(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172585
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078515
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 健介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FD41
(57)【要約】
【課題】低出力動作時でも、スイッチング素子をZVSで動作させる。
【解決手段】DC-DCコンバータ(100)は、第1レグ(111)と第3レグ(121)の制御信号を同じ位相とし、第1レグ(111)と第2レグ(112)との位相差(φ
L1)と、第3レグ(121)と第4レグ(122)の位相差(φ
L2)の差を一定値とし、1次側ブリッジ回路(110)と2次側ブリッジ回路(120)間の輸送電力に応じて位相差(φ
L2)を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第1レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第2レグとを有する1次側ブリッジ回路と、
複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第3レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第4レグとを有する2次側ブリッジ回路と、
トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、
前記第1ないし第4レグのそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1および第3レグの前記制御信号を同じ位相とし、
前記第1レグと前記第2レグとの間の位相差である第1位相差と、前記第3レグと前記第4レグとの間の位相差である第2位相差との差異を所定の一定値とし、
前記1次側ブリッジ回路から前記2次側ブリッジ回路へ、または前記2次側ブリッジ回路から前記1次側ブリッジ回路へと輸送する電力に応じて、前記第2位相差を制御する、
DC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記変換部に流れる電流を制御して、前記1次側ブリッジ回路のそれぞれの前記スイッチング素子においてゼロボルトスイッチングを可能とするよう前記所定の一定値を定める請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1、第2及び第4レグのそれぞれの前記スイッチング素子をゼロボルトスイッチングで動作させ、前記第3レグのそれぞれの前記スイッチング素子をハードスイッチングで動作させる請求項1または2に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記スイッチング素子のスイッチング周期の半周期毎にオンとオフとを切り替える制御信号を出力する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項5】
前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路は、前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路のそれぞれの電圧値を測定する電圧測定部と、前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路のそれぞれに流れる電流値を測定する電流測定部とを有し、
前記制御部は、前記電圧測定部及び前記電流測定部から前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路の前記それぞれの電圧値および前記それぞれの電流値を取得して、前記制御を行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項6】
前記制御部は、
前記電圧測定部および前記電流測定部から前記電圧値および前記電流値を取得して、少なくとも当該取得した電圧値および電流値に基づいて前記第2位相差を出力する電力制御部を有することにより、
前記第2位相差を制御する請求項5に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電流測定部から前記電流値を取得して、
前記電流値のピーク値に基づいて前記所定の一定値を出力する制御信号生成部を有することにより、
前記所定の一定値を定める請求項5または6に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
2つのレグを含む第1のブリッジ回路と、トランスを含む変換部と、2つのレグを含む第2のブリッジ回路と、から構成されるデュアルブリッジDC-DCコンバータが知られている。デュアルブリッジDC-DCコンバータは、1次側から2次側へ、また、2次側から1次側へと電力の輸送が可能な、双方向のDC-DCコンバータである。特許文献1には、このようなDC-DCコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術ではレグのスイッチング素子をゼロボルトスイッチング(ZVS)で動作させるためには、インダクタ電流の極性反転区間の長さについて所定のタイミング条件を満たすように制御しなければならない。