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特開2022-172724ロータリダンパおよびブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172724
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ロータリダンパおよびブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/12 20060101AFI20221110BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20221110BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F16F9/12
B60T7/06 E
F16J15/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078848
(22)【出願日】2021-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮平
(72)【発明者】
【氏名】西岡 渉
【テーマコード(参考)】
3D124
3J043
3J069
【Fターム(参考)】
3D124AA34
3D124BB01
3D124CC20
3D124DD15
3D124DD18
3D124DD27
3J043AA07
3J043AA16
3J043CB13
3J043DA04
3J043DA20
3J069AA41
3J069AA44
3J069DD50
(57)【要約】
【課題】フェイルセーフ機能を備えたブレーキペダル用ダンパとして好適なロータリダンパを提供する。
【解決手段】ケース11がロータ12に対して正転方向Nに回転すると制動トルクを発生させる、自動車のブレーキペダル用のロータリダンパ1において、ケース11を熱可塑性樹脂で形成するとともに、このケース11に、ブレーキペダル4と連動してペダル回転中心O回りに回転するプレート5を挟む、径方向外方に突出した一対のアーム部19a、19bを設ける。また、一対のアーム部19a、19bのうち、正転方向Nの下流側に位置するアーム部19aに、一定幅の湾曲部191を設けるとともに、この湾曲部191よりも先端側に位置する支持部192でプレート5を支持するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータを相対的に回転可能に収容するケースと、を備え、前記ケースが前記ロータに対して正転方向に回転すると制動トルクを発生させる、自動車のブレーキペダル用のロータリダンパであって、
前記ケースは、
熱可塑性樹脂で形成されており、
前記ブレーキペダルと連動してペダル回転中心回りに回転するプレートを挟む、径方向外方に突出した一対のアーム部を有し、
前記一対のアーム部のうち、前記正転方向の下流側に位置するアーム部は、
一定幅の湾曲部と、
前記湾曲部よりも先端側に位置し、前記プレートを支持する支持部と、を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリダンパであって、
前記正転方向の下流側に位置するアーム部は、
前記ケースから径方向外方に延びて、前記湾曲部と連結する連結部をさらに有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータリダンパであって、
前記ケースは、
粘性流体が充填された円筒室と、
前記円筒室の側壁面から径方向内方に突出して、前記円筒室を仕切る仕切り部と、を有し、
前記ロータは、
外周面が前記仕切り部の先端面と近接する、円筒状のロータ本体と、
前記ロータ本体の外周面から径方向外方へ突出し、先端面が前記円筒室の側壁面と近接して、前記円筒室を仕切るベーンと、を有し、
前記ロータリダンパは、さらに、
前記仕切り部あるいは前記ベーンに形成され、前記ロータの回転方向に沿って前記仕切り部あるいは前記ベーンの両側面間を貫く流路と、
前記ロータが前記ケースに対して前記正転方向に回転した場合に、前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記ケースに対して反転方向に回転した場合に、前記流路を解放する逆止弁と、を備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリダンパであって、
前記仕切り部の先端面と前記ロータ本体の外周面との隙間を塞ぐ第1シール材、および前記ベーンの先端面と前記円筒室の側壁面との隙間を塞ぐ第2シール材の少なくとも一方をさらに備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロータリダンパを備えたブレーキシステムであって、
ペダル回転中心に配置されたシャフトと、
前記シャフトに回転可能に取り付けられるとともに、ブレーキマスタシリンダに連結されたブレーキアームと、
前記ブレーキアームの先端に取り付けられたブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルと連動してペダル回転中心回りを回転するように前記ブレーキアームに取り付けられたプレートと、を備え、
前記ロータリダンパは、
前記ロータが前記シャフトに固定されて、当該ロータの前記ペダル回転中心回りの回転が拘束されており、
前記ブレーキペダルが踏み込まれて、前記プレートがペダル回転中心回りを正転方向に回転したときに、前記プレートを、前記一対のアーム部のうち前記正転方向の下流側に位置するアーム部の前記支持部で支持し、前記ブレーキペダルが踏み込みから解放されて、前記プレートが前記ペダル回転中心回りを反転方向に回転したときに、前記プレートを、前記一対のアーム部のうち前記正転方向の上流側に位置するアーム部で支持するように取り付けられ、
前記プレートは、
前記一対のアーム部間の根元部分と干渉しないように、前記一対のアーム部に挟み込まれて把持される
ことを特徴とするブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパに関し、特に、ブレーキペダル用ダンパに好適なロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
正転方向の回転に対して強い制動トルクを発生させる一方、反転方向の回転に対しては弱い制動トルクを発生させるロータリダンパが知られている。例えば、特許文献1には、構造が簡単で安価に製造可能なロータリダンパが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のロータリダンパは、円筒室を備えたケースと、円筒室内に回転自在に収容されたロータと、円筒室内に充填された粘性流体と、ケースの開口側端面に取り付けられて円筒室内にロータを粘性流体とともに封じ込める蓋と、を備えている。
【0004】
