(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172653
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】建設機械用の稼働情報記録装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221110BHJP
G06F 21/62 20130101ALI20221110BHJP
G16Y 10/30 20200101ALI20221110BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20221110BHJP
G16Y 40/35 20200101ALI20221110BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
G06F21/62
G16Y10/30
G16Y40/10
G16Y40/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078671
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多胡 尚
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】日暮 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 理沙
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA06
2D003BA07
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】建設機械の稼働情報が第三者に流出するのを防止することができる技術を提供する。
【解決手段】稼働情報記録装置(200)は、建設機械(100)の稼働情報(221)を記憶するように構成された記憶装置(220)と、建設機械が第1搭乗者から次の搭乗者である第2搭乗者へ引き渡される前のタイミングで成立する所定の条件が成立したときに、稼働情報を記憶装置から削除する削除処理を少なくとも実行するように構成された制御装置(210)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に搭載された稼働情報記録装置であって、
前記建設機械の稼働情報を記憶するように構成された記憶装置と、
前記建設機械が第1搭乗者から次の搭乗者である第2搭乗者へ引き渡される前のタイミングで成立する所定の条件が成立したときに、前記稼働情報を前記記憶装置から削除する削除処理を少なくとも実行するように構成された制御装置と、
を備える稼働情報記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記第1搭乗者に対して予め設定された前記建設機械の使用期限を過ぎた後に前記建設機械の外部から前記制御装置にアクセスされたときに、前記所定の条件が成立したと判定するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記削除処理に加えて、前記削除処理の前に前記稼働情報をネットワークを介して前記建設機械の外部に保存するバックアップ処理を実行するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記バックアップ処理として、前記制御装置にアクセスしてきた装置に前記稼働情報を保存するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項5】
請求項2に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記稼働情報の閲覧のみを行える権限を有するユーザと、少なくとも前記使用期限を設定できる権限を有するユーザとを設定するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記建設機械が前記第2搭乗者に引き渡される前に存在すべき所定の場所に移動したときに、前記所定の条件が成立したと判定するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の稼働情報記録装置において、
前記制御装置は、前記削除処理に加えて、前記削除処理の前に前記稼働情報をネットワークを介して前記建設機械の外部に保存するバックアップ処理を実行するように構成された、
稼働情報記録装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の稼働情報記録装置において、
