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特開2022-172743医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172743
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221110BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20221110BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221110BHJP
【FI】
A61B6/03 350V
A61B6/03 370A
A61B6/03 350Z
G01T1/161 C
G06T7/00 612
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078902
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C093
4C188
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA21
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA35
4C093DA02
4C093DA10
4C093EA05
4C093FE13
4C093FF24
4C093FF28
4C093FG18
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4C188KK24
4C188KK33
5L096AA03
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096HA11
(57)【要約】

【課題】AI技術を用いた画像解析の精度を向上させる。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、第1取得部と、第2取得部と、特定部とを備える。第1取得部は、被検体に放射線を照射し当該被検体を通過した放射線、又は被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することにより得られた投影データを取得する。第2取得部は、解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する。特定部は、指定情報に対応する投影データ上での部分領域を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に放射線を照射し当該被検体を透過した放射線、又は被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することにより得られた投影データを取得する第1取得部と、
解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する第2取得部と、
前記指定情報に対応する前記投影データ上での部分領域を特定する特定部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記特定部は、第1の時相における前記体部位の前記投影データ上での対応する部分領域を、第1の部分領域として特定し、
前記第1の部分領域に基づいて、前記第1の時相とは異なる第2の時相における前記体部位の前記投影データ上での対応する部分領域を、第2の部分領域として決定する決定部を更に備える、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記体部位は周期的な動作をする部位であって、前記第1の時相における前記体部位の形状と前記第2の時相における前記体部位の形状とが異なる、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記投影データの第1の部分領域又は第2の部分領域を再構成することで前記第1の部分領域の再構成データを生成する再構成部を更に備える、
請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
解析対象となる体部位の前記投影データを入力とし、当該投影データの解析結果を出力するよう機能付けられた解析モデルに、前記投影データ上での部分領域を入力することで解析を行う解析部を更に備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
入力又は出力の条件が異なる複数の前記解析モデルの中から、一の解析モデルを選択する選択部を更に備え、
前記第2取得部は、前記選択部が選択した前記解析モデルの条件に基づき、前記解析対象の体部位に関する指定情報を取得する、
請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記解析モデルは、前記部分領域を含む情報を用いた機械学習又は深層学習により生成される、
請求項6に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
医用画像処理装置による医用画像処理方法であって、
被検体に放射線を照射し当該被検体を透過した放射線、又は被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することにより得られた投影データを取得する第1取得ステップと、
解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する第2取得ステップと、
前記指定情報に対応する前記投影データ上での部分領域を特定する特定ステップと、
を含む医用画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体に放射線を照射し当該被検体を透過した放射線、又は被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することにより得られた投影データを取得する第1取得ステップと、
解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する第2取得ステップと、
前記指定情報に対応する前記投影データ上での部分領域を特定する特定ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムに関する。
【0002】
従来、医用画像診断装置によって収集された医用画像を機械学習や深層学習等のAI(Artificial Intelligence)技術を用いて解析することが行われている。
【0003】
例えば、X線CT装置によって三次元再構成された医用画像を、AI技術によって作成した解析モデル(学習済モデル)に入力することで、臓器等の画像特徴量を解析することが行われている。また、従来、AI技術によって、三次元再構成が行われる以前の医用画像(以下、投影データともいう)から三次元再構成後の医用画像を生成(推定)することも行われている。
【0004】
ところで、三次元再構成処理を行うと、ノイズ成分として微小な信号成分が失われてしまう場合がある。特に、AI技術を用いて三次元構成後の医用画像を生成する場合には、一般的な症例の患者の医用画像を用いて学習が行われているため、特殊な疾患の患者にのみ存在する特徴的な信号成分が、三次元構成後の医用画像を生成する過程で失われる可能性が高い。このような場合、除去された信号成分が、解析精度の低下を招く可能性がある。
【0005】
