(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172813
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】土壌用センサデバイス及びセンシング容器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20221110BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01N27/22 C
G01N27/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079055
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】518288730
【氏名又は名称】アルセンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】滝口 收
(72)【発明者】
【氏名】金谷 晴一
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF03
2G060AF07
2G060AF10
2G060AG11
2G060CA01
2G060CD08
2G060FA01
2G060HD03
2G060HE00
2G060KA06
(57)【要約】
【課題】
環境データを適正に取得することができる土壌用センサデバイス及びセンシング容器の提供。
【解決手段】
土壌用センサデバイス10は、長手方向に延びる形状の本体部11と、本体部11に少なくとも一部が収納される第1水分センサ16A及び第2水分センサ16Bと、を有している。第1水分センサ16A及び第2水分センサ16Bによって採取された環境データは、無線通信によってルータを介してクラウドサーバに蓄積される。本体部11の上部には、電源であるソーラーパネル13Aが設けられている。第1水分センサ16Aの第1検出面16aは上下方向に直交するように配置され、第2水分センサ16Bの第2検出面16bも同様に、上下方向に直交するように配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる形状の本体部と、
電力を供給する電源供給部と、
前記本体部に少なくとも一部が収納され、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、土壌の環境データを検出する検出面を有する検出部と、
前記環境データを記憶する記憶部と、
前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、前記記憶部の前記環境データを無線通信によって外部機器に送信する通信部と、を有し、
前記検出部は、前記検出面が前記長手方向に対して交差するように配置されていることを特徴とする土壌用センサデバイス。
【請求項2】
前記検出部は、前記検出面が前記長手方向に直交するように前記本体部から突出し、前記検出面が上を向くように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌用センサデバイス。
【請求項3】
前記検出部は、前記長手方向に直交し上を向く第1検出面を有する第1検出部と、前記第1検出部と同じ前記環境データを検出し前記長手方向に直交し上を向く第2検出面を有する第2検出部と、から構成され、
前記第1検出部と前記第2検出部とは前記長手方向に間隔を空けて並列に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌用センサデバイス。
【請求項4】
前記検出部は、前記長手方向に直交し上を向く第1検出面を有する第1検出部と、前記第1検出部とは異なる前記環境データを検出し前記長手方向に直交し上を向く第2検出面を有する第2検出部と、から構成され、
前記第1検出部と前記第2検出部は、前記長手方向に間隔を空けて配置され、
前記第2検出部は、前記第1検出部と平行に配置され、
前記本体部は、前記長手方向に直交する方向に延びるアームを有し、
前記検出部は、前記アームの先端部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌用センサデバイス。
【請求項5】
前記本体部の側面には、前記電源供給部と電気的に接続される土壌発電用の電極が設けられていて、
前記電極は前記長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項2に記載の土壌用センサデバイス。
【請求項6】
植物を育成し深さ方向を有する容器と、
電力を供給する電源供給部と、
前記容器内に配置され、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、土壌の環境データを検出する検出面を有する検出部と、
前記環境データを記憶する記憶部と、
前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、前記記憶部の前記環境データを無線通信によって外部機器に送信する通信部と、を有し、