少なくとも1つのカメラを更に備え、
前記稼働情報は、前記カメラによって取得された前記建設機械の周囲の映像を含む、
稼働情報記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械の稼働情報を記録する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工事現場において、複数のカメラが搭載された建設機械が使用されている。建設機械は、複数のカメラを用いて、建設機械の周囲の映像を稼働情報として取得する。稼働情報は、様々なシーンで利用される。例えば、オペレータが、建設機械の周囲の映像をリアルタイムで監視する場合がある。更に、自動車のドライブレコーダのように稼働情報が記録される場合がある。当該記録された稼働情報は、事故等の検証に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の稼働情報(建設機械の周囲の映像を含む)は、個人情報及び非公開としたい秘密情報等を含む場合がある。従って、稼働情報が第三者に流出するのを防ぐことが求められる。これに関して、特許文献1は、車両の周囲の映像に対して、車両の搭乗者以外からのアクセスを制限する技術を開示している。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、建設機械における特有の問題を解決できない。建設業界においては、レンタル会社が、建設機械を複数の異なるユーザに貸し出す場合が多い。例えば、現在の搭乗者が建設機械を使用した後に、現在の搭乗者にとって第三者にあたる次の搭乗者が同じ建設機械を使用する場合がある。稼働情報は、通常、建設機械に記録されている。従って、稼働情報が第三者(次の搭乗者)に流出する虞がある。
【0006】
そこで、本開示は、建設機械の稼働情報が第三者に流出するのを防止することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一以上の実施例において、建設機械に搭載された稼働情報記録装置が提供される。当該稼働情報記録装置は、前記建設機械の稼働情報を記憶するように構成された記憶装置と、前記建設機械が第1搭乗者から次の搭乗者である第2搭乗者へ引き渡される前のタイミングで成立する所定の条件が成立したときに、前記稼働情報を前記記憶装置から削除する削除処理を少なくとも実行するように構成された制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、建設機械の稼働情報が第三者(第2搭乗者)に流出するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における建設機械を側面から見た図である。
【
図2】実施例1における稼働情報記録装置のシステム構成図である。
【
図3】実施例1における稼働情報閲覧ツールの画面である。
【
図4】実施例1における稼働情報閲覧アプリケーションの画面である。
【
図5】実施例1における権限情報を示した図である。
【
図6】実施例1における制御装置によって実行されるフローチャートである。
【
図7】実施例2における制御装置によって実行されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施例について図面を参照して説明する。なお、各図において同一要素については同一の符号を記し、重複する説明は省略する。
【0011】
以下では、建設機械の一例として油圧ショベルについて説明されるが、本開示の技術は、他の建設機械にも適用可能である。
【0012】
<実施例1>
(建設機械の構成)
図1は、建設機械100を側面から見た図である。建設機械100は、上部旋回体110と、下部走行体120と、フロント装置130とを備える。
【0013】
上部旋回体110は、原動機としてのエンジン111と、エンジン111によって駆動されるメインポンプ112とを備える。メインポンプ112によって送られる作動油により、上部旋回体110、下部走行体120及びフロント装置130が、それぞれ独立して動作する。
【0014】
上部旋回体110は、旋回油圧モータ113を軸として、下部走行体120に接続されている。上部旋回体110は、旋回油圧モータ113の駆動により旋回する。
【0015】
下部走行体120は、一対のクローラ(
図1では片側のみを示す)121と、走行油圧モータ122とを備える。一対のクローラ121は、走行油圧モータ122の駆動により作動する。
【0016】
