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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172593
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/025 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078528
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B099
【Fターム(参考)】
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】円筒ボス部に対して、リングやカムがボスを倒す方向に力が加わることを防止し、カムやリングから加えられた力による変形を低減し、強度を保持することができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置100は、外歯11が形成された外歯歯車10と、外歯と噛合可能な内歯21を有する内歯歯車20と、回転シャフト部31と、外周壁部と、回転シャフト部と外周壁部との間に配置される底面部とを備え、回転シャフト部の中心と外周壁部との中心が偏心して形成され、円筒ボス22と外周壁部との間にカム収容部34を有する回転ブッシュ30と、カム収容部に収容される一対のくさび状カム50と、一対のくさび状カムを回転ブッシュ及び円筒ボスに同時に接触させる方向に付勢する弾性体60と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に形成される回転シャフト部と、前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と同様の外周を有する外周壁部と、前記回転シャフト部と前記外周壁部との間に配置される底面部とを備え、前記回転シャフト部の中心と前記外周壁部との中心が偏心して形成され、前記円筒ボスと前記外周壁部との間にカム収容部を有する回転ブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記回転ブッシュの前記外周壁部の内周面とを押圧して、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転ブッシュを回転させることによって、前記回転ブッシュと前記内歯歯車の前記円筒ボス又は前記回転ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記回転ブッシュ及び前記円筒ボスに同時に接触させる方向に付勢する弾性体と、
を備えていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ中央に貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に形成される回転シャフト部と、前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と同様の外周を有する外周壁部と、前記回転シャフト部と前記外周壁部との間に配置される底面部とを備え、前記回転シャフト部の中心と前記外周壁部との中心が偏心して形成され、前記円筒ボスと前記外周壁部との間にカム収容部を有する回転ブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記回転ブッシュの前記外周壁部の内周面とを押圧して、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転ブッシュを回転させることによって、前記回転ブッシュと前記外歯歯車の前記円筒ボス又は前記回転ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記回転ブッシュ及び前記円筒ボスに同時に接触させる方向に付勢する弾性体と、
を備えていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項3】
前記底面部は、カム収容部に相当する位置にくさび状カム挿入用孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置として、
シートクッションおよびシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、
シートクッションおよびシートバックの他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成された外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて前記外歯に噛合可能であり当該外歯よりも歯数が多い内歯が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合するとともに、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、
前記外歯歯車には、前記外歯の一部の近傍から軸方向に延出する外歯側規制部が形成され、
前記内歯歯車には、前記外歯歯車および前記内歯歯車が相対回動するとき所定の相対回動規制位置で前記外歯側規制部に当接することで前記相対回動を一定範囲内に規制する内歯側規制部が前記内歯の一部の近傍に形成されることを特徴とするリクライニング装置を提案している(特許文献1)。
【0003】
しかし、かかる従来のリクライニング装置300は、図8に示すように、カム330やリング340に大きな力が加えられた場合、カム330やリング340がボス350を倒すように力が加わり、ボス350の根元に大きな荷重がかかることで、ボス350が倒れるように変形してしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-207253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、円筒ボス部に対して、リングやカムがボスを倒す方向に力が加わることを防止し、カムやリングから加えられた力による変形を低減し、強度を保持することができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0007】
