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特開2022-172550炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172550
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20221110BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C30B29/36 A
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078399
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋典
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077AB10
4G077BE08
4G077DB04
4G077DB07
4G077EG22
4G077GA10
4G077HA12
5F045AA03
5F045AB06
5F045AC01
5F045AC07
5F045AC12
5F045AD18
5F045AF02
5F045DP04
5F045DP28
5F045EK03
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】炭化珪素半導体装置の製造工程において、露光不良が発生する確率を低減可能な炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板の各々とは異なる第2炭化珪素基板を選別するための基準が決定される。第2炭化珪素基板のLTVが測定される。第2炭化珪素基板のLTVが基準を満たすか否かが判定される。基準を満たす第2炭化珪素基板上に第2炭化珪素エピタキシャル層が形成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1炭化珪素基板を準備する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVを測定する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板を得る工程と、
前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVを測定する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVと前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVとの関係に基づいて、前記複数の第1炭化珪素基板の各々とは異なる第2炭化珪素基板を選別するための基準を決定する工程と、
前記第2炭化珪素基板のLTVを測定する工程と、
前記第2炭化珪素基板のLTVが前記基準を満たすか否かを判定する工程と、
前記基準を満たす前記第2炭化珪素基板上に第2炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、を備えた、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項2】
前記複数の第1炭化珪素基板は、前記第1炭化珪素エピタキシャル層と接する主面を有しており、
前記主面は、複数の正方領域に区分され、
前記複数の正方領域の各々の一辺の長さは、10mmであり、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVを測定する工程においては、前記複数の正方領域の各々においてLTVが測定され、
前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVを測定する工程においては、前記複数の正方領域の各々においてLTVが測定される、請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項3】
前記第2炭化珪素基板のLTVが前記基準を満たすか否かを判定する工程において、前記複数の正方領域の各々におけるLTVが1.0μm未満である領域の面積率が90%以上の場合、前記第2炭化珪素基板のLTVが前記基準を満たすと判定される、請求項2に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項4】
複数の第1炭化珪素基板を準備する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTIRを測定する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板を得る工程と、
前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTIRを測定する工程と、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTIRと前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTIRとの関係に基づいて、前記複数の第1炭化珪素基板の各々とは異なる第2炭化珪素基板を選別するための基準を決定する工程と、
前記第2炭化珪素基板のLTIRを測定する工程と、
前記第2炭化珪素基板のLTIRが前記基準を満たすか否かを判定する工程と、
前記基準を満たす前記第2炭化珪素基板上に第2炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、を備えた、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第1炭化珪素基板は、前記第1炭化珪素エピタキシャル層と接する主面を有しており、
前記主面は、複数の正方領域に区分され、
前記複数の正方領域の各々の一辺の長さは、10mmであり、
前記複数の第1炭化珪素基板の各々のLTIRを測定する工程においては、前記複数の正方領域の各々においてLTIRが測定され、
前記複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTIRを測定する工程においては、前記複数の正方領域の各々においてLTIRが測定される、請求項4に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項6】
前記第2炭化珪素基板のLTIRが前記基準を満たすか否かを判定する工程において、前記複数の正方領域の各々におけるLTIRが1.0μm未満である領域の面積率が90%以上の場合、前記第2炭化珪素基板のLTIRが前記基準を満たすと判定される、請求項5に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法により製造された炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程と、
前記炭化珪素エピタキシャル基板を加工する工程と、を備えた、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大谷昇、「大口径SiC単結晶基板の開発動向」、Journal of the Vacuum Society of Japan、54巻、6号、339-345頁、2011年(非特許文献1)には、炭化珪素基板の加工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】大谷昇、「大口径SiC単結晶基板の開発動向」、Journal of the Vacuum Society of Japan、54巻、6号、339-345頁、2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、炭化珪素半導体装置の製造工程において、露光不良が発生する確率を低減可能な炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は以下の工程を備えている。複数の第1炭化珪素基板が準備される。複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素基板の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板が得られる。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素基板の各々のLTVと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTVとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板の各々とは異なる第2炭化珪素基板を選別するための基準が決定される。第2炭化珪素基板のLTVが測定される。第2炭化珪素基板のLTVが基準を満たすか否かが判定される。基準を満たす第2炭化珪素基板上に第2炭化珪素エピタキシャル層が形成される。