フロント装置130は、上部旋回体110に搭載されている。フロント装置130は、ブーム131と、ブーム131を駆動するためのブームシリンダ132と、アーム133と、アーム133を駆動させるためのアームシリンダ134と、バケット135と、バケット135を駆動させるためのバケットシリンダ136とを備える。
【0017】
各シリンダ(132、134、136)は、メインポンプ112から送られる作動油によって伸縮する。ブーム131と上部旋回体110とは、回転軸137を介して接続されている。ブーム131とアーム133とは、回転軸138を介して接続されている。アーム133とバケット135とは、回転軸139を介して接続されている。ブーム131、アーム133及びバケット135をそれぞれ独立して回転させることにより、建設機械100は、掘削及び整地等の作業を行うことができる。
【0018】
(稼働情報記録装置の構成)
図2は、稼働情報記録装置200のシステム構成図である。稼働情報記録装置200は、建設機械100に搭載されている。稼働情報記録装置200は、制御装置210と、記憶装置220とを備える。
【0019】
建設機械100は、運転席の周囲を囲うように、前方カメラ251、右カメラ252、左カメラ253及び後方カメラ254を備える。これらカメラ251~254は、建設機械100の周囲の映像を取得するための撮影装置である。
【0020】
制御装置210は、1つ以上のECUを含む。ECUは、エレクトロニックコントロールユニットの略称であり、マイクロコンピュータを構成部品として有する電子制御回路である。制御装置210は、CPU211と、RAM212と、ROM213とを少なくとも備える。CPU211は、RAM212をワークメモリとして用いて、ROM213に格納されているプログラムコード(インストラクション)を実行する。これにより、CPU211は、以降で説明する処理を実行することができる。
【0021】
記憶装置220は、情報の読み書きが可能な不揮発性メモリである。記憶装置220は、稼働情報221、設定情報222及び権限情報223を記憶する。
【0022】
制御装置210は、カメラ251~254に接続されている。制御装置210は、カメラ251~254のそれぞれから映像を取得する。制御装置210は、当該取得された映像を合成し、合成映像を作成する。
【0023】
制御装置210は、CAN等の車載ネットワークを介して、建設機械100内の複数のECU260と接続されている。制御装置210は、複数のECU260から車体情報を取得する。車体情報は、例えば、エンジン111の回転数、一対のクローラ121の走行情報、上部旋回体110の旋回情報、及び、フロント装置130の動作情報等を含む。
【0024】
制御装置210は、時間情報(時刻)を用いて合成映像と車体情報とを同期させる。制御装置210は、合成映像及び車体情報の組み合わせを、稼働情報221として記憶装置220に格納する。このように、制御装置210は、稼働情報221を記憶装置220に蓄積することができる。
【0025】
設定情報222は、建設機械100のレンタル期限(使用期限)に関する情報を含む。レンタル期限は、ユーザが建設機械100を使用できる期限を表す。レンタル期限は、後述する稼働情報閲覧ツールを用いて設定される。
【0026】
権限情報223は、稼働情報221にアクセスするユーザの権限を設定した情報である。権限情報223の詳細は後述される。
【0027】
制御装置210は、通信装置230に接続されている。通信装置230は、通信網280を介して、複数の情報処理装置291~293と通信することができる。通信網280は、例えば、携帯電話網、インターネット網及び近距離無線通信の1つ、或いは、それらの2つ以上の組み合わせである。
【0028】
各情報処理装置291~293は、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリ等を含む。情報処理装置291はPC(Personal Computer)であり、情報処理装置292はクラウドサーバであり、情報処理装置293は携帯端末(スマートフォン)である。
【0029】
各情報処理装置291~293は、所定のツール又はアプリケーションを用いて、記憶装置220に蓄積された稼働情報221にアクセスすることができる。
【0030】
(稼働情報閲覧ツール)
図3は、稼働情報閲覧ツールの画面300である。稼働情報閲覧ツールは、PC用のソフトウェアであり、情報処理装置291及び292にインストールされている。なお、画面300は、情報処理装置291のディスプレイに表示された画面である。
【0031】
