングユニットと、シェーディングユニットを読取部の読取り位置と後退位置との間で移動させる移動部と、読取部の近傍の第2の箇所から印刷媒体を退避させる退避部と、を備える。
そして退避部は、読取部による読取り時に、印刷媒体を第2の箇所に配置させ、読取部による読取り終了時に、印刷媒体を第2の箇所から退避させて、読取部と印刷媒体との間に所定の空間を確保することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、読取部が印刷媒体を読取る箇所で、退避部により印刷媒体を退避させることができ、連続した印刷媒体が装置に装着された状態のままで、読取部と印刷媒体との間に形成される空間を利用して、読取部に設置されたガラスの清掃などのメンテナンスを行うことが可能になる。
また、読取部と印刷媒体との間に空間が形成された状態で、シェーディングユニットを移動させることで、読取部のシェーディング補正を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態例による画像読取装置の例を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例による画像読取装置が接続された画像形成装置の全体の例を示す構成図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例による画像読取装置の動作例(印刷媒体の搬送路が後退した状態)を示す構成図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例による画像読取装置の動作例(シェーディングユニットがスキャナの真下に移動した状態)を示す構成図である。
【
図5】本発明の一実施の形態例による印刷媒体の搬送路が後退した状態の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して順に説明する。
【0015】
[全体構成]
図1は本例の画像読取装置の構成を示し、
図2は本例の画像読取装置が接続された画像形成装置としての全体の構成を示す。
図1と
図2では、各装置の内部の画像形成が行われる印刷媒体の搬送経路上の構成が示されている。
【0016】
まず、
図1に示す画像読取装置300を説明する前に、
図2を参照して画像形成装置に接続される全体の構成を説明する。
図2に示す例では、右側から順に、用紙送り装置100、画像形成装置200、画像読取装置300が接続されている。なお、
図2に示すように画像形成装置200に用紙送り装置100や画像読取装置300が接続されたシステム全体を、画像形成装置とみなすこともできるが、以下の説明では、画像形成工程を行う装置単体を画像形成装置200とする。また、本例の画像形成装置200に装着可能な長尺の印刷媒体である連続印刷媒体11は、白色の紙又はフィルムで形成された媒体の他、白色以外の様々な色の紙又はフィルムで形成された媒体とすることもできる。さらに、透明又は半透明なフィルムで形成された媒体とすることもできる。
【0017】
用紙送り装置100には、不図示の用紙供給側ローラから連続印刷媒体11が供給され、連続印刷媒体11の搬送路に複数のローラ101~103が配置されている。そして、用紙送り装置100は、連続印刷媒体11を所定の速度で画像形成装置200に送り出す処理を行う。
【0018】
画像形成装置200は、画像形成部を構成する処理部として、トナー像形成ユニット210と、転写部220と、定着部230とを備える。トナー像形成ユニット210は、イエローY、マゼンタM、シアンC、黒K、白Wなどの各色のトナー像を、転写部220の転写ベルト221に形成する。
転写部220は、転写ベルト221に形成された各色のトナー像を、転写ローラ222で連続印刷媒体11の表面に転写する。
【0019】
定着部230は、定着ローラ231,232を備え、連続印刷媒体11を定着ローラ231,232の間を通過させることで、連続印刷媒体11を加熱して、転写された像である印刷画像を連続印刷媒体11に定着する。なお、定着部230では、例えば100℃程度に連続印刷媒体11が加熱される。
【0020】
画像形成装置200内の連続印刷媒体11の搬送路の途中には、転写ローラ222や定着ローラ231,232の他に、複数のローラ201~205が配置されている。但し、搬送路の定着部230よりも搬送方向の下流側には、連続印刷媒体11の裏面側(印刷画像が形成された面とは反対側)と接するローラ205だけが配置され、連続印刷媒体11の表面側はローラとは接しない。各ローラ201~205は、例えば金属製である。なお、以下の説明で下流や上流という場合は、連続印刷媒体11の搬送方向から見た下流や上流である。
