(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172616
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】トンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20221110BHJP
E21D 11/04 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
E21D11/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078592
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】秋元 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】野城 一栄
(72)【発明者】
【氏名】浦越 拓野
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 英紀
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BB02
2D155CA03
2D155KB04
2D155KB13
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】施工性及びメンテナンス性の優れたトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法を提供する。
【解決手段】トンネル1の軸方向に間隔を置いて配置されるとともに、トンネル内周面11に沿って周方向に延伸する帯板20と、トンネル横断面の側壁部13に締結金具(アンカー5)によって固定されて、帯板20の両端を、それぞれ支持する支持部30と、側壁部13より上方のアーチ部12に締結金具(アンカー5)を使用することなく設置される、帯板20を抱え込むように支持するガイド部50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル横断面の上部がアーチ状に形成されたトンネル内周面の補強構造であって、
トンネルの軸方向に間隔を置いて配置されるとともに、前記トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板と、
前記トンネル横断面の側壁部に締結金具によって固定されて、前記帯板の両端を、それぞれ支持する支持部と、
前記側壁部より上方のアーチ部に締結金具を使用することなく設置される、前記帯板を抱え込むように支持するガイド部と、を備える
ことを特徴とする、トンネル内周面の補強構造。
【請求項2】
前記帯板は、延伸方向に軸力が与えられた状態で取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項3】
前記支持部は、弾性体を備え、
前記帯板の両端は、弾性圧縮した状態の前記弾性体を介して支持される
ことを特徴とする、請求項2に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項4】
前記支持部は、前記弾性体を収容する収容部と、前記収容部に収容された前記帯板の先端の位置を点検可能な点検口と、を備える
ことを特徴とする、請求項3に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記帯板が挿通される挿通穴又は前記帯板が支持されるフックが形成されている
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項6】
前記帯板は、接着剤によって、前記トンネル内周面に取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項7】
前記支持部を覆う、締結金具によって前記側壁部に固定される保護部を備える
ことを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のトンネル内周面の補強構造。
【請求項8】
トンネル横断面の上部がアーチ状に形成されたトンネル内周面の補強方法であって、
前記トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板の一端を支持する第1支持部を、前記トンネル横断面の側壁部に締結金具によって取り付ける第1支持部取付工程と、
前記側壁部より上方のアーチ部に、前記帯板を抱え込む抱え込み部を有するガイド部を、締結金具を使用することなく設置するガイド部設置工程と、
前記帯板を、前記第1支持部に支持させるとともに、前記抱え込み部に抱え込ませて、前記トンネル内周面に沿うように、前記帯板を設置する帯板設置工程と、
前記帯板の他端を支持する第2支持部を介して、前記帯板に軸力を付与する軸力付与工程と、
前記第2支持部を、前記側壁部に締結金具によって取り付ける第2支持部取付工程と、を含む
