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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172619
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ヘアカラー後処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20221110BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20221110BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/14
A61Q5/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078602
(22)【出願日】2021-05-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】512052993
【氏名又は名称】栗村 正人
(71)【出願人】
【識別番号】521194231
【氏名又は名称】クリムラシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519402029
【氏名又は名称】株式会社MADENA
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】栗村 正人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB031
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC31
4C083DD45
4C083EE27
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】毛髪内に残留した過酸化水素を分解する効果に優れ、残留過酸化水素に基づく毛髪、頭皮、肌へのダメージや美容師の手荒れを有効に防止することができるヘアカラー後処理方法を提供する。
【解決手段】過酸化水素で毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、毛髪に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法である。過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素で毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、前記毛髪に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法であって、
前記過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることを特徴とするヘアカラー後処理方法。
【請求項2】
毛髪のパラ様コルテックス内に残留する過酸化水素を分解する請求項1に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項3】
前記リポソームの原料として、レシチン、グリセリン、ペンチレングリコール、トコフェロール、水酸化ナトリウムおよび水を含有するリポソーム原料を用いる請求項1または2に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項4】
前記ビタミンC誘導体として、ビスグリセリルアスコルビン酸を用いる請求項1から3のいずれか一項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項5】
前記リポソーム原料、ビスグリセリルアスコルビン酸、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項3または4に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項6】
前記水に対し、前記リポソーム原料を0.2質量%以上1質量%以下、ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%以上3質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項5に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項7】
前記水に対し、前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸とともにフルボ酸を0.5質量%以上1質量%以下の比率で加え、これらを撹拌する請求項6に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項8】
前記リポソーム原料、ビタミンC、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項3に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項9】
前記リポソーム原料0.5g以上1.0g以下、前記ビタミンC400mg以上800mg以下を、前記水100mLに加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項5に記載のヘアカラー後処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー(染毛)の分野に属するものである。具体的には、染毛で使用した過酸化水素を分解し、過酸化水素を毛髪に残留させないようにするヘアカラー後処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーは予め毛髪にブリーチ(漂白)処理を施し、その後、染毛を行うことが一般的である。予め毛髪をブリーチすることで明度の高い染毛を行うことができるからである。
【0003】
