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  • 特開-水素富化合成ガスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017276
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】水素富化合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/48 20060101AFI20220118BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20220118BHJP
   C01B 3/16 20060101ALI20220118BHJP
   B01J 23/882 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C01B3/48
C01B3/40
C01B3/16
B01J23/882 M
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021165242
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2018548700の分割
【原出願日】2017-03-14
(31)【優先権主張番号】1652290
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ユンブロ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ギヨーム・シュミット
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140CA03
4G140EA01
4G140EA06
4G140EA08
4G140EB16
4G140EB23
4G140EB27
4G140EB33
4G140EB41
4G140EB42
4G140EC01
4G140EC02
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC06A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169CC17
4G169CC25
4G169CC26
4G169EA07
4G169FA08
4G169GA03
4G169GA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硫黄耐性シフト触媒を用いる合成ガス製造方法において、シフト反応装置に入る水性ガスが低硫黄ガスであっても硫化水素などの添加が不要な、安全な水素富化合成ガスの製造方法を提供する。
【解決手段】触媒水性ガスシフト反応による水素富化合成ガスの製造方法で、少なくとも1つの有機硫化物(任意にその酸化物形態で含む)ガス状流(1)を、触媒Xを含む第1の反応装置(2)に導入するステップ、第1の反応装置から硫黄含有ガス状流(3)を収集するステップ、原料合成ガス(4)を第2の反応装置(6)に導入するステップと、触媒水性ガスシフト反応が起こり、硫黄耐性シフト触媒Xを含む第2の反応装置に、硫黄含有ガス状流(3)を導入するステップ、第2の反応装置からの水素富化合成ガスを含む出口流(7)を収集するステップを含む方法である。有機硫化物は、例えばジメチルジスルフィド及びジメチルスルホキシドである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法であって、以下の:
-式(I)の少なくとも1つの化合物を含むガス状流(1)
【化1】
(式中、Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、nは、0、1又は2に等しく、xは、0、1、2、3又は4から選択される整数であり、R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される)を
触媒Xを含む第1の反応装置(2)(ただし、前記触媒Xは、周期表の第VIB族及び第VII族から選択される少なくとも1つの金属を含む)に導入するステップ、
-前記第1の反応装置から硫黄含有ガス状流(3)を収集するステップ、
-前記原料合成ガス(4)を第2の反応装置(6)に導入するステップ、
-前記触媒水性ガスシフト反応が起こり、硫黄耐性シフト触媒Xを含む前記第2の反応装置に、前記硫黄含有ガス状流(3)を導入するステップであって、前記硫黄含有ガス状流(3)が、流れ(3.1)で直接及び/又は流れ(3.2)を介して原料合成ガス(4)との混合の後のいずれかで前記第2の反応装置に導入される、ステップ、
-前記第2の反応装置から出口流(7)を収集するステップであって、前記出口流(7)が水素富化合成ガスを含む、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が、ジメチルジスルフィド及びジメチルスルホキシド、好ましくはジメチルジスルフィドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒水性ガスシフト反応が、少なくとも230℃、好ましくは240~320℃、より好ましくは250~310℃の入口ガス温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の反応装置(2)が、100~600℃、好ましくは150~400℃、より好ましくは200~350℃の範囲の温度で使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