画面300は、映像表示部310と、車体情報表示部320と、操作部330とを有する。映像表示部310は、稼働情報221のうちの合成映像を表示する部分である。合成映像は、カメラ251~254において取得された映像を上下左右に並べた映像である。映像表示部310は、再生ボタン311と、停止ボタン312と、第1シークバー313とを有する。再生ボタン311は、合成映像の再生を開始するためのボタンである。停止ボタン312は、合成映像の再生を停止するためのボタンである。第1シークバー313は、左右に移動させて、合成映像の中で再生の開始ポイントを選択するために使用される。
【0032】
車体情報表示部320は、稼働情報221のうちの車体情報を表示する部分である。車体情報表示部320には、合成映像が取得された期間における車体情報が波形の形式で表示される。なお、車体情報表示部320は、第2シークバー321を有する。第2シークバー321は、第1シークバー313の位置と同期するように自動的に左右方向に移動する。
【0033】
操作部330は、レンタル期限設定ボタン331と、アップロードボタン332と、ダウンロードボタン333と、削除ボタン334と、詳細設定ボタン335とを有する。レンタル期限設定ボタン331は、建設機械100のレンタル期限を設定するためのボタンである。ユーザ(レンタル会社)がレンタル期限設定ボタン331をクリックすると、カレンダーがポップアップで表示される。ユーザ(レンタル会社)は、カレンダーの中からレンタル期限となる日付を選択することができる。ユーザが日付を選択すると、その日付がレンタル期限(設定情報222)として記憶装置220に記憶される。更に、設定されたレンタル期限は、画面300の上部に表示される。
【0034】
アップロードボタン332は、現在表示されている稼働情報221を情報処理装置292(クラウドサーバ)へアップロードするためのボタンである。即ち、ユーザがアップロードボタン332をクリックすると、現在表示されている稼働情報221が情報処理装置292に保存される。従って、後述するように記憶装置220の稼働情報221が削除された場合でも、ユーザは情報処理装置292上において稼働情報221を閲覧することができる。
【0035】
ダウンロードボタン333は、現在表示されている稼働情報221を情報処理装置291(PC)へダウンロードするためのボタンである。即ち、ユーザがダウンロードボタン333をクリックすると、現在表示されている稼働情報221が情報処理装置291に保存される。従って、後述するように記憶装置220の稼働情報221が削除された場合でも、ユーザは情報処理装置291上において稼働情報221を閲覧することができる。
【0036】
削除ボタン334は、現在表示されている稼働情報221を記憶装置220から削除するためのボタンである。
【0037】
詳細設定ボタン335は、稼働情報閲覧ツールの無線LANの設定及びパスワード等の変更、並びに、車体情報表示部320に表示される車体情報の信号の変更/編集を行うためのボタンである。ユーザが詳細設定ボタン335をクリックすると、上記の変更を行うための画面がポップアップで表示される。
【0038】
(稼働情報閲覧アプリケーション)
図4は、稼働情報閲覧アプリケーションの画面400である。稼働情報閲覧アプリケーションは、携帯端末用のアプリケーションであり、情報処理装置293にインストールされている。画面400は、情報処理装置293のディスプレイに表示された画面である。
【0039】
画面400は、映像表示部410を有する。映像表示部410は、稼働情報221のうちの合成映像を表示する部分である。映像表示部410は、再生ボタン411と、停止ボタン412と、第1シークバー413とを有する。映像表示部410の構成要素411~413の機能は、上述した映像表示部310の構成要素311~313の機能と同じであるため、説明を省略する。なお、画面400は、合成映像を確認するためだけの画面である。ユーザは、画面400上において、稼働情報221のアップロード、ダウンロード及び削除等を行うことができない。
【0040】
(ユーザの権限)
図5は、権限情報223を示した図である。本例において、記憶装置220の稼働情報221へアクセスするユーザは、第1ユーザ、第2ユーザ、及び、第3ユーザを含む。各ユーザのアカウントは、ID及びパスワードによって管理される。制御装置210は、ID及びパスワードに従って、各ユーザに対して
図5に示す権限を与えることができる。
【0041】
第1ユーザは、建設機械100の運用及びサービスを提供するユーザ(会社)であり、システム管理者の権限を有する。第1ユーザは、稼働情報221に関して全ての権限を有する。本例において、第1ユーザは、情報処理装置292(クラウドサーバ)を使用して、稼働情報221にアクセスする。
【0042】
