(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172656
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】地中熱利用システム、制御装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
F24T 10/20 20180101AFI20221110BHJP
【FI】
F24T10/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078700
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】崔 林日
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】上田 憲治
(57)【要約】
【課題】低負荷時において注水温度を制御しやすい地中熱利用システム、制御装置、制御方法、プログラムを提供する。
【解決手段】揚水井戸と、注水井戸と、揚水井戸から注水井戸に延びる配管と、配管を介して、揚水井戸から注水井戸に地下水を送水可能なポンプと、配管に設けられている熱交換器と、配管に設けられ、配管内の地下水の流量を調整可能な制御弁と、ポンプのインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、配管内の流量を絞るように制御弁を制御することで、注水井戸に注水される地下水の流量を調整する制御装置と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水井戸と、
注水井戸と、
前記揚水井戸から前記注水井戸に延びる配管と、
前記配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に地下水を送水可能なポンプと、
前記配管に設けられている熱交換器と、
前記配管に設けられ、前記配管内の前記地下水の流量を調整可能な制御弁と、
前記ポンプのインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、前記配管内の流量を絞るように前記制御弁を制御することで、前記注水井戸に注水される前記地下水の流量を調整する制御装置と、を備える
地中熱利用システム。
【請求項2】
前記制御弁が、前記熱交換器よりも前記注水井戸側に設けられている
請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記制御弁を絞ることで前記配管内の前記地下水の流量を調整している場合、前記動作周波数を前記最低周波数に保つ、
請求項1又は2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記熱交換器で前記配管内の前記地下水と熱交換を行う媒体を用いる負荷設備側に冷却塔を備え、
前記制御装置は、前記制御弁の開度が最小設定開度となった場合、前記冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部と、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部と、を備える
制御装置。
【請求項6】
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する
制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する
方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地中熱利用システム、制御装置、制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地下水を温熱源又は冷熱源として利用する地中熱利用システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、揚水井戸と注水井戸とを備え、揚水井戸から地下水をポンプでくみ上げて、熱交換器で負荷側と熱交換を行う地中熱利用システムが提案されている。このような地中熱利用システムは、熱交換器を経た地下水を注水井戸に注入することで蓄熱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された地中熱利用システムにおいて、注水井戸への注水温度を一定にするには、低負荷時において注水流量を小さくする必要がある。
しかし、特許文献1に開示されたポンプにおいて、インバータ制御を行う場合、インバータ制御の最低周波数における注水流量より小さい注水流量となる低負荷時においては、注水温度を制御しにくいことがある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、低負荷時において注水温度を制御しやすい地中熱利用システム、制御装置、制御方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る地中熱利用システムは、揚水井戸と、注水井戸と、前記揚水井戸から前記注水井戸に延びる配管と、前記配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に地下水を送水可能なポンプと、前記配管に設けられている熱交換器と、前記配管に設けられ、前記配管内の前記地下水の流量を調整可能な制御弁と、前記ポンプのインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、前記配管内の流量を絞るように前記制御弁を制御することで、前記注水井戸に注水される前記地下水の流量を調整する制御装置と、を備える。
【0008】
本開示に係る制御装置は、揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部と、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部と、を備える。
【0009】
本開示に係る制御方法は、揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する。
