(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172628
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】操船システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/00 20060101AFI20221110BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20221110BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B63H20/00 820
B63H20/00 600
B63H21/17
B63H21/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078616
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏
(57)【要約】
【課題】電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動させることが可能な操船システムおよび船舶を提供する。
【解決手段】操船システム102は、電動モータ12を含む船舶推進装置1と、電動モータ12を停止させる中立指令E1および電動モータ12を駆動させる前進駆動指令E2および後進駆動指令E3を入力する入力装置2と、電動モータ12が駆動しない停止状態から、電動モータ12の駆動が可能となる駆動可能状態にするスタートスイッチ3と、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置2に中立指令E1が入力され、停止状態にある場合において、スタートスイッチ3に対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータ12によるプロペラ10の駆動を可能にする制御を行う制御部7と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラを駆動させる電動モータを含む船舶推進装置と、
前記電動モータを停止させる中立指令、および、前記電動モータを駆動させる駆動指令を入力する入力装置と、
前記電動モータが駆動しない停止状態から、前記電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にするための操作を受け付けるスタートスイッチと、
船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、前記入力装置に前記中立指令が入力されているとともに、前記停止状態にある場合において、前記スタートスイッチに対する操作が行われることにより、前記停止状態から前記駆動可能状態にして前記電動モータによる前記プロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部と、を備える、操船システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記停止状態で前記入力装置に前記駆動指令が入力されている場合において、前記スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、前記停止状態を維持する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の操船システム。
【請求項3】
前記電動モータに前記中立指令が送信されている状態を保持するための操作を受け付ける中立保持スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記入力装置に前記中立指令が入力されているとともに、前記スタートスイッチが操作されて前記駆動可能状態になった状態で、前記中立保持スイッチに対する操作が行われた場合には、前記入力装置に対する入力に関わらず前記電動モータを駆動させない制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の操船システム。
【請求項4】
前記プロペラの非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、前記駆動可能状態から前記停止状態にする非常停止スイッチをさらに備え、
前記制御部は、前記非常停止スイッチにより前記停止状態になった場合には、前記入力装置に前記中立指令が入力されている状態で、前記スタートスイッチに対する操作が行われることにより、前記停止状態から前記駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項5】
前記停止状態から前記駆動可能状態になったことを通知する通知部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項6】
前記通知部は、前記停止状態にある場合には消灯するとともに、前記駆動可能状態にある場合には点灯するランプを含む、請求項5に記載の操船システム。
【請求項7】
前記通知部は、前記停止状態および前記駆動可能状態であることを表示するディスプレイを含む、請求項5または6記載の操船システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記停止状態で前記入力装置に前記駆動指令が入力されている場合において、前記スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、前記停止状態を維持する制御を行うように構成され、
前記ディスプレイは、前記スタートスイッチに対する操作が行われて前記停止状態を維持する場合には、前記停止状態に関する所定の通知を表示するように構成されている、請求項7に記載の操船システム。
【請求項9】
前記主電源のオンオフを切り替えるための操作を受け付けるパワースイッチと、
前記スタートスイッチおよび前記パワースイッチの両方が設けられる操作パネルと、をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項10】
前記スタートスイッチは、前記停止状態から前記駆動可能状態にするための操作を受け付けることに加えて、前記駆動可能状態から前記停止状態にするための操作も受け付けるように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項11】
前記スタートスイッチは、押圧により操作されるボタン式スイッチである、請求項1~10のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項12】
前記スタートスイッチの操作により前記停止状態から前記駆動可能状態になった場合には、前記入力装置への入力が前記中立指令から前記駆動指令に切り替えられることにより前記電動モータによる前記プロペラの駆動を開始するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項13】
前記入力装置は、レバー部を含み、前記レバー部の位置を、前記入力装置に前記中立指令を入力する中立入力位置から、前記レバー部を倒して前記入力装置に前記駆動指令を入力する駆動入力位置に切り替えることが可能なリモコンレバーであり、
前記リモコンレバーは、前記レバー部の傾倒角度が大きくなる程、前記電動モータの回転数が大きくなるように構成されており、前記中立入力位置を含む前記レバー部の所定の傾倒角度範囲では前記電動モータの回転数を0で保持する不感帯を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の操船システム。
【請求項14】
前記リモコンレバーは、前記レバー部を前記中立入力位置で停止させて保持する中立ノッチと、前記不感帯と前記駆動入力位置に対応する感知領域との境界位置に設けられ、前記電動モータの回転数が所定の最小の駆動回転数となるように前記レバー部を前記駆動入力位置で停止させて保持する駆動ノッチとを有する、請求項13に記載の操船システム。
