(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172620
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】粒度分布測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
G01N15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078603
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋口 昇平
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雅人
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(57)【要約】
【課題】混合粒度堆積体の全体質量分布を精度良く算出可能な粒度分布測定方法を提供する。
【解決手段】単一粒度試料を複数の粒度区分について用意し、単一粒度試料の表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を算出するステップST1と、複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体の表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出するステップST2と、第2粒径分布を第1粒径分布の線形和で近似し、線形和の係数を算出するステップST3と、表面確率モデルを用いて、線形和の係数から、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出するステップST5と、全体個数分布と粒度区分から算出される体積比とに基づき、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出するステップST6と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒径を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、複数の粒度区分について用意し、前記複数の粒度区分の前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を前記複数の粒度区分毎に算出する第1粒径分布算出ステップと、
前記複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出する第2粒径分布算出ステップと、
前記第2粒径分布を、前記複数の粒度区分毎の前記第1粒径分布の線形和で近似し、前記線形和の係数を算出する係数算出ステップと、
表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記線形和の係数から、前記粒度区分と前記混合粒度堆積体の前記粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、
前記全体個数分布と前記粒度区分から算出される体積比とに基づき、前記粒度区分と前記混合粒度堆積体の前記粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、
を有する、粒度分布測定方法。
【請求項2】
前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を算出し、
前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出する、請求項1に記載の粒度分布測定方法。
【請求項3】
前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布を算出し、
前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出する、請求項1に記載の粒度分布測定方法。
【請求項4】
高さ算出ステップを有し、
前記第2粒径分布算出ステップにおいて、ベルトコンベア上に堆積した状態の前記混合粒度堆積体を前記ベルトコンベアで搬送しながら、前記第2粒径分布を算出すると共に、前記混合粒度堆積体及び前記ベルトコンベアの断面上縁の位置を測定し、
前記高さ算出ステップにおいて、前記混合粒度堆積体及び前記ベルトコンベアの断面上縁の位置と、予め測定した前記混合粒度堆積体が堆積していない状態の前記ベルトコンベアの断面上縁の位置とに基づき、前記混合粒度堆積体の断面積を算出し、前記混合粒度堆積体の断面を台形と見なして、前記断面積に基づき、前記混合粒度堆積体の高さを算出し、
前記全体個数分布算出ステップにおいて、前記表面確率モデルを用いて、前記線形和の係数と、前記高さ算出ステップで算出した前記混合粒度堆積体の高さとから前記全体個数分布を算出する、請求項1から3の何れか一項に記載の粒度分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスや焼結鉱等の粒子の粒度分布を測定する方法に関する。特に、本発明は、複数の粒度区分(粒径の大きさで決まる区分)に属する粒子が配合された混合粒度堆積体(堆積した粒子群)について、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、精度良く算出可能な粒度分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスや焼結鉱等の高炉原料は、ベルトコンベア上に堆積した状態で搬送され、高炉に装入される。この際、原料を構成する粒子の粒度(粒子の直径である粒径の分布の程度を表す指標)が高炉操業の生産性に影響を及ぼすことが知られている。このため、原料の搬送過程で、原料の粒度分布を連続的に測定して、品質を維持することが望ましい。
【0003】
高炉原料の粒度は、一般的に、ベルトコンベアから一定時間間隔で試料を採取(サンプリング)し、4時間又は8時間毎に試料を縮分した後、篩にかけることで測定される。したがって、原料の品質のばらつきや生産設備の不具合などで、原料の粒度分布が短時間で変動していたとしても、サンプリング後の篩を用いた間欠的な測定では、時間間隔が粗くなってしまうため、粒度分布の時間的な変動を正確に捉えることができない。
【0004】
粒子の粒径を非接触で連続的に測定可能な方法しては、例えば、非特許文献1に記載の方法が提案されている。非特許文献1に記載の方法は、線状のレーザ光を出射するレーザ光源とエリアスキャンカメラとが一体となった光切断方式の3Dカメラを用いた測定方法である。
非特許文献1に記載の方法では、ベルトコンベアに接触させたロータリエンコーダ等の移動距離検出手段を用いて、ベルトコンベアが一定距離進む毎に、ベルトコンベア上に堆積された粒子の断面上縁の位置を、3Dカメラによって測定することで、各画素の画素値が基準位置からの距離(例えば、3Dカメラからの距離)を示す距離画像(3D画像や深さ画像と称される場合もある)を生成する。積み重なる粒子の境界付近において、照射されたレーザ光が途切れて暗くなることや、粒子の凹凸の段差が大きくなることから、距離画像において、粒子の境界付近に相当する画素領域の画素値は、他の画素領域の画素値と異なる値になり易い。非特許文献1に記載の方法では、この特性を利用して粒子の境界を決定して各粒子を識別し、各粒子の粒径を算出している。積み重なる粒子のうち、他の粒子によって隠されている部分を有する粒子の寸法は、実際の寸法よりも小さくなる。このため、非特許文献1に記載の方法では、3Dカメラで算出できる各粒子の高さ情報(ベルトコンベアの底部からの高さ)を用いて、表層の粒子(以下、適宜「表層粒子」という)を優先的に抽出し、距離画像における各表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を粒径としている。