画像形成装置200により印刷画像が形成された連続印刷媒体11は、画像読取装置300に送られる。
なお、画像形成装置200は、不図示の操作パネルが取り付けられ、操作パネル上のボタン操作などに基づいた、画像形成装置200内の制御部(不図示)からの指示で、連続印刷媒体11への画像形成(印刷)動作の開始や停止、各種モード設定などが行われる。
【0021】
[画像読取装置の構成]
次に、
図1を参照して画像読取装置300の構成を説明する。
画像読取装置300は、冷却ユニット320と、スキャナユニット330と、シェーディングユニット350と、測色計ユニット360とを備える。連続印刷媒体11は、これらのユニットを順に通過する。また、スキャナユニット330は、スキャナバッキング部340を有し、測色計ユニット360は、測色計バッキング部370を有する。
また、画像読取装置300内の連続印刷媒体11の搬送路の途中には、複数のローラ301~310が配置されている。各ローラ301~310は、例えば金属製である。
【0022】
画像読取装置300の内部に搬送された連続印刷媒体11は、冷却ユニット320の近傍を通過する。冷却ユニット320には、複数個の冷却ファン321~323が配置され、連続印刷媒体11を冷却する。
図1では、連続印刷媒体11が上側から下側に垂直に搬送される構成としてあり、垂直に3個並んだ冷却ファン321~323で、搬送される連続印刷媒体11を冷却する。冷却ファン321~323としては、例えばシロッコファンと称される、板状の羽が回転する筒に取り付けられた形式のものが使用される。あるいは、冷却ファン321~323として、プロペラを備えたファンを使用してもよい。
【0023】
連続印刷媒体11は、
図2で説明したように画像形成装置200の定着部230で100℃程度に加熱されているため、画像読取装置300に供給される時点で、連続印刷媒体11は、例えば70℃程度の高温になっている。このため、冷却ファン321~323からの冷却風を連続印刷媒体11に向けて供給することで、常温程度に冷却するようにしている。
【0024】
搬送方向に複数個(3個)の冷却ファン321~323を並べて順分な冷却性能を持たせる必要がある場合、
図1に示すように、連続印刷媒体11の搬送路を垂直に配置し、各冷却ファン321~323を垂直(縦)に並べることで、画像読取装置300の小型化に貢献する。すなわち、水平に搬送路を配置して、複数の冷却ファンを水平方向に並べると、それだけ画像読取装置300が水平方向に大型化し好ましくないが、本例の構成とすることで、画像読取装置300を小型に構成することができる。
【0025】
なお、
図1では、垂直方向に3個並んだ冷却ファン321~323を示すが、連続印刷媒体11の横幅が広い場合には、水平方向(
図1での手前から奥に向かう方向)にも、複数個の冷却ファンをならべてもよい。例えば、垂直方向3個×水平方向3個の合計9個の冷却ファンを設置してもよい。
【0026】
また、連続印刷媒体11の搬送路は、画像読取装置300に連続印刷媒体11が取り込まれてから、冷却ユニット320により冷却されるまでの間に配置されたローラ301は、連続印刷媒体11の裏面、つまり画像形成面とは反対側の面と接するように配置されている。また、
図2で説明したように、画像形成装置200内の定着部230よりも下流側に配置されたローラ205も、連続印刷媒体11の裏面と接するように配置されている。
【0027】
これにより、画像形成装置200の定着部230で加熱された連続印刷媒体11が冷却ユニット320で冷却されるまでの間は、画像形成面がローラ等と接することがない。よって、連続印刷媒体11に形成された画像が高温状態でローラと接触することで、トナーやインクが乱れることを防止でき、印刷画像の高画質化に貢献することができる。
【0028】
冷却ユニット320で冷却された連続印刷媒体11は、2つのローラ302,303で上側に搬送され、ローラ304,305を通過して、画像読取装置300内の上部で水平に搬送される。この水平に搬送される連続印刷媒体11の表面に近接した状態で、スキャナユニット330が配置される。
【0029】