このブリーチ処理においては過酸化水素が用いられている。過酸化水素は単独で、或いはブリーチ用パウダー(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等)と組み合わせて用いることで強い酸化力を発揮し、毛髪中のメラニン色素を破壊または変性させる。毛髪中のメラニン色素を破壊し、または変性させることにより、毛髪をブリーチすることができる。
【0004】
ところで、近年若年層の間ではファッション要素としてのヘアカラーが普及し、毛髪をより明るい色調に染め上げるヘアカラーが望まれている。このような毛髪を高明度の色調に染め上げるヘアカラー、特に毛髪を白色や銀髪等に染め上げるホワイトブリーチと称される処理を行うためには多量の過酸化水素が必要となる。また、通常の白髪染めにおいても、毛髪本来の色を抜いてから染色を行った方が毛髪をしっかり染め上げることができるため、多量の過酸化水素が使用されることがある。
【0005】
しかし、過酸化水素は反応性が高い物質であるため、毛髪内に残留することにより様々な不具合を生じるおそれがある。例えば、過酸化水素に起因するラジカル反応等によって、毛髪の質感が低下したり、ヘアカラーの色素が変色し、毛髪を所望の色調に染毛することができなくなったりするおそれがある。また、施術を受ける者の頭皮や肌にダメージを与える他、施術する美容師の手荒れの原因にもなる。
【0006】
そこで、ヘアカラーリング後には過酸化水素を除去する後処理を行うことが一般的である。後処理剤としては、例えば、乳酸、リン酸水素二ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウム、およびカタラーゼを含有すると共に、溶液のpHが4~5であることを特徴とする染毛用後処理剤が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5891029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カタラーゼは過酸化水素の分解を触媒する酵素として知られている。しかし、カタラーゼを用いた後処理剤は毛髪内に残留した過酸化水素を分解する効果に乏しく、残留過酸化水素に基づく毛髪、頭皮、肌へのダメージや美容師の手荒れを有効に防止することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。すなわち、本発明は、毛髪内に残留した過酸化水素を分解する効果に優れ、残留過酸化水素に基づく毛髪、頭皮、肌へのダメージや美容師の手荒れを有効に防止することができるヘアカラー後処理方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、
(1)カタラーゼ酵素はpH4ないし5~中性域の条件下で過酸化水素の分解効果を発揮するが、現状、多くのサロンでは、カラーやブリーチ施術後の毛髪のpHがアルカリ領域であるにも拘らずカタラーゼ酵素を使用する傾向にあり、過酸化水素の除去が不十分であると言える(カタラーゼ酵素の最適使用環境が熟知されておらず、過酸化水素の除去に関して新たな技術が必要と考えられる);
(2)過酸化水素が分子量34の小分子であり、毛髪内に容易に浸透するのに対し、カタラーゼは分子量24万から26万の巨大分子であるために毛髪内に浸透し難く、毛髪の表面やその近傍に存在する過酸化水素を分解するに留まる;
(3)毛髪はオルト様コルテックス(親水性タンパク質)とパラ様コルテックス(疎水性タンパク質)とからなるが、水溶性のカタラーゼはパラ様コルテックスに対する親和性がなく、オルト様コルテックスに付着した過酸化水素しか分解できない;
等の知見を得た。
【0011】
そして、過酸化水素の分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることにより、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
【0012】
リポソーム化ビタミンC(ビタミン誘導体)に使用されるリポソームの電荷は正(+)の電荷であり、内部にビタミンC類を内包したままカチオンの特徴を保持している。施術後の毛髪はアルカリ状態、即ちOHの負(-)の電荷を持っているために、これに対して親和性を持つリポソームを用いることで、アルカリ領域での処理能力が向上する。即ち、リポソーム化ビタミンC類はアルカリ性の環境下でも的確な過酸化水素の処理を可能とする。
【0013】
[1]ヘアカラー後処理方法:
本発明は、過酸化水素で毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、前記毛髪に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法であって、前記過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることを特徴とするヘアカラー後処理方法;である。
【0014】
本発明のヘアカラー後処理方法は、
毛髪のパラ様コルテックス内に残留する過酸化水素を分解すること;
前記リポソームの原料として、レシチン、グリセリン、ペンチレングリコール、トコフェロール、水酸化ナトリウムおよび水を含有するリポソーム原料を用いること;
前記ビタミンC誘導体として、ビスグリセリルアスコルビン酸を用いること;
前記リポソーム原料、ビスグリセリルアスコルビン酸、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ること;
前記水に対し、前記リポソーム原料を0.2質量%以上1質量%以下、ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%以上3質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ること;
前記水に対し、前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸とともにフルボ酸を0.5質量%以上1質量%以下の比率で加え、これらを撹拌すること;
前記リポソーム原料、ビタミンC、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ること;
