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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172785
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】横軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/08 20060101AFI20221110BHJP
   F04D 13/16 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
F04D13/08 W
F04D13/16 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021078986
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 飛祥
(72)【発明者】
【氏名】小寺 恭平
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB12
3H130AB23
3H130AB52
3H130AC07
3H130BA13D
3H130BA13E
3H130BA47A
3H130BA87D
3H130BA87E
3H130CA06
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DD01Z
3H130EA07A
3H130EA07C
(57)【要約】
【課題】横軸ポンプにおける気水混合運転状態の継続時間を短縮する。
【解決手段】横軸ポンプ1は、ポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の内部空間17において吸込口3よりも下流側に配置されるモータ10と、内部空間17において吸込口3が位置する上流側に配置される羽根車18と、を備えている。羽根車18は、吸込口3から吸い込まれた流水を、内部空間17を通過させて吐出口4に向かって吐出するように構成されている。ポンプケーシング2には、内部空間17と連通し、内部空間17に溜まった空気を外部に排出するための排気部20が設けられている。排気部20は、羽根車18の位置よりも下流側に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路内または水槽内に設置可能な横軸ポンプであって、
上流側に位置する吸込口および下流側に位置する吐出口を有し、該吸込口と該吐出口とを連通させる内部空間が設けられたポンプケーシングと、
前記内部空間において前記吸込口よりも下流側に配置されるモータと、
前記内部空間において前記吸込口が位置する上流側に配置され、前記モータの駆動により回転可能な羽根車と、を備え、
前記羽根車は、前記吸込口から吸い込まれた流水を、前記内部空間を通過させて前記吐出口に向かって吐出するように構成されており、
前記ポンプケーシングには、前記内部空間と連通し、該内部空間に溜まった空気を外部に排出するための少なくとも1つの排気部が設けられており、
前記排気部は、前記羽根車の位置よりも下流側に配置されている、横軸ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の横軸ポンプにおいて、
前記羽根車は、その回転中心が前記ポンプケーシングの軸心と一致するように配置されており、
前記排気部は、前記ポンプケーシングにおいて前記羽根車の回転中心よりも上方に配置されている、横軸ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の横軸ポンプにおいて、
前記排気部は、前記羽根車の大部分が前記内部空間の流水に浸かったときの、前記内部空間の水位よりも上方に配置されている、横軸ポンプ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の横軸ポンプにおいて、
前記内部空間に配置され、かつ、前記モータの全周を囲うように形成されるモータケーシングをさらに備え、
前記モータには、前記モータの駆動により回転可能なシャフトが設けられており、
前記モータは、前記シャフトの回転中心が前記ポンプケーシングの軸心と一致するように配置されており、
前記排気部は、前記モータケーシングが前記シャフトの回転中心に対応する位置まで前記内部空間の流水に浸かったときの、前記内部空間の水位よりも上方に配置されている、横軸ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の横軸ポンプにおいて、
前記排気部は、前記モータケーシングの大部分が前記内部空間の流水に浸かったときの、前記内部空間の水位よりも上方に配置されている、横軸ポンプ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の横軸ポンプにおいて、
前記排気部は、前記ポンプケーシングを貫通する少なくとも1つの貫通孔により構成されている、横軸ポンプ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の横軸ポンプにおいて、
