(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172632
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20221110BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B65D65/40
B65D77/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078623
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】油家 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】福井 宇内
(72)【発明者】
【氏名】溝添 孝陽
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA01A
3E067BA07A
3E067BB01A
3E067BB14A
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3E067FC01
3E067GA15
3E067GB03
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA43
3E086BB03
3E086CA11
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂することがなく、また、容器を傾けても貫通孔から炭酸飲料が漏れ出ることがない、炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルムを提供すること。
【解決手段】炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルム1であって、前記積層フィルム1は、外層3と、前記外層3の一方の面上に設けられたイージーピール層2と、を備え、前記積層フィルム1は、貫通孔4を有し、前記貫通孔4の1個当りの開口面積が、0.0023mm
2以上0.073mm
2以下であり、前記貫通孔4の数が300個/m
2以上5150個/m
2以下である、積層フィルム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルムであって、
前記積層フィルムは、外層と、前記外層の一方の面上に設けられたイージーピール層と、を備え、
前記積層フィルムは、貫通孔を有し、
前記貫通孔の1個当りの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である、積層フィルム。
【請求項2】
前記外層が、二軸延伸ポリプロピレンを含む、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記イージーピール層が、ポリエチレンを含む、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記貫通孔が1~5列設けられた、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記貫通孔が1列設けられ、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、1.5μm以上25.5μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記貫通孔が2列設けられ、前記2列のいずれにおいても、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、0.75μm以上12.75μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記貫通孔が5列設けられ、前記5列のいずれにおいても、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、0.3μm以上5.1μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭酸飲料用の容器用の蓋材としては、容器の耐圧性や密封性等の観点から、種々の改良がなされている。例えば、特許文献1には、ハイロードメルトフローレート(HMFR)、メルトフローレート(MFR)及び密度が特定されたポリエチレン系樹脂を用いた炭酸飲料用蓋材が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された蓋材で、炭酸飲料が入った容器を密封すると、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂する恐れがある。また、容器内の内圧を減少させるために、蓋材の密閉性を低くすると、容器を傾けたときに炭酸飲料が容器から漏れ出てしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂することがなく、また、容器を傾けても炭酸飲料が漏れ出ることがない、炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルムであって、