スキャナユニット330は、画像読取装置300が備える読取部の一つである。
図1に示すスキャナユニット330では、用紙近接面331からユニット内に入射した像光が、複数個のミラー332~336で反射された後、光学系337を通過して、イメージセンサ338に結像される。そして、イメージセンサ338により連続印刷媒体11上に記録された画像が読み取られる。イメージセンサ338は、例えばラインセンサで構成することができる。
【0030】
スキャナユニット330で読取った画像のデータは、不図示の画像検査処理部に供給され、画像形成装置200で形成された画像が、原稿と等しいか否か等、つまり原稿と同じものであるかどうか等の検査処理が行われる。
なお、
図1に示すようにスキャナユニット330内である程度の光路長がある状態で、イメージセンサ338に結像させることで、イメージセンサ338に正しく結像できる範囲を広くすることができる。したがって、
図1に示す構成によると、連続印刷媒体11の表面に形成された画像を、イメージセンサ338で正しく読取ることができる。
【0031】
連続印刷媒体11を挟んで、スキャナユニット330の用紙近接面331とは反対側には、スキャナバッキング部340が配置される。スキャナバッキング部340は、スキャナユニット330で読取る際の背景色を適正な色とするためのものである。
【0032】
スキャナバッキング部340は、退避部380のローラ保持部材381に取り付けられている。ローラ保持部材381は、スキャナユニット330の上流側と下流側に配置された2つのローラ305,306を保持する部材である。このローラ保持部材381により、連続印刷媒体11を退避させる処理が行われる。
【0033】
すなわち、退避部380のローラ保持部材381は、回動支点382,383を中心として回動可能な2つの脚部384,385に接続されている。そして、円形に曲がったガイド溝386,387に沿って脚部384,385を回動させることで、スキャナユニット330から連続印刷媒体11の搬送路を退避位置に離すことができる。
【0034】
ローラ保持部材381の移動によりスキャナユニット330から連続印刷媒体11の搬送路が離れる際には、ローラ保持部材381に取り付けられたスキャナバッキング部340も退避位置に連動して移動する。ローラ保持部材381が退避位置に移動したとき、連続印刷媒体11は、ローラ305,306の他に、ローラ304とローラ307によって搬送路の進行方向が変化する。なお、ローラ保持部材381が退避位置に移動したときの状態については後述する。
【0035】
この退避部380のローラ保持部材381を退避位置に移動させる動作及び元の位置に復帰させる動作は、退避部380に内蔵されたモータなどの駆動機構(不図示)を駆動することにより行われる。また、ローラ保持部材381を作業者が手で持って、手動操作によりローラ保持部材381を退避位置に移動させる動作及び元の位置に復帰させる動作を行うことも可能である。
【0036】
なお、連続印刷媒体11の搬送路がスキャナユニット330から離れた退避位置にあるときの連続印刷媒体11の搬送路の長さと、連続印刷媒体11がスキャナユニット330の近接位置にあるときの連続印刷媒体11の搬送路の長さは、ほぼ等しい。
【0037】
ローラ保持部材381の脇(
図1の左横)には、シェーディングユニット350が配置される。このシェーディングユニット350は、移動部352による駆動で、水平方向(
図1での左右方向)に移動が可能である。そして、スキャナユニット330からローラ保持部材381が移動して離れた状態で、スキャナユニット330の真下となる位置までシェーディングユニット350を移動させることができる。
【0038】
スキャナユニット330を通過した連続印刷媒体11は、ローラ306で下側に垂直に搬送され、ローラ308で再び水平方向の搬送状態になる。
ローラ308で水平方向に搬送されるようになった連続印刷媒体11の表面(上側の面)に近接して、測色計ユニット360が配置される。
【0039】
測色計ユニット360は、画像読取装置300が備える読取部の一つである。
測色計ユニット360には、測色計が内蔵されており、この測色計ユニット360により、連続印刷媒体11の特定箇所の色を測定する測色処理が行われる。そして、測色計における測色結果に基づいて、例えばスキャナユニット330で読取った画像の色の補正が行われる。
【0040】