の反応装置(2)が、0~60バール、好ましくは10~40バールの範囲の圧力で使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式(I)の化合物が、前記第1の反応装置(2)に1Nl/h~10Nm/hの流速で連続注入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水素流が前記第1の反応装置(2)に導入され、前記水素流が、外部源に由来するか、又は前記第2の反応装置(6)の前記出口流(7)から収集される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒Xが、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトを含み、前記触媒が、アルミナ、シリカ又はシリカ-アルミナなどの多孔性材料に好ましくは担持されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒Xが、コバルト及びモリブデン系触媒である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒Xが、アルカリ金属、好ましくはナトリウム、カリウム又はセシウムを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記触媒水性ガスシフト反応が、少なくとも10バール、好ましくは10~25バールの範囲の圧力で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記原料合成ガス(4)が、水及び一酸化炭素を、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも1.4の水対一酸化炭素のモル比で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の反応装置(6)における滞留時間が、20~60秒の範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法における、少なくとも1つの式(I)の化合物の使用。
【化2】
(式中、Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、nは、0、1又は2に等しく、xは、0、1、2、3又は4から選択される整数であり、R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ガス、又は簡潔にはシンガスは、一酸化炭素及び水素並びに任意に他のガス、例えば二酸化炭素、窒素及び水、炭化水素(例えばメタン)、希ガス(例えばアルゴン)、窒素誘導体(例えばアンモニア、シアン化水素酸)などを含む燃焼性ガス混合物である。
【0003】
合成ガスは、天然ガス、石炭、バイオマス又はほぼ任意の炭化水素供給原料を含む多くの源から、水蒸気又は酸素との反応によって製造することができる。合成ガスは、水素、アンモニア、メタノール及び合成炭化水素燃料を製造するための汎用性の中間資源である。
【0004】
合成ガス製造のために、業界では一般に各種の方法が使用され、該方法は主に以下の通りである:
主にメタンの転化のための、水蒸気メタン改質(SMR)又は水蒸気改質。得られた合成ガスは、硫黄化合物を含有していない。
【0005】
-触媒(CPOx)でもあることができるガス化又は部分酸化は、ナフサ、液化石油ガス、重質燃料油、コークス、石炭、バイオマスなどの重質供給原料の転化に主に使用される。得られた合成ガスは、硫黄含有成分、主に硫化水素が特に富化され得る。
【0006】
一酸化炭素を二酸化炭素に転化することによって一酸化炭素を部分的又は完全に除去するために実施され得る、周知の水性ガスシフト反応(「WGSR」)に従ってより大量の水素を製造するために、合成ガスに水蒸気を添加することが可能である:
【0007】
【数1】
式中、(g)はガス状形態を示す。
【0008】
水性ガスシフト反応は、当業界でよく使用されている、可逆性発熱化学反応である。
【0009】
この反応は、通例500℃未満の合理的な温度範囲で実施されるために触媒され得る。通常用いられる触媒の種類は、処理される合成ガスの硫黄含有量によって変わる。したがって、水性ガスシフト触媒は、David S.NewsomeによってCatal.Rev.-Sci.Eng.,21(2),pp275-318(1980)に記載されているように、一般に2種類に分類される:
-硫黄によるその失活のために(例えばSMRの後の)硫黄不含有合成ガスと共に使用される、「スイートシフト触媒」とも呼ばれる、鉄系又は銅系シフト触媒;
-(例えば石炭ガス化の後に得られる)硫黄含有合成ガスと共に使用される、「硫黄耐性シフト触媒」又は「酸シフト触媒」とも呼ばれる、コバルト及びモリブデン系シフト触媒。これらの触媒は、ナトリウム、カリウム又はセシウムなどのアルカリ金属によってドープされることが多い。
【0010】
スイートシフト触媒と硫黄耐性シフト触媒との主な違いは、後者がその硫化形態で活性であり、したがって使用前に予め硫化する必要があることである。このため、硫黄耐性シフト触媒は一般に、その最も活性な形態で完全に硫化される。このため、これらの触媒は硫黄耐性であるだけでなく、その活性は実際には、処理される供給物中に存在する硫黄によっても増強され得る。
【0011】
近年、硫黄耐性シフト触媒が広く開発されている。実際、化石燃料、主に天然ガス及び石油の量は減少し続けていて、多くの研究者は、通常、特に硫黄が豊富である石炭又はバイオマスなどの貴炭素源の低いものを用いた方法の開発に集中して研究を行ってきた。これらの炭素源から得られた合成ガスは、一般に、更なる処理水性ガスシフト反応中に硫黄耐性シフト触媒の活性を維持し得る硫化水素(HS)及び硫化カルボニル(COS)を含有する。