前記積層フィルムは、外層と、前記外層の一方の面上に設けられたイージーピール層と、を備え、前記積層フィルムは、貫通孔を有し、前記貫通孔の1個当りの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である、積層フィルム。
[2] 前記外層が、二軸延伸ポリプロピレンを含む、[1]に記載の積層フィルム。
[3] 前記イージーピール層が、ポリエチレンを含む、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4] 前記貫通孔が1~5列設けられた、[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[5] 前記貫通孔が1列設けられ、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、1.5μm以上25.5μm以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[6] 前記貫通孔が2列設けられ、前記2列のいずれにおいても、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、0.75μm以上12.75μm以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
[7] 前記貫通孔が5列設けられ、前記5列のいずれにおいても、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離が、0.3μm以上5.1μm以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂することがなく、容器を傾けても炭酸飲料が容器から漏れ出ることがない、炭酸飲料用容器の蓋材用の積層フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】蓋材付き炭酸飲料用容器の一実施形態を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<積層フィルム>>
本発明の積層フィルムは、外層と、前記外層の一方の面上に設けられたイージーピール層と、を備え、前記積層フィルムは、貫通孔を有し、前記貫通孔の1個当りの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である。
【0010】
本発明の積層フィルムは、外層と、前記外層の一方の面上に設けられたイージーピール層と、を備え、前記積層フィルムは、貫通孔を有し、前記貫通孔の1個当りの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下であるため、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂することがなく、また、容器を傾けても貫通孔から炭酸飲料が漏れ出ることがない。
【0011】
まず、本発明の積層フィルムの全体構成について説明する。
図1は、本発明の積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図であり、より具体的には、積層フィルムの貫通孔を有する部位での断面図である。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0012】
ここに示す積層フィルム1は、外層3と、外層3の一方の面2a上に設けられたイージーピール層2と、を備え、その一方の表面(本明細書においては、「第1面」と略記することがある)1aから、その他方の表面(本明細書においては、「第2面」と略記することがある)1bまで貫通する貫通孔4を有している。すなわち、貫通孔4は、外層3及びイージーピール層2において、これらの厚さ方向の全域に貫通して設けられている。積層フィルム1の第1面1aは、換言すると、外層3のイージーピール層2を備えている側とは反対側の表面(本明細書においては、「第1面」と略記することがある)3aである。積層フィルム1の第2面1bは、換言すると、イージーピール層2の外層3を備えている側とは反対側の表面(本明細書においては、「第2面」と略記することがある)2bである。
積層フィルム1おいて、貫通孔4は、外層3及びイージーピール層2を連続して貫いて、形成されている。
次に、本発明の積層フィルムとその構成要素について、詳細に説明する。
【0013】
<<外層>>
外層3は、二軸延伸されていることが好ましい。外層3が二軸延伸されていることにより、より安価な材料を使用することができ、また伸びの異方性を低減させることができる。
【0014】
外層3の構成材料は、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、および上記樹脂を形成するモノマーを含む共重合体樹脂等が挙げられる。
また、外層3の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0015】
外層3の構成材料は、1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0016】
外層3は、ポリプロピレンを含むことが好ましい。その場合、外層3における、外層3の全質量に対する、ポリプロピレンの含有量の割合は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。前記割合が、前記下限値以上であると、透明性を担保することができる。
【0017】
