(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172750
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ダニ類捕獲用粘着剤組成物及びダニ類捕獲用粘着シート
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20221110BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221110BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A01M1/14 E
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078913
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片山 南美
(72)【発明者】
【氏名】三石 帆波
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121BA03
2B121EA01
2B121FA15
4J004AA05
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB03
4J004BA02
4J004CB02
4J004DB02
4J004FA09
4J004FA10
4J040DF021
4J040DM011
4J040JB01
4J040JB09
4J040LA11
4J040MA15
4J040NA02
4J040NA05
(57)【要約】
【課題】不快な害虫が捕獲されにくいため、害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与えることがなく、なおかつ、ダニ類捕獲力に優れるダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートを提供する
【解決手段】25℃環境下でのボールタックが8~23である、ダニ類捕獲用粘着剤組成物により解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃環境下でのボールタックが8~23である、ダニ類捕獲用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、ホットメルト型接着剤組成物である、請求項1に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記接着剤組成物の比重は、23℃において0.80~1.10g/cm3である、請求項1又は2に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、透明である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着剤組成物の軟化点温度は、70~110℃である、請求項4に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダニ捕獲用接着剤組成物を、支持体上に層状に形成してなる、ダニ類捕獲用粘着シート。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダニ類捕獲用接着剤組成物を、支持体上の複数面に層状に形成してなる、ダニ類捕獲用粘着シート。
【請求項8】
前記支持体上に形成する粘着剤層の厚みは、10~200μmである、請求項6又は7に記載のダニ類捕獲用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気密性が増した住居環境では、ダニ類が繁殖し易いことが問題となっている。ダニ類は、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性疾患等の主な原因とされているため、一般住民からは、ダニ類を確実且つ安全に防除する手段・方法が望まれている。
【0003】
ダニ類の防除には、殺虫剤や忌避剤等の薬剤を用いる方法がある。ところが、この方法は、ダニ類の数を積極的に減少させるものではなく、ダニ類の死骸が残るという問題がある。また、化学薬品に敏感な人は薬剤の影響が懸念されるため、できるだけ薬剤を使用せず、手軽にダニを防除できる手段・方法が求められている。
【0004】
そこで、ダニ類を防除するにあたり、ダニ類を殺虫又は忌避するのではなく、ダニ類を誘引して捕獲するタイプの製品(ダニシート)が開発されている。このようなダニシートにおいて、粘着剤は捕獲性能を左右するものであるため重要である。
【0005】
粘着剤に関して、これまで、ゴキブリやハエ等の小生物の捕獲性能を高めるために、粘着力が高められた小生物捕獲器用の粘着層を形成する組成物に関する検討が行われてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された組成物を用いて粘着層を形成し、ダニ類捕獲器用として用いた場合、ダニ類は十分に捕獲されるが、ダニ類を好んで捕食する不快な害虫も同時に捕獲されてしまう可能性があった。また、一般にダニ類は他の不快な害虫と生息場所が共通しているため、これらの害虫も同時に捕獲されてしまう可能性があった。そのため、捕獲器を片付ける際に、これらの害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与える場合があり、必ずしも好ましいものではなかった。
【0008】
したがって、本発明は、不快な害虫が捕獲されにくいため、害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与えることがなく、なおかつ、ダニ類捕獲力に優れるダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、25℃環境下でのボールタックが特定の範囲のダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートが前記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下に関する。