【請求項15】
船体と、
前記船体に搭載される操船システムとを備え、
前記操船システムは、
プロペラを駆動させる電動モータを含む船舶推進装置と、
前記電動モータを停止させる中立指令、および、前記電動モータを駆動させる駆動指令を入力する入力装置と、
前記電動モータが駆動しない停止状態から、前記電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にするための操作を受け付けるスタートスイッチと、
前記船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、前記入力装置に前記中立指令が入力されているとともに、前記停止状態にある場合において、前記スタートスイッチに対する操作が行われることにより、前記停止状態から前記駆動可能状態にして前記電動モータによる前記プロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部と、を含む、船舶。
【請求項16】
前記制御部は、前記停止状態で前記入力装置に前記駆動指令が入力されている場合において、前記スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、前記停止状態を維持する制御を行うように構成されている、請求項15に記載の船舶。
【請求項17】
前記操船システムは、前記電動モータに前記中立指令が送信されている状態を保持するための操作を受け付ける中立保持スイッチをさらに含み、
前記制御部は、前記入力装置に前記中立指令が入力されているとともに、前記スタートスイッチが操作されて前記駆動可能状態になった状態で、前記中立保持スイッチに対する操作が行われた場合には、前記入力装置に対する入力に関わらず前記電動モータを駆動させない制御を行うように構成されている、請求項15または16に記載の船舶。
【請求項18】
前記操船システムは、前記プロペラの非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、前記駆動可能状態から前記停止状態にする非常停止スイッチをさらに含み、
前記制御部は、前記非常停止スイッチにより前記停止状態になった場合には、前記入力装置に前記中立指令が入力されている状態で、前記スタートスイッチに対する操作が行われることにより、前記停止状態から前記駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている、請求項15~17のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項19】
前記操船システムは、前記停止状態から前記駆動可能状態になったことを通知する通知部をさらに含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の船舶。
【請求項20】
前記通知部は、前記停止状態にある場合には消灯するとともに、前記駆動可能状態にある場合には点灯するランプを有する、請求項19に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、操船システムおよび船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(いわゆるSDGs:Sustainable Development Goals)でもある気候変動や地球温暖化という課題への解決手段として、エンジンの電動化等による二酸化炭素の排出を削減する活動が進められている。例えば、従来、電動モータによりプロペラを駆動させる船舶推進装置を備える操船システムおよび船舶が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、電動モータによりプロペラを駆動させる電動船外機と、メインスイッチとを備える電動船外機システムが開示されている。この電動船外機システムには、電動船外機システムのメンテナンスを行う管理ユニットなどの外部機器が接続されている。この電動船外機システムでは、メインスイッチがオンされることにより、電動船外機システムおよび外部機器が起動されて、電動モータを駆動する準備が整えられる。すなわち、電動モータが駆動可能な状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の電動船外機システムでは、メインスイッチがオンされることにより電動モータを駆動する準備が整えられたとしても、電動モータからはエンジン音のような駆動音が発せられないため、電動モータが駆動可能状態にあるか否かについて、音を手掛かりにしてユーザは認識することができない。このため、従来より電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動できるようにすることが望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動させることが可能な操船システムおよび船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明の第1の局面による操船システムは、プロペラを駆動させる電動モータを含む船舶推進装置と、電動モータを停止させる中立指令、および、電動モータを駆動させる駆動指令を入力する入力装置と、電動モータが駆動しない停止状態から、電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にするための操作を受け付けるスタートスイッチと、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置に中立指令が入力されているとともに、停止状態にある場合において、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータによるプロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この第1の局面による操船システムでは、上記のように、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置に中立指令が入力されているとともに、停止状態にある場合において、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータによるプロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部を設ける。これによって、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態で、ユーザによるスタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にすることができる。このように、操船システムでは電動モータの駆動を可能にするためだけの専用の操作(スタートスイッチに対する操作)をユーザに要求することができる。その結果、電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動させることができる。
【0009】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、制御部は、停止状態で入力装置に駆動指令が入力されている場合において、スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、電動モータが駆動しない停止状態で入力装置に電動モータを駆動させる駆動指令が入力されている際に、スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、入力装置に駆動指令が既に入力されている状態であることから、スタートスイッチが操作されたとしても駆動可能状態に切り替えることなく停止状態を維持することにより、スタートスイッチが操作された直後に電動モータが駆動を開始することを防止することができる。すなわち、スタートスイッチの操作を電動モータを駆動させる最終のトリガーにするのではなく、入力装置の操作を電動モータを駆動させる最終のトリガーにすることができる。