第2ユーザは、建設機械100を貸与するユーザ(レンタル会社)であり、稼働情報221のアップロード及び詳細設定以外の権限を有する。即ち、第2ユーザは、稼働情報221の閲覧、稼働情報221の削除、レンタル期限の設定、及び、稼働情報221のダウンロードを行うことができる。本例において、第2ユーザは、情報処理装置291(PC)を使用して、稼働情報221にアクセスする。なお、第2ユーザが情報処理装置291上において稼働情報閲覧ツールを使用する場合、アップロードボタン332及び詳細設定ボタン335が、画面300上に表示されない(又は非アクティブに設定される)。
【0043】
第3ユーザは、建設機械100のレンタル先となるユーザであり、建設機械100に実際に乗る搭乗者もしくはその作業現場の管理者である。第3ユーザは、稼働情報221の閲覧のみの権限を有する。本例において、第3ユーザは、情報処理装置293(携帯端末)を使用して、稼働情報221にアクセスする。従って、第3ユーザは、稼働情報221の閲覧しか行うことができない(
図4、画面400を参照)。
【0044】
このように、制御装置210は、権限情報223において、稼働情報221の閲覧のみを行える権限を有するユーザ(第3ユーザ)と、レンタル期限を設定できる権限を有するユーザ(例えば、第2ユーザ)とを分けて設定している。第3ユーザ(即ち、搭乗者)による操作が制限されるので、第3ユーザが不適切な操作(例えば、稼働情報221の削除やレンタル期限の設定等)を行うのを防ぐことができる。
【0045】
なお、第3ユーザが、情報処理装置291(PC)を使用して、稼働情報221にアクセスしてもよい。この場合、操作部330が画面300上に表示されない。
【0046】
(稼働情報記録装置の処理の概要)
以降において、建設機械100を現在使用している搭乗者を「第1搭乗者」と称呼し、第1搭乗者の次に建設機械100を使用する予定の搭乗者を「第2搭乗者」と称呼する。本実施例において、制御装置210は、所定の削除条件が成立した場合に、稼働情報221を削除する。削除条件は、建設機械100が第1搭乗者から第2搭乗者へ引き渡される前のタイミングで成立する条件である。このような削除条件を設定することにより、第1搭乗者が建設機械100を使用していた間に取得された稼働情報221が第三者(第2搭乗者)に流出するのを防ぐことができる。
【0047】
本例における削除条件は、建設機械100のレンタル期限に関する条件である。これは、以下の理由による。レンタル会社(第2ユーザ)は、建設機械100を貸し出す前に、稼働情報閲覧ツールを用いて、第1搭乗者に対してレンタル期限を設定している。第1搭乗者は、レンタル期限まで建設機械100を使用して、建設機械100をレンタル会社に返却する。建設機械100が返却された後に(即ち、第1搭乗者に対するレンタル期限が過ぎた後に)、レンタル会社は、稼働情報閲覧ツールを用いて制御装置210にアクセスし、第2搭乗者に対するレンタル期限を設定するはずである。この時点では建設機械100がまだ第2搭乗者に引き渡されていないので、このタイミングを稼働情報221を削除するトリガーとして使用するのが好ましいと考えられる。
【0048】
上記を考慮して、制御装置210は、予め設定されたレンタル期限を過ぎた後に建設機械100の外部から制御装置210にアクセスされたときに、削除条件が成立したと判定する。制御装置210は、削除条件が成立したと判定すると、稼働情報221を記憶装置220から削除する削除処理を実行する。第2搭乗者に建設機械100が引き渡される前に稼働情報221が自動的に削除されるので、稼働情報221が第三者(第2搭乗者)に流出するのを防ぐことができる。
【0049】
更に、制御装置210は、削除処理に加えて、削除処理の前に稼働情報221を通信網280を介して建設機械100の外部(本例では、情報処理装置291)にアップロードするバックアップ処理を実行する。バックアップ処理では、建設機械100の外部に稼働情報221が保存される。従って、レンタル期限が過ぎた後であっても、例えば、第2ユーザは、バックアップされた稼働情報221を用いて事故等の検証を行うことができる。
【0050】
なお、制御装置210は、バックアップ処理として、制御装置210にアクセスしてきた装置に稼働情報221をアップロードする。
【0051】
(稼働情報記録装置の詳細な処理の流れ)
図6は、制御装置210によって実行されるフローチャートである。制御装置210は、まず、所定の初期化処理を実行する(S601)。初期化処理は、例えば、制御装置210内のキャッシュをクリアする処理等を含む。
【0052】
次に、制御装置210は、情報処理装置291~293からID及びパスワードの入力を受け付ける(S602)。ID及びパスワードが入力されると、制御装置210は、ユーザ認証を行う(S603)。
【0053】
