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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172823
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079072
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 智広
(72)【発明者】
【氏名】金澤 利昭
(72)【発明者】
【氏名】横尾 浩和
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD12
4C058EE23
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK23
4C058KK50
(57)【要約】
【課題】新型コロナウィルスなどの感染防止に好適な殺菌装置を提供すること。
【解決手段】殺菌装置1は、対象物の一例である買い物かご30を出し入れ自在な装置本体10と、装置本体10内に配置され、殺菌可能な光を照射する光源部20とを備え、買い物かご30は、短辺を、装置本体10の前後方向に沿わせた姿勢で装置本体10に出し入れされる。光源部20は、買い物かご30を挟んで対向する位置に、買い物かご30の持ち手32の装置本体10の前後方向と一致する方向に間隔を空けて上下に延在する複数の棒状光源を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち手を有する対象物の殺菌装置において、
前記対象物を出し入れ自在な装置本体と、
前記装置本体内に配置され、殺菌可能な光を照射する光源部とを備え、
前記対象物の持ち手は、当該対象物の短辺と平行に延在し、
前記対象物は、前記短辺を、前記装置本体の前後方向に沿わせた姿勢で、前記装置本体に出し入れされ、
前記光源部は、前記対象物を挟んで対向する位置に、前記持ち手の前記装置本体の前後方向と一致する方向に間隔を空けて上下に延在する複数の棒状光源を有する
ことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記光源部と前記対象物の間に、光源部ガード部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記装置本体は、前記対象物の搬入口を有すると共に、前記対象物を殺菌適正位置に位置させる位置決め部材を有し、
前記位置決め部材は、前記対象物、及び、前記対象物を載せて移動自在なキャリアーを前記搬入口から奥側に移動した際に、前記殺菌適正位置よりも奥側へ移動不能に前記対象物に当接する当接部を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記装置本体は、下方に開口するボックス形状を有し、
前記装置本体の下部の全周から床まで延出する可撓性の遮光部材を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項5】
ICタグに記憶された情報を受信する受信部と、
受信した情報に基づいて、前記光源部の点灯/消灯を含む動作を管理する制御部と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウィルスなどのウィルスの感染防止を目的として、買い物かごを殺菌消毒するレジ籠殺菌装置が提案されている。この種の殺菌装置には、買い物かごに、ミスト状の過酸化水素水を噴霧する構成がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3229167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構成は、ミスト状の過酸化水素水を噴霧する構成や、買い物かごを回転させる機構が必要であり、構成が複雑化し、殺菌が完了するまでに時間が掛かりやすい。
本発明は、簡易な構成で、新型コロナウィルスなどの感染防止に好適な殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、持ち手を有する対象物の殺菌装置において、前記対象物を出し入れ自在な装置本体と、前記装置本体内に配置され、殺菌可能な光を照射する光源部とを備え、前記対象物の持ち手は、当該対象物の短辺と平行に延在し、前記対象物は、前記短辺を、前記装置本体の前後方向に沿わせた姿勢で、前記装置本体に出し入れされ、前記光源部は、前記対象物を挟んで対向する位置に、前記持ち手の前記装置本体の前後方向と一致する方向に間隔を空けて上下に延在する複数の棒状光源を有することを特徴とする。
