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特開2022-172677膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体の製造方法、膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体、燃料電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172677
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体の製造方法、膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体、燃料電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20221110BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221110BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078739
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB06
5H126FF05
5H126FF07
(57)【要約】
【課題】 薄くて空気中でも変形する電解質膜に電解質溶液と触媒を担持したカーボンと水または水とアルコール系からなる電極インクを塗布して変形のない膜・電極アッセンブリーを製造する。
【解決手段】 バックシート付電解質膜の電極インク塗布面の両端に補強テープを付与し第一の電極を形成させ、反対極形成のため、電解質膜のバックシートを剥離しても、電解質膜の両サイドに補強テープが貼りつけてあるので加熱吸着ロールとの間に通気性基材を介在させて強力に吸引するので第二の電極形成のための電極インク塗布でも電解質膜が変形しない。また補強テープの代わりに通気性基材の両サイドに粘着剤を施与し、電解質膜の両サイドの未塗布部分とを貼り合わせることができるのでさらに高い効果が得られる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の片面にアノード電極を反対面にカソード電極を形成するにあたり、少なくとも前記電解質膜の片面には電極と電極未塗工部を形成する工程と、前記電極と電極未塗工部に通気性基材を重ねる工程と、前記電極未塗工部の少なくとも一部と接触する通気性基材には少なくとも部分的に粘着剤層を形成する工程と、該粘着剤層と前記電極未塗工部とを位置決めして積層する工程とからなることを特徴とする膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体の製造方法。
【請求項2】
電解質膜の片面にアノード電極を反対面にカソード電極を形成するにあたり、少なくとも前記電解質膜の片面には電極と電極未塗工部を形成し、前記電極と電極未塗工部に通気性基材を重ね、前記電極未塗工部の少なくとも一部と接触する通気性基材には少なくとも部分的に粘着剤層を形成し、該粘着剤層と前記電極未塗工部とを位置決めし積層してなることを特徴とする膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体。
【請求項3】
電解質膜の移動方向であって、少なくとも電解質膜の片面に電極と該電極の両側にストライプ状に電極未塗工部を設ける工程と、通気性基材の前記電極未塗工部に対峙する位置の少なくとも一部に粘着層を形成する工程と、前記電解質膜の未塗工部と通気性基材上の粘着層を圧着積層する工程とからなる膜電極アッセンブリーと通気性基材の積層体により製造することを特徴とする燃料電池 の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPEFC(Polymer Electrolyte membrane Fuel Cell)型燃料電池の電極形成方法、及びその方法により製造された燃料電池に関する。
更に詳細にはCCM( Catalyst coated membrane)式電解質膜・電極形成方法に係る。本発明による塗布とは特に限定しないが、ロールコート、ダイコート、スクリーンプリンティング、カーテンコート、ディスペンス、インクジェット、スプレイを含む霧化(含む繊維化)施与、静電霧化(含む繊維化)施与等の粒子や繊維を被塗物に塗布する工法を含み、マイクロカーテン施与も含む。
マイクロカーテンとは広角パターンのエアレススプレイノズル等で液体などを0.3MPa前後の比較的低圧でスプレイする際、霧になる前の液膜の部分を使用して被塗物とスプレイノズルをトラバースして塗布する方法であって塗面にオーバースプレイ粒子は発生しない。被塗物を通り過ぎて距離が離れると霧状に変化する。