【0010】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する方法を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の地中熱利用システム、制御装置、制御方法、プログラムによれば、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る地中熱利用システム、および負荷設備側の概略構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムの系統図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムにおいて、負荷設備側で冷房モードの運転を行う場合の地下水、媒体の流れを示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムにおいて、負荷設備側で暖房モードの運転を行う場合の地下水、媒体の流れを示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムにおいて、負荷設備側で冷却塔モードの運転を行う場合の地下水、媒体の流れを示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る地中熱利用システムにおいて、負荷設備側で冷凍機モードの運転を行う場合の地下水、媒体の流れを示す図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施形態に係る制御装置が備えるコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0014】
<実施形態>
本開示に係る地中熱利用システムの実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
(地中熱利用システムの構成)
図1~
図3に示すように、地中熱利用システム1は、複数の井戸2と、配管3と、熱交換器4と、温度調整システム7(
図3参照)と、ポンプ31と、を主に備える。
【0015】
(井戸の構成)
図1に示すように、複数の井戸2は、地上OGから帯水層LY内に延びている。
例えば、複数の井戸2は、第一井戸2Aと、第二井戸2Bとを備える。
地中熱利用システム1は、第一井戸2Aおよび第二井戸2Bのうちの一方から地下水をくみ上げ、熱交換器4で熱交換を行った後、第一井戸2Aおよび第二井戸2Bのうちの他方に熱交換後の地下水を注入する。つまり、地中熱利用システム1は、第一井戸2Aから地下水をくみ上げて第二井戸2Bに注水する場合と、第二井戸2Bから地下水をくみ上げて第一井戸2Aに注水する場合の、2つの運転モードを有する。
ここで以下の説明においては、第一井戸2Aおよび第二井戸2Bのうち、地下水をくみ上げる側を揚水井戸21と称し、第一井戸2Aおよび第二井戸2Bのうち、地下水を注水する側を注水井戸22と、称する。つまり、第一井戸2A、第二井戸2Bは、それぞれ揚水井戸21として機能する場合と、注水井戸22として機能する場合とがある。
ただし、以下においては、説明を簡略化するため、第一井戸2Aを揚水井戸21とし、第二井戸2Bを注水井戸22として、熱交換器4で熱交換を行う場合を中心に説明する。
【0016】
各井戸2は、地上OGから帯水層LYに至る地下に向かって掘削された掘削孔HOLに埋め込まれたケーシング2aを備える。
ケーシング2aは、上下方向に延びる筒状である。
【0017】
各井戸2は、上部に開口2cを有する。
例えば、開口2cは、ケーシング2aの上部の開口であってもよい。
【0018】
ケーシング2aは、例えば複数のスリットからなるストレーナー2bを有する。
ストレーナー2bによって、井戸2は、帯水層LYの地下水をケーシング2aの内部に取り込んだり、ケーシング2aの内部から帯水層LYへ地下水を戻したりできるように構成されている。
例えば、
図3に示すように、ケーシング2aの上部の開口には、開口を閉塞する井戸蓋6が設けられてもよい。
【0019】
(配管及びポンプの構成)
図1、
図3に示すように、配管3は、井戸2の内部に延びている。
例えば、配管3は、揚水井戸21と注水井戸22とを接続するように、揚水井戸21と注水井戸22との各地下水に両端が浸漬されていてもよい。
例えば、ポンプ31によりくみ上げられた地下水が、揚水井戸21から注水井戸22に向かって流れることができるように、配管3の一端は揚水井戸21内に設けられ、配管3の他端は注水井戸22に設けられていてもよい。
【0020】
配管3には、ポンプ31が設けられている。
ポンプ31は、井戸2から配管3に揚水する。
例えば、ポンプ31は、井戸2が揚水井戸21として機能する場合に、井戸2から配管3に揚水する。
例えば、ポンプ31は、配管3内へ井戸2内の地下水をくみ上げてもよい。
例えば、ポンプ31は、配管3の両端に設けられ、各井戸2内の地下水に浸漬されていてもよい。
例えば、ポンプ31は、インバータ制御により出力を変更できてもよい。
【0021】
配管3には、注水弁32が設けられている。
注水弁32は、配管3の両端部にそれぞれ設けられている。
注水弁32は、配管3の両端のポンプ31と、熱交換器4との間に配置されていてもよい。
例えば、注水弁32は、各井戸2内の地下水に浸漬されていてもよい。
注水弁32は、配管3内の地下水を注水する。
例えば、注水弁32は、井戸2が注水井戸22として機能する場合に、配管3内の地下水を井戸2(注水井戸22)内に注水する。
注水弁32は、配管3内の圧力が設定圧力よりも大きくなると開放され、配管3内の地下水が注水井戸22に注水される。
【0022】
図3に示すように、配管3は、熱交換器4と、揚水井戸21および注水井戸22との間に、逆止弁35a~35dを備える。
逆止弁35a~35dは、揚水井戸21から地下水をくみ上げた場合であっても、注水井戸22から地下水をくみ上げた場合であっても、地下水が熱交換器4に対し同じ方向に流れるように、配管3における地下水の流れを制御する。
【0023】
例えば、第一井戸2Aから地下水をくみ上げた場合、配管3内の地下水は、第一井戸2Aから、逆止弁35a、熱交換器4、逆止弁35bを順に経由し、第二井戸2Bに注水される。このとき、熱交換器4より上流側(第一井戸2A側)は下流側に比べて配管3内の圧力が大きいため、逆止弁35cや逆止弁35dに水は流れない。
同様に、第二井戸2Bからくみ上げた場合、配管3内の地下水は、第二井戸2Bから、逆止弁35c、熱交換器4、逆止弁35dを順に経由し、第一井戸2Aに注水される。このときも、熱交換器4より上流側(第一井戸2A側)は下流側に比べて配管3内の圧力が大きいため、逆止弁35aや逆止弁35bに水は流れない。
【0024】
