(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172564
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B60C9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078446
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢悟
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC31
3D131BC36
3D131DA45
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】タイヤは、ベルトを有している。このベルトのプライは、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルトの端Ebの位置と一致している。それぞれの第二コード402の端E2は、軸方向(X方向)において、ベルトの端Ebよりも内側に位置している。第二コード402の端E2は、第一コード401の端E1よりも内側に位置している。第一コード401と、これに最も近い第一コード401との間には、4本の第二コード402が存在している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスと、トレッドと、上記カーカス及び上記トレッドの間に位置するベルトとを備えた空気入りタイヤであって、
上記ベルトが、1又は2以上のプライを有しており、
その端が上記ベルトの端Ebと一致するプライが、複数のコードを有しており、
これらのコードが、所定のコード間距離を隔てて並列されており、
これらのコードが、
(1)上記タイヤの軸方向において、その端が上記ベルトの端Ebと一致する、少なくとも1本の第一コード
及び
(2)上記軸方向において、その端が上記第一コードの端よりも内側に位置する、少なくとも1本の第二コード
を含んでおり、
上記軸方向における上記第一コードの端と上記第二コードの端との距離の、この距離と上記コード間距離との合計に対する比が、0.50以上0.90以下であり、
上記プライに存在しかつ連続する5本のコードからなる、あらゆる群に、上記第一コード及び上記第二コードが含まれているタイヤ。
【請求項2】
上記プライが、2本の第一コードとこれらの間に位置する複数の第二コードとを有しており、これらの第二コードの端の位置が軸方向において互いに異なっている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
上記第一コードが1本又は2本の第二コードと隣接し、
上記第二コードが1本又は2本の第一コードと隣接する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記第一コードが2本の第二コードと隣接し、
上記第二コードが2本の第一コードと隣接する請求項3に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、このタイヤのベルトの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な空気入りタイヤは、カーカス、トレッド及びベルトを有している。ベルトは、カーカスとトレッドとの間に位置している。一般的なベルトは、複数の層を有している。それぞれの層は、並列された複数のコードとトッピングゴムとを含んでいる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。ベルトを有するタイヤが、特開平9-175110号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトの端は、コードの端でもある。タイヤの製造の都合により、コードの端には、表面処理が施され得ない。従って、この端において、コードとトッピングゴムとの接着力は、小さい。しかも、ベルトの端には応力が集中する。ベルトの端の近傍では、ルースが生じやすい。ルースは、ゴムがコードから隔離する現象である。
【0005】
ベルトの端では、複数のコードの端が並んでいる。従って、1つのコードで生じたルースが、このコードと隣接するコードでのルースを誘発する。ルースは、徐々に成長する。大きなルースは、タイヤの性能を阻害する。大きなルースを有するタイヤは、もはや使用に耐えない。
【0006】
本発明の目的は、耐久性に優れた空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、カーカスと、トレッドと、このカーカス及びトレッドの間に位置するベルトとを有する。ベルトは、1又は2以上のプライを有する。その端がベルトの端Ebと一致するプライは、複数のコードを有している。これらのコードは、所定のコード間距離を隔てて並列されている。これらのコードは、
(1)タイヤの軸方向において、その端がベルトの端Ebと一致する、少なくとも1本の第一コード
及び
(2)軸方向において、その端が第一コードの端よりも内側に位置する、少なくとも1本の第二コード
を含む。軸方向における第一コードの端と第二コードの端との距離の、この距離とコード間距離との合計に対する比は、0.50以上0.90以下である。このプライに存在しかつ連続する5本のコードからなる、あらゆる群に、第一コード及び第二コードが含まれている。
【0008】
このプライは、2本の第一コードとこれらの間に位置する複数の第二コードとを有しうる。好ましくは、これらの第二コードの端の位置は、軸方向において互いに異なっている。