しかし、当該タイミング条件を満たしつつ低出力動作を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低出力動作時においてもレグのスイッチング素子をZVSで動作させることができるDC-DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るDC-DCコンバータは、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第1レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第2レグとを有する1次側ブリッジ回路と、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第3レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第4レグとを有する2次側ブリッジ回路と、トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記第1ないし第4レグのそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1および第3レグの前記制御信号を同じ位相とし、前記第1レグと前記第2レグとの間の位相差である第1位相差と、前記第3レグと前記第4レグとの間の位相差である第2位相差との差異を所定の一定値とし、前記1次側ブリッジ回路から前記2次側ブリッジ回路へ、または前記2次側ブリッジ回路から前記1次側ブリッジ回路へと輸送する電力に応じて、前記第2位相差を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、低出力動作時においてもレグのスイッチング素子をZVSで動作させることができるDC-DCコンバータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図2】実施形態1に係る電力伝送を行う場合を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、最小電流でスイッチング素子をスイッチング動作させたときの電流値、電圧値を示した図である。
【
図4】過大な電流でスイッチング素子をスイッチング動作させたときの電流値、電圧値を示した図である。
【
図5】区間(i)における極性反転前のDC-DCコンバータの動作を説明する図である。
【
図6】区間(i)における極性反転後のDC-DCコンバータの動作を説明する図である。
【
図7】区間(ii)におけるDC-DCコンバータの動作を説明する図である。
【
図8】区間(iii)におけるDC-DCコンバータの動作を説明する図である。
【
図9】出力電力が小さくなる場合のDC-DCコンバータの動作を示すタイムチャートである。
【
図10】出力電力が大きくなる場合のDC-DCコンバータの動作を示すタイムチャートである。
【
図11】DC-DCコンバータ100において、動作モードが切り替わる場合を示すタイムチャートである。
【
図12】起動時におけるDC-DCコンバータ動作を示すタイムチャートである。
【
図13】起動時の状態からインダクタ電流が流れ始める状態を示すタイムチャートである。
【
図14】DC-DCコンバータにおける各スイッチング素子の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図15】区間aのデッドタイム時の電流ループを示す図である。
【
図16】実施形態2に係る制御部を示すブロック図である。
【
図17】電流制御部の構成を示すブロック図である。
【
図18】電力制御部の構成を示すブロック図である。
【
図19】制御信号生成部143の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、実施形態1のDC-DCコンバータについて説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、以降の各実施形態では、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、簡潔化のため、公知技術と同様の事項については、説明を適宜省略する。
【0010】
(DC-DCコンバータの全体構成)
図1は、DC-DCコンバータ100の回路図である。DC-DCコンバータ100は、1次側ブリッジ回路110と、2次側ブリッジ回路120と、変換部130と、制御部140とを備えている。DC-DCコンバータ100の入力端子対でもある、1次側ブリッジ回路110の入力端子対の間には、1次側直流電源E
1が接続される。またDC-DCコンバータ100の出力端子対でもある、2次側ブリッジ回路110の出力端子対の間には、2次側直流電源E
2が接続される。1次側直流電源E
1及び2次側直流電源E
2の少なくともいずれかは、2次電池であり得る。
【0011】
ここで、「入力」、「出力」とは、1次側直流電源E1の側から2次側直流電源E2の側へ、すなわち、1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送されることを想定した表現である。しかし、これは便宜上の表現であって、以下でも同様である。実施形態1のDC-DCコンバータ100は、双方向DC-DCコンバータであり、2次側から1次側への電力の伝送も可能である。
【0012】
(変換部の構成)
1次側ブリッジ回路110は、変換部130の1次側131に接続されている。すなわち1次側ブリッジ回路110の出力端子は変換部130の入力端子に接続される。2次側ブリッジ回路120は、変換部130の2次側132に接続されている。すなわち変換部130の出力端子(変換部の2次側の端子)は2次側ブリッジ回路120の入力端子に接続される。
【0013】
変換部130は、トランスTrと、リアクトルL
1と、リアクトルL
2とを備える。
図1の回路図におけるリアクトルL
1とリアクトルL
2とは、変換部130におけるインダクタンス成分を等価的に表している。リアクトルL
1およびリアクトルL
2で表されるインダクタンス成分は、トランスTrの漏れインダクタンスを含む。
【0014】
また、リアクトルL
1およびリアクトルL
2で表されるインダクタンス成分は、トランスTrの1次巻線または2次巻線の少なくともいずれかに接続された現実の回路素子としてのリアクトルによるインダクタンス成分を含んでいてもよい。
図1の回路図では、リアクトルL
1、トランスTrの1次巻線およびリアクトルL
2がこの順に直列で接続されているように表した。
【0015】
(1次側ブリッジ回路の構成)