外層3は、二軸延伸ポリプロピレンを含むことが特に好ましい。このような外層3は、二軸延伸されていることによる効果と、ポリプロピレンを含んでいることによる効果が、共に得られる点で、特に好ましい。
外層3が二軸延伸ポリプロピレンを含む場合の、外層3における、外層3の全質量に対する、二軸延伸ポリプロピレンの含有量の割合は、先に説明した、外層3における、外層3の全質量に対する、ポリプロピレンの含有量の割合、と同じである。
【0018】
外層3は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。外層3が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0019】
なお、本明細書においては、外層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0020】
外層3の厚さは、特に限定されないが、5~200μmであることが好ましく、9~40μmであることがより好ましく、9~25μmであることが特に好ましい。外層3の厚さが前記下限値以上であることで、外層の強度がより向上する。また、外層3の厚さが前記上限値以下であることで、柔軟性を担保できる。
外層3が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい外層の厚さとなるようにするとよい。
【0021】
<イージーピール層>
本発明の積層フィルム1は、前記外層3の一方の面上にイージーピール層2を備える。ここで、外層3の「一方の面」とは、前記外層3が前記積層フィルム1の一方の面1aとなっている面とは反対側の面を指す。積層フィルム1がイージーピール層2を備えていることにより、イージーピール層2と炭酸飲料用容器の縁のシール領域とをシールすることができる。シール方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒートシール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。このように、イージーピール層2と炭酸飲料用容器とをシールすることにより、炭酸飲料用容器の蓋材とすることができる。
【0022】
イージーピール層の材料としては、特に限定されないが、接着機能を有し、炭酸飲料用容器の蓋材とした際に、その内容物(炭酸飲料)に悪影響(非吸着性等)を及ぼさないものであれば、従来からシール材として用いられる一般的な樹脂材料を適宜選択して用いることができる。このような材料としては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0023】
イージーピール層が含むポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体又は共重合体であり、エチレンから誘導された構成単位を有する。
前記ポリエチレン系樹脂は、プロピレンよりも融点が25℃以上低いものであることが好ましい。具体的には、例えば、直鎖状のポリエチレンとして密度dが0.940以上の高密度ポリエチレン(HDPE)、0.925以上の中密度ポリエチレン(MDPE)、α-オレフィンとの共重合ポリマーである直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度dが0.910以下の超低密度ポリエチレン(VLDPE);分岐状ポリエチレンとして低密度ポリエチレン(LDPE);エチレンと極性モノマーとのコポリマーである、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)、エチレン-メタクリル酸(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA);アイオノマー(ION);エラストマーであるエチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレンジエン三元共重合体(EPDM);塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。なお、本明細書において、IONとは、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体を、酸部分と金属イオンとの塩形成によってイオン橋かけ構造にしたものを指す。
【0024】
イージーピール層が含むポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体又は共重合体であり、プロピレンから誘導された構成単位を有する。
前記ポリプロピレン系樹脂は、としては、JIS K7121に定める示差走査熱量測定(DSC)の試験方法により測定された融点が155℃以上、好ましくは160℃以上であるポリプロピレンが好ましい。かかる樹脂としては、プロピレンの単独重合体、所謂、ホモポリプロピレンが好ましい。融点が上記範囲であれば、耐熱性が不足することがない。また、ポリエチレンとの接着、融着性の阻害作用が十分となり、隣接する外層3との間で適切な剥離強度が得られる。
【0025】
イージーピール層における、イージーピール層の全質量に対する、シール材として用いられる前記樹脂材料の含有量の割合は、5~40質量%の範囲とすることが好ましく、10~30質量%の範囲とすることがより好ましい。前記樹脂材料の前記割合が上記範囲内であれば、適正なシール強度及び密封強度が得られ、透明性も担保される。なお、前記樹脂材料は、その融点が上記の範囲であれば、2種以上を併用してもよい。また、イージーピール層には、上記以外の樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合してもよい。