【0009】
好ましくは、第一コードは1本又は2本の第二コードと隣接し、第二コードは1本又は2本の第一コードと隣接する。
【0010】
好ましくは、第一コードは2本の第二コードと隣接し、第二コードは2本の第一コードと隣接する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るタイヤでは、ベルトの端における応力集中が抑制される。このタイヤでは、ルースが生じにくい。このタイヤでは、ルースが生じても、このルースが成長しにくい。このタイヤは、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤの第二プライの一部が示された断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の第二プライの一部が示された拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の第二プライのコードが示された模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施形態に係るタイヤのコードが示された模式図である。
【
図8】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコードが示された模式図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコードが示された模式図である。
【
図12】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコードが示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1に、空気入りタイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面CLを表わす。トレッドパターンを除けば、このタイヤ2の形状は、赤道面CLに対して鏡面対称である。この一点鎖線CLは、軸方向における、このタイヤ2の中心線でもある。
【0015】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、クリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、インナーライナー16及びインスレーション18を有している。タイヤ2は、他の種々の部材を有しうる。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、典型的にはトラック、バス等に装着される。
【0016】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を有している。トレッド4には、溝22が刻まれている。この溝22により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層24とキャップ層26とを有している。キャップ層26は、ベース層24の半径方向外側に位置している。キャップ層26は、ベース層24に積層されている。ベース層24は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。キャップ層26は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0017】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の一部は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0018】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。タイヤ2がリムに装着されたとき、クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
【0019】
それぞれのビード10は、サイドウォール6よりも軸方向内側に位置している。このビード10は、コア28と、このコア28から半径方向外向きに延びるエイペックス30とを有している。コア28はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス30は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス30は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0020】
カーカス12は、両側のビード10の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。図示されないが、カーカス12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとを有している。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードの材質は、スチールである。コードが、有機繊維からなってもよい。カーカス12が、バイアス構造を有してもよい。
【0021】
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、第一プライ32、第二プライ34、第三プライ36及び第四プライ38を有している。このベルト14におけるプライの数は、4である。プライの数は3以下でもよく、5以上でもよい。
【0022】
