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特開2022-172638ロボット用走行台車位置決定装置、該方法および該プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172638
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ロボット用走行台車位置決定装置、該方法および該プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20221110BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078630
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正俊
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB12
3C269AB33
3C269BB14
3C269CC02
3C269CC09
3C269CC11
3C269EF02
3C269QC01
3C269QC03
3C269QD02
3C269SA17
3C269SA21
3C269SA30
3C707AS11
3C707BS12
3C707BS28
3C707CT03
3C707CT04
3C707DS01
3C707JS02
3C707LS08
3C707LS15
3C707LV01
3C707MS08
3C707NS03
(57)【要約】
【課題】本発明は、効率よくロボット用走行台車の位置を決定できるロボット用走行台車位置決定装置、該方法および該プログラムを提供する。
【解決手段】本発明のロボット用走行台車位置決定装置Dは、先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定する装置であって、所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部21と、所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部12と、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部13とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定するロボット用走行台車位置決定装置であって、
所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部と、
所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部と、
前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部とを備える、
ロボット用走行台車位置決定装置。
【請求項2】
前記進入方向処理部は、前記手首回転中心点を含む平面内において、前記手首回転中心点を中心点とした円の周方向に探索することによって、前記アーム進入方向を求める、
請求項1に記載のロボット用走行台車位置決定装置。
【請求項3】
前記作業位置は、時系列に並ぶ複数であり、
前記進入方向処理部は、前記複数の作業位置それぞれについて、前記時系列の順に前記アーム進入方向を求め、
前記位置処理部は、前記進入方向処理部で求めた複数のアーム進入方向それぞれについて、前記ロボット用走行台車の位置を求め、
前記進入方向処理部は、前記時系列の順で前回のアーム進入方向に最も近くなるように今回のアーム進入方向を求める、
請求項1または請求項2に記載のロボット用走行台車位置決定装置。
【請求項4】
前記位置処理部は、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向を含み、かつ、前記ロボットの動作基点であるロボット原点が前記アーム進入方向上に位置する探索平面を設定し、ロボット原点が前記探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれに合致するように前記ロボット用走行台車の位置を設定して、そのロボット用走行台車の位置における各格子点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のロボット用走行台車位置決定装置。
【請求項5】
先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定するロボット用走行台車位置決定方法であって、
所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を設定する干渉範囲設定工程と、
所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理工程と、
前記進入方向処理工程で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理工程とを備える、
ロボット用走行台車位置決定方法。
【請求項6】
先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定するロボット用走行台車位置決定プログラムであって、
コンピュータを、
所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部、
所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部、
前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部、