そこで、投影データから、臓器等の特徴量を直接推定することが可能な解析モデルが提案されている。この場合、三次元再構成時の信号消失を防ぐことができ、全ての微小信号を解析モデルに入力することが可能となる。しかしながら、投影データを直接入力する場合であっても、投影データ上における対象とする臓器等の位置を正確に特定できないと、臓器周辺の不必要なデータが混入することになるため、解析の精度が低下してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-253841号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】クリストファー M. ビショップ(Christopher M. Bishop)著、「パターン認識と機械学習(Pattern recognition and machine learning)」、(米国)、第1版、スプリンガー(Springer)、2006年、P.225-290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、AI技術を用いた医用画像の解析精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る医用画像処理装置は、第1取得部と、第2取得部と、特定部とを備える。第1取得部は、被検体に放射線を照射し当該被検体を通過した放射線、又は被検体に投与された核種が放出する放射線を検出することにより得られた投影データを取得する。第2取得部は、解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する。特定部は、指定情報に対応する投影データ上での部分領域を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係るサイノグラムデータの一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るサイノグラムデータ上の領域を特定する処理の一例を示す説明図である。
図4図4は、実施形態に係る所定の時相における対象領域を特定する処理の一例を示す説明図である。
図5図5は、実施形態に係る大動脈弁が全閉状態である場合と全開状態であるとサイノグラムデータとの関係を示す説明図である。
図6図6は、実施形態に係る異なる時相における対象領域を決定する処理の一例を示す説明図である。
図7図7は、実施形態に係る機械学習処理の一例を示す説明図である。
図8図8は、実施形態に係る解析処理の一例を示す説明図である。
図9図9は、実施形態に係るX線CT装置の機械学習処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係るX線CT装置の解析処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る医用画像処理装置について説明する。説明を具体的にするために、実施形態に係る装置として、医用画像処理装置がX線CT装置のコンソール装置である場合を例として説明する。また、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と寝台装置30とコンソール装置40とを有する。
【0013】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、かつ回転中心から回転フレーム13を支持する支柱に向かう方向をX軸、当該Z軸及びX軸と直交する方向をY軸とそれぞれ定義するものとする。
【0014】
架台装置10は、診断に用いられる医用画像を撮影するための撮影系19を有する。撮影系19は、例えば、X線管11、X線検出器12、ウェッジ16、及びコリメータ17で構成される。すなわち、架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の検出データから投影データを収集する撮影系19を有する装置である。
【0015】
また、架台装置10は、被検体Pを収容するための開口部を有する。被検体Pが載置された天板33は、寝台装置30が設けられる側を入り口として開口部へ収容される。
【0016】
架台装置10は、X線管11と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data Acquisition System)18と、回転フレーム13と、制御装置15と、寝台装置30とを有する。
【0017】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0018】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。
【0019】
ウェッジ16は、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0020】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0021】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をデータ収集装置(DAS18)へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャンネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。なお、チャンネル方向は、回転フレーム13の円周方向を意味する。
【0022】
X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャンネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャンネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(体軸方向、列方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0023】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽版を有する。
【0024】
光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0025】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。
【0026】
なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0027】
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。検出データは、例えば、サイノグラムデータである。
【0028】
サイノグラムとは、X線管11の各位置(以下、ビュー角度ともいう)ごとに、且つX線検出素子ごとに生成される投影データを、ビュー方向とチャンネル方向とに対応付けて示すデータである。ここで、ビュー方向は、ビュー角度に対応し、X線の照射方向を意味する。
【0029】
なお、X線検出器12における1つの検出素子列のみを用いてシングルスキャンを実行した場合、1つのスキャンに対して1つのサイノグラムを生成することができる。また、X線検出器12における複数の検出素子列を用いてヘリカルスキャン又はボリュームスキャンを実行した場合、1つのスキャンに対して複数のサイノグラムを生成することができる。例えば、生成した複数のサイノグラムデータを後述する解析モデルの入力データとすることで、疾患の診断等を行うことができる。
【0030】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持する。
【0031】
