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特開2022-172801スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法
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  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図1
  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図2
  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図3
  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図4
  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図5
  • 特開-スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172801
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/46 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
B66C13/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079021
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA05
3F204CA01
3F204CA05
3F204DA05
3F204DB04
3F204DC02
3F204DC03
3F204FB01
3F204FC08
(57)【要約】
【課題】スラブヤードの環境に耐える位置検出器を用いて、掴み装置の爪とスラブの掴み位置との相対高さ位置を的確に捉えることができる、スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法を提供すること。
【解決手段】クレーンCRに装備された掴み装置STの2組の爪TAの両外側の近傍位置に、スラブSBと接触させることによりスラブSBの上面の位置を検出するための重錘WTを上方から垂らし、重錘WTの上方に、重錘WTがスラブSBの上面に接触し着床することで重錘WTの下方への引っ張り力が無くなることで作動する重錘リミットスイッチWLSを設け、かつ、重錘WTは水平方向に自由に動く構造とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置であって、クレーンに装備された前記掴み装置の2組の爪の両外側の近傍位置に、スラブと接触させることによりスラブの上面の位置を検出するための重錘を上方から垂らし、該重錘の上方に、該重錘がスラブの上面に接触し着床することで該重錘の下方への引っ張り力が無くなることで作動する重錘リミットスイッチを設け、かつ、該重錘は水平方向に自由に動く構造とすることを特徴とするスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置。
【請求項2】
前記重錘の上方に設ける、該重錘がスラブの上面に接触し着床することで該重錘の下方への引っ張り力が無くなることで作動する重錘リミットスイッチに代えて、シンクロモータを用いるようにしてなることを特徴とする請求項1に記載のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法であって、前記掴み装置を短尺スラブを掴み高さに移動した時に、該掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘のうち、片側の爪の近傍の重錘が着床しなかった時、位置合わせ不良と判断し、重錘が着床している方向に該掴み装置を移動し、爪の両外側の両方の重錘が着床したことで位置合わせが完了したと判断することを特徴とするスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法であって、上下方向に変形した変形スラブを前記掴み装置で掴むのに当り、該掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘が着床した時の高さの位置から掴み装置が巻き下がった量を計測し、該掴み装置の爪近傍のスラブの上面高さ位置と該掴み装置との相対高さ位置を把握することで、該掴み装置の爪の高さを変形スラブの掴み位置の高さに合わせることを特徴とするスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法であって、スラブ搬送中に、前記掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘のうち、片側若しくは両方の重錘の着床状態が無くなった場合、スラブを落下させたと認識し、クレーンを異常停止させることを特徴とするスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼工場で連続鋳造され、所定長さに切断されたスラブの側面を挟み込む構造の掴み装置を装備して自動運搬を行う自動クレーンにおいて、掴み位置の位置ずれが生じた時に、その位置ずれを検出し、更にその位置ずれを解消し、自動運転を継続させるための、スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼工場で鋳造されたスラブは、次の熱延工程や厚板工程にスラブを流すために、スラブ搬送用の専用のスラブ掴み装置を装備した有人クレーンを用いて、ストックヤードに搬送したり、次工程への搬送台車に積載するなどの有人作業を行っている。
