(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017280
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】生物繊維組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/36 20060101AFI20220118BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220118BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220118BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220118BHJP
A61K 8/96 20060101ALI20220118BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20220118BHJP
A61L 15/40 20060101ALI20220118BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220118BHJP
C08B 37/00 20060101ALI20220118BHJP
C08B 15/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220118BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220118BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220118BHJP
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A61Q 19/02 20060101ALI20220118BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20220118BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/46
A61K9/70
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/73
A61K8/96
A61L15/28 100
A61L15/40 100
A61K35/74 G
C08B37/00 P
C08B15/00
A61P17/16
A61P17/18
A61P29/00
A61P43/00 111
A61K45/00
A61Q19/02
A61L15/44 100
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165470
(22)【出願日】2021-10-07
(62)【分割の表示】P 2020016086の分割
【原出願日】2020-02-03
(31)【優先権主張番号】108104284
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519463101
【氏名又は名称】嬌朋生技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】陳 昭誠
(72)【発明者】
【氏名】盧 吉祥
(72)【発明者】
【氏名】洪 鈞▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】林 尚儒
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C081
4C083
4C084
4C087
4C090
【Fターム(参考)】
4B065AA02X
4B065AA03X
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4B065AA12X
4B065AA14X
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4B065CA44
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4C076AA73
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4C081AA12
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4C090AA09
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4C090BC19
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4C090CA42
4C090DA11
4C090DA22
4C090DA24
4C090DA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物質の吸収および輸送の効率を効果的に向上させることができ、優れた生体適合性を有する生物繊維組成物を提供する。