回転フレーム13は架台装置の非回転部分(例えば固定フレーム。図1での図示は省略している)により回転可能に支持される。回転機構は例えば回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは例えば当該非回転部分に設けられ、ベアリングは回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレーム13が回転する。
【0032】
回転フレーム13と非回転部分にはそれぞれ、非接触方式または接触方式の通信回路が設けられ、これにより回転フレーム13に支持されるユニットと当該非回転部分あるいは架台装置10の外部装置との通信が行われる。
【0033】
例えば、非接触の通信方式として光通信を採用する場合、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、さらに送信器により当該非回転部分からコンソール装置40へと転送される。
【0034】
なお、通信方式としては、この他に容量結合式や電波方式等の非接触型のデータ伝送の他、スリップリングと電極ブラシを使った接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0035】
制御装置15は、CPU等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。
【0036】
例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。
【0037】
なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0038】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。また、天板33は、図1では図示しないランドマークを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33をその長軸方向(図1のZ軸方向)に移動させるモータあるいはアクチュエータである。
【0039】
支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0040】
寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、基台31を上下方向に移動させる。また、寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、天板33を長軸方向(Z軸方向)に移動させる。
【0041】
コンソール装置40は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集されたX線検出データからX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路45とを備える。
【0042】
メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば投影データや再構成画像データを記憶する。また、メモリ41は、撮影プロトコルを記憶する。
【0043】
ここで、撮影プロトコルとは、撮影系19を制御して被検体Pを撮影し画像を取得するための手順等を規定したものである。撮影プロトコルは、例えば、撮影部位、撮影条件、撮影範囲、再構成条件、架台装置10(撮影系19)の動作、寝台装置30の動作等のパラメータ群である。
【0044】
また、メモリ41は、複数の解析モデル(学習済モデル)を記憶する。解析モデルは、サイノグラムデータを学習用データとした機械学習によって生成される学習済モデルである。なお、複数の解析モデルは、外部のワークステーション等が備える記憶装置に記憶されていてもよい。
【0045】
ここで、解析モデルの各々は、様々な解析を実行することができるよう構成されている。例えば、或る解析モデルは、解析対象となる臓器や器官を表す部分領域のデータが入力されると、当該データから導出される解析対象の状態(病変の有無、繊維化の有無等)を解析結果として出力する。また、例えば、別の解析モデルは、解析対象となる臓器の一部を表す部分領域(例えば、心臓であれば、その一部である大動脈弁等)のデータが入力されると、当該データから導出される解析対象の状態を解析結果として出力する。
【0046】
また、例えば、別の解析モデルは、解析対象となる体内留置デバイスを含む領域を表す部分領域のデータが入力されると、当該データから導出される解析対象の状態(体内留置デバイスの状態、体内留置デバイスと周囲とを含めた領域の状態等)を解析結果として出力する。
【0047】
また、例えば、別の解析モデルは、解析対象となる時相における解析対象となる臓器又は臓器の一部を表す部分領域(例えば、拡張期における心臓の大動脈弁等)のデータが入力されると、当該データから導出される解析対象の状態を解析結果として出力する。また、例えば、別の解析モデルは、解析対象となる組織を表す部分領域(例えば、柔らかい組織、硬い組織等)のデータが入力されると、当該データから導出される解析対象の状態を解析結果として出力する。
【0048】
なお、入力側のデータが同一であっても、解析に使用する解析モデルによって出力される解析結果が異なることがある。例えば、入力側のデータが肝臓領域を表す部分領域である解析モデルであれば、肝臓の疾患の有無を解析結果として出力する解析モデルや肝臓の繊維化の状態を解析結果として出力する解析モデル等が存在する。
【0049】
なお、本実施形態では、上記の説明における部分領域のデータは、サイノグラム上における部分領域のデータである。解析モデルは、このサイノグラム上における部分領域のデータを用いた機械学習により生成されることになる。本実施形態に係るX線CT装置1では、上述の解析モデルを用いることで、様々な解析を実行することができる。
【0050】
また、解析モデルには、解析モデルの条件に関する情報が含まれている。例えば、解析モデルの条件は、入力データの条件や出力データの条件、拍動する体部位の場合の時相の条件等である。なお、解析モデルの条件に関する情報は、例えば、解析モデルのプロパティ等に含まれている。
【0051】
また、メモリ41は、後述するシステム制御機能45a、前処理機能45b、再構成処理機能45c、画像処理機能45d、第1取得機能45e、選択機能45f、第2取得機能45g、特定機能45h、決定機能45i、生成機能45j、学習機能45k、及び解析機能45lを実現するための専用プログラムを格納する。
【0052】
ディスプレイ42は、操作者が参照するモニタであり、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路45によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。
【0053】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路45に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。また、例えば、入力インターフェース43は、操作者から医用画像の解析の目的(以下、解析目的ともいう)の入力を受付ける。
【0054】
また、例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0055】
処理回路45は、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路45は、例えば、システム制御機能45a、前処理機能45b、再構成処理機能45c、画像処理機能45d、第1取得機能45e、選択機能45f、第2取得機能45g、特定機能45h、決定機能45i、生成機能45j、学習機能45k、及び解析機能45lを有する。
