(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172854
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】育児関連器具
(51)【国際特許分類】
A47D 13/00 20060101AFI20221110BHJP
B60N 2/28 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A47D13/00
B60N2/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079140
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】310019730
【氏名又は名称】グラコ・チルドレンズ・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】西川 直志
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE06
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で可動部の位置または形状を調節することが可能な育児関連器具を提供すること。
【解決手段】育児関連器具の調節機構(3)は、固定部と可動部とを連結する紐(4)と、正逆両方向に回転自在であり、紐(4)の巻き取りおよび送り出しによって、可動部の位置または形状を変化させるリール(80)と、紐(4)の巻取り方向へのリール(80)の回転を許容し、紐(4)の送り出し方向へのリール(80)の回転を禁止するワンウェイクラッチ機構と、ワンウェイクラッチ機構によるリール(80)の回転禁止状態を解除し、リール(80)の自由回転を可能とするロック解除部材(70)とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、前記固定部に対して相対移動可能な可動部と、前記可動部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具であって、
前記調節機構は、
前記固定部と前記可動部とを連結する紐と、
正逆両方向に回転自在であり、前記紐の巻き取りおよび送り出しによって、前記可動部の位置または形状を変化させるリールと、
前記紐の巻取り方向への前記リールの回転を許容し、前記紐の送り出し方向への前記リールの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構と、
前記ワンウェイクラッチ機構による前記リールの回転禁止状態を解除し、前記リールの自由回転を可能とするロック解除部材とを備える、育児関連器具。
【請求項2】
前記調節機構は、前記リールの回転を操作するための回転操作部材をさらに備える、請求項1に記載の育児関連器具。
【請求項3】
前記調節機構は、前記リールを前記紐の巻取方向に付勢する付勢部材を備える、請求項1に記載の育児関連器具。
【請求項4】
前記調節機構は、前記リールを回転可能に支持するホルダをさらに備え、
前記ワンウェイクラッチ機構は、前記リールまたは前記ホルダのいずれか一方に設けられた係合歯と、前記リールまたは前記ホルダのいずれか他方に取り付けられ、前記リールまたは前記ホルダのいずれか一方に係合する係合位置と、前記リールまたは前記ホルダのいずれか一方に係合しない被係合位置との間を変位可能な係合爪とを含み、
前記ロック解除部材は、前記係合爪を前記被係合位置にもたらすように操作する操作部を含む、請求項1~3のいずれかに記載の育児関連器具。
【請求項5】
前記係合歯は、前記リールの回転軸線に対して平行に延びる前記リールの外周面に設けられ、
前記係合爪は、前記ホルダに設けられ、前記係合歯に対して直交する方向に変位し、
前記ロック解除部材は、前記リールの回転軸線に対して直交する方向に移動することで、前記リールの回転禁止状態を解除する、請求項4に記載の育児関連器具。
【請求項6】
前記係合歯は、前記リールの周方向に沿うように前記ホルダに設けられ、
前記係合爪は、前記リールに設けられ、前記係合歯に対して水平方向に変位し、
前記ロック解除部材は、前記リールの周方向に移動することで、前記リールの回転禁止状態を解除する、請求項4に記載の育児関連器具。
【請求項7】
前記係合歯は、前記リールの回転軸線に対して直交する方向に延びる、前記リールの上面または下面に設けられ、
前記係合爪は、前記ホルダに設けられ、前記係合歯に対して直交する方向に変位し、
前記ロック解除部材は、前記リールの回転軸線に対して平行な方向に移動することで、前記リールの回転禁止状態を解除する、請求項4に記載の育児関連器具。
【請求項8】
当該育児関連器具は、チャイルドシートであり、
前記固定部は座席であり、前記可動部は前記座席に取り付けられた身体拘束ベルトである、請求項1~7のいずれかに記載の育児関連器具。
【請求項9】
当該育児関連器具は、チャイルドシートであり、
前記固定部はチャイルドシート本体であり、前記可動部は前記チャイルドシート本体に取り付けられたISOFIXである、請求項1~7のいずれかに記載の育児関連器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、育児関連器具に関し、特に固定部と、固定部に対して相対移動可能な可動部と、可動部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、たとえばチャイルドシート、乳母車、ハイローベッド、子守帯などの育児関連器具には、固定部に対して位置変更可能な可動部が設けられている。
【0003】
たとえば、特開2008-290587号公報(特許文献1)には、子供の体に合わせて肩ベルトの長さ調節を行うことが可能なチャイルドシートが開示されている。このチャイルドシートは、座部の裏面側に位置する肩ベルトの先端部分を前方に引くだけで肩ベルトの長さ調節を行うことができる。
【0004】
たとえば、実開平7-4248号公報(特許文献2)には、手押し棒にベルトを連結し、背もたれ部の背面に取り付けたバックルでベルトの長さを調節することで、リクライニング角度を調節することが可能な乳母車が開示されている。
【0005】
たとえば、特開2013-162974号公報(特許文献3)には、縦抱きにも横抱きにも使用可能な子守帯が開示されている。この子守帯は、親の肩に掛けられる肩ベルト、親の腰に掛けられる腰ベルト、子供と親を繋ぐ接続ベルトが取り付けられており、それぞれのベルトが長さ調節可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-290587号公報
【特許文献2】実開平7-4248号公報