前記検出部は、前記容器の内壁に沿うように設けられ、前記検出面が前記深さ方向に対して交差するように配置されていることを特徴とするセンシング容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土壌用センサデバイス及びセンシング容器に関し、特に土壌の環境データを採取する土壌用センサデバイス及びセンシング容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土壌中のEC値の分布を手軽かつ正確にリアルタイムで計測可能な土壌用センサが知られている(特許文献1)。センサ側面には複数の電極が設けられていて、土壌の水分含有率を検出し、給水口から水分補給を行うことにより電極間の水分含有量を所定の範囲に保っている。これにより、正確なEC値を計測することができ、リアルタイムでEC値の変化を観測することが可能となる。
【0003】
他に、土壌の状態量を検出することができる土壌状態量検出センサが知られている(特許文献2)。土壌状態量検出センサは、制御装置と、制御装置に着脱可能なセンサ部材と、から構成される。制御装置とセンサ部材とが半係合の状態のときはセンサ部材の接触端子と制御装置の識別端子とが接触し、完全係合の状態のときは接触端子と制御装置の検出用端子とが接触する。半係合の状態のときに土壌状態量検出センサとして機能し、完全係合の状態のときに土壌水分量検出センサとして機能ことにより、1つのセンサで複数の機能を有するセンサを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-13025号公報
【特許文献2】特開2020-101406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の土壌用センサでは、センサの電極がセンサ本体の側面に露出するように設けられているため、土壌の環境データを検出するときに正確性に欠ける可能性があった。センサ本体の側面の電極では、深さ方向における平均化された環境データを検出することは可能だったが、水平方向における特定層の環境データを正確に計測することは難しかった。
【0006】
また、特許文献2の土壌状態量検出センサにおいても同様に、センサ部材に複数の検出用電極が深さ方向に間隔を空けて設けられているため、土壌の水分を検出する場合には深さ方向における平均的な水分量を検出していた。このような土壌状態量検出センサでは、水平方向における特定層の水分量を把握することは困難だった。
【0007】
そこで、本発明は、環境データを適正に取得することができる土壌用センサデバイス及びセンシング容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために第1の発明は、長手方向に延びる形状の本体部と、電力を供給する電源供給部と、前記本体部に少なくとも一部が収納され、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、土壌の環境データを検出する検出面を有する検出部と、前記環境データを記憶する記憶部と、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、前記記憶部の前記環境データを無線通信によって外部機器に送信する通信部と、を有し、前記検出部は、前記検出面が前記長手方向に対して交差するように配置されていることを特徴とする土壌用センサデバイスを提供している。
【0009】
検出部は、本体部に少なくとも一部が収納されているが、電源供給部、記憶部、及び通信部は、本体部に収納されていてもよく、別体で設けられていてもよい。
【0010】
第2の発明では、第1の発明に記載された土壌用センサデバイスであって、前記検出部は、前記検出面が前記長手方向に直交するように前記本体部から突出し、前記検出面が上を向くように配置されていることを特徴としている。
【0011】
ここでいう直交とは、略直交を含む概念であり、上を向くとは略上方を向くことを含む概念である。
【0012】
第3の発明では、第1の発明又は第2の発明に記載された土壌用センサデバイスであって、前記検出部は、前記長手方向に直交し上を向く第1検出面を有する第1検出部と、前記第1検出部と同じ前記環境データを検出し前記長手方向に直交し上を向く第2検出面を有する第2検出部と、から構成され、前記第1検出部と前記第2検出部とは前記長手方向に間隔を空けて並列に配置されていることを特徴としている。
【0013】
第4の発明では、第1の発明又は第2の発明に記載された土壌用センサデバイスであって、前記検出部は、前記長手方向に直交し上を向く第1検出面を有する第1検出部と、前記第1検出部とは異なる前記環境データを検出し前記長手方向に直交し上を向く第2検出面を有する第2検出部と、から構成され、前記第1検出部と前記第2検出部は、前記長手方向に間隔を空けて配置され、前記第2検出部は、前記第1検出部と平行に配置され、前記本体部は、前記長手方向に直交する方向に延びるアームを有し、前記検出部は、前記アームの先端部に設けられていることを特徴としている。