【0056】
再構成処理機能45cは、再構成部の一例である。第1取得機能45eは、第1取得部の一例である。選択機能45fは、選択部の一例である。第2取得機能45gは、第2取得部の一例である。特定機能45hは、特定部の一例である。決定機能45iは、決定部の一例である。解析機能45lは、解析部の一例である。
【0057】
実施形態では、構成要素であるシステム制御機能45a、前処理機能45b、再構成処理機能45c、画像処理機能45d、第1取得機能45e、選択機能45f、第2取得機能45g、特定機能45h、生成機能45j、学習機能45k、及び解析機能45lにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路45はプログラムをメモリ41から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
【0058】
換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路45は、図1の処理回路45内に示された各機能を有することになる。
【0059】
なお、図1においては単一の処理回路45にて、システム制御機能45a、前処理機能45b、再構成処理機能45c、画像処理機能45d、第1取得機能45e、選択機能45f、第2取得機能45g、特定機能45h、決定機能45i、生成機能45j、学習機能45k、及び解析機能45lにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路45を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0060】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0061】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0062】
プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0063】
システム制御機能45aは、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路45の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能45aは、入力インターフェース43を介し、ログインのためのユーザ情報(例えばユーザID等)、被検体情報等の入力を受け付ける。また、システム制御機能45aは、入力インターフェース43を介し、撮影プロトコルの入力を受け付ける。
【0064】
さらに、システム制御機能45aは、操作者から解析目的の入力を受付ける。例えば、医用画像の解析用のアプリケーションがメモリ41等に記憶されている場合、システム制御機能45aは、当該アプリケーションのUI(User interface)を介して、解析目的の入力を受付ける。
【0065】
この場合、システム制御機能45aは、例えば、まず、対象臓器の一覧を表示して、操作者から臓器の選択(入力データの種類の選択)を受付ける。次いで、システム制御機能45aは、選択された臓器に紐付く解析目的を一覧表示したメニューを表示することで、操作者から解析目的の選択(出力データの種類の選択)を受付けてもよい。なお、システム制御機能45aは、入力データの種類と出力データの種類とを組み合わせた解析目的の一覧を表示して、操作者から解析目的の入力を受付けてもよい。
【0066】
また、例えば、システム制御機能45aは、操作者から、疑われる疾患名の入力を受付け、当該疾患に紐付く解析目的を一覧表示したメニューを表示することで、操作者から解析目的の選択を受付けてもよい。
【0067】
また、解析目的に紐付く専用アプリケーションがメモリ41等に記憶されている場合、システム制御機能45aは、その専用アプリケーションが起動されたことを条件に、当該専用アプリケーションに紐付く解析目的が入力されたとみなして、解析目的の入力を受付けてもよい。例えば、操作者により肝臓の繊維化解析アプリケーションが起動された場合、システム制御機能45aは、肝臓の繊維化解析を解析目的として、解析目的の入力を受付ける。
【0068】
また、システム制御機能45aは、電子カルテや検査オーダ等に含まれる情報を取得し、当該情報に紐付く解析目的が入力されたとみなして、解析目的の入力を受付けてもよい。例えば、検査項目として「肝臓の繊維化解析」が用意されている場合、対象の被検体Pに「肝臓の繊維化解析」のオーダが存在していれば、システム制御機能45aは、肝臓の繊維化解析を解析目的として、解析目的の入力を受付ける。
【0069】
前処理機能45bは、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0070】
再構成処理機能45cは、前処理機能45bにより生成された投影データに対して、再構成条件に従ってフィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。
【0071】
画像処理機能45dは、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能45cによって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや三次元画像データに変換する。なお、三次元画像データの生成は再構成処理機能45cが直接行なってもよい。
【0072】
なお、後処理は、コンソール装置40又は外部のワークステーションのどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール装置40とワークステーションの両方で同時に処理することにしても構わない。
【0073】
ここで定義される後処理とは、再構成処理機能45cによって再構成された画像に対する処理を指す概念である。例えば、再構成画像のMulti-Planar Reconstruction(MPR)表示やボリュームデータのレンダリング等を含む。
【0074】
また、ワークステーションとしては、例えば、画像処理機能45dを実現するプロセッサと、ROMやRAM等のメモリとをハードウェア資源として有するコンピュータ等が適宜利用可能である。
【0075】
また、再構成処理機能45c及び画像処理機能45dは、後述する特定機能45hが特定した、又は後述する決定機能45iが決定した、解析対象となる体部位等に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を再構成し、三次元画像データを生成してもよい。これにより、解析対象となる体部位等に関する三次元画像データを生成することができる。
【0076】
第1取得機能45eは、被検体PにX線を照射し、当該被検体を透過したX線を検出することにより得られたサイノグラムデータを取得する。サイノグラムデータは、投影データの一例である。具体的には、第1取得機能45eは、DAS18から出力されたサイノグラムデータを取得する。
【0077】
図2は、サイノグラムデータの一例を示す説明図である。図2おいて、横軸は、チャンネルの位置(チャンネル位置)を意味し、縦軸は、ビュー角度を意味する。図2に示すように、サイノグラム上では、物体の軌跡がサインカーブとして描写されている。
【0078】
選択機能45fは、入力又は出力の条件が異なる複数の解析モデルの中から、一の解析モデルを選択する。具体的には、選択機能45fは、システム制御機能45aが操作者から受け付けた解析目的の入力に基づいて、当該目的に応じた解析モデルを選択する。より具体的には、選択機能45fは、解析目的と解析モデルとを対応付けた解析モデルデータテーブルを参照し、システム制御機能45aが受付けた解析目的の入力に対応する解析モデルを選択する。解析モデルデータテーブルは、例えば、メモリ41に記憶される。