【特許文献3】特開2013-162974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3の育児関連器具は、肩ベルトなどの身体拘束ベルトの長さや、リクライニング角度を調節するには、両手が必要であり、構造が複雑であった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構造で可動部の位置または形状を調節することが可能な育児関連器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明の一態様に係る育児関連器具は、固定部と、固定部に対して相対移動可能な可動部と、可動部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具であって、調節機構は、固定部と可動部とを連結する紐と、正逆両方向に回転自在であり、紐の巻き取りおよび送り出しによって、可動部の位置または形状を変化させるリールと、紐の巻取り方向へのリールの回転を許容し、紐の送り出し方向へのリールの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構と、ワンウェイクラッチ機構によるリールの回転禁止状態を解除し、リールの自由回転を可能とするロック解除部材とを備える。
【0010】
好ましくは、調節機構は、リールの回転を操作するための回転操作部材をさらに備える。
【0011】
好ましくは、調節機構は、リールを紐の巻取方向に付勢する付勢部材を備える。
【0012】
好ましくは、調節機構は、リールを回転可能に支持するホルダをさらに備え、ワンウェイクラッチ機構は、リールまたはホルダのいずれか一方に設けられた係合歯と、リールまたはホルダのいずれか他方に取り付けられ、リールまたはホルダのいずれか一方に係合する係合位置と、リールまたはホルダのいずれか一方に係合しない被係合位置との間を変位可能な係合爪とを含み、ロック解除部材は、係合爪を被係合位置にもたらすように操作する操作部を含む。
【0013】
好ましくは、係合歯は、リールの回転軸線に対して平行に延びるリールの外周面に設けられ、係合爪は、ホルダに設けられ、係合歯に対して直交する方向に変位し、ロック解除部材は、リールの回転軸線に対して直交する方向に移動することで、リールの回転禁止状態を解除する。
【0014】
好ましくは、係合歯は、リールの周方向に沿うようにホルダに設けられ、係合爪は、リールに設けられ、係合歯に対して水平方向に変位し、ロック解除部材は、リールの周方向に移動することで、リールの回転禁止状態を解除する。
【0015】
好ましくは、係合歯は、リールの回転軸線に対して直交する方向に延びる、リールの上面または下面に設けられ、係合爪は、ホルダに設けられ、係合歯に対して直交する方向に変位し、ロック解除部材は、リールの回転軸線に対して平行な方向に移動することで、リールの回転禁止状態を解除する。
【0016】
好ましくは、育児関連器具は、チャイルドシートであり、固定部は座席であり、可動部は座席に取り付けられた身体拘束ベルトである。
【0017】
好ましくは、育児関連器具は、チャイルドシートであり、固定部はチャイルドシート本体であり、可動部はチャイルドシート本体に取り付けられたISOFIXである。
【0018】
他の態様に係る育児関連器具は、本体部と、本体部から延出する延出部と、延出部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具であって、調節機構は、一端が本体部に連結され、他端が延出部に保持される紐と、正逆両方向に回転自在であり、紐の巻き取りおよび送り出しによって、延出部の位置または形状を変化させるリールと、リールの回転を禁止する回転ロック機構とを備える。
【0019】
好ましくは、育児関連器具は、座席付き育児器具であり、本体部は子供を受け入れる座席であり、延出部は座席から延出して子供の肩を拘束する一対の肩ベルトであり、紐は一対設けられ、一対の紐は一対の肩ベルトの端部にそれぞれ保持される。
【0020】
好ましくは、育児関連器具は、座席付き育児器具であり、本体部は子供を受け入れる座席であり、延出部は座席部から延出して子供の股を拘束する股ベルトであり、紐は、股ベルトの端部に保持される。
【0021】
好ましくは、育児関連器具は、チャイルドシートであり、本体部はチャイルドシート本体であり、延出部はチャイルドシート本体から後方に向かって延出して設けられたISOFIXである。
【0022】
好ましくは、育児関連器具は、子守帯であり、本体部は、子守帯本体であり、延出部は子守帯本体から延出して設けられた可動的な部分である。
【0023】
好ましくは、子守帯本体は、親の肩に巻き付く親側肩ベルトと、親の腰に巻き付く親側腰ベルトとを含み、延出部は、親側肩ベルトまたは親側腰ベルトから延出して設けられる部分である。
【0024】
好ましくは、子守帯本体は、子供の体を支持する子供支持部を含み、延出部は、子供支持部から延出して設けられる部分である。
【0025】
好ましくは、回転ロック機構によるリールの回転禁止状態を解除し、リールの自由回転を可能とするロック解除部材をさらに備える。
【0026】
さらに他の一態様に係る育児関連器具は、固定部と、固定部に対して相対移動可能な可動部と、可動部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具であって、調節機構は、固定部と可動部とを連結する紐と、正逆両方向に回転自在であり、紐の巻き取りおよび送り出しによって、可動部の位置または形状を変化させるリールと、リールの回転を操作するための回転操作部材と、回転操作部材の回転運動をリールに伝達する動作伝達部と、リールの回転運動をリールに伝達しない動作切り離し部とを備える。
【0027】
好ましくは、回転操作部は、通常は動作伝達部によりリールに回転運動が伝達され、一定の荷重を超えた際には動作切り離し部によりリールに回転運動を伝達しない。
【0028】
好ましくは、回転操作部は、一方向に回転する際には、動作伝達部によりリールに回転運動を伝達し、他方向に回転する際には、動作切り離し部によりリールに回転運動を伝達しない。
【0029】
好ましくは、リールは、紐の巻き取りおよび送り出しを行うリール本体と、リール本体と回転操作部材との間に設けられる移動部材とを含み、動作伝達部または動作切り離し部は、回転操作部材に設けられる駆動ギア部と、移動部材に設けられる従動ギア部とを含む。
【0030】
好ましくは、移動部材は、操作部材に向かう方向に付勢されている。
【0031】
好ましくは、駆動ギア部は、リールから回転操作部材に向かって巻取方向に傾斜した第1傾斜部と、リールから回転操作部材に向かって送り出し方向に傾斜した第2傾斜部とを含み、巻取方向に対する第1傾斜部の角度は、送り出し方向に対する第2傾斜部の角度よりも小さい。
【0032】
さらに他の一態様に係る育児関連器具は、固定部と、固定部に対して相対移動可能であり、鉛直方向下方に移動可能な可動部と、可動部の位置または形状を調節するための調節機構とを備える育児関連器具であって、調節機構は、固定部と可動部とを連結する紐と、正逆両方向に回転自在であり、紐の巻き取りおよび送り出しによって、可動部の位置または形状を変化させるリールと、リールを紐の巻取り方向に回転するように付勢する付勢部材と、リールの回転を禁止する回転ロック部材とを備え、付勢部材の付勢力は、可動部が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように選ばれている。
