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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172622
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20221110BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20221110BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/34 D
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078605
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】鷹箸 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 栄也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
【テーマコード(参考)】
2G015
2G036
2G116
【Fターム(参考)】
2G015AA07
2G015AA12
2G015BA02
2G036AA13
2G036BA02
2G036BA03
2G116BA01
2G116BA03
2G116BB09
(57)【要約】
【課題】経年劣化による部分放電及びサージ電圧を併せて監視することができる検出装置および検出方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の検出装置は、電極と、サージ検出部と、放電計測部とを持つ。電極は、対象電力機器の接地部分に接続され、前記接地部分に流れる電気信号を引き込む。サージ検出部は、電極から引き込まれた電気信号に基づいて、対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出する。放電計測部は、電極から引き込まれた電気信号に基づいて、対象電力機器に生じる部分放電を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象電力機器から電気信号を引き込む電極と、
前記電極から引き込まれた前記電気信号に基づいて、前記対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出するサージ検出部と、
前記電極から引き込まれた前記電気信号に基づいて、前記対象電力機器に生じる部分放電を計測する放電計測部と
を備える検出装置。
【請求項2】
前記放電計測部は、
電気信号の電圧を計測する第1電圧センサと、
前記電極と前記第1電圧センサとの間に接続され、前記電気信号の電圧が前記第1電圧センサの入力許容レベルを超えるときに前記電気信号を吸収する過電圧保護回路と
を備える請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
電気信号の電圧を計測する第2電圧センサと、
前記電極と前記第2電圧センサとの間に接続され、前記対象電力機器へのサージ電圧が発生したときに前記電極から引き込まれる電気信号の電圧が、前記第2電圧センサの計測範囲の最大値以下となる降圧比で、前記電気信号を降圧させる降圧回路と
を備え、
前記サージ検出部は、前記第2電圧センサの計測値に基づいて、前記対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出する
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記放電計測部が検出した前記部分放電がサージ電圧の発生に伴って生じたものであるか否かを判定する放電判定部を備える
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記放電判定部は、検出した前記部分放電が、前記サージ電圧の発生タイミングより後に生じたか否かに基づいて、検出した前記部分放電がサージ電圧の発生に伴って生じたものであるか否かを判定する
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記放電判定部は、検出した前記部分放電の極性と、前記サージ検出部によって検出された前記サージ電圧の極性とが一致するか否かに基づいて、検出した前記部分放電がサージ電圧の発生に伴って生じたものであるか否かを判定する
請求項4または請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記サージ検出部によって検出された前記サージ電圧の発生タイミングを含む所定の時間における前記放電計測部による前記部分放電の計測値を記録する記録部を備える
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
電極を介して対象電力機器の接地部分から電気信号を引き込むステップと、
前記電極から引き込まれた前記電気信号に基づいて、前記対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出するステップと、