【0006】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は以下の工程を備えている。複数の第1炭化珪素基板が準備される。複数の第1炭化珪素基板の各々のLTIRが測定される。複数の第1炭化珪素基板の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板が得られる。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTIRが測定される。複数の第1炭化珪素基板の各々のLTIRと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々のLTIRとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板の各々とは異なる第2炭化珪素基板を選別するための基準が決定される。第2炭化珪素基板のLTIRが測定される。第2炭化珪素基板のLTIRが基準を満たすか否かが判定される。基準を満たす第2炭化珪素基板上に第2炭化珪素エピタキシャル層が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、炭化珪素半導体装置の製造工程において、露光不良が発生する確率を低減可能な炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、炭化珪素エピタキシャル基板の構成を示す平面模式図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。
図3図3は、LTVおよびLTIRの測定領域を示す平面模式図である。
図4図4は、LTVの定義を説明する模式図である。
図5図5は、LTIRの定義を説明する模式図である。
図6図6は、炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置の構成を示す一部断面模式図である。
図7図7は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図8図8は、複数の第1炭化珪素基板の各々の構成を示す断面模式図である。
図9図9は、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板の各々の構成を示す断面模式図である。
図10図10は、第1炭化珪素基板の第1面積率(LTVが0.8μm未満である領域の面積率)と、第1炭化珪素エピタキシャル基板の第2面積率(LTVが1.0μm未満である領域の面積率)との関係を示す図である。
図11図11は、第2炭化珪素基板の構成を示す断面模式図である。
図12図12は、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図13図13は、第1炭化珪素基板の第1面積率(LTIRが0.8μm未満である領域の面積率)と、第1炭化珪素エピタキシャル基板の第2面積率(LTIRが1.0μm未満である領域の面積率)との関係を示す図である。
図14図14は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図15図15は、ボディ領域を形成する工程を示す断面模式図である。
図16図16は、ソース領域を形成する工程を示す断面模式図である。
図17図17は、炭化珪素エピタキシャル層の第2主面にトレンチを形成する工程を示す断面模式図である。
図18図18は、ゲート絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。
図19図19は、ゲート電極および層間絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。
図20図20は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”-”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0010】
(1)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は以下の工程を備えている。複数の第1炭化珪素基板14が準備される。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素基板14の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層15を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100が得られる。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVが測定される。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なる第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。第2炭化珪素基板24のLTVが測定される。第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすか否かが判定される。基準を満たす第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25が形成される。
【0011】
(2)上記(1)に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、複数の第1炭化珪素基板14は、第1炭化珪素エピタキシャル層15と接する主面を有していてもよい。主面は、複数の正方領域に区分されてもよい。複数の正方領域の各々の一辺の長さは、10mmであってもよい。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVを測定する工程においては、複数の正方領域の各々においてLTVが測定されてもよい。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVを測定する工程においては、複数の正方領域の各々においてLTVが測定されてもよい。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすか否かを判定する工程において、複数の正方領域50の各々におけるLTVが1.0μm未満である領域の面積率が90%以上の場合、第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすと判定されてもよい。
【0013】
(4)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は以下の工程を備えている。複数の第1炭化珪素基板14が準備される。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRが測定される。複数の第1炭化珪素基板14の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層15を形成することにより複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100が得られる。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRが測定される。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なる第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。第2炭化珪素基板24のLTIRが測定される。第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすか否かが判定される。基準を満たす第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25が形成される。
【0014】
(5)上記(4)に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、複数の第1炭化珪素基板14は、第1炭化珪素エピタキシャル層15と接する主面を有していてもよい。主面は、複数の正方領域50に区分されてもよい。複数の正方領域50の各々の一辺の長さは、10mmであってもよい。複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRを測定する工程においては、複数の正方領域50の各々においてLTIRが測定されてもよい。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRを測定する工程においては、複数の正方領域50の各々においてLTIRが測定されてもよい。
【0015】
(6)上記(4)または(5)に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすか否かを判定する工程において、複数の正方領域50の各々におけるLTIRが1.0μm未満である領域の面積率が90%以上の場合、第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすと判定されてもよい。
【0016】
(7)本開示に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は以下の工程を備えている。上記(1)から(6)のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法により製造された炭化珪素エピタキシャル基板が準備される。炭化珪素エピタキシャル基板が加工される。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0018】