ことを特徴とする、トンネル内周面の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成されたトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にトンネルの内周面は、コンクリートやレンガなどによって構築された覆工で覆われている。この覆工は、経年による劣化や周辺地盤の土圧などによって、ひび割れやはく離が発生し、補修が必要になることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、既設のトンネルの覆工の内面に沿って、トンネル周方向に延びる帯状補修材を、トンネル軸線方向に所定の間隔をおいて設置固定した構成が開示されている。帯状補修材は、トンネル覆工の内面全面を覆うものではないから、補修後も覆工の状態を容易に目視観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、帯状補修材の固定手段として、アンカーを用いている。そして、このアンカーは、トンネル内周面のアーチ部にも設けられているため、帯状補修材の施工時には、アーチ部にアンカーを取り付ける必要があり、メンテナンス時には、アーチ部を点検する必要がある。そのため、特許文献1に記載の構成では、施工性及びメンテナンス性の優れた補強構造とすることができない、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、施工性及びメンテナンス性の優れたトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のトンネル内周面の補強構造は、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成されたトンネル内周面の補強構造であって、トンネルの軸方向に間隔を置いて配置されるとともに、前記トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板と、前記トンネル横断面の側壁部に締結金具によって固定されて、前記帯板の両端を、それぞれ支持する支持部と、前記側壁部より上方のアーチ部に締結金具を使用することなく設置される、前記帯板を抱え込むように支持するガイド部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記帯板は、延伸方向に軸力が与えられた状態で取り付けられていてもよい。
【0009】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記支持部は、弾性体を備え、前記帯板の両端は、弾性圧縮した状態の前記弾性体を介して支持されていてもよい。
【0010】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記支持部は、前記弾性体を収容する収容部と、前記収容部に収容された前記帯板の先端の位置を点検可能な点検口と、を備えてもよい。
【0011】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記ガイド部は、前記帯板が挿通される挿通穴又は前記帯板が支持されるフックが形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記帯板は、接着剤によって、前記トンネル内周面に取り付けられていてもよい。
【0013】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、前記支持部を覆う、締結金具によって前記側壁部に固定される保護部を備えてもよい。
【0014】
さらに、本発明のトンネル内周面の補強方法では、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成されたトンネル内周面の補強方法であって、前記トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板の一端を支持する第1支持部を、前記トンネル横断面の側壁部に締結金具によって取り付ける第1支持部取付工程と、前記側壁部より上方のアーチ部に、前記帯板を抱え込む抱え込み部を有するガイド部を、締結金具を使用することなく設置するガイド部設置工程と、前記帯板を、前記第1支持部に支持させるとともに、前記抱え込み部に抱え込ませて、前記トンネル内周面に沿うように、前記帯板を設置する帯板設置工程と、前記帯板の他端を支持する第2支持部を介して、前記帯板に軸力を付与する軸力付与工程と、前記第2支持部を、前記側壁部に締結金具によって取り付ける第2支持部取付工程と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明のトンネル内周面の補強構造は、トンネルの軸方向に間隔を置いて配置されるとともに、トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板と、トンネル横断面の側壁部に締結金具によって固定されて、帯板の両端を、それぞれ支持する支持部と、側壁部より上方のアーチ部に締結金具を使用することなく設置される、帯板を抱え込むように支持するガイド部と、を備える。そのため、アーチ部に締結金具を使用することなく、帯板をトンネル内周面に取り付けることができる。そのため、帯板をトンネル内周面に取り付ける施工時には、アーチ部に締結金具を取り付ける必要がなくなる。また、帯板をトンネル内周面に取り付けた後のメンテナンス時には、トンネル横断面のアーチ部を点検する必要はなく、側壁部に設けられた支持部を点検するだけで済む。その結果、施工性及びメンテナンス性の優れた補強構造とすることができる。