【0026】
なお、イージーピール層は、上述したポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂の他に、防曇剤(例えば、PE系防曇マスターバッチ)等の他の成分を含有してもよい。
【0027】
イージーピール層の厚さは、特に限定されるものではないが、1~50μmの範囲が好ましく、2~30μmの範囲がより好ましい。イージーピール層の厚さが上記範囲内であると、好ましい密封性および開封性が得られる。
【0028】
前記積層フィルムの厚さは、用いる炭酸飲料用容器に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、紙製の炭酸飲料用容器の蓋材として用いる場合には、積層フィルムの厚さは、9~300μmであることが好ましく、9~150μmであることがより好ましく、30~100μmであることが特に好ましく、例えば、30~40μm等であってもよい。
積層フィルムが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい積層フィルムの厚さとなるようにするとよい。
【0029】
本発明の積層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記外層と、前記イージーピール層と、のいずれにも該当しないその他の層をさらに備えていてもよい。前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。本発明の積層フィルムが前記その他の層を備えている場合、貫通孔は、前記その他の層においても、その厚さ方向の全域に貫通して設けられ、前記貫通孔は外層及びイージーピール層から連続して一体的に設けられていることが好ましい。
【0030】
本発明の積層フィルムは、上述のような積層構造を有するのに加え、貫通孔を有し、前記貫通孔の1個当りの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である。
【0031】
前記外層又はイージーピール層の表面における前記貫通孔の開口部の形状、及び前記貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部の形状は、特に限定されず、例えば、円形状;楕円形状;三角形状、四角形状等の多角形状;円形、楕円形及び多角形からなる群より選択される2種以上の形が組み合わされた形状等、いずれであってもよい。ただし、貫通孔の形成が容易である点から、前記形状は、円形状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「貫通孔の開口部」とは、特に断りのない限り、上述の積層フィルムの表面における貫通孔の開口部と、貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部と、の両方を意味するものとする。
【0032】
貫通孔の前記開口部の形状が、円形状以外である場合、貫通孔の直径は、前記開口部の異なる2点間を結ぶ線分の長さのうち、最大の長さ(最大径)を意味するものとする。
【0033】
前記貫通孔の1個当りの開口面積は、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、0.0050mm2以上0.060mm2以下であることが好ましく、0.010mm2以上0.050mm2以下であることがより好ましく、0.015mm2以上0.040mm2以下であることが特に好ましい。例えば、0.0024mm2以上0.073mm2以下、0.0024mm2以上0.060mm2以下、0.0024mm2以上0.050mm2以下、0.0024mm2以上0.040mm2以下、0.0024mm2以上0.030mm2、0.0024mm2以上0.025mm2以下、0.010mm2以上0.073mm2以下、0.010mm2以上0.060mm2以下、0.010mm2以上0.050mm2以下、0.010mm2以上0.040mm2以下、0.010mm2以上0.030mm2以下、0.010mm2以上0.025mm2以下であってもよい。貫通孔の1個当りの開口面積が、前記下限値以上であることで、積層フィルムを用いて炭酸飲料用容器の蓋材を作製し、炭酸飲料用容器に炭酸飲料を入れて、作製された蓋材を用いて炭酸飲料が入った炭酸飲料用容器を密封し、蓋材付きの炭酸飲料用容器を作製したとき、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で前記蓋材付きの炭酸飲料用容器が破裂することがないようにすることができる。さらに、貫通孔の1個当たりの開口面積が、前記上限値以下であることで、前記蓋材付きの炭酸飲料用容器を傾けても、貫通孔から内部の炭酸飲料が前記蓋材付きの炭酸飲料用容器から漏れ出ることがないようにすることができる。
【0034】
積層フィルムが有する前記貫通孔の数、例えば、積層フィルムの単位面積(1m2)あたりの貫通孔の数は、積層フィルム1枚あたりの貫通孔の数と、のいずれか一方又は両方を調節することで、調節できる。
【0035】