まず、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の構成について説明する。図1は、炭化珪素エピタキシャル基板200の構成を示す平面模式図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面模式図である。
【0019】
図1および図2に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200は、第2炭化珪素基板24と、第2炭化珪素エピタキシャル層25とを有している。第2炭化珪素エピタキシャル層25は、第2炭化珪素基板24上にある。第2炭化珪素エピタキシャル層25は、第2炭化珪素基板24に接している。炭化珪素エピタキシャル基板200は、第1主面21と、第2主面22とを有している。第2主面22は、第1主面21の反対側にある。
【0020】
第1主面21は、第2炭化珪素基板24により構成されている。第2主面22は、第2炭化珪素エピタキシャル層25により構成されている。第2炭化珪素基板24は、第3主面23を有している。第3主面23は、第2炭化珪素エピタキシャル層25に接している。第2炭化珪素基板24を構成する炭化珪素のポリタイプは、たとえば4Hである。第2炭化珪素エピタキシャル層25を構成する炭化珪素のポリタイプは、たとえば4Hである。
【0021】
図1に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板200の厚み方向に見て、炭化珪素エピタキシャル基板200は、外周側面9を有している。外周側面9は、たとえばオリエンテーションフラット7と、円弧状部8とを有している。オリエンテーションフラット7は、第1方向101に沿って延在している。図1に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板200の厚み方向に見て、オリエンテーションフラット7は直線状である。円弧状部8は、オリエンテーションフラット7に連なっている。炭化珪素エピタキシャル基板200の厚み方向に見て、円弧状部8は、円弧状である。
【0022】
図1に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板200の厚み方向に見て、第2主面22は、第1方向101および第2方向102の各々に沿って延在している。炭化珪素エピタキシャル基板200の厚み方向に見て、第1方向101は、第2方向102に対して垂直な方向である。
【0023】
第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第1方向101は、たとえば[11-20]方向であってもよい。第1方向101は、<11-20>方向を第2主面22に射影した方向であってもよい。別の観点から言えば、第1方向101は、たとえば<11-20>方向成分を含む方向であってもよい。
【0024】
第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。第2方向102は、たとえば[1-100]方向であってもよい。第2方向102は、たとえば<1-100>方向を第2主面22に射影した方向であってもよい。別の観点から言えば、第2方向102は、たとえば<1-100>方向成分を含む方向であってもよい。
【0025】
図1に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板200の直径(第1幅W1)は、特に限定されないが、たとえば100mm(4インチ)以上である。第1幅W1は、125mm(5インチ)以上でもよいし、150mm(6インチ)以上でもよい。第1幅W1の上限は、特に限定されない。第1幅W1は、たとえば200(8インチ)mm以下であってもよい。
【0026】
なお本明細書において、4インチは、100mm又は101.6mm(4インチ×25.4mm/インチ)のことである。5インチは、125mm又は127.0mm(5インチ×25.4mm/インチ)のことである。6インチは、150mm又は152.4mm(6インチ×25.4mm/インチ)のことである。8インチは、200mm又は203.2mm(8インチ×25.4mm/インチ)のことである。
【0027】
炭化珪素エピタキシャル基板200の第2主面22は、たとえば{0001}面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。具体的には、第2主面22は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。第1主面21は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0028】
オフ角の上限は、特に限定されないが、たとえば6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。オフ角の下限は、特に限定されないが、たとえば2°以上であってもよいし、1°以上であってもよい。オフ方向は、特に限定されないが、たとえば<11-20>方向であってもよいし、<0001>方向であってもよい。
【0029】
第2炭化珪素基板24は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含んでいる。第2炭化珪素基板24の導電型は、たとえばn型(第1導電型)である。この場合、キャリアは電子である。第2炭化珪素基板24のキャリア濃度は、たとえば1×1019-3以上1×1020cm-3以下である。第2炭化珪素基板24の厚みは、特に限定されないが、たとえば200μm以上500μm以下であってもよい。
【0030】
第2炭化珪素エピタキシャル層25は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含んでいる。第2炭化珪素エピタキシャル層25の導電型は、たとえばn型(第1導電型)である。この場合、キャリアは電子である。第2炭化珪素エピタキシャル層25のキャリア濃度は、たとえば1×1014cm-3以上1×1019cm-3以下である。第2炭化珪素エピタキシャル層25の厚みは、特に限定されないが、たとえば2μm以上100μm以下であってもよい。
【0031】
次に、基板のLTV(Local Thickness Variation)およびLTIR(Local Total Indicated Reading)の測定方法について説明する。LTVおよびLTIRは、たとえばCorning Tropel社製の「Tropel FlatMaster(登録商標)」を用いて測定可能である。
【0032】
図3は、LTVおよびLTIRの測定領域を示す平面模式図である。図3に示されるように、基板の測定面Aが、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50の各々の1辺の長さ(W2)は、たとえば10mmである。測定面Aの直径(W1)は、たとえば150mmである。まず、基板の外周側面9に外接する150mm×150mmの正方形が想定される。150mm×150mmの正方形は、10mm×10mmの正方領域(15×15=225個)に区分される。基板の厚み方向に見て、外周側面9に囲まれている正方領域50の数は、145個である。基板の厚み方向に見て、外周側面9と交差する正方領域は、一部が欠けており完全な正方領域とはならない。そのため、外周側面9と交差する正方領域は、測定面Aを構成する正方領域50とはみなさない。なお、基板の厚み方向に見て、複数の正方領域50の各々一辺は、オリエンテーションフラット7の延在方向に平行である。
【0033】
図3に示されるように、測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVおよびLTIRが測定される。
【0034】
次に、LTVの定義について説明する。図4は、LTVの定義を説明する模式図である。
【0035】
LTV=|T2-T1| ・・・(数式1)
LTVは、たとえば以下の手順で測定される。まず、炭化珪素基板または炭化珪素エピタキシャル基板が準備される。炭化珪素基板または炭化珪素エピタキシャル基板は、表面と、裏面とを有している。裏面は、表面の反対側の面である。表面および裏面の一方は、平坦なチャック面に吸着される吸着面Bとなる。吸着面Bの反対側の面は、測定面Aとなる。
【0036】
炭化珪素基板または炭化珪素エピタキシャル基板の吸着面Bが、チャック面に全面吸着される。次に、吸着面Bの反対側にある測定面Aの画像が光学的に取得される。図4および数式1に示されるように、LTVとは、平坦なチャック面に吸着面Bを全面吸着させた状態で、吸着面Bから測定面Aの最高点(第1最高点P2)までの高さ(第2高さT2)から、吸着面Bから測定面Aの最低点(第1最低点P1)までの高さ(第1高さT1)を差し引いた値である。言い換えれば、LTVは、吸着面Bに対して垂直な方向において、測定面Aと吸着面Bとの最長距離から、測定面Aと吸着面Bとの最短距離を差し引いた値である。つまり、LTVは、第1最高点P2を通りかつ吸着面Bと平行な平面(第2平面L2)と、第1最低点P1を通りかつ吸着面Bと平行な平面(第1平面L1)との距離である。
【0037】
次に、LTIRの測定方法について説明する。図5は、LTIRの定義を説明する模式図である。
【0038】
LTIR=|T3|+|T4| ・・・(数式2)
LTIRは、たとえば以下の手順で測定される。まず、炭化珪素基板または炭化珪素エピタキシャル基板の吸着面Bが、チャック面に全面吸着される。次に、吸着面Bの反対側にある測定面Aの画像が光学的に取得される。
【0039】