【0016】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、帯板は、延伸方向に軸力が与えられた状態で取り付けられている場合、帯板の耐力を向上させることができる。そのため、アーチ状のトンネル内周面を支持する効果を高めることができる。
【0017】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、支持部は、弾性体を備え、帯板の両端は、弾性圧縮した状態の弾性体を介して支持される。この場合、地圧による覆工の変形などにより、帯板の端部が上方に変位して、帯板に付与された軸力が抜けようとする際には、弾性体の復元力によって、帯板に与えられた軸力を維持することができる。また、帯板の端部が下方に変位して、帯板にさらに軸力が作用した際には、弾性体が縮んで、帯板や支持部に過剰な力が作用することを防止することができる。
【0018】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、支持部は、弾性体を収容する収容部と、収容部に収容された帯板の先端の位置を点検可能な点検口と、を備える。この場合、弾性体を介して支持部に支持されている帯板の先端の様子を外部から点検することができる。そのため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、ガイド部は、帯板が挿通される挿通穴又は帯板が支持されるフックが形成されている場合、ガイド部を、簡易な構成で、帯板を抱え込むように支持する形状にすることができる。
【0020】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、帯板は、接着剤によって、トンネル内周面に取り付けられている場合、帯板をトンネル内周面に密着させた状態で取り付けることができる。
【0021】
また、本発明のトンネル内周面の補強構造では、支持部を覆う、締結金具によって側壁部に固定される保護部を備える場合、締結金具や支持部の床版への落下を防止するとともに、帯板が建築限界を支障することを防止することができる。
【0022】
さらに、本発明のトンネル内周面の補強方法では、トンネル内周面に沿って周方向に延伸する帯板の一端を支持する第1支持部を、トンネル横断面の側壁部に締結金具によって取り付ける第1支持部取付工程と、側壁部より上方のアーチ部に、帯板を抱え込む抱え込み部を有するガイド部を、締結金具を使用することなく設置するガイド部設置工程と、帯板を、第1支持部に支持させるとともに、抱え込み部に抱え込ませて、トンネル内周面に沿うように、帯板を設置する帯板設置工程と、帯板の他端を支持する第2支持部を介して、帯板に軸力を付与する軸力付与工程と、第2支持部を、側壁部に締結金具によって取り付ける第2支持部取付工程と、を含む。この場合、アーチ部に締結金具を使用することなく、帯板をトンネル内周面に取り付けることができる。そのため、帯板をトンネル内周面に取り付ける施工時に、アーチ部に締結金具を取り付ける必要がなくなる。また、帯板をトンネル内周面に取り付けた後のメンテナンス時には、トンネル横断面のアーチ部を点検する必要はなく、側壁部を点検するだけで済む。その結果、施工性及びメンテナンス性の優れた補強構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1のトンネル内周面の補強構造が適用されたトンネルを示す斜視図である。
【
図2】実施例1のトンネル内周面の補強構造が適用されたトンネルを示す断面図である。
【
図3】実施例1の帯板が支持部に支持された状態を示す図であり、
図3(a)は正面図を示し、
図3(b)は断面図を示す。
【
図4】実施例1の帯板が固定金具によって固定された状態を示す図であり、
図4(a)は正面図を示し、
図4(b)は断面図を示す。
【
図5】実施例1の帯板がガイド部によって支持された状態を示す図であり、
図5(a)は正面図を示し、
図5(b)は断面図を示す。
【
図6】実施例1のトンネル内周面の補強方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施例1の軸力付与工程を説明するための図である。
【
図8】実施例2の支持部と保護部を示す図であり、
図8(a)は正面図を示し、
図8(b)は断面図を示す。
【
図9】実施例3のガイド部を示す分解断面図である。
【
図10】実施例4の帯板が固定金具によって固定された状態を示す図であり、
図10(a)は正面図を示し、
図10(b)は断面図を示す。
【
図11】実施例4の帯板設置工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~4に基づいて説明する。