第一プライ32は、カーカス12よりも半径方向外側に位置している。第一プライ32は、部分的に、カーカス12と積層されている。第二プライ34は、第一プライ32よりも半径方向外側に位置している。第二プライ34は、部分的に、第一プライ32と積層されている。第三プライ36は、第二プライ34よりも半径方向外側に位置している。第三プライ36は、部分的に、第二プライ34と積層されている。第四プライ38は、第三プライ36よりも半径方向外側に位置している。第四プライ38は、第三プライ36と積層されている。
【0023】
軸方向において、第二プライ34の幅は、第一プライ32の幅よりも大きく、第三プライ36の幅よりも大きく、第四プライ38の幅よりも大きい。第二プライ34は、幅が最も大きいプライである。第二プライ34の幅は、ベルト14の幅と一致している。第二プライ34の端Epは、ベルト14の端Ebと一致している。
【0024】
インナーライナー16は、インスレーション18を介してカーカス12に接合されている。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0025】
図2は、
図1のタイヤ2の第二プライ34の一部が示された断面斜視図である。第二プライ34は、多数のコード40を有している。それぞれのコード40は、周方向(Z方向)に対して傾斜している。
図2における一点鎖線は、コード40の中心線である。
図2において矢印θは、周方向に対するコード40の傾斜角度である。角度θの絶対値は、10°以上60°以下が好ましい。コード40の好ましい材質は、スチールである。コード40に、有機繊維が用いられてもよい。有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0026】
図示されていないが、第一プライ32、第三プライ36及び第四プライ38も、第二プライ34のコード40と同様のコードを有している。それぞれのコードは、赤道面CLに対して傾斜している。第二プライ34のコード40の赤道面CLに対する傾斜方向は、第一プライ32のコードの赤道面CLに対する傾斜方向と同じである。第三プライ36のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第二プライ34のコード40の赤道面CLに対する傾斜方向とは逆である。第四プライ38のコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、第三プライ36のコードの赤道面CLに対する傾斜方向と同じである。
【0027】
図3は、
図2の第二プライ34の一部が示された拡大断面図である。
図3には、他の部材とアッセンブリーされる前の第二プライ34が示されている。
図3の断面は、第二プライ34のコード40の延在方向に直交する。
図3に示されるように、第二プライ34は、コード40と共に、トッピングゴム42を有している。コード40は、概してトッピングゴム42に覆われている。コード40は、隣接するコード40と離間している。コード40とこれに隣接するコード40との間には、トッピングゴム42が存在している。
【0028】
図3において、矢印Dcはコード40の直径を表し、矢印Tpは第二プライ34の厚さを表し、矢印Pcはコード40のピッチを表し、矢印Lcはコード40の間の距離を表す。直径Dcの厚さTpに対する比は、0.3以上0.7以下が好ましい。距離LcのピッチPcに対する比(Lc/Pc)は、0.2以上0.7以下が好ましい。距離Lcは、0.3mm以上2.0mm以下が好ましい。
【0029】
図4は、
図2の第二プライ34のコード40が示された模式図である。
図4における二点鎖線は、第二プライ34の端Epを表す。前述の通り、この端Epは、ベルト14の端Ebでもある。
【0030】
図5は、
図4のコード40が示された拡大図である。
図5において符号Unは、ユニットを表す。本実施形態では、このユニットUnにおけるコード40のパターンが、周方向に沿って規則的に繰り返されている。第二プライ34が、不規則なパターンを有してもよい。
【0031】
第二プライ34は、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルト14の端Ebの位置と一致している。それぞれの第二コード402の端E2は、軸方向(X方向)において、ベルト14の端Ebよりも内側に位置している。換言すれば、第二コード402の端E2は、第一コード401の端E1よりも内側に位置している。第二コード402の端E2の位置は、他の第二コード402の端E2の位置と一致している。これらの第二コード402の端E2の位置が、バリエーションを有してもよい。
【0032】
図4及び5から明らかなように、第一コード401と、これに最も近い第一コード401との間には、4本の第二コード402が存在している。すなわち、第一コード401とこれに最も近い第一コード401との間に存在する第二コード402の数Ncは、4である。それぞれの第一コード401は、
図4において上方に位置する第二コード402と隣接している。この第一コード401は、
図4において下方に位置する第二コード402とも、隣接している。
【0033】
本発明では、第二プライ34において周方向に連続する5本のコード40により、群が仮想される。第二プライ34に含まれるコード40の総数と同じ数の群が、仮想されうる。連続するコード40の順番に基づき、下記の5種類の群が仮想されうる。
(1)第二コード402、第二コード402、第二コード402、第二コード402、第一コード401
(2)第二コード402、第二コード402、第二コード402、第一コード401、第二コード402
(3)第二コード402、第二コード402、第一コード401、第二コード402、第二コード402