【0012】
しかし、一部の合成ガスは、初期炭素質供給原料中の硫黄含有量が低いため、十分な量の硫黄含有化合物を含有していない。実際、合成ガスの(内在)硫黄含有量は、表1に示すように、主に石炭の種類と石炭源によって変わる。
【0013】
【表1】
【0014】
硫化水素(HS)は、ガス化後に得られる合成ガス中の硫黄の主供給源である。硫黄含有量が不十分である合成ガスでは、硫黄耐性シフト触媒を効率的に活性化するために、硫化水素(外部からの硫化水素)の添加が一般に行われる。実際に、Stenberg et al.によってAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,21(1982)No.8,pp619-620に記載されているように、CO及びHOの混合物にHSを添加すると、H及びCOの形成が相当向上する。
【0015】
しかし、硫化水素は、製造者らが回避しようとする、毒性の高い可燃性ガス状化合物であることが不都合である。
【0016】
したがって、硫化水素の使用を含まないと同時に、硫黄耐性シフト触媒を活性化して、その活性を維持するために硫化水素の添加を含む方法として有効である、新たな方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】David S.Newsome,Catal.Rev.-Sci.Eng.,21(2),pp275-318(1980)
【非特許文献2】Stenberg et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,21(1982)No.8,pp619-620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、硫黄含有合成ガスからの水性ガスシフト反応のためのより安全な方法を開発することである。
【0019】
本発明の別の目的は、硫黄含有合成ガスからの水性ガスシフト反応のための工業規模の方法を実施することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の目的は、原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法であって、以下の:
-式(I)の少なくとも1つの化合物を含むガス状流1
【0021】
【化1】
(式中、Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、nは、0、1又は2に等しく、xは、0、1、2、3又は4から選択される整数であり、R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される)を、
触媒Xを含む第1の反応装置2(ただし、前記触媒Xは、周期表の第VIB族及び第VII族から選択される少なくとも1つの金属を含む)に導入するステップ、
-第1の反応装置から硫黄含有ガス状流3を収集するステップ、
-原料合成ガス4を第2の反応装置6に導入するステップ、
-触媒水性ガスシフト反応が起こり、硫黄耐性シフト触媒Xを含む第2の反応装置に、硫黄含有ガス状流3を導入するステップであって、硫黄含有ガス状流3が、流れ3.1で直接及び/又は流れ3.2を介して原料合成ガス4との混合の後のいずれかで第2の反応装置に導入される、ステップ、
-第2の反応装置から出口流7を収集するステップであって、前記出口流7が水素富化合成ガスを含む、ステップ
を含む方法である。
【0022】
一実施形態により、式(I)の化合物は、ジメチルジスルフィド及びジメチルスルホキシド、好ましくはジメチルジスルフィドから選択される。
【0023】
一実施形態により、触媒水性ガスシフト反応は、少なくとも230℃、好ましくは240~320℃、より好ましくは250~310℃の入口ガス温度で行われる。
【0024】
一実施形態により、第1の反応装置2は、100~600℃、好ましくは150~400℃、より好ましくは200~350℃の範囲の温度で使用される。
【0025】
一実施形態により、第1の反応装置2は、0~60バール、好ましくは10~40バールの範囲の圧力で使用される。
【0026】
好ましくは、式(I)の化合物は、第1の反応装置2に1Nl/h~10Nm/hの流速で連続注入される。
【0027】
一実施形態により、水素流は第1の反応装置2に導入され、前記水素流は外部源に由来するか、又は第2の反応装置6の出口流7から収集される。
【0028】
好ましくは、触媒Xは、モリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトを含み、前記触媒は、アルミナ、シリカ又はシリカ-アルミナなどの多孔性材料に好ましくは担持されている。
【0029】
好ましくは、触媒Xは、コバルト及びモリブデン系触媒である。
【0030】
好ましい一実施形態により、触媒Xはアルカリ金属、好ましくはナトリウム、カリウム又はセシウムを含む。
【0031】
一実施形態により、触媒水性ガスシフト反応は、少なくとも10バール、好ましくは10~25バールの範囲の圧力で行われる。
【0032】
一実施形態により、原料合成ガス4は、水及び一酸化炭素を、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも1.4の水対一酸化炭素のモル比で含む。
【0033】
好ましくは、第2の反応装置6における滞留時間は、20~60秒の範囲である。
【0034】
本発明の別の目的は、原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法における、少なくとも1つの式(I)の化合物の使用:
【0035】
【化2】
(式中、Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、nは、0、1又は2に等しく、xは、0、1、2、3又は4から選択される整数であり、R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される)に関する。
【0036】
今や驚くべきことに、式(I)の化合物の使用は、原料合成ガスに対する触媒水性ガスシフト反応による水素の製造に特に有効であることが見出されている。
【0037】
さらに、式(I)の化合物は、一般に液体形態で与えられ、液体形態であることによって、その化合物の取り扱い及びオペレータの安全のために講じられる措置が大幅に容易になる。
【0038】
別の利点として、本発明の方法により、COをCOに転化させることができる。
【0039】
さらに、本発明の方法は、安全及び環境に関する要件に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明による方法のための設備の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による、水素富化合成ガスの製造方法であって、以下の:
-式(I)の少なくとも1つの化合物を含むガス状流1:
【0042】
【化3】
(式中、Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、nは、0、1又は2に等しく、xは、0、1、2、3又は4から選択される整数であり、R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される)を、
触媒Xを含む第1の反応装置2(ただし、前記触媒Xは、周期表の第VIB族及び第VII族から選択される少なくとも1つの金属を含む)に導入するステップ、
-第1の反応装置2から硫黄含有ガス状流3を収集するステップ、
-原料合成ガス4を第2の反応装置6に導入するステップ、
-触媒水性ガスシフト反応が起こり、硫黄耐性シフト触媒Xを含む第2の反応装置6に、硫黄含有ガス状流3を導入するステップであって、硫黄含有ガス状流3が、流れ3.1で直接及び/又は流れ3.2を介して原料合成ガス4との混合の後のいずれかで第2の反応装置に導入される、ステップ、
-第2の反応装置6から出口流7を収集するステップであって、前記出口流7が水素富化合成ガスを含む、ステップ
を含む、方法に関する。
【0043】
本発明の意味において、「アルキル」基は、炭素原子及び水素原子を含む、好ましくは炭素原子及び水素原子のみからなる飽和炭化水素鎖と理解されるべきである。
【0044】
本発明の意味において、「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、並びに炭素原子及び水素原子を含む、好ましくは炭素原子及び水素原子のみからなる不飽和炭化水素鎖と理解されるべきである。
【0045】
本発明の一実施形態において、第1の反応装置2は触媒反応装置、好ましくは固定床触媒反応装置である。ガス状流1は第1の反応装置2に入る前に、100~600℃、好ましくは100~400℃の範囲の温度で加熱され得る。
【0046】
第1の反応装置2は、周期表の第VIB族及び第VII族、好ましくはモリブデン、タングステン、ニッケル及びコバルトから選択される少なくとも1つの金属を含む触媒Xを含む。コバルト及びモリブデン、又はニッケル及びモリブデン、又はニッケル及びタングステン、より好ましくはコバルト及びモリブデンなどの、これらの遷移金属の少なくとも2つの組合せが好ましく使用される。
【0047】
触媒Xは、アルミナ、シリカ又はシリカ-アルミナなどの多孔性材料に担持され得る。
【0048】
本発明による好適な触媒Xの例として、アルミナに担持されたコバルト及びモリブデンを含有する触媒が挙げられ得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、触媒Xを含む第1の反応装置2に不活性材料を充填して、ガス状流を第1の反応装置2に効率的に分布させることができる。好適な不活性材料は、シリコンカーバイドであり得る。有利には、触媒X及び不活性材料は、第1の反応装置2内に連続した層で配置される。
【0050】
第1の反応装置2に導入されたガス状流1は、少なくとも1つの式(I)の化合物であって:
【0051】
【化4】
式中:
-Rは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、及び2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基から選択され、
-nは、0、1又は2に等しく、
-xは、0、1、2、3又は4個から選択される整数であり、
-R’は、1~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルキル基、2~4個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分枝アルケニル基、及び水素原子(n=x=0である場合のみ)から選択される、化合物を含む。
【0052】
一実施形態により、本発明の方法で使用され得る式(I)の化合物は、それ自体既知の任意の方法に従って得られた又は市販の、任意にその酸化物形態の(nがゼロと異なる場合)有機スルフィドであり、該有機スルフィドは、任意に望ましくない匂いの原因であり得る不純物の量が減少した若しくは不純物を含有せず、又は任意に1つ以上の臭気マスキング剤(例えばWO2011012815A1を参照のこと。)を含有する。