前記排気部は、前記内部空間と連通し、前記ポンプケーシングの外周面から水平方向に延びる管部により構成されている、横軸ポンプ。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の横軸ポンプにおいて、
前記排気部は、
前記ポンプケーシングを貫通する少なくとも1つの貫通孔と、
前記貫通孔と連通し、前記ポンプケーシングに固定された略L字状のエルボ部材と、を含む、横軸ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載の横軸ポンプにおいて、
前記エルボ部材は、一端部が前記ポンプケーシングの外周面に固定される一方、他端部が上向きに開口するように構成されている、横軸ポンプ。
【請求項10】
請求項8に記載の横軸ポンプにおいて、
前記エルボ部材は、一端部が前記ポンプケーシングの外周面に固定される一方、他端部が下向きに開口するように構成されている、横軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、横軸ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流水路内または水槽内に設置可能な全速全水位型の横軸ポンプとして、例えば特許文献1のような横軸ポンプが提案されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、吸込口および吐出口を有するポンプケーシングと、ポンプケーシング内に配置されるモータおよび回転軸と、ポンプケーシング内の吸込口側に配置され、回転軸に固定された状態でモータの駆動により回転可能な羽根車と、を備えた横軸ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-029107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような全速全水位型の横軸ポンプにおいて、ポンプケーシング内で羽根車が十分に流水に浸かっていない状態では、横軸ポンプが空気を吸い込むような運転水位になると、羽根車の回転によりポンプケーシングの吸込口から流水と空気との双方を同時に吸い込む運転状態(すなわち、気水混合運転状態)となる。
【0006】
上記横軸ポンプにおいて、例えばポンプケーシング内の水位が下降しているときには、ポンプケーシング内で羽根車が水に十分に浸からない状態となる場合がある。かかる状態では、羽根車が流水とともに空気を吸い込むようになり、ポンプケーシング内に所謂エアだまりが発生しやすくなる。このエアだまりにより、横軸ポンプの排水能力が低下する。その結果、横軸ポンプは、排水能力がなくなった後の待機運転状態の水位になるまで気水混合運転を継続することになる。
【0007】
これに対し、例えば待機運転状態からポンプケーシング内の水位が上昇する場合には、気水混合運転状態を経た後に、通常運転状態に移行するようになる。しかしながら、ポンプケーシング内の水位が上昇する過程では、ポンプケーシング内で羽根車の大部分が水に浸かった状態となり、かつ、ポンプケーシング内において羽根車の後方に位置する空間に溜まった空気が吐出口から外部に排気されない限り、通常運転状態に正常に移行しない。その結果、横軸ポンプは、気水混合運転状態を継続することになる。
【0008】
ここで、例えば、横軸ポンプが適用される雨水排水機場では、横軸ポンプを長期間使用することが通常であり、横軸ポンプを長期間使用可能な状態に保つことが求められる。しかしながら、従来のような全速全水位型の横軸ポンプでは、気水混合運転状態の継続時間が増大すると、気水混合運転状態で発生する振動による軸受の破壊、シャフトの振れの増大、各締結部の緩みなどが起こりうる。すなわち、横軸ポンプにおいて、上記の気水混合運転状態の継続時間が長くなることは好ましくない。このため、従来の上記横軸ポンプでは、気水混合運転状態の継続時間を可能な限り短縮するという改善が必要であった。
【0009】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、横軸ポンプにおける気水混合運転状態の継続時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の開示は、流水路内または水槽内に設置可能な横軸ポンプであって、上流側に位置する吸込口および下流側に位置する吐出口を有し、吸込口と吐出口とを連通させる内部空間が設けられたポンプケーシングと、内部空間において吸込口よりも下流側に配置されるモータと、内部空間において吸込口が位置する上流側に配置され、モータの駆動により回転可能な羽根車と、を備えている。羽根車は、吸込口から吸い込まれた流水を、内部空間を通過させて吐出口に向かって吐出するように構成されている。そして、ポンプケーシングには、内部空間と連通し、内部空間に溜まった空気を外部に排出するための少なくとも1つの排気部が設けられており、排気部は、羽根車の位置よりも下流側に配置されている。
【0011】