【0079】
なお、システム制御機能45aが操作者から直接解析モデルの選択の入力を受付け、選択機能45fは、システム制御機能45aが直接受付けた解析モデルを選択してもよい。
【0080】
第2取得機能45gは、解析対象となる体部位に関する指定情報を取得する。なお、解析対象の体部位に関する指定情報は、解析の対象となる体部位の情報だけでなく、解析の対象となる体部位の状態の情報(例えば、体部位が心臓の場合の心位相等)等も含む情報である。例えば、第2取得機能45gは、選択機能45fが選択した解析モデルの条件に基づき、解析対象の体部位に関する指定情報を取得する。
【0081】
具体的には、第2取得機能45gは、選択機能45fが選択した解析モデルのプロパティを参照し、解析モデルの条件を取得する。そして、第2取得機能45gは、解析モデルの条件から、解析対象の体部位に関する指定情報を特定し、取得する。この場合、例えば、解析モデルの再学習を行うような場合に、当該解析モデルに係る教師データの生成を効率的に行うことができる。
【0082】
また、第2取得機能45gは、システム制御機能45aが受付けた解析目的の入力に基づいて、解析対象となる体部位に関する指定情報を取得してもよい。例えば、解析目的と解析モデルの条件とが対応付けられてメモリ41等に記憶されている場合、第2取得機能45gは、システム制御機能45aが受付けた解析目的に対応する解析モデルの条件に基づき、解析対象の体部位に関する指定情報を取得する。
【0083】
これにより、第2取得機能45gは、新たに生成する解析モデルに関しても、解析対象となる体部位に関する指定情報を取得することができる。
【0084】
特定機能45hは、指定情報に対応するサイノグラムデータの部分領域を特定する。例えば、特定機能45hは、解析の対象となる体部位に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を特定する。
【0085】
ここで、図3は、サイノグラムデータ上の領域を特定する処理の一例を示す説明図である。この例では、選択機能45fが選択した解析モデルが、心臓全体の疾患の有無を検出する解析モデル(以下、心疾患解析モデルともいう)であった場合について説明する。
【0086】
まず、特定機能45hは、画像処理機能45dによって生成された被検体Pの三次元再構成後の三次元画像データから、心臓全体を表す領域を特定する。例えば、特定機能45hは、三次元画像データの特徴量を算出し、メモリ41等に予め記憶されている心臓全体の特徴量を表す心臓全体モデルと比較する。そして、特定機能45hは、三次元画像データ上において、心臓全体モデルと近似する特徴量を有する領域を、心臓全体を表す領域として特定する。
【0087】
そして、特定機能45hは、特定した心臓全体を表す部分領域の三次元座標を、サイノグラムを表す二次元座標に変換し、サイノグラムデータ上で心臓全体を表す部分領域E1を特定する。なお、座標の変換は公知の技術を利用することができる。
【0088】
また、例えば、ヘリカルスキャン又はボリュームスキャンを行った場合、特定機能45hは、特定した心臓全体を表す部分領域のスライス方向の三次元座標に基づいて、第1取得機能45eが取得した複数のサイノグラムデータから、心臓全体を表す部分領域を含む複数のサイノグラムデータを特定する。そして、特定機能45hは、特定したサイノグラムデータ毎に上記のサイノグラムデータ上の心臓全体を表す部分領域を特定する処理を行う。
【0089】
なお、特定機能45hが特定するサイノグラムデータ上での部分領域は、図3で説明した心臓に限らないものとする。
【0090】
例えば、被検体Pがペースメーカー等の体内留置デバイスを体内に留置しており、選択機能45fが体内留置デバイス以外の部分を解析する解析モデルを選択したような場合、特定機能45hは、体内留置デバイス以外の部分に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を特定する。
【0091】
この場合、例えば、特定機能45hは、三次元画像データ上において、体内留置デバイスは輝度値が高い状態で描画されるため、輝度値が閾値を超えている領域を体内留置デバイスに対応する領域とし、輝度値が閾値以下の領域を対象となる領域として特定する。次いで、特定機能45hは、特定した領域の三次元座標を二次元座標に変換して、体内留置デバイス以外の部分に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を特定する。
【0092】
また、例えば、血管造影を行っている場合で、選択機能45fが、血管内を解析する解析モデルを選択したような場合、特定機能45hは、造影剤投入後の画像(以下、サブトラクション画像ともいう)に基づき、血管を表す領域を部分領域として特定する。
【0093】
この場合、例えば、特定機能45hは、画像処理機能45dによって生成されたサブトラクション画像から血管を表す領域を部分領域として特定する。次いで、特定した領域の三次元座標を二次元座標に変換して、血管に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を特定する。
【0094】
また、例えば、特定機能45hは、血管造影を行っている場合で、選択機能45fが、血管周囲内との関係を解析する解析モデルを選択したような場合、非造影でX線吸収される臓器が映っている画像(以下、オリジナル画像ともいう)の血管周囲を含む領域を部分領域として特定する。
【0095】
この場合、例えば、特定機能45hは、画像処理機能45dによって生成されたオリジナル画像から血管周囲を含む領域を部分領域として特定する。次いで、特定機能45hは、特定した領域の三次元座標を二次元座標に変換して、血管周囲を含む領域に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を特定する。
【0096】
なお、X線管11とX線検出器12との位置関係や被検体Pの体型等によっては、一連のビュー角度による撮影の際に、被検体Pの一部がX線の照射範囲から逸脱した所謂トランケーションの状態を示す、トランケーション部分が発生することがある。
【0097】
トランケーション部分が発生している状態で、特定機能45hが部分領域を特定すると、解析の対象となる体部位に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を表す情報に欠損が生じ、特定した部分領域に基づいて行う解析の精度が低下する可能性がある。そこで、特定機能45hは、トランケーション補正を行った上で上記の特定処理を行う。なお、トランケーション補正は既存の技術を利用できる。これにより、解析精度の低下を防止することが可能である。
【0098】
決定機能45iは、解析の対象となる体部位が拍動する部位である場合に、対象となる体部位に対応するサイノグラムデータの部分領域を決定するための処理を行う。以下、この処理が必要な理由について説明する。
【0099】
例えば、対象となる体部位が心臓であれば、拡張期と収縮期とでは位置が異なる。このため、収縮期の解析を行いたい場合に、拡張期におけるサイノグラム上での心臓全体に対応する部分領域を特定したとしても、当該部分領域が、収縮期では心臓全体に対応しない可能性がある。したがって、収縮期における心臓全体に対応するサイノグラム上の部分領域を決定する必要があるためである。
【0100】
そこで、特定機能45hは、第1の時相における体部位のサイノグラムデータ上での対応する部分領域を、第1の部分領域として特定する。そして、決定機能45iは、第1の部分領域に基づいて、第1の時相とは異なる第2の時相における体部位のサイノグラムデータ上での対応する部分領域を、第2の部分領域として決定する。