【0014】
第5の発明では、第2の発明に記載された土壌用センサデバイスであって、前記本体部の側面には、前記電源供給部と電気的に接続される土壌発電用の電極が設けられていて、前記電極は前記重力方向に沿って配置されていることを特徴としている。
【0015】
第6の発明では、植物を育成し深さ方向を有する容器と、電力を供給する電源供給部と、前記容器内に配置され、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、土壌の環境データを検出する検出面を有する検出部と、前記環境データを記憶する記憶部と、前記電源供給部から供給される前記電力によって動作し、前記記憶部の前記環境データを無線通信によって外部機器に送信する通信部と、を有し、前記検出部は、前記容器の内壁に沿うように設けられ、前記検出面が前記深さ方向に対して交差するように配置されていることを特徴とするセンシング容器を提供している。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、検出部の検出面が長手方向に対して交差するように配置されているため、本体部を土壌に埋設したとき、又は本体部を重力方向に平行に配置したとき、土壌表面から下降してくる水分、栄養分、その他の無機物等の環境データを適正に検出することができる。また、記憶部の環境データを通信部によって外部機器に無線送信可能であるため、検出した環境データをビックデータとしてサーバ内に蓄積し、農作物の苗木の育成に役立てることができる。
【0017】
第2の発明によると、検出面が長手方向に直交し上を向くように本体部から突出していため、本体部を土壌に埋設したとき、又は本体部を重力方向に平行に配置したとき、土壌表面から下方にむけてしみ込んでくる水分、栄養分、その他の無機物等の検出を適正に行うことができる。
図11に示すように、従来のように土壌に垂直に差し込んで水分量を計測すると縦方向に平均化された値が検出されるため、水平方向である特定層の水分量の検出が難しかった。さらに、下方に向けて流れる物質の検出の場合においても同様に、検出のための電極等が縦方向に向いているため、縦方向に平均化された値が検出されてしまい、横方向における特定層の検出に不向きであった。これに対し、本発明の土壌用センサデバイスでは検出面が層に対して平行であって上を向くように配置されているため、所望の層における適正かつ詳細な環境データの検出が可能となる。
【0018】
第3の発明によると、検出部は第1検出部と長手方向に間隔を空けて設置された第2検出部とを有しているため、複数の層の環境データを検出することができる。また、第1検出面及び第2検出面が長手方向に直交するに配置されているため、本体部を土壌に埋設したとき、又は本体部を重力方向に平行に配置したとき、土壌表面から下方にむけてしみ込んでくる水分、栄養剤、その他の無機物等の検出を適正に行うことができる。
【0019】
第4の発明によると、検出部は第1検出部と第1検出部と異なる環境データを検出する第2検出部とから構成されているため、複数の環境データを採取することができる。また、検出部はアームの先端に設けられているため、アームの長さを任意に設定することで所望の位置の環境データを検出することができる。
【0020】
第5の発明によると、本体部に土壌発電用の電極が設けられているため、エナジーハーベストによる環境負荷の低い土壌用センサデバイスを実現することができる。また、電極は重力方向に沿って配置されるため、効率的に発電を行うことができる。
【0021】
第6の発明によると、検出部の検出面が深さ方向に対して交差するように配置されているため、土壌表面から下降してくる水分、栄養分、その他の無機物等の環境データを適正に検出することができ、容器内における環境データの検出が可能となる。また、容器内に検出部が設けられているため、容器ごとに土壌用センサデバイスを設置する必要がなく、簡易的に環境データを採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による土壌用センサシステムを示す概略図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による土壌用センサデバイスのブロック図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態による土壌用センサデバイスの斜視図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態による土壌用センサデバイスの環境データを示すグラフであって、
図4(A)は苗木を植えていない育苗ポットの環境データのグラフ、
図4(B)は苗木を植えた育苗ポットの環境データのグラフ。
【
図5】本発明の第1の実施の形態による土壌用センサシステムの環境データを示すグラフ。
【
図6】本発明の第2の実施の形態による土壌用センサデバイスの斜視図。
【
図7】本発明の第3の実施の形態による土壌用センサデバイスの斜視図。
【
図8】本発明の第4の実施の形態によるセンシング容器の斜視図。