次に、制御装置210は、ユーザ認証の結果に従って、現在のユーザが第1ユーザ~第3ユーザのうちのどのユーザに該当するかを判定する(S604)。以降において、第1ユーザ、第2ユーザ及び第3ユーザのそれぞれについて処理を説明する。
【0054】
・第1ユーザ
現在のユーザが第1ユーザである場合、制御装置210は、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。制御装置210は、
図5に示した権限情報223に従って、第1ユーザに対して全ての権限を与える。
【0055】
・第2ユーザ
現在のユーザが第2ユーザである場合、制御装置210は、記憶装置220を参照して、レンタル期限(設定情報222)が設定済であるか否かを判定する(S605)。レンタル期限がまだ設定されてない場合、制御装置210は、S605において「No」と判定してS609に進む。制御装置210は、レンタル期限の設定のために、画面300上にポップアップでカレンダーを表示する(S609)。第2ユーザは、カレンダーの中からレンタル期限となる日付を選択する。その後、制御装置210は、S605に戻る。制御装置210は、S605から、S606を介してS610へ進む。制御装置210は、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。
【0056】
これに対し、レンタル期限が設定済である場合、制御装置210は、S605において「Yes」と判定して、現在がレンタル期限内であるか否かを判定する(S606)。現在がレンタル期限内である場合、制御装置210は、S606において「Yes」と判定して、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。制御装置210は、
図5に示した権限情報223に従って、第2ユーザに対して、稼働情報221のアップロード及び詳細設定以外の権限を与える。
【0057】
一方、レンタル期限が既に過ぎている場合、制御装置210は、S606において「No」と判定して、稼働情報221のバックアップ処理を実行する(S607)。本例において、制御装置210は、当該制御装置210にアクセスしてきた情報処理装置291に対して、稼働情報221をアップロードする。次に、制御装置210は、稼働情報221の削除処理を実行する(S608)。次に、制御装置210は、レンタル期限の設定のために、画面300上にポップアップでカレンダーを表示する(S609)。第2ユーザは、カレンダーの中からレンタル期限となる日付を選択する。その後、制御装置210は、S605に戻る。制御装置210は、S605から、S606を介してS610へ進む。制御装置210は、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。
【0058】
・第3ユーザ
現在のユーザが第3ユーザである場合、制御装置210は、現在がレンタル期限内であるか否かを判定する(S611)。現在がレンタル期限内である場合、制御装置210は、S611において「Yes」と判定して、稼働情報閲覧アプリケーションの使用を許可する(S612)。制御装置210は、
図5に示した権限情報223に従って、第3ユーザに対して、稼働情報221の閲覧のみの権限を与える。
【0059】
なお、レンタル期限が既に過ぎている場合、制御装置210は、S611において「No」と判定する。この場合、稼働情報閲覧アプリケーションの使用が許可されない。従って、第3ユーザは稼働情報221を閲覧することができない。
【0060】
(効果)
上記構成を備える稼働情報記録装置200は、予め設定されたレンタル期限を過ぎた後に建設機械100の外部(情報処理装置291)から制御装置210にアクセスされたときに、稼働情報221の削除処理を実行する。特に、稼働情報221に含まれる合成映像は、第1搭乗者の個人情報及び非公開としたい秘密情報等を含んでいる場合がある。しかし、次の搭乗者である第2搭乗者に建設機械100が引き渡される前に稼働情報221が削除されるので、個人情報及び秘密情報等が第2搭乗者に流出するのを防ぐことができる。
【0061】
更に、稼働情報記録装置200は、削除処理に加えて、削除処理の前に稼働情報221のバックアップ処理を実行する。建設機械100の事故等が生じていた場合には、レンタル期限が過ぎた後であっても、バックアップされた稼働情報221を用いて事故等の検証を行うことができる。
【0062】
<実施例2>