また霧化(繊維化)施与とはスプレイによる粒子化以外に、液体や溶融体などを超音波、エレクトロスピニングなどのスピン、回転体による遠心力、メルトブローン方式などで粒子や繊維をつくりだす方法により必要により圧縮エアの力を借りて(air assist)対象物にそれらを付着あるいは塗布する工法を指す。
【背景技術】
【0002】
従来、電解質膜にアイオノマーの一種である電解質溶液と、カーボン粒子やカーボン繊維に担持した白金等とからなる微粉を混合し電極触媒インクとしてGDL(Gas diffusion layer)に塗布して電解質膜に圧着したり、PTFEなどの離形フィルムに塗布して電解質膜に転写したりしていた。前記圧着方法や転写方式は液体が介在しないため電解質膜と電極の間抵抗が生じ燃料電池の性能を落としていた。それを解決する為CCM方式の電極触媒インクを電解質膜に直接塗布する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1は本発明者により発明された方法であって、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)用の電解質膜を巻き出して加熱した吸着ドラムや吸着ベルトに吸着した状態で電極インクをスプレイ等により積層塗布し乾燥させる方法が提案されている。吸着ドラムなどの加熱により電解質膜が吸着加熱された状態でスプレイ等により薄膜で積層されるのでスプレイ粒子は電解質膜に塗着しレベリングした瞬間に溶媒が瞬時に揮発する。そのため電解質にダメージを与えずまた密着性がたかまるので電極と電解質膜の界面抵抗が極限まで低くできるので理想的なCCMが形成できる。また吸着ドラムと電解質の間に電解質膜より幅の広い通気性の紙やフィルムを介在させて電解質膜を吸引するので吸着ドラムなどの多孔体の吸着痕を残さないようにして電解質膜面全体を均一に吸引する提案もなされている。
【0004】
特許文献2も本発明者により発明された方法であってロール・ツー・ロール(Roll to Roll)用の電解質膜の両面に電極形状のマスクとしてのフィルムを貼り合わせたて電極形状の凹部を形成し、それを巻き出して加熱した吸着ロールや吸着ベルトで吸着しながら電極インクを積層塗布して巻き取る方法が提案されている。またマスクと電解質膜間で形成された電極形状の凹部に触媒微粉を充填して電極形成を行う方法も提案されている。この方法においても電極インクを塗布する際は通気性基材を介して電解質膜を加熱した吸着ドラムなどで吸引しながら電極インクを塗布することを推奨している。
【0005】
CCM方式は理想的であるが、電解質膜は湿気などに敏感であり電極触媒インクを塗布すると一瞬にして変形する為、前述のように加熱吸着ベルトや加熱吸着ロールなどに電解質膜を吸着させて変形しないようにして移動しながらスプレイノズルやスロットノズルなどで塗布する試みがなされている。しかし室温で真円度を数ミクロン以下に研磨装置で研磨した吸着ロールであっても加熱すると複雑な構造故ロールは大きくたわみ変形して真円度が極めて悪かった。そのため液膜を介して接触するスリットやスロットノズルと呼ばれる方法で行うとノズル先端と電解質膜との距離が変化し距離が離れ過ぎる箇所が発生する。そのような現象が起きると電極インクの塗布量は極めて少ないため、溶媒量の多い粘度の低い電極インクを薄膜で塗布する関係からポーラス状の塗布面になり均一な塗布を得ることは極めて困難であった。その課題を解決するために本発明者等によりその発明された特開2010-149257ではアプリケーション温度に加熱した状態で吸着ロール表面を研磨し真円度を5ミクロン以下にできる方法が提案されている。また常温で吸着ロールを研磨したと推定さる特開2015-15258では電解質膜を吸着するロールを冷却して電極インクを電解質膜にスリットノズルで塗布し、ロールを回転移動して冷却ロールに吸着された電解質膜上の電極インクを熱風や赤外線で加熱する方法が提案されている。しかしこの方法では触媒の乾燥後の塗布量はアノードで平方センチ当たり例えば0.1ミリグラム、カソードで0.3ミリグラムと薄膜であるためロールの真円度を3ミクロンとしても電解質膜とノズル先端との距離に影響されないようなウェット膜を厚くする必要が要求される。そのため電解質溶液と触媒を合した固形分を例えば15パーセント以下にする必要があることが予想できる。そうすると乾燥ゾーンまでの間、溶媒(水とアルコール系の混合溶媒)による電解質膜の湿潤と変形を抑えるための強力な真空ポンプによる吸着があっても電解質膜の界面では溶媒によるダメージがあることは想像に難くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-351413