【0033】
好ましくは、紐の巻取り方向へのリールの回転を許容し、紐の送り出し方向へのリールの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構をさらに備える。
【0034】
好ましくは、ロック部材は、リールとともに回転する部分に係合してリールの回転を禁止する第1位置と、リールとともに回転する部分から離れてリールの回転を許容する第2位置との間を変位可能なリールロック爪を含む。
【0035】
好ましくは、ロック部材を第2位置にもたらし、リールの自由回転を可能とするロック解除部材をさらに備える。
【0036】
好ましくは、付勢部材は、ゼンマイバネであり、ゼンマイバネの一端はリールに固定されており、その他端は調節機構の筐体に固定されている。
【0037】
好ましくは、育児関連器具は、チャイルドシートであり、固定部は座席であり、可動部は座席に取り付けられた身体拘束ベルトである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、簡易な構造で可動部の位置または形状を調節することが可能な育児関連器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】(A)は本発明の実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図であり、(B)は調節機構およびISOFIXを取り出した斜視図であり、(C)はISOFIXを引き出した状態を示す断面図であり、(D)はISOFIXを押し込んだ状態を示す断面図である。
【
図2】(A)は他の実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図であり、(B)は調節機構および肩ベルトおよび股ベルトを取り出して、肩ベルトを引き出した状態を示す斜視図であり、(C)は(B)に示す状態から肩ベルトを巻き上げた状態を示す斜視図である。
【
図3】(A)はさらに他の実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図であり、(B)はベルトを拘束した状態のチャイルドシートの模式的な断面図であり、(C)はベルトを開放した状態のチャイルドシートの模式的な断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における調節機構を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は
図4(B)のIVc線から見た断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る調節機構の分解斜視図である。
【
図6】ロック解除部材、ロック部材、リール、および仕切り板を取り出して示す平面図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
【
図7】
図4(C)のVII線から見た断面図である。
【
図8】(A)は回転操作部材および移動部材を取り出して示す斜視図であり、(B)は回転操作部材の駆動ギアおよび移動部材の従動ギアの模式図であり、(C)は回転操作部材を裏面から見た斜視図であり、(D)は(C)の駆動ギア部分の拡大図である。
【
図9】回転操作部材、移動部材、およびリンク部材を取り出して示す断面図であり、(A)は動作伝達部が機能している状態を示し、(B)は動作切り離し部が機能している状態を示している。
【
図11】調節機構の他の変形例を示す模式図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
【
図12】本発明の実施の形態2における調節機構を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は
図4(B)のXIIc線から見た断面図である。
【
図13】本発明の実施の形態2に係る調節機構の分解斜視図である。
【
図14】本発明の実施の形態2における調節機構を示す断面図であり、(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示している。
【
図15】(A)はリールおよびロック部材を取り出して示す斜視図であり、(B)はワンウェイロック機構を示す模式図であり、(C)はリールを裏面から見た斜視図である。
【
図17】(A)は回転操作部材および移動部材を取り出して示す斜視図であり、(B)は回転操作部材の駆動ギアおよび移動部材の従動ギアの模式図であり、(C)は回転操作部材を裏面から見た斜視図であり、(D)は(C)の駆動ギア部分の拡大図である。
【
図18】回転操作部材、移動部材、およびリンク部材を取り出して示す断面図であり、(A)は動作伝達部が機能している状態を示し、(B)は動作切り離し部が機能している状態を示している。
【
図20】調節機構の他の変形例を示す断面図である。
【
図21】本発明の実施の形態3における調節機構を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図であり、(C)は21(B)のXXIc線から見た断面図である。
【
図22】本発明の実施の形態3に係る調節機構の分解斜視図である。
【
図24】(A)は回転操作部材、移動部材、およびリンク部材を取り出して示す斜視図であり、(B)は回転操作部材の駆動ギアおよび移動部材の従動ギアの模式図であり、(C)は回転操作部材を裏面から見た斜視図である。
【
図25】(A)リンク部材およびロック部材を取り出して示す斜視図であり、(B)~(D)は
図21(C)のXXV線から見た部分断面図であり、リンク部材を回転させている状態を示している。
【
図26】
図21(C)のXXVI線から見た部分断面図であり、(A)~(D)はリンク部材を回転させている状態を示している。
【
図27】調節機構の下ホルダを外した状態を示す図であり、(A)は下方斜視図であり、(B)は平面図である。
【
図28】(A)は回転操作部材、移動部材、付勢部、およびリンク部材を取り出して示す斜視図であり、(B)は回転操作部材の駆動ギアおよび移動部材の従動ギアの模式図であり、(C)は回転操作部材を裏面から見た斜視図である。
【
図29】回転操作部材、移動部材、付勢部、およびリンク部材を取り出して示す断面図であり、(A)は動作伝達部が機能している状態を示し、(B)は動作切り離し部が機能している状態を示している。
【
図31】(A)はロック解除部材を操作していない状態を示し、(B)はロック解除部材を操作した状態を示した図を示している。
【
図32】調節機構の変形例を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は回転操作部材の駆動ギアおよび移動部材の従動ギアの模式図であり、(C)は動作伝達部が機能している状態を示し、(D)は動作切り離し部が機能している状態を示している。
【
図33】本発明の実施の形態4に係る調節機構の分解斜視図である。
【