次に、測定面Aの正方領域の最小二乗平面L5が計算により求められる。図5および数式2に示されるように、LTIRは、平坦なチャック面に吸着面Bを全面吸着させた状態で、最小二乗平面L5から測定面Aの第4最高点P4までの高さ(最高点高さT4)から、最小二乗平面L5から測定面Aの第3最低点P3までの高さ(最低点高さT3)を差し引いた値である。第3最低点P3とは、最小二乗平面L5に対して吸着面B側に位置する測定面Aの領域において、最小二乗平面L5に対して垂直な方向に沿った最小二乗平面L5と測定面Aとの距離が最大となる位置である。第4最高点P4とは、最小二乗平面L5に対して吸着面B側とは反対側に位置する測定面Aの領域において、最小二乗平面L5に対して垂直な方向に沿った最小二乗平面L5と測定面Aとの距離が最大となる位置である。つまり、LTIRは、第4最高点P4を通りかつ最小二乗平面L5と平行な平面(第4平面L4)と、第3最低点P3を通りかつ最小二乗平面L5と平行な平面(第3平面L3)との距離である。
【0040】
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造装置)
次に、炭化珪素エピタキシャル基板200の製造装置の構成について説明する。図6は、炭化珪素エピタキシャル基板200の製造装置の構成を示す一部断面模式図である。炭化珪素エピタキシャル基板200の製造装置300は、たとえばホットウォール方式の横型CVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。図6に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板200の製造装置300は、反応室201と、ガス供給部235と、制御部245と、発熱体203、石英管204、断熱材(図示せず)、誘導加熱コイル(図示せず)とを主に有している。
【0041】
発熱体203は、たとえば筒状の形状を有しており、内部に反応室201を形成している。発熱体203は、たとえば黒鉛製である。発熱体203は、石英管204の内部に設けられている。断熱材は、発熱体203の外周を取り囲んでいる。誘導加熱コイルは、たとえば石英管204の外周面に沿って巻回されている。誘導加熱コイルは、外部電源(図示せず)により、交流電流が供給可能に構成されている。これにより、発熱体203が誘導加熱される。結果として、反応室201が発熱体203により加熱される。
【0042】
反応室201は、発熱体203の内壁面205に取り囲まれて形成された空間である。反応室201には、第2炭化珪素基板24を保持するサセプタ210が設けられる。サセプタ210は、炭化珪素により構成されている。第2炭化珪素基板24は、サセプタ210に載置される。サセプタ210は、ステージ202上に配置される。ステージ202は、回転軸209によって自転可能に支持されている。ステージ202が回転することで、サセプタ210が回転する。
【0043】
炭化珪素エピタキシャル基板200の製造装置300は、ガス導入口207およびガス排気口208をさらに有している。ガス排気口208は、図示しない排気ポンプに接続されている。図6中の矢印は、ガスの流れを示している。ガスは、ガス導入口207から反応室201に導入され、ガス排気口208から排気される。反応室201内の圧力は、ガスの供給量と、ガスの排気量とのバランスによって調整される。
【0044】
ガス供給部235は、反応室201に、原料ガスとドーパントガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給可能に構成されている。具体的には、ガス供給部235は、たとえば第1ガス供給部231と、第2ガス供給部232と、第3ガス供給部233と、第4ガス供給部234とを含んでいる。
【0045】
第1ガス供給部231は、たとえば炭素原子を含む第1ガスを供給可能に構成されている。第1ガス供給部231は、たとえば第1ガスが充填されたガスボンベである。第1ガスは、たとえばプロパン(C38)ガスである。第1ガスは、たとえばメタン(CH4)ガス、エタン(C26)ガス、アセチレン(C22)ガス等であってもよい。
【0046】
第2ガス供給部232は、たとえばシランガスを含む第2ガスを供給可能に構成されている。第2ガス供給部232は、たとえば第2ガスが充填されたガスボンベである。第2ガスは、たとえばシラン(SiH4)ガスである。第2ガスは、シランガスと、シラン以外の他のガスとの混合ガスでもよい。
【0047】
第3ガス供給部233は、たとえば窒素原子を含む第3ガスを供給可能に構成されている。第3ガス供給部233は、たとえば第3ガスが充填されたガスボンベである。第3ガスは、ドーピングガスである。第3ガスは、たとえばアンモニアガスである。アンモニアガスは、三重結合を有する窒素ガスに比べて熱分解されやすい。
【0048】
第4ガス供給部234は、たとえば水素などの第4ガス(キャリアガス)を供給可能に構成されている。第4ガス供給部234は、たとえば水素が充填されたガスボンベである。第4ガスは、アルゴンガスであってもよい。
【0049】
制御部245は、ガス供給部235から反応室201に供給される混合ガスの流量を制御可能に構成されている。具体的には、制御部245は、第1ガス流量制御部241と、第2ガス流量制御部242と、第3ガス流量制御部243と、第4ガス流量制御部244とを含んでいてもよい。各制御部は、たとえばMFC(Mass Flow Controller)であってもよい。制御部245は、ガス供給部235とガス導入口207との間に配置されている。
【0050】
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法)
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法について説明する。図7は、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図7に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法は、複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S11)と、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVを測定する工程(S12)と、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S13)と、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVを測定する工程(S14)と、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S15)と、第2炭化珪素基板24のLTVを測定する工程(S16)と、第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすか否かを判定する工程(S17)と、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S18)とを主に有している。
【0051】
まず、複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S11)が実施される。たとえば昇華法により製造された炭化珪素単結晶からなるインゴットがワイヤーソーによりスライスされる。これにより、複数の第1炭化珪素基板14が準備される。複数の第1炭化珪素基板14の各々は、たとえばポリタイプ4Hの炭化珪素から構成されている。複数の第1炭化珪素基板14の各々は、窒素などのn型不純物を含んでいる。n型不純物の濃度は、たとえば1×1015cm3以上1×1019cm3以下である。
【0052】
図8は、複数の第1炭化珪素基板14の各々の構成を示す断面模式図である。図8に示されるように、複数の第1炭化珪素基板14の各々は、第4主面11と、第6主面13とを有している。第6主面13は、第4主面11の反対側にある。第4主面11の直径は、たとえば150mmである。
【0053】
次に、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVを測定する工程(S12)が実施される。第4主面11は、たとえば吸着面Bとされる。第6主面13は、たとえば測定面Aとされる。第1炭化珪素基板14の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTVが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定される。
【0054】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が第1特定値未満であるか否かが判定される。第1特定値は、たとえば0.8μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が0.8μm未満であるか否かが判定される。次に、LTVの値が第1特定値未満である正方領域の面積率(第1面積率)が求められる。第1面積率は、LTVの値が第1特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTVの値が0.8μm未満である正方領域の数が135であり、全ての正方領域の数が145である場合、第1面積率は135/145である。第1特定値は、たとえば0.7μmであってもよいし、0.6μmであってもよい。
【0055】