【解決手段】20~30nmの直径および2000~3000nmの長さを有する複数の生物繊維を含む、生物繊維組成物。該生物繊維は、アセトバクター属等特定の細菌から選ばれる微生物が培養液における炭素源を利用して細胞内で合成したβ-1,4-グルカン鎖からなる繊維である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~30nmの直径および2000~3000nmの長さを有する複数の生物繊維を含む、生物繊維組成物。
【請求項2】
前記生物繊維組成物は、液体媒質を含まず、
前記生物繊維組成物に1mLの水を添加して混合物を形成した後、前記混合物における生物繊維の含有量は、0.4重量%を超えて1.2重量%以下である、請求項1に記載の生物繊維組成物。
【請求項3】
前記生物繊維組成物が0.1mLの水に分散された時のOD620値は、0.29を超えて1.22以下である、請求項2に記載の生物繊維組成物。
【請求項4】
前記OD620値は0.43~1.22である、請求項3に記載の生物繊維組成物。
【請求項5】
液体媒質をさらに含む、請求項1に記載の生物繊維組成物。
【請求項6】
前記液体媒質は水である、請求項5に記載の生物繊維組成物。
【請求項7】
前記生物繊維組成物が0.1mLの前記水に分散された時のOD620値は、0.43~1.22である、請求項6に記載の生物繊維組成物。
【請求項8】
前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量は、0.2重量%を超えて1.2重量%以下である、請求項5に記載の生物繊維組成物。
【請求項9】
生物繊維組成物とパラフィルム(Parafilm)の表面との接触角は、95.5°以上であり107°未満である、請求項6に記載の生物繊維組成物。
【請求項10】
前記複数の生物繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)およびアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌を含んで形成されたものである、請求項1に記載の生物繊維組成物。
【請求項11】
有機物養分、活性成分または薬物をさらに含む、請求項1に記載の生物繊維組成物。
【請求項12】
前記活性成分は、保湿成分、美白成分、シワ防止成分、角質除去成分、抗炎症成分、生長因子または酵素である、請求項11に記載の生物繊維組成物。
【請求項13】
66~150の長さ対直径比を有する複数の生物繊維を含む生物繊維組成物であって、
前記生物繊維組成物が0.1mLの水に分散された時のOD620値は、0.29を超えて1.22以下である、生物繊維組成物。
【請求項14】
前記生物繊維組成物は、液体媒質を含まず、
前記生物繊維組成物に1mLの水を添加して混合物を形成した後、前記混合物における生物繊維の含有量は、0.4重量%を超えて1.2重量%以下である、請求項13に記載の生物繊維組成物。
【請求項15】
液体媒質をさらに含む、請求項13に記載の生物繊維組成物。
【請求項16】
前記液体媒質は水である、請求項15に記載の生物繊維組成物。
【請求項17】
前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量は、0.2重量%を超えて1.2重量%以下である、請求項15に記載の生物繊維組成物。
【請求項18】
生物繊維組成物とパラフィルム(Parafilm)の表面との接触角は、95.5°以上であり107°未満である、請求項16に記載の生物繊維組成物。
【請求項19】
有機物養分、活性成分または薬物をさらに含む、請求項13に記載の生物繊維組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物繊維組成物に関し、特に、物質の吸収および輸送の効率を向上させる生物繊維組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生物繊維(Biocellulose)とは、微生物が培養液における炭素源を利用して細胞内でβ-1,4-グルカン鎖(β-1,4-glucan chain)を合成した後、エキソサイトーシスによって排出された繊維である。前記生物繊維は、優れた親水性、高い機械的強度および高い生体適合性等の特性を有するため、医療分野における創傷被覆材および化粧用品分野に適用されることが見られており、皮膚表層の水蒸気や気体の透過および分泌物の吸収に寄与する。
【0003】
一般的な生物繊維の生成は、主に、撹拌発酵培養および静置発酵培養があり、得られた層状または塊状の生物繊維には、続いて純化、滅菌および活性成分の添加等の加工プロセスを行い、フィルム状バルク材を形成して後続の製品に適用する。
【0004】
近来、その製品の適用形態の制限を突破するために、機械的処理で前記層状または塊状の生物繊維材料を分解し、連続的な媒質を製作して、生物繊維の接触面積を増加させることにより、前記生物繊維の吸収および輸送の効率を倍増させる技術が開発された。その関連技術は台湾特許第I586373号に記載されている。しかしながら、粉砕分解の過程において、前記生物繊維の比表面積が大きくなり、処理する時の粘度の上昇に伴って、処理の難易度が増えるため、生物繊維の粉砕をある程度まで行うと、それ以上向上させることができなくなる。台湾特許第I586373号に記載されている製造プロセスには、前記生物繊維材料を均質化することにより粉砕することが教示されているが、実用上では、材料が詰まりやすいという問題があり、たとえ前記問題を緩和するために均質液の濃度を希釈しても、前記生物繊維のせん断破砕程度をさらに向上させることができず、その比表面積により経皮吸収および物質輸送を達成する効果は限られる。
【0005】