【0005】
粒子の粒径を非接触で連続的に測定可能な方法しては、非特許文献1に記載の方法と同様に3Dカメラを用いた、非特許文献2や特許文献1に記載の方法も提案されている。
非特許文献2及び特許文献1には、各粒子を識別するためのエッジ検出方法や表層粒子を認識する画像処理方法について詳しく記載されており、特に非特許文献2には、測定をより高速化する方法も記載されている。
【0006】
非特許文献2に記載の方法では、堆積した粒子について取得した距離画像に画像処理を施して、重なりの少ない表層にある表層粒子を抽出し、各表層粒子の粒径を篩のメッシュサイズによって決まる粒度区分に振り分けて、粒度区分と粒度区分毎の表層粒子の個数との関係である表層粒子の個数分布(表面個数分布)を算出する。そして、非特許文献2に記載の方法では、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表すモデル、すなわち、表層粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布(全体個数分布)を推定するモデルである表面確率モデルを用いて、表層粒子だけではなく隠れた粒子も含む、堆積した粒子全体の個数分布を推定する。さらに、非特許文献2に記載の方法では、粒度区分毎の体積比(又は質量比)を用いて、堆積した粒子全体の質量割合の分布(全体質量分布)を推定している。
【0007】
本発明者らは、非特許文献2に記載の方法を、複数の粒度区分に属する粒子(コークス粒子)が所定の質量割合で配合されて堆積した混合粒度堆積体に適用し、その全体質量分布が精度良く推定できるか否かの確認試験を行った。
図1は、上記確認試験の内容を模式的に説明する説明図である。
図1(a)に示すように、上記確認試験では、まず、粒度区分が同一となる粒径を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、複数の粒度区分について用意し堆積させた。具体的には、メッシュサイズが38mmの篩は通過するが25mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね25mm<粒径≦38mmの粒子)だけからなる粒度区分1の単一粒度試料と、メッシュサイズが50mmの篩は通過するが38mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね38mm<粒径≦50mmの粒子)だけからなる粒度区分2の単一粒度試料と、メッシュサイズが75mmの篩は通過するが50mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね50mm<粒径≦75mmの粒子)だけからなる粒度区分3の単一粒度試料を、それぞれ所定寸法のトレイTの1杯分用意した。そして、各単一粒度試料を所定の質量割合(粒度区分1の単一粒度試料がP1[%]、粒度区分2の単一粒度試料がP2[%]、粒度区分3の単一粒度試料がP3[%])で配合して、トレイTの1杯分の混合粒度堆積体(この場合、3つの粒度区分1~3に属する粒子が配合された試料であり、各粒度区分に属する粒子が、それぞれ任意の質量割合P1、P2及びP3で配合された試料。P1、P2及びP3のうちの何れか1つが100%である単一粒度試料のみである場合も含む)を作製した。
【0008】
次に、上記確認試験では、
図1(b)に示すように、同じ混合粒度堆積体について、トレイTと他の容器Cとの間で混合粒度堆積体を移し替える際に生じる混合、攪拌により、トレイT内での堆積状態を毎回変更しながら、トレイTの上方に配置され、線状のレーザ光Lによる光切断法を用いた3Dカメラ1による表層粒子の粒径測定を10回繰り返した。粒径を測定する際には、光切断線となる線状のレーザ光Lが延びる方向(
図1(b)の左右方向)と直交する方向(
図1(b)の紙面に垂直な方向)に、3Dカメラ1に対してトレイTを移動させながら、基準位置から表層粒子までの距離を示す距離画像を取得した。そして、この距離画像に基づいて、3Dカメラ1に接続された画像処理装置等の演算装置(図示せず)で演算を行うことで、表層粒子の粒径を測定した。
そして、
図1(c)に示すように、各回で測定した粒径を算出する際に識別した各表層粒子を用いて、粒度区分毎に表層粒子の個数を集計して、10回の測定での個数の総和から表面個数分布を算出した。以降は、表面確率モデルを用いた非特許文献2に記載の手順で、全体個数分布を算出し、最終的に全体質量分布を算出した。
【0009】
図2は、上記確認試験の結果の一例を示す図である。
図2において「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)であり、「3D」で示すグラフは3Dカメラ1を用いた非特許文献2に記載の方法で算出されたデータである。
図2(a)~
図2(c)は、各粒度区分の単一粒度試料について得られた全体質量分布である。具体的には、
図2(a)は粒度区分1の単一粒度試料(P1=100%)について得られた全体質量分布であり、
図2(b)は粒度区分2の単一粒度試料(P2=100%)について得られた全体質量分布であり、
図2(c)は粒度区分3の単一粒度試料(P3=100%)について得られた全体質量分布である。
図2(d)及び
図2(e)は、2つの粒度区分の単一粒度試料を配合した混合粒度堆積体について得られた全体質量分布である。具体的には、
図2(d)は粒度区分1及び粒度区分3の単一粒度試料を所定の質量割合(P1=P3=50%)で配合した混合粒度堆積体について得られた全体質量分布であり、
図2(e)は粒度区分1及び粒度区分3の単一粒度試料を別の質量割合(P1=25%、P3=75%)で配合した混合粒度堆積体について得られた全体質量分布である。
図2(f)は、3つの粒度区分の単一粒度試料を所定の質量割合(P1=15%、P2=20%、P3=65%)で配合した混合粒度堆積体について得られた全体質量分布である。
【0010】
図2(a)~
図2(c)から分かるように、非特許文献2に記載の方法では、本来存在しない(全体質量割合=0%である)はずの他の粒度区分にも粒子が存在することを示す(全体質量割合>0%)結果となっている。また、
図2(d)~
図2(f)から分かるように、非特許文献2に記載の方法では、算出された全体質量分布が全ての粒度区分に広がっているため、これらの全体質量分布を見ただけでは、2つの粒度区分の単一粒度試料を配合した混合粒度堆積体であるのか、3つの粒度区分の単一粒度試料を配合した混合粒度堆積体であるのか、区別ができない。
以上のように、非特許文献2に記載の方法のように、3Dカメラ1で測定した表層粒子の粒径を、篩のメッシュサイズによって決まる粒度区分に単純に振り分けると、本来存在しないはずの粒度区分に属する粒子が存在する算出結果となり、粒度分布(全体質量分布)がぼけて、粒度分布の違いが分からなくなるという問題がある。
【0011】
図3は、上記確認試験の結果の他の一例(後述の実施例1に相当)を示す図である。具体的には、
図3は、前述のように各粒度区分の単一粒度試料について各回で測定した表層粒子の粒径を用いて、各粒度区分に含まれる粒径の範囲よりも小さな粒径の範囲(具体的には、5mm間隔)毎に表層粒子の個数を集計し、10回の測定での個数の総和から算出した粒径分布(第1粒径分布)を示す。
図3(a)は、粒度区分1の単一粒度試料について得られた粒径分布であり、
図3(b)は粒度区分2の単一粒度試料について得られた粒径分布であり、
図3(c)は粒度区分3の単一粒度試料について得られた粒径分布である。例えば、
図3の横軸の粒径25mmの位置にプロットしたデータ点は、3Dカメラ1で測定した粒径が20mm<粒径≦25mmである表層粒子の個数を意味する。また、