次に、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S13)が実施される。複数の第1炭化珪素基板14がサセプタ210に配置される。次に、反応室201が減圧される。具体的には、反応室201の圧力が大気圧からたとえば1×10-6Pa程度に低減される。次に、複数の第1炭化珪素基板14の昇温が開始される。昇温の途中において、第4ガス供給部234からキャリアガスである水素(H2)ガスが反応室201に導入される。
【0056】
次に、原料ガス、ドーパントガスおよびキャリアガスが、反応室201に供給される。具体的には、たとえばシランとプロパンとアンモニアと水素とを含む混合ガスが、反応室201に導入される。反応室201において、それぞれのガスが熱分解される。成長温度は、たとえば1500℃以上1750℃以下である。混合ガスは、水素の代わりにアルゴンを含んでいてもよい。
【0057】
第1ガス(プロパンガス)の流量は、たとえば29sccmである。第2ガス(シランガス)の流量は、たとえば46sccmである。第3ガス(アンモニアガス)の流量は、たとえば1.5sccmである。第4ガス(水素ガスまたはアルゴンガス)の流量は、たとえば100slmである。反応室201は、たとえば2kPa以上6kPa以下の圧力で維持される。これにより、複数の第1炭化珪素基板14の各々上に第1炭化珪素エピタキシャル層15が形成される。これにより、第1炭化珪素基板14と、第1炭化珪素エピタキシャル層15とを有する第1炭化珪素エピタキシャル基板100が得られる。
【0058】
図9は、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々の構成を示す断面模式図である。図9に示されるように、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々は、第5主面12と、第4主面11とを有している。第5主面12は、第4主面11の反対側にある。第6主面13は、第4主面11と第5主面12との間に位置している。
【0059】
次に、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVを測定する工程(S14)が実施される。第4主面11は、たとえば吸着面Bとされる。第5主面12は、たとえば測定面Aとされる。第1炭化珪素エピタキシャル基板100の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTVが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定される。
【0060】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が第2特定値未満であるか否かが判定される。第2特定値は、たとえば1.0μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が1.0μm未満であるか否かが判定される。次に、LTVの値が第2特定値未満である正方領域の面積率(第2面積率)が求められる。第2面積率は、LTVの値が第2特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTVの値が1.0μm未満である正方領域の数が140であり、全ての正方領域の数が145である場合、第2面積率は140/145である。第2特定値は、たとえば0.9μmであってもよいし、0.8μmであってもよい。
【0061】
次に、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S15)が実施される。具体的には、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVと、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVとの相関関係が求められる。図10は、第1炭化珪素基板14の第1面積率(LTVが0.8μm未満である領域の面積率)と、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率(LTVが1.0μm未満である領域の面積率)との関係を示す図である。図10の横軸は、第1炭化珪素基板14の第1面積率(LTVが0.8μm未満である領域の面積率)を示している。図10の縦軸は、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率(LTVが1.0μm未満である領域の面積率)を示している。
【0062】
図10に示されるように、第1炭化珪素基板14の第1面積率が高い場合は、第1炭化珪素基板14上に第1炭化珪素エピタキシャル層15を形成することにより得られた第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率が高くなる傾向にある。つまり、第1炭化珪素基板14の第1面積率によって、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率を予測することができる。第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率の予測精度を向上するためには、第1炭化珪素基板14の数が多いことが望ましい。第1炭化珪素基板14の数は、特に限定されないが、たとえば20以上であってもよいし、40以上であってもよい。
【0063】
次に、第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。まず、第1炭化珪素基板14の第1面積率と、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率との相関関係が求められる。たとえば線形近似を使用して、第1炭化珪素基板14の第1面積率と、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率との相関関係が求められる。線形近似によって求められた1次関数に基づいて、第2炭化珪素基板24を選別するための基準が求められてもよい。
【0064】
たとえば第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率が90%以上である第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得るために、第1炭化珪素基板14の第1面積率は80%以上とすることができる。この場合、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、第2炭化珪素基板24の第1面積率が80%以上であるという条件を満たすことである。以上のように、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVとの関係に基づいて、第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。なお、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、他の方法により決定されてもよい。第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率が90%以上である第1炭化珪素エピタキシャル基板100をより確実に得るために、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、第2炭化珪素基板24の第1面積率が90%以上であるという条件を満たすこととしてもよい。
【0065】
次に、第2炭化珪素基板24のLTVを測定する工程(S16)が実施される。第2炭化珪素基板24は、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なっている。まず、第2炭化珪素基板24が準備される。図11は、第2炭化珪素基板24の構成を示す断面模式図である。図11に示されるように、第2炭化珪素基板24は、第3主面23と、第1主面21とを有している。第1主面21は、第3主面23の反対側にある。次に、第2炭化珪素基板24のLTVが測定される。第1主面21は、たとえば吸着面Bとされる。第3主面23は、たとえば測定面Aとされる。
【0066】
図3に示されるように、第2炭化珪素基板24の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTVが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定される。
【0067】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が第1特定値未満であるか否かが判定される。第1特定値は、たとえば0.8μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTVの値が0.8μm未満であるか否かが判定される。次に、LTVの値が第1特定値未満である正方領域の面積率(第1面積率)が求められる。第1面積率は、LTVの値が第1特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTVの値が0.8μm未満である正方領域の数が135であり、全ての正方領域の数が145である場合、第1面積率は135/145である。
【0068】