図34】(A)~(D)は、本発明の実施の形態4に係るチャイルドシートの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0041】
まず、調節機構3を備えた育児関連器具の一例について説明する。調節機構3が用いられる育児関連器具としては、たとえば乳母車、チャイルドシート、子守帯、ベビーラック、育児椅子などが挙げられるが、チャイルドシート、乳母車、子守帯適用した例を説明する。
【0042】
<育児関連器具の概要>
図1~
図3を参照して、本実施の形態に係る育児関連器具1の一例について説明する。
【0043】
(チャイルドシートについて)
まずは、育児関連器具1がチャイルドシートである場合について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応し、左右方向(幅方向)は、チャイルドシート1の前方から見た左右方向に対応し、上下方向は、チャイルドシート1の上下方向に対応している。
【0044】
図1(A)を参照して、チャイルドシート1の基本構造としては、一般的なチャイルドシートの構造と同様であってよく、自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体10および座席20を備える。このベース本体10および座席20は、チャイルドシート本体である。チャイルドシート本体は、本実施の形態の「固定部」であり、「本体部」でもある。
【0045】
ベース本体10は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席20を下方から支持する。ベース本体10の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポート(図示せず)が設けられ、ベース本体10の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIX11が設けられている。このISOFIX11は、チャイルドシート本体(ベース本体10)より後方に突出する部分であり、本実施の形態の「可動部」であり、「延出部」である。
【0046】
座席20は、ベース本体10の上側に取り付けられ、ベース本体10に対して回転自在に支持される。座席20上において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。
【0047】
座席20は、座面部21と、座面部21の後方から立ち上がる背もたれ部22と含む。座席20には、子供が着座するため、座面部21は子供の臀部を支持し、背もたれ部22は子供の背部を支持する。座面部21と背もたれ部22とが交わるコーナー部には、クッション構造体が着脱可能に設けられる。
【0048】
背もたれ部22には、座席20に着座した子供の両肩を拘束する一対の肩ベルト23が設けられる。また、座面部21には、座席20に着座した子供の股(両太腿)の間を延びる股ベルト24と、子供の腰を拘束する一対の腰ベルト25とが設けられる。これらのベルト23,24,25は、股ベルト24の先端に設けられるバックル26により、子供の腹部付近で連結される。これらのベルト23,24,25は、いわゆる5点ベルトである。これらのベルト23,24,25は、子供の体を拘束する身体拘束ベルトであり、チャイルドシート本体(座席20)より前方に突出する部分であり、本実施の形態の「可動部」であり、「延出部」である。なお、身体拘束ベルトは、他の育児関連器具においても同様に適用される。
【0049】
このようなチャイルドシート1には、調節機構3が用いられる。調節機構3は、概略として、紐4と、紐4の巻き取りと引き出し(送り出し)を行う調節機構本体5とを備えている。まず、チャイルドシート1への調節機構3の適用について説明する。
【0050】
(ISOFIXについて)
図1(A)~(D)に示すように、本実施の形態のチャイルドシート1の調節機構3は、ISOFIX11の位置の調節に用いられる。
図1(A)に示すように、調節機構3は、チャイルドシート本体(ベース本体10)の前方位置に設けられる。
【0051】
図1(B),(C)に示すように、ISOFIX11は、ISOFIX本体部12と、ISOFIX本体部12を収納可能な収納部13と、ISOFIX本体部12を外方に付勢するバネ部14とを備える。ISOFIX本体部12は、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結され、適当な長さで固定される。
【0052】
図1(C),(D)を参照して、調節機構3によってISOFIX11の位置を調節する方法について説明する。まず、
図1(C)に示すように、ISOFIX11のISOFIX本体部12を収納部13から引き出す。ISOFIX本体部12を乗用自動車の座席シートのアンカーに連結し、チャイルドシート1を座席シートに向かって押し込む。調節機構本体5を操作して、紐4を巻き取る。これにより、チャイルドシート1と乗用自動車の座席シートとを隙間なく接続することができ、チャイルドシート1と乗用自動車の座席シート間隔の微調整を行うことができる。
【0053】
また、ISOFIX本体部12の長さを長くするには、以下の複数の方法が挙げられる。すなわち、ISOFIX自体のロックを解除するとともに、調節機構本体5を操作し、チャイルドシート本体を座席シートから離れる方向に引き出す。他の方法としては、調節機構本体5を操作して、バネ部14により自動的に長くしてもよい。さらに他の方法としては、調節機構本体5を操作して、使用者が手でISOFIX本体部12を引き延ばしてもよい。これにより、簡易な方法でISOFIX11の長さ調節を行うことができる。
【0054】
(肩ベルトの長さ調節について)
図2(A)~(C)に示すように、他の実施の形態のチャイルドシート1Aの調節機構3は、肩ベルト23の長さ調節に用いられる。
図2(A)に示すように、調節機構3は、チャイルドシート本体(座席20)の座面部21の前方位置に固定されている。なお、
図2(B),(C)は、
図2(A)に示すチャイルドシート1から肩ベルト23と調節機構3だけを取り出した図である。
【0055】
肩ベルト23は、一対設けられており、その端部に紐4がそれぞれ固定されている。つまり、紐4は一対設けられ、一対の紐4は一対の肩ベルト23の端部にそれぞれ保持されている。
【0056】
肩ベルト23の長さを調節するには、調節機構3を操作する。具体的には、肩ベルト23の長さを短くするには、
図2(B)に示す状態から、調節機構本体5を操作して、紐4を巻き取り、
図2(C)に示す状態にする。肩ベルト23の長さを長くするには、
図2(C)に示す状態から、調節機構本体5を操作して、肩ベルト23を手で引き出す。これにより、簡易な方法で肩ベルト23の調節を行うことができる。
【0057】
なお、調節機構本体5は、一対の肩ベルト23の端部にそれぞれ保持された一対の紐4を巻き取っていたが、肩ベルト23自体を直接巻き取ってもよい。
【0058】
(肩ベルトの跳ね上げ機構について)
図3(A)~(C)に示すように、他の実施の形態のチャイルドシート1Bの調節機構3は、肩ベルト23の跳ね上げ機構27に用いられる。肩ベルト23の跳ね上げ機構27は、子供をチャイルドシート1Bに乗せるときに、肩ベルト23が邪魔にならないように、肩ベルト23を拘束位置(