1次側ブリッジ回路110は、コンデンサC1と、スイッチング素子Sw1~Sw4と、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4(コンデンサ素子)と、電流計115と、電圧計116とを備える。なお、実施形態1においては、スイッチング素子をMOSトランジスタで構成しているが、これ以外のスイッチング素子で構成してもよい。
【0016】
スイッチング素子Sw1~Sw4は、還流ダイオード(以下単にダイオードという)D1~D4をそれぞれ備えている。また、スイッチング素子Sw1~Sw4には、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4が並列にそれぞれ接続されている。すなわち、スイッチング素子Sw1~Sw4のドレインとソースとの間に、スナバコンデンサCsnub1~Csnub4がそれぞれ接続されている。
【0017】
1次側ブリッジ回路110の入力端子間には、コンデンサC1と、第1レグ111と、第2レグ112とが並列に接続されている。第1レグ111の高電位側の入力端子から順に、スイッチング素子Sw1、スイッチング素子Sw2が直列接続されている。また、第2レグ112の高電位側の入力端子から順に、スイッチング素子Sw3、スイッチング素子Sw4が直列接続されている。
【0018】
第1レグ111の中間点、即ち、スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点が、1次側ブリッジ回路110の一方の出力端子113となる。第2レグ112の中間点、即ち、スイッチング素子Sw3とスイッチング素子Sw4との接続点が、1次側ブリッジ回路10のもう一方の出力端子114となる。変換部130のリアクトルL1は、1次側ブリッジ回路110の一方の出力端子113に接続されており、リアクトルL2は1次側ブリッジ回路110のもう一方の出力端子114に接続されている。
【0019】
なお、1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118(1次側直流電源E1の両側)に流れる電流(以下1次側電流という)I1を測定するために電流測定部である電流計115が実施形態1の1次側ブリッジ回路110に設けられている。また、1次側ブリッジ回路110の入力端子117、118間の電圧(以下1次側電圧という)V1を測定するために電圧測定部である電圧計116が実施形態1の1次側ブリッジ回路110に設けられている。電流計115と電圧計116はこれらに限定されるものではなく、1次側ブリッジ回路110の1次側電流I1及び1次側電圧V1が測定できるものであれば他の回路等であってもよい。
【0020】
(2次側ブリッジ回路の構成)
2次側ブリッジ回路120は、コンデンサC2と、スイッチング素子Sw5~Sw8と、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8(コンデンサ素子)と、電流計125と、電圧計126とを備える。スイッチング素子Sw5~Sw8は、ダイオードD5~D8をそれぞれ備えている。スイッチング素子Sw5~Sw8には、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8が並列にそれぞれ接続されている。すなわち、スイッチング素子Sw5~Sw8のドレインとソースとの間に、スナバコンデンサCsnub5~Csnub8がそれぞれ接続されている。
【0021】
2次側ブリッジ回路120の出力端子間には、コンデンサC2と、第3レグ121と、第4レグ122とが並列に接続されている。第3レグ121の高電位側の入力端子から順に、スイッチング素子Sw5、スイッチング素子Sw6が直列接続されている。また、第4レグ122の高電位側の入力端子から順に、スイッチング素子Sw7、スイッチング素子Sw8が直列接続されている。
【0022】
第3レグの中間点、即ち、スイッチング素子Sw5とスイッチング素子Sw6との接続点が、2次側ブリッジ回路120の一方の入力端子123となる。第4レグの中間点、即ち、スイッチング素子Sw7とスイッチング素子Sw8との接続点が、2次側ブリッジ回路120のもう一方の入力端子124となる。
図1の回路図において、変換部130のトランスTrの2次巻線は、2次側ブリッジ回路120の一方の入力端子123ともう一方の入力端子124とに接続されている。
【0023】
2次側ブリッジ回路120の出力端子127、128に流れる電流(以下2次側電流という)I2を測定するために電流測定部である電流計125が実施形態1の2次側ブリッジ回路120に設けられている。また、2次側ブリッジ回路120の出力端子127、128間の電圧(以下2次側電圧という)V2を測定するための電圧測定部である電圧計126が実施形態1の2次側ブリッジ回路120に設けられている。電流計125と電圧計126はこれらに限定されるものではなく、2次側ブリッジ回路120の1次側電流I1及び1次側電圧V1が測定できるものであれば他の回路等であってもよい。
【0024】
(制御部の動作説明)
制御部140は、1次側電圧V1、1次側電流I1、2次側電圧V2及び2次側電流I2を参照して、スイッチング素子Sw1~Sw8のスイッチングを制御する制御信号S1~S8をスイッチング素子Sw1~Sw8のゲートに供給する。
【0025】
(DC-DCコンバータの動作:基本動作)
図2に基づき、実施形態1に係るDC-DCコンバータ100の動作を説明する。
図2は、1次側ブリッジ回路110および2次側ブリッジ回路120間において電力伝送を行う場合を示すタイミングチャートである。
【0026】
各レグにおいて2つのスイッチング素子(例えば、第1レグ111におけるスイッチング素子Sw1とSw2)が同時に導通するときに流れる貫通電流を防ぐために、オンオフの切替えの際には、これら2つのスイッチング素子を双方ともオフとするゲート信号を生成する。一般的に知られているように、このゲート信号のタイミング差をデッドタイムと称し、本実施形態の回路においても設ける必要がある。しかし、以下の説明及び
図2~8では、説明を分かりやすくするためにデッドタイムには言及せずに動作を説明している場合がある。しかしながら、実際のDC-DCコンバータにおいては、デッドタイムが適宜設けられている。