前記電極から引き込まれた前記電気信号に基づいて、前記対象電力機器に生じる部分放電を計測するステップと
を備える検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力機器の経年劣化によって、電力機器の表面や内部の絶縁体の絶縁性能が低下する。絶縁性能が低下が生じた箇所からは、部分放電が発生する。絶縁性能の低下が進行すると、電力機器に絶縁破壊が起こる可能性がある。また、電力機器に突発的に侵入するサージ電圧によっても、絶縁性能の低下が生じることがある。
【0003】
経年劣化による部分放電は、劣化のトレンドを認識するために、定期的に監視することが好ましい。一方で、サージ電圧は突発的に生じるため、定期的な監視では見逃される可能性があり、発生の都度監視することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-217955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、経年劣化による部分放電及びサージ電圧を併せて監視することができる検出装置および検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検出装置は、電極と、サージ検出部と、放電計測部とを持つ。電極は、対象電力機器の接地部分に接続され、前記接地部分に流れる電気信号を引き込む。サージ検出部は、電極から引き込まれた電気信号に基づいて、対象電力機器へのサージ電圧の発生を検出する。放電計測部は、電極から引き込まれた電気信号に基づいて、対象電力機器に生じる部分放電を計測する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る検出装置の構成を示す概略図。
図2】第1の実施形態に係る第1電圧センサ及び第2電圧センサが計測する波形の例を示す図。
図3】第1の実施形態に係る演算装置の動作を示すフローチャート。
図4】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の検出装置および検出方法を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る検出装置100の構成を示す概略図である。検出装置100は、対象電力機器200の部分放電およびサージ電圧の発生を検出し、波形のログデータを記録する。対象電力機器200は、例えば変圧器や回転機などの電気機器である。対象電力機器200は、箱体210と機器本体220とを備える。機器本体220は、接地された箱体210に収容されている。
【0009】
検出装置100は、計測器110と演算装置120とを備える。計測器110は、対象電力機器200の箱体210に取り付けられた電極111の電圧を計測することで、箱体210に収容されている機器本体220との間の浮遊容量を介して箱体210の表面に形成される電位を計測する。演算装置120は、計測器110の計測値に基づいて、部分放電およびサージ電圧の検出、記録を行う。
【0010】
計測器110は、電極111、過電圧保護回路112、第1電圧センサ113、降圧回路114、第2電圧センサ115を備える。計測器110の本体と電極111とは測定ケーブルによって接続される。電極111の一次側は、対象電力機器200の箱体210に接続される。これにより、電極111は、箱体210の表面に形成される電気信号を計測器110に引き込む。電極111の二次側には、過電圧保護回路112の一次側と降圧回路114の一次側とが接続される。過電圧保護回路112は、電極111に対して降圧回路114と並列に接続される。過電圧保護回路112の二次側には、第1電圧センサ113の一次側が接続される。降圧回路114の二次側には、第2電圧センサ115の一次側が接続される。
【0011】
過電圧保護回路112は、一次側に入力される電気信号の電圧が、第1電圧センサ113の入力許容レベルを超えるときに電気信号を吸収する(グラウンドに流す)ように設計される。過電圧保護回路112は、例えばサージアレスタ、サージバリスタ、絶縁トランス、ツェナーダイオードなどによって構成される。入力許容レベルとは、第1電圧センサ113に当該レベルを超える電圧が入力されたときに第1電圧センサ113が故障する可能性があるレベルである。入力許容レベルは、第1電圧センサ113の定格電圧であってよい。
【0012】
降圧回路114は、一次側に入力される電気信号を降圧して二次側から出力する。降圧回路114の降圧比は、対象電力機器200へのサージ電圧が発生したときに電極111から引き込まれる電気信号の電圧が、第2電圧センサ115の計測範囲の最大値以下となるように設定される。つまり、降圧回路114は、対象電力機器200へのサージ電圧が発生したときに、第2電圧センサ115が電圧を計測可能な程度に、電気信号を降圧させる。降圧回路114は、例えば抵抗器による分圧回路によって構成される。降圧回路114は、分圧回路でない方法で電気信号を降圧させてもよいが、電気信号を歪ませないような回路を構成することが好ましい。例えば、降圧回路114は、キャパシタを含まない。
【0013】
図2は、第1の実施形態に係る第1電圧センサ113及び第2電圧センサ115が計測する波形の例を示す図である。