(熱交換器の構成)
熱交換器4は、配管3内の地下水と負荷設備100側の媒体との間で熱交換する。
例えば、熱交換器4は、井戸2からくみ上げられて配管3内を流れる地下水と、負荷設備100側の媒体との間で熱交換する。熱交換が行われた後の地下水は、熱交換器4から配管3内を流れ、井戸2に注水される。
例えば、熱交換器4は、地上OGにおいて、配管3の途中に設けられていてもよい。
【0025】
熱交換器4を経た水が温水の場合、地中熱利用システム1は、井戸2に温水を注入することにより温水蓄熱を行う。
熱交換器4を経た水が冷水の場合、地中熱利用システム1は、井戸2に冷水を注入することにより冷水蓄熱を行う。
ここで「温水」とは、帯水層の地下水の初期地中温度より高い温度の水のことであり、「冷水」とは、帯水層の地下水の初期地中温度より低い温度の水のことである。
例えば、帯水層の地下水の初期地中温度は18℃である。
【0026】
(負荷設備の構成)
図2に示すように、負荷設備100は、熱交換器4で配管3内の地下水と熱交換を行った媒体を利用する。
負荷設備100は、例えば、熱源機110と、空調機120と、を備えた空気調和システムである。
例えば、熱源機110は、コンデンサ、エバポレータ、コンプレッサ等を備えたヒートポンプであってもよい。
空調機120は、熱源機110から供給される媒体と熱交換することで、空調機120が設置された空間の空気調和を行う。
例えば、負荷設備100は、空気調和システムとして、冷房モードと、暖房モードとで、運転モードの切換が可能とされている。
負荷設備100は、熱交換器4と、熱源機110と、空調機120との間で、各運転モードに応じた媒体の流れを形成するための配管系統101を有している。配管系統101には、不図示の開閉弁等が適宜設けられ、空気調和システムの各運転モードに応じ、熱交換器4と、熱源機110と、空調機120との間で媒体を所定のルートで循環させる。
【0027】
本実施形態において、負荷設備100は、冷却塔130と、第二熱交換器140と、をさらに備えていてもよい。
【0028】
冷却塔130は、冷却水を大気と接触させて気化させるときの気化熱により、冷却水を冷却する。冷却塔130は、第二熱交換器140との間で冷却水を循環させる。
第二熱交換器140は、空気調和システム側の配管系統101の媒体と、冷却塔130側の冷却水との間で熱交換を行う。
第二熱交換器140は、冷却塔130で冷却された冷却水との熱交換により、空気調和システム側の配管系統101の媒体を冷却する。
負荷設備100の構成、用途は、上記したものに限らず、適宜変更可能である。
【0029】
図4に示すように、負荷設備100側で冷房運転を行い、注水井戸22で温水蓄熱を行う場合、第二井戸2Bを揚水井戸21とし、第一井戸2Aを注水井戸22とする。揚水井戸21となる第二井戸2Bのポンプ31で、地下水をくみ上げて熱交換器4に送り込む。熱交換器4では、配管3内の地下水と負荷設備100側の配管系統101を流れる媒体との間で熱交換を行う。負荷設備100側において、熱交換器4における熱交換により冷却された媒体は、熱源機110に送り込まれ、熱源機110において熱交換される。これにより、熱源機110と接続された空調機120は、室内の冷房を行うことができる。他方、熱源機110における熱交換によって加熱された媒体は、熱交換器4に再び送りこまれて循環する。熱交換器4では、加熱された媒体と配管3内を流れる地下水との熱交換を行うことで、地下水が加熱される。地中熱利用システム1は、加熱された地下水を、配管3を通して注水井戸22に注水することで、温水蓄熱を行う。
【0030】
図5に示すように、負荷設備100側で暖房運転を行い、注水井戸22で冷水蓄熱を行う場合、第一井戸2Aを揚水井戸21とし、第二井戸2Bを注水井戸22とする。揚水井戸21となる第一井戸2Aのポンプ31で、地下水をくみ上げて熱交換器4に送り込む。熱交換器4では、配管3内の地下水と負荷設備100側の配管系統101を流れる媒体との間で熱交換を行う。負荷設備100側において、熱交換器4における熱交換により加熱された媒体は、熱源機110に送り込まれ、熱源機110において熱交換される。これにより、熱源機110と接続された空調機120は、室内の暖房を行うことができる。他方、熱源機110における熱交換によって冷却された媒体は、熱交換器4に再び送りこまれて循環する。熱交換器4では、冷却された媒体と配管3内を流れる地下水との熱交換を行うことで、地下水が冷却される。地中熱利用システム1は、冷却された地下水を、配管3を通して注水井戸22に注水することで、冷水蓄熱を行う。
【0031】
(温度調整システムの構成)
図3に示すように、温度調整システム7は、ポンプコントローラ71と、制御弁72と、制御装置80と、を備える。温度調整システム7は、注水井戸22に注水される地下水の流量を調整することによって、注水井戸22の注水温度を調整する。
【0032】
ポンプコントローラ71は、ポンプ31の動作を制御する。
例えば、ポンプコントローラ71は、各井戸2のポンプ31に関連して設けられてもよい。
例えば、ポンプコントローラ71は、インバータ回路(図示無し)を有し、ポンプ31のインバータ制御を実施する。
ポンプコントローラ71は、後述する制御装置80の制御により、インバータ回路によるインバータ制御の動作周波数を変動することで、ポンプ31の回転数を調整する。
ポンプコントローラ71は、インバータ回路によるインバータ制御の動作周波数を変動することで、ポンプ31の回転数を調整し、熱交換器4を経て配管3から注水井戸22に注水する地下水の流量を調整する。
以下、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を「ポンプ31の動作周波数」ともいう。
【0033】
制御弁72は、配管3に設けられている。
例えば、制御弁72は、各井戸2と熱交換器4との間に設けられてもよい。
例えば、本実施形態において、制御弁72は、熱交換器4よりも注水井戸22側に設けられてもよい。
制御弁72は、配管3内の地下水の流量を調整可能である。
制御弁72は、配管3内の流路を開閉することで、配管3内の地下水の流量を調整する。
制御弁72は、その開度を調整することで、配管3内の地下水の流量を調整する。
制御弁72は、制御装置80の制御により、配管3内の地下水の流量を調整する。
制御弁72は、ポンプ31の動作周波数が、最低周波数まで下がった場合に、その開度を調整する。
例えば、最低周波数は、ポンプの種類によって決まり、ポンプメーカにより異なってもよい。
【0034】