積層フィルムの単位面積当たりの貫通孔の数は、300個/m2以上5150個/m2以下であり、350個/m2以上5100個/m2であることが好ましく、400個/m2以上5100個/m2以下であることがより好ましく、450個/m2以上5100個/m2以下であることがさらに好ましく、500個/m2以上5100個/m2以下であることが特に好ましい。例えば、300個/m2以上5000個/m2以下、300個/m2以上4000個/m2以下、300個/m2以上3000個/m2以下、300個/m2以上2000個/m2以下、300個/m2以上1000個/m2以下、310個/m2以上5128個/m2以下、310個/m2以上5000個/m2以下、310個/m2以上4000個/m2以下、310個/m2以上3000個/m2以下、310個/m2以上2000個/m2以下、310個/m2以上1000個/m2以下であってもよい。積層フィルムの単位面積当たりの貫通孔の数が、前記下限値以上であることで、積層フィルムを用いて炭酸飲料用容器の蓋材を作製し、炭酸飲料用容器に炭酸飲料を入れて、作製された蓋材を用いて炭酸飲料用容器を密封し、蓋材付きの炭酸飲料用容器を作製したとき、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で前記蓋材付きの炭酸飲料用容器が破裂することがないようにすることができる。さらに、積層フィルムの単位面積当たりの貫通孔の数が、前記上限値以下であることで、前記蓋材付きの炭酸飲料用容器を傾けても、貫通孔から内部の炭酸飲料が容器から漏れ出ることがないようにすることができる。
【0036】
積層フィルムにおける貫通孔の位置は、特に限定されないが、後述する炭酸飲料用容器に蓋材をシールする際の、前記容器とのシール領域以外の領域であることが好ましい。このようにすることで、積層フィルムにおける貫通孔を、積層フィルムを炭酸飲料用容器にシールした際においてもすべて有効に機能させることができる。
【0037】
積層フィルムを炭酸飲料用容器の蓋材として用いた際に、前記貫通孔は、複数個が直線状に並んで列を構成してもよい。列の数は、特に制限はないが、1~5列が好ましく、1~2列がより好ましい。本明細書においては、2個以上の貫通孔が直線状に並んで構成され、その貫通孔の数が最大である貫通孔の群を一列として数え、次に、この列を構成しているものを除いた2個以上の貫通孔が直線状に並んで構成され、その貫通孔の数が最大である貫通孔の群を一列として数え、これを繰り返すことで数えることができる貫通孔の群の数を、貫通孔の列の数とする。ただし、列を数えるいずれの場合も、貫通孔の数が最大である貫通孔の群が複数存在する場合には、それらの群のうちの任意の一群を、一列として数え、残りの群についてもこれを繰り返すものとする。
【0038】
例えば、蓋材に貫通孔が1列設けられた場合は、隣り合う前記貫通孔の中心間の距離(以下、「ピッチ」と称することがある)は、1.5μm以上25.5μm以下であることが好ましく、2.0μm以上20.0μm以下であることがより好ましく、2.5μm以上20.0μm以下であることがさらに好ましく、3.0μm以上20.0μm以下であることが特に好ましい。例えば、1.5μm以上19.0μm以下であってもよく、1.5μm以上19.0μm以下であってもよく、1.5μm以上18.0μm以下であってもよく、1.5μm以上17.0μm以下であってもよく、1.5μm以上16.0μm以下であってもよく、1.5μm以上15.0μm以下であってもよい。
【0039】
また、蓋材に貫通孔が2列設けられた場合は、ピッチは、0.75μm以上12.75μm以下であることが好ましく、0.8μm以上12.0μm以下であることがより好ましく、0.9μm以上12.0μm以下であることがさらに好ましく、1.0μm以上12.0μm以下であることが特に好ましい。例えば、0.8μm以上11.0μm以下であってもよく、0.8μm以上10.0μm以下であってもよく、0.8μm以上9.0μm以下であってもよく、0.8μm以上8.0μm以下であってもよく、0.8μm以上7.0μm以下であってもよく、0.8μm以上6.0μm以下であってもよい。
【0040】
また、蓋材に貫通孔が5列設けられた場合は、ピッチは、0.3μm以上5.1μm以下であることが好ましく、0.4μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましく、0.6μm以上5.0μm以下であることが特に好ましい。例えば、0.3μm以上4.5μm以下であってもよく、0.3μm以上4.0μm以下であってもよく、0.3μm以上3.5μm以下であってもよく、0.3μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0041】
貫通孔の列の数が上記のいずれの場合であっても、前記ピッチが、前記下限値以上であることで、積層フィルムを用いて炭酸飲料用容器の蓋材を作製し、炭酸飲料用容器に炭酸飲料を入れて、作製された蓋材を用いて炭酸飲料用容器を密封し、蓋材付きの炭酸飲料用容器を作製したとき、前記蓋材付きの炭酸飲料用容器を傾けても、貫通孔から内部の炭酸飲料が漏れ出ることがないようにすることができる。前記ピッチが、前記上限値以下であることで、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で前記蓋材付きの炭酸飲料用容器が破裂することがないようにすることができる。
【0042】