第1の開示では、少なくとも1つの排気部が、ポンプケーシングの内部空間と連通し、かつ、ポンプケーシングにおいて羽根車の位置よりも下流側に配置されている。かかる構成により、例えば、内部空間の水位が下降しているときには、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気が、内部空間の内圧により排気部から外部に向かって素早く排気される。この排気が継続することにより、羽根車の位置よりも下流側に位置する排気部により内部空間のエアだまりが解消され、内部空間に流水が充満された状態を維持しやすくなる。これにより、内部空間の流水が、低水位となるまで吐出口から吐出される。すなわち、横軸ポンプの排水能力が維持される。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、待機運転状態に早期に移行する。
【0012】
また、第1の開示において、待機運転状態では、内部空間の流水が吐出口から吐出されないが、内部空間に溜まった空気が排気部から外部に排気される。この排気が継続することにより、羽根車の後方に位置する内部空間において、流水が充填された状態に維持される。
【0013】
さらに、第1の開示では、内部空間の水位が上昇しているときであっても、内部空間に溜まった空気が、内部空間の内圧により排気部から外部に向かって素早く排気される。この排気が継続することにより、内部空間の流水は、羽根車が十分に流水に浸かる水位まで充填される。そして、羽根車が内部空間において十分に流水に浸かった状態になると、内部空間の流水が吐出口から即座に吐出される。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行する。
【0014】
このように、第1の開示では、内部空間に溜まった空気が排気部から外部に向かって排気されることから、気水混合運転状態の継続時間を短縮することができる。その結果、横軸ポンプを、例えば雨水排水機場において長期間使用可能な状態に保つことが可能となる。
【0015】
第2の開示は、第1の開示において、羽根車は、その回転中心がポンプケーシングの軸心と一致するように配置されており、排気部は、ポンプケーシングにおいて羽根車の回転中心よりも上方に配置されている。
【0016】
この第2の開示では、内部空間に溜まった空気が、ポンプケーシングにおいて羽根車の回転中心よりも上方に位置する排気部から外部に排気される。これにより、例えば内部空間の水位が上昇しているときに、内部空間の水位を、羽根車の回転中心よりも上方に位置させることが可能となる。すなわち、羽根車が内部空間において十分に流水に浸かった状態にすることが可能となる。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行させることができる。
【0017】
第3の開示は、第2の開示において、排気部は、羽根車の大部分が内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に配置されている。
【0018】
この第3の開示では、内部空間に溜まった空気が、羽根車の大部分が内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に位置する排気部から外部に排気される。これにより、例えば内部空間の水位が上昇しているときに、羽根車の大部分が内部空間の流水に浸かった状態に維持しやすくなる。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行させることができる。
【0019】
第4の開示は、第1~第3のいずれか1つの開示において、内部空間に配置され、かつ、モータの全周を囲うように形成されるモータケーシングをさらに備えている。モータには、モータの駆動により回転可能なシャフトが設けられている。モータは、シャフトの回転中心がポンプケーシングの軸心と一致するように配置されている。そして、排気部は、モータケーシングがシャフトの回転中心に対応する位置まで内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に配置されている。
【0020】
この第4の開示では、内部空間に溜まった空気が、モータケーシングがシャフトの回転中心に対応する位置まで内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に位置する排気部から外部に排気される。これにより、例えば内部空間の水位が上昇しているときに、モータケーシングの少なくとも半分が、内部空間の流水に浸かるようになる。その結果、内部空間の流水により、モータから発せられる熱を受熱することができる。
【0021】
第5の開示は、第4の開示において、排気部は、モータケーシングの大部分が内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に配置されている。
【0022】
この第5の開示では、内部空間に溜まった空気が、モータケーシングの大部分が内部空間の流水に浸かったときの、内部空間の水位よりも上方に位置する排気部から外部に排気される。これにより、例えば内部空間の水位が上昇しているときに、モータケーシングの大部分が内部空間の流水に浸かるようにすることが可能となる。その結果、内部空間の流水により、モータから発せられる熱を受熱することができる。