(制御装置の構成)
制御装置80は、注水井戸22に注水される地下水の流量を調整する。
制御装置80は、注水井戸22に注水される地下水の注水温度が一定となるように、ポンプ31の動作周波数、および制御弁72の開度を調整する。
制御装置80は、ポンプ31の動作周波数が、最低周波数以上の領域では、ポンプ31の動作周波数のみを調整することで、注水井戸22に注水される地下水の流量を調整する。
例えば、制御装置80は、各ポンプコントローラ71に対し、制御可能に接続されてもよい。
例えば、制御装置80は、各制御弁72に対し、制御可能に接続されてもよい。
例えば、制御装置80は、ポンプ31の動作周波数が最低周波数まで下がった場合、制御弁72の開度を調整することで、注水井戸22に注水される地下水の流量を調整する。
制御装置80は、ポンプ31の動作周波数が最低周波数まで下がった場合、制御弁72の開度を絞る(小さくする)することで、注水井戸22に注水される地下水の流量を小さくする。
例えば、制御装置80は、ポンプ31の動作周波数が最低周波数まで下がり、制御弁72の開度調整によって注水井戸22に注水される地下水の流量を調整している状態では、ポンプ31の動作周波数を最低周波数に保つようにしてもよい。
また、制御装置80は、制御弁72の開度が、予め設定した最低開度まで絞られた場合、熱交換器4で、冷却塔130で冷却した負荷設備100側の媒体と熱交換することで、配管3から注水井戸22に注水される地下水の流量を調整する。
【0035】
図6に示すように、制御装置80は、ポンプ動作制御部81と、制御弁開閉制御部82と、負荷側流路制御部83と、を備える。
【0036】
ポンプ動作制御部81は、ポンプコントローラ71のインバータ回路によるインバータ制御の動作周波数を変動させることで、ポンプ31の回転数を調整する。
ポンプ動作制御部81は、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、揚水井戸21から地下水を揚水するポンプ31の動作周波数を調整する。
ポンプ動作制御部81は、予め記憶されたマップ等に基づき、ポンプ31の動作周波数を変動させることで、配管3から注水井戸22に注水される地下水の流量を調整する。
例えば、ポンプ動作制御部81は、負荷設備100側で冷房運転を行い、注水井戸22で温水蓄熱を行う場合、配管3から注水井戸22に注水される地下水の実際の注水温度と設定温度との差に基づいてポンプ31の動作周波数を制御する。
例えば、ポンプ動作制御部81は、負荷設備100側で暖房運転を行い、注水井戸22で冷水蓄熱を行う場合、配管3から注水井戸22に注水される地下水の実際の注水温度と設定温度との差に基づいてポンプ31の動作周波数を制御する。
ポンプ動作制御部81は、予め記憶されたマップ等に基づき、要求される注水温度に応じて、ポンプ31の動作周波数(出力)を調整するようポンプコントローラ71を制御する。
ポンプ動作制御部81は、例えばポンプ31が安定して運転できる動作周波数の下限値を、最低周波数として記憶している。ポンプ動作制御部81は、予め設定された最低周波数以上の周波数領域でポンプ31の動作を調整するようポンプコントローラ71を制御する。
【0037】
制御弁開閉制御部82は、制御弁72を開閉することで、配管3内の地下水の流量を調整する。
制御弁開閉制御部82は、制御弁72の開度を調整することで、配管3内の地下水の流量を調整する。
制御弁開閉制御部82は、ポンプ31の動作周波数が、最低周波数まで下がった場合に、制御弁72の開度を調整する。
制御弁開閉制御部82は、ポンプ31の動作周波数が最低周波数となった場合に、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、制御弁72の開度を調整する。
【0038】
負荷側流路制御部83は、負荷設備100側の配管系統101に設けられた弁等を切り換えることで、負荷設備100における媒体の流れを制御する。
負荷側流路制御部83は、冷房モード、暖房モード等の各運転モードに応じ、配管系統101における媒体の流れを制御する。
制御弁72の開度が予め設定された最小設定開度となり、注水温度が設定温度に達しない場合、負荷側流路制御部83は、負荷設備100側の運転モードを、後述する冷却塔モードに切り換える。
負荷側流路制御部83は、ポンプ31の動作周波数が最低周波数まで下がった状態で、制御弁72の開度が予め設定された最小設定開度となった場合、負荷設備100側の運転モードを、冷却塔モードに切り換える。
冷却塔モードでは、冷却塔130の冷却水によって冷却された媒体と熱交換器4で熱交換した地下水を、注水井戸22に注水する。
さらに、負荷側流路制御部83は、負荷設備100側の運転モードを、後述する冷凍機モードに切り換えてもよい。
【0039】
図7に示すように、地下水を冷却して冷水蓄熱を行うには、冷却塔モードが利用されてもよい。
冷却塔モードでは、負荷設備100は、冷却塔130で大気と接触させて気化させるときの気化熱により冷却した冷却水を、第二熱交換器140に送る。第二熱交換器140では、冷却水と、配管系統101の媒体との熱交換が行われる。つまり第二熱交換器140では、冷却塔130で冷却された冷却水によって、配管系統101の媒体が冷却される。冷却された媒体は、熱交換器4に送られ、配管3内の地下水と熱交換を行う。これによって、配管3内の地下水は冷却されて注水井戸22に注水され、冷水蓄熱がなされる。
【0040】
また、
図8に示すように、地下水を冷却して冷水蓄熱を行うには、冷凍機モードが利用されてもよい。
冷凍機モードでは、負荷設備100は、冷却塔130と熱源機110とを冷凍機として用いる。この場合、揚水井戸21となる第一井戸2Aのポンプ31は、地下水をくみ上げて熱交換器4に送り込む。熱交換器4は、配管3内の地下水と負荷設備100側の配管系統101を流れる媒体との間で熱交換を行い、地下水を冷却する。負荷設備100側において、熱交換器4における熱交換により加熱された媒体は、熱源機110に送り込まれる。第二熱交換器140を介して冷却塔130に接続された熱源機110は、加熱された媒体を熱交換により冷却する。熱源機110における熱交換によって冷却された媒体は、熱交換器4に再び送りこまれて循環する。熱交換器4では、冷却された媒体と配管3内を流れる地下水との熱交換を行うことで、地下水が冷却される。地中熱利用システム1は、冷却された地下水を、配管3を通して注水井戸22に注水することで、冷水蓄熱を行う。
【0041】
本実施形態の制御装置80の動作について説明する。