ロータは、円筒形状のロータ本体と、円筒室の側壁面に対して僅かな隙間を形成するように、ロータ本体の外周面から径方向外方に突出して形成されたベーンと、を有する。ベーンには、ロータの回転方向に沿って一方の側面(第一の側面と呼ぶ)から他方の側面(第二の側面と呼ぶ)へと繋がる流路が形成されている。また、ベーンの先端面(円筒室の側壁面と対向する面)には、円筒室の側壁面との僅かな隙間を埋めるシール材が取り付けられている。このシール材は、ベーンに形成された流路の開閉を行う弾性体の逆止弁を有する。また、円筒室の側壁面には、ロータ本体の外周面と僅かな隙間を形成するように、径方向内方に突出した仕切り部が形成されている。
【0005】
以上のような構成において、特許文献1に記載のロータリダンパは、ベーンの第一の側面から第二の側面へ向かう方向(正転方向)に回転させる力がロータに加わると、円筒室内の粘性流体によって逆止弁がベーンの第二の側面に押し付けられて、流路が逆止弁で塞がれる。これにより、粘性流体の移動が、円筒室の仕切り部とロータ本体の外周面との隙間およびケースの閉口側端面(底面)とベーンの下面(ケースの閉口側端面と対向する面)との隙間を介してのみに制限されて、ベーンの第二の側面側の粘性流体に対する圧力が高まり、強い制動トルクが発生する。一方、ベーンの第二の側面から第一の側面へ向かう方向(反転方向)に回転させる力がロータに加わると、ベーンの第一の側面側の粘性流体が、流路に流入して逆止弁を押し上げて流路を開放する。したがって、粘性流体の移動がベーンに形成された流路においても行われるため、ベーンの第一の側面側の粘性流体に対する圧力は高くならず、このため、弱い制動トルクが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-301272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のロータリダンパは、自動車のドライバーがブレーキペダルを踏み込んだときに強い制動トルクを発生するようにブレーキペダルに連動させることにより、自動車のブレーキペダル用ダンパとして用いることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のロータリダンパを自動車のブレーキペダル用ダンパとして用いる場合、フェイルセーフの観点から、ロータリダンパに不具合が生じてケースとロータとの相対的な回転が阻止されるときでも、ブレーキペダルを強く踏み込むことで確実にブレーキをかけられるようにする必要がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フェイルセーフ機能を備えたブレーキペダル用ダンパとして好適なロータリダンパおよびこのロータリダンパを用いたブレーキシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ケースがロータに対して正転方向に回転すると制動トルクを発生させる、自動車のブレーキペダル用のロータリダンパにおいて、ケースを熱可塑性樹脂で形成するとともに、このケースに、ブレーキペダルと連動してペダル回転中心回りに回転するプレートを挟む、径方向外方に突出した一対のアーム部を設ける。また、一対のアーム部のうち、正転方向の下流側に位置するアーム部に、一定幅の湾曲部を設けるとともに、このアーム部の湾曲部よりも先端側でプレートを支持するようにした。
【0011】
例えば、本発明のロータリダンパは、
ロータと、前記ロータを相対的に回転可能に収容するケースと、を備え、前記ケースが前記ロータに対して正転方向に回転すると制動トルクを発生させる、自動車のブレーキペダル用のロータリダンパであって、
前記ケースは、
熱可塑性樹脂で形成されており、
前記ブレーキペダルと連動してペダル回転中心回りに回転するプレートを挟む、径方向外方に突出した一対のアーム部を有し、
前記一対のアーム部のうち、前記正転方向の下流側に位置するアーム部は、
一定幅の湾曲部と、
前記湾曲部よりも先端側に位置し、前記プレートを支持する支持部と、を有する。
また、本発明のブレーキシステムは、
上述のロータリダンパを備えたブレーキシステムであって、
ペダル回転中心に配置されたシャフトと、
前記シャフトに回転可能に取り付けられるとともに、ブレーキマスタシリンダに連結されたブレーキアームと、
前記ブレーキアームの先端に取り付けられたブレーキペダルと、
前記ブレーキペダルと連動してペダル回転中心回りを回転するように前記ブレーキアームに取り付けられたプレートと、を備え、
前記ロータリダンパは、
前記ロータが前記シャフトに固定されて、当該ロータの前記ペダル回転中心回りの回転が拘束されており、
前記ブレーキペダルが踏み込まれて、前記プレートがペダル回転中心回りを正転方向に回転したときに、前記プレートを、前記一対のアーム部のうち前記正転方向の下流側に位置するアーム部の前記支持部で支持し、前記ブレーキペダルが踏み込みから解放されて、前記プレートが前記ペダル回転中心回りを反転方向に回転したときに、前記プレートを、前記一対のアーム部のうち前記正転方向の上流側に位置するアーム部で支持するように取り付けられ、
前記プレートは、
前記一対のアーム部間の根元部分と干渉しないように、前記一対のアーム部に挟み込まれて把持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ブレーキペダルの踏み込みに連動してプレートが正転方向の下流側に位置するアーム部を押圧するようにロータリダンパを設置することにより、ブレーキペダルの踏み込みに対して制動トルクを発生させることができる。また、ケースを熱可塑性樹脂で形成するとともに、正転方向の下流側に位置するアーム部に湾曲部を設けて、このアーム部の湾曲部よりも先端側でプレートを支持させるので、プレートの押圧によってこのアーム部に生じる応力が湾曲部に集中する。このため、ロータリダンパに不具合が生じてケースとロータとの相対的な回転が阻止される場合でも、ブレーキペダルを強く踏み込むことにより、湾曲部を破損させて、ブレーキをかけることができる。さらに、この湾曲部の幅を一定にしているので、このアーム部の湾曲部よりも先端側に加わるプレートの押圧方向のばらつきによる、湾曲部の破損に必要なブレーキペダルの踏み込み力のばらつきを小さくすることができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、フェイルセーフ機能を備えたブレーキペダル用ダンパとして好適なロータリダンパおよびこのロータリダンパを用いたブレーキシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)~図1(C)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の正面図、側面図、および背面図である。
図2図2(A)は、図1(A)に示すロータリダンパ1のA-A断面図であり、図2(B)は、図1(B)に示すロータリダンパ1のB-B断面図である。