として機能させるためのロボット用走行台車位置決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定するロボット用走行台車位置決定装置、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに対し所定の作業を実施するロボットは、その開発の発展により、様々な産業分野で多用されている。ロボットは、アームの動作範囲より広い範囲をカバーするために、前記ロボット自体の位置を移動するための走行台車(スライダ)に搭載されることがある。ロボットは、動作目的に応じて予め教示された動作の動作データ(動作プログラム、教示データ、教示プログラム)に従って動作するが、前記ロボットが走行台車に搭載される場合では、走行台車の動作も決定し、前記動作データに含める必要がある。このような走行台車の動作を含む動作データに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されたオフライン教示データの作成方法は、ロボットの据付ベースを移動させるスライダを動作させながらワークに対して連続した作業を行なうロボットシステムのオフライン教示データの作成方法であって、前記ワークでの作業位置を設定する初期設定ステップと、前記ロボットの動作基点であるロボット原点を通る探索平面を設定し、該探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれが前記ワーク上の作業位置に合致するように前記スライダの位置を設定して、そのスライダの位置における各格子点の評価値を算出する評価値算出ステップと、前記評価値に基づいて前記スライダの位置を決定し、決定されたスライダの位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する決定ステップと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-46753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行台車の動作中に、走行台車やロボットが他の物に干渉(接触)しないように、走行台車の動作を決める必要がある。前記特許文献1では、前記評価値は、溶接ロボットの姿勢における干渉またはニアミスの程度、スライダが動作範囲であるか否か等を含む評価関数によって求められるが(例えばその[0025]段落)、ある探索平面の全ての格子点を溶接点としても、逆変換できないまたは評価値が低い等によりスライダの適切な位置が決定できなかった場合には、スライダの位置を決定する処理を前記探索平面を変えて始めからやり直すため(例えばその[0028]段落、[0033]段落)、前記特許文献1には、走行台車の位置を決定する作業(情報処理)の効率を上げる余地がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、効率よくロボット用走行台車の位置を決定できるロボット用走行台車位置決定装置、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるロボット用走行台車位置決定装置は、先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定する装置であって、所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部と、所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部と、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部とを備える。
【0008】
このようなロボット用走行台車位置決定装置は、ロボット用走行台車の位置を求める前に、ロボットのアームの方向を、干渉範囲と重ならないように、求めるので、ロボット用走行台車の位置を求める処理を始めからやり直すケースを無くせるから、効率よくロボット用走行台車の位置を決定できる。
【0009】
他の一態様では、上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記進入方向処理部は、前記手首回転中心点を含む平面内において、前記手首回転中心点を中心点とした円の周方向に探索することによって、前記アーム進入方向を求める。好ましくは、上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記進入方向処理部は、前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、かつ、所定の基準位置に最も近くなるように、アーム進入方向を求める。好ましくは、前記基準位置は、前記ワークの正面位置である。
【0010】
このようなロボット用走行台車位置決定装置は、手首回転中心点を含む平面内において、前記手首回転中心点を中心点とした円の周方向に探索するので、比較的簡単な処理で、アーム進入方向を探索できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記作業位置は、時系列に並ぶ複数であり、前記進入方向処理部は、前記複数の作業位置それぞれについて、前記時系列の順に前記アーム進入方向を求め、前記位置処理部は、前記進入方向処理部で求めた複数のアーム進入方向それぞれについて、前記ロボット用走行台車の位置を求め、前記進入方向処理部は、前記時系列の順で前回のアーム進入方向に最も近くなるように今回のアーム進入方向を求める。
【0012】
このようなロボット用走行台車位置決定装置は、時系列の順で前回のアーム進入方向に最も近くなるように今回のアーム進入方向を求めるので、時系列に並ぶ複数の作業位置それぞれについて、ロボットを円滑に移動できるように、ロボット用走行台車の位置を求めることができる。
【0013】