前記リポソーム原料0.5g以上1.0g以下、前記ビタミンC400mg以上800mg以下を、前記水100mLに加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ること;
が好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のヘアカラー後処理方法は、毛髪内に残留した過酸化水素を分解する効果に優れ、残留過酸化水素に基づく毛髪、頭皮、肌へのダメージや美容師の手荒れを有効に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態について、さらに具体的に説明する。
【0017】
[1]本発明の特徴:
本発明のヘアカラー後処理方法の特徴は、過酸化水素の分解剤としてリポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることにある。
【0018】
過酸化水素の分解に、ビタミンCまたはビタミンC誘導体を用いる理由は、
(a)pH条件に拘らず過酸化水素の分解効果を発揮するため、染色剤使用後の強アルカリ性条件下でも過酸化水素の分解効果を得られる;
(b)ビタミンCは分子量176.12の低分子であるために、毛髪内に浸透し易く、毛髪の表面に付着する過酸化水素のみならず、毛髪内に浸透した過酸化水素を分解することができる;からである。
【0019】
また、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液をリポソームに内包する理由は、
(c)ビタミンCは水溶性のビタミンであり、本来、親水性であるが、脂質二重層の膜からなるリポソームに内包させることにより、親水性タンパク質であるオルト様コルテックスのみならず、疎水性タンパク質であるパラ様コルテックスにも到達、浸透し、過酸化水素を分解する効果を発揮する;からである。
【0020】
[2]リポソーム化ビタミンC:
本発明のヘアカラー後処理方法は、過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いる。
【0021】
リポソームは、脂質二重層の膜からなる。リポソームは、リン脂質、好ましくはグリセロリン脂質、更に好ましくはレシチンを構成成分とする脂質二重層の膜からなるものであることが好ましい。
【0022】
リポソームは、球状の小胞である。リポソームのサイズは特に限定されないが、200nm程度であることが好ましい。
【0023】
また、リポソームの原料として、レシチン、グリセリン、ペンチレングリコール、トコフェロール、水酸化ナトリウムおよび水を含有するリポソーム原料を用いることが好ましい。
【0024】
リポソーム原料としては、市販のリポソーム原料を使用することができる。その種類は特に限定されないが、例えば、リポイド(Lipoid)社製の「ナティピド エコ(Natipide Eco)」(商品名)等を好適に用いることができる。「ナティピド エコ(Natipide Eco)」(商品名)は室温条件下、原料を撹拌するのみでもリポソーム化ビタミンCを調製することができる点において好ましい。
【0025】
ビタミンC(化学名:L-アスコルビン酸)としては、例えば、DSM社製のL-アスコルビン酸を用いることができる。また、ビタミンCに代えて、ビタミンC誘導体を用いてもよい。ビタミンC誘導体としては、ビタミンCを化学的に修飾した物質、具体的には、L-アスコルビン酸のエステル、より具体的にはL-アスコルビン酸のグリセリルエステル等を用いることができる。例えば、成和化成社製の商品名「Amitose DGA」を用いることができる。「Amitose DGA」は、ビスグリセリルアスコルビン酸(50%品)であり、通常のビタミンCの200倍の抗酸化作用を有するため、好適に用いることができる。
【0026】
リポソーム化ビタミンCは、リポソーム化ビタミンCを水中に分散してなる水分散液の状態で用いることが好ましい。このように水分散液の状態で用いることで、染毛後の毛髪にリポソーム化ビタミンCを付着させ易くなり、毛髪の表面に付着し、または毛髪の内部に浸透した過酸化水素を分解することが容易となる。
【0027】
リポソーム化ビタミンCの調製方法は特に限定されないが、例えば、前記リポソーム原料、ビタミンCまたはビタミンC誘導体、および水を撹拌し、混合することによりリポソーム化ビタミンCを得ることができる。このような方法によれば、リポソーム内にビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液が内包されたリポソーム化ビタミンCが形成されるとともに、リポソーム化ビタミンCを水分散液の状態で得ることができる。
【0028】
撹拌・混合の方法は特に限定されないが、例えば、マグネティックスターラを用い、前記リポソーム原料、ビタミンCまたはビタミンC誘導体、および水を撹拌する方法を挙げることができる。また、超音波ホモジナイザー等の超音波機器を用いて撹拌を行ってもよい。超音波機器を用いる撹拌方法は、より小さいサイズのリポソームを形成することができる点において好ましい。
【0029】
ビタミンC誘導体として、ビスグリセリルアスコルビン酸を用いる場合には、前記リポソーム原料、ビスグリセリルアスコルビン酸、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ることが好ましい。
【0030】
リポソーム原料、ビスグリセリルアスコルビン酸および水の配合量は特に限定されず、例えば、前記水に対し、前記リポソーム原料を0.2質量%以上1質量%以下、ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%以上3質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得ることが好ましい。
【0031】
また、前記水に対し、前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸とともにフルボ酸を0.5質量%以上1質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することも好ましい。
【0032】