【実施例0025】
実施例1では、本発明によるトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法を、列車が走行するトンネルに適用する例を説明する。
【0026】
[トンネルの構成]
図1は、実施例1のトンネル内周面の補強構造が適用されたトンネルを示す斜視図である。以下、実施例1のトンネルの構成を説明する。
【0027】
実施例1のトンネル1は、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成された覆工10と、覆工10の脚部間を繋ぐ床版2とによって、内空が保護されている。
【0028】
覆工10は、無筋コンクリートなどによって構築され、床版2は、鉄筋コンクリートなどによって構築される。
【0029】
コンクリートやモルタルなどによって構築された覆工10は、経年による劣化やトンネル1の周辺地盤の土圧や湧水状況の変化などによって、ひび割れやはく離が発生することがある。実施例1のトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法は、覆工10のトンネル内周面11に対して施される。
【0030】
覆工10は、トンネル横断面の上部となる上半部に形成されるアーチ部12と、トンネル横断面の下部となる下半部の両側に形成される側壁部13とによって主に構成される。
【0031】
アーチ部12は、アーチ状に形成され、列車が走行する軌道の上部に配置される。側壁部13は、略鉛直方向に起立するように形成され、列車が走行する軌道を挟んで両側に配置される。床版2は、側壁部13の下端間を接続するように設けられる。
【0032】
[トンネル内周面の補強構造]
図2は、実施例1のトンネル内周面11の補強構造が適用されたトンネル1を示す断面図である。
図3は、実施例1の帯板が支持部に支持された状態を示す図であり、
図3(a)は正面図を示し、
図3(b)は断面図を示す。
図4は、実施例1の帯板が固定金具によって固定された状態を示す図であり、
図4(a)は正面図を示し、
図4(b)は断面図を示す。
図5は、実施例1の帯板がガイド部によって支持された状態を示す図であり、
図5(a)は正面図を示し、
図5(b)は断面図を示す。以下、実施例1のトンネル内周面11の補強構造の構成を説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すように、トンネル内周面11の補強構造は、トンネル1の内周面(トンネル内周面11)に沿って周方向に延伸する帯板20と、帯板20の両側の端部をそれぞれ支持する支持部30と、側壁部13に配置される固定金具40と、アーチ部12に配置されるガイド部50と、によって主に構成される。
【0034】
(帯板)
帯板20は、トンネル内周面11に沿って周方向に延伸するように配置される。帯板20には、一方の支持部30から他方の支持部30まで連続する板材が使用される。帯板20は、例えば、トンネル内周面11の周方向の長さと同程度の長さのものを使用することができる。
【0035】
帯板20は、トンネル1の軸方向に間隔を置いて配置される。トンネル1の軸方向の帯板20間の間隔は、0.3m~2.0m程度に設定することができる。
【0036】
帯板20は、可撓性のある細長い板材であって、トンネル内周面11のアーチ部12の形状に合わせたアーチ状に形成可能な材料によって構成される。帯板20には、各種FRPや鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板などを使用することもできるが、好ましくは軽量で適度な剛性のあるバサルト繊維プレートが使用できる。
【0037】
バサルト繊維プレートは、バサルト繊維を樹脂によって板状に成形した材料である。バサルト繊維は、玄武岩を1500℃で溶融押出して得られる紡糸した繊維であり、アラミドファイバーなどの有機繊維素材やグラスファイバーに比べて、耐熱性に優れている。
【0038】
帯板20は、例えば、幅50mmで厚さ2mmのバサルト繊維プレートを接着剤によって2枚重ねにして形成することができる。なお、帯板20は、1枚のバサルト繊維プレートで形成してもよいし、3枚以上のバサルト繊維プレートで形成してもよい。また、各バサルト繊維プレートの長さは、同じ長さとしてもよいし、異なる長さとしてもよい。
【0039】
図4(b)及び
図5(b)に示すように、帯板20の裏面には、接着剤Gが塗布されている。トンネル内周面11と帯板20との間には、接着剤Gが介在される。すなわち、帯板20は、接着剤Gによって、トンネル内周面11に取り付けられている。トンネル内周面11と帯板20との間に接着剤Gを介在させることにより、トンネル内周面11の凹凸(不陸)の存在によって生じる隙間の発生を抑えることができる。
【0040】
(支持部)
図2に示すように、支持部30は、トンネル横断面の側壁部13に、締結金具としてのアンカー5によって固定される。支持部30は、帯板20の一端を支持する第1支持部30Aと、他端を支持する第2支持部30Bとを備える。第1支持部30Aと第2支持部30Bは、同様の構成である。