図3図3(A)および図3(B)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のA部拡大図およびB部拡大図である。
図4図4(A)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のC部拡大図であり、図4(B)は、図2(B)に示すロータリダンパ1のD部拡大図である。
図5図5(A)は、ケース11の正面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すケース11のC-C断面図であり、図5(C)は、ケース11の背面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すケース11のE部拡大図であり、図5(E)は、図5(A)に示すケース11のD-D断面拡大図であり、図5(F)は、図5(A)に示すケース11のE-E断面拡大図である。
図6図6(A)および図6(B)は、ロータ12の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ12のF-F断面図である。
図7図7(A)および図7(B)は、第1シール材13の正面図および側面図であり、図7(C)は、図7(A)に示す第1シール材13のG-G断面図である。
図8図8(A)および図8(B)は、第2シール材14の正面図および側面図であり、図8(C)は、図8(A)に示す第2シール材14のH-H断面図である。
図9図9(A)~図9(C)は、蓋15の正面図、側面図、および背面図であり、図9(D)は、図9(A)に示す蓋15のI-I断面図である。
図10図10(A)~図10(D)は、軸力発生部材17の正面図、上面図、底面図、および側面図であり、図10(E)は、図10(C)に示す軸力発生部材17のJ-J断面拡大図であり、図10(F)は、図10(D)に示す軸力発生部材17のK-K断面拡大図である。
図11図11(A)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1において、ケース11の仕切り部115の凸部18に装着された軸力発生部材17を、ロータリダンパ1の中心から見た拡大図であり、図11(B)は、図11(A)に示す軸力発生部材17のL-L断面拡大図である。
図12図12(A)および図12(B)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1が適用された自動車のブレーキシステムの一例を示す図である。
図13図13(A)~図13(B)は、図12に示す自動車のブレーキシステムにおいて、ロータリダンパ1に不具合が生じた場合の動作例を示す図である。
図14図14は、ロータリダンパ1とブレーキペダル4のプレート5との位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0016】
図1(A)~図1(C)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の正面図、側面図、および背面図である。また、図2(A)は、図1(A)に示すロータリダンパ1のA-A断面図であり、図2(B)は、図1(B)に示すロータリダンパ1のB-B断面図である。また、図3(A)および図3(B)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のA部拡大図およびB部拡大図であり、図4(A)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のC部拡大図であり、図4(B)は、図2(B)に示すロータリダンパ1のD部拡大図である。
【0017】
本実施の形態に係るロータリダンパ1は、図示するように、ケース11と、ケース11に対して相対的に回転可能にケース11内に収容されたロータ12と、ケース11内に充填されたオイル、シリコン等の粘性流体(不図示)と、ロータ12を粘性流体とともにケース11内に封じ込める蓋15と、一対の軸力発生部材17と、を備えている。このロータリダンパ1は、自動車のブレーキペダル用ダンパであり、ケース11がロータ12に対して相対的に正転方向Nに回転すると強い制動トルクを発生させ、一方、ケース11がロータ12に対して相対的に反転方向Rに回転すると弱い制動トルクを発生させる(図1(C)、図2(B)参照)。
【0018】
図5(A)は、ケース11の正面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すケース11のC-C断面図であり、図5(C)は、ケース11の背面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すケース11のE部拡大図であり、図5(E)は、図5(A)に示すケース11のD-D断面拡大図であり、図5(F)は、図5(A)に示すケース11のE-E断面拡大図である。
【0019】
ケース11は、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂で形成され、図示するように、ケース11内に、一端が開口した円筒室(底付き円筒状の空間)111が形成されており、この円筒室111の底部112には、ロータ12挿入用の開口部113が形成されている。ロータ12は、後述するロータ本体121の下端部123a(図6参照)がこの開口部113に挿入されることにより、ロータ12の回転軸120が円筒室111の中心線110と一致するように、円筒室111内に収容される(図2(A)参照)。また、円筒室111の側壁面114には、径方向内方に突出し、先端面116がロータ12の後述するロータ本体121の外周面124(図6参照)と近接して、円筒室111を仕切る一対の仕切り部115が、円筒室111の中心線110に沿って、この中心線110に対して軸対称に形成されている。
【0020】
一対の仕切り部115には、それぞれ、後述の第1シール材13が装着される(図4(B)参照)。また、一対の仕切り部115は、それぞれ、蓋15の裏面153(図9参照)との対向面である上面119に形成され、軸力発生部材17を装着するための凸部18を有する。凸部18の上面180には、軸力発生部材17の後述する調整部174を挿入するための溝181が円筒室111の径方向に沿って形成されており、その溝底182は、仕切り部115の上面119よりも蓋15側に位置している。また、ケース11の径方向に沿った凸部18の両側面183には、それぞれ、軸力発生部材17の後述する第1圧接部175を装着するための溝184が円筒室111の中心線110に沿って形成されている。
【0021】
円筒室111の側壁面114の開口側118には、蓋15の後述する雄ネジ部152(図9参照)と螺合する雌ネジ部117が形成されている。
【0022】
また、円筒室111の開口側118におけるケース11の外周面190には、自動車のブレーキペダル4と連動してペダル回転中心O回りに回転するプレート5を挟む一対のアーム部19a、19bが径方向外方に突出して形成されている(図12参照)。