近年では、このクレーン搬送工程の効率化を図るために、クレーンの自動化技術が求められ、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-20795号公報
【特許文献2】特開2019-189398号公報
【特許文献3】特開平7-330286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1~3に開示されているように、自動クレーンにおいて、鉄鋼スラブの掴み位置合わせ方法を適用するために、赤外線やレーザーなどを用いた光学センサや、光学カメラなど光学的な検出方法により、掴み装置と荷役対象物との相対位置関係を検出し、荷役対象物の掴み位置に適切に掴み装置の爪を位置決めするための様々な位置検出方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、一般的に用いられる光学的な検出方法では、光学検出器で高温鉄鋼製品を直視した時に高温鉄鋼製品から発せられる強い輻射熱に曝されて溶損してしまう不具合が発生したり、雨天時には、雨が蒸気となり光学検出器の視野を妨げ、誤検出をする等の問題があり、高温鉄鋼製品等の自動運搬のために、新たな位置ずれ検出及び修正方法が要請されていた。
【0006】
ところで、スラブ運搬用クレーンにおいて、掴み装置の2組の爪の掴み位置の間隔に対しスラブの長さの裕度が少ない短尺スラブを掴む際、スラブの端を掴んでしまう場合があり、この場合にスラブを搬送中に落下させてしまう危険性があった。
また、圧延が加えられ、板厚が薄くなった長尺スラブに付いてはスラブの両端に反り上がりが発生する場合があり、その反りの状態で掴みを行うと、スラブの側面下部を掴んでしまい、アームの中にスラブを抱え込んでしまい、スラブ落下させてしまう危険性がある。
また、板厚が薄い長尺スラブは、搬送中に両側がダレ下がり、中央が盛り上がった状態で、搬送中に冷えて固まってしまい、次にそれを掴もうとした時、スラブ中央付近での掴み装置とスラブの相対位置関係で掴み高さの位置合わせを行うとスラブの側面上方を掴んでしまい、掴み上げた時にスラブをずり落とす危険性があった。
【0007】
本発明は、スラブヤードの環境に耐える位置検出器を用いて、掴み装置の爪とスラブの掴み位置との相対高さ位置を的確に捉えることができる、スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置は、スラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置であって、クレーンに装備された前記掴み装置の2組の爪の両外側の近傍位置に、スラブと接触させることによりスラブの上面の位置を検出するための重錘を上方から垂らし、該重錘の上方に、該重錘がスラブの上面に接触し着床することで該重錘の下方への引っ張り力が無くなることで作動する重錘リミットスイッチを設け、かつ、該重錘は水平方向に自由に動く構造とすることを特徴とする。
この重錘や該重錘の下方への引っ張り力の有無でON/OFFする構造の重錘形リミットスイッチは、熱や水蒸気の影響を受けないものである。
【0009】
この場合において、前記重錘の上方に設ける、該重錘がスラブの上面に接触し着床することで該重錘の下方への引っ張り力が無くなることで作動する重錘リミットスイッチに代えて、シンクロモータを用いるようにすることができる。
【0010】
また、同じ目的を達成するため、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法は、前記掴み装置を短尺スラブを掴み高さに移動した時に、該掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘のうち、片側の爪の近傍の重錘が着床しなかった時、位置合わせ不良と判断し、重錘が着床している方向に該掴み装置を移動し、爪の両外側の両方の重錘が着床したことで位置合わせが完了したと判断することを特徴とする。
【0011】
また、同じ目的を達成するため、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法は、上下方向に変形した変形スラブを前記掴み装置で掴むのに当り、該掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘が着床した時の高さの位置から掴み装置が巻き下がった量を計測し、該掴み装置の爪近傍のスラブの上面高さ位置と該掴み装置との相対高さ位置を把握することで、該掴み装置の爪の高さを変形スラブの掴み位置の高さに合わせることを特徴とする。
【0012】