本発明のリクライニング装置は、シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に形成される回転シャフト部と、前記外歯歯車の貫通孔の内周と同様の外周を有する外周壁部と、前記回転シャフト部と前記外周壁部との間に配置される底面部とを備え、前記回転シャフト部の中心と前記外周壁部との中心が偏心して形成され、前記円筒ボスと前記外周壁部との間にカム収容部を有する回転ブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記内歯歯車の前記円筒ボスと前記回転ブッシュの外周壁部の内周面とを押圧して、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転ブッシュを回転させることによって、前記回転ブッシュと前記内歯歯車の前記円筒ボス又は前記回転ブッシュと前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記回転ブッシュ及び前記円筒ボスに同時に接触させる方向に付勢する弾性体と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成を採用することによって、回転ブッシュ及びくさび状カムに外力が加わった場合であっても、回転シャフト部と外周壁部との間に配置される底面を有する回転ブッシュを使用することによって、外周壁部及びくさび状カムが倒れることが防止され、円筒ボスの根元に荷重がかかりやすくなるため、円筒ボスが倒れる量を減少させることができ、外周壁部及びくさび状カムが倒れる方向の剛性及び強度を強化することができる。
【0009】
また、本発明にかかるリクライニング装置は、シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ中央に貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に形成される回転シャフト部と、前記内歯歯車の貫通孔の内周と同様の外周を有する外周壁部と、前記回転シャフト部と前記外周壁部との間に配置される底面部とを備え、前記回転シャフト部の中心と前記外周壁部との中心が偏心して形成され、前記円筒ボスと前記外周壁部との間にカム収容部を有する回転ブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記外歯歯車の前記円筒ボスと前記回転ブッシュの前記外周壁部の内周面とを押圧して、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転ブッシュを回転させることによって、前記回転ブッシュと前記外歯歯車の前記円筒ボス又は前記回転ブッシュと前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記回転ブッシュ及び前記円筒ボスに同時に接触させる方向に付勢する弾性体と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によっても、同様に、回転ブッシュ及びくさび状カムに外力が加わった場合であっても、回転シャフト部と外周壁部との間に配置される底面を有する回転ブッシュを使用することによって、外周壁部及びくさび状カムが倒れることが防止され、円筒ボスの根元に荷重がかかりやすくなるため、円筒ボスが倒れる量を減少させることができ、外周壁部及びくさび状カムが倒れる方向の剛性及び強度を強化することができる。
【0011】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、底面部のカム収容部に相当する位置にくさび状カム挿入用孔が設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
かかる構成を採用することによって、回転ブッシュを組み付けた後であっても、くさび状カム挿入用孔からくさび状カムを取り付けることができ、メンテナンスの際に、回転ブッシュを外すことなくくさび状カムを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態にかかる図2のA-A断面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる回転ブッシュ30を説明する模式図である。
図6図6は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図7図7は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図8図8は、従来にかかるリクライニング装置300の内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、車両用シート200の模式図であり、図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、図3は、リクライニング装置100の分解斜視図であり、図4図2のA-A断面図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0016】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、図2及び図3に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、回転ブッシュ30と、一対のくさび状カム50a,50b(50)、弾性体としてスプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80を備えている。なお、図2では、内部構造を見やすくするため、スプリングカバー70及びプレートカバー80は省略されている。
【0017】
外歯歯車10は、図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には円筒状の貫通孔12が形成されている。外歯歯車10には、外側面10bに突出部13が設けられており、外歯歯車10は、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0018】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心Cと内歯歯車20の中心Cが偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、円筒ボス22が設けられている。図3に示すように、この内歯歯車20の外側面にも突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって取り付けられる。
【0019】
回転ブッシュ30は、内歯歯車20の円筒ボス22に同軸かつ回転自在に形成される回転シャフト部31と、外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aと内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aの間に配置される円筒状の外周壁部32と、回転シャフト部31と外周壁部32を支持する底面部33と、を有する。回転シャフト部31は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるためにセレーション31aが設けられた内筒を有している。回転ブッシュ30は、図5Bに示すように、外周壁部32の内周面32bの中心Cと外周面32aに対する中心Cとがずれて偏心(γ)しているリング状に形成されている。外周壁部32の内周面32bは、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aよりもわずかに大きい直径を有しており、外周壁部32の外周面32aは、外歯歯車10の貫通孔12の直径に対して、わずかに小さい直径に形成されている。