【0053】
好ましいR基及びR’基の中でも、メチル基、プロピル基、アリル基及び1-プロペニル基を挙げることができる。
【0054】
本発明の一実施形態により、上記式(I)において、xは1、2、3又は4を表し、好ましくはxは1又は2を表し、より好ましくはxは1を表す。
【0055】
好ましい実施形態により、本発明の方法において使用する式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物であり:
R-S-S-R’(Ia)
これは、nが0に等しく、R、R’及びxが上で定義した通りである式(I)に相当する。
【0056】
好ましくは、式(Ia)の化合物は、ジメチルジスルフィド(「DMDS」)である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態により、本発明の方法において使用する式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物であり:
【0058】
【化5】
これは、nが1に等しく、R、R’及びxが上で定義した通りである式(I)に相当する。
【0059】
好ましくは、式(Ib)の化合物は、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)である。
【0060】
2つ以上の式(I)の化合物の混合物が本発明の方法で使用され得ることを理解すべきである。特に、ジスルフィド及び/又はポリスルフィドの混合物、例えばジスルフィド油(「DSO」)などのジスルフィドの混合物が使用され得る。
【0061】
本発明の一実施形態において、ガス状流1は第1の反応装置2に連続注入される。ガス状流1中への式(I)の化合物、好ましくはジメチルジスルフィドの濃度は、100~500,000ppmv、好ましくは100~200,000ppmv、より好ましくは100~100,000ppmvの範囲であり得る。式(I)の化合物、好ましくはジメチルジスルフィドの流速は、1Nl/h~10Nm/hの範囲であり得る。
【0062】
本発明の一実施形態において、ガス状流1は水素も含む。水素は、外部供給源に由来し得るか、又は第2の反応装置6の出口流7から収集され得る。「外部供給源」とは、工程の外部の供給源を意味する。ガス状流1中への水素の濃度は、100~10ppmv、好ましくは10,000~999,900ppmv、より好ましくは200,000~999,900ppmvの範囲であり得る。ガス状流1への水素の流速は、0.1Nm/h~10,000Nm/hの範囲であり得る。
【0063】
一実施形態により、ガス状流1に導入される前に出口流7から水素が、例えば精製によって回収される。
【0064】
第1の反応装置2は、100~600℃、好ましくは150~400℃、より好ましくは200~350℃の範囲の温度で使用され得る。第1の反応装置2は、0~60バール(6MPa)、好ましくは10~40バール(4MPa)の範囲の圧力で使用され得る。
【0065】
硫黄含有ガス状流3が第1の反応装置2の出口で収集されて第2の反応装置6に導入され、そこで水性ガスシフト反応が起こる。硫黄含有ガス流3は、第2の反応装置6に、直接及び/又は原料合成ガス4との混合物のどちらかで導入される。バルブ5は、ライン3.1又は3.2(例えば、図1参照)を通じてガス状流を誘導するために、硫黄含有ガス状流3を含むライン内に存在し得る。図1を参照すると、バルブ5がライン3.1を通じてガス状流を誘導するようにプログラムされている場合、硫黄含有ガス状流3は(原料合成ガス4の導入とは無関係に)第2の反応装置6に直接導入される。バルブ5がライン3.2を通じてガス状流を誘導するようにプログラムされている場合、硫黄含有ガス状流3は、第2の反応装置6に入る前に原料合成ガス4と混合される。この実施形態において、硫黄含有ガス状流3と原料合成ガス4との混合物が第2の反応装置6に導入される。バルブ5がライン3.1及び3.2を通じて同時にガス状流3を誘導する工程を提供することも可能である。
【0066】
原料合成ガス4は、通例、コークス、石炭、バイオマス、ナフサ、液化石油ガス、重油などの原料のガス化ステップ後に得られる。合成ガスの製造は、従来技術において周知である。原料合成ガス4は、水蒸気メタン改質装置からも得られ得る。
【0067】
本発明により、原料合成ガス4は、一酸化炭素及び任意に、水素、二酸化炭素、窒素及び水などの他のガス、炭化水素(例えばメタン)、希ガス(例えばアルゴン)、窒素誘導体(例えばアンモニア、シアン化水素酸)などを含む。
【0068】
本発明の一実施形態により、原料合成4は、一酸化炭素及び水素、並びに任意に二酸化炭素、窒素及び水などの他のガス、炭化水素(例えばメタン)、希ガス(例えばアルゴン)、窒素誘導体(例えばアンモニア、シアン化水素酸)などを含む。
【0069】
本発明の別の実施形態により、原料合成ガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素及び水を含む。
【0070】
原料合成ガス4は、硫黄含有成分も含み得る。この場合、原料合成ガス4は、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素及び水を主成分とし、硫黄含有成分をより低濃度で含み得る。硫黄含有成分は、硫化水素、硫化カルボニルであり得る。原料合成ガス4中の代表的な(内在)硫黄含有量は、約20~約50,000ppmvの範囲である。原料合成ガス4中の代表的な(内在)硫黄含有量は、原料合成ガス4の製造に最初に使用された原料に依存し得る。
【0071】
水性ガスシフト反応は、触媒Xを含む第2の反応装置6内で行われる。
【0072】