また、同じ目的を達成するため、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置の使用方法は、スラブ搬送中に、前記掴み装置の2組の爪の両外側の爪近傍の重錘のうち、片側若しくは両方の重錘の着床状態が無くなった場合、スラブを落下させたと認識し、クレーンを異常停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法によれば、例えば、製鉄所で取り扱う高温のスラブから発せられる強い輻射熱や、大量の水蒸気が発生する環境において、掴み装置の爪と、スラブとの相対位置を位置検出器で的確に捉え、その検出値に基づいて短尺スラブや反りのあるスラブを自動クレーンによる自動運転で掴むことを可能とし、スラブクレーンの自動運転において、取り扱いが困難であった種類のスラブも自動搬送可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法における掴み装置で短尺スラブを掴む状態の説明図である。
図2】汎用の重錘リミットスイッチの外観図である。
図3】スラブリフターをクレーンに装着した状態の説明図である。
図4】スラブの両端が反り上がっている状態の説明図である。
図5】スラブの中央が盛り上がっている状態の説明図である。
図6】スラブの掴み損ないを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に、短尺スラブSBを掴み装置STで掴む状態を示す。
通常は、スラブSBは長手方向に一定のスラブ長さ寸法SLがあり、重量バランスを考慮して、長手方向の中心付近を掴めばよいが、圧延前にそれを切断し、掴み装置の爪間外寸法TPとスラブ長さ寸法との差が小さいものがあり、この場合に、図1に示すように、片側の爪TAが一部しかスラブSBに引っ掛かっていない状態になると、爪TAの引っ掛かり力が不足しスラブSBを落としてしまう場合がある。
片方の爪TAの位置がスラブSBの位置から横行方向TSに完全に外れてスラブSBが無い位置で掴み動作をした場合は、開閉位置検出器CSでアームAMの位置が大幅に閉じ側に行き過ぎていることを検出できるので、位置が外れていることが判別できるが、図1に示すように、爪TAの一部がスラブSBに掛かっていた場合、アーム動作はスラブ幅の所で止まるので、開閉位置検出器CSでは正常に掴んでいるように判断されるので、図1の掴み位置状態を検出する新たな検出方法が求められていた。
【0017】
本発明では、図1に示すとおり、2組の爪の両外側の各々の近傍位置に、重錘WTをワイヤロープWRで垂らし、そのワイヤロープWRの上方は重錘リミットスイッチWLSに接続するようにしている。
これにより、重錘WTが垂れ下がっている状態から、重錘WTが着床状態になると、重錘リミットスイッチWLSの天秤構想のレバーに付いている錘の重量でレバーが反転し、重錘リミットスイッチWLSのスイッチが反転する仕組みになっている。
重錘リミットスイッチは、図2に示すように、単純な構造で電気部分が密封されており、高温のスラブSBとの接触体となる重錘WTから離れた位置に設置されるので、輻射熱や水蒸気などの関係に耐え、信頼性の高いシステムを組むことができる。
【0018】
掴み装置STは、図3に示すように、クレーンCRからワイヤロープWRで吊り下げられている。
このため、掴み装置STをスラブSBの掴み位置に向かい図3の位置に降ろして行く場合にも水平方向(横行方向TS及び走行方向TL)に荷振れしながら降ろされるので、図3の位置で横行方向TSに掴み装置STが振れると、接触体である重錘WTがスラブSBの側面に衝突する。この時、接触体である重錘WTと上方の重錘リミットスイッチWLSを連結する部分に棒状の剛体構造を用いると、その衝突で破損してしまうので、接触体である重錘WTと上方の重錘リミットスイッチWLSをワイヤロープWRで接続する構造とする、すなわち、水平方向に自由に動く構造とすることで、水平方向の逃がし動作を自由にし、検出装置の破損を防止している。
この時、クレーンCRの横行方向TS及び走行方向TLの動作に伴い重錘リミットスイッチWLSから垂らされた重錘WTが振り子状態になり振れを発生する。この重錘WTの振れを抑制するために重錘WTから四方にチェーンCHで斜め上方に引っ張り、振れを抑制している。
【0019】
クレーンCRを短尺スラブSBの掴み点に向かって自動移動し、横行と走行を位置決め
停止した後、掴み高さまで巻下げた時、クレーンCRの横行方向TSの位置決めがズレていると、図1に示すように、片側の重錘リミットスイッチWLSが作動しない状態になり、横行方向の位置決め不良と判断し、一旦、重錘WTが地切りする高さまで巻上げ、作動した重錘リミットスイッチWLSの横行方向TSに移動するようにする。
この時の移動量は、スラブ長さ寸法SLから爪間外寸法TPを減算した値を1/2にした値の量とする。
そして、その位置で掴み高さまで巻下げを行い、更に片側の重錘リミットスイッチWLSが作動していなかった場合は、再度巻上げ、前回の横行方向TSへの移動量を半分にし、重錘リミットスイッチWLSが作動している方向に移動し、再度掴み高さまで巻き下げる。
この位置修正操作は、2組の重錘リミットスイッチWLSの双方が作動した時点で終了し、掴み動作に移行するが、片側の重錘リミットスイッチWLSが作動しない場合は、横行方向TSの移動量を前回の半分にしながら巻上げて横行し、巻下げを行う修正作業を数回繰り返し、数回繰り返しても2組の重錘リミットスイッチWLSの双方共が作動する状態にならなかった場合は、位置決め不良として自動の異常停止を行う。
【0020】
このように、2組の重錘リミットスイッチWLSが作動していることを確認することで、掴み装置STの爪TAの外側には十分な長さのスラブSBが出ていることが確認でき、安全、確実に短尺スラブSBの掴み動作ができ、巻上げ、横行、走行動作時に、短尺スラブSBが落下するリスクを低減することができる。