【
図9】本発明の第5の実施の形態によるセンシング容器であって、
図9(A)はセンシング容器の斜視図、
図9(B)はセンシング容器の展開図。
【
図10】本発明の土壌用センサデバイスの使用方法を示す図。
【
図11】従来の土壌用センサデバイスで育苗ポットを計測している図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施の形態による土壌用センサシステム1及び土壌用センサデバイス10を
図1から
図5に基づき説明する。図中に示すように、上下方向を定義する。
【0024】
土壌用センサシステム1は、複数の土壌用センサデバイス10が採取した土壌中及び周囲の環境データを、中継器であるルータ2を経由してクラウドサーバ3に自動的に送信し、ビックデータとして蓄積する。管理者は、PC端末4又は携帯端末4Aを操作することでクラウドサーバ3に蓄積されたデータを解析する。本実施の形態では、イチゴの育苗ポット5及び土壌6に植えられたイチゴの苗の育成時における環境データを採取する。なお、土壌用センサデバイス10が送信した環境データを、クラウドサーバ3を介することなく、PC端末4又は携帯端末4Aに直接送信してもよい。ルータ2,クラウドサーバ3、PC端末4又は携帯端末4Aは、本発明の外部機器の一例である。携帯端末4Aとは、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ等が含まれる。
【0025】
図2に示すように、土壌用センサデバイス10は、本体部11と、制御部12と、電源供給部13と、記憶部14と、通信部15と、土壌センサ16と、環境センサ17と、を有している。制御部12と、電源供給部13と、記憶部14と、通信部15は、本体部11内部の基盤ユニット18に収納されている。制御部12は、土壌用センサデバイス10全体を制御するマイコンであって、タイマ12Aと、電源供給部13を制御するパワーコントロールユニットと、ADコンバータと、を有している。土壌センサ16は、本発明の検出部に対応する。制御部12は、タイマ12Aのカウントに基づいて、所定時間ごとに土壌センサ16及び環境センサ17が検出した環境データ14Aを記憶部14に記憶し、通信部15によってルータ2に無線送信している。
【0026】
本体部11は、
図3に示すように、防塵・防水が施された上下方向に延びる略円柱形状であって、上部が略5面体形状に形成され、各面に電源供給部13に電気的に接続されるソーラーパネル13Aが設けられている。円柱部分の側面から上下方向に直交するように2つの土壌センサ16が突出している。
図1に示すように、土壌用センサデバイス10は、ソーラーパネル13Aを外部に露出させた状態で土壌6に埋設する。育苗ポット5に設置するときは、容器の深さ方向と本体部11が平行になるように設置する。上下方向は、本発明の長手方向に対応する。
【0027】
電源供給部13は、ソーラーパネル13Aの太陽光発電により、土壌用センサデバイス10の各素子に電源を供給する。本実施の形態では電源として太陽光発電を用いたが、これに限定されず周囲の環境から電力を生成するマイクロエナジーハーベストであって、例えば、振動、電磁波等の電波、又は植物等の有機物に基づいて発電を行ってもよい。また、電磁波による発電であってもよく、太陽光発電と電磁波発電とを組み合わせたハイブリッド式であってもよい。これにより、太陽光が長期間出ていない状態やであっても、土壌用センサデバイス10を安定的に動作させることができる。この場合には、発電した電力を蓄える蓄電部を設けることが望ましい。蓄電部は、小型のスーパーキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、タンタルコンデンサ、リチウムイオン電池を用いることができる。
【0028】
記憶部14は、土壌センサ16及び環境センサ17によって計測された環境データ14Aを一時的に記憶するメモリである。本実施の形態では、着脱可能なマイクロsdカードを用いたが、これに限定されず他の外付けメモリであってもよく内蔵メモリであってもよい。記憶部14は、環境データ14Aが所定の容量を超えるとデータが上書きされる。
【0029】
通信部15は、Wifi(登録商標)によってルータ2とデータ通信を行う。本実施の形態のアンテナはフィルム上のパターンアンテナを用いているため、基盤ユニット18を任意の位置に設置してもアンテナ強度の高い向きとすることができる。通信部15とルータ2との通信方式はこれに限定されず、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、LPWA(Low Power Wide Arewa)、920MHz帯無線通信、無線LAN、3G、4G、又は5Gの移動体通信、赤外線通信等であってもよい。通信部15とルータ2とのデータ通信の際は、各土壌用センサデバイス10に割り当てられた識別子を土壌センサ16又は環境センサ17が計測した環境データ14Aと共に送信する。これにより、クラウドサーバ3上では得られた環境データ14Aがどの土壌用センサデバイス10によるものかを識別することができる。識別子は、予め土壌用センサデバイス10に割り当てられているものであってもよく、土壌用センサデバイス10とルータ2とが通信を開始したときに割り当てられてもよい。なお、通信部15は920MHz帯による無線通信で図示せぬ基地局とデータ通信を行ってもよい。例えば、シグフォックス(登録商標)によるLPWAネットワークを用いた場合は、ルータに変えて基地局と通信を行う。基地局が受信したデータは、すべてクラウドサーバ3で管理される。これにより数十km離れた移動体通信が可能となる。