【特許文献2】特開2005-63780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電解質膜は通常キャスティング工法で製造されるため支持基材のバックシートがあるため片方の電極形成のための塗布は電解質膜を変形させることなくスプレイでもスロットノズルでも塗布できる。しかし電解質膜は25ミクロン以下更には15ミクロン以下と薄くまた引っ張ると伸びがあり、上記のごとく空気中の水分で簡単に変形する極めてデリケートな基材のため反対面の電極形成は極めて難しくまた電解質膜の両サイドに電極形成された電解質膜を巻き取ることは極めて難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は高品質で耐久性のあるPEFC型燃料電池用膜電極アッセンブリー(MEA)の製造方法とMEAを提供することである。
より具体的にはロール・ツー・ロール(Roll to Roll)の電解質膜に直接電極インクを塗布し高性能の膜・電極アッセンブリーを製造し、ひいては高性能の燃料電池を製造することにある。
【0009】
本発明はバックシートで支持された長尺の電解質膜を連続的または間欠的に移動して電極インクを塗布し電解質膜の片側に電極を形成する方法であって、前記バックシート面の反対側の電解質膜面の両サイドに補強テープを貼りつける第一の工程と、前記補強テープを貼り付けた面の電解質膜に第一の電極インクを塗布する第二の工程と、第一の電極インクを乾燥させて第一の電極を形成する第三の工程と、少なくとも片側の電極が形成された両サイドの縦断面が補強テープ、電解質膜、バックシートの層からなる複合シートであって該複合シートを使用して電解質膜・電極アッセンブリーを製造することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0010】
本発明はバックシートで支持された長尺の電解質膜を連続的または間欠的に移動して電極インクを塗布し電解質の片側に電極を形成する方法であって、前記バックシート面の反対側に第一の電極インクを塗布する工程と、第一の電極インクを乾燥して第一の電極を形成する工程と、第一の電極を支持する通気性基材を準備する工程と、前記電解質膜の第一の電極インクの塗布面の両サイドの電極非塗布部と前記通気性基材を接着剤または粘着剤を介在させて貼り合わせる工程と、前記両サイド以外の中央部よりの縦断面が通気性基材、電極インク、電解質膜、バックシート層として密着した複合シートにする工程とからなり該複合シートを使用して電解質膜・電極アッセンブリーを製造することを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は加熱吸着ロールまたは加熱吸着ベルトに前記複合シートの通気性基材側を吸着する工程と、前記バックシートを剥離する工程と、前記電解質膜を前記通気性基材を介して加熱吸引しながら前記第一の電極の反対面の電解質膜上に第二の電極インクを塗布する工程と、前記第二の電極インクを乾燥させて第二の電極を形成する工程ととからなることを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は前記膜・電極アッセンブリーを巻き取るにあたり前記第二の電極を支持するための離形処理された基材を前記第二の電極に積層して、または前記通気性基材があらかじめ離形処理されていることを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0013】
本発明は前記補強テープを貼り付け第一の電極を形成させた面に通気性基材を重ねて吸着ロールまたは吸着ベルトで吸引する工程と、バックシートを前記電解質面から剥離する工程と、前記第一の電極の反対面の電解質膜を加熱吸着しながら第二の電極インクを塗布する工程と、前記第二の電極インクを乾燥させて第二の電極を形成する工程とからなることを特徴とする燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0014】
本発明は前記通気性基材の両サイドに介在した接着剤または粘着剤は通気性基材にポーラス状に塗布されていることを特徴とする膜・電極アッセンブリーの製造方法。
【0015】
本発明では接着剤または粘着剤は微粘着剤も含み少なくとも耐溶剤性があることを特徴とする膜・電極アッセンブリーの製造方法を提供する。
【0016】
本発明はロール・ツー・ロール(Roll to Roll)で移動する燃料電池用電解質膜の片側にアノード極を、アノード極の反対側にカソード極の触媒を含む電極を形成した膜・電極アッセンブリーを用いてなる燃料電池であって,バックシートを備えた電解質膜の両端に補強用フィルムを施与する第一の工程と、加熱吸着ロールまたは加熱吸着ベルトでバックシートを吸着して前記補強用フィルムが施与された面に触媒を塗布する第二の工程と、触媒を乾燥または圧着する第三の工程と、