第1電圧センサ113は、過電圧保護回路112を介して電極111に接続される。したがって、第1電圧センサ113には、電極111から入力される電気信号の電圧が入力許容レベルを超えない場合には、電極111から入力される電気信号と同じレベルの電気信号が入力され、電極111から入力される電気信号の電圧が入力許容レベルを超える場合には、入力許容レベルでカットされた電気信号が入力される。
第2電圧センサ115は、降圧回路114を介して電極111に接続される。したがって、第2電圧センサ115には、常に電極111から入力される電気信号に比例した電気信号が入力される。
【0014】
図2に示す例では、時刻tにおいて対象電力機器200にサージ電圧が生じている。過電圧保護回路112は、サージ電圧の発生に伴う電気信号を吸収するため、第1電圧センサ113は、サージ電圧に伴う電気信号の大きさを計測することができない。一方で、降圧回路114は、サージ電圧の発生に伴う電気信号を第2電圧センサ115の計測範囲内の大きさに降圧するため、第2電圧センサ115は、サージ電圧に伴う電気信号の大きさを計測することができる。
【0015】
図2に示す例では、サージ電圧の発生後の時刻tにおいて、対象電力機器200に部分放電が生じている。部分放電に伴う電気信号は、サージ電圧に伴う電気信号と比較して小さいため、降圧回路114によって電気信号が降圧されると、第2電圧センサ115では精度よく部分放電に伴う電気信号の大きさを計測することができない。一方で、部分放電に伴う電気信号のレベルは第1電圧センサ113の入力許容レベルより小さいため、過電圧保護回路112は、電極111から入力される電気信号と同じレベルで電気信号を出力する。これにより、第1電圧センサ113は、部分放電に伴う電気信号の大きさを計測することができる。つまり、第1電圧センサ113は、電極111から引き込まれた電気信号に基づいて対象電力機器200に生じる部分放電を計測する放電計測部の一例である。
【0016】
図1に示すように、演算装置120は、入力部121、バッファ部122、サージ検出部123、放電検出部124、放電判定部125、記録部126、記憶部127を備える。
入力部121は、第1電圧センサ113の計測値および第2電圧センサ115の計測値の入力を受け付ける。以下、第1電圧センサ113の計測値を第1計測値ともよぶ。また第2電圧センサ115の計測値を第2計測値とも呼ぶ。第1計測値および第2計測値は、それぞれ第1電圧センサ113および第2電圧センサ115のサンプリングレートに従って入力される。したがって、入力部121に入力される計測値は電圧波形を表す時系列を構成する。
【0017】
バッファ部122は、第1計測値及び第2計測値を一時的に記憶する。例えば、バッファ部122は、対象電力機器200が扱う電力信号の最新の10サイクル分の計測値を記憶する。
【0018】
サージ検出部123は、第2計測値に基づいて、対象電力機器200にサージ電圧が発生したか否かを判定する。具体的には、サージ検出部123は、第2計測値の絶対値が所定のサージ検出閾値を超えた場合に、サージ電圧が発生したと判定する。またサージ検出部123は、サージ電圧を検出した場合に、当該サージ電圧が発生しているサージ期間における電気信号のピーク電圧値を特定する。例えば、サージ検出部123は、第2計測値がサージ検出閾値を超えたタイミングから、第2計測値が示す電圧波形の振幅がサージ終了閾値以下となるまでの期間をサージ期間として特定する。また、サージ検出部123は、サージ電圧の極性を特定する。例えば、サージ検出部123は、第2計測値の絶対値がサージ検出閾値を超えたときの計測値の符号を、サージ電圧の極性として特定する。
【0019】
放電検出部124は、第1計測値に基づいて、対象電力機器200から部分放電が生じたか否かを判定する。具体的には、放電検出部124は、サージ期間でないタイミングにおいて、第1計測値が所定の放電検出閾値を超えた場合に、部分放電が発生したと判定する。放電検出部124は、部分放電を検出した場合に、部分放電に係る電気信号のピーク電圧値を特定する。また、放電検出部124は、部分放電の極性を特定する。例えば、放電検出部124は、第1計測値の絶対値が放電検出閾値を超えたときの計測値の符号を、部分放電の極性として特定する。
【0020】
放電判定部125は、放電検出部124が検出した部分放電が、サージ電圧に伴って発生したものであるか否かを判定する。具体的には、放電判定部125は、放電検出部124が検出した部分放電が、サージ検出部123によってサージ電圧が検出されたタイミングを起点とする所定の期間(例えば、100ms以内)に発生し、かつ当該部分放電の極性とサージ電圧の極性が一致する場合に、部分放電がサージ電圧に伴って発生したものであると判定する。サージ電圧が検出されたタイミングを起点とする所定の期間と異なるタイミングに発生し、または当該部分放電の極性とサージ電圧の極性が一致しない場合、その部分放電は経年劣化によって発生したものである可能性がある。
【0021】