なお、スラブSBを掴みに行った際、2組の重錘リミットスイッチWLSの両方が作動しなかった場合は、全く見当違いな所に位置決めされているとの判断を行い異常停止を行う。
【0021】
ところで、図4に示すように、圧延が行われた板厚の薄い高温のスラブSBは、スラブSBの両端が大きく反り上がっている場合がある。
クレーン運転士がクレーンCRに搭乗し運転する手動運転でスラブSBを掴む際は、掴み装置STの中央部分に付けているワイヤロープWRで垂らした重錘WTをシンクロモータSMでドラムにワイヤロープWRを巻き付け、ワイヤロープを緊張し、シンクロモータSMの位相角でシンクロモータSMの回転量を計測することで、掴み装置STとスラブSBの上面との相対高さを測定し表示器に表示された数値をクレーン運転士が読み取り、掴み高さの位置合わせを行っている。
しかしながら、スラブSBが反り上がっている場合は、目視でクレーン運転士がその掴み高さを補正して掴み高さを決定している。
クレーン自動運転において、掴み装置STの中央部に取り付けたシンクロモータSMの測定値のみで掴み高さを決定してしまうと、図6(1)に示すように、スラブ側面の下方を掴んでしまい、スラブSBが爪TAを乗り上げ、アームの内側に抱え込むような形になり、搬送中にスラブSBを落下させてしまう。
【0022】
また、高温の薄いスラブSBを搬送している時、スラブSBの両側が重みで垂れ下がり、中央が盛り上がった状態で搬送中に冷えてしまった場合、それを一時保管されたスラブは、図5の状態で置かれている。
これを掴み装置STの中央のシンクロモータSMの読み取り値で掴み高さを決定して掴んでしまうと、図6(2)に示すように、スラブの上方を掴んでしまい、搬送中にスラブを落としてしまう。
【0023】
図4の反り上がりや図5の盛り上がりのあるスラブSBを、図6に示すような不具合を起こさずに掴むために、反りや盛り上がりが想定される薄いスラブを掴む際は、2組の爪の外側近傍に設けた重錘WTがスラブSBの上面に着床することで、重錘リミットスイッチWLSが作動した瞬間にクレーンCR上に設けた巻上位置検出器HPの値を記憶し、そ
の位置から巻上位置検出器HPの値の変化量を計測することで、爪TAの近傍のスラブSBの上面高さと掴み装置STとの相対高さ位置を把握し、掴み高さまで巻上位置検出器HPの値に基づいて掴み装置を巻下げ、掴みを行う。
【0024】
このように、反り上がりや盛り上がりの想定される薄いスラブSBは、掴み装置STの中央付近に設けたシンクロモータSMではなく爪TAの近傍に設けた重錘WTの着床高さを検出することで、反りや盛り上がりのスラブSBの変形に影響され難い掴みを行うことが可能となり、図6に示す不具合を防ぐことができる。
なお、掴み高さは、爪TAの高さ方向中心位置がスラブSBの厚み寸法の中心より若干下方の位置になる高さ位置が掴み高さである。
また、スラブSBの厚み寸法は、上位コンピューターが記憶し、クレーンCRに伝送されてきた値を使用する。
【0025】
スラブSBの掴みが行われ、スラブSBの搬送を行う際、スラブSBを搬送目的地に移動させ着床させるまでの間、爪近傍に設けられた2つの重錘WTは常に着床し重錘WTに繋げられた2つの重錘リミットスイッチWLSは双方が作動状態を継続している筈であるが、搬送中に2つの重錘リミットスイッチWLSのうちの片方、或いは両方の作動状態が切れると、スラブSBを落下させたと判断し、クレーンCRを異常停止し安全装置として機能させる。
【0026】
本実施例では、爪TAの近傍のスラブSBと掴み装置STとの相対位置を重錘リミットスイッチWLSと巻上位置検出器HPとの組み合わせで把握しているが、重錘リミットスイッチWLSを、重錘WTを垂らすワイヤロープWRの巻取り機構を備えたシンクロモータ(図示省略)に置き換えることで、より確実な位置を把握することも可能である。ただし、巻取り機構を備えたシンクロモータSMではなく、汎用の重錘リミットスイッチWLSを使用することで、簡略な構造で安価に機能を実現している。
【0027】
本実施例では、掴み装置STにアームAMが水平に動くスラブリフターを適用した場合の実施例について記載したが、掴み装置STのアームが円弧上に動くスラブトングを適用した場合は、掴み高さの算出にアームの円弧軌跡に沿って円弧補正を行うことで本実施例と同様に適用できる。
【0028】
以上、本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のスラブ運搬用クレーンにおける掴み装置とスラブとの相対高さ位置を検出する検出装置及びその使用方法は、鉄鋼スラブを取り扱う強い輻射熱や水蒸気が存在する環境において、光学式センサを使用せずに、従来は取り扱いが困難であった短尺スラブや反りや膨らみの変形スラブに付いて、掴み装置との相対高さ位置の検出を可能とし、自動クレーンでの鉄鋼スラブでの運用範囲を広げることを可能にすることができる。
【符号の説明】
【0030】
CR クレーン
WR ワイヤロープ
ST 掴み装置(スラブリフター)
SB スラブ
AM アーム
TA 爪
WLS リミットスイッチ
WT 重錘
CH チェーン
SM シンクロモータ
CS 開閉位置検出器
TL 走行方向
TS 横行方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6