制御装置80の動作は、制御方法の実施形態に相当する。
制御装置80は、
図9に示す各ステップを実施する。
【0042】
まず、ポンプ動作制御部81は、負荷設備100側で、冷房モード又は暖房モードで運転を行っている場合、熱交換器4を経て注水井戸22に注水される地下水の設定温度に応じて、揚水井戸21から注水井戸22に地下水を送水するポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整する(ST01:ポンプの動作周波数を調整するステップ)。これにより、ポンプ31による揚水井戸21から注水井戸22への注水流量の調整がなされる。
【0043】
ST01の実施に続いて、ポンプ動作制御部81は、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、最低周波数まで低下したか否かを判定する(ST02:ポンプの動作周波数が最低周波数まで低下したか否かを判定するステップ)。
【0044】
ST02における判定の結果、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、最低周波数まで低下していなければ、ST01に戻り、ポンプ動作制御部81は、ポンプ31による揚水井戸21から注水井戸22への注水流量の調整を継続する。
ST02における判定の結果、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、最低周波数まで低下していた場合、制御弁開閉制御部82は、注水井戸22に注水される地下水の設定温度に応じて、制御弁72の開度を閉じる方向に調整する(ST03:制御弁の開度を調整するステップ)。制御弁開閉制御部82は、制御弁72の開度を調整することで、注水井戸22への注水流量の調整を行う。このとき、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数は、最低周波数を維持している。つまり、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が最低周波数である状態で、制御弁72を閉じることで、制御装置80は、注水井戸22に注水される地下水の流量を、さらに低下させる。
【0045】
ST03の実施に続いて、制御弁開閉制御部82は、制御弁72の開度が、予め設定された最小設定開度であるか否かを判定する(ST04:制御弁の開度が最小設定開度であるか否かを判定するステップ)。
ST04の判定の結果、制御弁72の開度が最小設定開度でなければ、ST03に戻り、制御弁開閉制御部82は、処理を継続する。
ST04の判定の結果、制御弁72の開度が最小設定開度であれば、負荷側流路制御部83が、負荷設備100側の運転モードを、冷却塔モードに切り換える(ST05:負荷設備側の運転モードを冷却塔モードに切り換えるステップ)。冷却塔モードでは、地中熱利用システム1は、冷却塔130の冷却水によって冷却された媒体と熱交換器4で熱交換した地下水を、注水井戸22に注水する。これによって、配管3内の地下水は冷却されて注水井戸22に注水され、冷水蓄熱が実施される。
例えば、大気温度が高いことにより、冷却塔モードによる冷水蓄熱が実施できない場合、制御装置80は冷凍機モードに切り替えて、冷凍機モードによる冷水蓄熱が実施されてもよい。
【0046】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、地中熱利用システム1は、揚水井戸21からポンプ31でくみ上げた地下水を、配管3を通して熱交換器4に送る。熱交換器4で、地下水と負荷設備100側の媒体との熱交換を行うことで、地中熱が利用される。熱交換器4を経た地下水は、配管3を通して注水井戸22に注水される。ポンプ31は、インバータ制御により、配管3を介して送水する地下水の流量を調整する。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、地中熱利用システム1は、制御弁72によって配管3内の流量を絞ることで、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、地中熱利用システム1は、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【0047】
また本実施形態の一例によれば、制御弁72が、熱交換器4よりも注水井戸22側に設けられている。
これにより、地中熱利用システム1は、注水井戸22の近くで注水流量を制御することができる。したがって、地中熱利用システム1は、注水井戸22の注水温度を制御しやすい。
【0048】
また本実施形態の一例によれば、制御装置80が、制御弁72を絞ることで配管3内の地下水の流量を調整している場合、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を最低周波数に保つ。
このように、制御弁72を絞って地下水の流量を調整している状態では、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を最低周波数に保つことで、地中熱利用システム1は、制御弁72による流量調整を効率良く行うことができる。
【0049】
また本実施形態の一例によれば、制御装置80は、制御弁72の開度が最小設定開度となった場合、冷却塔130の冷却水によって冷却された媒体と配管3内の地下水とを熱交換器4で熱交換し、冷却した地下水を注水井戸22に注水する。
制御弁72の開度が最小設定開度となると、注水井戸22に注水される地下水の流量を、それ以上、下げることができなくなる。このような場合に、冷却塔130を用いることで、地中熱利用システム1は、注水井戸22に注水する地下水の温度を、さらに調整することが可能となる。これにより、地中熱利用システム1は、低負荷時における注水温度の制御を、より広い範囲で行うことが可能となる。
【0050】
また本実施形態の一例によれば、制御装置80は、ポンプ動作制御部81と、制御弁開閉制御部82と、を備える。
この制御装置80によれば、ポンプ動作制御部81は、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整する。注水井戸22に注水される地下水の流量を調整することによって、制御装置80は、注水井戸22に注水される地下水の温度を調整できる。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、制御弁開閉制御部82は、制御弁72の開度を調整して配管3内の流量を絞ることで、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、制御装置80は、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【0051】