【0006】
本発明は、上記殺菌装置において、前記光源部と前記対象物の間に、光源部ガード部材を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記殺菌装置において、前記装置本体は、前記対象物の搬入口を有すると共に、前記対象物を殺菌適正位置に位置させる位置決め部材を有し、前記位置決め部材は、前記対象物、及び、前記対象物を載せて移動自在なキャリアーを前記搬入口から奥側に移動した際に、前記殺菌適正位置よりも奥側へ移動不能に前記対象物に当接する当接部を含む、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記殺菌装置において、前記装置本体は、下方に開口するボックス形状を有し、前記装置本体の下部の全周から床まで延出する可撓性の遮光部材を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記殺菌装置において、ICタグに記憶された情報を受信する受信部と、受信した情報に基づいて、前記光源部の点灯/消灯を含む動作を管理する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、新型コロナウィルスなどの感染防止に好適な殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る殺菌装置の斜視図である。
図2図2(A)は殺菌対象物の単体の斜視図、図2(B)は殺菌装置に搬入する状態の殺菌対象物を示す図である。
図3図3(A)は殺菌装置の正面図、図3(B)は下面図、図3(C)は左側面図である。
図4図4(A)は殺菌装置の背面図、図4(B)は上面図、図4(C)は右側面図である。
図5図5(A)は買い物かごと光源部を上方から見た図、図5(B)は正面側から見た図である。
図6図6(A)は買い物かごの左側の短辺の照度測定結果、図6(B)は買い物かごの右側の短辺の照度測定結果を示す図である。
図7】殺菌装置の制御に関わるブロック図である。
図8】殺菌装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る殺菌装置の斜視図である。図1及び後述する各図において、上方向を符号UPで示し、右方向を符号RHで示し、前方向を符号FRで示している。
図1に示すように、殺菌装置1は、装置本体10と、装置本体10内の殺菌対象物30に照射光を照射する光源部20とを備え、照射光により殺菌対象物30を殺菌する装置である。殺菌の対象は、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)を含むウィルスや細菌である。
【0013】
装置本体10は、殺菌対象物30の前後左右を囲う四角枠状の側壁11と、側壁11の上方を覆う天板部12とを備え、殺菌対象物30の前後左右及び上方を囲うボックス形状に形成されている。また、装置本体10は、下方が開口するボックス形状ということもできる。
側壁11と天板部12は、装置本体10内の光源部20からの照射光(紫外線)の前後左右、及び上方からの漏れを防止する壁に形成されている。側壁11及び天板部12の一部は、透明ポリカーボネート板13Pで形成され、外部から透明ポリカーボネート板13Pの領域を通じて装置本体10内を視認可能である。
【0014】
側壁11の前面に対応する領域の左右中央には、片開き式のドア15が設けられ、このドア15を開くことによって、殺菌対象物30を装置本体10内に出し入れ自在な搬入口15Kが開口する。
ドア15には、取っ手15Tが設けられ、この取っ手15Tが前面側に引かれることによってドア15が開く。このドア15は、ドアロック機構15Lによって施錠可能である。ドア15は片開き式に限定されず、両開き式でもよい。
【0015】
装置本体10の下部には複数(本例では4個)のキャスター(車輪)16が取り付けられ、これらキャスター16によって殺菌装置1を床に沿って容易に移動させることができる。キャスター16が取り付けられるので、装置本体10の下部は、床よりも上方に位置する。なお、装置本体10の下部には、床まで延出可能な複数(本例では4個)の足部16Fが設けられ、足部16Fを床まで延出させることで、装置本体10の移動を規制できる。