【0027】
1次側ブリッジ回路110におけるスイッチング素子Sw1~Sw4のデューティは、デッドタイムを無視して50%の固定値である。また、スイッチング素子Sw1とSw4のスイッチングタイミング(制御信号S1とS4とのスイッチング周期のタイミング差)は図に示すように時刻t2から時刻t3の分だけずれている。すなわち、1次側ブリッジ回路110のレグ間位相差(1次側レグ間位相差)φL1は時刻t2から時刻t3の期間の長さである。
【0028】
また、2次側ブリッジ回路120におけるスイッチング素子Sw5~Sw8のデューティについても、デッドタイムを無視して50%の固定値である。スイッチング素子Sw5とSw8のスイッチングタイミング(制御信号S5とS8とのタイミング差)には、2次側レグ間位相差φ
L2が設けられている。
図2で示されているように、2次側レグ間位相差φ
L2は時刻t
2から時刻t
4の期間の長さである。また
図2で表されるように、第1レグ111と第3レグ121との間に位相差はない。(制御信号S1、S2と制御信号S5、S6のタイミングは同じ。)
【0029】
図2に示されるトランス1次側電圧V
tr1は、1次側ブリッジ回路110の出力端子113、114間の電位差、即ち、1次側ブリッジ回路110の出力電圧である。トランス2次側電圧V
tr2は、2次側ブリッジ回路120の入力端子123、124間の電位差であり、2次側ブリッジ回路120の入力電圧である。インダクタ電流i
Lは、変換部130に流れる電流を表している。
【0030】
図2に示す時刻t
0、t
1、t
2およびt
3におけるDC-DCコンバータ100の動作の詳細については後述するが、ここでは、各時刻t
0~t
3におけるインダクタ電流値理論式を示す。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、nはトランスTrの1次巻き線と2次巻き線との巻き線比(n
1/n
2)である。
【0031】
また、出力電力Poutの理論式はインダクタ電流理論式とトランス電圧の積の面積分により求められ、次の(5)式で表される。
【0032】
【数5】
上述の(1)~(5)式からわかるように、インダクタ電流i
Lおよび出力電力P
outは、1次側レグ間位相差φ
L1および2次側レグ間位相差φ
L2を調整することにより制御することができる。特に出力電力P
outは、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2との差を一定にしても、1次側レグ間位相差φ
L1を調整することにより低減させることができる。
【0033】
また、(1)~(4)式からわかるように、インダクタ電流iLは1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2との差を一定にすることによって、出力電力Poutに関係なく一定の値とすることができる。したがって、DC-DCコンバータ100の動作を制御するにあたっては、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2との差を一定に保ちながら、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2とを増減させることにより、インダクタ電流iLは一定のまま出力電力Poutを制御することが可能になる。
【0034】
なお、1次側レグ間位相差φL1と2次側レグ間位相差φL2との差は、各スイッチング素子Sw1~Sw8をゼロボルトスイッチング(Zero Voltage Switching:ZVS)動作が可能な最小電流となるように設定する。
【0035】
【数6】
上記(6)式で表されるように、インダクタ電流i
Lを適切に設定することによって、低出力動作時においても、各スイッチング素子の多くにおいて、ZVSとなり、スイッチング損失を最小に抑えることが可能となる。
【0036】
図3は、一例として第2レグ112において、ZVS動作が可能な最小電流でスイッチング素子Sw3スイッチング動作させたときのインダクタ電流i
L、スイッチング素子Sw3のドレインーソース間電圧V
ds3及びスイッチング素子Sw3およびSw4のそれぞれのゲートーソース間電圧V
gs3、V
gs4を示した図である。なお、デッドタイムは、1.2μsに設定している。
図3からわかるように、インダクタ電流i
Lが最小電流(100A)となるようにスイッチング動作させると、スイッチング素子Sw3をオンさせる前のデッドタイム中に、そのドレインーソース間電圧V
ds3は1.1μsかけて緩やかに変化していく。
【0037】
図4は、同じく一例として第2レグ112において、過大な電流でスイッチング素子Sw3をスイッチング動作させたときのインダクタ電流i
L、スイッチング素子Sw3のドレインーソース間電圧V
ds3及びスイッチング素子Sw1およびSw2のそれぞれのゲートーソース間電圧V
gs3、V
gs4を示した図である。
図4からわかるように、インダクタ電流i
Lが過大な電流(200A)でスイッチング動作させると、スイッチング素子Sw3をオンさせる前のデッドタイム中に、そのドレインーソース間電圧V
ds3は0.6μsの間で急激に変化していく。
【0038】
図3、
図4いずれの場合であっても、インダクタ電流i
Lが最小電流以上に維持されていることで、デッドタイム中にスナバコンデンサC
snub5の放電が完了し、スイッチング素子Sw3のターンオン時のZVSが実現される。なお、ここでは第2レグ112について説明したが、第1レグ111、第4レグ122においても同様である。
【0039】
以上の比較からわかるように、ZVS動作が可能な最小電流で動作させることにより、損失(デットタイム時の電流×電圧の積分値に比例)を低減できることがわかる。
【0040】
(DC-DCコンバータの動作:各タイミングにおける動作)
次に、
図2における時刻t
0から時刻t
3までの各区間(i)、(ii)、(iii)におけるDC-DCコンバータ100の動作を
図5~
図8を用いて説明する。なお、
図5~
図8では
図1で示した回路の一部を省略、簡易化した図としている。