【0023】
アーム部19aは、ロータリダンパ1が強い制動トルクを発生させる、ケース11のロータ12に対する正転方向N(図2(B)参照)において、アーム部19bの下流側に位置する。また、アーム部19aは、この回転方向Nに湾曲する湾曲部191と、支持部192と、連結部193と、を有する。
【0024】
湾曲部191は、湾曲部191の曲率中心Cに対して、湾曲部191の全体に亘り径方向断面が同形状であり(図5(F)参照)、かつ一定の径方向の幅Wを有する(図5(C)参照)。
【0025】
支持部192は、湾曲部191よりも先端側に位置し、ブレーキペダル4と連動してペダル回転中心O回りを正転方向Nに回転するプレート5を支持するものであり(図12参照)、プレート5と接触してプレート5を支持する支持面195を有する。ここで、湾曲部191の内周面196における支持部192側端部197および支持面195の湾曲部191側端部201を通過する直線と、支持面195とのなす角α(図5(C)参照)は、プレート5に押圧されて湾曲部191が変形する場合に(図13参照)、支持面195の湾曲部191側端部201がプレート5と線接触を維持できる角度範囲であることが好ましい。ただし、なす角αが10度より小さくなると、支持面195をプレート5と確実に接触させるためにはアーム部19aをより長くする必要があり、ロータリダンパ1が大きくなる。また、なす角αが90度より大きくなると、やはりアーム部19aが長くなってロータリダンパ1が大きくなる。通常、ロータリダンパ1のブレーキペダル4への設置スペースには制約があり、ロータリダンパ1の大型化はそのブレーキペダル4への取り付けを困難にする。なす角αは、30度~60度であることが好ましい。
【0026】
連結部193は、ケース11の外周面190から径方向外方に延びて、湾曲部191と連結する。
【0027】
アーム部19bは、ロータリダンパ1が強い制動トルクを発生させる、ケース11のロータ12に対する正転方向N(図2(B)参照)において、アーム部19aの上流側に位置する。また、アーム部19bには、アーム部19aと対向し、ケース11の外周面190から径方向外方に延びる平坦面194が形成されている。平坦面194は、ブレーキペダル4と連動してペダル回転中心O回りを反転方向Rに回転するプレート5を支持する。
【0028】
図6(A)および図6(B)は、ロータ12の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ12のF-F断面図である。
【0029】
ロータ12は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂で形成され、図示するように、円筒状のロータ本体121と、ロータ12の回転軸120に対して軸対称に形成された一対のベーン(回転翼)122と、を備えている。ベーン122は、ロータ12の回転軸120に沿って形成され、ロータ本体121の外周面124から径方向外方へ突出し、先端面125がケース11の円筒室111の側壁面114と近接して、円筒室111を仕切る。ベーン122には、ロータ12の回転方向に沿ってベーン122の両側面127a、127b間を貫く流路126が形成されている。また、一対のベーン122には、それぞれ、後述の第2シール材14が装着される(図4(B)参照)。
【0030】
ロータ本体121には、外部からの回転力をロータ12に伝達する2面取りシャフト(不図示)を挿入するための、当該ロータの2面取りされた貫通穴128が、回転軸120を中心にして形成されている。そして、ロータ本体121の下端部123aは、ケース11の円筒室111の底部112に形成された開口部113に回転可能に挿入され(図4(A)参照)、ロータ本体121の上端部123bは、蓋15の後述する開口部150(図9参照)に回転可能に挿入される(図3(A)、(B)参照)。
【0031】
なお、円筒室111の開口部113から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16a等のシール材を、ロータ本体121の下端部123aと円筒室111の開口部113との間に介在させてもよい(図4(A)参照)。
【0032】
図7(A)および図7(B)は、第1シール材13の正面図および側面図であり、図7(C)は、図7(A)に示す第1シール材13のG-G断面図である。
【0033】
図示するように、第1シール材13は、ケース11の円筒室111に形成された仕切り部115に装着可能なコの字形状を有しており、底部130が仕切り部115の先端面116とロータ12のロータ本体121の外周面124との間に介在することにより、これらの隙間を塞ぐ(図4(B)参照)。なお、第1シール材13は、相対的に回転するケース11およびロータ12間に配置されるため、その素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
図8(A)および図8(B)は、第2シール材14の正面図および側面図であり、図8(C)は、図8(A)に示す第2シール材14のH-H断面図である。
【0035】
図示するように、第2シール材14は、ロータ12のベーン122に装着可能なコの字形状を有しており、ベーン122の回転方向の幅t1(図6(A)参照)より広い幅t2を有する底部140と、底部140の一方の端部141に一体的に形成され、ベーン122に形成された流路126の径方向の幅t3(図6(B)参照)より広い幅t4を有する第1脚部143と、底部140の他方の端部142に一体的に形成され、ベーン122に形成された流路126の径方向の幅t3より狭い幅t5を有する第2脚部144と、を有する。
【0036】
ベーン122に装着された第2シール材14は、底部140がベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との間に介在することにより、これらの隙間を塞ぐ(図4(B)参照)。また、図2(B)に示すように、ケース11がロータ12に対して相対的に正転方向Nに回転すると、ベーン122とベーン122に対して正転方向Nの下流側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111a(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力が高まり、第2シール材14が正転方向N側に移動して、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aと当接し、ベーン122に形成された流路126を塞ぐ。
【0037】