次に、第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすか否かを判定する工程(S17)が実施される。具体的には、第2炭化珪素基板24のLTVが、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S15)で決定された基準を満たすか否かが判定される。たとえば、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、第2炭化珪素基板24の第1面積率が90%以上であるという条件を満たすことであると決定された場合、第1面積率が90%以上である第2炭化珪素基板24は、当該基準を満たすと判定される。反対に、第1面積率が90%未満である第2炭化珪素基板24は、当該基準を満たさないと判定される。当該基準を満たさない第2炭化珪素基板24は、廃棄されるか、もしくは当該基準を満たすようになるまで研磨処理などが実施される。
【0069】
次に、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S18)が実施される。まず、上記基準を満たすと判定された第2炭化珪素基板24が選別される。次に、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する。第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S18)における第2炭化珪素エピタキシャル層25の成膜条件は、第1炭化珪素基板14上に第1炭化珪素エピタキシャル層15を形成する際の成膜条件と同じであってもよい。以上により、炭化珪素エピタキシャル基板200が得られる(図1参照)。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法について説明する。図12は、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図12に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法は、複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S21)と、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRを測定する工程(S22)と、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S23)と、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRを測定する工程(S24)と、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S25)と、第2炭化珪素基板24のLTIRを測定する工程(S26)と、第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすか否かを判定する工程(S27)と、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S28)とを主に有している。
【0071】
第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法は、主に、LTVの代わりにLTIRが測定される点において、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法と異なっており、その他の点については、第2実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法と同様である。以下、第1実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法と異なる工程を中心に説明する。
【0072】
まず、複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S21)が実施される。複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S21)は、複数の第1炭化珪素基板14を準備する工程(S11)と同様である。
【0073】
次に、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRを測定する工程(S22)が実施される。第4主面11は、たとえば吸着面Bとされる。第6主面13は、たとえば測定面Aとされる。図3に示されるように、第1炭化珪素基板14の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTVが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTVが測定される。
【0074】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が第1特定値未満であるか否かが判定される。第1特定値は、たとえば0.8μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が0.8μm未満であるか否かが判定される。次に、LTIRの値が第1特定値未満である正方領域の面積率(第1面積率)が求められる。第1面積率は、LTIRの値が第1特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTIRの値が0.8μm未満である正方領域の数が135であり、全ての正方領域の数が145である場合、第1面積率は135/145である。第1特定値は、たとえば0.7μmであってもよいし、0.6μmであってもよい。
【0075】
次に、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S23)が実施される。複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S23)は、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100を得る工程(S13)と同様である。
【0076】
次に、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRを測定する工程(S24)が実施される。第4主面11は、たとえば吸着面Bとされる。第5主面12は、たとえば測定面Aとされる。第1炭化珪素エピタキシャル基板100の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTIRが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTIRが測定される。
【0077】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が第2特定値未満であるか否かが判定される。第2特定値は、たとえば1.0μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が1.0μm未満であるか否かが判定される。次に、LTIRの値が第2特定値未満である正方領域の面積率(第2面積率)が求められる。第2面積率は、LTIRの値が第2特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTVの値が1.0μm未満である正方領域の数が140であり、全ての正方領域の数が145である場合、第2面積率は140/145である。第2特定値は、たとえば0.9μmであってもよいし、0.8μmであってもよい。
【0078】
次に、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S25)が実施される。具体的には、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRと、複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRとの相関関係が求められる。図13は、第1炭化珪素基板14の第1面積率(LTIRが0.8μm未満である領域の面積率)と、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率(LTIRが1.0μm未満である領域の面積率)との関係を示す図である。図13の横軸は、第1炭化珪素基板14の第1面積率(LTIRが0.8μm未満である領域の面積率)を示している。図13の縦軸は、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率(LTIRが1.0μm未満である領域の面積率)を示している。
【0079】
図13に示されるように、第1炭化珪素基板14の第1面積率が高い場合は、第1炭化珪素基板14上に第1炭化珪素エピタキシャル層15を形成することにより得られた第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率が高くなる傾向にある。つまり、第1炭化珪素基板14の第1面積率によって、第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率を予測することができる。
【0080】