(1)25℃環境下でのボールタックが8~23である、ダニ類捕獲用粘着剤組成物。
(2)前記粘着剤組成物は、ホットメルト型接着剤組成物である、(1)に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
(3)前記接着剤組成物の比重は、23℃において0.80~1.10g/cm3である、(1)又は(2)に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
(4)前記粘着剤組成物は、透明である、(1)~(3)のいずれか1に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
(5)前記粘着剤組成物の軟化点温度は、70~110℃である、(4)に記載のダニ類捕獲用粘着剤組成物。
(6)(1)~(5)のいずれか1に記載のダニ捕獲用接着剤組成物を、支持体上に層状に形成してなる、ダニ類捕獲用粘着シート。
(7)(1)~(5)のいずれか1に記載のダニ類捕獲用接着剤組成物を、支持体上の複数面に層状に形成してなる、ダニ類捕獲用粘着シート。
(8)前記支持体上に形成する粘着剤層の厚みは、10~200μmである、(6)又は(7)に記載のダニ類捕獲用粘着シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートは、25℃環境下でのボールタックが特定の範囲であることにより、不快な害虫が捕獲されにくいため、害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与えることがなく、なおかつ、ダニ類捕獲力に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物、及びこれを用いてなるダニ類捕獲用粘着シートについて詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0013】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物は、25℃環境下でのボールタックが8~23であり、好ましくは10~19であり、より好ましくは12~17であるものである。25℃環境下でのボールタックがこのような範囲内であることにより、不快な害虫が捕獲されにくいため、害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与えることがなく、なおかつ、ダニ類捕獲力に優れるものとなる。
【0014】
なお、本発明におけるボールタックは、JIS Z0237の傾斜式ボールタック試験法(転球法、25℃、傾斜角30°)に基づいて測定することができる。
【0015】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物における、粘着剤組成物の種類は特に限定されないが、溶剤型粘着剤組成物、エマルジョン型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物等が挙げられ、ダニ類を忌避するおそれのある溶剤を含まないため、ホットメルト型粘着剤組成物が好ましい。
【0016】
溶剤型粘着剤組成物とは、粘着剤構成成分を溶剤に溶かし、支持体上に塗布、乾燥して粘着剤を作るものである。かかる溶剤型粘着剤組成物としては、天然ゴム等の天然ゴム系溶剤型粘着剤組成物、合成ゴム、ポリイソブチレン等の合成ゴム系溶剤型粘着剤組成物、アクリル酸アルキルエステルと共重合体等のアクリル系溶剤型粘着剤組成物やシリコーン系溶剤型粘着剤組成物等が挙げられる。
【0017】
エマルジョン型粘着剤組成物とは、粘着剤構成成分をエマルジョンにして、支持体上に塗布、乾燥して粘着剤を作るものである。かかる溶剤型粘着剤組成物としては、アクリル酸アルキルエステルと共重合体エマルジョン等のアクリル系エマルジョン型粘着剤組成物や、天然ゴムラテックス等の天然ゴム系エマルジョン型粘着剤組成物、SBRラテックス等の合成ゴム系エマルジョン型粘着剤組成物等が挙げられる。
【0018】
ホットメルト型粘着剤組成物とは、粘着剤構成成分を加熱溶融することにより液状化して支持体上に塗布し、冷却固化によって接合を形成するものである。かかるホットメルト型粘着剤組成物としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体、クロロプレン重合体、アクリロニトリル-1,3-ブタジエンとの共重合体等の合成ゴム系ホットメルト型粘着剤組成物や天然ゴム等の天然ゴム系ホットメルト型粘着剤組成物、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のEVA系ホットメルト型粘着剤組成物、ポリアミド系ホットメルト型粘着剤組成物、ポリオレフィン系ホットメルト型粘着剤組成物、アクリル系ホットメルト型粘着剤組成物、ポリウレタン系ホットメルト型粘着剤組成物等が挙げられ、合成ゴム系ホットメルト型粘着剤組成物が好ましい。
【0019】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物において、粘着剤組成物の比重は特に限定されないが、23℃において0.80~1.10g/cm3であることが好ましく、0.85~1.00g/cm3であることがより好ましい。
【0020】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物において、粘着剤組成物は、透明、半透明、不透明のいずれであっても構わないが、捕獲したダニ類を確認しやすい観点から、透明であることが好ましい。また、粘着剤組成物の色は特に限定されないが、捕獲したダニ類を確認しやすい観点から、無色であることが好ましい。
【0021】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物において、粘着剤組成物の種類がホットメルト型粘着剤組成物であるとき、粘着剤組成物の軟化点温度は特に限定されないが、70~110℃であることが好ましく、80~100℃であることがより好ましく、85~95℃であることがさらに好ましい。粘着剤組成物の軟化点温度がこのような範囲であることで、不快な害虫が捕獲されにくいため、害虫が苦手な使用者に嫌悪感を与えることがなく、なおかつ、ダニ類捕獲力に優れるものとなる。また、160℃における溶融粘度は、特に限定されないが、2000~5000mPa・sが好ましく、2500~4000mPa・sがより好ましい。