【0041】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、支持部30は、収容部31と、フランジ部32と、を備える。
【0042】
収容部31は、前壁31aと、後壁31bと、側壁31cと、底板31dとで、箱状に形成されている。収容部31は、帯板20の幅と厚さによって規定される長方形より一回り大き目に形成される。
【0043】
図3(a)に示すように、収容部31には、弾性体35が収容されている。弾性体35は、例えば、ゴムとすることができる。収容部31には、帯板20の端部が挿入される。帯板20の端部は、弾性圧縮した状態の弾性体35を介して支持されるようになっている。帯板20は、帯板20の延伸方向に軸力が与えられた状態で、支持部30に支持されるようにしてもよい。
【0044】
収容部31の前壁31aには、収容部31に収容された帯板20の先端の位置を点検可能な点検口31hを備える。点検口31hは、上下方向に延在した長孔とすることができる。作業者は、点検口31hから、弾性体35の上縁の位置や収容部31に収容された帯板20の先端の位置を点検可能となっている。
【0045】
帯板20の端部が弾性体35を介して支持された状態で、収容部31に、低粘度樹脂を充填して、水分が溜まらないようにしてもよい。
【0046】
フランジ部32は、収容部31の左右に延在するように形成される。フランジ部32には、アンカー5を通すための長穴32aが形成される。長穴32aに支圧板7を架け渡し、トンネル1の内空側に突出するアンカー5の頭部にナット6を装着することで、覆工10の内部に先端が打ち込まれたアンカー5を定着させることができる。なお、締結金具には、アンカー5と、支圧板7と、ナット6とが含まれる。
【0047】
アンカー5を通す穴を長穴32aにすることで、支持部30を仮止めした後に、支持部30を介して帯板20の端部を持ち上げて、軸力が導入された状態で固定する作業を容易に行うことができるようになる。
【0048】
支持部30とトンネル内周面11との間に、接着剤Gを介在させることもできる。
【0049】
(固定金具)
図2に示すように、固定金具40は、トンネル横断面の側壁部13に、締結金具としてのアンカー5によって固定される。
【0050】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、固定金具40は、矩形の板状に形成される。固定金具40には、アンカー5を通すための丸穴42aが形成される。丸穴42aにアンカー5を挿通し、トンネル1の内空側に突出するアンカー5の頭部にナット6を装着することで、覆工10の内部に先端が打ち込まれたアンカー5を定着させることができる。
【0051】
固定金具40と、トンネル内周面11との間に帯板20を挟んで、固定金具40を側壁部13に取り付けることで、帯板20が固定金具40によって固定される。
【0052】
固定金具40とトンネル内周面11との間に、接着剤Gを介在させることもできる。
【0053】
(ガイド部)
図2に示すように、ガイド部50は、トンネル横断面のアーチ部12に、締結金具を使用することなく設置される。
【0054】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ガイド部50は、抱え込み部51と、フランジ部52と、を備える。
【0055】
抱え込み部51は、前壁51aと、後壁51bと、側壁51cとで、筒状に形成されている。すなわち、抱え込み部51は、帯板20が挿通される挿通穴である。
【0056】
側壁51cで規定される抱え込み部51の幅は、帯板20の幅と略同じ大きさとすることができる。前壁51aと後壁51bとで規定される抱え込み部51の厚さは、帯板20の厚さより若干大き目に形成される。
【0057】
抱え込み部51に挿通された帯板20は、帯板20の延伸方向への移動を制限することなく移動可能となる。そのため、ガイド部50は、帯板20をトンネル内周面11に沿って這わせる際のガイドとして機能する。
【0058】
抱え込み部51に挿通された帯板20は、帯板20の延伸方向と直交した直交方向への移動は、前壁51a、後壁51b及び側壁51cによって制限される。これにより、帯板20がトンネル1の内空側に倒れこんで、建築限界を支障することを防止することができる。
【0059】
フランジ部52は、抱え込み部51の左右に延在するように形成される。ガイド部50とトンネル内周面11との間には、接着剤Gを介在させることによって、ガイド部50の固定(設置)をおこなう。
【0060】
ガイド部50は、必要に応じて帯板20の延伸方向に間隔を置いて複数が配置することができる。
【0061】
[トンネル内周面の補強方法]
図6は、実施例1のトンネル内周面11の補強方法の手順を示すフローチャートである。
図7は、実施例1の軸力付与工程を説明するための図である。以下、実施例1のトンネル内周面11の補強方法を説明する。
【0062】
(第1支持部取付工程)
図6に示すように、第1支持部取付工程では、トンネル内周面11に沿って周方向に延伸する帯板20の一端を支持する第1支持部30Aを、トンネル横断面の側壁部13に締結金具としてのアンカー5によって取り付ける(ステップS101)。