図3(B))から開放位置(
図3(C))に跳ね上げる構造である。
【0059】
図3(B)に示すように、肩ベルト23の跳ね上げ機構27は、回動部28と、回動部28を支点に回動可能な跳ね上げ部29とを含む。
図3(C)に示すように、跳ね上げ部29が跳ね上がることで、それに伴って肩ベルト23が跳ね上がる。
図3(A)に示すように、調節機構3は、チャイルドシート本体(座席20)の座面部21の前方位置に固定されている。
図3(B)に示すように、跳ね上げ機構27の回動部28には、紐4の一端部が連結されている。
【0060】
調節機構3によって肩ベルト23の跳ね上げ機構27を操作する方法について説明する。具体的には、肩ベルト23を拘束位置から開放位置に変位させるには、
図3(B)に示す状態から、調節機構本体5を回転して、紐4を巻き取り、
図3(C)に示す状態にする。肩ベルト23を開放位置から拘束位置に変位させるには、
図3(C)に示す状態から、調節機構本体5を操作して、肩ベルト23を下方に押し下げて、紐4を送り出す。これにより、簡易な方法で肩ベルト23の跳ね上げ機構27の操作を行うことができる。
【0061】
以上、調節機構3をチャイルドシート1~1Bに用いた一例について説明したが、上記実施の形態に限定されない。また、
図1~
図3の図面上において、後述する実施の形態1の調節機構3を図示したが、いずれの実施形態の調節機構を用いることができる。
【0062】
なお、子供の股を拘束する股ベルトの長さ調節に調節機構が用いられてもよい。この場合、調節機構の紐4の端部は、股ベルト24の端部に保持される。
【0063】
また、子供の頭を保護するヘッドレスト22aが本体部から延出する延出部である場合、ヘッドレスト22aの形状を調節するために調節機構本体5が用いられてもよい。具体的には、ヘッドレスト22aの形状の調節とは、たとえばヘッドレスト22aの高さを調節することや、立壁22bの幅を調節すること、一対の側壁22cの間隔を調節することである。この場合、ヘッドレスト22aの可動する部分に紐4の一端が連結され、固定部である背もたれ部22の背面に調節機構本体5が固定されていてもよい。
【0064】
また、ベース本体10の前方に設けられるレッグサポートの長さを調節するために調節機構3が用いられてもよい。この場合、レッグサポートの端部に紐4が連結され、固定部であるベース本体10に調節機構本体5が固定されてもよい。
【0065】
(子守帯について)
育児関連器具が子守帯である場合について説明する。子守帯の基本構造としては、一般的な子守帯の構造と同様であってよく、子供を前抱きしたり背負ったりする器具である。
【0066】
子守帯は、子守帯本体と、使用者(たとえば親)の両肩に巻き付く親側肩ベルトと、親の腰に巻き付く親側腰ベルトとを備える。子守帯本体は、子供の背中または腹部を保持する、子守帯の広面積を占める部分であり、本実施の形態の「固定部」であり、「本体部」でもある。親側肩ベルトおよび親側腰ベルトは、子守帯本体から延出して設けられる可動的な部分であり、本実施の形態の「可動部」であり、「延出部」である。このような肩ベルトまたは腰ベルトの長さまたは形状を調節するために、調節機構本体5が設けられる。この場合、肩ベルトまたは親側腰ベルトの端部に紐4の一端が連結され、固定部である子守帯本体の背面に調節機構本体5が固定されていてもよい。
【0067】
また、子供の頭を保護するヘッドレストが子守帯本体(本体部)から延出する延出部である場合、子供の成長に合わせてヘッドレストの高さを調節するために調節機構本体5が用いられてもよい。この場合、ヘッドレストの可動する部分に紐4の一端が連結され、固定部である子守帯本体の背面に調節機構本体5が固定されていてもよい。
【0068】
(その他の育児関連器具について)
以上、調節機構3が用いられる育児関連器具の例として、チャイルドシート、乳母車、子守帯である場合について説明したが、子供が座ったり、寝たりする器具、たとえばベビーラック、育児椅子などが挙げられる。また、上記した実施の形態はあくまで一例であり、育児関連器具の本体部と、本体部から延出する延出部とが設けられ、調節機構がその延出部の位置または形状を調節するためのものであれば、上記した育児関連器具に限定されない。
【0069】
このような育児関連器具に用いられる調節機構3について詳細に説明する。
【0070】
<実施の形態1>
図4~
図9を参照して、実施の形態1における調節機構3について説明する。調節機構3は、育児関連器具の様々な箇所に取り付けられるが、以下の説明では、実施の形態1の説明では、
図4(C),
図5,
図9の紙面上の上下方向を調節機構3の上下方向、紙面上の左右方向を調節機構3の左右方向として説明する。
【0071】
上述のように、調節機構3は、概略として、紐4と、調節機構本体5とを備えている。特に
図4,
図5を参照して、調節機構本体5は、ホルダ30と、回転操作部材40と、移動部材50と、ロック解除部材60と、ロック部材70と、リール80とを備えている。調節機構3は、回転操作部材40で紐4の巻き取りを行い、ロック解除部材60を操作することで巻き取った紐4を引き出す(送り出す)ことができるものである。
【0072】
紐4は、たとえばチャイルドシート本体、子守帯本体などの固定部と、肩ベルトなどの可動部とを連結している。紐4は、リール80に巻かれるものであり、リール80を介して固定部に固定されている。紐4は、一本であってもよいし、複数設けられてもよい。可動部が2つ設けられる場合、一本の紐4の両端を可動部に連結し、その中間部をリール80で巻き取るようにしてもよいし、2本の紐4の一方端を可動部に連結し、他方端を固定部に連結してもよい。なお、リール80は、固定部ではなく、可動部に固定されてもよい。その場合、紐4の両端部は、固定部に連結され、リール80で紐を巻き取ることで、可動部と固定部との幅が縮まるものであってもよい。
【0073】
紐4は、長尺状の部材であり、糸や、化学繊維、金属、紙などを組んだり、編んだり、縫い合せたりしたものを意味し、たとえばワイヤー、ベルトなども含む。
【0074】
図4,
図5を参照して、ホルダ30は、リール80を回転可能に支持する。ホルダ30は、上ホルダ31と、下ホルダ34と、上ホルダ31および下ホルダ34の間に挟まれる仕切り板37とを含む。上ホルダ31は、上面と、上面の外周縁から下方に突出する側面とを含む。上ホルダ31の上面の略中央部には貫通孔32が設けられる。この貫通孔32には、リール80の上端が貫通する。上ホルダ31の側面には、ロック解除部材60の操作部61が貫通する操作穴部33が設けられる。
【0075】
下ホルダ34は、下面と、下面の外周縁から上方に突出する側面とを含む。下面と側面とで囲まれる領域には、リール80を保持する凹部35が設けられる。下ホルダ34の一対の側面には、紐4が貫通する紐穴部36が設けられる。
【0076】