【0030】
土壌センサ16はケーブルCを介して基盤ユニット18と電気的に接続され、第1水分センサ16Aと、第2水分センサ16Bと、を有している。第1水分センサ16Aは本発明の第1検出部に対応し、第2水分センサ16Bは本発明の第2検出部に対応する。第1水分センサ16Aと第2水分センサ16Bとは略同一の構成であるため、以下第1水分センサ16Aについてのみ説明する。第1水分センサ16Aは、静電容量感知で土壌の水分レベルを検知するセンサであって略平板形状をなし、上方を向くように配置された第1検出面16aを備えている。第1水分センサ16Aは、第1検出面16aに交流の電気を流し、電気容量の変化(キャパシタンス)を水分値に置き換えて算出する。第2水分センサ16Bは、上方を向く第2検出面16bを備えていて、第1水分センサ16Aから下方に間隔を空けて配置される。本実施の形態では、土壌センサ16として水分センサを用いたが、これに限定されず温度、PH値、EC値、硝酸イオン等のイオンを検出するセンサであってもよい。図中において、第1検出面16a及び第2検出面16bを斜線で示す。
【0031】
環境センサ17はケーブルDを介して基盤ユニット18と電気的に接続され、温度センサ17Aと、湿度センサ17Bと、を有している。環境センサ17は、大気の環境を計測するため本体部11の上部から外部に露出している。なお、環境センサ17は、これに限定されず、照度、気圧、CO2濃度、メタンガス濃度、風力を計測可能であってもよい。また、土壌センサ16又は環境センサ17は、多軸のジャイロセンサ、傾きセンサ、振動センサ、静電容量センサによるタッチセンサ、磁気センサ、焦電センサ、超音波センサ等を用いることもできる。例えば、土壌センサ16に多軸ジャイロセンサ又は傾きセンサを用いる場合は、地面の傾き、又は育苗ポット5の傾き及び動きを計測することができる。本実施の形態では、土壌センサ16は通信部15とアナログ通信により接続され、環境センサ17は通信部15とI2Cバスによるシリアル通信によって接続されている。制御部12が、土壌センサ16からのアナログ信号電圧値を所定の計算式に入力することにより数値データに変換し、当該数値データを記憶部14に環境データ14Aとして記憶する。また、制御部12は、環境センサ17からのシリアル通信によって受け取るデジタル信号を所定の計算式に入れ込むことによって数値データに変換し、当該数値データを記憶部14に環境データ14Aとして記憶する。なお、土壌センサ16及び環境センサ17と通信部15との通信方式、及び環境データ14Aへの変換方式は、上記に限定されず任意の方法を用いることができる。
【0032】
制御部12は、1分ごとに土壌センサ16及び環境センサ17からの環境データ14Aを記憶部14に記憶し、定期的に通信部15でクラウドサーバ3に送信する。管理者は、PC端末4又は携帯端末4Aによりクラウドサーバ3に蓄積された環境データ14Aの解析を行うことができる。
【0033】
育苗ポット5で水やりした場合と、空のポットで水やりした場合と、の土壌センサ16の環境データ14Aの比較結果を
図4に示す。t1及びt2は、水やりのタイミングである。
図4(A)に示す空のポットでは、実線で示す第1水分センサ16Aの検出値のほうが点線で示す第2水分センサ16Bの検出値よりも低くなる。これは、土壌の水分が上から下に向けて下がってくるため下方に位置する第2水分センサ16Bの値が高くなる。これに対し、
図4(B)に示すいちごの苗が植えられた育苗ポット5では、点線で示す第2水分センサ16Bのほうが実線で示す第1水分センサ16Aよりも低くなる。苗木の根が水分を保持するため、育苗ポット5の底面よりも中間部分のほうが水分量が高い。本実施の形態のように、土壌センサ16を本体部11から水平に突出させて第1検出面16a及び第2検出面16bを上方に向けるように設置することで、特定層における水分量を適正に把握することができる。
【0034】
従来のように、縦方向に土壌センサ516設置した土壌用センサデバイス510の環境データ14Aを
図11に示す。水やりt1及びt2のタイミングで、土壌水分が上昇している。しかし、本発明のように土壌中の層における水分量を計測することができないため、苗木の解析に有益となる環境データ14Aの採取が難しい。これに対し、本発明では土壌中の任意の層における水分量を適正に計測することができる。
【0035】
図5に、環境センサ17によって検知された環境データ14Aを示す。実線は湿度センサ17Bによって計測された環境データ14A、点線は温度センサ17Aによって計測された環境データ14A、一点鎖線は図示せぬ土壌温度センサによって計測された環境データ14Aを示している。グラフに示すように、水やりのタイミングであるt4及びt5において大気の湿度が上昇している。また、土壌温度は大気温と概ね連動している。