【0101】
以下、解析の対象となる体部位が心臓の大動脈弁であり、対象となる心位相(拡張期、収縮期等)における大動脈弁の状態を解析したい場合を例に、図4乃至図6を用いて決定機能45iによる処理について説明する。なお、大動脈弁は周期的な動作をする部位の一例である。また、大動脈弁は、心位相によってその形状が異なる部位である。
【0102】
ここで、心位相とは、心臓の収縮と拡張とを含む1回の心拍周期における位相を意味する。例えば、心位相は、心電図のあるR波から次のR波までを1心拍として、あるR波の位相をR-R0%、次のR波の位相をR-R100%として1回の心拍周期における位相を表したものである。
【0103】
図4は、異なる時相における対象領域を決定する処理の一例を示す説明図である。まず、画像処理機能45dによって生成された、所定の心位相(解析の対象となる心位相以外の心位相)における三次元画像データから、大動脈弁を表す領域を特定する。そして、特定機能45hは、図4に示すように、特定した対象領域の三次元座標を二次元座標に変換し、所定の心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁を表す部分領域E2を特定する。
【0104】
一方、決定機能45iは、対象となる心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁のビュー方向の位置を決定する。ビュー方向の位置は、対象となる心位相と、所定の心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁のビュー方向の位置とに基づいて、決定することができる。次に、決定機能45iは、対象となる心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁のチャンネル方向の位置を決定する。
【0105】
大動脈弁は、心臓の拍動により、開閉するため心位相の変化に伴い大きさが変化する。このため、サイノグラムデータ上のチャンネル方向の大動脈弁に対応する位置が心位相により変化する。図5は、大動脈弁の開閉状態とサイノグラムデータ上におけるチャンネル方向の位置と幅との関係の一例を示す説明図である。
【0106】
図5に示すように、大動脈弁が全閉状態BHの時にX線管11からX線XRを照射した場合と全開状態BKの時にX線管11からX線XRを照射した場合とでは、大動脈弁の大きさが異なるためにX線検出器12の検出結果にも差が生じる。具体的には、検出データであるサイノグラムデータSI上の大動脈弁に対応する領域のチャンネル方向における幅が、全閉状態BHの時に最も小さくなり、全開状態BKの時に最も大きくなる。
【0107】
したがって、決定機能45iは、全閉状態BHにおけるサイノグラムデータSI上の大動脈弁に対応する領域のチャンネル方向における幅と、全開状態BKにおけるサイノグラムデータSI上の大動脈弁に対応する領域のチャンネル方向における幅とから、対象となる心位相におけるサイノグラムデータSI上の大動脈弁に対応する領域のチャンネル方向における幅を推定することができる。
【0108】
図6は、異なる時相における対象領域を決定する処理の一例を示す説明図である。図6に示すように、決定機能45iは、特定機能45hが特定した部分領域E2と、上記で推定した対象となる心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁に対応する領域のチャンネル方向における幅と、に基づいて、対象となる心位相におけるサイノグラムデータ上の大動脈弁を表す領域を表す部分領域E3を決定する。
【0109】
このように、決定機能45iは、例えば、解析の対象が大動脈弁の場合、特定機能45hにより、1つの心位相において、大動脈弁に対応するサイノグラムデータ上の部分領域が特定されれば、他の心位相における、大動脈弁に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を決定することができる。このため、複数の心位相について解析を行いたい場合でも、心位相毎に三次元再構成処理及び部分領域の特定処理を行う必要がなくなり、解析の効率を向上させることができる。
【0110】
図1に戻り、説明を続ける。生成機能45jは、解析モデルを生成するための学習用データセットを生成する。具体的には、生成機能45jは、特定機能45hが特定した、解析の対象となる体部位に対応するサイノグラムデータの部分領域を抽出して入力側教師データを生成する。また、生成機能45jは、医用画像を解析することにより取得(出力)される情報から出力側教師データを生成する。そして、生成機能45jは、入力側教師データと出力側教師データと、から学習用データセットを生成する。
【0111】
例えば、心疾患解析モデルを生成する場合、生成機能45jは、サイノグラムデータの心臓に対応する部分領域を抽出して入力側教師データを生成する。
【0112】
次いで、生成機能45jは、画像処理機能45dにより生成された三次元画像データに基づく医師の所見情報(例えば、心疾患の有無の判断)を電子カルテ等から取得し、当該所見情報から出力側教師データを生成する。そして、生成機能45jは、入力側教師データ(心臓に対応するサイノグラムデータ)と出力側教師データ(心疾患の有無)とをペアにして学習用データセットとして生成する。
【0113】
また、例えば、対象となる臓器が心臓等の拍動する臓器であり、また特定の時相についての解析モデルを生成する場合、生成機能45jは、決定機能45iの処理結果に基づき入力側教師データを生成する。一例として、生成機能45jは、決定機能45iが決定した第2の時相に対応するサイノグラムデータの部分領域データを抽出して入力側教師データを生成する。この場合も出力側教師データの生成等は上記の処理と同様のため、以降の処理の説明は省略する。
【0114】
学習機能45kは、生成機能45jが生成した学習用データセットを用いて機械学習を行うことで、解析モデルを生成する。以下、心疾患解析モデルを生成する場合を例に、図4を用いて解析モデルの生成処理について説明する。図7は、機械学習による解析モデルの生成方法の一例を示す説明図である。
【0115】
例えば、学習機能45kは、図7に示すように、入力側教師データである「心臓に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を表すデータ」と、出力側教師データである「医師の所見情報(疾患の有無)」とを学習用データセットとして機械学習エンジンに入力し、機械学習を行うことで、心臓に対応するサイノグラムデータの入力に応じて心疾患の有無を出力するように機能付けられた解析モデル(学習済みモデル)を生成する。
【0116】
ここで、機械学習エンジンとしては、例えば、公知である非特許文献「クリストファー M. ビショップ(Christopher M. Bishop)著、「パターン認識と機械学習(Pattern recognition and machine learning)」、(米国)、第1版、スプリンガー(Springer)、2006年、P.225-290」に記載のニューラルネットワーク(Neural Network)等を適用することができる。
【0117】
なお、機械学習エンジンについては、上記したニューラルネットワークの他、例えば、ディープラーニングや、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等の各種のアルゴリズムを用いるものでもよい。
【0118】