たとえば第1炭化珪素エピタキシャル基板100の第2面積率が90%以上である第1炭化珪素エピタキシャル基板100を高い確率で得るために、第1炭化珪素基板14の第1面積率は90%以上とすることができる。この場合、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、第2炭化珪素基板24の第1面積率が90%以上であるという条件を満たすことである。以上のように、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRとの関係に基づいて、第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。
【0081】
次に、第2炭化珪素基板24のLTIRを測定する工程(S26)が実施される。第2炭化珪素基板24は、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なっている。まず、第2炭化珪素基板24が準備される。第2炭化珪素基板24の測定面Aは、複数の正方領域50に区分される。複数の正方領域50において、LTIRが測定される。測定面Aの直径が150mmの場合、測定面Aは、1辺の長さW2が10mmである145個の正方領域50に区分される。145個の正方領域50の各々において、LTIRが測定される。
【0082】
次に、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が第1特定値未満であるか否かが判定される。第1特定値は、たとえば0.8μmである。具体的には、複数の正方領域50の各々において、LTIRの値が0.8μm未満であるか否かが判定される。次に、LTIRの値が第1特定値未満である正方領域の面積率(第1面積率)が求められる。第1面積率は、LTIRの値が第1特定値未満である正方領域の数を、全ての正方領域の数で除した値である。たとえば、LTIRの値が0.8μm未満である正方領域の数が135であり、全ての正方領域の数が145である場合、第1面積率は135/145である。
【0083】
次に、第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすか否かを判定する工程(S27)が実施される。具体的には、第2炭化珪素基板24のLTIRが、第2炭化珪素基板24を選別するための基準を決定する工程(S25)で決定された基準を満たすか否かが判定される。たとえば、第2炭化珪素基板24を選別するための基準は、第2炭化珪素基板24の第1面積率が90%以上であるという条件を満たすことであると決定された場合、第1面積率が90%以上である第2炭化珪素基板24は、当該基準を満たすと判定される。反対に、第1面積率が90%未満である第2炭化珪素基板24は、当該基準を満たさないと判定される。当該基準を満たさない第2炭化珪素基板24は、廃棄されるか、もしくは当該基準を満たすようになるまで研磨処理などが実施される。
【0084】
次に、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S28)が実施される。第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S28)は、第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25を形成する工程(S18)と同様である。
【0085】
(炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置400の製造方法について説明する。図14は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置400の製造方法を概略的に示すフローチャートである。図14に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置400の製造方法は、炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S1)と、炭化珪素エピタキシャル基板を加工する工程(S2)とを主に有している。
【0086】
まず、炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S1)が実施される。炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S1)においては、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法によって製造された炭化珪素エピタキシャル基板200が得られる(図2参照)。
【0087】
次に、炭化珪素エピタキシャル基板を加工する工程(S2)が実施される。具体的には、炭化珪素エピタキシャル基板200に対して以下のような加工が行われる。まず、炭化珪素エピタキシャル基板200に対してイオン注入が行われる。具体的には、第2炭化珪素エピタキシャル層25において、たとえばボディ領域113などのイオン注入領域が形成される。
【0088】
図15は、ボディ領域を形成する工程を示す断面模式図である。具体的には、第2炭化珪素エピタキシャル層25の第2主面22に対して、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入される。これにより、p型の導電型を有するボディ領域113が形成される。第2炭化珪素エピタキシャル層25において、ボディ領域113が形成されなかった部分は、ドリフト領域121となる。ボディ領域113の厚みは、たとえば0.9μmである。
【0089】
次に、ソース領域を形成する工程が実施される。図16は、ソース領域を形成する工程を示す断面模式図である。具体的には、ボディ領域113に対して、たとえばリンなどのn型不純物がイオン注入される。これにより、n型の導電型を有するソース領域114が形成される。ソース領域114の厚みは、たとえば0.4μmである。ソース領域114が含むn型不純物の濃度は、ボディ領域113が含むp型不純物の濃度よりも高い。
【0090】
次に、ソース領域114に対して、たとえばアルミニウムなどのp型不純物がイオン注入されることにより、コンタクト領域118が形成される。コンタクト領域118は、ソース領域114およびボディ領域113を貫通し、ドリフト領域121に接するように形成される。コンタクト領域118が含むp型不純物の濃度は、ソース領域114が含むn型不純物の濃度よりも高い。
【0091】
次に、イオン注入された不純物を活性化するため活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばアルゴン雰囲気である。
【0092】
次に、第2炭化珪素エピタキシャル層25の第2主面22にトレンチを形成する工程が実施される。図17は、第2炭化珪素エピタキシャル層25の第2主面22にトレンチを形成する工程を示す断面模式図である。ソース領域114およびコンタクト領域118から構成される第2主面22上に、開口を有するマスク17が形成される。マスク17を用いて、ソース領域114と、ボディ領域113と、ドリフト領域121の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとしてSF6またはSF6とO2との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、第2主面22に凹部が形成される。
【0093】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第2主面22上にマスク17が形成された状態で、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、Cl2、BCl3、SF6またはCF4を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば700℃以上1000℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
【0094】
図17に示されるように、熱エッチングにより、第2主面22にトレンチ56が形成される。トレンチ56は、側壁面53と、底壁面54とにより規定される。側壁面53は、ソース領域114と、ボディ領域113と、ドリフト領域121とにより構成される。底壁面54は、ドリフト領域121により構成される。次に、マスク17が第2主面22から除去される。
【0095】
次に、ゲート絶縁膜を形成する工程が実施される。図18は、ゲート絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。具体的には、第2主面22にトレンチ56が形成された炭化珪素エピタキシャル基板200が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、底壁面54においてドリフト領域121と接し、側壁面53においてドリフト領域121、ボディ領域113およびソース領域114の各々に接し、かつ第2主面22においてソース領域114およびコンタクト領域118の各々と接するゲート絶縁膜115が形成される。
【0096】
次に、ゲート電極を形成する工程が実施される。図19は、ゲート電極および層間絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。ゲート電極27は、トレンチ56の内部においてゲート絶縁膜115に接するように形成される。ゲート電極27は、トレンチ56の内部に配置され、ゲート絶縁膜115上においてトレンチ56の側壁面53および底壁面54の各々と対面するように形成される。ゲート電極27は、たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0097】