リポソーム原料、ビタミンCおよび水の配合量は特に限定されず、例えば、リポソーム原料0.5g以上1.0g以下、ビタミンCまたはビタミンC誘導体400mg以上800mg以下を、水100mLに加え、これらを撹拌することによりリポソーム化ビタミンCの水分散液を得ることができる。
【0033】
[3]ヘアカラー後処理方法:
本発明のヘアカラー後処理方法は、過酸化水素で毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、前記毛髪に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法である。
【0034】
通常、ヘアカラーは、酸化重合染料とアルカリ剤を混合してなる第1剤と、酸化剤である過酸化水素の水溶液である第2剤とを用いて行われる。
【0035】
第1剤と第2剤を混合し、毛髪に塗布すると、第1剤中のアルカリ剤によって毛髪のキューティクルが開き、第1剤および第2剤の成分が毛髪中に浸透する。そして、第1剤中のアルカリ剤によって第2剤中の過酸化水素が分解され、活性酸素が発生する。その活性酸素によって毛髪中のメラニン色素が破壊または変性され、毛髪がブリーチされる。更に、過酸化水素の分解により発生した活性酸素は第1剤中の酸化重合染料を酸化し、重合させることで色素が発色し、毛髪が所望の色調に染色される。
【0036】
前記のように、過酸化水素で毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪にリポソーム化ビタミンCを付着させることで、毛髪の表面に付着した、或いは毛髪の内部に浸透した過酸化水素を効果的に分解することができる。
【0037】
処理条件は特に限定されないが、例えば、ビタミンCの実量として400mg以上800mg以下となる量のリポソーム化ビタミンCを毛髪に付着させ、室温(20℃以上30℃以下)の条件下、3分以上8分以下、放置する等の方法で処理することが好ましい。
【実施例0038】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様のみに限定されるものではない。
【0039】
まず、被験者に対し、ブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めの3種類の毛髪処理を行った。
【0040】
(ブリーチ)
第1剤20gと第2剤20gとを混合し、テスト用の毛髪に十分付着させ、室温(20℃)の条件下で30分放置し、ブリーチを行った。その後、毛髪に付着した薬剤を除去するため、毛髪をシャンプーにより洗浄し、更に水洗した。
【0041】
第1剤としては、ウエラ社製のブリーチ剤「ウエラブリーチ ノンダスト」(商品名、過硫酸塩配合)を、第2剤としては、パイモア社製の「クリームデベロッパー 6%」(商品名、過酸化水素濃度6%)を用いた。
【0042】
(おしゃれ染め)
第1剤20gと第2剤20gとを混合し、テスト用の毛髪に十分付着させ、室温(20℃)の条件下で30分放置し、おしゃれ染めを行った。その後、毛髪に付着した薬剤を除去するため、毛髪をシャンプーにより洗浄し、更に水洗した。
【0043】
第1剤としては、ホーユー社製のおしゃれ染め剤「プロマスターEX C-10/10」(商品名、過硫酸塩配合)を、第2剤としては、パイモア社製の「クリームデベロッパー 6%」(商品名、過酸化水素濃度6%)を用いた。
【0044】
(白髪染め)
第1剤20gと第2剤20gとを混合し、テスト用の毛髪に十分付着させ、室温(20℃)の条件下で30分放置し、おしゃれ染めを行った。その後、毛髪に付着した薬剤を除去するため、毛髪をシャンプーにより洗浄し、更に水洗した。
【0045】
第1剤としては、ホーユー社製の白髪染め剤「プロステップGM5 グレイカラー」(商品名)を、第2剤としては、パイモア社製の「クリームデベロッパー 6%」(商品名、過酸化水素濃度6%)を用いた。
【0046】
[実施例1]
水100mLに対し、リポソーム原料0.5gおよびビタミンC400mg(ビタミンC実量換算)を加え、これらを室温条件下(20℃)、マグネティックスターラで3分間撹拌することによりリポソーム化ビタミンCの水分散液を得た。リポソーム原料としては、リポイド(Lipoid)社製の「ナティピド エコ(Natipide Eco)」(商品名)を用いた。ビタミンCとしては、DSM社製のL-アスコルビン酸を用いた。
【0047】
ブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めを行った後、シャンプーにより洗浄し、更に水洗した後の毛髪に、前記のように調製した実施例1のヘアカラー後処理剤40mLを付着させ、室温条件下(20℃)条件下で3分放置し、残留過酸化水素の分解を行った。その後、毛髪をシャンプーにより洗浄し、更に水洗し、ドライヤーで乾燥した。
【0048】
[実施例2]
水に対し、リポソーム原料を0.2質量%、ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%、フルボ酸1質量%の比率で加え、これらを室温条件下(20℃)、マグネティックスターラで3分間撹拌することによりリポソーム化ビタミンCの水分散液を得た。リポソーム原料としては、リポイド(Lipoid)社製の「ナティピド エコ(Natipide Eco)」(商品名)を、ビスグリセリルアスコルビン酸としては、成和化成社製の商品名「Amitose DGA」ビスグリセリルアスコルビン酸(50%品)を用いた。
【0049】
ブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めを行った後、シャンプーにより洗浄し、更に水洗した後の毛髪に、前記のように調製した実施例2のヘアカラー後処理剤100mLを付着させ、室温条件下(20℃)条件下で3分放置し、残留過酸化水素の分解を行った。その後、毛髪をシャンプーにより洗浄し、更に水洗し、ドライヤーで乾燥した。
【0050】
[比較例1]
ブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めを行った後、シャンプーにより洗浄し、更に水洗した後の毛髪を、ヘアカラー後処理剤を付着させることなく(残留過酸化水素の分解を行うことなく)、ドライヤーで乾燥した。