【0023】
第6の開示は、第1~第5のいずれか1つの開示において、排気部は、ポンプケーシングを貫通する少なくとも1つの貫通孔により構成されている。
【0024】
この第6の開示では、貫通孔のような簡易な構成により、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気を、外部に向かって適切に排気することができる。
【0025】
第7の開示は、第1~第5のいずれか1つの開示において、排気部は、内部空間と連通し、ポンプケーシングの外周面から水平方向に延びる管部により構成されている。
【0026】
この第7の開示では、水平方向に延びる管部による簡易な構成により、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気を、横軸ポンプを設置する流水路または水槽の状況に応じて、管部から外部に向かって水平方向に案内しながら排気することができる。
【0027】
第8の開示は、第1~第5のいずれか1つの開示において、排気部は、ポンプケーシングを貫通する少なくとも1つの貫通孔と、貫通孔と連通し、ポンプケーシングに固定された略L字状のエルボ部材と、を含む。
【0028】
この第8の開示では、貫通孔およびエルボ部材による簡易な構成により、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気を、貫通孔およびエルボ部材から外部に向かって所定の方向に案内しながら排気することができる。
【0029】
第9の開示は、第8の開示において、エルボ部材は、一端部がポンプケーシングの外周面に固定される一方、他端部が上向きに開口するように構成されている。
【0030】
この第9の開示では、他端部が上向きに開口するエルボ部材により、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気を、横軸ポンプを設置する流水路または水槽の状況に応じて、貫通孔およびエルボ部材から外部に向かって上向きに案内しながら適切に排気することができる。
【0031】
第10の開示は、第8の開示において、エルボ部材は、一端部がポンプケーシングの外周面に固定される一方、他端部が下向きに開口するように構成されている。
【0032】
この第10の開示では、他端部が下向きに開口するエルボ部材により、ポンプケーシングの内部空間に溜まった空気を、横軸ポンプを設置する流水路または水槽の状況に応じて、貫通孔およびエルボ部材から外部に向かって下向きに案内しながら適切に排気することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本開示によると、横軸ポンプにおける気水混合運転状態の継続時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本開示の実施形態に係る横軸ポンプの全体斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、内部空間の水位が下降している様子を例示する横軸ポンプの側面図である。
図4図4は、待機運転状態の内部空間の水位を例示する図3相当図である。
図5図5は、内部空間の水位が上昇している様子を例示する図3相当図である。
図6図6は、図5のVI-VI線断面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線断面図である。
図8図8は、本開示の実施形態の変形例1を示す図7相当図である。
図9図9は、本開示の実施形態の変形例2を示す図7相当図である。
図10図10は、本開示の実施形態の変形例3を示す図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(横軸ポンプ)
図1は、本開示の実施形態に係る横軸ポンプ1の全体を示している。横軸ポンプ1は、流水路内または水槽内に設置可能な全速全水位型の水中ポンプである。横軸ポンプ1は、例えば、水路と河川とを繋ぐ排水経路の途中に設けられたポンプゲートシステム(図示せず)の一部として構成される。なお、上記「全速全水位」とは、空運転となる水位を除くあらゆる水位において定格回転数で運転できることをいう。
【0037】
横軸ポンプ1は、図1図5に例示した軸心Aが垂直方向に対し交差する方向に延びるように構成されている。なお、以下の説明において、後述する吸込口3が位置する側を横軸ポンプ1の上流側と呼ぶ一方、後述する吐出口4が位置する側を横軸ポンプ1の下流側と呼ぶ場合がある。
【0038】
(整流板)
図1図5に示すように、横軸ポンプ1には、整流板7が設けられている。整流板7は、後述するポンプケーシング2の吸込口3に取り付けられている。整流板7は、低水位の流水を吸込口3に案内するための部材であり、吸込口3の左右両側および上側を覆うように構成されている。なお、整流板7は、1枚の平板材を用いて機械加工(プレス加工等)により形成してもよく、あるいは複数の平板材を用いて接合または組み立てにより形成してもよい。
【0039】
(固定排水管)