上記事情に鑑みて、従来技術に存在する問題を解決するために、物質の吸収および輸送の効率を効果的に向上させることができる生物繊維組成物、および前記生物繊維組成物を安定に製造する方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明は、20~30nmの直径および2000~3000nmの長さを有する複数の生物繊維を含む生物繊維組成物を提供する。前記複数の生物繊維の表面には、ヒドロキシ基が分布されており、水素結合の作用力を引き起こすことができるため、前記生物繊維組成物に優れた安定性を提供することができる。
【0008】
一つの具体的な実施態様において、前記生物繊維は、平均直径が20nmであり、平均長さが2000nmである。
【0009】
皮膚表層に塗布する製品として本発明の生物繊維組成物を適用する時、前記生物繊維の安定性により、活性成分と皮膚との接触時間を延長することができ、また、前記生物繊維組成物の比表面積が大きく、皮膚表面またはその毛穴とより密接になるため、生物繊維と皮膚との接触面積を増加させることができ、皮膚表層の経皮吸収および物質輸送の効率を効果的に向上させ、皮膚に保湿、抗炎症、抗老化、皮膚弾力性向上および分泌された油の吸収等の機能を与える。また、塗布の際、使用者に粘つき感および刺激性が生じず、市販の生物繊維フィルム状バルク材より優れている。
【0010】
一方、農業用肥料として本発明の生物繊維組成物を適用する時、前記生物繊維の安定性により、土壌クラストを防止でき、優れた保水および放水の効果を発揮し、植物または農作物の生長を促進する作用を達成できる。
【0011】
前記生物繊維組成物は、比較的に大きい比表面積を有し、前記生物繊維組成物の大きい比表面積およびその表面のヒドロキシ基による水素結合の作用力により、上記生物繊維組成物の親水性、安定性および生体適合性をさらに向上させる。
【0012】
一つの具体的な実施態様において、本発明の生物繊維組成物は、凍結錠剤形態を呈し、前記凍結錠剤形態の生物繊維組成物は、凍結乾燥処理を経て形成される。具体的には、前記製品は、低温凍結、低温低圧空気吸引および脱着の過程により凍結錠剤を製作でき、全体的に製品の安定度を向上させ、変質し難くなり、その生物繊維の優れた再水和性によって、使用者が速やかに使用することに便利である。すなわち、前記生物繊維組成物は、液体媒質を含まず、また、凍結錠剤形態を呈する前記生物繊維組成物に1mLの水を添加して混合物を形成した後、前記混合物における生物繊維の含有量が0.4重量%を超えて1.2重量%以下であるため、より好ましい分散速度を提供する。具体的な実施において、凍結錠剤形態を呈する前記生物繊維組成物に1mLの水を添加した後、前記生物繊維組成物における前記複数の生物繊維の含有量は、例えば、0.4重量%を超えるか、または0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%および1.2重量%であってもよい。
【0013】
前記凍結錠剤形態の生物繊維組成物が0.1mLの水に分散された時のOD620値は、0.29を超えて1.22以下である。このOD620値とは、620nmの光波長において測定された光学密度であり、また、前記凍結錠剤形態の生物繊維組成物が0.1mLの水に分散された時のOD620値は、例えば、0.295、0.43、0.53、0.54、0.65、0.76、0.88、0.96、0.98、1.00、1.13、1.14、1.21および1.22であってもよい。一つの具体的な実施態様において、前記OD620値は0.43~1.22である。
【0014】
もう一つの実施態様において、本発明の生物繊維組成物は、液体形態を呈し、さらに液体媒質を含む。前記液体媒質は、例えば、水である。
【0015】
前記液体形態の生物繊維組成物は、優れた流動性を有し、前記生物繊維組成物の大きい比表面積を利用することにより、活性成分または薬物の拡散および溶解の効果を向上させる。また、前記の水を含む生物繊維組成物が0.1mLの前記水に分散された時も、0.43~1.22のOD620値が得られ、例えば、0.43、0.53、0.54、0.65、0.76、0.88、0.96、0.98、1.00、1.13、1.14、1.21および1.22である。一つの具体的な実施態様において、前記OD620値は0.43~1.22である。
【0016】
本発明の液体形態を呈する生物繊維組成物の組成において、前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量は、0.2重量%を超えて1.2重量%以下である。前記複数の生物繊維の含有量が0.2重量%より低いと、複数の生物繊維が十分なヒドロキシ基を提供して液体媒質の界面張力に影響を与えることができないため、液体媒質と複数の生物繊維が凝集力に影響されて凝集しやすくなり、層間分離という現象が生じし、混合に不利となる。前記複数の生物繊維の含有量が1.2重量%より高いと、適用効果に対して実質的な増益がなく、無駄な資源浪費になる。本発明によれば、本発明の生物繊維組成物の組成において、前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量は、例えば、0.2重量%を超えるか、または0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%および1.2重量%であってもよい。
【0017】
また、一つの具体的な実施態様において、前記生物繊維組成物とパラフィルム(Parafilm)の表面との接触角は、95.5°以上であり107°未満である。