仕切り板37は、平らな矩形形状であり、その略中央部には貫通孔38が設けられる。この貫通孔38は、上ホルダ31の貫通孔32と上下に整列している。貫通孔38には、リール80の上端が貫通する。仕切り板37の上面には、ロック解除部材60を案内するレールが複数設けられる。さらに、仕切り板37の外周縁の一部には、上方に向かって突出する突出部39が取り付けられている。
【0077】
回転操作部材40は、リール80の回転を操作するためのものである。回転操作部材40は、使用者が掴んで回すことができる取っ手の役割を果たす。
図8(A)~(D)に示すように、本実施の形態の回転操作部材40は、ノブの形状であり、上面41と、上面41の外周縁から下方に突出する側面42とを含む。上面41の裏面41aには、下方に向かって突出する駆動ギア部43が設けられる。また、側面42には、作業者が使用しやすいように一定間隔でスリットが設けられていてもよい。
【0078】
なお、回転操作部材40には、折り畳み可能なハンドルが取り付けられていてもよい。ハンドルは、たとえば棒状部材であり、使用時には上方に突出し、不使用時には上面41または側面42に沿うように折り畳まれる形状であることが好ましい。
【0079】
移動部材50は、回転操作部材40の下方に設けられる。移動部材50は、下方が開放する円筒形状であり、上面51と、上面51の外周縁から下方に突出する外周縁52とを含む。上面51には、上方に向かって立ち上がる従動ギア部53が設けられる。この従動ギア部53は、上述した回転操作部材40に設けられる駆動ギア部43と係合する。なお、外周縁52には、リンク部材57と係合するための縦スリットが複数設けられている。
【0080】
図4(C)に示すように、リンク部材57は、全体として円筒状であり、大径部57aと、大径部57aの下方に位置する小径部57bと、大径部57aと小径部57bとの間に位置する段差部57cとを有する。小径部57bは、上ホルダ31の貫通孔32よりも小さい。そのため、リンク部材57は、段差部57cにより上ホルダ31の貫通孔32に保持されている。また、リンク部材57と上ホルダ31との間には、リング58が設けられていてもよい。移動部材50とリンク部材57との間には、付勢部材56が挟まれている。付勢部材56は、たとえばスプリングであり、移動部材50を回転操作部材40に向かう方向に付勢している。
【0081】
リール80は、正逆両方向(一方方向および他方方向)に回転自在である。
図4(C)および
図5を参照して、リール80は、下方から上方に向かって紐保持部81と、鍔部84と、第1連結部85と、第2連結部86とを含む。
【0082】
紐保持部81は、紐4が固定されている部分であり、紐4を巻き取り、送り出す部分である。
図7を参照して、紐保持部81における紐4の取り回しについて説明する。なお、以下の説明において、紐4の巻き取り方向をT、送り出し方向をSで示している。
【0083】
紐保持部81は、紐4を固定する固定部81aと、紐4を沿わせる紐沿わせ部81bと、固定部81aと紐沿わせ部81bとの間に設けられるアール部81cとを有する。固定部81aは、紐保持部81の略中央位置に設けられ、紐4の長手方向中央位置が固定される。固定部81aに固定された紐4は、アール部81cに沿って巻き戻され、紐沿わせ部81bに沿って、下ホルダ34の紐穴部36から調節機構本体5の外方に出ている。
【0084】
紐沿わせ部81bおよびアール部81cは、固定部81aを中心に点対称に位置する。これにより、紐4は、平面視において逆S字形状に紐保持部81に保持される。紐4が巻き戻される部分でアール部81cが形成されているため、紐4はアール部81cの円弧に沿って滑らかに巻き付けられる。そのため、紐4が引っ張られ、紐4に過度の負荷がかかる場合でも、紐4が角部で摩耗することを防止することができる。
【0085】
図4(C)に示すように、鍔部84は、紐保持部81の上方に位置し、仕切り板37の下方に当接する。第1連結部85は、たとえば円筒形状である。第1連結部85は、その直径が仕切り板37の貫通孔38の直径より小さく、貫通孔38を貫通する。さらに、
図6(A),(B)に示すように、第1連結部85は、リール80の回転軸線に対して平行に延びる外周面に係合歯87が設けられる。第2連結部86は、ロック解除部材60の貫通孔65を貫通する。さらに、第2連結部86の上端は、上述したリンク部材57の小径部57bと連結する。これによりリール80はリンク部材57と固定され、リール80の回転とともにリンク部材57も伴回りする。なお、リール80とリンク部材57とは、一体的に形成された部材であってもよい。
【0086】
図5および
図6(A),(B)に示すように、ロック部材70は、一対のロック本体71と、一対のロック本体71にそれぞれ設けられる係合爪72と、一対のロック本体71の穴を貫通する第1ピン73および第2ピン74と、一対のロック本体71を付勢する付勢部75とを含む。
【0087】
ロック本体71は、係合爪72と係合歯87が係合するロック位置(
図6(A))と、係合爪72と係合歯87が係合しないロック解除位置(
図6(B))とに変位可能である。ロック本体71は、リール80を向く端部に係合爪72が形成される。
図5に示すように、ロック本体71は、第1,2ピン73,74を貫通させるピン穴が2つ形成される。この動作は、ロック解除部材60が上下にスライド移動することで行われる。
【0088】
図6(A),(B)に示すように、係合爪72は、リール80の係合歯87に対して直交する方向に変位し、リール80の係合歯87に係合する。係合爪72の角度は、たとえば直角であることが好ましいが、鋭角であってもよい。係合爪72は、リール80とともに回転する係合歯87に係合してリール80の回転を禁止する第1位置と、リール80とともに回転する部分から離れてリール80の回転を許容する第2位置との間を変位可能である。第1ピン73は付勢部75を固定し、ロック解除部材60の第1穴63を貫通する。さらに、第1ピン73は、ロック解除部材60のガイドの役割と、ロック本体71の回転支点の役割を果たす。第2ピン74は、ロック解除部材60の第2穴64を貫通する。付勢部75は、たとえばねじりバネであり、ロック本体71の係合爪72がリール80の係合歯87に係合する方向(ロック位置)に付勢する。ロック部材70の係合爪72とリール80の係合歯87とは、リール80の回転を禁止する「回転ロック機構」である。
【0089】
ロック解除部材60は、リール80の回転禁止状態を解除し、リール80の自由回転を可能とする。つまり、ロック解除部材60を操作することで、リール80で巻き取った紐4を引き出すことが可能となる。
図6(A)は、ロック解除部材60が操作されていない状態であり、リール80に紐4を巻き取れる状態であるが送り出しができない状態である。
図6(B)は、ロック解除部材60が操作されている状態であり、リールから紐4を巻き取れる状態である。ロック解除部材60は、リール80の回転軸線に対して直交する方向に移動することで、リールの回転禁止状態を解除する。
【0090】
図6(A),(B)に示すように、ロック解除部材60は、操作部61と、操作部61に操作によりスライド移動するロック解除本体62と、ロック解除本体62に設けられる第1,2穴63,64、貫通孔65、および凹部66と、付勢部67とを含む。ロック解除部材60が他の部材と別に設けられているため、様々な形状にすることができるとともに、配置する場所が限定されないため、設計上の自由度が高い。