【0063】
(ガイド部設置工程)
ガイド部設置工程では、側壁部13より上方のアーチ部12に、帯板20を抱え込む抱え込み部51を有するガイド部50を、締結金具を使用することなく設置する(ステップS102)。例えば、ガイド部50の裏面に接着剤Gを塗布し、ガイド部50をアーチ部12に取り付けることができる。
【0064】
(固定金具取付工程)
固定金具取付工程では、固定金具40を側壁部13に、フランジ部42がトンネル内周面11から若干浮いた状態で取り付ける(ステップS103)。すなわち、固定金具40を側壁部13に緩く取り付ける。
【0065】
(帯板設置工程)
帯板設置工程では、裏面に接着剤Gが塗布された帯板20を、第1支持部30Aに支持させるとともに、抱え込み部51に抱え込ませて、トンネル内周面11に沿うように、帯板20を設置する(ステップS104)。
【0066】
具体的には、帯板20の一端を第1支持部30Aに支持させ、固定金具40で帯板20の端部付近を仮固定するとともに、帯板20の他端を抱え込み部51に挿通させて、帯板20を抱え込み部51に抱え込ませる。
【0067】
(軸力付与工程)
軸力付与工程では、帯板20の他端を支持する第2支持部30Bを介して、帯板20に軸力を付与する(ステップS105)。
【0068】
具板的には、帯板20の他端を第2支持部30Bの収容部31に挿入し、第2支持部30Bの裏面を側壁部13に当接させる。そして、
図7に示すように、土台75に設置した基台76を支点として、バール70にテコの原理を作用させて、第2支持部30Bの底部を上方に押し上げる。このとき、帯板20は、延伸方向に軸力が導入され、トンネル内周面11に帯板20が密着する。そして、固定金具40に取り付けられているナット6を増し締めして、軸力が付与された状態で帯板20を、固定金具40によって固定する。
【0069】
導入する軸力は、1.5kN載荷後に、1kNまで除荷することができる。0.5kNの除荷により、帯板20に導入される軸力を均等化することができるとともに、軸力導入により覆工10に変状が発生することがないことを確認することができる。
【0070】
なお、バール70には、上記作業を実現できるよう、作用点となる先端に滑り防止機能を具備させ、力点となる後端に荷重測定機能を具備させてもよい。
【0071】
(第2支持部取付工程)
第2支持部取付工程では、第2支持部30Bに取り付けられているナット6を増し締めすることで、第2支持部30Bを側壁部13に取り付ける。
【0072】
[トンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法の作用]
以下、実施例1のトンネル内周面の補強構造及びトンネル内周面の補強方法の作用を説明する。
【0073】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造は、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成される。このトンネル内周面11の補強構造は、トンネル1の軸方向に間隔を置いて配置されるとともに、トンネル内周面11に沿って周方向に延伸する帯板20と、トンネル横断面の側壁部13に締結金具(アンカー5)によって固定されて、帯板20の両端を、それぞれ支持する支持部30と、側壁部13より上方のアーチ部12に締結金具(アンカー5)を使用することなく設置される、帯板20を抱え込むように支持するガイド部50と、を備える(
図2)。
【0074】
これにより、アーチ部12に締結金具(アンカー5)を使用することなく、帯板20をトンネル内周面11に取り付けることができる。そのため、帯板20をトンネル内周面11に取り付ける施工時には、アーチ部12に締結金具(アンカー5)を取り付ける必要がなくなる。また、帯板20をトンネル内周面11に取り付けた後のメンテナンス時には、トンネル横断面のアーチ部12を点検する必要はなく、アーチ部12より低い側壁部13に設けられた支持部30を点検するだけで済む。その結果、施工性及びメンテナンス性の優れた補強構造とすることができる。
【0075】
また、アーチ部12に締結金具(アンカー5)を使用していないため、トンネル内を走行する列車の軌道に締結金具(アンカー5)が落下することもなく、トンネル内の安全性を維持することができる。
【0076】
また、ガイド部50は、帯板20を抱え込むように形成されているため、ガイド部50のトンネル内周面11への取付力が低下したとしても、トンネル内の列車の軌道にガイド部50が落下することもなく、トンネル内の安全性を維持することができる。
【0077】
さらに、アーチ部12において、締結金具(アンカー5)を使用することもなく、また接着剤Gに大きく頼ることもなく、帯板20をトンネル内周面11に沿うように取り付けることができる。
【0078】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造では、帯板20は、延伸方向に軸力が与えられた状態で取り付けられている。
【0079】
帯板20に軸力が導入されることによって、帯板20の耐力を向上させることができる。そのため、アーチ状のトンネル内周面11を支持する効果を高めることができる。