なお、この例では、解析モデルは対象臓器の疾患の有無を解析するためのものであるが、解析モデルはこれに限定されない。例えば、解析モデルは、がんの良性悪性、血流の逆流量、出血の有無等を解析するものであってもよい。この場合は、「医師の所見」の代わりにがんの良性悪性、血流の逆流量、出血の有無等の「解析結果」を用いて機械学習を行う。
【0119】
このように、学習機能45kは、三次元再構成によって信号成分が失われていないサイノグラムデータから抽出されたデータを使用して解析モデルを生成する。つまり、学習機能45kは、三次元再構成を行うと失われてしまう可能性が高い微小な信号についても解析モデルの生成に使用することができるため、解析精度の向上を図ることができる。
【0120】
また、学習機能45kは、生成した解析モデルを、メモリ41に記憶してもよい。なお、学習機能45kは、外部のワークステーション等が備える記憶装置に解析モデルを記憶してもよい。
【0121】
解析機能45lは、解析対象となる体部位のサイノグラムデータを入力とし、当該サイノグラムデータの解析結果を出力するよう機能付けられた解析モデルに、サイノグラムデータ上での部分領域を入力することで解析を行う。具体的には、解析機能45lは、選択機能45fが選択した解析モデルに、サイノグラムデータの部分領域に対応するデータを入力し、当該解析モデルの出力を解析結果として取得する。図8は、学習済モデルを用いた解析方法の一例を示す説明図である。
【0122】
例えば、選択機能45fにより選択された解析モデルが、心疾患解析モデルだった場合、解析機能45lは、図8に示すように、特定機能45hが特定した部分領域に対応するサイノグラムデータを、心疾患解析モデル(学習済モデル)に入力し、心疾患の有無という解析結果を出力する。
【0123】
なお、解析の対象となる被検体Pの体部位が心臓等の拍動する臓器である場合、解析機能45lは、決定機能45iが決定した第2の時相に対応する部分領域に対応するデータを入力する。
【0124】
このように、解析機能45lは、特定機能45hが特定した解析の対象となる体部位に対応するサイノグラムデータ上の部分領域を表すデータを入力することにより、三次元再構成によって信号成分が失われていないサイノグラムデータを解析モデルに入力することができる。つまり、解析機能45lは、全ての微小信号を解析モデルに入力することができるため、解析精度の向上を図ることができる。
【0125】
次に、実施形態に係るX線CT装置1が実行する機械学習処理について説明する。図9は、実施形態に係るX線CT装置1が実行する機械学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0126】
まず、選択機能45fは、操作者から解析目的の入力を受付ける(ステップS1)。次いで、選択機能45fは、メモリ41に記憶された解析モデルの中から、受付けた解析目的に対応する解析モデルを選択する(ステップS2)。このとき、第2取得機能45gは、選択機能45fが選択した解析モデルのプロパティを参照し、解析対象の体部位に関する指定情報を取得する。
【0127】
次に、特定機能45hは、第2取得機能45gが取得した解析対象に関する情報に対応する対象領域を、再構成処理機能45cにより生成された三次元画像データ上から特定する。そして、特定機能45hは、特定した三次元画像データ上の領域の三次元座標を二次元座標に変換し、サイノグラム上における対象領域を特定する(ステップS3)。
【0128】
生成機能45jは、サイノグラムデータから特定機能45hが特定したサイノグラムデータ上の対象領域に対応する部分領域を表すデータを抽出し、出力側教師データを生成する。次いで、生成機能45jは、解析目的に対応する解析結果から出力側教師データを生成する。
【0129】
例えば、生成機能45jは、電子カルテ等から、画像処理機能45dにより生成された三次元画像データに基づく医師の所見情報(疾患の有無等)を解析結果として取得し、出力側教師データを生成する。
【0130】
そして、生成機能45jは、入力側教師データと出力側教師データをペアにして学習用データセットを生成する(ステップS4)。学習機能45kは、生成機能45jが生成した学習用データセットを機械学習エンジンに入力し、解析モデル(学習済モデル)を生成する(ステップS5)。学習機能45kは、生成した解析モデルをメモリ41に記憶して本処理を終了する。
【0131】
次に、実施形態に係るX線CT装置1が実行する解析処理について説明する。図10は、実施形態に係るX線CT装置1が実行する解析処理の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS11乃至S13の処理は、図9のステップS1乃至S3の処理と同様のため、説明を省略する。
【0132】
解析機能45lは、特定機能45hが特定したサイノグラムデータ上の対象領域に対応する部分領域のデータを、選択機能45fが選択した解析モデルに入力する(ステップS14)。解析機能45lは、解析モデルの出力を解析結果として取得し、本処理を終了する(ステップS15)。
【0133】
以上に述べた実施形態に係るX線CT装置1は、サイノグラムデータを取得し、当該サイノグラムデータの、解析対象の体部位に関する指定情報に対応する部分領域を特定する。
【0134】
これにより、サイノグラムデータ上における解析の対象となる部分領域を特定することができる。サイノグラムデータは、生データとも言い換えることができ、三次元再構成を行う前のデータであるため、三次元再構成処理によって情報が欠損してしまうことを防止できる。また、サイノグラムデータ上の解析の対象となる部分のみを特定できるため、不要な情報が混入することも防止できる。
【0135】
したがって、AI技術を用いて解析を実行する場合に、情報が欠損した状態で解析が行われてしまったり、不要な情報が含まれた状態で解析が行われてしまったりする可能性を低減することができる。つまり、本実施形態に係るX線CT装置1によれば、AI技術を用いた医用画像の解析精度を向上させることができる。
【0136】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0137】
(変形例1)
再構成処理機能45cは、AI技術によって三次元再構成処理を実行してもよい。本変形例では、例えば、再構成処理機能45cは、機械学習や深層学習等により生成された、サイノグラムデータの入力に応じて、三次元画像データを出力するように機能付けられた学習済みモデルに、DAS18から出力されたサイノグラムデータを入力することにより、三次元再構成した三次元画像データを生成する。
【0138】
一般に、AI技術によって三次元再構成画像を生成する場合には、一般的な症例の患者の医用画像を用いて学習を行っているため、特殊な疾患の患者にのみ存在する特徴的な信号成分が、三次元構成後の医用画像を生成する過程で失われる可能性が高い。したがって、AI技術によって生成した三次元画像データを画像解析の入力に用いた場合、除去された信号成分が存在することにより、解析精度の低下を招く可能性がある。
【0139】
これに対し、本変形例の解析モデルは、信号が失われていないサイノグラムデータから抽出されたデータを使用して生成されており、解析モデルに入力する入力データもサイノグラムデータ由来であり、信号成分が失われていない。つまり、本変形例によれば、解析精度を低下させることなく、AI技術による美しい三次元画像データを生成することができると考えられる。
【0140】
(変形例2)
上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、医用画像処理装置は、X線CT装置のコンソール装置である場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。医用画像処理装置は、例えば、X線診断装置、アンギオ-CTシステム、トモシンセシス装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置等のモダリティが備えるコンソール装置等であってもよい。また、医用画像処理装置は、これらのモダリティから取得した投影データを処理する外部のワークステーション等であってもよい。