一方、ケース11がロータ12に対して相対的に反転方向Rに回転すると、ベーン122とベーン122に対して反転方向Rの下流側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111b(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力が高まり、第2シール材14が反転方向R側に移動して、第2脚部144がベーン122の他方の側面127bに当接し、ベーン122に形成された流路126を開放する。なお、第2シール材14は、相対的に回転するケース11およびロータ12間に配置されるため、その素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
図9(A)~図9(C)は、蓋15の正面図、側面図、および背面図であり、図9(D)は、図9(A)に示す蓋15のI-I断面図である。
【0039】
図示するように、蓋15には、ケース11の円筒室111の底部112に形成された開口部113と対向する位置に、ロータ12のロータ本体121の上端部123bを挿入するための開口部150が形成されている。また、蓋15の外周面151には、円筒室111の側壁面114の開口側118に形成された雌ネジ部117と螺合する雄ネジ部152が形成されている。また、蓋15の下面(裏面)153は、ロータ12のベーン122の上面129との間に、円筒室111に充填された粘性流体の流路として機能する隙間G1を形成する(図3(B)参照)。これらの粘性流体の流路として機能する隙間G1は、蓋15のケース11へのねじ込み量(蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合量)を調整することにより調整可能である。
【0040】
なお、蓋15の開口部150から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16b等のシール材を、ロータ12のロータ本体121の上端部123bと蓋15の開口部150との間に介在させてもよい。同様に、蓋15の雄ネジ部152とケース11の円筒室111の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16c等のシール材を、蓋15の外周面151と円筒室111の側壁面114との間に介在させてもよい(図3(A)および図3(B)参照)。
【0041】
図10(A)~図10(D)は、軸力発生部材17の正面図、上面図、底面図、および側面図であり、図10(E)は、図10(C)に示す軸力発生部材17のJ-J断面拡大図であり、図10(F)は、図10(D)に示す軸力発生部材17のK-K断面拡大図である。また、図11(A)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1において、ケース11の仕切り部115の凸部18に装着された軸力発生部材17を、ロータリダンパ1の中心から見た拡大図(図5(A)のF方向矢視図に相当)であり、図11(B)は、図11(A)に示す軸力発生部材17のL-L断面拡大図である。
【0042】
軸力発生部材17は、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、焼結金属等の塑性変形可能な部材、あるいは、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂系エラストマー等の弾性変形可能な部材で形成され、ケース11の一対の仕切り部115の上面119に形成された凸部18にそれぞれ装着されて、仕切り部115の上面119と蓋15の裏面153との間に介在し、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を塞ぐとともに、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させる。
【0043】
図示するように、軸力発生部材17は、蓋15の裏面153と接触する上面171を有する矩形状の本体部170と、本体部170の下面172に形成され、ケース11の仕切り部115の上面119に形成された凸部18の両側面183を挟み込んで凸部18を把持する一対のアーム部173と、一対のアーム部173間に配置され、凸部18に向けて突出して、凸部18の溝181に挿入される調整部174と、を有する。
【0044】
一対のアーム部173は、それぞれ、凸部18の両側面183に形成された溝184と圧接する第1圧接部175を有する。第1圧接部175は、凸部18の両側面183に形成された溝184とともに、軸力発生部材17を凸部18に装着する際の位置決めとして機能する。また、この第1圧接部175により、一対のアーム部173は、軸力発生部材17が凸部18から脱落しないように軸力発生部材17を強く把持する。一対のアーム部173は、調整部174の長さL2と、仕切り部115の上面119からこの上面119に形成された凸部18の溝181の溝底182までの長さL3(図5(E)参照)との合計より短い長さL4(<L2+L3)を有する。
【0045】
調整部174は、仕切り部115の上面119に形成された凸部18の溝181の深さL1(図5(E)参照)よりも長い長さL2(>L1)を有し、その先端部176は、その根元部177に対して厚さ方向が幅狭に形成されている。ここで、凸部18の溝181は、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさを有する。また、調整部174の根元部177は、厚さ方向の両側面179に、凸部18の溝181の両側壁185と圧接する第2圧接部178を有する。この第2圧接部178により、調整部174は、凸部18の溝181に嵌合し、軸力発生部材17の凸部18からの脱落をより確実に阻止する。
【0046】
一対のアーム部173が、調整部174の長さL2と、仕切り部115の上面119から凸部18の溝181の溝底182までの長さL3との合計より短い長さL4を有し、調整部174が、凸部18の溝181の深さL1よりも長い長さL2を有するので、一対のアーム部173を仕切り部115の上面119に当接させることなく、調整部174の先端部176を凸部18の溝181の溝底182に当接させることができる。また、凸部18の溝181が、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさを有するので、蓋15のケース11へのねじ込みに対して、軸力を発生させつつ、本体部170の塑性変形あるいは弾性変形に加えて、調整部174の先端部176が積極的に塑性変形あるいは弾性変形することにより、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1の調整シロを大きくすることができる。
【0047】