【0016】
図1に示すように、装置本体10には、この装置本体10の下部(ドア15の下部も含む)の前後左右から床まで延出する遮光シート17が設けられる。遮光シート17は、ポリ塩化ビニルなどの可撓性を有し、かつ、可視光に対して透明の材料で形成される。遮光シート17は、装置本体10の下部の全周から床まで延出して装置本体10と床との間の隙間を塞ぎ、光源部20からの照射光(紫外線)を遮光する遮光部材として機能する。これにより、光源部20からの照射光(紫外線)が装置本体10の下方から外部に漏れる事態が防止される。
【0017】
側壁11の前面におけるドア15左側の領域には、ステンレス板18Sが設けられ、このステンレス板18Sの外側面には、タッチパネル19A、運転ボタン19Bなどの操作ボタン、及び、受信部19Cが設けられている。受信部19Cは、所定のICタグに記憶された情報を非接触で読み取る通信モジュールである。ドア15左側の領域のステンレス板18Sの裏側には、制御ボックス19Dが設けられている。
【0018】
図2は、殺菌対象物30の説明に供する図であり、図2(A)は殺菌対象物30の単体の斜視図を示し、図2(B)は殺菌装置1に搬入する状態の殺菌対象物30を示す図である。
殺菌対象物30は、買い物かご(ショッピングバスケット、レジ籠とも称される)である。買い物かご(以下、符号30を付して示す)は、上方に開口する有底形状のかご本体31と、かご本体31の両側に倒れることが可能な一対の持ち手32とを備えている。買い物かご30には、スーパーストアやコンビニエンスストアなどの様々な店舗で利用される任意の買い物かごを適用可能である。買い物かご30は、平面視で長辺L1と短辺L2を有する直方体形状に形成され、一対の持ち手32は、かご本体31の上部に取り付けられ、図2(A)中の符号αで示すように、長辺L1の両側に倒れるように構成される。一対の持ち手32は、短辺L2と平行に延在している。
【0019】
図2(B)に示すように、買い物かご30は、上下に重ねることができる。
本構成の殺菌装置1は、上下に重ねた買い物かご30をまとめて移動可能にするキャリアー40を有している。キャリアー40は、買い物かご30を載せる載せ台41と、載せ台41に取り付けられた複数(本例では4個)のキャスター(車輪)42を有し、載せ台41に載せられた買い物かご30の上に、多数の買い物かご30を積み重ねることができる。なお、キャリアー40の構成は、図2(B)に示した構成に限定されず、適宜に変更してもよい。
【0020】
殺菌装置1の搬入口15K(図1)は、複数の買い物かご30を載せたキャリアー40が出入り可能なサイズに形成される。図2(B)には、買い物かご30及びキャリアー40を殺菌装置1に搬入したときの上方向UP及び右方向RHを示している。
図2(B)に示すように、買い物かご30は、その長手方向(長辺L1に沿った方向)を、殺菌装置1の左右方向に一致させた姿勢で、殺菌装置1に搬入される。このため、買い物かご30の一対の持ち手32は、殺菌装置1の左右に向けた状態で殺菌装置1に搬入される。
【0021】
図3及び図4は、殺菌装置1を異なる方向から示した図である。より具体的には、図3(A)は殺菌装置1の正面図、図3(B)は下面図、図3(C)は左側面図を示している。なお、図3には、殺菌時のキャリアー40の位置(殺菌適正位置に対応する位置)を二点鎖線で示している。また、図4(A)は殺菌装置1の背面図、図4(B)は上面図、図4(C)は右側面図を示している。
【0022】
図3及び図4に示すように、殺菌装置1の装置本体10は、上下方向に延びる複数の支柱51と、左右及び前後方向に延びる複数の桟部材52とを互いに接合して構成されたフレームを有している。装置本体10の前後左右、及び上下のうち、内部が視認可能な領域は、透明ポリカーボネート板13Pで覆われ、それ以外の領域は、ステンレス板18Sで覆われている。なお、装置本体10の下面のうち、キャリアー40が出入りする箇所には、透明ポリカーボネート板13P及びステンレス板18Sが存在しないことは勿論である。
なお、透明ポリカーボネート板13P及びステンレス板18Sについては、照射光(紫外線)が漏れず、耐UV性を有する部材の板などに変更してもよい。
【0023】