【0080】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造では、支持部30は、弾性体35を備え、帯板20の両端は、弾性圧縮した状態の弾性体35を介して支持される(
図3)。
【0081】
これにより、地圧による覆工10の変形などにより、帯板20の端部が上方に変位して、帯板20に付与された軸力が抜けようとする際には、弾性体35の弾性力によって、帯板20に与えられた軸力を維持することができる。また、帯板20の端部が下方に変位して、帯板20にさらに軸力が作用した際には、弾性体35が縮んで、帯板20や支持部30に過剰な力が作用することを防止することができる。
【0082】
そのため、帯板20に与えられた軸力を長期にわたって維持することができる。その結果、帯板20は、長期にわたってアーチ状のトンネル内周面11に沿うような形状を維持することができる。
【0083】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造は、支持部30は、弾性体35を収容する収容部31と、収容部31に収容された帯板20の先端の位置を点検可能な点検口31hと、を備える(
図3)。
【0084】
これにより、弾性体35を介して支持部30に支持されている帯板20の先端の様子を外部から点検することができる。そのため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0085】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造は、ガイド部50は、帯板20が挿通される挿通穴が形成されている(
図5(b))。
【0086】
これにより、ガイド部50を、簡易な構成で、帯板20を抱え込むように支持する形状にすることができる。
【0087】
実施例1のトンネル内周面11の補強構造は、帯板20は、接着剤Gによって、トンネル内周面11に取り付けられている。
【0088】
これにより、帯板20をトンネル内周面11に密着させた状態で取り付けることができる。
【0089】
実施例1のトンネル内周面11の補強方法は、トンネル横断面の上部がアーチ状に形成される。このトンネル内周面11の補強方法は、トンネル内周面11に沿って周方向に延伸する帯板20の一端を支持する第1支持部30Aを、トンネル横断面の側壁部13に締結金具(アンカー5)によって取り付ける第1支持部取付工程と、側壁部13より上方のアーチ部12に、帯板20を抱え込む抱え込み部51を有するガイド部50を、締結金具(アンカー5)を使用することなく設置するガイド部設置工程と、帯板20を、第1支持部30Aに支持させるとともに、抱え込み部51に抱え込ませて、トンネル内周面11に沿うように、帯板20を設置する帯板設置工程と、帯板20の他端を支持する第2支持部30Bを介して、帯板20に軸力を付与する軸力付与工程と、第2支持部30Bを、側壁部13に締結金具(アンカー5)によって取り付ける第2支持部取付工程と、を含む(
図6)。
【0090】
これにより、アーチ部12に締結金具(アンカー5)を使用することなく、帯板20をトンネル内周面11に取り付けることができる。そのため、帯板20をトンネル内周面11に取り付ける施工時に、アーチ部12に締結金具(アンカー5)を取り付ける必要がなくなる。また、帯板20をトンネル内周面11に取り付けた後のメンテナンス時には、トンネル横断面のアーチ部12を点検する必要はなく、アーチ部12より低い側壁部13を点検するだけで済む。その結果、施工性及びメンテナンス性の優れた補強構造とすることができる。
被覆部61は、前壁61aと、側壁61bと、底板61dとで、支持部30を覆うような形状に形成されている。被覆部61の側壁部13との隙間は、支持部30の幅及び厚さより大きく形成される。
被覆部61の前壁61aには、点検口31hより大きな貫通穴61hが形成されている。作業者は、貫通穴61hから、点検口31hを介して、弾性体35の上縁の位置や収容部31に収容された帯板20の先端の位置を点検可能となっている。
フランジ部62は、被覆部61の左右及び下方に延在するように形成される。フランジ部62には、アンカー5を通すための長穴62aが形成される。長穴62aに支圧板7を架け渡し、トンネル1の内空側に突出するアンカー5の頭部にナット6を装着することで、覆工10の内部に先端が打ち込まれたアンカー5を定着させることができる。
これにより、支持部30を固定している締結金具(アンカー5、ナット6、又は支圧板7)が外れたとしても、外れた締結金具(アンカー5、ナット6、又は支圧板7)を保護部60に収容することができる。また、締結金具(アンカー5、ナット6、又は支圧板7)が外れて、支持部30が脱落したとしても、支持部30を保護部60に収容することができる。さらに、帯板20の端部の支持部30による支持が解除されたとしても、帯板20の端部を保護部60によって支持することができる。そのため、締結金具(アンカー5、ナット6、又は支圧板7)や支持部30の床版2への落下を防止するとともに、帯板20が建築限界を支障することを防止することができる。