図3の横軸の粒径30mmの位置にプロットしたデータ点は、3Dカメラ1で測定した粒径が25mm<粒径≦30mmである表層粒子の個数を意味する。他のデータ点についても同様である。
図3に示すように、3Dカメラ1で測定した粒径によって得られる粒径分布は、破線で範囲を示す粒度区分よりも、粒径が大きくなる方向にも小さくなる方向にも大きく広がっている。この原因としては、2つ考えられる。
【0012】
図4は、
図3に示す結果が得られる原因を模式的に説明する説明図である。
図4(a)は、便宜的に直方体で模擬した粒子を3Dカメラ1の光軸方向から見た平面図であり、
図4(b)は、便宜的に直方体で模擬した粒子を3Dカメラ1の光軸方向に直交する水平方向から見た側面図である。
1つ目の原因は、次の通りである。非特許文献2に記載の方法では、3Dカメラ1で取得した距離画像において、粒子を楕円と見なした場合の短軸径を粒径としている。このため、
図4(a)の上図に示す粒子が、
図4(a)の下図に示すように斜めに傾いて3Dカメラ1に撮像される結果、上図に示す実際の短軸径よりも大きな短軸径として算出されることがあるためであると考えられる。換言すれば、篩を用いて測定される粒径(
図4(a)の上図の短軸径)よりも、3Dカメラ1で測定される粒径(
図4(a)の下図の短軸径)の方が大きくなる場合があるためであると考えられる。この場合、3Dカメラ1によって得られる粒径分布は、粒度区分よりも粒径が大きくなる方向に広がると考えられる。
2つ目の原因は、次の通りである。
図4(b)の左図に示すように、着目する粒子の上下方向(3Dカメラ1の光軸方向)の一部が、堆積した他の粒子群の中に埋まって隠れてしまい、3Dカメラ1で撮像されない場合が多いため、非特許文献2に記載の方法では、粒子の上下方向の径(高さ径)を短軸径と同じであると見なすようにしている。しかしながら、実際には、
図4(b)の右図に示すように、粒子の高さ径が短軸径よりも大きくて、篩のメッシュを通らないために、篩を用いて測定される粒径(
図4(b)の右図の粒子の高さ径)よりも、3Dカメラ1で測定される粒径(
図4(b)の左図の短軸径)の方が小さくなる場合があるためであると考えられる。この場合、3Dカメラ1によって得られる粒径分布は、粒度区分よりも粒径が小さくなる方向に広がると考えられる。
このように、表層粒子の姿勢の違いによって、3Dカメラ1で測定した粒径によって得られる粒径分布が、篩によって決まる粒度区分よりも広がってしまうと考えられる。
【0013】
以上のように、コークスや焼結鉱等の不定形粒子の場合、表層粒子の粒径は粒子の姿勢によって変わり、粒径分布が粒度区分よりも広がる。このため、3Dカメラ1で測定した表層粒子の粒径を篩によって決まる粒度区分に振り分けて、粒度区分毎に表層粒子の個数を集計し、非特許文献2に記載の方法を適用しただけでは、粒度分布(全体質量分布)がぼけて、篩によって測定した結果と精度良く合致しないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】M. J. Thurley, "Automated, On-line, Calibration-Free, Particle Size Measurement using 3D Profile Data", Measurement and Analysis of Blast Fragmentation: Workshop Hosted by FRAGBLAST 10 - The 10th International Symposium on Rock Fragmentation by Blasting, 2013, pp.23-32
【非特許文献2】M. J. Thurley, "Three Dimensional Data Analysis for the Separation and Sizing of Rock Piles in Mining", Ph.D. Thesis, Monash University, December 2002, chapter 4, pp.27-60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、複数の粒度区分(粒径の大きさで決まる区分)に属する粒子が配合された混合粒度堆積体について、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、精度良く算出可能な粒度分布測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行った。まず、混合粒度堆積体を構成する粒子が属する複数の粒度区分について、単一粒度試料(粒度区分が同一となる粒径を有する粒子だけからなる試料)をそれぞれ用意し、各単一粒度試料について表層の粒子の粒径を測定することで、単一粒度試料の表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を算出した。また、前記複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体について表層の粒子の粒径を測定することで、混合粒度堆積体の表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出した。そして、算出した第2粒径分布を、算出した第1粒径分布の線形和で近似し、この線形和の各係数を、混合粒度堆積体が複数の粒度区分の単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層の粒子の異なる粒度区分の個数割合であると見なせば、以降はその係数を用いて非特許文献2に記載の方法と同様の手順で全体質量分布を算出しても、篩を用いて測定した結果とよく合致する精度の良い算出が可能であることを知見した。
本発明は、上記本発明者らの知見により完成したものである。
【0018】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、粒径の大きさで決まる区分である粒度区分が同一となる粒径を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、複数の粒度区分について用意し、前記複数の粒度区分の前記単一粒度試料の表層を、前記単一粒度試料の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記距離画像に基づいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を前記複数の粒度区分毎に算出する第1粒径分布算出ステップと、前記複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体の表層を、前記混合粒度堆積体の堆積状態を変更して撮像し、基準位置から前記表層の粒子までの距離を示す距離画像を取得し、前記距離画像に基づいて、前記混合粒度堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出する第2粒径分布算出ステップと、前記第2粒径分布を、前記複数の粒度区分毎の前記第1粒径分布の線形和で近似し、前記線形和の係数を算出する係数算出ステップと、表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルを用いて、前記線形和の係数から、前記粒度区分と前記混合粒度堆積体の前記粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する全体個数分布算出ステップと、前記全体個数分布と前記粒度区分から算出される体積比とに基づき、前記粒度区分と前記混合粒度堆積体の前記粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する全体質量分布算出ステップと、を有する、粒度分布測定方法を提供する。
【0019】