他の一態様では、これら上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記位置処理部は、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向を含み、かつ、前記ロボットの動作基点であるロボット原点が前記アーム進入方向上に位置する探索平面を設定し、ロボット原点が前記探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれに合致するように前記ロボット用走行台車の位置を設定して、そのロボット用走行台車の位置における各格子点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める。好ましくは、上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記位置処理部は、さらに、前記ロボット用走行台車の位置を前記ロボットのオフライン教示データとして採用する。好ましくは、上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記評価値は、前記ロボットの特異姿勢からの余裕度、各軸の動作範囲境界からの余裕度、前記ロボットの姿勢における干渉やニアミスの程度、ロボット用走行台車の各軸の動作範囲境界からの余裕度や前回位置からの移動量、のいずれかを含む評価関数によって求められる。好ましくは、上述のロボット用走行台車位置決定装置において、前記ロボットは、第1関節を備える第1リンクと、第2関節を介して前記第1リンクに接続される第2リンクと、第4および第5関節を備え、第3関節を介して前記第2リンクに接続される第3リンクと、第6関節を介して前記第3リンクに接続されるエンドエフェクターとを備え、前記ツールは、前記エンドエフェクターに備えられ、前記位置処理部は、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向を含む探索平面内において、ロボット原点が、前記第3関節の位値を中心点とする円の周方向に設定された複数個の点のそれぞれに合致するように前記ロボット用走行台車の位置を設定して、そのロボット用走行台車の位置における各点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める。
【0014】
このようなロボット用走行台車位置決定装置は、ロボット用走行台車の最適な位置を自動的かつ効率的に求めることができる。
【0015】
本発明の一態様にかかるロボット用走行台車位置決定方法は、先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定する方法であって、所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を設定する干渉範囲設定工程と、所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理工程と、前記進入方向処理工程で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理工程とを備える。
【0016】
本発明の一態様にかかるロボット用走行台車位置決定プログラムは、先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車の位置を決定するプログラムであって、コンピュータを、所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部、所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部、として機能させるためのプログラムである。
【0017】
このようなロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、ロボット用走行台車の位置を求める前に、ロボットのアームの方向を、干渉範囲と重ならないように、求めるので、ロボット用走行台車の位置を求める処理を始めからやり直すケースを無くせるから、効率よく走行台車の位置を決定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるロボット用走行台車位置決定装置、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、効率よく走行台車の位置を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置を備える溶接システムの概略構成を説明するための図である。
図2】ワークの一例を示す図である。
図3】前記ロボット用走行台車位置決定装置の構成を示すブロック図である。
図4】ツールの一例である溶接トーチの位置および姿勢の決定処理を説明するための図である。
図5】アーム進入可能方向の探索処理を説明するための図である。
図6】アーム進入方向の決定処理を説明するための図である。
図7】探索平面と探索平面上の格子点とを説明するための図である。
図8】前記ロボット用走行台車位置決定装置の動作を示すフローチャートである。
図9】探索平面内において、ロボットの第3関節の位置を中心点とする円の周方向でロボット原点を探索する場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0021】