【0041】
図5は区間(i)における極性反転前のDC-DCコンバータ100の動作を説明する図である。区間(i)において、インダクタ電流i
Lは時刻t
0においてマイナスの値(ゼロ以下)の電流が流れている(区間(i)の一点鎖線の丸印参照)。この時刻t
0からインダクタ電流i
Lがゼロになるまでの期間が極性反転前という期間に該当する。
【0042】
区間(i)においては、制御信号S1、S4、S5、S7が高電位(H)のため、スイッチング素子Sw1、Sw4、Sw5、Sw7がON状態となる。一方、制御信号S2、S3、S6、S8が低電位(L)のため、スイッチング素子Sw2、Sw3、Sw6、Sw8がOFF状態となる。なお上述したように、各レグ111、112、121、122においては一方のスイッチング素子がON状態、他方のスイッチング素子がOFF状態となるため、以降の説明においては、ON状態のスイッチング素子のみを説明する。
【0043】
図5の矢印で示したように、区間(i)における極性反転前において、電流は1次側直流電源E
1からダイオードD4、ダイオードD7、スイッチング素子Sw5、インダクタL(変換部130の等価的インダクタ)、ダイオードD1という経路を経て1次側直流電源E
1に流れる。インダクタLに蓄積されたエネルギーが1次側直流電源E
1に回生され、インダクタ電流i
Lが徐々に小さくなる。
【0044】
図6は区間(i)における極性反転後のDC-DCコンバータ100の動作を説明する図である。区間(i)において、インダクタ電流i
Lは時刻t
0と時刻t
1の中間近傍でプラスの値の電流が流れるようになる。インダクタ電流i
Lがゼロ以上になった期間が極性反転後という期間に該当する。
【0045】
区間(i)においては、制御信号S1、S4、S5、S7が高電位(H)のため、スイッチング素子Sw1、Sw4、Sw5、Sw7がON状態である。このため、極性反転後の電流のルートは1次側直流電源E1からスイッチング素子Sw1、インダクタL、ダイオードD5、スイッチング素子Sw7、スイッチング素子Sw4という経路を経て1次側直流電源E1に流れる。電源E1からインダクタLにエネルギーが蓄積され、インダクタ電流iLが徐々に大きくなる。
【0046】
図7は区間(ii)におけるDC-DCコンバータ100の動作を説明する図である。区間(ii)においては、スイッチング素子Sw1、Sw4、Sw5、Sw8がON状態であるため、電流のルートは1次側直流電源E
1からスイッチング素子Sw1、インダクタL、ダイオードD5、直流電源E
2、ダイオードD8、スイッチング素子Sw4という経路を経て1次側直流電源E
1に流れる。DC-DCコンバータ100では、区間(ii)において、1次側から2次側への電力の輸送が行われる。従って、DC-DCコンバータ100では、区間(ii)を短くすることで、低出力に対応できる。
【0047】
図8は区間(iii)におけるDC-DCコンバータ100の動作を説明する図である。区間(iii)においては、スイッチング素子Sw2、Sw4、Sw6、Sw8がON状態であるため、電流のルートは閉じたルートとなり、ダイオードD2、インダクタL、スイッチング素子Sw6、ダイオードD8、スイッチング素子Sw4という経路を構成する。
【0048】
(DC-DCコンバータの動作:出力電力の変更)
図9は出力電力が小さくなる場合のDC-DCコンバータ100の動作を示すタイムチャートである。DC-DCコンバータ100における各レグの制御信号S1~S8の高電位(H)、低電位(L)の切り替わりについては、上述した基本動作(
図2)と同じである。ただし、その切り替わりのタイミングは、基本動作と異なり、区間(ii)が短くなり、区間(iii) (1次側レグ間位相差φ
L1)が長くなっている。
図9からわかるように、出力電圧P
outは、区間(ii)(および時刻t
4以降に制御信号S1、S2が切り替わるタイミングまでの区間)において出力されるため、平均の出力電圧は小さくなる。
【0049】
図10は出力電力が大きくなる場合のDC-DCコンバータ100の動作を示すタイムチャートである。出力電力が大きくなる場合のDC-DCコンバータ100における各レグの制御信号S1~S8の高電位(H)、低電位(L)の切り替わりについては出力電力が小さくなる場合(
図9)と同じである。ただし、その切り替わりのタイミングは、出力電力が小さくなる場合と異なり、区間(ii)が長くなり、区間(iii) (1次側レグ間位相差φ
L1)が短くなっている。上述したように、出力電圧P
outは、区間(ii)(および時刻t
4以降に制御信号S1、S2が切り替わるタイミングまでの区間)において出力されるため、出力電圧P
outは長い期間出力され、結果として平均の出力電圧は大きくなる。
【0050】
なお、出力電力が小さくなる場合および出力電力が大きくなる場合においても、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2との差(区間(i)または時刻t
3と時刻t
4の間)は同じである。即ち、
図9、
図10におけるDC-DCコンバータ100では、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2との差を一定に保ち、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2を増減させることにより出力電力P
outが制御可能なのである。
【0051】
また、インダクタ電流iLのピーク値も変わらない。これにより、ZVSを実現できる式(6)の条件を保ったまま、低出力動作を実現できる。
【0052】
(DC-DCコンバータの動作:動作モードの切替)
実施形態1のDC-DCコンバータ100において、動作モードが切り替わる場合を、
図11のタイムチャートを用いて説明する。なお、この動作モードの切替においては、2次側レグ間位相差φ
L2を調整して
図2における期間(ii)を最大限まで大きくし、輸送する電力を最大にした場合として説明している。これ以上輸送電力を大きくするには、1次側ブリッジ回路111と2次側ブリッジ回路120の位相差を付与する等、公知の技術が適用できる。
【0053】