【0036】
これらのデータは、クラウドサーバ3に蓄積され、ビックデータとして保存される。最終的に、収穫されたいちごの糖度、サイズ、色合い、形状、等と対応付けて保存され、ディープラーニング等の機械学習によるいちごの苗の最適な育成条件の設定に用いられる。
【0037】
このような構成によると、第1水分センサ16Aの第1検出面16a及び第2水分センサ16Bの第2検出面16bが上下方向に対して交差するように配置されているため、本体部11を土壌6に埋設したとき、又は本体部11を育苗ポット5の深さ方向に平行に配置したとき、土壌表面から下降してくる水分、栄養分、その他の無機物等の環境データ14Aを適正に検出することができる。また、記憶部14の環境データ14Aを通信部15によってルータ2に無線送信可能であるため、検出した環境データ14Aをビックデータとしてクラウドサーバ3に蓄積し、農作物の苗木の育成に役立てることができる。
【0038】
このような構成によると、第1検出面16a及び第2検出面16bが上下方向に直交し上を向くように本体部11から突出していため、本体部11を土壌6に埋設したとき、又は本体部11を育苗ポット5の深さ方向に平行に配置したとき、土壌表面から下方にむけてしみ込んでくる水分、栄養分、その他の無機物等の検出を適正に行うことができる。
図11に示すように、従来のように土壌に土壌センサ16を差し込んで水分量を計測すると水平方向である特定層の水分量の検出が難しかった。さらに、下方に向けて流れる物質の検出においても同様に、検出のための電極等が縦方向に向いているため、縦方向に平均化された値が検出されてしまい、横方向における特定層の検出に不向きであった。これに対し、本発明の土壌用センサデバイス10では第1検出面16a及び第2検出面16bが層に対して平行であって上を向くように配置されているため、所望の層における適正かつ詳細な環境データ14Aの検出が可能となる。
【0039】
このような構成によると、土壌センサ16は第1水分センサ16Aと上下方向に間隔を空けて設置された第2水分センサ16Bとを有しているため、複数の層の環境データ14Aを検出することができる。また、第1検出面16a及び第2検出面16bが上方を向くように配置されているため、本体部11を土壌6に埋設したとき、又は本体部11を育苗ポット5の深さ方向に平行に配置したとき、土壌表面から下方にむけてしみ込んでくる水分、栄養剤、その他の無機物等の検出を適正に行うことができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図6に基づいて説明する。図中に示すように、上下前後左右方向を定義する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第2の実施の形態による土壌用センサデバイス110は、本体部11の左右方向の側面に上下方向に沿って土壌発電のための2つの電極111が設けられている。
【0041】
土壌用センサデバイス110では、土壌内の微生物が一方の電極111が、微生物が有機物を分解する際に発生する電子を受け取り、その電子が他の電極111に移動することにより発電される。制御部12は、電源供給部13から供給される電極111から電気に基づいて土壌用センサデバイス10を駆動する。
【0042】
このような構成によると、本体部11に土壌発電用の電極111が設けられているため、エナジーハーベストによる環境負荷の低い土壌用センサデバイス110を実現することができる。また、電極111は上下方向に沿って配置されるため、効率的に発電を行うことができる。さらに、電極111を左右方向の側面に設けることにより、電極間の距離を担保しつつ長さを有する電極111の設置が可能となる。
【0043】
次に、本発明の第3の実施の形態について、
図7に基づいて説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第3の実施の形態による土壌用センサデバイス210は、本体部211から2つのアーム220が前方に向けて水平に突出している。上部のアーム220の先端には、第1水分センサ16A及び第1温度センサ216Aが設けられている。下部のアーム220の先端には、第2水分センサ16B及び第2温度センサ216Bが設けられている。第1水分センサ16A、第2水分センサ16B、第1温度センサ216A、及び第2温度センサ216Bは、水平に設けられている。第1水分センサ16Aが本発明の第1検出部に対応し、第1温度センサ216Aが本発明の第2検出部に対応する。
【0044】
このような構成によると、特定層における水分量と土壌温度とを同時に計測することができる。また、アーム220が設けられているため、アーム220の長さを調整することにより所望の位置の環境データ14Aを採取することができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施の形態について、