吸着機構を備え回転移動するロールまたはベルトに前記第一の電極面を通気性シートを介して吸着する第四の工程と、前記電解質膜の電極形成の反対面のバックシートを剥離する第五の工程と、前記第一の電極の反対面の電解質膜を前記通気性基材を介して加熱吸引しながら触媒を塗布して第二の電極を形成する第六の工程と、電極を乾燥または圧着する第七の工程と、両極の電極が形成された電解質膜を最終的に巻取ることを特徴とする膜・電極アッセンブリーを用いてなる燃料電池を提供する。
【0017】
本発明はロール・ツー・ロール(Roll to Roll)で移動する燃料電池用電解質膜の片側にアノード極を、片側にカソード極の触媒を含む電極を形成した膜・電極アッセンブリーを用いてなる燃料電池であって、バックシートを備えた電解質膜の両サイドの一部を除いて触媒を塗布して第一の電極を形成する工程と、前記触媒を乾燥または圧着する工程と、予め両サイドに粘着加工を施与した通気性基材を準備する工程と、前記通気性基材の両サイドの粘着加工した位置と前記第一電極形成面の両サイドの未塗布部を重ねて吸着ロールまたは吸着ベルトで吸引する工程と、バックシートを剥離する工程と、前記吸着ロールまたは吸着ベルトを加熱し、または吸着加熱ロールまたは吸着加熱ベルトに移動して前記通気性基材を介して前記電解質膜を吸着する工程と、前記第一の電極の反対面に触媒を塗布して第二の電極を形成する工程と、電極を乾燥または圧着する工程と、両極の電極が形成された電解質膜を最終的に巻取ることを特徴とする膜・電極アッセンブリーを用いてなる燃料電池を提供する。
本発明では前記触媒が白金であって担体がメソポーラスを有するカーボンであること。
【0018】
本発明の燃料電池の膜・電極アッセンブリーの製造方法によればデリケートで例えば15ミクロン以下と極薄の電解質膜であっても直接電解質膜にそれぞれの面に電極インクを塗布できる。更に電解質膜の負荷を低減するため加熱吸引して電解質膜に塗布された電極インクが電解質膜を濡らした後瞬時に、例えば3秒以内に溶媒量の99パーセント以上を揮発することができるので、膜と電極の密着性を高め、界面抵抗を最大に低くできるので理想的である。
【0019】
また本発明ではスプレイ法に属するパルス的スプレイであってスプレイ粒子に更にスピードを付加した工法でありエムテックスマート株式会社の商標登録であるインパクトパルス工法を採用すれば電解質膜への触媒の密着性は更に高まる。
【0020】
更に本発明ではスプレイ法、特にインパクトパルス工法により平方センチメートル当たりの1層の電極量を0.001~0.3ミリグラムに調整できるので例えば2~30層の電極インクの薄膜積層ができる。インパクトパルスによるスプレイ法と加熱吸着ドラムなどとの組み合わせで1層当たりの塗布量を少なくできるが、更に1層当たりの塗布量を少なくするには例えば白金触媒担持のカーボンと、電解質溶液と、水とアルコールからなる電極インクの固形分量を重量比で10%以下例えば3%以下にすることさえできる。
【0021】
固形分濃度を上記のようにするメリットはより薄膜にして積層すればするほど電解質膜の負荷が少なく単位面積当たりの塗布量がより均一になるので燃料電池の性能アップにつながる。
【0022】
さらに本発明ではマイクロポーラスの通気性基材、例えば無塵紙を介して例えば50乃至120℃で加熱し、例えば市販の安価な60KPa以上の真空度の真空ポンプで吸引できるので電解質膜にダメージを与えないばかりか欠陥のない膜・電極アッセンブリーを製造できる。また前記通気性基材の両サイドに粘着剤を施与する方法はグラビアロールなどを使用して粘着剤を点在させてポーラス状にすると貼り付けた電解質膜まで吸着もできるので粘着剤は後工程で剥離させやすい微粘着剤を使用することができる。
【0023】
真空ポンプは市販の安価な例えば2002年ごろから燃料電池業界のCCMアプリケーションで採用されているオリオン社のKRF、KHA、KHHなどから選択するとよい。
【0024】
本発明は特開2004-351413の液体の塗布及び乾燥方法の特許出願時の想定外の極薄膜で変形しやすく扱いづらい電解質膜に直接電極インクをスプレイ方法等により薄膜で積層して品質的に安定した膜・電極アッセンブリーを製造することである。
【発明の効果】
【0025】
上記のように本発明によればデリケートな電解質に電極インクを直接塗布しても理想的な膜・電極の界面を得ることができ高品質の膜・電極アッセンブリーをひいては燃料電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る電解質膜の幅方向に関するバックシート、電解質膜、補強テープの構造の略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電解質膜、電極の幅方向に関する略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電解膜、通気性シートの幅方向に関する略断面図である。