ロック状態では、外周壁部32の内周面32bと円筒ボス22の外周面22aとの間には、隙間Aが形成されている。隙間Aは、概ね0.06mm~0.12mm程度に設定するとよい。また、回転ブッシュ30の外周面32aと外歯歯車10の貫通孔12との間には、隙間Bが形成されている。隙間Bは、概ね0.02mm~0.06mm程度に設定するとよい。この際に、外歯歯車10と内歯歯車20を噛み合わせるためには、隙間Aと隙間Bとの関係は、隙間A>隙間Bである必要がある。すなわち、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと回転ブッシュ30の内周面32bとの隙間Aは、外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aと回転ブッシュ30の外周面32aとの隙間Bよりも大きくなるように設定する。底面部33は、回転シャフト部31と外周壁部32とを互いに連結する部材であり、回転シャフト部31と外周壁部32の相対位置を保持する機能を有するとともに、外周壁部32に力が加わった場合に外周壁部32が倒れるように変形することを防止する機能を有する。
【0020】
外周壁部32の内周面32bには、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるようにカム収容部34が2箇所形成されている。このカム収容部34には、カム収容部34の内周面と内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとに接触するように一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50b(50)が設けられている。くさび状カム50aとくさび状カム50bは、図3に示すように、面対称に形成されており、くさび状カム50の凹面51(内側の面)は、円筒ボス22の外周面22aの曲面と同一の曲面を有し、凸面52(外側の面)は肉厚が向かい合った側から徐々に薄くなるように形成されている。カム収容部34は、回転ブッシュ30の最も肉厚な部位αを挟んで両側に設けられる。最も肉厚な部位は、円筒ボス22の外周面22aに向かって延びる延出部46を有している。なお、このカム収容部34に対して、回転ブッシュ30を組み付けた後に、くさび状カム50を取り付けたり、メンテナンスの際に外したりすることができるように、底面部33のカム収容部34に相当する位置にくさび状カム挿入用孔35a、35b(35)を設けても良い。
【0021】
スプリング60は、図3に示すように、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、くさび状カム50a及びくさび状カム50bの厚肉部側の端面に配置され、それぞれのくさび状カム50a及びくさび状カム50bが互いに離間する方向へ付勢されている。これによって、内歯歯車20に対して外歯歯車10を押し付けて噛合させることができる。なお、スプリング60は、くさび状カム50a及びくさび状カム50bを付勢することができる形態であれば、ゴム等の他の弾性体であってもよい。
【0022】
スプリングカバー70は、スプリング60が外れることがないように、保持するためのカバーであり、スプリング60を保持できる形態であれば、特に限定するものではない。
【0023】
プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制する機能を有する。
【0024】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト部31に力を加えず、回転させていない状態、すなわち、回転ブッシュ30が回転していない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、回転ブッシュ30の内周面32bと内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0025】
このロック状態から、回転ブッシュ30を例えば、図2において反時計方向に回転させると、回転シャフト部31と一体である回転ブッシュ30も同様に回転する。回転ブッシュ30のカム収容部34の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。回転ブッシュ30の回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間に隙間が発生しクサビが外れる。回転ブッシュ30は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、回転ブッシュ30と円筒ボス22及び回転ブッシュ30と外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転ブッシュ30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転ブッシュ30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0026】
こうして作製されたリクライニング装置100は、回転ブッシュ30がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12に対して、垂直方法に回転ブッシュ30が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0027】
また、回転ブッシュ30及びくさび状カム50に外力が加わった場合であっても、回転シャフト部31と外周壁部32との間に配置される底面部33を有する回転ブッシュ30を使用することによって、わずかに円筒ボス22が図4に示す矢印Cのように倒れた場合であっても、外周壁部32及びくさび状カム50が倒れることが防止され、円筒ボス22の根元に荷重がかかりやすくなるため、円筒ボス22が倒れる量を減少させることができ、外周壁部32及びくさび状カム50が倒れる方向の剛性及び強度を強化することができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100が図6又は図7に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100に対して、外歯歯車10の中心に円筒ボス14が設けられており、内歯歯車20の中心に貫通孔25が設けられている点が異なる。また、回転ブッシュ30、くさび状カム50、スプリング60が軸方向へ移動するのを防止するスプリングカバー70が内歯歯車20の外側面側に設けられており、このスプリングカバー70に取付用プレート等230の嵌合孔と嵌合する突出部71が設けられている点が異なる。一方、プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、外歯歯車10の外側面側に配置され、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制している。
【0029】