【0018】
本発明は、66~150の長さ対直径比(nm/nm)を有する複数の生物繊維を含む生物繊維組成物であって、前記生物繊維組成物が0.1mLの水に分散された時のOD620値は0.29を超えて1.22以下である、生物繊維組成物をさらに提供する。
【0019】
本発明によれば、前記生物繊維組成物は、凍結錠剤形態を呈しており、液体媒質を含まなくてもよく、また、凍結錠剤形態を呈する前記生物繊維組成物に1mLの水を添加して混合物を形成した後、前記混合物における生物繊維の含有量が0.4重量%を超えて1.2重量%以下であるため、より好ましい分散速度を提供する。具体的な実施において、凍結錠剤形態を呈する前記生物繊維組成物に1mLの水を添加して混合物を形成した後、前記混合物における前記複数の生物繊維の含有量は、例えば、0.4重量%を超えるか、または0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%および1.2重量%であってもよい。当然ながら、前記生物繊維組成物は、液体媒質、例えば、水を含んでもよい。また、66~150の長さ対直径比(nm/nm)を有する複数の生物繊維を含む生物繊維組成物において、前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量は、0.2重量%を超えて1.2重量%以下である。また、生物繊維組成物とパラフィルム(Parafilm)の表面との接触角は、95.5°以上であり107°未満である。
【0020】
前記複数の生物繊維は、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)およびアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌を含んで形成されたものである。
【0021】
一つの具体的な実施態様において、前記複数の生物繊維は、グルコンアセトバクター属の菌種が発酵して合成したものであり、特に、得られた生物繊維の太さを容易に制御できるという特性がある、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinum)を選択することが好ましい。
【0022】
本発明の生物繊維組成物は、有機物養分、活性成分または薬物をさらに含んでもよく、また、前記複数の生物繊維の存在は、前記有機物養分、活性成分または薬物の特性および活性に影響を与えない。
【0023】
一つの具体的な実施態様において、前記有機物養分は、油を搾り取った後または粉砕した後の廃棄作物および動物の排泄物を含む。有機物養分を生物繊維組成物に添加することにより、生物繊維組成物を農業用途に使用し、肥料として、養分を安定的かつ均衡的に輸送することができる。
【0024】
一つの具体的な実施態様において、前記活性成分は、保湿成分、美白成分、シワ防止成分、角質除去成分、抗炎症成分、生長因子または酵素である。
【0025】
前記生物繊維組成物は、他の当該分野における慣用の添加剤、例えば、乳化剤、滲透促進剤、軟化剤、溶剤、賦形剤、酸化防止剤等をさらに含んでもよい。
【0026】
本発明の生物繊維組成物は、20~30nmの直径および2000~3000nmの長さを有する複数の生物繊維を含むため、比表面積が大幅に増加し、皮膚と接触する製品に適用する時、生物繊維組成物は、生物繊維と皮膚表層との接触面積を増加させることができ、物質の吸収および輸送の効率を向上させ、皮膚に保湿、抗炎症、抗老化、皮膚弾力性向上等の機能を与える。農業用肥料に適用する時、微生物の生長を促進して、優れた保水および放水能力を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を特定の具体的な実施態様により説明するが、当業者は、本発明の利点および効果を本明細書の記載内容により容易に理解することができる。本発明は、他の異なる実施態様によって行うかまたは適用することができ、本明細書における各詳細説明は、さまざまな観点や適用に基づいて、本発明の精神から逸脱しない限り、異なる修飾および変更を行うことができる。なお、本明細書のすべての範囲と値は、包括的であり、組み合わせることが可能である。本明細書に記載されている範囲内に入る任意の値または点、例えば、任意の整数は、最小値または最大値として、サブ範囲などを導き出すことができる。
【0028】
以下、本発明の生物繊維組成物を得るために、上記の生物繊維組成物の製造方法を説明する。この方法は、寒天と、重量比が5:1:1~4:1:1である炭素源、ペプトンおよび酵母エキストラクトとを有する培養液を入れた容器において、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、サルシナ属(Sarcina)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アクロモバクター属(Achromobacter)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、エンテロバクター属(Enterobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)およびアグロバクテリウム属(Agrobacterium)からなる群から選ばれる少なくとも一つの細菌を24~96時間静置培養して、複数の生物繊維が織り合わされた生物繊維膜を合成すること;液体媒質の存在下で、前記生物繊維膜を均質粉砕し、分散液を得ること;前記生物繊維組成物の全重量に基づいて、前記複数の生物繊維の含有量が0.2重量%を超えて1.2重量%以下である条件下で、前記複数の生物繊維を機械的研磨すること;および前記機械的研磨した分散液を超音波振動で処理することを含む。