図4(A)及び図4(B)に示すように、上記支柱51は、買い物かご30を載せてキャリアー40を搬入口15Kから奥側に移動した際に、殺菌適正位置よりも奥側へ移動不能にキャリアー40及び買い物かご30が当接する背面側柱部材51Aを含んでいる。
背面側柱部材51Aは、装置本体10の背面(後面と言うこともできる)側に左右に間隔を空けて設けられると共に、上下方向に延びる2列の柱部材である。背面側柱部材51Aが上下方向に延びるので、キャリアー40及び買い物かご30のいずれかが奥側に移動したり、買い物かご30が奥側に脱落したりする事態を効果的に防止できる。この背面側柱部材51Aは、本発明の「当接部」に相当する。なお、上記当接部は、柱形状でなくてもよく、適宜な構成を適用可能である。
【0024】
図4(A)及び図4(B)に示すように、装置本体10の下部には、搬入口15Kに進入したキャリアー40の左右に位置し、キャリアー40の左右位置を、殺菌適正位置にガイドする左右のガイド部材53を有している。
左右のガイド部材53は、装置本体10の背面から正面に向けて直線状に延びた後に、装置本体10の正面近傍で左右外側に湾曲するパイプ部材で形成されている。
ここで、殺菌適正位置は、買い物かご30の殺菌に適切な位置であり、換言すると、光源部20の照射光によって買い物かご30の持ち手32を含む箇所を殺菌するのに好適な位置である。
【0025】
上記ガイド部材53によって、買い物かご30の装置本体10に対する左右位置が位置決めされ、上記背面側柱部材51Aによって、買い物かご30の装置本体10に対する前後位置が位置決めされる。これにより、買い物かご30を装置本体10内に搬入すれば、買い物かご30が殺菌適正位置に対応する位置に位置決めされる。上記ガイド部材53、及び上記背面側柱部材51Aは、本発明の「位置決め部材」に相当する。
【0026】
光源部20と買い物かご30の間には、光源部ガード部材55が配置されている。光源部ガード部材55は、金属製のメッシュ部材、或いは、金属製の線材又は細い板材を格子状に組み合わせた構造で形成され、光源部20からの照射光を遮断しない。なお、本構成の光源部20は、後述するように複数の棒状光源21で構成され、各棒状光源21における買い物かごの短辺L2側が、光源部ガード部材55で覆われている。なお、光源部ガード部材55の構成や形状は適宜に変更してもよい。
【0027】
図5は、買い物かご30と光源部20の位置関係を示した図であり、図5(A)は上方から見た図、図5(B)は正面側から見た図である。図5(B)には、キャリアー40に最大数の買い物かご30を載せた状態を示している。
図5に示すように、光源部20は、買い物かご30を挟んで対向する左右位置に、持ち手32の装置本体10の前後方向と一致する方向に間隔を空けた2列の棒状光源21をそれぞれ有している。
【0028】
各列の棒状光源21は、図5(B)に示すように、キャリアー40に載置可能な最大数の買い物かご30の上下に渡って延在し、少なくとも最も下の買い物かご30の持ち手32よりも下方の位置から、最も上の買い物かご30の持ち手32よりも上方の位置まで延在する。これにより、棒状光源21からの照射光を、持ち手32の上下を含む広い範囲に照射し易くなる。
【0029】
各棒状光源21には、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)を含むウィルスの殺菌に有効な紫外線を照射する紫外線ランプが使用される。より具体的には、各列の棒状光源21は、長さの異なる2本の紫外線ランプを上下に並べた構成とされる。また、各紫外線ランプには、各ランプから買い物かご30と異なる方向に照射される光を買い物かご30側へ反射する反射鏡22がそれぞれ設けられている。
なお、各棒状光源21を、1本の紫外線ランプで構成してもよいし、3本以上の紫外線ランプで構成してもよく、買い物かご30の最大数の高さに合わせた長さを選択すればよい。また、光源部20には、紫外線を照射可能なLEDなどの公知の光源を広く適用可能である。
【0030】
本構成では、図5(A)に示すように、買い物かご30を挟んで対向する左右位置に、持ち手32の装置本体10の前後方向と一致する方向に間隔を空けた2列の棒状光源21を設けているので、持ち手32、及び持ち手32の周囲に照射光を照射し易くなる。棒状光源21と買い物かご30との離間距離Ld(本実施形態では113mm)は、照射光を適正な照度、及び適正な範囲で買い物かご30を照射可能な距離に設定される。また、これら棒状光源21が持ち手32の近傍で上下方向に延出するので、持ち手32の左右外側の面だけでなく、持ち手32の上下の面にも照射光を照射でき、持ち手32の広い面積を殺菌し易くなる。