上記構成のロータリダンパ1において、ケース11がロータ12に対して相対的に正転方向Nに回転すると(図2(B)参照)、第2シール材14が正転方向N側に移動して、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aと当接し、ベーン122に形成された流路126を塞ぐ。このとき、ケース11の円筒室111の仕切り部115に装着された第1シール材13により、仕切り部115の先端面116とロータ12のロータ本体121の外周面124との隙間が塞がれ、かつ、ロータ12のベーン122に装着された第2シール材14により、ベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との隙間が塞がれている(図4(B)参照)。したがって、円筒室111内に充填された粘性流体の移動が、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を介してのみに制限され、ベーン122とベーン122に対して正転方向Nの下流側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111a(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力が高まる。このため、強い制動トルクが発生する。
【0048】
ここで、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1は、蓋15のケース11へのねじ込み量(蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合量)を調整することにより調整可能である。このため、この隙間G1を介して移動する粘性流体の移動量を調整することにより、回転により発生する制動トルクを調整できる。
【0049】
また、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、蓋15に反力を付与する軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。
【0050】
一方、ケース11がロータ12に対して相対的に反転方向Rに回転すると(図2(B)参照)、第2シール材14が反転方向R側に移動して、第2脚部144がベーン122の他方の側面127bに当接し、ベーン122に形成された流路126を開放する。したがって、円筒室111内に充填された粘性流体の移動が、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1に加えて、ベーン122に形成された流路126を介して行われるため、ベーン122とベーン122に対して反転方向R側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111b(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力は高くならない。このため、弱い制動トルクが発生する。
【0051】
図12(A)および図12(B)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1が適用された自動車のブレーキシステムの一例を示す図である。
【0052】
このブレーキシステムは、ペダル回転中心Oに配置されたシャフト2と、シャフト2に回転可能に取り付けられるとともに、ブレーキマスタシリンダ6に連結されたブレーキアーム3と、ブレーキアーム3の先端に取り付けられたブレーキペダル4と、ブレーキペダル4と連動してペダル回転中心O回りを回転するようにブレーキアーム3に取り付けられプレート5と、一対のアーム部19a、19bによりプレート5を挟み込むように、シャフト2に取り付けられたロータリダンパ1と、を備えている。
【0053】
ここで、シャフト2の先端部は2面取りされており、この先端部がロータリダンパ1のロータ12の2面取りされた貫通穴128に挿入されることにより、ロータ12は、シャフト2に固定され、ペダル回転中心O回りの回転が拘束されている。また、ロータリダンパ1は、ブレーキペダル4を踏み込んで、プレート5がペダル回転中心O回りを正転方向Nに回転したときに、このプレート5をアーム部19aの支持部192の支持面195で支持し、ブレーキペダル4を開放して、プレート5がペダル回転中心O回りを反転方向Rに回転したときに、このプレート5をアーム部19bの平坦面194で支持するように取り付けられている。また、プレート5は、一対のアーム部19a、19b間の根元部分199(図12(A)参照)と干渉しないように、アーム部19aの支持部192の支持面195とアーム部19bの平坦面194との間に挟み込まれて、一対のアーム部19a、19bにより把持される。
【0054】
上記構成のブレーキシステムにおいて、図12(A)に示すように、ブレーキペダル4を踏み込むと、ブレーキマスタシリンダ6が圧縮するとともに、プレート5がペダル回転中心O回りを正転方向Nに回転し、この回転トルクがアーム部19aを介してロータリダンパ1のケース11に伝わる。ここで、ロータリダンパ1のロータ12は、ペダル回転中心O回りの回転が拘束されているので、ケース11がロータ12に対して相対的に正転方向Nに回転し、強い制動トルクが発生する。これにより、ブレーキペダル4の踏み込みに対して強い反力を付与することができ、良好なブレーキフィールを得ることができる。
【0055】
ところで、図12(A)において、プレート5からアーム部19aに伝わる正転方向Nの回転トルクによってアーム部19aに生じる応力は、アーム部19aの湾曲部191に集中する。このため、ロータリダンパ1に不具合が生じて、ケース11のロータ12に対する正転方向Nの回転が阻止される場合でも、図13(A)~(C)に示すように、ブレーキペダル4を強く踏み込むことにより、湾曲部191を変形させ、場合によっては破損させて、プレート5をアーム部19aの支持から解放し、ブレーキマスタシリンダ6を圧縮させて、ブレーキをかけることができる。この際、湾曲部191は、連結部193によって湾曲部191とケース11との間に確保された空間D(図13(A)参照)に向けて変形するので、湾曲部191をブレーキペダル4に干渉させることなく変形させることができる。また、湾曲部191は破損後もブレーキペダル4の動きを阻害しない。
【0056】
また、図12(B)に示すように、ブレーキペダル4を踏み込みから解放すると、ブレーキマスタシリンダ6が伸張して、プレート5がペダル回転中心O回りを反転方向Rに回転し、この回転トルクがアーム部19bを介してロータリダンパ1のケース11に伝わる。ここで、ロータリダンパ1のロータ12は、ペダル回転中心O回りの回転が拘束されているので、ケース11がロータ12に対して相対的に反転方向Rに回転するが、この場合に発生する制動トルクは弱い制動トルクであるので、ブレーキマスタシリンダ6の伸長力がこの弱い制動トルクに打ち勝って、ブレーキペダル4は踏み込み前の元の位置に復帰する。
【0057】