【0010】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、電動モータに中立指令が送信されている状態を保持するための操作を受け付ける中立保持スイッチをさらに備え、制御部は、入力装置に中立指令が入力されているとともに、スタートスイッチが操作されて駆動可能状態になった状態で、中立保持スイッチに対する操作が行われた場合には、入力装置に対する入力に関わらず電動モータを駆動させない制御を行うように構成されている。このように構成すれば、中立保持スイッチにより、駆動可能状態にある場合であっても入力装置に対する入力に関わらず電動モータが駆動しない状態を保持することができる。
【0011】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、プロペラの非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、駆動可能状態から停止状態にする非常停止スイッチをさらに備え、制御部は、非常停止スイッチにより停止状態になった場合には、入力装置に中立指令が入力されている状態で、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、非常停止スイッチによる停止状態を、入力装置に駆動指令が入力されている際ではなく、入力装置に中立指令が入力されている際にスタートスイッチに対する操作により解除することができる。このため、非常停止スイッチによる停止状態が解除された際に、即座に電動モータが駆動することを防止することができる。
【0012】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、停止状態から駆動可能状態になったことを通知する通知部をさらに備える。このように構成すれば、通知部により、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザが容易に認識することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、通知部は、停止状態にある場合には消灯するとともに、駆動可能状態にある場合には点灯するランプを含む。このように構成すれば、ユーザは視覚的に停止状態から駆動可能状態になったことを認識することができる。このため、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザがより容易に認識することができる。
【0014】
上記通知部を備える構成において、好ましくは、通知部は、停止状態および駆動可能状態であることを表示するディスプレイを含む。このように構成すれば、ディスプレイにより、停止状態および駆動可能状態であるという情報をユーザがより確実に視覚的に認識することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、制御部は、停止状態で入力装置に駆動指令が入力されている場合において、スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成され、ディスプレイは、スタートスイッチに対する操作が行われて停止状態を維持する場合には、停止状態に関する所定の通知を表示するように構成されている。このように構成すれば、停止状態から駆動可能状態にする意図をもってスタートスイッチを操作したにも関わらず停止状態が維持されてしまった際に、ユーザに向けて、ディスプレイに停止状態に関する所定の通知を表示することができる。この所定の通知により、ユーザは、停止状態から駆動可能状態にするための適切な操作を行うことができる。
【0016】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、主電源のオンオフを切り替えるための操作を受け付けるパワースイッチと、スタートスイッチおよびパワースイッチの両方が設けられる操作パネルと、をさらに備える。このように構成すれば、パワースイッチおよびスタートスイッチが共通の操作パネルに設けられるので、主電源がオフの状態でプロペラの駆動させたい場合に、パワースイッチおよびスタートスイッチを容易に続けて操作することができる。すなわち、操船システムの操作性を向上させることができる。
【0017】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、スタートスイッチは、停止状態から駆動可能状態にするための操作を受け付けることに加えて、駆動可能状態から停止状態にするための操作も受け付けるように構成されている。このように構成すれば、スタートスイッチが、停止状態から駆動可能状態にするための操作(スタート操作)だけでなく、駆動可能状態から停止状態にするための操作(ストップ操作)も受け付けることができる。このため、これらの各操作に対して別個の専用スイッチを設ける場合と比較して装置構成を簡素化することができる。
【0018】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、スタートスイッチは、押圧により操作されるボタン式スイッチである。このように構成すれば、ボタン式スイッチのスタートスイッチにより、容易に停止状態から駆動可能状態にすることができる。
【0019】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、スタートスイッチの操作により停止状態から駆動可能状態になった場合には、入力装置への入力が中立指令から駆動指令に切り替えられることにより電動モータによるプロペラの駆動を開始するように構成されている。このように構成すれば、スタートスイッチを操作したユーザが、入力装置を操作してプロペラの駆動を開始することができる。すなわち、電動モータによりプロペラを駆動するという明確な意図をもったユーザが、入力装置を操作してプロペラの駆動を開始することができる。
【0020】
上記第1の局面による操船システムにおいて、好ましくは、入力装置は、レバー部を含み、レバー部の位置を、入力装置に中立指令を入力する中立入力位置から、レバー部を倒して入力装置に駆動指令を入力する駆動入力位置に切り替えることが可能なリモコンレバーであり、リモコンレバーは、レバー部の傾倒角度が大きくなる程、電動モータの回転数が大きくなるように構成されており、中立入力位置を含むレバー部の所定の傾倒角度範囲では電動モータの回転数を0で保持する不感帯を有する。このように構成すれば、不感帯により、電動モータを駆動させたとしてもプロペラの推力がほとんど得られないような小さな回転数で電動モータが駆動することを防止することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、リモコンレバーは、レバー部を中立入力位置で停止させて保持する中立ノッチと、不感帯と駆動入力位置に対応する感知領域との境界位置に設けられ、電動モータの回転数が所定の最小の駆動回転数となるようにレバー部を駆動入力位置で停止させて保持する駆動ノッチとを有する。このように構成すれば、中立ノッチにより、電動モータの回転数が0になるように、レバー部を中立入力位置で容易に保持することができる。また、駆動ノッチにより、電動モータの回転数がプロペラの推力が得られる最小の駆動回転数になるように、レバー部を駆動入力位置で容易に保持することができる。
【0022】