【0141】
なお、SPECT装置又はPET装置の場合、例えば、第1取得機能45eは、被検体Pに投与された核種が放出する放射線(ガンマ線等)を検出することにより得られた検出データを投影データとして取得する。
【0142】
例えば、アンギオ-CTシステムの場合、投影データとして二次元画像データを取得することができるため、特定機能45hは、三次元再構成処理を行うことなく、生データである二次元画像データ上で、解析対象の体部位に関する指定情報に対応する部分領域を特定することが可能である。
【0143】
(変形例3)
X線CT装置1を、面型のX線検出器12を備え、投影データとして二次元画像データを取得できるように構成してもよい。この場合、上記の変形例1のアンギオ-CTシステムの場合と同様に、特定機能45hは、三次元再構成処理を行うことなく、生データである二次元画像データ上で、解析対象の体部位に関する指定情報に対応する部分領域を特定することが可能である。
【0144】
(変形例4)
上記の実施形態では、特定機能45hが、再構成処理機能45c及び画像処理機能45dにより生成された三次元画像データ上で解析対象に対応する部分領域を特定し、特定した部分領域の三次元座標を二次元座標に変換することで、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定する形態について説明した。しかし、特定機能45hは、位置決め画像(以下、スキャノ画像ともいう)に基づいて、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定してもよい。
【0145】
スキャノ画像は、おおよその臓器の位置を把握するためのものであり、三次元再構成なしで生成される二次元画像である。特定機能45hは、スキャノ画像上で特定した解析対象に対応する部分領域の座標から、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定する。
【0146】
本変形例によれば、三次元再構処理を行うことなく、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定することができ、処理回路45にかかる負担を軽減し、処理時間も短縮することができる。
【0147】
(変形例5)
特定機能45hは、簡易的な再構成処理により生成した三次元画像データである標準位置画像に基づいて、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定してもよい。
【0148】
本変形例では、再構成処理機能45cは、2方向以上の多方向の投影データを用いて、簡易な三次元再構成処理を行う。例えば、再構成処理機能45cは、30度以上離れた2方向の投影データを用いてCT画像データを生成し、画像処理機能45dは、当該CT画像データを三次元画像データ(以下、簡易三次元画像データともいう)に変換する。
【0149】
特定機能45hは、画像処理機能45dが生成した簡易三次元画像データ上で、解析対象に対応する部分領域を特定し、特定した部分領域の三次元座標を二次元座標に変換することで、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定する。本変形例によれば、処理回路45にかかる負担を軽減し、処理時間も短縮することができる。
【0150】
(変形例6)
特定機能45hは、標準的な臓器位置を表す三次元画像データである標準位置画像に基づいて、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定してもよい。本変形例では、特定機能45hは、メモリ41等に予め記憶されている標準位置画像上で、解析対象に対応する部分領域を特定し、特定した部分領域の三次元座標を二次元座標に変換することで、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定する。
【0151】
なお、特定機能45hは、被検体Pの体型に応じて、標準位置画像の臓器の位置を補正してもよい。
【0152】
本変形例によれば、予め記憶されている標準位置画像を用いるため、三次元再構処理を行うことなく、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定することができ、処理回路45にかかる負担を軽減し、処理時間も短縮することができる。
【0153】
(変形例7)
特定機能45hは、過去に撮影された被検体Pの三次元画像データ(以下、過去画像ともいう)に基づいて、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定してもよい。本変形例では、特定機能45hは、メモリ41等に予め記憶されている過去画像上で、解析対象に対応する部分領域を特定し、特定した部分領域の三次元座標を二次元座標に変換することで、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定する。
【0154】
本変形例によれば、予め記憶されている過去画像を用いるため、三次元再構処理を行うことなく、サイノグラムデータ上の解析対象に対応する部分領域を特定することができ、処理回路45にかかる負担を軽減し、処理時間も短縮することができる。また、同一人物の三次元画像データを用いるため、精度の高い部分領域の特定が行えると考えられる。
【0155】
上記の実施形態及び変形例では、解析機能45lが、選択機能45fが選択した解析モデルに、解析対象に対応するサイノグラムデータの部分領域を表すデータを入力し、解析結果を出力する形態について説明した。しかし、解析機能45lは、三次元画像データ上の解析対象に対応する部分領域を表すデータを用いて、解析結果を補正してもよい。
【0156】
三次元画像データ上の解析対象に対応する部分領域を表すデータを解析モデルに入力すると、三次元再構成の際に情報の欠損が生じる可能性はあるが、不要なデータが混入している可能性は低い。一方、サイノグラム上の解析対象に対応する部分領域を表すデータを解析モデルに入力すると、情報の欠損が生じる可能性は低いが、入力データにノイズやアーチファクト等が混入する可能性がある。
【0157】
したがって、三次元画像データ上の解析対象に対応する部分領域を表すデータを用いて、解析結果を補正することで、より精度の高い解析結果が得られると考えられる。
【0158】
以上説明した少なくとも実施形態及び変形例等によれば、AI技術を用いた医用画像の解析精度を向上させることができる。
【0159】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0160】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS(Data Acquisition System)
19 撮影系
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
45 処理回路
45a システム制御機能
45b 前処理機能
45c 再構成処理機能
45d 画像処理機能
45e 第1取得機能
45f 選択機能
45g 第2取得機能
45h 特定機能
45i 決定機能
45j 生成機能
45k 学習機能
45l 解析機能
図1
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