水性ガスシフト反応は、原料合成ガス4中に含有される一酸化炭素及び水の、式(1)による二酸化炭素及び水素への転化に存する:
【0073】
【数2】
式中、(g)はガス形態を示す。
【0074】
この水性ガスシフト反応によって、水素富化合成ガスを得ることができる。
【0075】
本発明による「水素富化合成ガス」とは、本発明の方法の出口における合成ガスが、本発明の方法の入口における合成ガスよりも多くの水素を含むことであることを理解されたい。言い換えれば、工程の出口(流れ7)におけるガス中の水素の割合は、工程の出口(流れ4)におけるガス中の水素の割合よりも大きい。
【0076】
本発明の一実施形態により、水が原料合成ガス4に添加され得る。追加の(外部からの)水の導入は、平衡を二酸化炭素及び水素の生成に移動させる。追加の(外部からの)水は、第2の反応装置6に直接導入してもよく、又は原料合成ガス4と混合して導入してもよい。
【0077】
水性ガスシフト反応の、したがって合成ガスの水素富化の効率は、例えばガスクロマトグラフなどの水素純度分析によって直接測定され得る。効率は、COへのCO転化率を測定することによって間接的に測定することもでき、CO転化率は水性ガスシフト反応が起こったことを意味する。COへのCO転化率は、CO転化率及びCO収率を測定することによってわかる。
【0078】
本発明の一実施形態において、水性ガスシフト反応に入るガス中の一酸化炭素に対する水の比は、少なくとも1、好ましくは少なくとも1.2、より好ましくは少なくとも1.4、有利には少なくとも1.5である。一酸化炭素に対する水のモル比は、1~3、好ましくは1.2~2.5、より好ましくは1.5~2の範囲であり得る。
【0079】
本発明の一実施形態において、第2の反応装置6は触媒反応装置、好ましくは固定床触媒反応装置である。
【0080】
水性ガスシフト反応での使用に好適な触媒Xは、硫黄耐性シフト触媒である。「硫黄耐性シフト触媒」とは、硫黄含有成分の存在下で水性ガスシフト反応を触媒することができる化合物を意味する。
【0081】
水性ガスシフト反応での使用に好適な触媒は、好ましくはモリブデン、コバルト及びニッケルからなる群から選択される鉄及び銅以外の少なくとも1つの遷移金属を含み得る。コバルト及びモリブデン、又はニッケル及びモリブデン、より好ましくはコバルト及びモリブデンなどの、これらの遷移金属の少なくとも2つの組合せが好ましく使用される。
【0082】
本発明の触媒は、担持されていても担持されていなくてもよく、好ましくは担持されていてもよい。好適な触媒担体はアルミナであり得る。
【0083】
好ましい実施形態において、触媒Xは、ナトリウム、カリウム及びセシウム、好ましくはカリウム及びセシウムからなる群から選択されるアルカリ金属、又はその塩も含む。特に活性な触媒の例は、セシウムカーボネート、セシウムアセテート、カリウムカーボネート又はカリウムアセテートと、コバルト及びモリブデンとの組合せである。
【0084】
本発明による好適な触媒Xの一例として、Park et al.によって「A Study on the Sulfur-Resistant Catalysts for Water Gas Shift Reaction - IV.Modification of CoMo/γ-Al2O3 Catalyst with Iron Group Metals」,Bull.Korean Chem.Soc.(2000),Vol.21,No.12,1239-1244に開示されたものなどの、硫黄耐性シフト触媒を挙げることができる。
【0085】
本発明の一実施形態において、水性ガスシフト反応に入るガスは、少なくとも230℃の温度まで予熱される。好ましい実施形態において、この温度は240~320℃、好ましくは250~310℃の範囲である。
【0086】
本発明の実施形態において、第2の反応装置6における入口ガス温度は、少なくとも230℃、好ましくは400℃以下である。好ましくは、この温度は240℃~320℃、好ましくは250℃~310℃の範囲である。
【0087】
本発明の一実施形態において、水性ガスシフト反応のための圧力は、少なくとも10バール(1MPa)、好ましくは10~30バール(1MPa~3MPa)、より好ましくは15~25バール(1.5MPa~2.5MPa)である。
【0088】
本発明の一実施形態において、第2の反応装置6における滞留時間は、反応装置6内の触媒Xの量が測定できるように、20~60秒、好ましくは30~50秒の範囲である。滞留時間は、次の式で定義される:
【0089】
【数3】
式中、Vcatは反応装置6内の触媒Xの体積をmで表し、Dgasは流れ3及び流れ4の入口ガス流速をNm/sで表し、Preac及びPatmはそれぞれ反応装置内の圧力及び大気圧をPaで表す。
【0090】
本発明の一実施形態において、水性ガスシフト反応のCO転化率は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%である。CO転化率は次のように計算される:
【0091】
【数4】
式中、Q.COentryは、反応装置6の入口におけるCOのモル流量をmol/hで表し、Q.COexitは、反応装置6の出口におけるCOのモル流量をmol/hで表す。
【0092】
本発明の一実施形態において、水性ガスシフト反応のCO収率は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%である。
【0093】
CO収率は次のように計算される。
【0094】
【数5】