(4)第二コード402、第一コード401、第二コード402、第二コード402、第二コード402
(5)第一コード401、第二コード402、第二コード402、第二コード402、第二コード402
これらの群のそれぞれに、第一コード401及び第二コード402が含まれている。換言すれば、第一コード401のみを含む群は存在せず、第二コード402のみを含む群も存在しない。
【0034】
このベルト14では、その端Ebにおいてコード40の端E1、E2が揃っていない。従って、応力が分散される。このベルト14では、応力集中に起因するルースが、抑制される。第一コード401の端E1の位置と第二コード402の端E2の位置とが軸方向において異なっているので、第一コード401の端E1で発生したルースが第二コード402の端E2へ伝播しにくい。さらに、第二コード402の端E2で発生したルースが第一コード401の端E1へ伝播しにくい。このベルト14では、ルースの成長が抑制されうる。このベルト14を有するタイヤ2は、耐久性に優れる。
【0035】
図5において矢印Leは、第一コード401の端E1と第二コード402の端E2との、軸方向距離である。耐久性の観点から、この距離Leの、この距離Leとコード40の間の距離Lcとの合計に対する比(Le/(Le+Lc))は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が特に好ましい。ベルト14がカーカス12を十分に補強するとの観点から、この比(Le/(Le+Lc))は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。
【0036】
第一プライ32(
図1参照)では、それぞれのコードの端の位置は、この第一プライ32の端の位置と一致している。第一プライ32が、その端の位置がこの第一プライ32の端の位置と異なるコードを含んでもよい。第三プライ36では、それぞれのコードの端の位置は、この第三プライ36の端の位置と一致している。第三プライ36が、その端の位置がこの第三プライ36の端の位置と異なるコードを含んでもよい。第四プライ38では、それぞれのコードの端の位置は、この第四プライ38の端の位置と一致している。第四プライ38が、その端の位置がこの第四プライ38の端の位置と異なるコードを含んでもよい。
【0037】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が解体されて測定される。
【0038】
図6は、本発明の他の実施形態に係るタイヤのコード40が示された模式図である。
図6には、ベルトの中で幅が最も大きいプライのコード40が示されている。
図6における二点鎖線は、プライの端Epを表す。この端Epは、ベルトの端Ebでもある。
【0039】
図7は、
図6のコード40が示された拡大図である。
図7において符号Unは、ユニットを表す。本実施形態では、このユニットUnにおけるコード40のパターンが、周方向に沿って規則的に繰り返されている。プライが、不規則なパターンを有してもよい。
【0040】
このプライは、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルトの端Ebの位置と一致している。それぞれの第二コード402の端E2は、軸方向(X方向)において、ベルトの端Ebよりも内側に位置している。換言すれば、第二コード402の端E2は、第一コード401の端E1よりも内側に位置している。第二コード402の端E2の位置は、他の第二コード402の端E2の位置と一致している。これらの第二コード402の端E2の位置が、バリエーションを有してもよい。
【0041】
図6及び7から明らかなように、第二コード402と、これに最も近い第二コード402との間には、4本の第一コード401が存在している。それぞれの第二コード402は、
図6において上方に位置する第一コード401と隣接している。この第二コード402は、
図6において下方に位置する第一コード401とも、隣接している。第一コード401とこれに最も近い第一コード401との間に存在する第二コード402の数Ncは、0又は1である。
【0042】
本発明では、プライにおいて周方向に連続する5本のコード40により、群が仮想される。第二プライに含まれるコード40の総数と同じ数の群が、仮想されうる。連続するコード40の順番に基づき、下記の5種類の群が仮想されうる。
(1)第一コード401、第一コード401、第一コード401、第一コード401、第二コード402
(2)第一コード401、第一コード401、第一コード401、第二コード402、第一コード401
(3)第一コード401、第一コード401、第二コード402、第一コード401、第一コード401
(4)第一コード401、第二コード402、第一コード401、第一コード401、第一コード401
(5)第二コード402、第一コード401、第一コード401、第一コード401、第一コード401
これらの群のそれぞれに、第一コード401及び第二コード402が含まれている。換言すれば、第一コード401のみを含む群は存在せず、第二コード402のみを含む群も存在しない。
【0043】
このベルトでは、その端Ebにおいてコード40の端E1、E2が揃っていない。このベルトでは、ルースの発生及び成長が抑制されうる。このベルトを有するタイヤは、耐久性に優れる。
【0044】