本発明において、「距離画像」は、各画素の画素値が基準位置からの距離(例えば、距離画像取得手段からの距離)を示す画像を意味し、第1粒径分布算出ステップで取得する「距離画像」は、基準位置から単一粒度試料の表層の粒子までの距離を示す画像であり、第2粒径分布算出ステップで取得する「距離画像」は、基準位置から混合粒度堆積体の表層の粒子までの距離を示す画像である。距離画像を取得する距離画像取得手段としては、対象となる表層までの距離を取得できる手段であれば、特に限定されるものではないが、例えば、線状のレーザ光を出射するレーザ光源とエリアスキャンカメラとが一体となった光切断方式の3Dカメラを挙げることができる。基準位置は、任意の位置に設定することができ、例えば、距離画像取得手段の位置を基準位置とすることができる。「距離画像」を取得することができれば、例えば非特許文献2に記載の方法等を用いることにより、距離画像取得手段に接続された演算装置等で、「距離画像」に基づいた演算を行うことで、粒径や粒子の個数を算出することが可能である。
また、「表面確率モデル」は、非特許文献2に記載されている表面確率モデル(Surface Probability Model)と同義であり、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表すモデルである。換言すれば、表面確率モデルは、粒度区分毎の表層の粒子の個数分布と堆積した粒子全体の個数分布とを関係付けるモデルであり、表層の粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定するモデルである。
さらに、「体積比」は、一の粒度区分から算出される体積を基準体積とした場合に、他の粒度区分から算出される体積を基準体積で除算した値を意味する。
【0020】
本発明によれば、係数算出ステップにおいて、第2粒径分布算出ステップで算出された混合粒度堆積体に関する第2粒径分布が、第1粒径分布算出ステップで算出された各単一粒度試料から得られた第1粒径分布の線形和で近似され、線形和の係数が算出される。この線形和の係数は、前述の本発明者の知見により、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層の粒子の個数割合であると見なすことができる。このため、以降は、非特許文献2に記載の方法と同様の表面確率モデルを用いて、全体個数分布算出ステップにおいて、算出された係数から、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、全体質量分布算出ステップにおいて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。
以上のように、本発明では、線形和の係数を、混合粒度堆積体が複数の粒度区分の単一粒度試料の組み合わせで構成されていると考えた場合の、混合粒度堆積体の表層の粒子の異なる粒度区分の個数割合であると見なし、この係数を用いて最終的に全体質量分布を算出するため、前述の本発明者らの知見通り、全体質量分布を精度良く算出することが可能である。
【0021】
以上に述べた本発明の第1粒径分布算出ステップ及び第2粒径分布算出ステップでは、それぞれ、表層の粒子の粒径と個数との関係を示す粒径分布(第1粒径分布及び第2粒径分布)を算出している。しかしながら、本発明者らの知見によれば、粒径分布で示される関係の一方のパラメータは必ずしも表層の粒子の個数に限られるものではなく、代わりに、表層の粒子の粒径と面積又は体積との関係を示す粒径分布を用いても、全体質量分布を精度良く算出可能である。
したがって、前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布を算出し、前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出してもよい。
或いは、前記第1粒径分布算出ステップにおいて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布に代えて、前記単一粒度試料の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布を算出し、前記第2粒径分布算出ステップにおいて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布に代えて、前記混合堆積体の前記表層の粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出してもよい。
【0022】
本発明の全体個数分布算出ステップにおいて、表面確率モデルを用いて混合粒度堆積体の全体個数分布を算出する際には、混合粒度堆積体の高さ(第2粒径分布算出ステップで表層の粒子の粒径を測定した際の高さ(嵩高さ))を表面確率モデルに入力する必要がある。第2粒径分布算出ステップにおいて、混合粒度堆積体の表層の粒子の粒径を測定する際、混合粒度堆積体がトレイ内に堆積している場合、すなわち、平面視4方向が区画された領域に堆積している場合には、混合粒度堆積体の高さは安定しており、且つ、比較的容易に把握できるため、予め設定した固定値を用いることが可能である。しかしながら、混合粒度堆積体がベルトコンベア上に堆積して搬送される場合には、搬送中に高さが変動し易いため、高さを実際に測定することが好ましい。
【0023】
すなわち、本発明において、好ましくは、高さ算出ステップを有し、前記第2粒径分布算出ステップにおいて、ベルトコンベア上に堆積した状態の前記混合粒度堆積体を前記ベルトコンベアで搬送しながら、前記第2粒径分布を算出すると共に、前記混合粒度堆積体及び前記ベルトコンベアの断面上縁の位置を測定し、前記高さ算出ステップにおいて、前記混合粒度堆積体及び前記ベルトコンベアの断面上縁の位置と、予め測定した前記混合粒度堆積体が堆積していない状態の前記ベルトコンベアの断面上縁の位置とに基づき、前記混合粒度堆積体の断面積を算出し、前記混合粒度堆積体の断面を台形と見なして、前記断面積に基づき、前記混合粒度堆積体の高さを算出し、前記全体個数分布算出ステップにおいて、前記表面確率モデルを用いて、前記線形和の係数と、前記高さ算出ステップで算出した前記混合粒度堆積体の高さとから前記全体個数分布を算出する。
【0024】
コークスや焼結鉱等の粒子を搬送するための一般的なベルトコンベアの断面は、台形である。したがって、ベルトコンベア上に堆積する混合粒度堆積体の断面も台形と見なして近似できる場合が多い。
上記の好ましい方法によれば、第2粒径分布算出ステップにおいて、混合粒度堆積体及びベルトコンベアの断面上縁の位置も測定することで、高さ算出ステップにおいて、混合粒度堆積体の断面積を算出することができる。そして、混合粒度堆積体の断面を台形と見なして近似すれば、混合粒度堆積体の断面積から混合粒度堆積体の高さを算出可能である。全体個数分布算出ステップにおいて、算出した混合粒度堆積体の高さを表面確率モデルに用いることで、混合粒度堆積体がベルトコンベア上に堆積して搬送される場合であっても、混合粒度堆積体の全体個数分布を精度良く算出でき、ひいては全体質量分布算出ステップにおいて、混合粒度堆積体の全体質量分布を精度良く算出可能である。
なお、混合粒度堆積体及びベルトコンベアの断面上縁の位置を測定するには、混合粒度堆積体の距離画像を取得するために用いる距離画像取得手段を併用することが考えられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度堆積体について、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を、精度良く算出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】非特許文献2に記載の方法の測定精度を確認する確認試験の内容を模式的に説明する説明図である。