実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置は、先端に備えられたツールでワークに対し所定の作業を実施するロボットを搭載して移動するロボット用走行台車(以下、適宜「走行台車」と略記する。スライダ)の位置を決定する装置である。このロボット用走行台車位置決定装置(以下、適宜「位置決定装置」と略記する。)は、所定の周囲環境における前記ロボットが干渉する干渉範囲を表す干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部と、所定の作業位置に応じた前記ツールの姿勢での前記ロボットの手首回転中心点を固定して前記ロボットのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理部と、前記進入方向処理部で求めたアーム進入方向に基づいて前記ロボット用走行台車の位置を求める位置処理部とを備える。以下、このようなロボット用走行台車位置決定装置ならびにこれに実装されるロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムについて、溶接システムに適用された場合を例に、より具体的に説明する。なお、ロボット用走行台車位置決定装置、該方法および該プログラムは、溶接システムへの適用に限定されるものではなく、ロボットを搭載して走行するロボット用走行台車を用いる任意のシステムに適用できる。
【0022】
図1は、実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置を備える溶接システムの概略構成を説明するための図である。図2は、ワークの一例を示す図である。図3は、前記ロボット用走行台車位置決定装置の構成を示すブロック図である。図4は、ツールの一例である溶接トーチの位置および姿勢の決定処理を説明するための図である。図5は、アーム進入可能方向の探索処理を説明するための図である。図6は、アーム進入方向の決定処理を説明するための図である。図6Aは、有向線分でアーム進入方向を示し、図6Bは、図6Aに示すアーム進入方向にアームを沿わせて仮想ロボットモデルを配置(描画)した様子を示す。図7は、探索平面と探索平面上の格子点とを説明するための図である。図4ないし図6は、ロボットMRを真上から見た図であり、図7は、ロボットMRを真横から見た図である。
【0023】
実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置を備える溶接システムSYは、例えば、図1に示すように、ロボットMRと、走行台車SLと、ポジショナPSと、制御装置CLと、教示ペンダントTPと、オフライン教示装置TCとを備える。
【0024】
走行台車SLは、先端に備えられたツールでワークWKに対し所定の作業を実施するロボットMRを搭載して移動する装置である。走行台車SLは、制御装置CLに接続され、制御装置CLの制御に従って動作する。前記ツールには、前記所定の作業に応じた適宜な器具が利用される。本実施形態では、溶接システムSYのため、前記所定の作業は、アーク溶接であり、これに応じて前記ツールは、その一例の溶接トーチWTである。走行台車SLは、図1に示すように、ワークWKに対して前後方向のX軸、左右方向のY軸および上下方向のZ軸の3軸方向に移動可能となっている。これらX軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交し、XYZ直交座標系(ワールド座標系)を構成する。なお、図1では、XYZ直交座標系は、走行台車SLの移動可能な方向を図示するために、走行台車SLと重ねて図示しているが、このXYZ直交座標系の原点は、例えば、図2に示すように、ワークWKの所定の位置に設定されるワーク原点と一致するように設定される。
【0025】
より具体的には、走行台車SLは、図1に示す例では、X軸方向およびY軸方向に移動可能な台車STと、台車ST上に取り付けられ、架台PTをZ軸方向に昇降し、断面略コ字(C字)形状でZ軸方向に延びる昇降部RFと、ロボットRMが据え付けられる板状の前記架台PTとを備える。
【0026】
ロボットMRは、制御装置CLに接続され、制御装置CLの制御に従って動作する、複数の関節を持つアームを備えるロボットであり、例えば、6個の第1ないし第6関節J1~J6を備える自由度6の垂直6軸ロボット等の多関節ロボットである。例えば、図1に示す例では、ロボットMRは、第1関節J1を備える第1リンクLK1と、第2関節J2を介して前記第1リンクLK1に接続される第2リンクLK2と、第4および第5関節J4、J5を備え、第3関節J3を介して前記第2リンクLK2に接続される第3リンクLK3と、第6関節J6を介して前記第3リンクLK3に接続されるエンドエフェクターWRとを備える。ロボットMRのアームは、これら第1ないし第3リンクおよび第1ないし第6関節J1~J6を備えて構成される。先端のエンドエフェクターWRには、本実施形態では、ツールの一例として溶接トーチWTが設けられ、ロボットMRは、溶接トーチWTから送り出される溶接ワイヤによりアーク溶接でワークWKを溶接できる。
【0027】
ポジショナPSは、Y軸回りおよびZ軸回りの2軸回りθ1、θ2に回転可能にワークWKを把持する装置である。ポジショナPSは、制御装置CLに接続され、制御装置CLの制御に従って動作する。
【0028】
教示ペンダントTPは、制御装置CLに接続され、走行台車SLおよびロボットMRを手動操作するためのハンディ型の操作装置である。教示ペンダントTPを用いた、走行台車SLおよびロボットMRの動作に対する教示(ティーチング)では、手動操作によって走行台車SLおよびロボットMRを実際に動作させることによって、ワークWKに対する、走行台車SLの移動経路や位置および溶接トーチWTの移動経路や位置等が教示される。
【0029】