本実施例の削除条件は、建設機械100の位置に関する条件である。第1搭乗者の建設機械100の使用が終了した後に、建設機械100は、第2搭乗者に引き渡される前に存在すべき所定の場所に移動される。例えば、所定の場所は、レンタル会社の拠点である。建設機械100がレンタル会社の拠点に移動した時点では建設機械100がまだ第2搭乗者に引き渡されていないので、このタイミングを稼働情報221を削除するトリガーとして使用するのが好ましいと考えられる。従って、制御装置210は、建設機械100がレンタル会社の拠点に移動したときに、削除条件が成立したと判定する。
【0063】
上記の削除条件を判定するために、通信装置230は、GPS受信機を更に含む。GPS受信機は、建設機械100が位置している場所の緯度及び経度を検出するためのGPS信号を受信する。更に、記憶装置220は、地図情報を更に記憶している。従って、制御装置210は、地図上での建設機械100の位置を判定することができる。
【0064】
(稼働情報記録装置の詳細な処理の流れ)
図7は、制御装置210によって実行されるフローチャートである。
図7において、
図6のフローチャートと同じ処理については、同一の符号を付してその説明を省略する。以下では、現在のユーザが第2ユーザである場合についてのみ説明する。
【0065】
・第2ユーザ
現在のユーザが第2ユーザである場合、制御装置210は、S604からS701に進む。制御装置210は、記憶装置220に稼働情報221が存在するか否かを判定する(S701)。記憶装置220に稼働情報221が存在しない場合、制御装置210は、S701において「No」と判定して、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。
【0066】
記憶装置220に稼働情報221が存在する場合、制御装置210は、S701において「Yes」と判定し、次に、建設機械100の現在の位置がレンタル会社の拠点であるか否かを判定する(S702)。建設機械100の現在の位置がレンタル会社の拠点である場合、制御装置210は、S702において「Yes」と判定して、稼働情報221のバックアップ処理を実行する(S703)とともに、稼働情報221の削除処理を実行する(S704)。その後、制御装置210は、S701に戻る。制御装置210は、S701からS610に進む。第2ユーザ(レンタル会社)は、稼働情報閲覧ツールを用いて、第2搭乗者に対するレンタル期限を設定することができる。
【0067】
なお、建設機械100の現在の位置がレンタル会社の拠点でない場合、第1搭乗者が建設機械100をまだ使用していることを意味する。従って、制御装置210は、S702において「No」と判定して、稼働情報閲覧ツールの使用を許可する(S610)。
【0068】
上記構成を備える稼働情報記録装置200は、建設機械100がレンタル会社の拠点(第2搭乗者に引き渡される前に存在すべき場所)に移動したときに、稼働情報221の削除処理を実行する。従って、建設機械100の稼働情報221が第2搭乗者に流出するのを防止することができる。更に、建設工事が長引いて、第1搭乗者が、最初に設定されたレンタル期限を過ぎても、建設機械100を使用する場合がある。このような場合でも、建設機械100がレンタル会社の拠点に返却された適切なタイミングで、稼働情報221を削除することができる。
【0069】
なお、本開示は上記実施例に限定されることはなく、本開示の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0070】
図6においてS607が省略されてもよい。更に、
図7においてS703が省略されてもよい。この構成においても、建設機械100の稼働情報221が第三者(第2搭乗者)に流出するのを防止することができる。
【0071】
図6のルーチンは、現在のユーザが第1ユーザの場合に、S604からS605に進むように変更されてもよい。この場合、稼働情報記録装置200は、予め設定されたレンタル期限を過ぎた後に情報処理装置292から制御装置210にアクセスされたときにも、稼働情報221の削除処理及び稼働情報221のバックアップ処理を実行する。同様に、
図7のルーチンは、現在のユーザが第1ユーザの場合に、S604からS701に進むように変更されてもよい。
【0072】
さらに、削除処理とバックアップ処理とを別々に実行せずに、記憶装置220に記憶された稼働情報221を外部の情報処理装置291に移動させる処理として実行することもできる。
また、削除条件としてレンタル期間経過後の制御装置210へのアクセスを要さずに、レンタル期間が過ぎたことのみを条件とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
上記構成は、稼働情報記録装置を搭載した建設機械を製造する産業及び建設機械を貸与するレンタル会社で利用される。
【符号の説明】
【0074】
100…建設機械、200…稼働情報記録装置、210…制御装置、220…記憶装置。