【0022】
さらに、本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物には、酸化防止剤や架橋剤、他の樹脂成分、充填剤、顔料などを適宜配合することができる。
【0023】
また、ダニ類の捕獲効率を向上させるため、粘着剤組成物中に粘着剤を含有させることもできる。含有させる誘引剤としては特に限定されないが、動物性、植物性、酵母等の食品成分の粉砕粉末物や抽出エキス、フェロモン性誘引物質、ダニ類誘引効果のある香料成分、脂肪酸等を含有したものを用いることができる。
【0024】
本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物にて捕獲できるダニ類は、クモ網ダニ目の節足動物であり、マダニ、ワクモ、ハダニ、トゲダニ、コナダニ、チリダニ、イエダニ、ツメダニ、トリサシダニ、ニクダニ、ヒゼンダニ、タカラダニ等が挙げられる。これらの体長は0.1~数mmである。
【0025】
本発明のダニ類捕獲用粘着シートは、前記粘着剤組成物を支持体上に層状に形成してなるものであり、前記粘着剤組成物を支持体上の一面に層状に形成してなるものや、前記粘着剤組成物を支持体上の複数面に層状に形成してなるものである。
【0026】
支持体としては粘着剤組成物を層状にして担持できるものであれば限定されず、織布、不織布、編布等の布帛類や、厚紙、段ボール紙等の紙類や、PE、PP、PET、PVC等の樹脂シートや、金属板や、これらの積層シート等を用いることができる。
【0027】
支持体上に粘着剤を層状に形成する方法としては、支持体上に粘着剤組成物を加熱し液状としたものを塗布し、冷却し固化する方法や、支持体上に粘着剤組成物の溶剤やエマルジョンを直接塗布、乾燥する方法や、セパレータ(剥離紙)上に粘着剤組成物の溶液を塗布、乾燥してあらかじめ粘着剤層を形成し、この粘着剤層を支持体上に転写、形成する方法等が挙げられる。ダニ類を忌避する虞のある溶剤を使用しないため、支持体上に粘着剤組成物を加熱し液状としたものを塗布し、冷却し固化する方法が好ましい。
【0028】
前記支持体上に形成する粘着剤層の厚みは特に限定されないが、10~200μmであることが好ましく、30~150μmであることがより好ましく、50~100μmであることがとりわけ好ましい。なお、かかる粘着剤層の厚みは、前記粘着剤組成物を支持体上の複数面に層状に形成してなるものである場合、各粘着剤層の厚みを意味する。また、粘着シートは使用するまでの間、粘着剤層の露出表面にセパレータを被覆、積層しておくか、ロール状に巻回しておくこと等によって、粘着剤層の露出表面がほこり等から汚染することを防ぐことができる。
【0029】
また、本発明のダニ類捕獲用粘着シートは上記支持体に公知の顔料や充填剤等を配合し、着色することもできる。
【実施例0030】
以下に、実施例を用いて本発明のダニ類捕獲用粘着剤組成物及びダニ類捕獲用粘着シートについて説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
ダニ類捕獲用粘着剤組成物(透明の合成ゴム系ホットメルト粘着剤組成物、23℃において比重0.86g/cm3、軟化点85℃)を厚さ60μmの茶色のクラフト紙の片面に塗布した。粘着剤層の露出表面にセパレータを被覆して、実施例1のダニ類捕獲用粘着シートを得た(粘着剤層の厚みは80μm)。このようにして得たダニ類捕獲用粘着シートを用いて、JIS Z0237の傾斜式ボールタック試験法(転球法、25℃、傾斜角30°)を行ったところ、25℃環境下でのボールタックが12であった。
【0032】
(実施例2)
ダニ類捕獲用粘着剤組成物(透明の合成ゴム系ホットメルト粘着剤組成物、23℃において比重0.93g/cm3、軟化点90℃)を厚さ50μmの透明のPET樹脂シートの両面に塗布した。粘着剤層の露出表面にセパレータを被覆して、実施例2のダニ類捕獲用粘着シートを得た(粘着剤層の厚みは各面65μm)。このようにして得たダニ類捕獲用粘着シートを用いて、JIS Z0237の傾斜式ボールタック試験法(転球法、25℃、傾斜角30°)を行ったところ、25℃環境下でのボールタックが17であった。
【0033】
(実施例3)
ダニ類捕獲用粘着剤組成物(透明の合成ゴム系ホットメルト粘着剤組成物、23℃において比重0.93g/cm3、軟化点92℃)を厚さ100μmの白色の特殊織物の片面に塗布した。粘着剤層の露出表面にセパレータを被覆して、実施例3のダニ類捕獲用粘着シートを得た(粘着剤層の厚みは100μm)。このようにして得たダニ類捕獲用粘着シートを用いて、JIS Z0237の傾斜式ボールタック試験法(転球法、25℃、傾斜角30°)を行ったところ、25℃環境下でのボールタックが23であった。
【0034】
<捕獲試験1>
実施例1~3のダニ類捕獲用粘着シートを3cm×3cmに切断し、中央に5mm四方の黒色ろ紙を乗せ、ろ紙と粘着剤の間に隙間ができないように貼り合わせた。なお、実施例2においては、粘着剤層の片面のみを使用した。25℃、75%RH、暗所の条件下で、ろ紙の上にヤケヒョウヒダニを10匹(供試ダニ数)乗せ、24時間後にろ紙の端から1cm以上移動しなかったダニの数(捕獲ダニ数)を数え、捕獲率(%)=[(捕獲ダニ数)/(供試ダニ数)]×100を算出した。試験は10回行い、平均捕獲率を求めた。試験結果は表1に示す。
【0035】
【0036】
<捕獲試験2>
6畳の居室の家具の裏側に、実施例1~2のダニ類捕獲用粘着シート(大きさ10cm×10cm)を設置した。また、比較例1として、市販品の粘着シート(25℃環境下でのボールタックが28、大きさ10cm×10cm)を設置した。なお、実施例2においては、粘着剤層の片面のみを使用した。各粘着シートの近くにダニ類の誘引源となる動物性の飼料を設置し、24時間後に各粘着シートの様子を観察した。
【0037】
試験の結果、実施例1~2及び比較例1のいずれにおいても十分な数のダニ類が捕獲されていることが確認できた。また、実施例1及び2の粘着シートでは、害虫の捕獲は確認できなかった。一方、比較例1では、害虫が数匹捕獲されていた。