【0031】
さらに、図5(A)に示すように、2列の棒状光源21を、一対の持ち手32の中心をつなぐ中心線C1を挟んで対称の位置(本実施形態では、光源中心までが108mm)に配置している。この構成によれば、両方の棒状光源21からの照射光を、持ち手32に均等に照射し易くなる。また、2列の棒状光源21からの照射光を、持ち手32を含む領域に重ねて照射することができ、持ち手32の殺菌を重視できる。
【0032】
なお、光源部20からの各照射光は、買い物かご30のかご本体31にも照射され、買い物かご30を殺菌できる。照射光の照射範囲は、離間距離Ld等の調整、反射鏡の形状調整、及び光源数などの変更によって適宜に調整してもよい。
【0033】
図6は、照度測定結果を示す図である。図6(A)は買い物かご30の左側の短辺L2の照度測定結果を示し、図6(B)は買い物かご30の右側の短辺L2の照度測定結果を示している。なお、各照度測定結果は、買い物かご30を60個積み重ねた状態の上段、中段(20個目)、及び下段のそれぞれを示している。また、各短辺L2の位置は、持ち手32が平行に延在しているので、持ち手32の照度を見るのに有効な測定結果である。
図6中の横軸は、短辺L2の中心位置を零とした場合の各位置を示し、縦軸は、光源部20を30秒点灯した時の積算光量(mJ/cm)を示している。また、買い物かご30のサイズは、短辺L2が360mm、長辺L1が510mm、高さが240mmである。また、積算光量は、対応波長200nm~400nmのUVスケール(紫外線光量分布測定フィルム)を用いて行った。
【0034】
事前に、新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)を含む液体を、プラスチックシャーレに塗布し、紫外線ランプの紫外線を照射する試験を行ったところ、積算光量3.0mJ/cmで、99.9%以上の新型コロナウィルスが不活化したことを確認した。
図6(A)、及び図6(B)に示すように、短辺L2のいずれの位置であっても、3.0mJ/cm以上の積算光量が得られていることが判る。また、中段の買い物かご30は、上段及び下段の買い物かご30よりも上下に広い領域から光源部20の照射光が照射されるため、相対的に高い積算光量となる。図6に示す測定結果では、上段の買い物かご30については、6.2mJ/cm以上の積算光量が得られ、下段の買い物かご30については、7.2mJ/cm以上の積算光量が得られた。また、ウィルスが付着している確率が最も高い持ち手32の中央部には、十分な積算光量が照射されている。
【0035】
次に、殺菌装置1の制御に関わる構成、及び制御について説明する。
図7は、殺菌装置1の制御に関わるブロック図である。
制御ボックス19Dには、制御基板61が配置され、制御基板61は、制御部61Aと、記憶部61Bと、駆動部61Cとを備えている。また、制御基板61には、タッチパネル19A、及び運転ボタン19Bなどの操作ボタンからなる操作部19と、受信部19Cとがケーブルを介して電気的に接続されている。
また、装置本体10には、ドア15の開閉を検出する開閉検出部15Aが設けられ、この開閉検出部15Aもケーブルを介して制御基板61と電気的に接続されている。
【0036】
制御部61Aは、CPU及び周辺回路を備え、記憶部61Bに記憶された制御プログラムを実行することにより殺菌装置1の各部を制御する。例えば、制御部61Aは、操作部19を介してユーザ指示を入力し、ユーザ指示に基づいて駆動部61C等を駆動する。また、制御部61Aは、受信部19Cによって読み取られた不図示のICタグの情報を認証する機能、開閉検出部15Aを介してドア15の開閉を検出する機能、及び、光源部20の点灯/消灯を含む各種の動作を管理する機能などを有している。
記憶部61Bは、半導体メモリであり、制御プログラムの他、ICタグの情報を認証する処理に使用する情報などを記憶する。駆動部61Cは、制御部61Aの制御の下、光源部20を駆動する。
【0037】
図8は、殺菌装置1の動作を示すフローチャートである。なお、前提として、殺菌装置1内には、買い物かご30が搬入されているものとする。