次に、層間絶縁膜が形成される。層間絶縁膜26は、ゲート電極27を覆い、かつゲート絶縁膜115と接するように形成される。層間絶縁膜26は、たとえば化学気相成長法により形成される。層間絶縁膜26は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成される。次に、ソース領域114およびコンタクト領域118上に開口部が形成されるように、層間絶縁膜26およびゲート絶縁膜115の一部がエッチングされる。これにより、コンタクト領域118およびソース領域114がゲート絶縁膜115から露出する。
【0098】
次に、ソース電極を形成する工程が実施される。ソース電極16は、ソース領域114およびコンタクト領域118の各々に接するように形成される。ソース電極16は、たとえばスパッタリング法により形成される。ソース電極16は、たとえばTi(チタン)、Al(アルミニウム)およびSi(シリコン)を含む材料からなる。
【0099】
次に、合金化アニールが実施される。具体的には、ソース領域114およびコンタクト領域118の各々と接するソース電極16が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、ソース電極16の少なくとも一部がシリサイド化する。これにより、ソース領域114とオーミック接合するソース電極16が形成される。好ましくは、ソース電極16は、コンタクト領域118とオーミック接合する。
【0100】
次に、ソース配線19が形成される。ソース配線19は、ソース電極16と電気的に接続される。ソース配線19は、ソース電極16および層間絶縁膜26を覆うように形成される。
【0101】
次に、ドレイン電極を形成する工程が実施される。まず、第1主面21において、第2炭化珪素基板24が研磨される。これにより、第2炭化珪素基板24の厚みが薄くなる。次に、ドレイン電極123が形成される。ドレイン電極123は、第1主面21と接するように形成される。以上により、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置400が製造される。
【0102】
図20は、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面模式図である。炭化珪素半導体装置400は、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。炭化珪素半導体装置400は、炭化珪素エピタキシャル基板200と、ゲート電極27と、ゲート絶縁膜115と、ソース電極16と、ドレイン電極123と、ソース配線19と、層間絶縁膜26とを主に有している。炭化珪素エピタキシャル基板200は、ドリフト領域121と、ボディ領域113と、ソース領域114と、コンタクト領域118とを有している。炭化珪素半導体装置400は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0103】
次に、本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板200の製造方法および炭化珪素半導体装置400の製造方法の作用効果について説明する。
【0104】
炭化珪素エピタキシャル基板の平坦性が低い場合、炭化珪素エピタキシャル基板を用いて炭化珪素半導体装置を製造する工程の露光工程において、露光不良(デフォーカス)が発生する場合がある。炭化珪素エピタキシャル基板における複数の露光領域において、露光不良が発生する領域の割合が高いと、炭化珪素半導体装置の歩留まりが大幅に低下する。そのため、露光不良が発生する割合が高い炭化珪素エピタキシャル基板に対しては、リワークを実施し、炭化珪素エピタキシャル基の平坦性を高くする必要がある。具体的には、たとえば、炭化珪素エピタキシャル基板から炭化珪素エピタキシャル層を除去した上で、再度、炭化珪素基板に対して研磨等の平坦加工が行われる。この場合、炭化珪素半導体装置の製造工程のリードタイムが大幅に長くなる。
【0105】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTVと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTVとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なる第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。当該基準を用いることにより、第2炭化珪素基板24のLTVに基づいて、第2炭化珪素エピタキシャル基板のLTVを精度良く予測することができる。
【0106】
また本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、第2炭化珪素基板24のLTVが測定される。第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たすか否かが判定される。これにより、第2炭化珪素基板24のLTVが基準を満たさない場合であっても、第2炭化珪素エピタキシャル層25を除去することなく、迅速に第2炭化珪素基板24に対して研磨等を行って、第2炭化珪素基板24の平坦性を高くすることができる。そのため、炭化珪素半導体装置の製造工程のリードタイムが大幅に長くなることを抑制することができる。
【0107】
さらに本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、LTVに関する基準を満たす第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25が形成される。そのため、平坦性が高い炭化珪素エピタキシャル基板を精度良く選別することができる。結果として、炭化珪素半導体装置の製造工程において、露光不良が発生する確率を低減することができる。
【0108】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、複数の第1炭化珪素基板14の各々のLTIRと複数の第1炭化珪素エピタキシャル基板100の各々のLTIRとの関係に基づいて、複数の第1炭化珪素基板14の各々とは異なる第2炭化珪素基板24を選別するための基準が決定される。当該基準を用いることにより、第2炭化珪素基板24のLTIRに基づいて、第2炭化珪素エピタキシャル基板のLTIRを精度良く予測することができる。
【0109】
また本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、第2炭化珪素基板24のLTIRが測定される。第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たすか否かが判定される。これにより、第2炭化珪素基板24のLTIRが基準を満たさない場合であっても、第2炭化珪素エピタキシャル層25を除去することなく、迅速に第2炭化珪素基板24に対して研磨等を行って、第2炭化珪素基板24の平坦性を高くすることができる。そのため、炭化珪素半導体装置の製造工程のリードタイムが大幅に長くなることを抑制することができる。
【0110】
さらに本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法によれば、LTIRに関する基準を満たす第2炭化珪素基板24上に第2炭化珪素エピタキシャル層25が形成される。そのため、平坦性が高い炭化珪素エピタキシャル基板を精度良く選別することができる。結果として、炭化珪素半導体装置の製造工程において、露光不良が発生する確率を低減することができる。
【0111】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0112】
7 オリエンテーションフラット
8 円弧状部
9 外周側面
11 第4主面
12 第5主面
13 第6主面
14 第1炭化珪素基板
15 第1炭化珪素エピタキシャル層
16 ソース電極
17 マスク
19 ソース配線
21 第1主面
22 第2主面
23 第3主面
24 第2炭化珪素基板
25 第2炭化珪素エピタキシャル層
26 層間絶縁膜
27 ゲート電極
50 正方領域
53 側壁面
54 底壁面
56 トレンチ
100 第1炭化珪素エピタキシャル基板
101 第1方向
102 第2方向
113 ボディ領域
114 ソース領域
115 ゲート絶縁膜
118 コンタクト領域
121 ドリフト領域
123 ドレイン電極
200 炭化珪素エピタキシャル基板
201 反応室
202 ステージ
203 発熱体
204 石英管
205 内壁面
207 ガス導入口
208 ガス排気口
209 回転軸
210 サセプタ
231 第1ガス供給部
232 第2ガス供給部
233 第3ガス供給部
234 第4ガス供給部
235 ガス供給部
241 第1ガス流量制御部
242 第2ガス流量制御部
243 第3ガス流量制御部
244 第4ガス流量制御部
245 制御部
300 製造装置
400 炭化珪素半導体装置
A 測定面
B 吸着面
L1 第1平面
L2 第2平面
L3 第3平面
L4 第4平面
L5 最小二乗平面
P1 第1最低点
P2 第1最高点
P3 第3最低点
P4 第4最高点
T1 第1高さ
T2 第2高さ
T3 最低点高さ
T4 最高点高さ
W1 第1幅
W2 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20