オフライン教示装置TCは、走行台車SLおよびロボットMRをコンピュータの仮想空間における走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルとして再現し、これら走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルに前記走行台車SLおよびロボットMRの各動作を模擬させることによって、動作目的に応じて前記走行台車SLおよびロボットMRを動作させるための動作データ(動作プログラム、教示プログラム)を作成する装置である。例えば、図2に示すワークWKでは、6個の溶接点Q1~Q6(時系列に並ぶ複数の作業位置の一例)が設定され、これら各溶接点Q1~Q6を順次に繋ぐ連続した5個の溶接線が設定され、これら各溶接点Q1~Q6および各溶接線で溶接する動作データが作成される。なお、ロボットMRの位置を決めれば、走行台車SLの位置も決まるので、走行台車モデルは、省略されてもよい。このオフライン教示装置TCで作成された動作データは、例えばデータを記録(または記憶)する記録媒体(記憶媒体)に記録(記憶)され、この記録媒体から制御装置CLに読み込まれ、制御装置CLに記憶される。前記記録媒体(記憶媒体)は、例えば、フレキシブルディスクや、CD-R(Compact Disc Recordable)や、DVD-R(Digital Versatile Disc Recordable)や、USB(Universal Serial Bus)メモリや、SDカード(登録商標)等である。なお、前記動作データは、オフライン教示装置TCと制御装置CLとを通信可能に接続することで、データ通信によりオフライン教示装置TCから制御装置CLへ送信され、制御装置CLに記憶されてもよい。
【0030】
実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置Dは、本実施形態では、一例として、このオフライン教示装置TCに備えられている。
【0031】
制御装置CLは、走行台車SLおよびロボットMRを、教示ペンダントTPやオフライン教示装置TCで予め教示され作成された動作データ(動作プログラム、教示プログラム)に従って、走行台車SLおよびロボットMRを制御し、溶接トーチWTでワークWKを溶接するための装置である。
【0032】
前記オフライン教示装置TCに備えられた、実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置Dは、例えば、図3に示すように、制御処理部1と、記憶部2と、入力部3と、表示部4とおよびインターフェース部(IF部)5とを備える。
【0033】
入力部3は、制御処理部1に接続され、例えば教示開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば動作データの名称や干渉範囲情報等の、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)の稼働を行う上で必要な各種データを位置決定装置D(オフライン教示装置TC)に入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。表示部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータ、および、オフライン教示装置TC(位置決定装置D)によって生成された仮想空間における走行台車モデルおよび仮想ロボットモデル等を表示する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置等である。
【0034】
なお、入力部3および表示部4は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部3は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置である。このタッチパネルでは、表示部4の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示部4に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として位置決定装置D(オフライン教示装置TC)に入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い位置決定装置D(オフライン教示装置TC)が提供される。
【0035】
IF部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であっても良い。
【0036】
記憶部2は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)の各部2~5を制御する制御プログラムや、所定の作業位置に応じた前記ツール(本実施形態ではその一例の溶接トーチWT)の姿勢でのロボットMRの手首回転中心点を固定して前記ロボットMRのアームの方向を、干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求める進入方向処理プログラムや、前記進入方向処理プログラムで求めたアーム進入方向に基づいて走行台車SLの位置を求める位置処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば前記干渉範囲情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部2は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部2は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。記憶部2は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されてもよい。
【0037】