【0029】
前記の「静置培養」とは、細菌に、培養液の表面でノンウーブンの方式により層状の生物繊維膜を形成させることである。また、静置培養に使用される容器は、好ましくは、扁平状の容器である。容器の高さが比較的に低いことにより、細菌の酸素消費量を制御し、さらに生物繊維の直径を調整する。一方、合成した生物繊維膜において、表面にある生物繊維によって形成された網状構造の密度は、前記生物繊維膜の内部における網状構造の密度より大きいため、前記の静置培養および条件によれば、その後の織り合わされた複数の生物繊維の分離には有利である。
【0030】
前記の「生物繊維膜」とは、複数の生物繊維が織り合わされた多層網状構造を有する層状物である。
【0031】
一つの具体的な実施態様において、前記生物繊維膜は、グルコンアセトバクター属の細菌を、マンニトール、ペプトン、酵母エキストラクトおよび寒天を有する培養液において静置発酵させることにより合成される。得られた生物繊維膜は、90%を超える含水量を有する。
【0032】
より具体的には、前記生物繊維膜は、マンニトール、グルコース等の糖類または糖アルコール類を含む炭素源と、ペプトン、酵母エキストラクトを含む窒素源と、寒天から選ばれるゲル支持物とを成分として含み、前記炭素源、ペプトンおよび酵母エキストラクトの重量比が5:1:1~4:1:1であってもよい培養液を容器に提供すること;次に、培養液のpH値をpH0.5~6に制御した後、グルコンアセトバクター属の微生物を接種し、培養液における微生物濃度である吸光度(波長を620nmとする)範囲を0.006~0.01に制御するようにすること;培養環境を25~28℃に維持し、微生物を静置発酵させ、24~96時間発酵した後、前記生物繊維膜を得ること;により、合成される。ここで、前記生物繊維膜の厚さは20~30μmである。
【0033】
一つの具体的な実施態様において、得られた生物繊維膜の単位面積あたりの前記生物繊維の量は0.0013~0.0018g/cm2であり、前記生物繊維の直径は20~100nmである。
【0034】
前記の「均質粉砕」とは、前記生物繊維膜を取り、水と混合した後、せん断力を持つ固定した外部刀および鋸歯状の回転可能な内部刀からなる均質化装置で粉砕処理を行うことにより、分散液を得ることである。
【0035】
前記の均質粉砕処理に用いられる溶液は、当該分野における慣用の任意の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、本発明の上記組成物の製造方法は、均質粉砕した後、前記分散液に処理液を添加して、前記生物繊維を膨潤させることをさらに含んでもよい。
【0036】
前記の「膨潤処理」とは、前記処理液を生物繊維の内部まで滲透させることにより、繊維の間の水素結合の作用を低下させことである。また、前記膨潤処理は、前記生物繊維に過剰な加水分解作用を示すことなく、機械的研磨処理の過程におけるエネルギー消費を低下させることができる。機械的研磨のせん断力との相乗作用で、前記生物繊維のグルカン鎖を切断し、前記生物繊維の表面をフィブリル化させ、その繊維の比表面積を増加させ、より多くのヒドロキシ基を露出させ、前記生物繊維の親水性および生体適合性を向上させる。
【0037】
前記処理液は、アルカリ溶液、無機塩溶液およびイオン液体水溶液からなる群から選ばれる少なくとも一つである。ここで、前記アルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む。前記無機鹽は、塩化亜鉛、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも一つである。前記イオン液体は、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド([AMIm]Cl)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド([BMIm]Cl)、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムアセテート([AMIm]Ac)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート([BMIm]Ac)、塩化リチウム/ジメチルスルホキシド(LiCl/DMSO)、N-アルキルピリジン類およびジアルキルイミダゾール類からなる群から選ばれる少なくとも一つである。処理液は、尿素およびチオ尿素からなる群から選ばれる少なくとも一つであってもよい。
【0038】
前記の「機械的研磨」とは、前記分散液にさらに水を添加して希釈させた後、横型ボールミル装置で研磨処理を行い、前記生物繊維の表面をフィブリル化させ、20~30nmの直径および2000~3000nmの長さを有する複数の生物繊維を形成させることである。ここで、機械的研磨に用いられる前記複数の生物繊維の含有量は、前記分散液の全重量において0.2重量%超える量を占める。
【0039】
一方、研磨された後の生物繊維は、比表面積が高いため、繊維の間の静電気効果、ファンデルワールス力または水素結合の作用力がより顕著になり、凝集が発生しやすい。そのため、本発明の上記組成物の製造方法は、機械的研磨した後、前記研磨した分散液を超音波振動で処理し、前記生物繊維の凝集体を解離させることをさらに含んでもよい。