この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に搭載される操船システムとを備え、操船システムは、プロペラを駆動させる電動モータを含む船舶推進装置と、電動モータを停止させる中立指令、および、電動モータを駆動させる駆動指令を入力する入力装置と、電動モータが駆動しない停止状態から、電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にするための操作を受け付けるスタートスイッチと、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置に中立指令が入力されているとともに、停止状態にある場合において、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータによるプロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部と、を含む。
【0023】
この第2の局面による船舶では、上記のように、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置に中立指令が入力されているとともに、停止状態にある場合において、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータによるプロペラの駆動を可能にする制御を行う制御部を設ける。これによって、船体の搭載機器への電力供給を統括する主電源がオンの状態で、ユーザによるスタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から電動モータの駆動が可能となる駆動可能状態にすることができる。このように、操船システムでは電動モータの駆動を可能にするためだけの専用の操作(スタートスイッチに対する操作)をユーザに要求することができる。その結果、電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動させることが可能な船舶を提供することができる。
【0024】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、制御部は、停止状態で入力装置に駆動指令が入力されている場合において、スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、電動モータが駆動しない停止状態で入力装置に電動モータを駆動させる駆動指令が入力されている際に、スタートスイッチに対する操作が行われた場合には、入力装置に駆動指令が既に入力されている状態であることから、スタートスイッチが操作されたとしても駆動可能状態に切り替えることなく停止状態を維持することにより、スタートスイッチが操作された直後に電動モータが駆動を開始することを防止することができる。すなわち、スタートスイッチの操作を電動モータを駆動させる最終のトリガーにするのではなく、入力装置の操作を電動モータを駆動させる最終のトリガーにすることができる。
【0025】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操船システムは、電動モータに中立指令が送信されている状態を保持するための操作を受け付ける中立保持スイッチをさらに含み、制御部は、入力装置に中立指令が入力されているとともに、スタートスイッチが操作されて駆動可能状態になった状態で、中立保持スイッチに対する操作が行われた場合には、入力装置に対する入力に関わらず電動モータを駆動させない制御を行うように構成されている。このように構成すれば、中立保持スイッチにより、駆動可能状態にある場合であっても入力装置に対する入力に関わらず電動モータが駆動しない状態を保持することができる。
【0026】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操船システムは、プロペラの非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、駆動可能状態から停止状態にする非常停止スイッチをさらに含み、制御部は、非常停止スイッチにより停止状態になった場合には、入力装置に中立指令が入力されている状態で、スタートスイッチに対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、非常停止スイッチによる停止状態を、入力装置に駆動指令が入力されている際ではなく、入力装置に中立指令が入力されている際にスタートスイッチに対する操作により解除することができる。このため、非常停止スイッチによる停止状態が解除された際に、即座に電動モータが駆動することを防止することができる。
【0027】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、操船システムは、停止状態から駆動可能状態になったことを通知する通知部をさらに含む。このように構成すれば、通知部により、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザが容易に認識することができる。
【0028】
この場合、好ましくは、通知部は、停止状態にある場合には消灯するとともに、駆動可能状態にある場合には点灯するランプを有する。このように構成すれば、ユーザは視覚的に停止状態から駆動可能状態になったことを認識することができる。このため、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザがより容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上記のように、電動モータが駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータによりプロペラを駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態による操船システムを備える船舶を示した斜視図である。
【
図2】実施形態による操船システムのブロック図である。
【
図3】実施形態による操船システムの入力装置について説明するための図である。
【
図4】入力装置のレバー部の傾倒角度と電動モータの回転数との関係を示した図である。
【
図5】実施形態による操船システムのディスプレイに「停止状態(駆動可能状態)」と表示している状態を示した図である。
【
図6】実施形態による操船システムのディスプレイに「レバー部を中立入力位置にしてください」と表示している状態を示した図である。
【
図7】実施形態による制御部が実行するプロペラを駆動させるための制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
(船舶の全体構成)
図1~
図6を参照して、本実施形態による操船システム102を備える船舶100の構成について説明する。
図1のFWDは、船舶100の前進方向を示しており、BWDは、船舶100の後進方向を示している。
【0033】
図1に示すように、船舶100は、船体101と、船体101に搭載された操船システム102とを備えている。操船システム102は、船体101のトランサムに設置された電動式の船舶推進装置1を備えている。船舶100は、船舶推進装置1が船体101の外部に設置された船外機艇として構成されている。
【0034】
本実施形態の船舶100は、航行開始時において、パワースイッチ30を操作しただけでは、電動式の船舶推進装置1のプロペラ10を駆動させることができないように、プロペラ10の駆動源である電動モータ12(
図2参照)の駆動を制限するように構成されている。
【0035】
船舶100は、航行開始時において、パワースイッチ30が操作(押圧)された上で、スタートスイッチ31が操作(押圧)されることにより、電動モータ12によってプロペラ10を駆動させることが可能になる。すなわち、船舶100は、航行開始時において、パワースイッチ30が操作(押圧)された上で、スタートスイッチ31が操作(押圧)されることにより、電動モータ12が駆動しない停止状態から、電動モータ12の駆動が可能となる駆動可能状態になるように構成されている。駆動可能状態とは、電動モータ12の駆動させることにより、船舶100を前進または後進させることが可能となる状態である。
【0036】