そして、記憶部2は、前記干渉範囲情報を記憶する干渉範囲情報記憶部21を機能的に備える。前記干渉範囲情報は、所定の周囲環境におけるロボットMRが干渉する干渉範囲を表す情報である。前記干渉範囲情報は、例えば、干渉範囲が多角体である場合では前記干渉範囲の輪郭線における屈曲点の座標や、干渉範囲が球体である場合では前記干渉範囲の球体における中心点の座標および半径である。より具体的には、前記干渉範囲は、ロボットMRの周囲環境に配置されている、例えば制御盤等の機器や例えば架台等の備品等の障害物を模した3次元環境モデルであり、前記干渉範囲情報は、前記3次元環境モデルを表す情報である。前記干渉範囲情報には、所定の周囲環境における走行台車SLが干渉する第2干渉範囲を表す情報が含まれてよい。
【0038】
制御処理部1は、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、走行台車SLおよびロボットMRを仮想空間の仮想走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルとして再現し、これら走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルに前記走行台車SLおよびロボットMRの各動作を模擬させることによって、動作目的に応じて前記走行台車SLおよびロボットMRを動作させるための動作データ(動作プログラム、教示プログラム)を生成し、その際に、走行台車SLの位置を求めるための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1は、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11、進入方向処理部12および位置処理部13を機能的に備える。
【0039】
制御部11は、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)の全体制御を司るものである。
【0040】
進入方向処理部12は、所定の作業位置に応じた前記ツール(本実施形態ではその一例の溶接トーチWT)の姿勢でのロボットMRの手首回転中心点を固定して前記ロボットMRのアームの方向を、前記干渉範囲と重ならないように、アーム進入方向として求めるものである。前記手首回転中心点は、第4関節J4の第4回転軸、第5関節J5の第5回転軸および第6関節J6の第6回転軸が1点で交わる点である。
【0041】
より具体的には、進入方向処理部12は、まず、図4に示すように、所定の溶接点Q(所定の作業位置の一例)に対する溶接トーチWTの位置および姿勢を、記憶部2に予め記憶された施工情報に基づいて決定(設定)する。前記施工情報は、溶接条件や溶接線の開先に対する溶接トーチWTの姿勢等である。なお、図4ないし図7は、仮想空間での走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルを図示するが、説明の都合上、図1ないし図3に用いた符号がそのまま使用されている。後述の図9も同様である。そして、走行台車SLおよびロボットMRは、仮想空間であるので、厳密には、走行台車モデルおよび仮想ロボットモデルと呼称すべきであるが、上記図4を用いた説明も含めて、そのまま、走行台車SLおよびロボットMRと呼称、記載される。すなわち、上記では、溶接トーチWTは、溶接トーチモデルと呼称、記載すべきであるが、そのまま、溶接トーチWTと呼称、記載される。
【0042】
次に、進入方向処理部12は、ロボットMRの周囲環境において、干渉範囲と重ならないように、ロボットMRのアームが進入できるアーム進入可能方向を探索する。より詳しくは、進入方向処理部12は、図5に示すように、ロボットMRの周囲環境に、干渉範囲情報記憶部21に記憶されている干渉範囲情報で表される干渉範囲ARを設定し、上記のように設定した溶接トーチWTの位置および姿勢での手首回転中心点ROを含む平面(例えば水平平面内において、前記手首回転中心点ROを中心点とした円の周方向に所定の角度間隔(例えば5°や10°や15°や20°等)で周方向に、前記設定した干渉範囲ARに重ならない方向を、アーム進入可能方向として探索する。この際に、ロボットMRのアームの大きさ(太さ)が考慮されることが好ましい。例えば、前記ロボットMRのアーム(第3リンクLK3)の中心線とアーム進入可能方向とを一致させることによって、前記アームの大きさ(太さ)が考慮される。図5に示す例では、干渉範囲ARと重なる方向(実線)は、評価点0点とされ、有向線分では干渉範囲ARと重ならないが前記アームの大きさを考慮すると干渉範囲ARと重なる方向(一点鎖線)は、評価点1点とされ、有向線分でも干渉範囲ARと重ならず、かつ、前記アームの大きさを考慮しても干渉範囲ARと重ならない方向(破線)は、評価点2点とされている。本実施形態では、この評価点2点である18個の各方向がアーム進入可能方向として探索される。
【0043】
次に、進入方向処理部12は、この探索されたアーム進入可能方向から、1個のアーム進入方向を選定し、決定する。図5に示す例では、これら18個の各アーム進入可能方向のいずれか1個が設定され、決定されてよいが、所定のルール(規則、規定、規約、標準)に従い、複数のアーム進入可能方向から、1個のアーム進入可能方向がアーム進入方向として選定され、決定される。前記所定のルールは、適宜に設定されてよいが、例えば、所定の基準位置RPに最も近くなるように選定することである。本実施形態の溶接では、通常、ワークWKの正面の位置(正面位置)から、ロボットMRは、ワークWKの溶接点(作業位置の一例)Qにアプローチ(接近)するので、本実施形態では、前記所定の基準位置RPは、ワークWKの正面位置RPである。これにより、図5に示す例では、図6Aに示すように、進入方向処理部12は、複数のアーム進入可能方向から、前記基準位置RPに最も近い1個のアーム進入可能方向ADがアーム進入方向ADとして選定され、決定される。これにより、上から見た、ロボットMRのアームのアーム進入方向ADが求められる。図6Bには、このように決定されたアーム進入方向ADにロボットMRのアームが沿うように、ロボットMR(厳密には仮想ロボットモデル)を配置(描画)した様子が図示されている。