図1図5に示すように、横軸ポンプ1には、固定排水管8が設けられている。固定排水管8は、後述するポンプケーシング2の吐出口4に取り付けられている。固定排水管8は、図示しないゲート扉を水平方向に貫通する連通管の一部として構成されている。固定排水管8に横軸ポンプ1が接続されることにより、図示しないゲート扉と横軸ポンプ1とが一体化した排水設備となる。固定排水管8は、吐出口4と対向する部分(フランジ部)が後述する係合部材6と係合するように構成されている。
【0040】
(ポンプケーシング)
図1図5に示すように、横軸ポンプ1は、ポンプケーシング2を備えている。ポンプケーシング2は、略円筒状を有している(図6および図7参照)。ポンプケーシング2は、軸心Aの延伸方向に沿って延びている。
【0041】
この実施形態のポンプケーシング2は、第1~第4ケーシング部2a~2dにより構成されている。第1~第4ケーシング部2a~2dは、上流側から下流側に向かって第1ケーシング部2aから第4ケーシング部2dの順に配置されている。
【0042】
ポンプケーシング2は、吸込口3および吐出口4を有している。具体的に、吸込口3は、第1ケーシング部2aの、図2の紙面左側に位置する開口部として構成されている。吐出口4は、第4ケーシング部2dの、図2の紙面右側に位置する開口部として構成されている。
【0043】
第3ケーシング部2cの上部には、後述するモータ10に電力を供給するための水中ケーブル5が接続されている。また、第4ケーシング部2dにおける吐出口4付近の上部には、後述する固定排水管8をポンプケーシング2(第4ケーシング部2d)の吐出口4側に取り付けるための係合部材6が設けられている。
【0044】
(モータおよびシャフト)
図2に示すように、横軸ポンプ1は、モータ10およびシャフト11を備えている。モータ10およびシャフト11は、後述するモータケーシング12の内部に格納されている。モータ10は、ポンプケーシング2の後述する内部空間17において吸込口3よりも下流側に配置されている。シャフト11は、モータ10の駆動により回転可能に構成されている。モータ10は、シャフト11の回転中心がポンプケーシング2における軸心Aの位置と一致するように配置されている。
【0045】
(モータケーシング)
横軸ポンプ1は、モータケーシング12を備えている。モータケーシング12は、ポンプケーシング2の後述する内部空間17において吸込口3よりも下流側に配置されている。モータケーシング12は、モータ10の全周を囲うように構成された略円筒状を有している。モータケーシング12は、その長手方向が軸心Aの延伸方向に沿って延びている。モータケーシング12は、第3ケーシング部2cにより支持されるように構成されている(図2参照)。
【0046】
(第1および第2軸受)
横軸ポンプ1は、シャフト11を回転自在に軸支するための第1軸受13および第2軸受14を備えている。第1軸受13は、シャフト11の、上流側に位置する端部寄りの中途部に取り付けられている。第1軸受13は、例えば2つのベアリングにより構成されている。第2軸受14は、シャフト11の、モータ10よりも下流側に位置する端部に取り付けられている。第2軸受14は、例えば1つのベアリングにより構成されている。
【0047】
(第1および第2軸受支持部)
横軸ポンプ1は、第1軸受13を支持するための第1軸受支持部15と、第2軸受14を支持するための第2軸受支持部16とを備えている。第1軸受支持部15は、第1軸受13の外周面を外方から囲むようように構成されている。第2軸受支持部16は、第2軸受14の外周面を外方から囲むように構成されている。
【0048】
この実施形態において、第1軸受支持部15は、モータケーシング12とは別の部材として構成されており、モータケーシング12の上流側に位置する端部に取り付けられている。一方、第2軸受支持部16は、モータケーシング12の一部として構成されており、モータケーシング12の下流側に位置する端部と一体に形成されている。
【0049】
(内部空間)
図2に示すように、ポンプケーシング2には、内部空間17が設けられている。内部空間17は、吸込口3および吐出口4と連通している。図7に示すように、モータケーシング12の周囲では、内部空間17が、ポンプケーシング2の内周面とモータケーシング12の外周面との間に位置する断面視略円環状の空間として構成されている。かかる構成により、内部空間17の流水が、モータケーシング12を介してモータ10に発生した熱を受熱する。
【0050】
(羽根車)
図2図6に示すように、横軸ポンプ1は、羽根車18を備えている。羽根車18は、ポンプケーシング2の内部空間17において吸込口3が位置する上流側に配置されている。具体的に、羽根車18は、シャフト11の、モータ10よりも上流側に位置する端部に取り付けられている。また、羽根車18は、第1軸受支持部15の上流側に位置する端部に取り付けられている。
【0051】
羽根車18は、その回転中心が軸心Aの位置と一致するように配置されている。羽根車18は、モータ10の駆動により、シャフト11の回転とともに回転可能となっている。そして、羽根車18は、吸込口3から吸い込まれた流水を加圧し、該流水を、内部空間17を通過させて吐出口4に向かって吐出するように構成されている。なお、図6示した概略的な縦断面図では、羽根車18の構成を強調するために、モータ10、シャフト11、および、モータケーシング12の図示を省略している。