【
図2】
図1に記載の確認試験の結果の一例を示す図である。
【
図3】
図1に記載の確認試験の結果の他の一例を示す図である。
【
図4】
図3に示す結果が得られる原因を模式的に説明する説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を示すフロー図である。
【
図6】
図5に示す工程ST1~工程ST4を模式的に説明する説明図である。
【
図7】実施例1で算出した混合粒度堆積体の粒径分布及び線形和を示す。
【
図8】実施例1で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
【
図9】実施例1~3で算出した全体質量分布を示す。
【
図10】ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の高さを算出する方法を説明する説明図である。
【
図11】ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の高さを算出する方法を説明する説明図である。
【
図12】表層粒子の堆積状態を模式的に説明する図である。
【
図13】実施例1の工程ST1において算出した、表層粒子の面積又は体積に関する単一粒度試料の第1粒径分布を示す。
【
図14】実施例1~3の工程ST1及び工程ST2において、表層粒子の面積に関する粒径分布を算出した場合に工程ST6で算出された全体質量分布を示す。
【
図15】実施例1~3の工程ST1及び工程ST2において、表層粒子の体積に関する粒径分布を算出した場合に工程ST6で算出された全体質量分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る粒度分布測定方法が有する工程を示すフロー図である。
図6は、
図5に示す工程ST1~工程ST4を模式的に説明する説明図である。
図5に示すように、本実施形態に係る粒度分布測定方法は、工程ST1~工程ST6を有する。以下、各工程について順に説明する。なお、本実施形態では、3つの粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度積層体の粒度分布(全体質量分布)を測定する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではなく、2つの粒度区分や4つ以上の粒度区分に属する粒子が配合された混合粒度積層体に適用することも可能である。
【0028】
<工程ST1>
工程ST1(本発明の第1粒径分布算出ステップに相当)では、粒度区分が同一となる粒径を有する粒子だけからなる試料である単一粒度試料を、複数の粒度区分について用意する。複数の粒度区分に属する粒子が配合された(すなわち、いろいろな粒径の粒子が配合された)混合粒度積層体がどのような粒度区分に属する粒子が配合されたものであるかについては、予め把握可能である。本実施形態では、3つの粒度区分に属する粒子が任意の質量割合で配合された混合粒度積層体の粒度分布を測定するため、用意する単一粒度試料も、混合粒度積層体と同じ3つの粒度区分について用意する。具体的には、本実施形態では、
図1~
図3を参照して説明した前述の確認試験と同様に、混合粒度積層体が、メッシュサイズが38mmの篩は通過するが25mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね25mm<粒径≦38mmの粒子)が属する粒度区分1、メッシュサイズが50mmの篩は通過するが38mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね38mm<粒径≦50mmの粒子)が属する粒度区分2、メッシュサイズが75mmの篩は通過するが50mmの篩は通過しない粒子(すなわち、概ね50mm<粒径≦75mmの粒子)が属する粒度区分3の、計3つの粒度区分に属する粒子が任意の質量割合で配合されている。このため、これら3つの粒度区分(粒度区分1~3)について、単一粒度試料を用意する。具体的には、例えば、
図1(a)に示す場合と同様に、トレイTの1杯分用意する。
そして、工程ST1では、3つの粒度区分の各単一粒度試料の上方に配置した距離画像取得手段(本実施形態では、
図1(b)に示す場合と同様の3Dカメラ1)を用いて、各単一粒度試料の堆積状態を変更して繰り返し撮像して距離画像を取得し、距離画像取得手段に接続された演算装置(図示せず)で演算を行うことで、各単一粒度試料の表層粒子の粒径を測定する。本実施形態では、表層粒子の粒径として、距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を用いている。堆積状態の変更は、
図1(b)に示す場合と同様に、トレイTと他の容器Cとの間で各単一粒度試料を移し替える際に生じる混合、攪拌によって行えばよい。なお、各単一粒度試料の測定の繰り返し回数は同一にすることが好ましい。これにより、
図6(a)に示すように、単一粒度試料の表層粒子の粒径(x)と個数との関係を示す第1粒径分布を3つの粒度区分毎に算出する。
図6(a)において、A(x)が粒度区分1の単一粒度試料について算出した第1粒径分布であり、B(x)が粒度区分2の単一粒度試料について算出した第1粒径分布であり、C(x)が粒度区分3の単一粒度試料について算出した第1粒径分布である。
【0029】
<工程ST2>
工程S2(本発明の第2粒径分布算出ステップに相当)では、3つの粒度区分1~3に属する粒子が任意の質量割合で配合された混合粒度堆積体の上方に配置した距離画像取得手段(本実施形態では、
図1(b)に示す場合と同様の3Dカメラ1)を用いて、混合粒度堆積体の堆積状態を変更して繰り返し撮像して距離画像を取得し、距離画像取得手段に接続された演算装置(図示せず)で演算を行うことで、混合粒度堆積体の表層粒子の粒径を測定する。本実施形態では、表層粒子の粒径として、距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を用いている。
単一粒度試料の場合と同様に、トレイT内に混合粒度堆積体を堆積させて表層粒子の粒径を測定する場合には、堆積状態の変更は、
図1(b)に示す場合と同様に、トレイTと他の容器Cとの間で混合粒度堆積体を移し替える際に生じる混合、攪拌によって行えばよい。混合粒度堆積体の測定の繰り返し回数は、必ずしも各単一粒度試料の測定の繰り返し回数と同一にする必要はない。
ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の表層粒子の粒径を測定する場合には、同一の質量割合で配合された混合粒度堆積体の異なる堆積状態が、ベルトコンベア上で展開されていると見なして、測定を繰り返せばよい。
これにより、
図6(b)に示すように、混合粒度堆積体の表層粒子の粒径(x)と個数との関係を示す第2粒径分布を算出する。
図6(b)において、実線で示すF(x)が混合粒度堆積体について算出した第2粒径分布である。
【0030】
<工程ST3>
工程ST3(本発明の係数算出ステップに相当)では、混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)(混合粒度堆積体の表層粒子の個数)に、各粒度区分の表層粒子の個数がどの程度現れているかを定量化するために、
図6(b)に示すように、混合粒度堆積体の粒径分布F(x)を3つの粒度区分毎の第1粒径分布A(x)、B(x)、C(x)の線形和C
a・A(x)+C
b・B(x)+C
c・C(x)で近似し、線形和の係数C
a、C
b、C
cを算出する。
図6(b)において、破線で示すのが線形和である。線形和での近似は、最小二乗法等の公知の近似手法を用いて行うことが可能である。
【0031】
<工程ST4>
工程ST3で算出した線形和の係数C
aは、混合粒度堆積体に現れる粒度区分1に属する表層粒子の個数に比例した値であると見なすことができる。同様に、線形和の係数C