<変形例>
なお、上述の実施形態においては、制御装置80の各種機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをマイコンといったコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各種処理を行うものとしている。ここで、コンピュータシステムのCPUの各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0052】
上述の実施形態において、制御装置80の各種機能を実現するためのプログラムを実行させるコンピュータ190のハードウェア構成の例について説明する。
【0053】
図10に示すように、制御装置80が備えるコンピュータ190は、プロセッサ195と、メモリ196と、記憶/再生装置197と、Input Output Interface(以下、「IO I/F」という。)198と、通信Interface(以下、「通信I/F」という。)199と、を備える。
【0054】
例えば、プロセッサ195は、CPUであってもよい。
例えば、メモリ196は、制御装置80で実行されるプログラムで使用されるデータ等を一時的に記憶するRandom Access Memory(以下、「RAM」という。)等の媒体であってもよい。
例えば、記憶/再生装置197は、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリ等の外部メディアへデータ等を記憶したり、外部メディアのデータ等を再生したりするための装置であってもよい。
例えば、IO I/F198は、制御装置80と他の装置との間で情報等の入出力を行うためのインタフェースであってもよい。
例えば、通信I/F199は、インターネット、専用通信回線等の通信回線を介して、制御装置80と他の装置との間で通信を行うインタフェースであってもよい。
【0055】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、本開示の範囲や要旨に含まれると同様に、本開示の範囲とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0056】
<付記>
実施形態に記載の地中熱利用システム1、制御装置80、制御方法、プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0057】
(1)第1の態様に係る地中熱利用システム1は、揚水井戸21と、注水井戸22と、前記揚水井戸21から前記注水井戸22に延びる配管3と、前記配管3を介して、前記揚水井戸21から前記注水井戸22に地下水を送水可能なポンプ31と、前記配管3に設けられている熱交換器4と、前記配管3に設けられ、前記配管3内の前記地下水の流量を調整可能な制御弁72と、前記ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、前記配管3内の流量を絞るように前記制御弁72を制御することで、前記注水井戸22に注水される前記地下水の流量を調整する制御装置80と、を備える。
【0058】
この地中熱利用システム1は、揚水井戸21からポンプ31でくみ上げた地下水を、配管3を通して熱交換器4に送る。熱交換器4で、地下水と負荷設備100側の媒体との熱交換を行うことで、地中熱が利用される。熱交換器4を経た地下水は、配管3を通して注水井戸22に注水される。ポンプ31は、インバータ制御により、配管3を介して送水する地下水の流量を調整する。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、地中熱利用システム1は、制御弁72によって配管3内の流量を絞ることで、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、地中熱利用システム1は、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【0059】
(2)第2の態様に係る地中熱利用システム1は、(1)の地中熱利用システム1であって前記制御弁72が、前記熱交換器4よりも前記注水井戸22側に設けられている。
【0060】
これにより、地中熱利用システム1は、注水井戸22の近くで注水流量を制御することができる。したがって、地中熱利用システム1は、注水井戸22の注水温度を制御しやすい。
【0061】
(3)第3の態様に係る地中熱利用システム1は、(1)又は(2)の地中熱利用システム1であって、前記制御装置80が、前記制御弁72を絞ることで前記配管3内の前記地下水の流量を調整している場合、前記動作周波数を前記最低周波数に保つ。
【0062】
このように、制御弁72を絞って地下水の流量を調整している状態では、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を最低周波数に保つことで、地中熱利用システム1は、制御弁72による流量調整を効率良く行うことができる。
【0063】
(4)第4の態様に係る地中熱利用システム1は、(1)から(3)の何れか一つの地中熱利用システム1であって、前記熱交換器4で前記配管3内の前記地下水と熱交換を行う媒体を用いる負荷設備100側に冷却塔130を備え、前記制御装置80は、前記制御弁72の開度が最小設定開度となった場合、前記冷却塔130によって冷却された前記媒体と前記熱交換器4で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸22に注水する。
【0064】
制御弁72の開度が最小設定開度となると、注水井戸22に注水される地下水の流量を、それ以上、下げることができなくなる。このような場合に、冷却塔130を用いることで、地中熱利用システム1は、注水井戸22に注水する地下水の温度を、さらに調整することが可能となる。これにより、地中熱利用システム1は、低負荷時における注水温度の制御を、より広い範囲で行うことが可能となる。
【0065】