【0052】
なお、内部空間17では、羽根車18が位置する側(吸込口3が位置する側)に近づくほど、羽根車18による流水および空気に対する加圧の影響を受けやすくなる。すなわち、内部空間17では、上流側(吸込口3が位置する側)の方が、下流側(吐出口4が位置する側)よりも内部空間17の内圧が高くなる傾向にある。
【0053】
(排気部)
本開示の特徴的構成として、図1図7に示すように、ポンプケーシング2には、内部空間17に溜まった空気を外部に排出するための排気部20が設けられている。排気部20は、羽根車18の位置よりも下流側に離れた位置に配置されている。
【0054】
図1図5に示すように、本開示の実施形態において、排気部20は、ポンプケーシング2に設けられた2つの貫通孔21,21からなる。図6および図7に示すように、貫通孔21,21は、縦断面視において第3ケーシング部2cの左右側部に形成されている。各貫通孔21は、第3ケーシング部2cに対し水平方向に貫通している。各貫通孔21は、内部空間17と連通している。貫通孔21,21は、縦断面視において、第3ケーシング部2cにおける垂直方向の中心線に対し線対称(左右対称)となっている。
【0055】
図1図5に示すように、各貫通孔21は、略円形状に開口している。各貫通孔21の直径は、好ましくは約30mmである。これにより、内部空間17に溜まった空気が外部に排気されやすく、かつ、ポンプ効率の低下も抑えられる。これに対し、各貫通孔21の直径が30mmを超えると、横軸ポンプにおけるポンプ効率が低下するおそれがある。
【0056】
図6に示すように、貫通孔21,21(排気部20)は、第3ケーシング部2c(ポンプケーシング2)において羽根車18の回転中心よりも上方に配置されるのが好ましい。より好ましくは、貫通孔21,21(排気部20)は、羽根車18の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位(例えば図5および図6に示したWL1)よりも上方に配置されるのがよい。なお、上述した「羽根車18の大部分が内部空間17の流水に浸かったとき」とは、具体的に、羽根車18における80%以上の部分が内部空間17の流水に浸かった状態を指すものとする。
【0057】
図7に示すように、貫通孔21,21(排気部20)は、第3ケーシング部2c(モータケーシング12)がシャフト11の回転中心に対応する位置まで内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に配置されるのが好ましい。より好ましくは、貫通孔21,21(排気部20)は、第3ケーシング部2c(モータケーシング12)の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位(例えば図5および図7に示したWL1)よりも上方に配置されるのがよい。なお、上述した「モータケーシング12の大部分が内部空間17の流水に浸かったとき」とは、具体的に、モータケーシング12における80%以上の部分が内部空間17の流水に浸かった状態を指すものとする。
【0058】
[実施形態の作用効果]
横軸ポンプ1では、排気部20が、ポンプケーシング2の内部空間17と連通し、かつ、ポンプケーシング2において羽根車18の位置よりも下流側に配置されている。かかる構成によれば、図3に例示するように、内部空間17の水位がWL1からWL2に下降しているときには、ポンプケーシング2の内部空間17に溜まった空気が、内部空間17の内圧により排気部20から外部に向かって素早く排気される(図3に示した矢印Eを参照)。この排気が継続することにより、羽根車18の位置よりも下流側に位置する排気部20により内部空間17のエアだまりが解消され、内部空間17に水が充満された状態を維持しやすくなる。これにより、内部空間17の流水が、低水位となるまで吐出口4から吐出される(図3に示した矢印Dを参照)。すなわち、横軸ポンプ1の排水能力が維持される。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、待機運転状態に早期に移行する。
【0059】
また、図4に例示するように、待機運転状態では、内部空間17の流水が吐出口4から吐出されないが、内部空間17に溜まった空気が排気部20から外部に排気される。この排気が継続することにより、羽根車18の後方に位置する内部空間17において、水位が上昇した場合に早期に通常運転状態に移行できる程度に流水が充填された状態(例えば水位WL2)に維持される。
【0060】
さらに、図5に例示するように、内部空間17の水位がWL2からWL1に上昇しているときであっても、内部空間17に溜まった空気が、内部空間17の内圧により排気部20から外部に向かって素早く排気される(図5に示した矢印Eを参照)。この排気が継続することにより、内部空間17の流水は、羽根車18が十分に流水に浸かる水位WL2まで充填される。そして、羽根車18が内部空間17において十分に流水に浸かった状態になると、内部空間17の流水が吐出口4から即座に吐出される(図5に示した矢印Dを参照)。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行する。