制御部61Aは、殺菌装置1を操作しようとする者が所定のICタグを受信部19Cにかざした場合に、ICタグに記憶された情報を読み取る(ステップS1)。次に、制御部61Aは、記憶部61Bに記憶された認証用の情報を参照し、ICタグに記憶された情報に基づいて、正規のICタグか否かを判定する。
ここで、正規のICタグとは、殺菌装置1の操作が許可されたユーザが携帯するICタグであり、店舗側で管理されるICタグである。正規のICタグか否かの判定は、いわゆる正規のユーザか否かの判定に相当する。
【0038】
正規のICタグでないと判定された場合(ステップS2;NO)、制御部61Aは、図8に示すフローチャートの処理を中止する。なお、図8に示すフローチャートは、殺菌装置1に動作電力が供給される間(或いは、所定の電源スイッチがONの間)、所定の周期で繰り返し実行される。このため、別のICタグが受信部19Cにかざされると、そのICタグに記憶された情報に基づいて正規のICタグか否かが判定される。
【0039】
正規のICタグと判定された場合(ステップS2;:YES)、開閉検出部15Aの検出結果に基づいてドア15が閉状態であれば(ステップS3;YES)、制御部61Aは、操作部19の操作を受け付ける状態となり、運転ボタン19Bが操作されると(ステップS4;YES)、駆動部61Cにより光源部20を点灯させる(ステップS5)。
【0040】
ドア15が閉状態でない場合(ステップS3;NO)、制御部61Aは、ドア15が開いている旨、或いは、ドア15が開いているため殺菌を開始できない旨を報知する報知処理を行い(ステップS3A)、ステップS3の処理へ移行する。したがって、ユーザによってドア15が閉じられると、ステップS3からステップS5の処理へ移行し、光源部20が点灯される。報知処理には、タッチパネル19Aの領域に設けた表示エリアへの表示、警告ランプの点灯、又は音声による報知といった広く知られた処理を適宜に採用すればよい。
【0041】
運転ボタン19Bの操作などが行われない場合(ステップS4;NO)、制御部61Aは、予め設定された設定時間が経過したか否かを判定し(ステップS4A)、設定時間が経過していない場合(ステップS4A;NO)、ステップS4の処理に移行する。設定時間は、正規のICタグの場合に、操作を受け付ける最大時間に設定される。設定時間が経過した場合(ステップS4A;YES)、制御部61Aは、図8に示すフローチャートの処理を中止する。
【0042】
ステップS5の処理によって光源部20を点灯させた場合、制御部61Aは、開閉検出部15Aの検出結果に基づいてドア15が開いたか否かを判定し(ステップS6)、ドア15が開いた場合(ステップS6;YES)、光源部20を強制的に消灯させる(ステップS6A)。
本実施形態において、ステップS5の処理において、全ての棒状光源21を点灯し、つまり、各棒状光源21を構成する複数の紫外線ランプの全てを点灯する。但し、買い物かご30の数が所定数以下のため、下段の紫外線ランプの照射領域にしか買い物かご30が存在しない場合、下段の紫外線ランプだけを点灯するようにしてもよい。
【0043】
一方、ドア15が開いていない場合(ステップS6;NO)、制御部61Aは、点灯を開始してから一定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判定する(ステップS7)。制御部61Aは、一定時間が経過していない場合(ステップS7;NO)、ステップS6の処理に移行し、一定時間が経過した場合(ステップS7;YES)、光源部20を消灯させる(ステップS8)。ここで、一定時間は、買い物かご30の殺菌に十分な点灯時間であり、製造メーカ又はユーザが適宜に設定した時間である。したがって、一定時間の間、光源部20を点灯することにより、買い物かご30を適切に殺菌できる。
なお、光源部20を点灯する間、制御部61Aがドア15をロックするようにしてもよい。以上が殺菌装置1の動作である。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の殺菌装置1は、図1及び図2などに示したように、殺菌対象物である買い物かご30を出し入れ自在な装置本体10と、装置本体10内に配置され、殺菌可能な光を照射する光源部20とを備え、買い物かご30の持ち手32は、買い物かご30の短辺L2と平行に延在し、買い物かご30は、短辺L2を、装置本体10の前後方向に沿わせた姿勢で装置本体10に出し入れされる。光源部20は、買い物かご30を挟んで対向する位置に、買い物かご30の持ち手32の装置本体10の前後方向と一致する方向に間隔を空けて上下に延在する2列の棒状光源21(図5参照)を有している。この構成によれば、ミスト状の過酸化水素水を噴霧する従来構成と比べて、簡易な構成で、特に持ち手32、及び持ち手32の周囲を適切に殺菌する殺菌装置1を提供できる。また、殺菌に要する時間も短時間化し易くなる。