測色計ユニット360の用紙近接面361とは反対側には、連続印刷媒体11を挟んで測色計バッキング部370が配置される。測色計バッキング部370は、測色計ユニット360で読取る際の背景色を適正な色とするためのものである。
測色計ユニット360を通過した連続印刷媒体11は、ローラ309,310を介して画像読取装置300の外部に搬送され、不図示の巻取りロールとして巻き取られる。
【0041】
[退避部とシェーディングユニットの動作例]
図3は、退避部380のローラ保持部材381を退避位置に移動させた際の状態を示している。
図3に示すように、円形に曲がったガイド溝386,387に沿って脚部384,385を回動させると、ローラ保持部材381を退避位置に移動させることができる。この退避位置への移動は、退避部380に内蔵された駆動機構により自動的に行われるが、作業員が手動で行うようにすることもできる。
退避部380に内蔵された駆動機構により自動的に行う例としては、例えば画像形成装置200の操作パネル(不図示)で、読取部の退避を指示するボタンの操作があるときに、退避部380により自動的に退避動作が行われる。あるいは、シェーディング補正を行う操作がある場合や、シェーディング補正を行うタイミングになったときにも、退避部380により自動的に退避動作が行われる。
また、手動の操作としては、ローラ保持部材381などに予め手動操作用のレバーを取り付けておき、そのレバーを作業員が握ってローラ保持部材381を動かすことで行われる。なお、手動操作をした場合であっても、画像読取装置300内の不図示のセンサが、退避位置にあることを検知して、自動的な駆動時と同様に、画像読取装置300や画像形成装置200は、退避位置に適した動作制御を行う。
【0042】
図3に示すように、ローラ保持部材381を移動させることで、スキャナユニット330の用紙近接面331と、連続印刷媒体11との間に十分な空間を確保することができる。
したがって、例えば、確保された空間を利用して、作業者がスキャナユニット330の用紙近接面331(ガラス面)を清掃する等のメンテナンス作業を行うことが可能になる。
【0043】
図4は、退避部380のローラ保持部材381を退避位置に移動させた上で、さらにシェーディングユニット350を水平方向Maに移動(
図4では右側の移動)させて、シェーディング補正を行うときの状態を示す。
図4に示すように、シェーディングユニット350は、退避部380のローラ保持部材381を退避位置に移動させることで生じた空間に挿入される。したがって、シェーディングユニット350を十分なサイズで構成することができ、無理のない配置で、シェーディングユニット350やその駆動機構を設置することができる。
【0044】
図5は、連続印刷媒体11の退避状態とシェーディングユニット350を移動させた場合の、スキャナユニット330との位置関係を示す図である。
図5に示すように、退避部380のローラ保持部材381の退避時には、ローラ305,306がθ1方向に移動することで、スキャナユニット330の用紙近接面331と、連続印刷媒体11との間には、所定の高さH1が確保される。
したがって、シェーディングユニット350をこの高さH1以内の厚さで構成することにより、スキャナユニット330の真下にシェーディングユニット350を移動させることができる。
【0045】
スキャナユニット330の真下にシェーディングユニット350が位置すると、シェーディングユニット350に配置した基準色部材351が、用紙近接面331に接近して対向する。したがって、スキャナユニット330内のイメージセンサ338(
図1)は、基準色部材351に形成された基準色の箇所をスキャンして、読取値を補正するシェーディング補正を行うことができる。
このシェーディング補正は、連続印刷媒体11を搬送路に装着したままで行われるので、シェーディング補正時に連続印刷媒体11を取り外す作業が不要になり、シェーディング補正を効率よく随時行うことが可能になる。
【0046】
なお、
図5に示すシェーディング補正を行う場合には、スキャナユニット330による連続印刷媒体11の読取りは中止される。したがって、スキャナユニット330による連続印刷媒体11の読取りを中止してから再開するまで、画像形成装置200での連続印刷媒体11への画像形成を停止するのが好ましい。
但し、シェーディング補正時には、スキャナユニット330による検査が一時的に行えなくなるだけなので、印刷作業の生産性を優先する場合には、