【0044】
図3に戻って、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向ADに基づいて走行台車SLの位置を求めるものである。上述したように、ロボットMRの位置を決めれば、走行台車SLの位置も決まるので、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向ADに基づいてロボットMRの位置を求めることによって、走行台車SLの位置を求める。アーム進入方向ADに基づくロボットMRの位置は、公知の常套手段を用いて求められてよく、例えば、上記特許文献1に開示された手法を利用することによってロボットMRの位置が求められ、走行台車SLの位置が求められる。
【0045】
より具体的には、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向を含み、かつ、ロボットMRの動作基点であるロボット原点Oが前記アーム進入方向上ADに位置する探索平面を設定し、ロボット原点Oが前記探索平面内に設定された複数個の格子点のそれぞれに合致するように走行台車SLの位置を設定して、その走行台車SLの位置における各格子点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記走行台車SLの位置を求める。なお、図4を用いて説明した溶接トーチWTの位置および姿勢の設定が、上記特許文献1に開示された手法における初期設定ステップに相当する。ポジショナPSの姿勢も上記特許文献1に開示された通りに設定されるが、ポジショナPSの姿勢は、適宜に設定されるものとし、その説明を省略する。以下も同様である。
【0046】
より詳しくは、位置処理部13は、例えば、図7に示すように、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向ADを含み、かつ、ロボットMRの動作基点であるロボット原点Oを通りロボットMRの先端部(ツールの一例である溶接トーチWTの先端部)が含まれる探索平面内でのロボットMRの動作範囲を求め、この求めた動作範囲内に離散的に複数個の格子点を設定する。したがって、ロボット原点Oは、アーム進入方向AD上に位置する。前記複数の格子点の間隔は、探索に十分な細さで予め適宜に設定される。位置処理部13は、複数の格子点それぞれについて、当該格子点とロボット原点Oが一致するように、走行台車SLの位置を求め、前記干渉範囲を除いた走行台車SLの動作範囲内である走行台車SLの位置であって、かつ、ロボットMRの姿勢を決定する逆変換を実行できる走行台車SLの位置を位置候補として求める。位置処理部13は、前記求めた位置候補それぞれに対応する各格子点の評価値を求める。前記評価値は、例えば、ロボットMRの特異姿勢からの余裕度、各軸の動作範囲境界からの余裕度、ロボットMRの姿勢における周囲環境やワークWKとの干渉やニアミスの程度、走行台車SLの各軸の動作範囲境界からの余裕度、前記作業位置Qが時系列に並ぶ複数である場合に走行台車SLの各軸の前回位置からの移動量、のいずれかを含む評価関数によって求められる。位置処理部13は、各格子点の各評価値の中から、予め設定した所定の閾値以上であって最も高い評価値(最高評価値)を持つ格子点を抽出し、この抽出した格子点での位置候補を走行台車SLの位置として決定する。
【0047】
図7に示すロボット原点Oを座標原点とするxyz直交座標系は、ロボットMRの動作基点からアームの位置および姿勢を表すためのローカル座標系である。走行台車SLの位置(ロボットMRの位置)が決まると、XYZ直交座標系とxyz直交座標系とが関連付けられる。
【0048】
そして、本実施形態では、ロボット用走行台車位置決定装置Dは、オフライン教示装置TCに備えられているので、位置処理部13は、さらに、前記走行台車SLの位置をロボットMRのオフライン教示データ(動作データ、動作プログラム、教示プログラム)として採用する。
【0049】
ここで、図2に示す例のように、時系列に並ぶ複数の溶接点(作業位置の一例)Qがある場合(この例ではi=1~6)、進入方向処理部12は、前記複数の溶接点Qそれぞれについて、前記時系列の順に、上述と同様に前記アーム進入方向ADを求め、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めた複数のアーム進入方向ADそれぞれについて、上述と同様に、前記走行台車SLの位置を求める。この場合では、進入方向処理部12は、前記時系列の順で前回のアーム進入方向ADi-1に最も近くなるように今回のアーム進入方向ADを求める。
【0050】
これら制御処理部1、記憶部2、入力部3、表示部4およびIF部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。これら各部1~5を構成するコンピュータは、例えば、溶接工場におけるオペレーションルームに配置され、コンソールに組み込まれてよく(コンソールと兼用されてよく)、あるいは、コンソールと別体であってもよい。
【0051】
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、前記ロボット用走行台車位置決定装置の動作を示すフローチャートである。
【0052】
このような構成のロボット用走行台車位置決定装置D(オフライン教示装置TC)は、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部1には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部11、進入方向処理部12および位置処理部13が機能的に構成される。
【0053】