【0061】
このように、本開示の実施形態に係る横軸ポンプ1では、内部空間17に溜まった空気が排気部20から外部に向かって排気されることから、気水混合運転状態の継続時間を短縮することができる。その結果、横軸ポンプ1を、例えば雨水排水機場において長期間使用可能な状態に保つことが可能となる。
【0062】
また、排気部20は、ポンプケーシング2において羽根車18の回転中心よりも上方に配置されるのが好ましい。すなわち、内部空間17に溜まった空気は、羽根車18の回転中心よりも上方に位置する排気部20から外部に排気される。これにより、例えば内部空間17の水位が上昇しているときに、内部空間17の水位を、羽根車18の回転中心よりも上方に位置させることが可能となる。すなわち、羽根車18が内部空間17において十分に流水に浸かった状態にすることが可能となる。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行させることができる。
【0063】
さらに、排気部20は、羽根車18の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位(例えば図5および図6に示したWL1)よりも上方に位置するのがより好ましい。すなわち、内部空間17に溜まった空気は、羽根車18の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に位置する排気部20から外部に排気される。これにより、例えば内部空間17の水位が上昇しているときに、羽根車18の大部分が内部空間17の流水に浸かった状態に維持しやすくなる。その結果、気水混合運転状態の継続時間が短縮され、通常運転状態に早期に移行させることができる。
【0064】
また、排気部20は、モータケーシング12がシャフト11の回転中心に対応する位置まで内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に配置されるのが好ましい。すなわち、内部空間17に溜まった空気は、モータケーシング12がシャフト11の回転中心に対応する位置まで内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に位置する排気部20から外部に排気される。これにより、例えば内部空間17の水位が上昇しているときに、モータケーシング12の少なくとも半分が、内部空間17の流水に浸かるようになる。その結果、内部空間17の流水により、モータ10から発せられる熱を受熱することができる。なお、内部空間17に流水が充填されることにより、図示しないメカシールの潤滑が行われるようになる。
【0065】
さらに、排気部20は、モータケーシング12の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に配置されるのがより好ましい。このようにすれば、内部空間17に溜まった空気は、モータケーシング12の大部分が内部空間17の流水に浸かったときの、内部空間17の水位よりも上方に位置する排気部20から外部に排気される。これにより、例えば内部空間17の水位が上昇しているときに、モータケーシング12の大部分が内部空間17の流水に浸かるようにすることが可能となる。その結果、内部空間17の流水により、モータ10から発せられる熱を受熱することができる。
【0066】
また、本開示の実施形態において、排気部20は、ポンプケーシング2を貫通する貫通孔21,21により構成されている。このような貫通孔21,21による簡易な構成により、ポンプケーシング2の内部空間17に溜まった空気を、外部に向かって適切に排気することができる。
【0067】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態では、排気部20が、2つの貫通孔21,21からなる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、排気部20を、内部空間17と連通し、かつ、ポンプケーシング2の外周面から水平方向に延びる管部として構成してもよい。
【0068】
具体的に、図8に示した変形例1では、排気部20が、ポンプケーシング2と一体に形成された1つの鋳抜き孔22(管部)からなる形態を示している。この鋳抜き孔22は、縦断面視において第3ケーシング部2cの側部(図8の紙面右側に位置する側部)に形成されている。また、鋳抜き孔22は、水平方向に延びる略円筒状に形成されている。この変形例では、鋳抜き孔22(水平方向に延びる管部)による簡易な構成により、内部空間17に溜まった空気を、横軸ポンプ1を設置する流水路または水槽の状況に応じて、鋳抜き孔22(管部)から外部に向かって水平方向に案内しながら排気することができる。
【0069】
なお、上記管部としては、図8に示した鋳抜き孔22に限られない。例えば、上記鋳抜き孔22に代えて、図示しないストレート状のパイプ部材(図示せず)を、上記実施形態で説明した貫通孔21と連通させた状態で、ポンプケーシング2の外周面から水平方向に延びるように該外周面に固定した形態としてもよい。なお、鋳抜き孔22は、複数設けられていてもよい。