開口部の形状により、開口部の中心を選定できない場合には、代わりに開口部の重心を選定して、上記の中心間の距離に代えて、重心間の距離をピッチとすればよい。
【0043】
積層フィルムを用いて炭酸飲料用容器の蓋材を作製し、炭酸飲料用容器に炭酸飲料を入れて、作製された蓋材を用いて前記炭酸飲料用容器を密封して、蓋材付きの炭酸飲料用容器を作製し、蓋材付きの炭酸飲料容器内の炭酸ガスの内圧を0.7kg/cm2としたとき、常温で1時間静置した後の蓋材付きの炭酸飲料用容器内の炭酸ガスの濃度が25%以上95%以下となることが好ましい。前記炭酸ガス濃度が、25%以上95%以下であると、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で前記蓋材付きの炭酸飲料用容器が破裂することなく、また、貫通孔から炭酸ガスが抜けていないことになり、さらに、貫通孔から炭酸飲料が漏れ出ることがない。前記下限値未満であると、貫通孔から炭酸ガスが抜けたことになり、また、容器を傾けたときに、貫通孔から内部の炭酸飲料が漏れ出る恐れがある。前記炭酸ガス濃度が、前記上限値超であると、炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で前記蓋材付きの炭酸飲料用容器が破裂する恐れがある。
【0044】
蓋材付きの炭酸飲料用容器内の炭酸ガス濃度は、例えば、前記貫通孔の1個当たりの開口面積、又は前記貫通孔の数を調節することにより、調節できる。
【0045】
炭酸飲料用容器内の炭酸ガス濃度は、Dansensor社製、CheckPointIIを用いて、炭酸飲料の液面と蓋材との間のデッドスペースの酸素濃度/炭酸ガス濃度を測定することにより測定できる。
【0046】
<<積層フィルムの製造方法>>
本実施形態の積層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
【0047】
また、本発明の積層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、積層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、積層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
例えば、外層のいずれか一方の表面(片面)にイージーピール層の材料となる樹脂又は樹脂組成物等を塗工し、必要に応じ乾燥させて、積層フィルムを形成することで、外層と、外層の一方の面上にイージーピール層が設けられた積層フィルムを製造することができる。
【0048】
次いで、前記積層フィルムに対して、目的とする箇所に目的とする数だけ、前記貫通孔を形成する。
貫通孔は、前記積層フィルムに対して、針を突き刺す方法、レーザーを照射する方法等、公知の方法で形成できる。
【0049】
以上により、前記積層フィルムが得られるが、さらに前記その他の層を備えてなる積層フィルムを製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行うか、又はあらかじめ形成済みの前記その他の層の貼り合わせを追加して行えばよい。この場合、前記積層フィルムとして、前記その他の層を備えたものを形成し、これに対して、貫通孔を形成すればよい。
【0050】
<<蓋材の製造方法>>
蓋材は、積層フィルムを容器の開口部の大きさに合わせてカットすることにより製造することができる。
【0051】
<<炭酸飲料用容器>>
本発明の積層フィルムは、炭酸飲料用容器の蓋材として用いることができる。蓋材のシール(装着)対象である炭酸飲料用容器としては、例えば、炭酸飲料を入れる収容空間を有し、縁に、蓋材をシールするためのシール領域を設けたものが挙げられる。前記容器を構成する基材は、炭酸飲料を収容し、蓋材をシールするのに適した基材であれば、いかなる基材であってもよく、ポリエチレン等の樹脂の層を有する基材が好ましい。このような基材は、例えば、ポリエチレン製基材であってもよいし、紙にポリエチレン等の樹脂をラミネートした基材であってもよい。紙に樹脂をラミネートした基材を用いる場合は、炭酸飲料と接する面、及び蓋材と接する面が、樹脂層となるように成形する。炭酸飲料用容器と、蓋材として用いる積層フィルムとのシール強度は、0.525(N/15mm)であることが好ましく、0.7~15(N/15mm)であることがより好ましく、1~8(N/15mm)であることが特に好ましい。上述したシール強度が、上記好ましい範囲の下限値以上であると、良好な密封性が得られ、上限値以下であると、良好な開封性(剥離時の糸引きやデラミネーションの抑制等)が得られる。
【0052】
<<蓋材付き炭酸飲料用容器>>
前記炭酸飲料用容器に、炭酸飲料を充填し、上述の本発明の積層フィルムを蓋材として用いることにより、蓋材付き炭酸飲料用容器を製造することができる。前記炭酸飲料用容器に炭酸飲料を入れた後、前記炭酸飲料用容器の縁の樹脂層と、本発明の積層フィルムで形成された前記蓋材のイージーピール層とを、シールすることにより、蓋材付き炭酸飲料用容器が得られる。シール方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒートシール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。
【0053】
図2は、蓋材付き炭酸飲料用容器の一実施形態を模式的に示す拡大断面図である。