パワースイッチ30は、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源のオンオフを切り替えるための操作を受け付けるように構成されている。搭載機器Dとは、電力駆動の機器であり、後述するディスプレイ41、入力装置2および船舶推進装置1などの各種機器が含まれる。パワースイッチ30が操作されて主電源がオンにされることにより、バッテリBから搭載機器Dへの電力供給が行われる。なお、バッテリBには、船舶推進装置1専用のバッテリや、ハウスバッテリなどの各種バッテリが含まれる。
【0037】
図2に示すように、操船システム102は、船舶推進装置1と、入力装置2と、パワースイッチ30およびスタートスイッチ31が設けられた操作パネル3と、通知部4と、中立保持スイッチ5と、非常停止スイッチ6と、制御部7とを備えている。なお、制御部7は、船舶推進装置1、入力装置2、操作パネル3、通知部4、中立保持スイッチ5および非常停止スイッチ6の各々と信号線により接続されている。
【0038】
(操船システムの「船舶推進装置」の構成)
電動式の船舶推進装置1は、プロペラ10が設けられるダクト11と、プロペラ10を駆動させる電動モータ12とを備えている。
【0039】
ダクト11は、船舶100の進行方向を変えるために、プロペラ10とともに左右方向に回動可能に構成されている。電動モータ12は、プロペラ10の回転数を自在に変更可能に構成されている。
【0040】
また、電動モータ12は、プロペラ10の回転方向を変更可能に構成されている。電動モータ12の正転時には船舶100の推進方向が前進になり、電動モータ12の逆転時には船舶100の推進方向が後進になる。
【0041】
詳細には、電動モータ12(プロペラ10)を正転駆動させる前進駆動指令E2が、入力装置2に入力された場合には、船舶100は前進する。電動モータ12(プロペラ10)を逆転駆動させる後進駆動指令E3が入力装置2に入力された場合には、船舶100は後進する。電動モータ12は、船舶推進装置1に設けられたモータコントローラ1aにより駆動が制御される。なお、前進駆動指令E2および後進駆動指令E3は、特許請求の範囲の「駆動指令」の一例である。
【0042】
(操船システムの「入力装置」の構成)
入力装置2は、電動モータ12を停止させる中立指令E1と、電動モータ12を正転駆動させる前進駆動指令E2と、電動モータ12を逆転駆動させる後進駆動指令E3とを入力可能に構成されている。入力装置2は、ユーザにより操作される。中立指令E1、前進駆動指令E2および後進駆動指令E3は、電気信号として入力装置2から制御部7に送信される。
【0043】
図3に示すように、入力装置2は、レバー部20と、レバー部20を傾倒可能に支持する入力装置本体21とを含んでいる。
【0044】
入力装置2は、レバー部20の位置を、入力装置2に中立指令E1を入力する中立入力位置P1から、前進駆動入力位置P2、または、後進駆動入力位置P3に切り替えることが可能なリモコンレバーである。なお、前進駆動入力位置P2および後進駆動入力位置P3は、特許請求の範囲の「駆動入力位置」の一例である。
【0045】
レバー部20の前進駆動入力位置P2とは、レバー部20を中立入力位置P1から前方(D1方向)に傾倒させて入力装置2に前進駆動指令E2を入力する際のレバー部20の位置である。レバー部20の後進駆動入力位置P3とは、レバー部20を中立入力位置P1から後方(D2方向)に傾倒させて入力装置2に後進駆動指令E3を入力する際のレバー部20の位置である。
【0046】
レバー部20の中立入力位置P1とは、レバー部20が鉛直方向に延びる位置である。すなわち、中立入力位置P1では、レバー部20の傾倒角度は0になる。また、レバー部20を前方(D1方向)に傾倒させた際のレバー部20の傾倒角度は正の値になり、レバー部20を後方(D2方向)に傾倒させた際のレバー部20の傾倒角度は負の値になるものとする。
【0047】
入力装置2は、前方または後方へのレバー部20の傾倒量(傾倒角度の絶対値)が大きくなる程、電動モータ12の回転数が大きくなるように構成されている。入力装置2は、中立入力位置P1を含むレバー部20の所定の傾倒角度範囲となる場合には電動モータ12の回転数を0で保持する不感帯A1を有する(
図4参照)。
【0048】
上記の「所定の傾倒角度範囲」とは、以下で説明する駆動ノッチN21に位置するレバー部20の傾倒角度θ20よりも大きく、駆動ノッチN20に位置するレバー部20の傾倒角度θ10よりも小さい角度範囲である(θ20<所定の傾倒角度範囲<θ10)。
【0049】
入力装置2は、レバー部20を中立入力位置P1で停止させて保持する中立ノッチN10を有している。
【0050】
また、入力装置2は、不感帯A1と前進駆動入力位置P2に対応する感知領域A2との境界位置に設けられた駆動ノッチN20を有している。駆動ノッチN20は、電動モータ12の回転数が所定の最小の駆動回転数となるようにレバー部20を前進駆動入力位置P2で停止させて保持するように構成されている。
【0051】
また、入力装置2は、不感帯A1と後進駆動入力位置P3に対応する感知領域A3との境界位置に設けられた駆動ノッチN21を有している。駆動ノッチN21は、電動モータ12の回転数が所定の最小の駆動回転数となるようにレバー部20を後進駆動入力位置P3で停止させて保持するように構成されている。
【0052】
一例ではあるが、「所定の最小の駆動回転数」とは、200rpmである(
図4参照)。入力装置2は、「所定の最小の駆動回転数」を変更可能に構成されていている。
【0053】
(操船システムの「パワースイッチおよびスタートスイッチが設けられた操作パネル」の構成)
図3に示すように、操作パネル3には、パワースイッチ30およびスタートスイッチ31の両方が隣接して設けられている。操作パネル3は、ユーザが視認しやすいようにユーザが着座する操船席Tの前方に配置されている。
【0054】
パワースイッチ30は、押圧により操作されるボタン式スイッチである。パワースイッチ30は、上記の通り、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源のオンオフを切り替えるための操作を受け付けるように構成されている。船舶100は、パワースイッチ30が押圧される毎に主電源のオンオフが交互に切り替わる。パワースイッチ30は、スタートスイッチ31の近傍に配置されている。
【0055】
パワースイッチ30には、ランプ30aが一体的に設けられている。すなわち、パワースイッチ30には、ユーザに押圧操作される位置にランプ30aが設けられている。ランプ30aは、パワースイッチ30が押圧されて主電源がオンになっている状態で点灯するように構成されている。ランプ30aは、パワースイッチ30が押圧されて主電源がオフになっている状態で消灯するように構成されている。一例ではあるが、ランプ30aは、LEDにより構成されている。
【0056】
スタートスイッチ31は、押圧により操作されるボタン式スイッチである。スタートスイッチ31は、パワースイッチ30が操作されて主電源がオンになることで操作が可能となる。スタートスイッチ31は、パワースイッチ30により主電源がオフにされている場合には操作を受け付けない。
【0057】
スタートスイッチ31は、電動モータ12が駆動しない停止状態から、電動モータ12の駆動が可能となる駆動可能状態にするための操作(スタート操作)を受け付けるように構成されている。また、スタートスイッチ31は、駆動可能状態から停止状態にするための操作(ストップ操作)も受け付けるように構成されている。船舶100は、スタートスイッチ31が押圧される毎に停止状態と駆動可能状態とが交互に切り替わる。
【0058】
操船システム102は、スタートスイッチ31の操作により停止状態から駆動可能状態になった場合には、入力装置2への入力が中立指令E1から、前進駆動指令E2または後進駆動指令E3に切り替えられることにより電動モータ12によるプロペラ10の駆動を開始するように構成されている。すなわち、スタートスイッチ31の操作ではなく、入力装置2の操作が、電動モータ12を駆動させる最終のトリガーになる。