記録部126は、対象電力機器200の劣化判定等に用いるための電圧波形のログデータを記憶部127に記録する。具体的には、サージ検出部123によってサージ電圧が検出されたときに、第1計測値及び第2計測値に係る電圧波形と、サージ電圧に係る電気信号のピーク電圧値と、計測時刻と、サージ電圧に伴う部分放電の有無を示す情報とを含むログデータを記憶部127に記録する。なお、サージ電圧に伴う部分放電がある場合、ログデータには、さらに部分放電に係る電気信号のピーク電圧値が含まれる。サージ電圧に係るログデータに含まれる電圧波形は、サージ電圧が検出されたタイミングの前後数サイクルの期間に係る波形である。記録部126は、バッファ部122から該当期間に係る電圧波形を切り出して記憶部127に記録する。
また、記録部126は、サージ電圧の検出の有無によらず、一定時間ごとに、第1計測値に係る電圧波形、すなわち部分放電が表れる電圧波形を含むログデータを記憶部127に記録する。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係る演算装置120の動作を示すフローチャートである。
入力部121は、第1計測値および第2計測値の入力を受け付ける(ステップS1)。入力された第1計測値および第2計測値は、バッファ部122に記録される。バッファ部122には、電力信号の10サイクル分の時間における計測値の時系列が記憶される。
【0023】
サージ検出部123は、バッファ部122に記録された第2計測値の時系列のうち中心時刻に係るサンプルに係る電圧の絶対値がサージ検出閾値を超えているか否かを判定する(ステップS2)。第2計測値の絶対値がサージ検出閾値を超えていない場合(ステップS2:NO)、サージ検出部123は、時系列の中心時刻において対象電力機器200にサージ電圧が発生していないと判定する。
【0024】
他方、第2計測値の絶対値がサージ検出閾値を超えている場合(ステップS2:YES)、サージ検出部123は、時系列の中心時刻において対象電力機器200にサージ電圧が発生したと判定する。サージ電圧が発生したと判定した場合、サージ検出部123は、第2計測値の時系列のうち、電圧値がサージ検出終了閾値未満となるタイミングを特定する。すなわち、サージ検出部123は、サージ期間を特定する(ステップS3)。サージ検出部123は、サージ期間における電気信号のピーク電圧値と極性を特定する(ステップS4)。
【0025】
放電検出部124は、バッファ部122に記録された第1計測値の時系列から、サージ期間外において電圧値が放電検出閾値以上となるタイミングを、部分放電が発生したタイミングとして特定する(ステップS5)。放電検出部124は、特定したタイミングにおける電気信号のピーク電圧値と極性を特定する(ステップS6)。
【0026】
放電判定部125は、放電検出部124が検出した部分放電のタイミングが、時系列の中心時刻を起点とする所定の期間内に位置し、かつ当該部分放電の極性とサージ電圧の極性が一致するか否かを判定する(ステップS7)。部分放電のタイミングが所定の期間内に位置し、かつ当該部分放電の極性とサージ電圧の極性が一致する場合(ステップS7:YES)、放電判定部125は、ステップS5で特定したタイミングにおける部分放電がサージ電圧に伴って発生したものであると判定する。
他方、部分放電が所定の期間と異なるタイミングに発生し、または当該部分放電の極性とサージ電圧の極性が一致しない場合(ステップS7:NO)、放電判定部125は、部分放電がサージ電圧に伴って発生したものでないと判定する。
【0027】
時系列の中心時刻においてサージ電圧が検出され(ステップS2:YES)、かつ時系列において当該サージ電圧に伴って発生した部分放電が検出された場合(ステップS7:YES)、記録部126は、バッファ部122が記憶する第1計測値の時系列および第2計測値の時系列、ステップS4で特定したサージ電圧のピーク電圧値、ステップS6で特定した部分放電のピーク電圧値、サージ電圧に伴う部分放電があることを示す情報、及び現在時刻を、ログデータとして記憶部に記録する(ステップS8)。
【0028】
他方、時系列の中心時刻においてサージ電圧が検出され(ステップS2:YES)、かつ時系列において当該サージ電圧に伴って発生した部分放電が検出されない場合(ステップS7:NO)、記録部126は、バッファ部122が記憶する第1計測値の時系列および第2計測値の時系列、ステップS4で特定したサージ電圧のピーク電圧値、サージ電圧に伴う部分放電がないことを示す情報、及び現在時刻を、ログデータとして記憶部に記録する(ステップS9)。
【0029】
時系列の中心時刻においてサージ電圧が検出されない場合(ステップS2:NO)、放電検出部124は、現在時刻が部分放電の監視タイミングであるか否かを判定する(ステップS10)。現在時刻が部分放電の監視タイミングでない場合(ステップS10:NO)、記録部126はログデータを記録しない。他方、現在時刻が部分放電の監視タイミングである場合(ステップS10:YES)、放電検出部124は、バッファ部122に記録された第1電圧センサ113の計測値の時系列から、サージ期間外において電圧値が放電検出閾値以上となるタイミングを、部分放電が発生したタイミングとして特定する(ステップS11)。放電検出部124は、特定したタイミングにおける電気信号のピーク電圧値を特定する(ステップS12)。記録部126は、バッファ部122が記憶する第2電圧センサ115の検出値の時系列、ステップS12で特定した部分放電のピーク電圧値、及び現在時刻を、ログデータとして記憶部に記録する(ステップS13)。