【0091】
操作部61は、ロック部材70の係合爪72を被係合位置にもたらすように操作する。
図5に示すように、操作部61は、上ホルダ31の操作穴部33から外方に突出して、内方に押圧可能に設けられる。ロック解除部材60は、板状であり、第1,2穴63,64は、上下に貫通する穴である。具体的には、第1穴63は、操作方向に延びる長孔である。第2穴64は、略逆L字形状の穴である。第1,2穴63,64は、点対称に設けられ、
図6(A)の紙面上において右上部分と左下部分に設けられる。
【0092】
貫通孔65は、ロック解除本体62の略中央に設けられ、リール80の上端が貫通する。凹部66は、付勢部67を保持する。付勢部67は、たとえばコイルばねである。付勢部67は、仕切り板37の突出部39と凸部66の間に位置する。これにより、ロック解除部材60は、付勢部67により
図6(A)に示す状態に付勢される。なお、付勢部67は、ロック解除部材60とは別の部材であったが、ロック解除本体62に一体的に設けられていてもよいし、上ホルダ31の側面に設けられていてもよい。
【0093】
(ワンウェイクラッチ機構について)
図6を参照して、ワンウェイクラッチ機構について説明する。ワンウェイクラッチ機構は、紐4の巻取り方向へのリール80の回転を許容し、紐の送り出し方向へのリール80の回転を禁止するものである。ワンウェイクラッチ機構とは、一方方向には容易に回転するが、他方向には回転しないか、または一定の荷重を加えないと回転しない機構である。本実施の形態では、
図6(A)において、リール80は紐4を巻き取る巻取方向T(時計回り)には回転するが、送り出し方向S(半時計回り)には回転しない。
【0094】
本実施の形態のウェンウェイクラッチ機構は、リール80に設けられた係合歯87と、仕切り板37に取り付けられ、リール80に係合する係合位置(
図6(A))と、リール80に係合しない被係合位置(
図6(B))との間を変位可能な係合爪72とを含む。
【0095】
リール80の係合歯87は、第1傾斜部87aと第2傾斜部87bとを含む。第1傾斜部87aと第2傾斜部87bとのなす角度は、ロック部材70の係合爪72に合わせて直角であることが好ましい。なお、リール80の係合歯87およびロック部材70の係合歯72は、図示した形状に限定されず、一般的なワンウェイクラッチの形状のように噛み合う形状であればよい。
【0096】
本実施の形態のワンウェイクラッチ機構が設けられることで、リール80は巻取方向Tにのみ回転し、送り出し方向Sには回転しない。これにより、紐4の巻き取りは、回転操作部材40を回転させることで行い、紐4の送り出しは、ロック解除部材60を操作して紐4を引っ張ることで行うことになるため、誤操作を防止することができる。さらに、回転操作部材40の回転では紐4の送り出しができないため、誤って回転操作部材40を操作したとしても、紐4が送り出されることがないため、安全性が向上する。
【0097】
なお、本実施の形態のワンウェイクラッチ機構は、完全に紐の送り出し方向への回転を禁止するものであったが、ある程度の回転を禁止するものであってもよい。本実施の形態のワンウェイクラッチ機構は、後述する駆動ギア部43および従動ギア部53のように、動作伝達部および動作切り離し部が設けられるような構成であってもよい。このようなワンウェイクラッチ機構の場合は、安全性の観点から、荷重がかからない部分の位置または形状を調節するために用いることが好ましい。
【0098】
(動作伝達部および動作切り離し部について)
図8および
図9を参照して、回転操作部材40と移動部材50に設けられる動作伝達部および動作切り離し部について説明する。
【0099】
図8(C)および
図8(D)に示すように、回転操作部材40の裏面には、駆動ギア部43が設けられる。
図8(B)に示すように、駆動ギア部43は、移動部材50側から回転操作部材40の裏面41aに向かって送り出し方向Sに傾斜した第1傾斜部44と、移動部材50側から回転操作部材40の裏面41aに向かって巻取方向Tに傾斜した第2傾斜部45とを含む。裏面41aと第1傾斜部44のなす角度θ44、および、裏面41aと第2傾斜部45のなす角度θ45は、いずれも鋭角であるが、角度θ45は角度θ44よりも大きくなるように設定されている(θ45>θ44)。
【0100】
さらに、
図8(A)に示すように、移動部材50の上面には、従動ギア部53が設けられる。
図8(B)に示すように、従動ギア部53は、回転操作部材40側から移動部材50の上面51に向かって巻取方向Tに傾斜した第1傾斜部54と、移動部材50の上面51から回転操作部材40の裏面41aに向かって送り出し方向Sに向かって傾斜した第2傾斜部55とを含む。上面51と第1傾斜部54の角度θ54、および、上面51と第2傾斜部55の角度θ55は、いずれも鋭角であるが、角度θ55は角度θ54よりも大きくなるように設定されている(θ55>θ54)。また、本実施の形態では、θ44≒θ54、θ44≒θ54であり、駆動ギア部43と従動ギア部53とがしっかりと噛み合うようになっている。
【0101】
回転操作部材40を巻取方向Tに回転させると、傾斜角度の大きい駆動ギア部43の第2傾斜部45と移動部材50の第2傾斜部55とが噛み合い、移動部材50(リール80)も伴周りする。伴周りしている状態は、
図9(A)で示している。
【0102】
紐4を巻き取り終えると、移動部材50(リール80)は回転できなくなるため、駆動ギア部43の第2傾斜部45と移動部材50の第2傾斜部55との噛み合いに一定以上の荷重(高トルク)がかかる。この状態で回転操作部材40を回転させると、駆動ギア部43は、従動ギア部53を乗り越えて、回転操作部材40だけが回転する。つまり、回転操作部材40に一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40の回転運動はリール80に伝達されない。この状態は、
図9(B)で示している。
図9(B)に示すように、駆動ギア部43が従動ギア部53を乗り越えて、移動部材50は、寸法Lだけ下方に下がる。このように、一定以上の荷重がかかった場合は、回転操作部材40が空回りしながら、移動部材50が上下動を繰り返す。
【0103】
つまり、駆動ギア部43の第2傾斜部45と移動部材50の第2傾斜部55とは、通常は、回転操作部材40の回転運動をリールに伝達する「動作伝達部」であり、一定以上の荷重がかかった場合は、リール80の回転運動をリールに伝達しない「動作切り離し部」となる。
【0104】
また、回転操作部材40は、操作性向上のため、紐4を引き出せないようなワンウェイクラッチ構造になっている。回転操作部材40を送り出し方向Sに回転させると、駆動ギア部43の第1傾斜部44と移動部材50の第1傾斜部54とが噛み合うが、リール80が送り出し方向Sに回転しないワンウェイクラッチ機構になっているため(
図6)、回転操作部材40の駆動ギア部43が移動部材50の従動ギア部53を乗り越えて空回りする。つまり、回転操作部材40に一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40の回転運動はリール80に伝達されない。