【0059】
(操船システムの「通知部」の構成)
通知部4は、船舶100が停止状態から駆動可能状態になったことをユーザに通知するように構成されている。通知部4は、ランプ40とディスプレイ41とを含んでいる。
【0060】
ランプ40は、スタートスイッチ31に一体的に設けられている。すなわち、スタートスイッチ31には、ユーザに押圧操作される位置にランプ40が設けられている。ランプ40は、船舶100が停止状態にある場合には消灯するとともに、船舶100が駆動可能状態にある場合には点灯するように構成されている。一例ではあるが、ランプ40は、LEDにより構成されている(
図5参照)。
【0061】
ディスプレイ41は、船舶100が停止状態および駆動可能状態であることを表示するように構成されている。一例ではあるが、ディスプレイ41は、船舶100が停止状態および駆動可能状態にある場合に、それぞれ、「停止状態」および「駆動可能状態」という文字41aを表示するように構成されている。一例ではあるが、ディスプレイ41は、液晶パネルにより構成されている。
【0062】
ディスプレイ41は、スタートスイッチ31に対する操作が行われて停止状態を維持する場合には、停止状態に関する所定の通知41bを表示するように構成されている。スタートスイッチ31に対する操作が行われて停止状態を維持する場合とは、船舶100が停止状態で入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている際に、スタートスイッチ31に対する操作が行われた場合である。一例ではあるが、ディスプレイ41は、所定の通知41bとして、「レバー部を中立入力位置にしてください」など、ユーザに対して適切な操作を促す表示を行うように構成されている(
図6参照)。この他、ディスプレイは、所定の通知として、「停止状態を維持します」や「先程のスタートスイッチに対する操作は誤操作です」などの文字を表示するように構成されていてもよい。
【0063】
(操船システムの「中立保持スイッチ」の構成)
図1に示す中立保持スイッチ5は、電動モータ12に中立指令E1が送信されている状態(中立保持状態)を保持するためのユーザの操作を受け付けるように構成されている。中立保持スイッチ5に対する操作が行われた場合には、中立保持状態になり、入力装置2に対する操作に関わらず電動モータ12が駆動することはない。なお、中立保持状態で中立保持スイッチ5が再び操作されることにより、中立保持状態は解除される。
【0064】
すなわち、船舶100は、レバー部20を、中立入力位置P1から前進駆動入力位置P2(後進駆動入力位置P3)に切り替えられたとしても、電動モータ12に中立指令E1が送信されている状態(中立保持状態)が保持されて、電動モータ12が駆動することはない。
【0065】
中立保持スイッチ5は、押圧により操作されるボタン式スイッチである。船舶100は、中立保持スイッチ5が押圧される毎に中立保持状態と中立保持状態を解除した状態とが交互に切り替わる。一例ではあるが、中立保持スイッチ5は、入力装置2の入力装置本体21に設けられている。
【0066】
(操船システムの「非常停止スイッチ」の構成)
図1に示す非常停止スイッチ6は、プロペラ10の非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、駆動可能状態から停止状態にするように構成されている。一例ではあるが、ユーザ動作とは、ユーザの落水などにより、ユーザが船舶100を操船するエリアの外部に移動する動作である。
【0067】
非常停止スイッチ6は、一端がユーザの着用物を含むユーザの身体に接続されるランヤード部60と、ランヤード部60の他端に設けられるクリップ部61と、クリップ部61が着脱可能に取り付けられるスイッチ部62とを有している。
【0068】
スイッチ部62は、クリップ部61が取り付けられた状態でオフ状態に保持されている。スイッチ部62は、ユーザの落水などによりクリップ部61がスイッチ部62から取り外された場合には、オフ状態からオン状態に切り替わりプロペラ10を非常停止させる。なお、プロペラ10を非常停止した状態で、再びクリップ部61をスイッチ部62に取り付けただけでは、プロペラ10は駆動を開始することがない。
【0069】
(操船システムの「制御部」の構成)
図1および
図2に示す制御部7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を含む回路基板である。制御部7は、船体101に設けられている。
【0070】
制御部7は、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置2に中立指令E1が入力されているとともに、停止状態(停止モード)にある場合において、スタートスイッチ31に対する操作が行われることにより、停止状態(停止モード)から駆動可能状態(駆動可能モード)にして電動モータ12によるプロペラ10の駆動を可能にする制御を行うように構成されている。
【0071】
要するに、制御部7は、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源がオンの状態で、プロペラ10の駆動ができないようにプロペラ10の駆動を制限する状態と、プロペラ10の駆動を制限しない状態とを切り替える制御を行うように構成されている。
【0072】
また、制御部7は、停止状態で入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている場合において、スタートスイッチ31に対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成されている。この場合、ユーザがスタートスイッチ31を操作していることから、ユーザには停止状態から駆動可能状態にしたいという意図があると考えられる。このため、ディスプレイ41には、「レバー部を中立入力位置にしてください」などの所定の通知41bが表示される。これにより、ユーザは、停止状態から駆動可能状態にするための適切な操作を行うことが可能となる。
【0073】
また、制御部7は、入力装置2に中立指令E1が入力されているとともに、スタートスイッチ31が操作されて駆動可能状態になった状態で、中立保持スイッチ5に対する操作が行われた場合には、入力装置2に対する入力に関わらず電動モータ12を駆動させない制御を行うように構成されている。
【0074】
また、制御部7は、非常停止スイッチ6のクリップ部61がスイッチ部62から取り外されて非常停止スイッチ6により船舶100が停止状態になった場合には、クリップ部61がスイッチ部62に再び取り付けられた上で、入力装置2に中立指令E1入力されている状態で、スタートスイッチ31に対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている。すなわち、クリップ部61をスイッチ部62に再び取り付けることだけでは、電動モータ12は駆動しない。
【0075】
(プロペラを駆動させるための制御処理)
図7を参照して、制御部7により実行させるプロペラ10を駆動させるための制御処理のフローチャートについて説明する。制御部7により実行させるプロペラ10を駆動させるための制御処理は、パワースイッチ30が操作されて主電源がオンになることにより開始される。なお、パワースイッチ30が操作されて主電源がオンになった当初の時点では、船舶100は停止状態にある。
【0076】
まず、ステップS1において、入力装置2に中立指令E1が入力されている状態であるか否かが判断される。すなわち、入力装置2のレバー部20が中立入力位置P1(中立ノッチN10)にあるか否かが判断される。ステップS1において、入力装置2に中立指令E1が入力されている状態であると判断された場合には、ステップS2に進み、入力装置2に中立指令E1が入力されている状態であると判断されない場合には、ステップS1が繰り返される。すなわち、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている状態であるならば、ステップS1が繰り返される。