回転ブッシュ30及びスプリング60は、第1実施形態と対称となるように作製されている。回転ブッシュ30は、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25との間に、回転ブッシュ30の外周壁部32が配置される。回転ブッシュ30は、円筒ボス14の中心軸と同軸で回転するように配置されている。回転ブッシュ30の内周面と、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aとの間には、両者に接触するように一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50b(50)が設けられている。回転ブッシュ30の内周面には、このくさび状カム50の形状に合わせて、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるようにカム収容部34が2箇所形成されており、くさび状カム50はこのカム収容部34に嵌挿されている。スプリング60は、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、くさび状カム50a及びくさび状カム50bの厚肉部側の端面に配置され、それぞれのくさび状カム50a及びくさび状カム50bが互いに離間する方向へ付勢されている。これによって、内歯歯車20に対して外歯歯車10を押し付けて噛合させることができる。
【0030】
回転ブッシュ30の内周面32bは、円筒ボス14の外周面14aの直径に対して、わずかに大きい直径を有しており、ロック状態では回転ブッシュ30の内周面32bと円筒ボス14の外周面14aの間に隙間A’が形成されている。回転ブッシュ30の内周面32bと円筒ボス14の外周面14aの間の隙間A’は、概ね0.06mm~0.12mm程度に設定するとよい。また、回転ブッシュ30の外周面32aは、内歯歯車20の貫通孔25内に配置され、内歯歯車20の貫通孔25の直径に対して、わずかに小さい直径に形成されており、ロック状態では回転ブッシュ30の外周面32aと内歯歯車20の貫通孔25との間には、隙間B’が形成されている。回転ブッシュ30の外周面32aと内歯歯車20の貫通孔25との隙間B’は、概ね0.02mm~0.06mm程度に設定するとよい。この際に、外歯歯車10と内歯歯車20を噛み合わせるためには、隙間A’と隙間B’との関係は、隙間A’>隙間B’である必要がある。すなわち、内歯歯車20の貫通孔25と回転ブッシュ30との隙間B’は、外歯歯車10の円筒ボス14と回転ブッシュ30との隙間A’よりも小さくなるように設定する。
【0031】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転ブッシュ30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、回転ブッシュ30と外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0032】
このロック状態から、回転ブッシュ30を例えば、図2において反時計方向に回転させると、回転シャフト部31と一体である回転ブッシュ30も同様に回転する。また回転ブッシュ30のカム収容部34の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。この回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間に隙間が発生しクサビが外れる。回転ブッシュ30は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、回転ブッシュ30と円筒ボス14及び回転ブッシュ30と内歯歯車20の貫通孔25との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転ブッシュ30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転ブッシュ30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0033】
こうして作製されたリクライニング装置100は、回転ブッシュ30がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aと、内歯歯車20の貫通孔25に対して、垂直方法に回転ブッシュ30が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0034】
また、回転ブッシュ30及びくさび状カム50に外力が加わった場合であっても、回転シャフト部31と外周壁部32との間に配置される底面部33を有する回転ブッシュ30を使用することによって、わずかに円筒ボス22が図4に示す矢印Cのように倒れた場合であっても、外周壁部32及びくさび状カム50が倒れることが防止され、円筒ボス22の根元に荷重がかかりやすくなるため、円筒ボス22が倒れる量を減少させることができ、外周壁部32及びくさび状カム50が倒れる方向の剛性及び強度を強化することができる。
【0035】
前述した第1実施形態から第2実施形態において、回転ブッシュ30は、内歯歯車20の中心Cと外歯歯車10の中心Cの偏心量βに対して、回転ブッシュ30の外周面43に対する中心Cと円筒ボス用孔41の中心Cの偏心量γが大きい円環状又はリング状に形成するとよい。すなわち、偏心量γ>偏心量βとなるように回転ブッシュ30を形成するとよい。
【0036】
リクライニング装置100の各部品は、それぞれ製造工程によるばらつきが生じる上、円筒ボス用孔41と円筒ボス22の外周面22aの間に隙間Aが形成され、外歯歯車10と貫通孔12との間には、隙間Bが形成されているため、隙間分のズレが外歯歯車10の外歯11と、内歯歯車20の内歯21との間に隙間が生じることになる。そのため、回転ブッシュ30の外周面43に対する中心Cと円筒ボス用孔41の中心Cとの偏心量を、内歯歯車20の中心Cと外歯歯車10の中心Cの偏心量以上に形成することによって、外歯歯車10と外歯11と、内歯歯車20の内歯21との間に隙間が生じることを低減させることができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…外歯歯車、10b…外側面、11…外歯、12…貫通孔、12a…内周面、13…突出部、14…円筒ボス、14a…外周面、20…内歯歯車、20b…外側面、21…内歯、22…円筒ボス、22a…外周面、23…突出部、25…貫通孔、30…回転ブッシュ、31…回転シャフト部、31a…セレーション、32…外周壁部、32a…外周面、32b…内周面、33…底面部、34…カム収容部、35a,35b,35…くさび状カム挿入用孔、46…延出部、50…くさび状カム、50a…くさび状カム、50b…くさび状カム、51…凹面、52…凸面、60…スプリング、61…環状部、62a,62b…端部、70…スプリングカバー、71…突出部、80…プレートカバー、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8