bは、混合粒度堆積体に現れる粒度区分2に属する表層粒子の個数に比例した値であると見なすことができる。同様に、線形和の係数C
cは、混合粒度堆積体に現れる粒度区分3に属する表層粒子の個数に比例した値であると見なすことができる。
このため、工程ST4では、各係数C
a、C
b、C
cを、それぞれ混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分1、2、3に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、
図6(c)に示すように、粒度区分と粒度区分毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布を混合粒度堆積体について算出する。
【0032】
<工程ST5>
工程ST5(本発明の全体個数分布算出ステップに相当)では、工程ST4で算出した
図6(c)に示すような表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布を算出する。
表面個数分布は、堆積した粒子全体の個数割合の分布である全体個数分布と等しくならない。これは、粒度に応じて表層に現れる頻度が異なり、粒度の大きな粒子ほど表層に現れる頻度が高いため、表面個数分布は全体個数分布に比べて、粒度の大きな粒子が余計に数えられていることになるからである。このため、全体個数分布を算出するには、粒度に応じた表層への現れやすさや見えやすさの度合いを表し、表層粒子の個数分布から堆積した粒子全体の個数分布を推定する表面確率モデルが必要になる。以下、表面確率モデルについて説明する。
【0033】
粒度区分iの粒子が表層に現れる表面確率P
iは、以下の式(1)で表される。
【数1】
式(1)のiは粒度区分を示す添え字であり、本実施形態では、i=1が粒度区分1(25mm<粒径≦38mm)、i=2が粒度区分2(38mm<粒径≦50mm)、i=3が粒度区分3(50mm<粒径≦75mm)に対応する。式(1)の右辺のjはiと同じく粒度区分を示す添え字であり、粒度区分iの表面確率P
iが、粒度区分i自体のみならず、他の粒度区分の変数にも依存することを示す。X
iは測定の各回における粒度区分iに属する表層粒子の個数で、E(X
i)は全測定回数における表層粒子の個数の平均値を表している。本実施形態に係る粒度分布測定方法では、直接X
iを扱うことなく、工程ST4で算出した表面個数分布を用いる。具体的には、E(X
i)(i=1~3)の値を工程ST3で算出した各係数C
a、C
b、C
cに置き換える。すなわち、E(X
1)=C
a、E(X
2)=C
b、E(X
3)=C
cとする。
また、式(1)の右辺のP
iの変数であるHは混合粒度堆積体の高さ(嵩高さ)を表し、N
jは粒度区分jに属する粒子全体の個数を表す。D
jは粒度区分jの粒度の中間値を表す。本実施形態では、D
1=(25+38)/2=31.5mm、D2=(38+50)/2=44mm、D3=(50+75)/2=62.5mmとなる。
【0034】
式(1)の表面確率Piは、以下の式(2)で表され、詳細は以下の式(3)~式(6)式で表される。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
式(2)の右辺のM
iは、粒度区分iに属する粒子が表層にあるとき、この表層粒子の下の空間に存在する粒子の平均個数に、この表層粒子自体の個数1個を加えた個数であり、式(3)のように表される。式(3)のV
Mは、表層にある粒度区分iに属する粒子の面積と高さHとの積で表される体積の空間に存在する粒子の平均体積であり、式(4)のように表される。式(3)のV
iと式(4)のA
iは、それぞれ粒度区分iにおける体積比と面積比であり、V
1=1としたときの中間値D
iの三乗の比、A
1=1としたときの中間値D
iの二乗の比となっている。本実施形態では、体積比V
i及び面積比A
iは、以下の表1に示す値となる。
【表1】
式(2)のg(i)は、式(5)及び式(6)で表され、粒度区分iに属する粒子の見えやすさを示す。
【0035】
工程ST5では、以上に説明した表面確率モデルを用いて、全体個数分布を算出する。
具体的には、式(1)の表面確率モデルの式を変形して得られる以下の式(1’)を用いて、繰り返し法により、粒子全体の個数Niを算出する。なお、本実施形態では、粒子全体の個数そのものではなく、粒子全体の個数割合を算出することになる。
【数7】
【0036】
繰り返し法では、以下の手順(1)~(5)を実行する。
(1)まず、Njの初期値として、1を粒度区分の数で除算した値を設定する。本実施形態では、粒度区分の数が3であるため、N1=N2=N3=1/3とする。
(2)Njの初期値を式(1’)の右辺に代入し、左辺の更新されたNiを求める。
(3)更新されたNiについて、Niを1で規格化する。すなわち、Niの総和N1+N2+N3が1となるように、Niを比率Ni/(N1+N2+N3)で置き換える。
(4)規格化したNjを式(1’)の右辺に代入し、左辺の更新されたNiを求める。
(5)(1)~(4)の手順を、Niが収束する(更新前のNiと更新後のNiとの差の絶対値が一定の値以下となる)まで繰り返して、最終的な粒子全体の個数(個数割合)Niを求める。
これにより、粒度区分iと粒度区分i毎の粒子全体の個数割合Niとの関係である全体個数分布が算出されることになる。
【0037】
<工程ST6>
工程ST6(本発明の全体質量分布算出ステップに相当)では、工程ST5で算出した全体個数分布と、3つの各粒度区分から算出される体積比V
i(表1参照)とに基づき、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布を算出する。
具体的には、以下の式(7)に示すように、粒子全体の個数割合N
iと体積比V
iとを乗算し、その比率を粒子全体の質量割合m
iとして算出する。
【数8】
【0038】
以上に説明した本実施形態に係る粒度分布測定方法によれば、工程ST3によって、工程ST2で算出された混合粒度堆積体の粒径分布F(x)が、工程ST1で算出された各単一粒度試料の粒径分布A(x)、B(x)、C(x)の線形和Ca・A(x)+Cb・B(x)+Cc・C(x)で近似され、線形和の係数Ca、Cb、Ccが算出される。次に、第4工程ST4によって、算出された線形和の係数Ca、Cb、Ccが、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なされ、粒度区分と粒度区分毎の表面個数割合との関係を示す表面個数分布が算出される。以降は、非特許文献2に記載の方法と同様に表面確率モデルを用い、工程ST5によって、算出された表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の個数割合との関係である全体個数分布が算出され、工程ST6によって、粒度区分と混合粒度堆積体の粒度区分毎の粒子全体の質量割合との関係である全体質量分布が算出される。
このように、線形和の各係数Ca、Cb、Ccを、混合粒度堆積体における各単一粒度試料の粒度区分に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして表面個数分布を算出し、この表面個数分布を用いて最終的に全体質量分布を算出するため、全体質量分布を精度良く算出可能である。
【0039】
<実施例1>
以下、実施例1として、本実施形態に係る粒度分布測定方法によって全体質量分布を算出した結果の一例について説明する。
【0040】