図11において図示してはいないが、動作モードが切り替わる前の状態においては、1次側ブリッジ回路110における第1レグ111の制御信号S1、S2と第2レグ112の制御信号S3、S4とは逆の位相を有している。また、2次側ブリッジ回路における第3レグ121、の制御信号S5、S6と第4レグ122の制御信号S7、S8とは逆の位相を有しており、かつ、第1レグ111の制御信号S1、S2と第3レグ121の制御信号S5、S6とは同じタイミングを有している。この図示しない状態から動作モードが切り替わると、第4レグ122の制御信号S7、S8が第3レグ121の制御信号S5、S6に対して位相差(2次側レグ間位相差φ
L2)を発生する。
【0054】
即ち、
図8に示す時刻t
0から区間(i)だけずれた時刻t
1まで(もしくは、時刻t
2から区間(i)だけずれた時刻t
3まで)2次側レグ間位相差φ
L2を有することになる。この2次側レグ間位相差φ
L2を有した区間(i)において、トランス1次側電圧V
tr1とトランス2次側電圧V
tr2とが異なる電圧を有する。(
図11のトランス1次側電圧V
tr1、トランス2次側電圧V
tr2参照)なお、トランス1次側電圧V
tr1およびトランス2次側電圧V
tr2が同時にゼロボルトとなる期間はない。これは、上述したDC-DCコンバータ100の基本動作と異なる点である。このトランス1次側電圧V
tr1とトランス2次側電圧V
tr2との電圧差がインダクタ電流i
Lを流すことになり、結果として出力電圧P
outを出力することになる。
【0055】
(DC-DCコンバータの動作:起動時の説明)
図12は起動時におけるDC-DCコンバータ100の動作を示すタイムチャートである。起動時における説明では、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2をどのようにして設定するかについて説明する。
【0056】
起動時においては、1次側ブリッジ回路110における第1レグ111と第2レグ112との間のレグ間位相差がπであり、2次側ブリッジ回路120における第3レグ121と第4レグ122との間のレグ間位相差もπである。したがって、
図11に示すように、第1~第4のレグ111~122を制御する制御信号(S1、S3、S5、S7およびS2、S4、S6、S8)はすべて同じタイミングになっている。また、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2も同じになる。このような状態においては電流が全く流れないため、トランス1次側電圧V
tr1、トランス2次側電圧V
tr2ともにゼロになり、インダクタ電流i
Lも流れずゼロとなる。
【0057】
図13は起動時の状態から1次側ブリッジ回路110において位相差が制御され、インダクタ電流i
Lが流れ始める状態を示すタイムチャートである。
図13に示すように、DC-DCコンバータ100は起動時の状態から、1次側ブリッジ回路110における第1レグ111の制御信号S1、S2に対して、第2レグ112の制御信号S3、S4の信号の位相をずらす制御が行われる。これにより、1次側レグ間位相差φ
L1は、起動時より短くなる。
【0058】
一方、2次側ブリッジ回路120における第3レグ121の制御信号S3、S4と、第4レグ122の制御信号S7、S8の信号は起動時と同じく第1レグ111の制御信号S1、S2と同じタイミングである。したがって、2次側レグ間位相差φ
L2は、起動時と変わらない。即ち、1次側ブリッジ回路110におけるレグ間位相差φ
L1のみを制御することによって、インダクタ電流i
Lを発生させるのである。この制御により、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2との間に差ができ、この差の区間においてトランス1次側電圧V
tr1が発生する(
図13のトランス1次側電圧V
tr1参照)。
【0059】
トランス2次側電圧V
tr2はゼロのままであるが、トランス1次側電圧V
tr1とトランス2次側電圧V
tr2との間に電位差が発生するため、インダクタ電流i
Lは流れる状態になる(
図13のインダクタ電流i
L参照)。このインダクタ電流i
Lによる出力電圧P
outの発生は抑えられ(ゼロの状態にして)、インダクタ電流i
LはZVS可能な電流だけを流すことになる。また、インダクタ電流i
Lのピーク値が、ZVS可能な電流値(式6)になった時点で、1次側レグ間位相差φ
L1と2次側レグ間位相差φ
L2との差を固定し、
図2および
図5~8に示した実施形態1の制御を実行する。
【0060】
(DC-DCコンバータにおけるデッドタイムの動作説明)
図14は、DC-DCコンバータ100における各スイッチング素子Sw1~Sw8の動作を説明するためのタイムチャートである。実施形態1のDC-DCコンバータ100においては、各レグ(例えば第1レグ111)における制御信号のペア(例えば制御信号S1、S2)は、各レグ(例えば第1レグ111)の2つのスイッチング素子(例えばスイッチング素子Sw1、Sw2)を双方ともオフとするゲート信号を発するデッドタイムを設ける必要がある。しかし、上述の実施形態1の説明においては、説明を分かりやすくするためにデッドタイムを省略して説明してきた。しかしながら、実際の各レグにおける制御信号(例えば制御信号S1、S2)にはデッドタイムが存在する。
図14ではこのデッドタイムを誇張した形で示している。
【0061】
図14に示す区間aにおいては、制御信号S5、S6ともにLの状態になり、区間bにおいても、制御信号S5、S6ともにLの状態になる。区間aの初めのタイミングにおいてスイッチング素子Sw6がターンオフし、区間aの終わりのタイミングにおいてスイッチング素子Sw5がターンオンする。同様に、区間bの初めのタイミングにおいてスイッチング素子Sw5がターンオフし、区間bの終わりのタイミングにおいてスイッチング素子Sw6がターンオンする。
【0062】
図15は、区間aのデッドタイム時の直前および直後の電流ループを示す図である。区間aの直前の期間においては、制御信号S2、S3、S6及びS7がHであり、電流は実線で示すように、1次側直流電源E