図4】本発明の実施の形態に関するバックシート、電解質膜、第一の電極の幅方向の略断面図である。
図5】本発明の実施の形態に関する第二の電極形成のための反転した電解質膜の略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に関する第二の電極形成した略断面図である。
図7】本発明の実施の形態に関する膜・電極アッセンブリーの略断面図である。
図8】本発明の実施の形態に関する巻き出し、第一の電極インク塗布乾燥、巻き取りの該略図である。
図9】本発明の実施の形態に関する巻き出し、第二の電極インク塗布乾燥、巻き取りの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0028】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0029】
図1においてバックシート2を備えた電解質膜1に補強テープ3を貼り付ける。補強テープは加熱や溶媒雰囲気に耐え、剥離した時残渣の残らないものであれば材質を問わない。
【0030】
図2図1の構成に電解質膜に貼り付けた補強テープ以外の箇所に電解膜に第一の電極インクを塗布し第一の電極4を形成させたものである。塗布がスプレイの場合は補強テープの上に電極インクが若干付着しても問題ない。
【0031】
図3図2を反転させて通気性基材2を第一の電極面4に積層した図である。補強テープ3の表面に微粘着剤などの粘着剤をあらかじめ施与してあると電解質膜を貼り合わせることができる。
【0032】
図4は補強テープを貼り付けないでバックシート2で支持された電解質膜1に第一の電極を形成した図である。
【0033】
図5は通気性基材6の両サイドに予め粘着剤7を施与した通気性基材6を電解質膜1の電極形成されていない部位に貼り付けた図である。電解質膜1の上部にはバックシート2が残されている。バックシート2は後述する吸着ロール上で通気性基材を吸着している際に吸着するとよい。
【0034】
図6図5のバックシートを剥離して、後述する加熱吸着ロール上で通気性シート6を介して吸着された電解質膜に第二の電極インクを塗布して乾燥された第二の電極が形成された図である。
【0035】
図7は本発明により製造された膜・電極アッセンブリーの図である。図6の通気性シート6を電解質膜1から剥離することにより得られる。電解質膜1に第一の電極4と第二の電極が形成されている。
【0036】
図8は巻き出しロールストック10からバックシートで支持された電解質膜が送り出されガイドロール1で圧接しながら吸着加熱ロール20に送られ吸引加熱された状態で塗布ヘッド21から電極インクがスプレイ塗布され、十分乾燥された後、吸着ロールとガイドロールから離脱し巻き取りロールストック11として巻き取られる。塗布方法はスプレイに限定するものではない。また乾燥工程が後工程にある場合ここでの乾燥は十分でなくてもよい。
また吸着加熱ロールは吸着加熱ベルトでよい。また吸着加熱は吸着ドラムまたは吸着ベルトだけでも良く電解質膜の加熱は塗布以降の工程だけでよい。
【0037】
図9図8に多機能さを併せ持ったシステムで、巻き出しロールストック10と一緒に通気性基材6を送り込みガイドロールと吸着加熱ロール20で圧接して吸着させつつ、バックシート2を剥離して、電解質膜は加熱吸着したまま移動し、塗布ヘッドで第二の電極インクを塗布し、乾燥させて第二の電極を形成した後、ガイドロールから離脱して巻き取られる。通気性基材6は剥離して別に巻き取られる。
その際、別の電極支持基材8をガイドロールと加熱吸着ロール間から電極に積層させながら移動させ巻き取ることができる。尚電極を形成した後通気性基材6と一緒に巻きとる場合、電極支持基材は必要なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によればPEFC燃料電池用膜・電極アッセンブリーをCCM方式で高品質で製造できる。
【符号の説明】
【0039】
1 電解質膜
2 バックシート
3、3´ 補強テープ
4 第一の電極
5 第二の電極
6 通気性基材(シート)
7、7´ 粘着剤層
8 電極支持基材
10 巻き出しロールストック
11 巻き取りロールストック
20 加熱吸着ロール
21 塗布ヘッド
23 ガイドロール1
24 ガイドロール2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9