【0045】
持ち手32は、人が直接触る箇所であるので、持ち手32を適切に殺菌することで、ウィルスや細菌の感染防止に有効であり、かつ、殺菌に要する点灯時間の短縮化にも有利である。
また、光源部20と買い物かご30の間に、光源部ガード部材55を有している。この構成によれば、光源部20と買い物かご30との接触を避けることができる。
【0046】
また、装置本体10は、買い物かご30の搬入口15Kを有すると共に、買い物かご30を殺菌適正位置に位置させる位置決め部材を有し、位置決め部材は、買い物かご30、及び、買い物かご30を載せて移動自在なキャリアー40を搬入口15Kから奥側に移動した際に、殺菌適正位置よりも奥側へ移動不能に買い物かご30に当接する当接部として機能する背面側柱部材51Aを含んでいる。この構成によれば、搬入口15Kから奥側に移動した買い物かご30及びキャリアー40を殺菌適正位置で容易に停止させ易くなる。
【0047】
また、買い物かご30を載せて移動自在なキャリアー40を有し、上記位置決め部材は、キャリアー40を殺菌適正位置へガイドするガイド部材53を含んでいる。この構成によれば、買い物かご30を容易に移動可能にすると共に、買い物かご30を殺菌適正位置へ容易に移動させ易くなる。
【0048】
また、装置本体10は、下方に開口するボックス形状を有し、装置本体10の下部の全周から床まで延出する可撓性の遮光部材として機能する遮光シート17を有している。この構成によれば、光源部20からの照射光(紫外線)が装置本体10の下方から漏れる事態を防止できる。また、遮光シート17が可撓性を有するので、装置本体10を床に沿って移動させる際に、床の凹凸に合わせて遮光シート17が逃げることができ、装置本体10の移動を妨げない。
【0049】
また、殺菌装置1は、ICタグに記憶された情報を受信する受信部19Cと、受信した情報に基づいて光源部20の点灯/消灯を含む動作を管理する制御部61Aとを備えている。この構成によれば、正規のICタグの場合にだけ光源部20を点灯させることが可能になり、意図しない者の操作で光源部20を点灯する事態を避けることができる。
【0050】
上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、図1などに示した殺菌装置1に本発明を適用する場合を例示したが。これに限定されず、形状及び構造が異なる殺菌装置に本発明を適用してもよい。例えば、殺菌装置1の左右に、2列の棒状光源21をそれぞれ設ける場合を例示したが、3列以上の棒状光源21をそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0051】
また、殺菌装置1が殺菌する対象物が、図2などに示した買い物かご30の場合を説明したが、買い物かご30の構成の一部が異なってもよいし、買い物かご30に類似する他の部材でもよく、例えば、持ち手を有する任意の部材でもよい。
【0052】
また、図7に示すブロック図の各構成は、一例であり、他の構成を追加したり、一部の構成を省略してもよい。また、図7に示す各構成は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現される構成としてもよい。また、図8に示すフローチャートの処理単位の分割の仕方や処理順序は図示した例に限定するものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 殺菌装置
10 装置本体
11 側壁
12 天板部
15K 搬入口
17 遮光シート(遮光部材)
19 操作部
19B 運転ボタン
19C 受信部
19D 制御ボックス
20 光源部
21 棒状光源
30 買い物かご(対象物)
31 かご本体
32 持ち手
40 キャリアー
51A 背面側柱部材(当接部、位置決め部材)
53 ガイド部材(位置決め部材)
55 光源部ガード部材
61 制御基板
61A 制御部
61B 記憶部
61C 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8