【0040】
皮膚表層に塗布する製品として本発明の生物繊維組成物を適用する時、物質の吸収および輸送の効率を向上させることができ、皮膚に保湿、抗炎症、抗老化、皮膚弾力性向上等の機能を与える。
【0041】
また、水を含有する生物繊維組成物で耐紫外線性試験を行うところ、生物繊維の含有量が0.8重量%以上である場合、UVAおよびUVBの透過率のいずれも10%未満であり、皮膚表層に塗布する製品として適用する時、耐紫外線効果をさらに奏する。
【0042】
また、農業用肥料として本発明の生物繊維組成物を適用する時、前記生物繊維の安定性により、土壌クラストを防止でき、優れた保水および放水の効果を発揮し、微生物の生長を促進する作用を達成できる。
【実施例0043】
試験例1
前記の方法により、それぞれの複数の生物繊維の含有量が異なる生物繊維組成物サンプルを調製し、下記表1に示すように、所定含有量の生物繊維組成物サンプルおよび純水を、それぞれ、パラフィルム(Parafilm、PM-996)の表面に滴下し、各生物繊維組成物サンプルの接触角を測定した。結果を下記表1に記す。
【0044】
【0045】
表1に示す結果によると、純水を用いてパラフィルムの表面に滴下する場合に比べて、本発明の生物繊維組成物をパラフィルムの表面に滴下する場合は、接触角を107°未満にすることができるため、本発明の生物繊維組成物が優れた親水性を有することを示した。
【0046】
試験例2
前記の方法により、それぞれの複数の生物繊維の含有量が異なる生物繊維組成物サンプルを調製し、下記表2に示すように、所定含有量の生物繊維を0.1mLの水に分散させ、OD620値を測定し、肉眼で三日間観察して沈降が発生するか否かを確認した。結果を下記表2に記す。
【0047】
【0048】
表2に示す結果によると、生物繊維組成物における複数の生物繊維の含有量が0.2重量%以下である場合、液体媒質と複数の生物繊維が凝集力に影響されて凝集しやすく、層間分離および沈降が発生した。
【0049】
試験例3
前記の方法により、それぞれの複数の生物繊維の含有量が異なる生物繊維組成物サンプルを調製し、下記表3に示すように、所定含有量の生物繊維組成物サンプルを粘度計(Brookfield、回転子H02)で粘度試験をそれぞれ2回行った。結果を下記表3に記す。
【0050】
【0051】
試験例4
前記の方法により、それぞれの複数の生物繊維の含有量が異なる生物繊維組成物サンプルを調製し、下記表4に示すように、所定含有量の生物繊維組成物サンプルを凍結錠剤に製作した。凍結錠剤の製作が完成できるか否かを記す。
【0052】
【0053】
表4に示す結果によると、水を含有する生物繊維組成物における生物繊維の含有量が0.4重量%を超える場合、凍結錠剤製品を形成できる。
【0054】
試験例5
前記の方法により、複数の生物繊維の含有量が2重量%である生物繊維組成物サンプルを調製した。前記サンプルには、0.1重量%のL-アスコルビン酸および残量の生理食塩水が含まれている。
【0055】
容器に純水を充填し、前記容器に経皮吸収膜(Strat-M、3M社)を設置し、純水の温度を37℃に維持し、前記経皮吸収膜の下表面を純水と接触させ、その上表面に5mLのサンプルを滴下し、異なる時点で経皮吸収膜の下表面の下方の水における吸光度(OD280)を測定した。また、前記方法で試験を2回繰り返し、0分間での吸光度と60分間での吸光度との差を記録し、2回の吸光度の差から算出した平均値は0.098であった。
【0056】
一方、生物繊維を含まない対照群サンプルで試験を2回行い、0分間での吸光度と60分間での吸光度との差を記録し、2回の吸光度の差から算出した平均値は0.057であった。これにより、本発明の生物繊維組成物のサンプルを利用することによって、吸光度がより低下し、L-アスコルビン酸の経皮吸収が促進され、酸化防止能力が向上することが分かった。
【0057】
試験例6
前記の方法により、複数の生物繊維の含有量が5重量%である生物繊維組成物サンプルを調製した。前記サンプルには、10重量%のアルブチンおよび残量の生理食塩水が含まれている。
【0058】
容器に純水を充填し、前記容器に経皮吸収膜(Strat-M、3M社)を設置し、純水の温度を37℃維持し、前記経皮吸収膜の下表面を純水と接触させ、その上表面に5mLのサンプルを滴下し、異なる時点で経皮吸収膜の下表面の下方の水における吸光度(OD280)を測定し、そのアルブチン含有量に換算した。
【0059】
試験によると、30分間および60分間の時点で、本発明の生物繊維組成物のサンプルを利用することにより、得られた経皮吸収のアルブチン濃度は25μg/mLから35μg/mLに上昇したが、生物繊維を含まない対照群サンプル試験では、60分間の時点のみで濃度が25μg/mLに近いアルブチンを測定した。これにより、本発明の生物繊維組成物のサンプルを利用することによって、アルブチンの経皮吸収を促進できることを示した。
【0060】
上記の実施態様は、例示的な説明に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の精神および範囲に反しない限り、当業者が上記の実施態様を修飾および変更を行ってもよい。したがって、本発明の権利保護範囲は、本発明の特許請求の範囲によって定義され、本発明の効果および実施の目的に影響を及ぼさない限り、本開示の技術内容に含まれる。