(5)第5の態様に係る制御装置80は、揚水井戸21からくみ上げられ、熱交換器4を経て注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸21から前記注水井戸22に前記地下水を送水するポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部81と、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸22に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸22に前記地下水を送り込む配管3に設けられた制御弁72の開度を調整する制御弁開閉制御部82と、を備える。
【0066】
この制御装置80によれば、ポンプ動作制御部81は、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整する。注水井戸22に注水される地下水の流量を調整することによって、制御装置80は、注水井戸22に注水される地下水の温度を調整できる。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、制御弁開閉制御部82は、制御弁72の開度を調整して配管3内の流量を絞ることで、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、制御装置80は、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【0067】
(6)第6の態様に係る制御方法は、揚水井戸21からくみ上げられ、熱交換器4を経て注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸21から前記注水井戸22に前記地下水を送水するポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整し、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸22に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸22に前記地下水を送り込む配管3に設けられた制御弁72の開度を調整する。
【0068】
この制御方法は、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整する。これにより、地下水の流量を調整することによって、注水井戸22に注水される地下水の温度を調整できる。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、制御弁72の開度を調整して配管3内の流量を絞ることで、制御方法は、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、制御方法は、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【0069】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータ190に、揚水井戸21からくみ上げられ、熱交換器4を経て注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸21から前記注水井戸22に前記地下水を送水するポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整し、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸22に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸22に前記地下水を送り込む配管3に設けられた制御弁72の開度を調整する方法を実行させる。
【0070】
このプログラムによれば、コンピュータ190は、注水井戸22に注水される地下水の温度に応じて、ポンプ31のインバータ制御の動作周波数を調整する。これにより、地下水の流量を調整することによって、注水井戸22に注水される地下水の温度を調整できる。ポンプ31のインバータ制御の動作周波数が、予め設定された最低周波数となった場合、制御弁72の開度を調整して配管3内の流量を絞ることで、コンピュータ190は、ポンプ31の最低周波数における流量よりも小さい流量で地下水を注水井戸22に注水することが可能となる。これにより、プログラムは、低負荷時において注水温度を制御しやすい。
【符号の説明】
【0071】
1…地中熱利用システム
2…井戸
2A…第一井戸
2B…第二井戸
2a…ケーシング
2b…ストレーナー
2c…開口
3…配管
4…熱交換器
6…井戸蓋
7…温度調整システム
21…揚水井戸
22…注水井戸
31…ポンプ
32…注水弁
35a~35d…逆止弁
71…ポンプコントローラ
72…制御弁
80…制御装置
81…ポンプ動作制御部
82…制御弁開閉制御部
83…負荷側流路制御部
100…負荷設備
101…配管系統
110…熱源機
120…空調機
130…冷却塔
140…第二熱交換器
190…コンピュータ
195…プロセッサ
196…メモリ
197…記憶/再生装置
198…IO I/F
199…通信I/F
HOL…掘削孔
LY…帯水層
OG…地上
ST01…ポンプの動作周波数を調整するステップ
ST02…ポンプの動作周波数が最低周波数まで低下したか否かを判定するステップ
ST03…制御弁の開度を調整するステップ
ST04…制御弁の開度が最小設定開度であるか否かを判定するステップ
ST05…負荷設備側の運転モードを冷却塔モードに切り換えるステップ
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水井戸と、
注水井戸と、
前記揚水井戸から前記注水井戸に延びる配管と、
前記配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に地下水を送水可能なポンプと、
前記配管に設けられている熱交換器と、
前記配管に設けられ、前記配管内の前記地下水の流量を調整可能な制御弁と、
前記ポンプのインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、前記配管内の流量を絞るように前記制御弁を制御することで、前記注水井戸に注水される前記地下水の流量を調整する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記揚水井戸からくみ上げられ、前記熱交換器を経て前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記インバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部を備える