なお、図14に示すように、ロータリダンパ1の中心(ペダル回転中心)Oからプレート5までの距離をr1とし、ロータリダンパ1の中心Oから湾曲部191の支持部192側端部197における外周面198までの距離をr2とし、ロータリダンパ1の中心Oから一対のアーム部19a、19b間の根元部分199の最外周部(連結部193の最外周部)200までの距離をr3とした場合、r1>r2かつr1>r3とすることが好ましい。r1≦r2の場合、アーム部19aが長くなってロータリダンパ1が大きくなる。通常、ロータリダンパ1のブレーキペダル4への設置スペースには制約があり、ロータリダンパ1の大型化はそのブレーキペダル4への取り付けを困難にする。また、r1≦r3の場合、プレート5が支持面195のみならず根本部分199とも接触し、アーム部19aがプレート5に押圧された際に、その力によってアーム部19aに生じる応力を湾曲部191に集中させることが困難となる。
【0058】
以上、本発明の一実施の形態を説明した。
【0059】
本実施の形態では、ブレーキペダル4の踏み込みに連動してプレート5が正転方向Nの下流側に位置するアーム部19aを押圧するようにロータリダンパ1を設置することにより、ブレーキペダル4の踏み込みに対して強い制動トルクを発生させることができる。
【0060】
また、ケース11を熱可塑性樹脂で形成するとともに、一対のアーム部19a、19bのうち、正転方向Nの下流側に位置するアーム部19aに湾曲部191を設けて、この湾曲部191よりもアーム部19aの先端側に位置する支持部192により正転方向Nに回転するプレート5を支持するので、プレート5からアーム部19aに伝わる正転方向Nの回転トルクによってこのアーム部19aに生じる応力が湾曲部191に集中する。このため、ロータリダンパ1に不具合が生じて、ケース11のロータ12に対する正転方向Nの回転が阻止される場合でも、ブレーキペダル4を強く踏み込むことにより、湾曲部191を破損させて、プレート5をアーム部19aの支持から解放し、ブレーキマスタシリンダ6を圧縮させて、ブレーキをかけることができる。
【0061】
さらに、湾曲部191は、湾曲部191の曲率中心Cに対して、湾曲部191の全体に亘り径方向断面が同形状であり(図5(F)参照)、かつ径方向の幅Wが一定であるので(図5(C)参照)、支持部192に加わるプレート5の押圧方向のばらつきによる、湾曲部191の破損に必要なブレーキペダルの踏み込み力のばらつきを小さくすることができる。
【0062】
したがって、本実施の形態によれば、フェイルセーフ機能を備えたブレーキペダル用ダンパとして好適なロータリダンパ1を提供することができる。
【0063】
また、本実施の形態において、アーム部19aは、ケース11の外周面190から径方向外方に延びて、湾曲部191と連結する連結部193を有する。この連結部193により、湾曲部191が正転方向N側に撓むスペースが確保される。このため、ロータリダンパ1に不具合が生じて、ケース11のロータ12に対する正転方向Nの回転が阻止される場合でも、ブレーキペダル4を強く踏み込むことにより、湾曲部191が正転方向N側に撓んでブレーキペダル4が正転方向N側に移動し、違和感の少ないブレーキフィールを実現することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、充填された粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパ1において、蓋15をケース11へのねじ込み式とし、蓋15のケース11へのねじ込み量によって、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を調整可能としている。このため、部品点数を増加させることなく、簡易な構成かつ簡単な作業で、隙間G1を介して移動する粘性流体の移動量を調整して、回転により発生する制動トルクを調整することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成され、蓋15に反力を付与する軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、仕切り部115の上面119に凸部18を設けるとともに、軸力発生部材17に、凸部18を挟み込んで把持する一対のアーム部173を設けている。このため、軸力発生部材17を仕切り部115に容易に取り付けることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、軸力発生部材17に、一対のアーム部173間に配置され、仕切り部115の上面119に設けられた凸部18に向けて突出し、凸部18の溝181に挿入されて、この溝181の溝底182と当接する調整部174を設けるとともに、凸部18の溝181を、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさとしている。このため、蓋15のケース11へのねじ込みに対して、調整部174の先端部176が溝181の溝底182を押圧して、積極的に塑性変形あるいは弾性変形するので、隙間G1の調整シロをさらに大きくすることができる。
【0068】
また、本実施の形態において、軸力発生部材17の一対のアーム部173は、それぞれ、仕切り部115の上面119に形成された凸部18の両側面183に形成された溝184と圧接する第1圧接部175を有する。この第1圧接部175により、一対のアーム部173は、軸力発生部材17が凸部18から脱落しないように軸力発生部材17を強く把持することができる。また、この第1圧接部175は、凸部18の両側面183に形成された溝184とともに、軸力発生部材17を凸部18に装着する際の位置決めとして機能し、軸力発生部材17を凸部18に正しく装着することができる。
【0069】
また、本実施の形態において、軸力発生部材17の調整部174は、根元部177の両側面179に、凸部18の溝181の両側壁185と圧接する第2圧接部178を有する。この第2圧接部178により、調整部174は、凸部18の溝181に嵌合し、軸力発生部材17の凸部18からの脱落をより確実に阻止することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、第1シール材13および第2シール材14にポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることにより、第1シール材13および第2シール材14がロータ12のロータ本体121の外周面124を摺動可能に支持する滑り軸受として機能するため、外部からの回転力をロータ12に伝達するシャフト2の偏心等によるガタつきを吸収して、シャフト2を滑らかに回転させることができる。