実施例1では、3Dカメラ1として、Sick社製「Ranger-E50(エリアスキャンカメラの画素数数:1536×512、測定速度:35000断面/秒)を用い、コークス粒子が堆積したトレイT(500×500×100mm)全体が視野内に入るように、トレイTの底部から3Dカメラ1までの高さを調整した。また、トレイTをベルト駆動の走行台車上に据え付け、走行台車に敷設したロータリエンコーダによって走行距離を検知し、走行台車がトレイTの長さ分走行したところで、1枚の距離画像を取得するように設定した。
【0041】
実施例1の工程ST1では、粒度区分1(25mm<粒径≦38mm)、粒度区分2(38mm<粒径≦50mm)、粒度区分3(50mm<粒径≦75mm)の各粒度区分にそれぞれ篩分けされたトレイTの1杯分(8kg程度)の単一粒度試料を用意し、トレイT内での各単一粒度試料の堆積状態を変更して測定を10回繰り返し、5mm間隔の粒径範囲毎に表層粒子の個数を集計して、各単一粒度試料の第1粒径分布を算出した。前述の
図3は、実施例1で算出した各単一粒度試料の第1粒径分布を示している。
図3(a)が粒度区分1の単一粒度試料の第1粒径分布A(x)であり、
図3(b)が粒度区分2の単一粒度試料の第1粒径分布B(x)であり、
図3(c)が粒度区分3の単一粒度試料の第1粒径分布C(x)である。
【0042】
次に、実施例1の工程ST2では、3つの粒度区分1~3に属する粒子を、それぞれ15%、20%、65%の質量割合で配合し、トレイT内に堆積させて、混合粒度堆積体を得た。そして、単一粒度試料の場合と同様に、トレイT内での混合粒度堆積体の堆積状態を変更して測定を10回繰り返し、5mm間隔の粒径範囲毎に表層粒子の個数を集計して、混合粒度堆積体の第2粒径分布を算出した。
次に、実施例1の工程ST3では、最小二乗法によって、混合粒度堆積体の粒径分布F(x)を各単一粒度試料の粒径分布A(x)、B(x)、C(x)の線形和C
a・A(x)+C
b・B(x)+C
c・C(x)で近似し、線形和の各係数C
a、C
b、C
cを算出した。
図7は、実施例1で算出した混合粒度堆積体の第2粒径分布及び線形和を示す。
図7に示す実線が混合粒度堆積体の第2粒径分布F(x)であり、破線が線形和C
a・A(x)+C
b・B(x)+C
c・C(x)である。
図7に示すように、各係数は、C
a=0.16833、C
b=0.225909、C
c=0.644118となった。
【0043】
次に、実施例1の工程ST4では、各係数C
a、C
b、C
cを、それぞれ混合粒度堆積体における粒度区分1、2、3に属する表層粒子の個数割合である表面個数割合と見なして、表面個数分布を算出した。
図8は、実施例1で算出した混合粒度堆積体の表面個数分布、全体個数分布及び全体質量分布を示す。
図8(a)は表面個数分布であり、
図8(b)は全体個数分布であり、
図8(c)は全体質量分布である。
図8(a)に示す表面個数分布の縦軸の表面個数割合は、各粒度区分に対応する表面個数割合の総和が100%となるように、各係数C
a、C
b、C
cを百分率で表した値である。
【0044】
次に、実施例1の工程ST5では、
図8(a)に示す表面個数分布と、表面確率モデルとを用いて、
図8(b)に示す全体個数分布を算出した。
図8(b)に示す全体個数分布の縦軸の全体個数割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の個数割合であり、各粒度区分に対応する全体個数割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
【0045】
最後に、実施例1の工程ST6では、
図8(b)に示す全体個数分布と、体積比V
i(表1参照)とに基づき、
図8(c)に示す全体質量分布を算出した。
図8(c)に示す全体質量分布の縦軸の全体質量割合は、混合粒度堆積体を構成する粒子全体の質量割合であり、各粒度区分に対応する全体質量割合の総和が100%となるように百分率で表した値である。
図8(c)に示すように、粒度区分1の全体質量割合=13.40129%、粒度区分2の全体質量割合=24.05432%、粒度区分3の全体質量割合=62.54439%となった。前述のように、混合粒度堆積体は、3つの粒度区分1~3に属する粒子を、それぞれ15%、20%、65%の質量割合で配合したものであるため、
図8(c)に示す結果は、この実際に配合した質量割合に近い値が得られているといえる。
【0046】
<実施例2>
実施例2では、工程ST2において、3つの粒度区分1~3に属する粒子を、それぞれ0%、50%、50%の質量割合で配合した混合粒度堆積体を用いた点を除き、実施例1と同様に、混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した。
【0047】
<実施例3>
実施例3では、工程ST2において、3つの粒度区分1~3に属する粒子を、それぞれ15%、55%、30%の質量割合で配合した混合粒度堆積体を用いた点を除き、実施例1と同様に、混合粒度堆積体の全体質量分布を算出した。
【0048】
図9は、実施例1~3で算出した全体質量分布を示す。
図9(a)は実施例1で算出した全体質量分布であり、
図9(b)は実施例2で算出した全体質量分布であり、
図9(c)は実施例3で算出した全体質量分布である。
図9に「3D」で示すグラフは各実施例で算出したデータであり、「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)である。
図9(a)の「3D」で示すグラフは
図8(c)に示すグラフと同一である。
図9に示すように、実施例1~3のいずれについても、算出した全体質量分布は、現実の状態が反映された質量割合に近い値になっており、
図2を参照して説明した従来の方法で算出した結果よりも高精度に測定できていることが分かる。
【0049】
なお、実施例1~3では、トレイT内に堆積した混合粒度堆積体の粒度分布を測定する場合を例に挙げたが、本発明は、ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の粒度分布を測定することも可能である。ただし、ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の場合、トレイT内に堆積した混合粒度堆積体と異なり、表面確率モデルに用いる混合粒度堆積体の高さHが搬送中に変動し易いため、高さHを実際に測定することが好ましい。
以下、高さHを測定(算出)する方法の一例について説明する。
【0050】
図10及び
図11は、ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の高さを算出する方法を説明する説明図であり、ベルトコンベアの搬送方向に直交する断面で示している。
ベルトコンベア上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の高さを算出する場合、
図10(a)に示すように、前述の工程ST2において、距離画像取得手段(3Dカメラ1)を用いて、混合粒度堆積体の表層粒子の粒径を繰り返し測定すると共に、混合粒度堆積体及びベルトコンベアBCの断面上縁E1(
図10(a)において破線で示す)の位置を繰り返し測定すればよい。一方、
図10(b)に示すように、混合粒度堆積体が堆積していない状態のベルトコンベアBCの断面上縁E2(
図10(b)において破線で示す)の位置を予め測定し、記憶しておく。そして、断面上縁E1の位置と断面上縁E2の位置とに基づき、
図10(c)に示すように、混合粒度堆積体の断面積Sを算出する。具体的には、断面上縁E1の端点A、Bと、断面上縁E2の端点A’、B’とをそれぞれ位置合わせした後、断面上縁E1の上下方向の座標から断面上縁E2の上下方向の座標を減算して、これを水平方向(
図10の左右方向)に積分することで、断面積Sを算出することができる。なお、前述のように、断面上縁E1の位置を繰り返し測定するため、断面積Sも繰り返し算出される。したがって、混合粒度堆積体の高さHを算出するのに用いる断面積Sとしては、例えば、繰り返し算出された断面積Sの平均値を用いることができる。