1からスイッチング素子Sw3、ダイオードD7、2次側直流電源E
2、ダイオードD6、インダクタL、スイッチング素子Sw2という経路を経て1次側直流電源E
1に流れる。この時スイッチング素子Sw5には2次側直流電源E
2から電圧が与えられているため、スナバコンデンサC
snub5は充電されている。
【0063】
その後区間aの始まりにおいてスイッチング素子Sw6がターンオフする。スイッチング素子Sw6のダイオードD6には電流が流れ続けるので、DC-DCコンバータ100内を流れる電流は区間a前と同様実線の矢印の通りである。したがって、スイッチング素子Sw5には2次側直流電源E2の電圧が印加され続け、スナバコンデンサCsnub5が充電されている状態は変わらない。
【0064】
次に、区間aのデッドタイムが終了すると、スイッチング素子Sw5はターンオンする。よって、このスイッチング素子Sw5のターンオンはハードスイッチングである。この瞬間に一点鎖線で示す経路で電流が流れる。即ち、スナバコンデンサCsnub5に蓄積された電荷は、スイッチング素子Sw5がターンオンすることにより、スイッチング素子Sw6の方向に放出され、スイッチング素子Sw5のオン抵抗によって損失が生じる。一方、スナバコンデンサCsnub6は、スナバコンデンサCsnub5から放出された電荷による電流によって充電される。
【0065】
このような、デッドタイムの終了時における瞬間的電流の流れは、スイッチング周期の半周期ごとにそれぞれ逆方向に発生する。
【0066】
上述のように、第3レグ121のスイッチング素子Sw5はハードスイッチング動作となるが、その他のレグ111、112、122のスイッチング素子はZVS動作となり、DC-DCコンバータ100全体としては消費電力が抑制されるメリットがある。また、第3レグ121のスイッチング素子だけがハードスイッチング動作となるため、第3レグ121のスイッチング素子をSiC-MOSFETで構成し、その他のレグ111、112、122のスイッチング素子をIGBTで構成してもよい。このように構成することによって、DC-DCコンバータ100は安価となり、かつ、損失を低減することが可能になる。
【0067】
(実施形態1の効果)
上述したように、実施形態1のDC-DCコンバータによれば、低出力動作時においても1つのレグ(第3レグ121)を除いた他のレグ(第1レグ111、第2レグ112及び第4レグ122)のスイッチング素子をZVSで動作させることにより、損失を低減したDC-DCコンバータを実現できる。
【0068】
〔実施形態2〕
(制御部の全体説明)
実施形態2の制御部140aについて、
図16~
図19を参照しながら説明する。実施形態2では、制御部の内部構成がより具体化して示されている。実施形態2の制御部140aは、実施形態1の制御部140に適用できる。
【0069】
図16は制御部140aを示すブロック図である。
図16に示すように、制御部140aは電流制御部141と、電力制御部142と、制御信号生成部143とを備えている。
【0070】
(電流制御部の構成)
図17は、電流制御部141の構成を示すブロック図である。電流制御部141は、偏差演算部211、電力演算部212およびPI(Proportional Integral)制御部213とを備えている。
【0071】
偏差演算部211の一方の入力には、ZVS可能な最小電流Izvs_minが入力され、他方の入力にはDC-DCコンバータ100の出力電流のピーク値I2peakが入力される。なお、ここではDC-DCコンバータ100において1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送される場合を想定し、2次側ブリッジ回路120から出力される出力電流のピーク値I2peakが偏差演算部211に入力されている。しかしながら、2次側ブリッジ回路120から1次側ブリッジ回路110へと電力が伝送される場合は、1次側ブリッジ回路110から出力される出力電流のピーク値偏差I1peakが偏差演算部211に入力される。偏差演算部211は両方の入力を比較して電力偏差を出力する。
【0072】
電力演算部212では、偏差演算部211から出力された電力偏差を1次側電圧V1、起動時のレグ間位相差π、スイッチング周波数f、インダクタンスLなどと演算を行い、位相偏差a(e)が出力される。
【0073】
この位相偏差a(e)はPI制御部213で増幅され、位相差異a(第1レグ111と第2レグ112との位相差φL1と第3レグ121と第4レグ122との位相差φL2との差異:a=φL1-φL2)が出力される。
【0074】
(電力制御部の構成)
図18は、電力制御部142の構成を示すブロック図である。電力制御部142は、電力演算部201、偏差演算部202、位相偏差演算部203およびPI制御部204とを備えている。
【0075】
電力演算部201は、1次側ブリッジ回路110の電流計115及び電圧計116または2次側ブリッジ回路120の電流計125及び電圧計126から1次側電圧V1および1次側電流I1または2次側電圧V2、2次側電流I2のいずれかを取得する。ここで取得する電流と電圧は、DC-DCコンバータ100の動作状況に依存する。即ち、DC-DCコンバータ100において1次側ブリッジ回路110から2次側ブリッジ回路120へと電力が伝送される場合、電力演算部201は2次側電圧V2、2次側電流I2を取得する。また、2次側ブリッジ回路120から1次側ブリッジ回路110へと電力が伝送される場合、電力演算部201は1次側電圧V1および1次側電流I1を取得する。
【0076】
電力演算部201は、演算結果を偏差演算部202の他方の入力に出力する。偏差演算部202の一方の入力には、DC-DCコンバータ100の出力電力Poutが入力され、比較結果として電力偏差ΔPoutを導出する。
【0077】
位相偏差演算部203は、電力演算部201から電力偏差ΔPoutを受け取るとともに、1次側電圧V1、2次側電圧V2、トランスの巻き線比n、スイッチング周波数fsw、インダクタンスLを数式に従って位相偏差φL2(e) を生成する。
【0078】
位相偏差φL2(e) はPI制御部204で増幅され、第3レグ121と第4レグ122の位相差φL2として出力される。