【0071】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施の形態では、ベーン122に形成された流路126以外の粘性流体の流路として、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を用いる場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されなない。蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を塞がないように軸力発生部材17を配置することにより、ベーン122に形成された流路126以外の粘性流体の流路として、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1に加えて、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を用いてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、円筒室111に一対の仕切り部115を設けるとともに、ロータ12に一対のベーン122を設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。円筒室111に形成された仕切り部115およびロータ12に形成されたベーン122が同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、ベーン122に装着された第2シール材14に、ベーン122に形成された流路126を開閉する逆止弁の機能を持たせているが、本発明はこれに限定されない。ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、ベーン122に形成された流路126を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、ベーン122に形成された流路126を開放する逆止弁を、第2シール材14とは別個に設けてもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、ベーン122に、ロータ12の回転方向に沿ってベーン122の両側面127a、127bを貫く流路126を形成しているが、本発明はこれに限定されない。ベーン122に代えて、あるいはベーン122とともに、仕切り部115に、ロータ12の回転方向に沿って仕切り部115の両側面を貫く流路を形成してもよい。この場合、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、仕切り部115に形成された流路を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、仕切り部115に形成された流路を開放する逆止弁を設ける。
【0076】
なお、仕切り部115に流路を形成する場合、第1シール材13を第2シール材14と同様の形状、すなわち、仕切り部115の外周縁の周方向幅より広い幅を有する底部と、底部の一方の端部に一体的に形成され、仕切り部115に形成された流路の径方向の幅より広い幅を有する第1脚部と、底部の他方の端部に一体的に形成され、仕切り部115に形成された流路の径方向の幅より狭い幅を有する第2脚部と、を有する形状としてもよい。そして、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、第1シール材13の第1脚部が仕切り部115の一方の側面と当接して、仕切り部115に形成された流路を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、第1シール材13の第1脚部が仕切り部115の一方の側面から離れ、第2脚部が仕切り部115の他方の側面に当接して、仕切り部115に形成された流路を開放する逆止弁としての機能を、第1シール材13に持たせてもよい。
【0077】
また、ベーン122に流路126を形成しない場合、第2シール材14は、ベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との隙間を塞ぐことができるものであれば、どのような形状でもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、ケース11の円筒室111に設けられた仕切り部115に第1シール材13を装着しているが、本発明はこれに限定されない。第1シール材13は、省略されていてもよい。同様に、ロータ12のベーン122に第2シール材14を装着しているが、第2シール材14も省略されていてもよい。
【0079】
また、本実施の形態では、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成された軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させている。しかし、本発明はこれに限定されない。ケース11を熱可塑性樹脂で形成し、仕切り部115の上面119に蓋15の裏面153と当接する凸部を軸力発生部としてケース11と一体的に形成してもよい。この場合、軸力発生部(凸部)が、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、塑性変形することにより、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1:ロータリダンパ 2:シャフト 3:ブレーキアーム
4:ブレーキペダル 5:プレート 6:ブレーキマスタシリンダ
11:ケース 12:ロータ 13:第1シール材
14:第2シール材 15:蓋 16a、16b、16c:Oリング
17:軸力発生部材 18:凸部 111:円筒室
19a、19b:アーム部 112:円筒室111の底部
113:円筒室111の開口部 114:円筒室111の側壁面
115:仕切り部 116:仕切り部115の先端面
117:雌ネジ部 118:円筒室111の開口側
119:仕切り部115の上面 121:ロータ本体
122:ベーン 123a、123b:ロータ本体121の端部
124:ロータ本体の外周面 125:ベーン122の先端面
126:流路 127a、127b:ベーン122の側面
128:ロータ本体121の貫通穴 129:ベーン122の上面
130:第1シール材13の底部 140:第2シール材14の底部
141、142:第2シール材14の底部140の端部
143:第2シール材14の第1脚部
144:第2シール材14の第2脚部
150:蓋15の開口部 151:蓋15の外周面
152:雄ネジ部 153:蓋15の下面
170:軸力発生部材17の本体部 171:本体部170の上面
172:本体部170の下面 173:アーム部
174:調整部 175:第1圧接部
176:調整部174の先端部 177:調整部174の根元部
178:第2圧接部 179:根元部177の側面
180:凸部18の上面 181:溝 182:溝底
183:凸部18の側面 184:溝 185:溝181の側壁
190:ケース11の外周面 191:湾曲部 192:支持部
193:連結部 194:平坦面 195:支持面
196:湾曲部191の内周面
197:湾曲部191の支持部192側端部
198:湾曲部191の外周面
199:アーム部19a、19b間の根元部分
200:根元部分199の最外周部
201:支持面195の湾曲部191側端部
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