【0077】
次に、ステップS2において、スタートスイッチ31が押圧操作されたか否かが判断される。ステップS2において、スタートスイッチ31が押圧操作されたと判断された場合には、ステップS3に進み、スタートスイッチ31が押圧操作されたと判断されない場合には、ステップS1に戻る。
【0078】
次に、ステップS3において、船舶100が停止状態から駆動可能状態に切り替えられる。そして、ステップS4に進む。なお、停止状態から駆動可能状態に切り替えられた時点では電動モータ12の駆動は開始されない。
【0079】
次に、ステップS4において、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている状態であるか否かが判断される。ステップS4において、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている状態であると判断された場合には、ステップS5に進み、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている状態であると判断されない場合には、ステップS4が繰り返される。
【0080】
次に、ステップS5において、船舶推進装置1(モータコントローラ1a)に対して電動モータ12を駆動させる駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が送信されて、電動モータ12によりプロペラ10が駆動される。
【0081】
以上で制御部7により実行させるプロペラ10を駆動させるための制御処理が完了する。
【0082】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
本実施形態では、上記のように、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源がオンの状態にあり、入力装置2に中立指令E1が入力されているとともに、停止状態にある場合において、スタートスイッチ31に対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態にして電動モータ12によるプロペラ10の駆動を可能にする制御を行う制御部7を設ける。これによって、船体101の搭載機器Dへの電力供給を統括する主電源がオンの状態で、ユーザによるスタートスイッチ31に対する操作が行われることにより、停止状態から電動モータ12の駆動が可能となる駆動可能状態にすることができる。このように、操船システム102では電動モータ12の駆動を可能にするためだけの専用の操作(スタートスイッチ31に対する操作)をユーザに要求することができる。その結果、電動モータ12が駆動可能状態にあることをユーザが認識して、ユーザが明確な意図をもって電動モータ12によりプロペラ10を駆動させることができる。
【0084】
本実施形態では、上記のように、制御部7は、停止状態で入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている場合において、スタートスイッチ31に対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、電動モータ12が駆動しない停止状態で入力装置2に電動モータ12を駆動させる駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている際に、スタートスイッチ31に対する操作が行われた場合には、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が既に入力されている状態であることから、スタートスイッチ31が操作されたとしても駆動可能状態に切り替えることなく停止状態を維持することにより、スタートスイッチ31が操作された直後に電動モータ12が駆動を開始することを防止することができる。すなわち、スタートスイッチ31の操作を電動モータ12を駆動させる最終のトリガーにするのではなく、入力装置2の操作を電動モータ12を駆動させる最終のトリガーにすることができる。
【0085】
本実施形態では、上記のように、電動モータ12に中立指令E1が送信されている状態を保持するための操作を受け付ける中立保持スイッチ5をさらに備え、制御部7は、入力装置2に中立指令E1が入力されているとともに、スタートスイッチ31が操作されて駆動可能状態になった状態で、中立保持スイッチ5に対する操作が行われた場合には、入力装置2に対する入力に関わらず電動モータ12を駆動させない制御を行うように構成されている。これによって、中立保持スイッチ5により、駆動可能状態にある場合であっても入力装置2に対する入力に関わらず電動モータ12が駆動しない状態を保持することができる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、プロペラ10の非常停止が必要とされるユーザ動作を取得して、駆動可能状態から停止状態にする非常停止スイッチ6をさらに備え、制御部7は、非常停止スイッチ6により停止状態になった場合には、入力装置2に中立指令E1が入力されている状態で、スタートスイッチ31に対する操作が行われることにより、停止状態から駆動可能状態に復帰させる制御を行うように構成されている。これによって、非常停止スイッチ6による停止状態を、入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている際ではなく、入力装置2に中立指令E1が入力されている際にスタートスイッチ31に対する操作により解除することができる。このため、非常停止スイッチ6による停止状態が解除された際に、即座に電動モータ12が駆動することを防止することができる。
【0087】
本実施形態では、上記のように、停止状態から駆動可能状態になったことを通知する通知部4をさらに備える。これによって、通知部4により、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザが容易に認識することができる。
【0088】
本実施形態では、上記のように、通知部4は、停止状態にある場合には消灯するとともに、駆動可能状態にある場合には点灯するランプ40を含む。これによって、ユーザは視覚的に停止状態から駆動可能状態になったことを認識することができる。このため、停止状態から駆動可能状態になったことをユーザがより容易に認識することができる。
【0089】
本実施形態では、上記のように、通知部4は、停止状態および駆動可能状態であることを表示するディスプレイ41を含む。これによって、ディスプレイ41により、停止状態および駆動可能状態であるという情報をユーザがより確実に取得することができる。
【0090】
本実施形態では、上記のように、制御部7は、停止状態で入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)が入力されている場合において、スタートスイッチ31に対する操作が行われた場合には、停止状態を維持する制御を行うように構成され、ディスプレイ41は、スタートスイッチ31に対する操作が行われて停止状態を維持する場合には、停止状態に関する所定の通知41bを表示するように構成されている。これによって、停止状態から駆動可能状態にする意図をもってスタートスイッチ31を操作したにも関わらず停止状態が維持されてしまった際に、ユーザに向けて、ディスプレイ41に停止状態に関する所定の通知41bを表示することができる。この所定の通知41bにより、ユーザは、停止状態から駆動可能状態にするための適切な操作を行うことができる。
【0091】
本実施形態では、上記のように、主電源のオンオフを切り替えるための操作を受け付けるパワースイッチ30と、スタートスイッチ31およびパワースイッチ30の両方が設けられる操作パネル3と、をさらに備える。これによって、パワースイッチ30およびスタートスイッチ31が共通の操作パネル3に設けられるので、主電源がオフの状態でプロペラ10の駆動させたい場合に、パワースイッチ30およびスタートスイッチ31を容易に続けて操作することができる。すなわち、操船システム102の操作性を向上させることができる。