【0070】
[実施形態の変形例2]
また、図9に示した変形例2のように、略L字状のエルボ部材23を、上記実施形態で説明したものと同様の1つの貫通孔21と連通させた状態でポンプケーシング2の外周面に固定した形態としてもよい。具体的に、この変形例のエルボ部材23は、一端部23aがポンプケーシング2の外周面に対して例えば溶接などにより固定される一方、他端部23bが上向きに開口するように構成されている。
【0071】
この変形例では、貫通孔21およびエルボ部材23による簡易な構成により、ポンプケーシング2の内部空間17に溜まった空気を、貫通孔21およびエルボ部材23から外部に向かって所定の方向に案内しながら排気することができる。特に、この変形例では、他端部23bが上向きに開口するエルボ部材23により、内部空間17に溜まった空気を、横軸ポンプ1を設置する流水路または水槽の状況に応じて、貫通孔21およびエルボ部材23から外部に向かって上向きに案内しながら適切に排気することができる。なお、貫通孔21およびエルボ部材23は、複数設けられていてもよい。
【0072】
[実施形態の変形例3]
さらに、変形例2の更なる変形例として、図10に示した変形例3のようにエルボ部材23を構成してもよい。具体的に、この変形例のエルボ部材23は、一端部23aがポンプケーシング2の外周面に固定される一方、他端部23bが下向きに開口するように構成されている。かかる構成により、この変形例では、内部空間17に溜まった空気を、横軸ポンプ1を設置する流水路または水槽の状況に応じて、貫通孔21およびエルボ部材23から外部に向かって下向きに案内しながら適切に排気することができる。なお、上記変形例2と同様に、貫通孔21およびエルボ部材23は、複数設けられていてもよい。
【0073】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、排気部20が2つの貫通孔21,21からなる形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、排気部20が1つの貫通孔21のみからなる形態であってもよい。すなわち、ポンプケーシング2に少なくとも1つの貫通孔21が設けられていれば、上記実施形態で説明した排気部20としての上記作用効果を得ることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、第3ケーシング部2cに貫通孔21,21(排気部20)を設けた形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、少なくとも1つの貫通孔21が、第2~第4ケーシング部2b~2dのいずれかに設けられていれば、上述した作用効果を得ることができる。
【0075】
また、排気部20は、3つ以上の貫通孔21からなる形態であってもよい。この場合において、複数の貫通孔21を、ポンプケーシング2の長手方向(軸心Aの延伸方向)に沿って互いに間隔をあけて配置してもよい。このようにすれば、複数の貫通孔21により、内部空間17に溜まった空気を効率よく排気することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、各貫通孔21が、第3ケーシング部2cに対し水平方向に貫通する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、各貫通孔21は、第3ケーシング部2cの厚み方向(ポンプケーシング2の径方向)に貫通するように形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、貫通孔21が略円形状に開口する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、貫通孔21の開口は、三角形状、四角形状などの多角形状に形成されていてもよい。
【0078】
ところで、上記実施形態で説明したように、内部空間17では、上流側(吸込口3が位置する側)の方が、下流側(吐出口4が位置する側)よりも内部空間17の内圧が高くなる傾向にある。このことに鑑みれば、貫通孔21(排気部20)による排気能力を高めるために、貫通孔21を、羽根車18が位置する下流側の近傍(例えば第1ケーシング部2b)に配置してもよい。
【0079】
以上、本開示についての実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態のみに限定されず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、例えば流水路内または水槽内に設置可能な全速全水位型の横軸ポンプとしてとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:横軸ポンプ
2:ポンプケーシング
3:吸込口
4:吐出口
5:水中ケーブル
7:整流板
10:モータ
11:シャフト
12:モータケーシング
17:内部空間
18:羽根車
20:排気部
21:貫通孔
22:鋳抜き孔
23:エルボ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10