【0051】
ここで、コークスや焼結鉱等の粒子を搬送するための一般的なベルトコンベアBCの断面は台形(等脚台形)である。したがって、混合粒度堆積体の断面も台形と見なして近似できる場合が多い。
そこで、
図11に示すように、混合粒度堆積体の断面を高さHの台形と見なして近似する。
図11に示すように、ベルトコンベアBCの底部の幅をW、ベルトコンベアBCの側面の傾斜角(上下方向に対する傾斜角)をθとすると、台形の面積は、(W+H・tanθ)・Hで表される。この台形の面積が混合粒度堆積体の断面積Sに等しいと考えると、以下の式(8)が成立する。
【数9】
式(8)をHについて解けば、以下の式(9)が成立する。
【数10】
幅W及び傾斜角θは既知の値であるため、混合粒度堆積体の断面積S(断面積Sの平均値)を算出すれば、式(9)によって混合粒度堆積体の高さHを算出することができる。
以上のようにして、ベルトコンベアBC上に堆積して搬送される混合粒度堆積体の高さHを算出し、これを工程ST5において表面確率モデルに用いることで、トレイT内に堆積した混合粒度堆積体の場合と同様に、混合粒度堆積体の全体個数分布を算出することができ、工程ST6において全体質量分布を算出可能である。
【0052】
以下、本実施形態に係る粒度分布測定方法の変形例について説明する。
本実施形態に係る粒度分布測定方法では、表層粒子の粒径として、距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の短軸径を用いているが、以下に述べるように、表層粒子の堆積状態を判断して粒径を算出することも可能である。また、本実施形態に係る粒度分布測定方法では、工程ST1において、単一粒度試料の表層粒子の粒径と個数との関係を示す第1粒径分布を算出し、工程ST2において、混合堆積体の表層粒子の粒径と個数との関係を示す第2粒径分布を算出しているが、以下に述べるように、これらに代えて、単一粒度試料の表層粒子の粒径と面積との関係を示す第1粒径分布と共に、混合堆積体の表層粒子の粒径と面積との関係を示す第2粒径分布を算出したり、又は、単一粒度試料の表層粒子の粒径と体積との関係を示す第1粒径分布と共に、混合堆積体の表層粒子の粒径と体積との関係を示す第2粒径分布を算出することも可能である。
【0053】
図12は、表層粒子の堆積状態を模式的に説明する図である。
図12(a)の左図に示すように、表層粒子の最上部の上下方向の座標から、表層粒子直下のベルトコンベアBCの底部の上下方向の座標を減算して得られる、ベルトコンベアBCの底部からの高さが、表層粒子の短軸径よりも大きい場合、表層粒子が他の粒子群の上に載っていると判断できる。この場合、
図12(b)の右図に示すように、表層粒子の上下方向の径(高さ径)は、粒子群の中に埋まっていて不明なので、短軸径と同じと見なし、(長軸径×短軸径)
2を表層粒子の体積とし、短軸径を表層粒子の粒径とする。この場合、表層粒子を、高さ径が短軸径と同じ回転楕円体と見なしていることになる。
【0054】
図12(b)の左図に示すように、表層粒子の最上部の上下方向の座標から、表層粒子直下のベルトコンベアBCの底部の上下方向の座標を減算して得られる、ベルトコンベアBCの底部からの高さが、表層粒子の短軸径以下である場合、表層粒子がベルトコンベアBC上に直接載っていると判断できる。この場合、表層粒子の高さ径は、ベルトコンベアBCの底部からの高さと同じと見なし、(長軸径×短軸径×高さ径)を表層粒子の体積とする。また、
図12(b)の右図に示すように、表層粒子の粒径については、表層粒子が篩のメッシュを45°方向にすり抜ける場合を考慮して、短軸径をb、高さ径をcとした場合、以下の式(10)によって粒径dを算出することができる。
【数11】
【0055】
上記の何れの場合においても、表層粒子を楕円体と見なした場合の体積は、正確には(長軸径×短軸径)2にπ/6の係数を乗算する必要があるが、この係数は、工程ST1及び工程ST2において表層粒子の体積に関する粒径分布を算出すると、何れの粒径分布にも乗算され、工程ST3で線形和の係数を算出する際にキャンセルされるので、省略することが可能である。
また、上記の何れの場合においても、表層粒子の面積は、表層粒子の長軸径と短軸径との積で算出すればよい。距離画像における表層粒子を楕円と見なした場合の面積は、正確には長軸径と短軸径との積にπ/4の係数を乗算する必要があるが、この係数も、工程ST1及び工程ST2において表層粒子の面積に関する粒径分布を算出すると、何れの粒径分布にも乗算され、工程ST3で線形和の係数を算出する際にキャンセルされるので、省略することが可能である。
【0056】
以下、工程ST1及び工程ST2において、粒径分布として、表層粒子の個数に代えて表層粒子の面積又は体積に関する粒径分布を算出した例について説明する。
図13は、実施例1の工程ST1において算出した、表層粒子の面積又は体積に関する単一粒度試料の第1粒径分布を示す。
図13(a)は表層粒子の面積に関する第1粒径分布を、
図13(b)は表層粒子の体積に関する第1粒径分布を示す。
図13では、粒度区分1~3の単一粒度試料の第1粒径分布を重ねて表示している。
図3に示す表層粒子の個数に関する単一粒度試料の第1粒径分布に比べて、
図13に示す面積又は体積に関する単一粒度試料の第1粒径分布は、大きな粒度区分の粒径分布が縦軸の上方に持ち上げられることになるものの、工程ST2で算出する混合粒度堆積体の第2粒径分布も同じ基準(表層粒子の個数、面積又は体積)の粒径分布とすることで、最終的に工程ST6で算出する全体質量分布を前述の
図9に示す全体質量分布と同様の分布にすることができる。
【0057】
図14は、実施例1~3の工程ST1及び工程ST2において、表層粒子の面積に関する粒径分布を算出した場合に工程ST6で算出された全体質量分布を示す。
図14(a)は実施例1に対応する全体質量分布であり、
図14(b)は実施例2に対応する全体質量分布であり、
図14(c)は実施例3に対応する全体質量分布である。
図14に「3D」で示すグラフは各実施例に対応するデータであり、「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)である。
図14に示すように、実施例1~3のいずれについても、表層粒子の面積に関する粒径分布を用いて算出した全体質量分布は、現実の状態が反映された質量割合に近い値になっており、
図9に示す表層粒子の個数に関する粒径分布を用いて算出した全体質量分布と同等の高精度で測定できていることが分かる。
【0058】
図15は、実施例1~3の工程ST1及び工程ST2において、表層粒子の体積に関する粒径分布を算出した場合に工程ST6で算出された全体質量分布を示す。
図15(a)は実施例1に対応する全体質量分布であり、
図15(b)は実施例2に対応する全体質量分布であり、
図15(c)は実施例3に対応する全体質量分布である。
図14に「3D」で示すグラフは各実施例に対応するデータであり、「篩」で示すグラフは篩を用いて測定されたデータ(配合された粒子の現実の状態が反映された質量割合)である。
図15に示すように、実施例1~3のいずれについても、表層粒子の体積に関する粒径分布を用いて算出した全体質量分布は、現実の状態が反映された質量割合に近い値になっており、
図9に示す表層粒子の個数に関する粒径分布を用いて算出した全体質量分布と同等の高精度で測定できていることが分かる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・3Dカメラ(距離画像取得手段)
BC・・・ベルトコンベア
ST1・・・工程(第1粒径分布算出ステップ)
ST2・・・工程(第2粒径分布算出ステップ)
ST3・・・工程(係数算出ステップ)
ST4・・・工程
ST5・・・工程(全体個数分布算出ステップ)
ST6・・・工程(全体質量分布算出ステップ)
T・・・トレイ