【0030】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、検出装置100は、対象電力機器200から電気信号を引き込む電極111と、第1電圧センサ113を含む放電計測部と、サージ検出部123とを持つことにより、経年劣化による部分放電及びサージ電圧を併せて監視することができる。
【0031】
なお、第1の実施形態に係る検出装置100は、電極111が対象電力機器200の設置電位信号を取得するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る検出装置100は、対象電力機器200である計器用変成器や変流器の二次側信号を取得するものであってもよいし、対象電力機器200から放出される電磁波を捕捉するものであってもよい。
【0032】
また、第1の実施形態に係る検出装置100は、第1電圧センサ113の計測値を用いて部分放電を検出し、第2電圧センサ115の計測値を用いてサージ電圧を検出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る検出装置100は、第1電圧センサ113の計測値を用いて部分放電とサージ電圧の両方を検出してもよい。対象電力機器200にサージ電圧が発生すると、第1電圧センサ113に入力される電気信号は、過電圧保護回路112によって一部吸収されるが、一部の信号が吸収されても、第1電圧センサ113の計測値は、図2に示すように計測範囲の最大値近傍の値となる。そのため、サージ検出部123は、第1電圧センサ113の計測値が計測範囲の最大値近傍の値となったときに、サージ電圧が発生したと判定してもよい。ただし、この場合サージ検出部123は、サージ電圧に係る電気信号のピーク電圧値を特定することはできない。
【0033】
また、第1の実施形態に係る検出装置100は、電圧センサを保護するために過電圧保護回路112及び降圧回路114を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る検出装置100は、入力許容レベルが、定されるサージ電圧より大きい電圧センサを備える場合、過電圧保護回路112及び降圧回路114を備えなくてもよい。
【0034】
図4は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ500は、プロセッサ510、メインメモリ530、ストレージ550、インタフェース570を備える。
上述の演算装置120は、コンピュータ500に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ550に記憶されている。プロセッサ510は、プログラムをストレージ550から読み出してメインメモリ530に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ510は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ530に確保する。プロセッサ510の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0035】
プログラムは、コンピュータ500に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ500は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ510によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0036】
ストレージ550の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ550は、コンピュータ500のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース570または通信回線を介してコンピュータ500に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ500に配信される場合、配信を受けたコンピュータ500が当該プログラムをメインメモリ530に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ550は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0037】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ550に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
100…検出装置 110…計測器 111…電極 112…過電圧保護回路 113…第1電圧センサ 114…降圧回路 115…第2電圧センサ 120…演算装置 121…入力部 122…バッファ部 123…サージ検出部 124…放電検出部 125…放電判定部 126…記録部 127…記憶部 200…対象電力機器 210…箱体 220…機器本体
図1
図2
図3
図4