【0079】
(制御信号生成部の構成)
図19は、制御信号生成部143の構成を示すブロック図である。制御信号生成部143は、パルス幅調整(PWM)部221、第1位相差付加部222、第2位相差付加部223およびインバータ231~234とを備えている。
【0080】
パルス幅調整部221は、所定のパルス幅を持つパルスを出力する。実施形態2のパルス幅調整部221は、スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw5の制御に用いられる制御信号S1およびS5を出力している。制御信号S1はインバータ231によって反転されてスイッチング素子Sw2の制御に用いられる制御信号S2として出力される。また、制御信号S5はインバータ233によって反転されてスイッチング素子Sw6の制御に用いられる制御信号S6として制御信号生成部143から出力される。
【0081】
なお、制御信号生成部143では、出力信号の論理を明確にするためにインバータ231~234によって単純に反転させているように示している。しかしながら、インバータ231~234によって遅延が生じてしまうため、実際の回路においてはそのような遅延を無視できるよう構成されている。
【0082】
(実施形態2の効果)
実施形態2のDC-DCコンバータによれば、実施形態1の効果に加え、制御に用いる入力をDC-DCコンバータから取得しているため、制御部を容易に設計することが可能になる。
【0083】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るDC-DCコンバータは、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第1レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第2レグとを有する1次側ブリッジ回路と、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第3レグと、複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続される複数のコンデンサ素子とを有する第4レグとを有する2次側ブリッジ回路と、トランスを有し、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との間に接続される変換部と、前記第1ないし第4レグのそれぞれの前記スイッチング素子を制御する制御信号を出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1および第3レグの前記制御信号を同じ位相とし、前記第1レグと前記第2レグとの間の位相差である第1位相差と、前記第3レグと前記第4レグとの間の位相差である第2位相差との差異を所定の一定値とし、前記1次側ブリッジ回路から前記2次側ブリッジ回路へ、または前記2次側ブリッジ回路から前記1次側ブリッジ回路へと輸送する電力に応じて、前記第2位相差を制御することを特徴とする。
【0084】
本発明の態様2に係るDC-DCコンバータは、態様1において、さらに前記変換部に流れる電流を制御して、前記1次側ブリッジ回路のそれぞれの前記スイッチング素子においてゼロボルトスイッチングを可能とするよう前記所定の一定値を定めることを特徴とする。
【0085】
本発明の態様3に係るDC-DCコンバータは、態様1または2において、さらに、前記制御部は、前記第1、第2及び第4レグのそれぞれの前記スイッチング素子をゼロボルトスイッチングで動作させ、前記第3レグのそれぞれの前記スイッチング素子をハードスイッチングで動作させることを特徴とする。
【0086】
本発明の態様4に係るDC-DCコンバータは、態様1ないし3のいずれかにおいて、さらに、前記制御部は、前記スイッチング素子のスイッチング周期の半周期毎にオンとオフとを切り替える制御信号を出力することを特徴とする。
【0087】
本発明の態様5に係るDC-DCコンバータは、態様1ないし4のいずれかにおいて、前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路は、前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路のそれぞれの電圧値を測定する電圧測定部と、前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路のそれぞれに流れる電流値を測定する電流測定部とを有し、前記制御部は、前記電圧測定部及び前記電流測定部から前記1次側及び前記2次側ブリッジ回路の前記それぞれの電圧値および前記それぞれの電流値を取得して、前記制御を行うことを特徴とする。
【0088】
本発明の態様6に係るDC-DCコンバータは、態様5において、さらに、前記制御部は、前記電圧測定部および前記電流測定部から前記電圧値および前記電流値を取得して、少なくとも当該取得した電圧値および電流値に基づいて前記第2位相差を出力する電力制御部を有することにより、前記2位相差を制御することを特徴とする。
【0089】
本発明の態様7に係るDC-DCコンバータは、態様5または6において、さらに、前記制御部は、前記電流測定部から前記電流値を取得して、前記電流値のピーク値に基づいて前記所定の一定値を出力する制御信号生成部を有することにより、前記所定の一定値を定めることを特徴とする。
【0090】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100 DC-DCコンバータ
110 1次側ブリッジ回路
120 2次側ブリッジ回路
130 変換部
111 第1レグ
112 第2レグ
121 第3レグ
122 第4レグ
Sw1~Sw8 スイッチング素子
D1~D8 ダイオード
Csnub1~Csnub8 スナバコンデンサ(コンデンサ素子)
L、L1、L2 リアクトル
Tr トランス
I2 1次側電流
I2 2次側電流
E1 1次側電源
E2 2次側電源
V1 1次側電圧
V2 2次側電圧
S1~S8 制御信号
Vtr1 トランス1次側電圧
Vtr2 トランス2次側電圧
iL インダクタ電流