図8において、走行台車SLの位置の演算に関し、位置決定装置D(オフライン教示装置TC)は、まず、制御処理部1の進入方向処理部12によって、所定の溶接点Q(所定の作業位置の一例)に対する溶接トーチWTの位置および姿勢を決定する(S1)。
【0054】
次に、位置決定装置Dは、進入方向処理部12によって、ロボットMRの周囲環境において、干渉範囲と重ならないように、ロボットMRのアームが進入できるアーム進入可能方向を探索する(S2)。
【0055】
次に、位置決定装置Dは、進入方向処理部12によって、進入方向処理部12は、この探索されたアーム進入可能方向から、所定のルールに従って1個のアーム進入可能方向を選定し、アーム進入方向ADとして決定する(S3)。
【0056】
そして、位置決定装置Dは、制御処理部1の位置処理部13によって、処理S3で進入方向処理部12によって求めたアーム進入方向ADに基づいて走行台車SLの位置を求め、この求めた走行台車SLの位置をロボットMRのオフライン教示データ(動作データ、動作プログラム、教示プログラム)として採用し(S4)、本処理を終了する。
【0057】
図2に示す例のように、時系列に並ぶ複数の溶接点(作業位置の一例)Qがある場合には、これら処理S1ないし処理S4の各処理が各溶接点Qについて実行される。
【0058】
以上説明したように、実施形態におけるロボット用走行台車位置決定装置Dならびにこれに実装されたロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、ロボット用走行台車SLの位置を求める前に、ロボットMRのアームの方向を、干渉範囲と重ならないように、求めるので、ロボット用走行台車SLの位置を求める処理を始めからやり直すケースを無くせるから、効率よくロボット用走行台車の位置を決定できる。
【0059】
上記ロボット用走行台車位置決定装置D、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、手首回転中心点ROを含む平面内において、前記手首回転中心点ROを中心点とした円の周方向に探索するので、比較的簡単な処理で、アーム進入方向ADを探索できる。
【0060】
上記ロボット用走行台車位置決定装置D、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、時系列に並ぶ複数の作業位置(本実施形態ではその一例の溶接点Q)がある場合に、時系列の順で前回のアーム進入方向ADi-1に最も近くなるように今回のアーム進入方向ADを求めるので、時系列に並ぶ複数の作業位置それぞれについて、ロボットMRを円滑に移動できるように、ロボット用走行台車SLの位置を求めることができる。
【0061】
上記ロボット用走行台車位置決定装置D、ロボット用走行台車位置決定方法およびロボット用走行台車位置決定プログラムは、前記求めたアーム進入方向ADを含み、かつ、ロボットMRの動作基点であるロボット原点Oが前記アーム進入方向上に位置する探索平面を設定し、前記探索平面内に設定された複数の格子点のそれぞれについて、ロボット用走行台車SLの位置を設定し、各格子点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記ロボット用走行台車SLの位置を求めるので、ロボット用走行台車SLの適切な位置を自動的かつ効率的に求めることができる。
【0062】
なお、上述の実施形態では、図7に示すように、探索平面内において、手首回転中心点ROを固定して第3リンクLK3を移動可能である場合に、前記探索平面の各格子点で走行台車SLの位置を探索したが、第3リンクLK3が移動できない、あるいは、第3リンクLK3の移動範囲が狭い(少ない)場合には、次のように、走行台車SLの位置が探索されてもよい。
【0063】
図9は、探索平面内において、ロボットの第3関節の位置を中心点とする円の周方向でロボット原点を探索する場合を説明するための図である。図9は、図7と同様に、ロボットMRを真横から見た図である。この場合では、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向ADを含む探索平面内において、ロボット原点Oが、第3関節J3の位値を中心点とする円の周方向に設定された複数個の点のそれぞれに合致するように走行台車SLの位置を設定して、その走行台車SLの位置における各点の評価値を算出し、前記評価値に基づいて走行台車SLの位置を求める。より具体的には、位置処理部13は、進入方向処理部12で求めたアーム進入方向ADを含む探索平面内において、第3関節J3の位値を中心点とし、第3関節J3の位置からロボット原点Oまでの距離(第2リンクLK2の長さに応じて決まる距離)を半径とする円を設定し、この設定した円周上に複数の点を設定する。位置処理部13は、複数の点それぞれについて、当該点とロボット原点Oとが一致するように、走行台車SLの位置を求め、前記干渉範囲を除いた走行台車SLの動作範囲内である走行台車SLの位置であって、かつ、ロボットMRの姿勢を決定する逆変換を実行できる走行台車SLの位置を位置候補として求める。位置処理部13は、前記求めた位置候補それぞれに対応する各格子点の評価値を求める。前記評価値は、上述の通りである。位置処理部13は、各格子点の各評価値の中から、予め設定した所定の閾値以上であって最も高い評価値(最高評価値)を持つ点を抽出し、この抽出した点での位置候補を走行台車SLの位置として決定する。
【0064】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0065】
TC オフライン教示装置
D ロボット用走行台車位置決定装置
MR ロボット
1 制御処理部
2 記憶部
3 入力部
4 表示部
11 制御部
12 進入方向処理部
13 位置処理部
21 干渉範囲情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9