図5に示す状態であっても、画像形成装置200での連続印刷媒体11への画像形成と、画像が形成された連続印刷媒体11の搬送は継続して行うことも可能である。
【0047】
したがって、本例の画像読取装置300は、シェーディング補正などを行う際の動作モードとして、第1処理と第2処理を選択できるようにするのが好ましい。第1処理と第2処理は、例えば画像形成装置の操作パネル上でのボタン操作などで、予めいずれの処理を行うモードとするのかを選択することができる。
第1処理は、連続印刷媒体11の検査のための読取りを中止してから再開するまで、画像形成装置200での連続印刷媒体11への画像形成を停止する動作モードであり、検査を確実に行う際に選択されるモードである。この第1処理は、読取部であるスキャナユニット330による読取り終了時に、退避部380により連続印刷媒体11を印読取り位置から退避させて、スキャナユニット330と連続印刷媒体11との間に所定の空間を確保させる。そして、シェーディング補正又はスキャナユニット330のメンテナンスが完了した後のスキャナユニット330による読取り開始時に、退避部380は、連続印刷媒体11を元の読取り位置に復帰させる処理が行われる。
【0048】
第2処理は、連続印刷媒体11の検査のための読取りを中止して、退避部380により連続印刷媒体11を印読取り位置から退避させて、スキャナユニット330と連続印刷媒体11との間に所定の空間を確保させてから、退避部380で元の位置まで復帰させてスキャナユニット330による読取りが再開するまで、画像形成装置200での連続印刷媒体11への画像形成を継続して行い、画像形成に伴って連続印刷媒体11の搬送も継続して行う動作モードであり、印刷の生産性を優先する際に選択されるモードである。
【0049】
また、本例の画像読取装置300では、連続印刷媒体11を退避部380で退避させた場合であっても、搬送路全体の長さは退避させない場合とほぼ同じであり、退避動作の実行で連続印刷媒体11が撓む等の不具合が発生することがない。
さらに、上述した第1処理を行う動作モードとした場合には、スキャナユニット330による検査を停止した連続印刷媒体11上の箇所と、検査を再開する箇所をほぼ等しくすることができるので、検査を全ての箇所に行うことができる。
【0050】
[変形例]
なお、上述した実施の形態例では、
図2に示すように、画像形成装置200と接続されて、画像形成と同時に画像読取りを行う画像読取装置300に適用した。これに対して、別体の画像形成装置で既に画像が形成された印刷媒体を、単体の画像読取装置に装着して画像読取りを行うようにしてもよい。
また、画像形成装置200として、
図2に示すようにトナー像を定着部230で印刷媒体に定着させる構成についても一例であり、インクを使用したインクジェット方式などのその他の方式の画像形成装置に本発明を適用してもよい。
【0051】
また、上述した実施の形態例で説明した画像読取装置は、スキャナユニット330のシェーディング補正を行うようにしたが、測色計ユニット360も、同様の機構により補正を行うようにしてもよい。
【0052】
また、
図1に示すスキャナユニット330としての画像読取りを行う構成についても一例であり、その他の構成のセンサで画像読取りを行ってもよい。例えば、レンズ等による光学系を使用しない、用紙近接面331にラインセンサを配置した構成のスキャナで画像読取りする構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11…連続印刷媒体、100…用紙送り装置、200…画像形成装置、201~205…ローラ(ガイド部材)、210…トナー像形成ユニット、220…転写部、221…転写ベルト、222…転写ローラ、230…定着部、231,232…定着ローラ、300…画像読取装置、301~310…ローラ(ガイド部材)、320…冷却ユニット、321~323…冷却ファン、330…スキャナユニット、331…用紙近接面、332~336…ミラー、337…光学系、338…イメージセンサ、340…スキャナバッキング部、341…バッキング部材、341B…黒色部、341W…白色部、350…シェーディングユニット、351…基準色部材、352…移動部、360…測色計ユニット、361…用紙近接面、370…測色計バッキング部、371…バッキング部材、371B…黒色部、371W…白色部、380…退避部、381…ローラ保持部材、382,383…回動支点、384,385…脚部、386,386…ガイド溝