図7において矢印Leは、第一コード401の端E1と第二コード402の端E2との、軸方向距離である。耐久性の観点から、この距離Leの、この距離Leとコード401の間の距離Lcとの合計に対する比(Le/(Le+Lc))は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が特に好ましい。ベルトがカーカスを十分に補強するとの観点から、この比(Le/(Le+Lc))は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。
【0045】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコード40が示された模式図である。
図8には、ベルトの中で幅が最も大きいプライのコード40が示されている。
図8における二点鎖線は、プライの端Epを表す。この端Epは、ベルトの端Ebでもある。
【0046】
図9は、
図8のコード40が示された拡大図である。
図9において符号Unは、ユニットを表す。本実施形態では、このユニットUnにおけるコード40のパターンが、周方向に沿って規則的に繰り返されている。プライが、不規則なパターンを有してもよい。
【0047】
このプライは、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルトの端Ebの位置と一致している。
図8において第一コード401のすぐ上に位置する第二コード402aの端E2aは、第一コード401の端E1よりも内側に位置している。この第二コード402aのすぐ上に位置する第二コード402bの端E2bは、端E2aよりも内側に位置している。この第二コード402bのすぐ上に位置する第二コード402cの端E2cは、端E2bよりも内側に位置している。この第二コード402cのすぐ上に位置する第二コード402dの端E2dは、端E2bよりも内側であって、かつ端E2cよりも外側に位置している。
【0048】
図8及び9から明らかなように、第一コード401とこれに最も近い第一コード401との間に存在する第二コード402の数Ncは、4である。2本の第一コード401の間に位置する4本の第二コード402の端の位置は、軸方向において互いに異なっている。さらに、それぞれの第二コード402の端の位置は、第一コード401の端E1の位置とも異なっている。このプライには、その端の軸方向位置が隣接するコード40の端の軸方向位置と一致するコード40は、存在していない。このベルトでは、ルースの発生及び成長が抑制されうる。このベルトを有するタイヤは、耐久性に優れる。
【0049】
第一コード401の端E1とそれぞれの第二コード402の端との距離の、この距離とコード40の間の距離Lcとの合計に対する比は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が特に好ましい。この比は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。
【0050】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコード40が示された模式図である。
図10には、ベルトの中で幅が最も大きいプライのコード40が示されている。
図10における二点鎖線は、プライの端Epを表す。この端Epは、ベルトの端Ebでもある。
【0051】
図11は、
図10のコード40が示された拡大図である。
図11において符号Unは、ユニットを表す。本実施形態では、このユニットUnにおけるコード40のパターンが、周方向に沿って規則的に繰り返されている。プライが、不規則なパターンを有してもよい。
【0052】
このプライは、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルトの端Ebの位置と一致している。それぞれの第二コード402の端E2は、軸方向(X方向)において、ベルトの端Ebよりも内側に位置している。換言すれば、第二コード402の端E2は第一コード401の端E1よりも内側に位置している。
【0053】
図10及び11から明らかなように、第一コード401とこれに最も近い第一コード401との間に存在する第二コード402の数Ncは、2である。それぞれの第一コード401は、2本の第二コード402と隣接している。それぞれの第二コード402は、1本の第一コード401と隣接しており、かつ1本の第二コード402とも隣接している。このプライには、第二コード402に隣接しない第一コード401は、存在していない。このプライには、第一コード401に隣接しない第二コード402は、存在していない。このベルトでは、ルースの発生及び成長が抑制されうる。このベルトを有するタイヤは、耐久性に優れる。
【0054】
図11において矢印Leは、第一コード401の端E1と第二コード402の端E2との、軸方向距離である。耐久性の観点から、この距離Leの、この距離Leとコード40の間の距離Lcとの合計に対する比(Le/(Le+Lc))は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が特に好ましい。ベルトがカーカスを十分に補強するとの観点から、この比(Le/(Le+Lc))は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。
【0055】
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤのコード40が示された模式図である。
図12には、ベルトの中で幅が最も大きいプライのコード40が示されている。
図12における二点鎖線は、プライの端Epを表す。この端Epは、ベルトの端Ebでもある。
【0056】
図13は、
図12のコード40が示された拡大図である。