地中熱利用システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記温度に応じて、前記制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部をさらに備える
請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記制御弁が、前記熱交換器よりも前記注水井戸側に設けられている
請求項1又は2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記制御弁を絞ることで前記配管内の前記地下水の流量を調整している場合、前記動作周波数を前記最低周波数に保つ、
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
前記熱交換器で前記配管内の前記地下水と熱交換を行う媒体を用いる負荷設備側に冷却塔を備え、
前記制御装置は、前記制御弁の開度が最小設定開度となった場合、前記冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
請求項1から4の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項6】
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部と、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部と、を備える
制御装置。
【請求項7】
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する
制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
揚水井戸からくみ上げられ、熱交換器を経て注水井戸に注水される地下水の温度に応じて、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記注水井戸に前記地下水を送り込む配管に設けられた制御弁の開度を調整する
方法を実行させるためのプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水井戸と、
注水井戸と、
前記揚水井戸から前記注水井戸に延びる配管と、
前記配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に地下水を送水可能なポンプと、
前記配管に設けられている熱交換器と、
前記配管に設けられ、前記配管内の前記地下水の流量を調整可能な制御弁と、
前記ポンプのインバータ制御の動作周波数が最低周波数となった場合、前記配管内の流量を絞るように前記制御弁を制御することで、前記注水井戸に注水される前記地下水の流量を調整する制御装置と、
前記熱交換器で前記配管内の前記地下水と熱交換を行う媒体を用いる負荷設備側に冷却塔と、を備え、
前記制御装置は、前記制御弁の開度が最小設定開度となった場合、前記冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
地中熱利用システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記揚水井戸からくみ上げられ、前記熱交換器を経て前記注水井戸に注水される前記地下水の温度に応じて、前記インバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部を備える
請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記温度に応じて、前記制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部をさらに備える
請求項2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記制御弁が、前記熱交換器よりも前記注水井戸側に設けられている
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記制御弁を絞ることで前記配管内の前記地下水の流量を調整している場合、前記動作周波数を前記最低周波数に保つ、
請求項1から4の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項6】
揚水井戸から注水井戸に延び、地下水と負荷設備が用いる媒体との熱交換を行う熱交換器が設けられている配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整するポンプ動作制御部と、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に前記地下水を送り込む前記配管に設けられた制御弁の開度を調整する制御弁開閉制御部と、を備え、
前記開度が最小設定開度となった場合、前記負荷設備側の冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
制御装置。
【請求項7】
揚水井戸から注水井戸に延び、地下水と負荷設備が用いる媒体との熱交換を行う熱交換器が設けられている配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に前記地下水を送り込む前記配管に設けられた制御弁の開度を調整し、
前記開度が最小設定開度となった場合、前記負荷設備側の冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
揚水井戸から注水井戸に延び、地下水と負荷設備が用いる媒体との熱交換を行う熱交換器が設けられている配管を介して、前記揚水井戸から前記注水井戸に前記地下水を送水するポンプのインバータ制御の動作周波数を調整し、
前記動作周波数が最低周波数となった場合に、前記注水井戸に前記地下水を送り込む前記配管に設けられた制御弁の開度を調整し、
前記開度が最小設定開度となった場合、前記負荷設備側の冷却塔によって冷却された前記媒体と前記熱交換器で熱交換した前記地下水を、前記注水井戸に注水する
方法を実行させるためのプログラム。