【0092】
本実施形態では、上記のように、スタートスイッチ31は、停止状態から駆動可能状態にするための操作を受け付けることに加えて、駆動可能状態から停止状態にするための操作も受け付けるように構成されている。これによって、スタートスイッチ31が、停止状態から駆動可能状態にするための操作(スタート操作)だけでなく、駆動可能状態から停止状態にするための操作(ストップ操作)も受け付けることができる。このため、これらの各操作に対して別個の専用スイッチを設ける場合と比較して装置構成を簡素化することができる。
【0093】
本実施形態では、上記のように、スタートスイッチ31は、押圧により操作されるボタン式スイッチである。これによって、ボタン式スイッチのスタートスイッチ31により、容易に停止状態から駆動可能状態にすることができる。
【0094】
本実施形態では、上記のように、スタートスイッチ31の操作により停止状態から駆動可能状態になった場合には、入力装置2への入力が中立指令E1から駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)に切り替えられることにより電動モータ12によるプロペラ10の駆動を開始するように構成されている。これによって、スタートスイッチ31を操作したユーザが、入力装置2を操作してプロペラ10の駆動を開始することができる。すなわち、電動モータ12によりプロペラ10を駆動するという明確な意図をもったユーザが、入力装置2を操作してプロペラ10の駆動を開始することができる。
【0095】
本実施形態では、上記のように、入力装置2は、レバー部20を含み、レバー部20の位置を、入力装置2に中立指令E1を入力する中立入力位置P1から、レバー部20を倒して入力装置2に駆動指令(前進駆動指令E2、後進駆動指令E3)を入力する駆動入力位置(前進駆動入力位置P2、後進駆動入力位置P3)に切り替えることが可能なリモコンレバーであり、リモコンレバーは、レバー部20の傾倒角度が大きくなる程、電動モータ12の回転数が大きくなるように構成されており、中立入力位置P1を含むレバー部20の所定の傾倒角度範囲では電動モータ12の回転数を0で保持する不感帯A1を有する。これによって、不感帯A1により、電動モータ12を駆動させたとしてもプロペラ10の推力がほとんど得られないような小さな回転数で電動モータ12が駆動することを防止することができる。
【0096】
本実施形態では、上記のように、リモコンレバー(入力装置2)は、レバー部20を中立入力位置P1で停止させて保持する中立ノッチN10と、不感帯A1と駆動入力位置(前進駆動入力位置P2、後進駆動入力位置P3)に対応する感知領域A2、A3との境界位置に設けられ、電動モータ12の回転数が所定の最小の駆動回転数となるようにレバー部20を駆動入力位置(前進駆動入力位置P2、後進駆動入力位置P3)で停止させて保持する駆動ノッチN20、N21とを有する。これによって、中立ノッチN10により、電動モータ12の回転数が0になるように、レバー部20を中立入力位置P1で容易に保持することができる。また、駆動ノッチN20、N21により、電動モータ12の回転数がプロペラ10の推力が得られる最小の駆動回転数になるように、レバー部20を駆動入力位置(前進駆動入力位置P2、後進駆動入力位置P3)で容易に保持することができる。
【0097】
[変形例]
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0098】
例えば、上記実施形態では、船舶を、船舶推進装置が船体の外部に設置された船外機艇として構成した例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、船舶を、船内外機艇や船内機艇として構成してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、スタートスイッチを、押圧により操作されるボタン式スイッチにより構成した例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、スタートスイッチを、レバー式スイッチなど、ボタン式スイッチとは異なる方式のスイッチにより構成してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、スタートスイッチにランプを一体的に設けた例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、スタートスイッチとランプとを別体で構成してもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、本発明の通知部が、ランプおよびディスプレイを含む例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、通知部が、音声を発する報知部などを含んでいてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、操船システムが中立保持スイッチを備える例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、操船システムが中立保持スイッチを備えていなくてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、船舶推進装置がプロペラの駆動源として電動モータのみを備える例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、船舶推進装置がプロペラの駆動源として電動モータだけでなく、エンジンを備えていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、パワースイッチおよびスタートスイッチを共通の操作パネルに設けた例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、パワースイッチおよびスタートスイッチを別々の操作パネルに設けてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、本発明の入力装置をリモコンレバーにより構成した例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、入力装置をジョイスティックや、複数の操作ボタンを有する操作パネルなど、リモコンレバーとは異なる装置により構成してもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、船体に船舶推進装置を1つだけ設けた例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、船体に船舶推進装置を複数設けてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、本発明の制御部を船体に設けた例を示したが、本発明ではこれに限られない。本発明では、制御部を船舶推進装置の内部に設けてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 船舶推進装置
2 入力装置
3 操作パネル
4 通知部
5 中立保持スイッチ
6 非常停止スイッチ
7 制御部
10 プロペラ
12 電動モータ
20 レバー部
30 パワースイッチ
31 スタートスイッチ
40 ランプ
41 ディスプレイ
41b (ディスプレイに表示される)所定の通知
100 船舶
101 船体
102 操船システム
A1 不感帯
A2、A3 感知領域
D 搭載機器
E1 中立指令
E2 前進駆動指令(駆動指令)
E3 後進駆動指令(駆動指令)
N10 中立ノッチ
N20、N21 駆動ノッチ
P1 中立入力位置
P2 前進駆動入力位置(駆動入力位置)
P3 後進駆動入力位置(駆動入力位置)