ここに示す蓋材付き炭酸飲料用容器10は、
図1に示す積層フィルム1を蓋材として用い、紙層6に樹脂層5をラミネートした基材を成形して得られた炭酸飲料用容器を用いて形成されたものである。蓋材付き炭酸飲料用容器10は、積層フィルム1のイージーピール層2が、炭酸飲料用容器の樹脂層5にシールされ、炭酸飲料用容器の樹脂層5が、炭酸飲料及び蓋材に接するように配置されて、概略構成されている。
蓋材付き炭酸飲料用容器10の収容空間Sには、目的とする炭酸飲料(図示略)が収容される。
【実施例0054】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
<積層フィルムの製造>
[実施例1]
以下に示す手順により、
図2に示す構成の積層フィルムを製造した。
【0056】
(積層フィルムの製造)
二軸延伸ポリプロピレン(AF-642、フタムラ化学社製、以下、「OPP」と略記する)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、イージーピール層を構成する樹脂として、ポリオレフィン樹脂(ジャパンコーティングレジン株式会社製「商品名アクアテックスEC3500」を塗工し、80℃で乾燥させることで、積層体を作製した。
【0057】
次に、この積層体の、二軸延伸ポリプロピレンの流れ方向(MD方向)に、レーザー光にて貫通孔を形成して、積層フィルムを得た。
貫通孔の1個当りの開口面積(mm2)、貫通孔の数(個/m2)を、表1に示した通りに変えて、複数の積層フィルムを製造した。
【0058】
[試験例1]
上記で得られた積層フィルムを用いて、下記方法で炭酸飲料用容器の蓋を作製した。
紙にポリエチレンをラミネートした基材を用いて、ポリエチレンが容器の内側になるようにして、直径8.0cm、深さ10cmの容器を作製した。次に、この容器に炭酸飲料を入れた後、容器上部の縁のシール領域と、上記蓋材のイージーピール層とをヒートシールし、容器の開口部の大きさに合わせて、積層フィルムをカットし、蓋材付きの炭酸飲料用容器を作製した。得られた蓋材付きの炭酸飲料用容器について、下記方法で蓋材付きの炭酸飲料用容器内の炭酸ガス濃度を測定した。
【0059】
(蓋材付きの炭酸飲料用容器内の酸素濃度と炭酸ガス濃度の測定)
容器内の炭酸ガスの内圧を0.7kg/cm2とし、常温で1時間静置した蓋材付きの炭酸飲料用容器について、Dansensor社製、CheckPointIIを用いて、容器内の炭酸飲料の液面と蓋材との間のデッドスペースの酸素と炭酸ガスの濃度を測定した。
【0060】
【0061】
表1に示したように、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である、積層フィルムは、容器内の炭酸ガス濃度が25%以上95%以下となり、容器内の炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂することなく、また、貫通孔から炭酸飲料が漏れ出ることもなかった。
それに対して、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2未満である容器は、積層フィルムの単位面積当たりの開口数がいずれの場合であっても、炭酸ガス濃度が95%以上となり、容器が破裂した。また、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0073mm2を超える容器は、積層フィルムの単位面積当たりの開口数がいずれの場合であっても、炭酸ガス濃度が25%以下となり、容器を傾けると、炭酸飲料が貫通孔から漏れ出た。
【0062】
貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であっても、積層フィルムの貫通孔の数が、300個/m2未満である容器は、炭酸ガス濃度が95%以上となり、容器内の炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂した。また、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であっても、積層フィルムの貫通孔の数が、5150個/mm2を超える容器は炭酸ガス濃度が25%以下となり、貫通孔から炭酸飲料が漏れ出た。
また、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2未満である容器は、積層フィルムの貫通孔の数がいずれの場合であっても、容器内の炭酸ガス濃度が95%以上となり、容器内の炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器が破裂した。また、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0073mm2を超える容器は、積層フィルムの貫通孔の数がいずれの場合であっても、炭酸ガス濃度が25%以下となり、容器を傾けると、炭酸飲料が貫通孔から漏れ出た。
【0063】
以上の結果から、貫通孔の1個当たりの開口面積が、0.0023mm2以上0.073mm2以下であり、前記貫通孔の数が300個/m2以上5150個/m2以下である、積層フィルムは、炭酸飲料用容器の蓋材として使用した際に、容器内の炭酸飲料から出る炭酸ガスの内圧で容器することがなく、また、容器を傾けても貫通孔から炭酸飲料が漏れ出ることがなく、炭酸飲料用蓋材として優れていた。