式中、Q.COentryは、反応装置6の入口におけるCOのモル流量をmol/hで表し、Q.CO2,exitは、反応装置6の出口でのCOのモル流量をmol/hで表す。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、触媒Xを含む第2の反応装置6に不活性材料を充填して、水性ガスシフト反応ステップのために反応装置を始動させる前に第2の反応装置にガスを効率的に分布させることができる。好適な不活性材料は、シリコンカーバイド又はアルミナであり得る。有利には、触媒X及び不活性材料は、反応装置内に連続した層で配置される。
【0096】
本発明の一実施形態において、第1の反応装置2における滞留時間は、反応装置2内の触媒Xの量が測定できるように、50~1000秒、好ましくは100~500秒の範囲である。
【0097】
滞留時間は、次の式で定義される:
【0098】
【数6】
式中、Vcatは第1の反応装置2内の触媒Xの体積をmで表し、Dgasは流れ1の入口ガス流速をNm/sで表し、Preac及びPatmはそれぞれ反応装置2内の圧力及び大気圧をPaで表す。
【0099】
本発明の好ましい実施形態において、第1の反応装置2の始動段階は、本発明の方法の実施前に実施される。最初に、少なくとも1つの式(I)の化合物及び水素を含むガス状流を第1の反応装置2に注入する。ガス状流1中の式(I)の化合物の流速は、1Nl/h~10Nm/hの範囲であり得る。水素の流速は、0.1~10,000Nm/hの範囲であり得る。この始動段階の間、温度は周囲温度から400℃に、好ましくは20℃から350℃に上昇する。始動段階の持続時間は、1~64時間、好ましくは30~40時間の範囲であり得る。
【0100】
この始動段階全体にわたって、第1の反応装置2の出口における硫黄含有ガス状流3は、硫黄含有ガス状流3をフレア及び/又は第2の反応装置6のどちらかに送ることができるパイプ及び配管を使用することによって、フレア及び/又は第2の反応装置6に誘導され得る。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、第2の反応装置6における触媒Xの調製ステップは、本発明の方法の実施前に行われる。触媒Xの調製ステップは、乾燥ステップ及び/又は予備活性化ステップ、好ましくは乾燥ステップ及び予備活性化ステップを含み得る。
【0102】
乾燥ステップの間に、触媒Xは、不活性ガス流下、好ましくは窒素ガス流下で乾燥され得る。不活性ガス流速は、0.1~10,000Nm/hの範囲であり得る。乾燥ステップの間に、温度は20℃から200℃に上昇し得る。乾燥時間は1~10時間の範囲であり得て、好ましくは6時間である。乾燥ステップは、周囲圧から15~25バールの好ましい作用圧まで優先的に行われる。
【0103】
予備活性化ステップ中に、触媒Xが硫化され得る。反応装置6は、0.1~10,000Nm/hの流速、少なくとも10バールの圧力、15~25バールの好ましい作用圧にて水素流下で処理され得る。次いで、第1の反応装置2の出口における硫化水素又は硫黄含有ガス状流3が、1Nl/h~10Nm/hの流速で水素流に上向きに注入され得る。次いで、当業者に既知の任意の手段によって、反応装置6の温度が150℃から350℃に上昇され得る。予備活性化ステップの時間は、1~64時間の範囲であり得る。水素流は、好ましくは、予備活性化ステップ全体にわたって維持される。
【0104】
本発明の別の目的は、原料合成ガスに作用させた触媒水性ガスシフト反応による水素富化合成ガスの製造方法における、少なくとも1つの式(I)の化合物、好ましくはジメチルジスルフィドの使用に関する。
【実施例0105】
[実施例1](比較)
水性ガスシフト反応は、以下の手順に従って、パイロットプラントの触媒反応装置6’内で行う。
【0106】
1)触媒反応装置6’の作製
150cmの触媒反応装置6’に周囲圧及び周囲温度にて、以下のように金属格子によって分離された3つの固体層を充填する:
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の60cmの第1層:この不活性材料によって、十分なガス分布が可能となる、
-CoMo系硫黄耐性シフト触媒の40cmの第2層、
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の50cmの第3層。
【0107】
次いで、触媒反応装置6’を、100~350℃の範囲の広範な温度に耐えられる炉内に配置する。触媒反応装置6は、入口配管でガス供給原料に連結され、出口配管にて分析装置に連結されている。
【0108】
この例では、CoMo系硫黄耐性シフト触媒は、最初に周囲圧にて20Nl/hの窒素流速で乾燥される。乾燥温度は+25℃/hの温度勾配で150℃に設定されている。乾燥時間を1時間に設定する。
【0109】
第2のステップは、CoMo系硫黄耐性シフト触媒を硫化して該触媒を予備活性化することに存する。このステップの間、反応装置を20Nl/hの水素流速、35バールの圧力にて処理する。次いで、硫化水素を0.5Nl/hの流速で水素供給材料中に上向きに注入する。次いで触媒を+20℃/hの温度勾配に供する。最初のプラトーを150℃、2時間に設定した後、温度を+25℃/hの温度勾配で230℃まで上昇させる。4時間の第2プラトーを230℃に維持し、次いで温度を+25℃/hの温度勾配で350℃まで再び上昇させる。350℃で16時間の最終プラトーを行う。次いで、なお20Nl/hの流速の水素流の下で、温度を230℃に低下させた。触媒をこのように予備活性化する。
【0110】
2)水性ガスシフト反応ステップ