【0051】
その結果、実施例1、実施例2の方法を適用した毛髪はブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めとも、毛髪のダメージが少なく、毛髪が柔らかさやしなやかさを保っていた。即ち、実施例1の方法によれば、残留過酸化水素が十分分解されていることが示唆される。
【0052】
これに対し、比較例1の方法を適用した毛髪はブリーチ、おしゃれ染め、白髪染めとも、毛髪に対するダメージが大きく、毛髪の柔らかさやしなやかさが失われていた。即ち、比較例1の方法では、残留過酸化水素の分解が不十分であることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のヘアカラー後処理方法は、毛髪内に残留した過酸化水素を分解する効果に優れるため、残留過酸化水素に基づく毛髪、頭皮、肌へのダメージや美容師の手荒れを有効に防止することができるヘアカラー後処理方法として好適に用いることができる。
【0054】
また、本発明のヘアカラー後処理方法は、白髪染めやおしゃれ染めのように、毛髪内部に多くのジアミン結合を形成させる染毛処理を行う場合に、ジアミン結合の酸化分解を抑制することを期待できる点で有用である。更に、本発明のヘアカラー後処理方法は、染毛を伴わないブリーチの場合でも、毛髪のケラチンが分解・流出し、毛髪がダメージを受ける事態を大幅に軽減することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の第1剤と過酸化水素を含有する第2剤とを混合して毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、前記毛髪のパラ様コルテックス内に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法であって、
前記過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビタミンC誘導体の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることを特徴とするヘアカラー後処理方法。
【請求項2】
前記リポソームの原料として、レシチン、グリセリン、ペンチレングリコール、トコフェロール、水酸化ナトリウムおよび水を含有するリポソーム原料を用いる請求項1に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項3】
前記ビタミンC誘導体として、ビスグリセリルアスコルビン酸を用いる請求項1または2に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項4】
前記リポソーム原料、ビスグリセリルアスコルビン酸、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項2または3に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項5】
前記水に対し、前記リポソーム原料を0.2質量%以上1質量%以下、前記ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%以上3質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項6】
前記水に対し、前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸とともにフルボ酸を0.5質量%以上1質量%以下の比率で加え、これらを撹拌する請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項7】
前記リポソーム原料、ビタミンC、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項8】
前記リポソーム原料0.5g以上1.0g以下、前記ビタミンC400mg以上800mg以下を、前記水100mLに加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性の第1剤と過酸化水素を含有する第2剤とを混合して毛髪にブリーチ処理を施し、染毛を行った後、染毛後の毛髪に過酸化水素分解剤を付着させ、前記毛髪に残留する過酸化水素を分解するヘアカラー後処理方法であって、
前記過酸化水素分解剤として、リポソーム内に、ビタミンCの水溶液またはビスグリセリルアスコルビン酸の水溶液を内包してなるリポソーム化ビタミンCを用いることを特徴とするヘアカラー後処理方法。
【請求項2】
前記リポソームの原料として、レシチン、グリセリン、ペンチレングリコール、トコフェロール、水酸化ナトリウムおよび水を含有するリポソーム原料を用いる請求項1に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項3】
前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項4】
前記水に対し、前記リポソーム原料を0.2質量%以上1質量%以下、前記ビスグリセリルアスコルビン酸を1質量%以上3質量%以下の比率で加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項5】
前記水に対し、前記リポソーム原料、前記ビスグリセリルアスコルビン酸とともにフルボ酸を0.5質量%以上1質量%以下の比率で加え、これらを撹拌する請求項に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項6】
前記リポソーム原料、前記ビタミンC、および水を撹拌し、混合することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項2に記載のヘアカラー後処理方法。
【請求項7】
前記リポソーム原料0.5g以上1.0g以下、前記ビタミンC400mg以上800mg以下を、前記水100mLに加え、これらを撹拌することにより前記リポソーム化ビタミンCを得る請求項に記載のヘアカラー後処理方法。