図13において符号Unは、ユニットを表す。本実施形態では、このユニットUnにおけるコード40のパターンが、周方向に沿って規則的に繰り返されている。プライが、不規則なパターンを有してもよい。
【0057】
このプライは、複数の第一コード401と、複数の第二コード402とを含んでいる。それぞれの第一コード401の端E1の位置は、ベルトの端Ebの位置と一致している。それぞれの第二コード402の端E2は、軸方向(X方向)において、ベルトの端Ebよりも内側に位置している。換言すれば、第二コード402の端E2は第一コード401の端E1よりも内側に位置している。
【0058】
図12及び13から明らかなように、複数の第一コード401と複数の第二コード402とが、周方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、第一コード401とこれに最も近い第一コード401との間に存在する第二コード402の数Ncは、1である。それぞれの第一コード401は、2本の第二コード402と隣接している。それぞれの第二コード402は、2本の第一コード401と隣接している。このプライには、第二コード402に隣接しない第一コード401は、存在していない。このプライには、第二コード402以外のコード40に隣接する第一コード401は、存在していない。このプライには、第一コード401に隣接しない第二コード402は、存在していない。このプライには、第一コード401以外のコード40に隣接する第二コード402は、存在していない。このベルトでは、ルースの発生及び成長が抑制されうる。このベルトを有するタイヤは、耐久性に優れる。
【0059】
図13において矢印Leは、第一コード401の端E1と第二コード402の端E2との、軸方向距離である。耐久性の観点から、この距離Leの、この距離Leとコード40の間の距離Lcとの合計に対する比(Le/(Le+Lc))は、0.50以上が好ましく、0.55以上がより好ましく、0.60以上が特に好ましい。ベルトがカーカスを十分に補強するとの観点から、この比(Le/(Le+Lc))は0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.80以下が特に好ましい。
【実施例0060】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0061】
[実施例1]
重荷重用の空気入りタイヤを製造した。このタイヤのサイズは、「11R22.5 14PR」であった。このタイヤのベルトの第二プライは、
図13に示された構造を有していた。この第二プライは、第一コードと第二コードとを含んでいた。第一コードとこれに最も近い第一コードとの間に存在する第二コードの数Ncは、1であった。第一コードの端E1と第二コードの端E2との軸方向距離Leの、この距離Leとコードの間の距離Lcとの合計に対する比(Le/(Le+Lc))は、0.75であった。
【0062】
[比較例1]
第二プライの全てのコードを、その端がベルト端と一致するものとした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0063】
[実施例2及び比較例2]
比(Le/(Le+Lc))を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び比較例2のタイヤを得た。
【0064】
[実施例3]
図11に示される構造を有する第二プライを設けた他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。この第二プライは、第一コードと第二コードとを含んでいた。第一コードとこれに最も近い第一コードとの間に存在する第二コードの数Ncは、2であった。
【0065】
[実施例4]
図5に示される構造を有する第二プライを設けた他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。この第二プライは、第一コードと第二コードとを含んでいた。第一コードとこれに最も近い第一コードとの間に存在する第二コードの数Ncは、4であった。
【0066】
[比較例3]
第一コードとこれに最も近い第一コードとの間に存在する第二コードの数Ncを6とした他は実施例4と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0067】
[実施例5]
図9に示される構造を有する第二プライを設けた他は実施例1と同様にして、実施例5のタイヤを得た。この第二プライは、第一コードと第二コードとを含んでいた。第一コードとこれに最も近い第一コードとの間に存在する第二コードの数Ncは、4であった。第一コードの端とこれらの第二コードの端との距離の、この距離とコードの間の距離Lcとの合計に対する比は、それぞれ、0.55、0.65、0.75及び0.85であった。
【0068】
[耐久性]
タイヤをリムに組み込んだ。このタイヤに、正規内圧が達成されるように、空気を充填した。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、最大積載荷重の120%の縦荷重を、タイヤに負荷した。このタイヤを、120km/hの速度で、ドラムの上を走行させた。ベルトのルースに起因するトレッドショルダーの変形が確認されるまでの走行時間を、測定した。この結果が、指数として、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0069】
【0070】
【0071】
表1及び2に示されるように、各実施例のタイヤは、耐久性に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。