次いで、予備活性化したCoMo系硫黄耐性シフト触媒中の一酸化炭素から二酸化炭素への転化の研究を20バール(2MPa)にて行う。触媒反応装置6’は、流速8.5Nl/hの水素、17Nl/hの一酸化炭素、0.33cm/分の水及び26Nl/hの窒素を含む合成ガス混合物を用いて、20バール(2MPa)の圧力で上向き処理する。モル比HO/COは1.44であり、滞留時間は38秒である。硫化水素は、0.5Nl/hの流速にてガス混合物中に上向きに注入される。触媒反応装置6’に流入するガスの入口温度は310℃に維持される。
【0111】
CO転化率及びCO収率を求めるために、ガス流のCO濃度及びCO濃度を触媒反応装置Aの出口に連結された赤外線分光分析装置によって測定する。
【0112】
CO転化率92%及びCO収率95%が得られ、このような割合は水性ガスシフト反応の良好な性能を反映している。
【0113】
[実施例2](本発明による)
水性ガスシフト反応は、以下の手順に従って触媒反応装置2の上流に接続された触媒反応装置6内で行われる。
【0114】
1)触媒反応装置の作製
・触媒反応装置6
図1を参照すると、150cmの触媒反応装置6に周囲圧及び周囲温度にて、以下のように金属格子によって分離された3つの固体層を充填する:
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の60cmの第1層:この不活性材料によって、十分なガス分布が可能となる、
-CoMo系硫黄耐性シフト触媒の40cmの第2層、
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の50cmの第3層。
【0115】
次いで、触媒反応装置6を100~350℃の範囲の広範な温度を扱うことができる炉内に配置する。触媒反応装置6は、入口管でガス供給原料に連結され、出口配管にて分析装置に連結されている。
【0116】
この例では、CoMo系硫黄耐性シフト触媒は、最初に周囲圧にて20Nl/hの窒素流速で乾燥される。乾燥温度は+25℃/hの温度勾配で150℃に設定されている。乾燥時間を1時間に設定する。
【0117】
第2のステップは、CoMo系硫黄耐性シフト触媒を硫化して該触媒を予備活性化することに存する。このステップの間、反応装置を20Nl/hの水素流速、35バールの圧力にて処理する。次いで硫化水素を0.5Nl/hの流速で水素供給材料中に上向きに注入する。次いで触媒を20℃/hの温度勾配に供する。最初のプラトーを150℃、2時間に設定し、温度を+25℃/hの温度勾配で230℃まで上昇させる。4時間の第2プラトーを230℃に維持し、次いで温度を+25℃/hの温度勾配で350℃まで再び上昇させる。350℃で16時間の最終プラトーを行う。次いで、なお20Nl/hの流速の水素流の下で、温度を230℃に低下させた。触媒をこのように予備活性化する。
【0118】
・触媒反応装置2
150cmに等しい容量の触媒反応装置2を周囲圧及び周囲温度にて、以下のように金属格子によって分離された3つの固体層を充填する:
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の60cmの第1の層:この不活性材料によっては、十分なガス分布が可能となる。
-15重量%のMo及び3重量%のCoを含有するAl担持CoMo系触媒の40cmの第2の層、
-1.680mmの粒度を有するカーボランダム型炭化ケイ素の50cmの第3の層。
【0119】
触媒反応装置2の始動段階は、先に説明したように充填されたこの反応装置を炉内に配置し、次いで25バール(2.5MPa)の圧力にて20Nl/hの水素流速で処理することに存する。ジメチルジスルフィド(DMDS)は、水素流1に1cm/hにて液体状態で上向きに注入される。Al担持CoMo系触媒は、+20℃/hの温度勾配に供される。最初のプラトーを150℃、2時間に設定した後、温度を+25℃/hの温度勾配で230℃まで上昇させる。4時間の第2プラトーを230℃に維持し、次いで温度を+25℃/hの温度勾配で350℃まで再び上昇させる。350℃で16時間の最終プラトーを行う。
【0120】
次いで、DMDSの流速1cm/h及び圧力25バール(2.5MPa)を維持しながら、温度を310℃に下げる。水素の速度は8.5Nl/hに低下する。このようにして、反応装置2の始動段階が終了する。
【0121】
この始動段階全体にわたって、触媒反応装置2からの硫黄含有ガス混合物3は、ガス状混合物をフレア及び/又は第2の反応装置6のどちらかに送ることができるパイプ及び配管を使用することによって、フレア及び/又は反応装置6に誘導される。
【0122】
2)水性ガスシフト反応ステップ
次いで、予備活性化した硫黄耐性シフト触媒中の一酸化炭素から二酸化炭素への転化の研究を20バール(2MPa)にて行う。触媒反応装置6は、17Nl/hの一酸化炭素、0.33cm/分の水及び26Nl/hの窒素を含むガス状混合物4を用いて、20バールの圧力で上向き処理する。触媒反応装置2の始動段階の間を除いて、反応装置2を出る硫黄含有ガス状混合物3は、次いでガス状混合物4に注入され、得られたガス状混合物5は触媒反応装置6に導入される。触媒反応装置6’に流入するガスの入口温度は310℃に維持される。モル比HO/COは1.4であり、滞留時間は38秒である。
【0123】
CO転化率及びCO収率を求めるために、ガス状流のCO濃度及びCO濃度を触媒反応装置6の出口ライン7に連結された赤外線分光分析装置によって測定する。
【0124】
CO転化率92%及びCO収率95%が得られ、実施例1の活性化剤としてHSを用いて得たものと同等の水性ガスシフト反応の良好な性能を反映している。したがって、DMDSは、触媒水性ガスシフト反応のための工程において、HSと同様に効率的である。
【0125】
したがって、ガス状硫化水素の代わりに本発明で定義される式(I)に対応する、少なくとも1つの化合物を使用する方法は、効率的で、より安全で、容易に実施される。
図1
【外国語明細書】