図8に基づいて説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第4の実施の形態によるセンシング容器300は、上下方向に深さを有し植物を栽培する容器301と、容器301に取り付けられた土壌用センサデバイス310と、を有している。土壌用センサデバイス310は、基盤ユニット318と、第1水分センサ316Aと、第2水分センサ316Bと、基盤ユニット318と第1水分センサ316A及び第2水分センサ316Bとをつなぐケーブル318Aと、を有している。
【0046】
基盤ユニット318は、第1の実施の形態の基盤ユニット18と略同一の構成となっており、容器301の縁に設けられている。基盤ユニット318の少なくとも1つの面には図示せぬソーラーパネルが設けられている。第1水分センサ316Aは、容器301の側面に固定され、第1検出面316aが上下方向に直交するように配置される。基盤ユニット318と第1水分センサ316Aとは柔軟性を有するケーブル318Aで接続されているため、第1水分センサ316Aの位置を所望の位置に固定することができる。第2水分センサ316Bは、容器301の底面に第2検出面316bが上下方向に直交するように固定されている。上下方向は、本発明の深さ方向に対応する。
【0047】
このような構成によると、容器301と土壌用センサデバイス310とが一体的に構成されているため、土壌用センサデバイス310設置の作業負担を軽減することができる。また、第1の実施の形態と同様に基盤ユニット318内のソーラーパネル及び通信部のアンテナがフィルム状であるため、フレキシブルに設置することができる。さらに、土壌センサ16がフィルム状であるため、容器301の底面及び側面の任意の位置に設置することができる。なお、容器301は、苗木ポットであってもよく、植木鉢であってもよい。
【0048】
次に、本発明の第5の実施の形態について、
図9に基づいて説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。第5の実施の形態によるセンシング容器400は、
図9(A)に示すように、上下方向に深さを有し植物を栽培する容器401と、容器401に取り付けられた土壌用センサデバイス410と、を有している。容器401は樹脂又は紙製であって略矩形をなし、
図9(B)に示すように、展開した状態から組み立てることにより作成される。土壌用センサデバイス410は、基盤ユニット418と、第1水分センサ416Aと、第2水分センサ416Bと、基盤ユニット418と第1水分センサ416A及び第2水分センサ416Bとをつなぐケーブル418Aと、を有している。
【0049】
基盤ユニット418は、第1の実施の形態の基盤ユニット18と略同一の構成となっており、容器401の縁に設けられている。基盤ユニット418の少なくとも1つの面には図示せぬソーラーパネルが設けられている。第1水分センサ416Aは、容器401の側面に固定されていて、第1検出面416aが上下方向に直交するように配置される。基盤ユニット418と第1水分センサ416Aとは、ケーブル418Aで接続されている。第2水分センサ416Bは、容器401の底面に第2検出面416bが上下方向に直交するように固定されている。
【0050】
このような構成によると、容器401と土壌用センサデバイス410とが一体的に構成されているため、土壌用センサデバイス410設置の作業負担を軽減することができる。また、第1の実施の形態と同様に基盤ユニット418内のソーラーパネル及び通信部のアンテナがフィルム状であるため、フレキシブルに設置することができる。また、土壌センサ16がフィルム状であるため、容器401の底面及び側面の任意の位置に設置することができる。
【0051】
本発明による土壌用センサデバイス及びセンシング容器は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0052】
上述の実施の形態による土壌用センサデバイス10、110、210を、
図10に示すように山林の傾斜面に複数設置してもよい。検知された環境データは、第1の実施の形態と同様に、無線通信によりクラウドサーバ3に蓄積される。このような構成によると、土砂崩れ等の自然災害が発生する際の土壌の状態を把握することができ、降水量との関係性から避難指示等の防災に役立てることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 土壌用センサシステム
2 ルータ
3 クラウドサーバ
4 PC端末
4A 携帯端末
5 育苗ポット
10、110、210、310、410 土壌用センサデバイス
11、211 本体部
13 電源供給部
14 記憶部
14A 環境データ
15 通信部
16 土壌センサ
16A、316A、416A 第1水分センサ
16a、316a、416a 第1検出面
16B、316B、416B 第2水分センサ
16b、316b、416b 第2検出面
17 環境センサ
216A 第1温度センサ
216B 第2温度センサ
300、400 センシング容器
301、401 容器