【0105】
本実施の形態の調節機構3は、動作伝達部および動作切り離し部が設けられており、回転操作部材40を送り出し方向Sに回転させた場合に、空回りするように設定されているため、操作性を向上することができる。また、紐4を巻き取り終えて、さらに回転操作部材40を巻き取り方向Tに回転させた場合に、回転操作部材40が空回りするように設定されているため、きつく紐4を引っ張ることを防止することができるとともに、紐4の巻き取り具合の目安とすることができる。
【0106】
なお、上記実施の形態では、移動部材50の上面41の裏面に駆動ギア部43が設けられ、移動部材50の上面51に従動ギア部53が設けられていたが、従動ギア部53は、リール80の回転軸線に対して直交する方向(左右方向)に設けられていてもよい。具体的には、移動部材50の側面42の裏面に駆動ギア部43が設けられ、移動部材50の従動ギア部53が設けられる構成が挙げられる。これにより、回転操作部材40の回転で一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40が空回りしながら、移動部材50が水平方向(左右方向)への動きを繰り返す。
【0107】
また、上記実施の形態では、移動部材50を回転操作部材40に向かって付勢する付勢部材56が設けられたが、従動ギア部53が設けられている部材に、たとえば樹脂バネなどが一体的に設けられていてもよい。
【0108】
(動作について)
実施の形態1の調節機構3の動作について説明する。紐4を巻き取りたい場合は、回転操作部材40を回転させ、紐4を送り出したい場合は、ロック解除部材60の操作部61を押圧して紐4を引っ張る。
【0109】
具体的には、紐4を巻き取りたい場合は、
図6(A)に示すように、回転操作部材40を巻き取り方向T(時計回り)に回転させる。すると、ワンウェイクラッチ機構により、ロック部材70の係合爪72がリール80の係合歯87の第1傾斜部87aに乗り上がり、次の係合歯87に係合するという動作を繰り返し、リール80も時計回りに回転して、リール80が紐4を巻き取る。
【0110】
また、紐4を送り出したい場合は、
図6(B)に示すように、ロック解除部材60の操作部61をホルダ30に向かって押圧する。すると、ロック解除本体62が
図6(B)の紙面上の上方にスライド移動し、ロック解除本体62の第2穴64に貫通している第2ピン74が移動し、ロック部材70が移動して、ロック部材70の係合爪72とリール80の係合歯87の係合が外れる。これにより、リール80が回転自在となり、紐4を引っ張ることで、紐4を送り出すことが可能となる。
【0111】
(変形例1)
図10を参照して、変形例1における調節機構3Aについて説明する。変形例1における調節機構3Aのリール80Aは、上記実施の形態の回転操作部材40と移動部材50とリンク部材57とリール80とが一体的に形成された部材である。この変形例1に係る調節機構3Aは、回転操作部材40、移動部材50、およびリンク部材57が不要となるため、部品点数を軽減することができ、より簡易な構成にすることができる。なお、この変形例では、回転操作部材40と移動部材50とが一体に形成されるため、動作伝達部および動作切り離し部は設けられない。
【0112】
(変形例2)
図11(A),(B)を参照して、変形例2における調節機構3Bについて説明する。
図11(A)は、ロック解除部材60を操作していない状態を示す図であり、
図11(B)は、ロック解除部材60を操作した状態を示す図である。
【0113】
変形例2における調節機構3Bの係合爪72は、上記実施の形態のロック解除部材60に設けられていてもよい。具体的には、ロック解除部材60Bの貫通孔65Bの外周縁において、その貫通孔65Bの内方に向かって突出する係合爪72Bを設ける。これにより、ロック解除部材60Bの操作部61を押圧することで、リール80の係合歯87と係合爪72の係合が解除され、リール80の回転禁止状態が解除される。この変形例3における調節機構3Bにおいても、ロック部材70が不要となるため、部品点数を軽減することができ、より簡易な構成にすることができる。
【0114】
<実施の形態2>
図12~
図18を参照して、実施の形態2における調節機構3Cについて説明する。実施の形態1で示した調節機構3との相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1と本実施の形態とは、概略としてロック解除部材60Cおよびワンウェイロック機構において異なる。調節機構3は、育児関連器具の様々な箇所に取り付けられるが、以下の説明では、
図12(C)および
図13の紙面上の上方を調節機構3Cの上方、紙面上の下方を調節機構3Cの下方として説明する。
【0115】
調節機構3Cは、概略として、紐4と、調節機構本体5Cとを備える。特に
図12,13を参照して、調節機構本体5Cは、ホルダ30Cと、回転操作部材40Cと、移動部材50Cと、ロック解除部材60Cと、ロック部材70Cと、リール80Cとを備えている。調節機構3Cは、回転操作部材40Cで紐4の巻き取りを行い、ロック解除部材60Cを操作することで巻き取った紐4を引き出す(送り出す)ことができるものである。
【0116】
ホルダ30Cは、上ホルダ31Cと、下ホルダ34Cとを含む。上ホルダ31Cは、その上面の略中央部に貫通孔32Cが設けられる。この貫通孔32Cには、回転操作部材40Cが貫通する。上ホルダ31Cの側面には、紐4が貫通する穴部33Cが設けられる。下ホルダ34Cは、その略中央部にロック部材70Cを保持する凹部35が設けられる。
【0117】
回転操作部材40Cは、リール80Cの回転を操作するためのものである。回転操作部材40の上面41Cと側面42とが交わる角部には、作業者が使用しやすいように一定間隔で切欠きが設けられていてもよい。また、回転操作部材40Cは、その上面41Cの略中央部分に貫通孔46Cが設けられる。この貫通孔46Cには、ロック解除部材60Cが貫通する。また、
図17(C),(D)に示すように、上面41Cの裏面には、下方に向かって突出する駆動ギア部43が設けられる。
【0118】
図13に示すように、移動部材50Cは、回転操作部材40Cの下方に設けられる。移動部材50Cの上面51Cには、ロック解除部材60Cのロック解除本体62Cを貫通する穴部が設けられている。移動部材50Cの外周縁52には、上方に向かって立ち上がる従動ギア部53が設けられる。この従動ギア部53は、上述した回転操作部材40Cの駆動ギア部43と係合する。
【0119】
図12(C)に示すように、リンク部材57Cは、底部57aCと、底部57aCから上方に立ち上がる側部57bCとを有する。移動部材50Cとリンク部材57Cとの間には、付勢部材56が挟まれている。付勢部材56は、たとえばスプリングであり、移動部材50Cを回転操作部材40Cに向かう方向に付勢している。
【0120】
リール80Cは、紐保持部81Cと、鍔部84Cとを含む。紐保持部81Cは、鍔部84Cの上方に設けられる。
図16を参照して、紐保持部81Cにおける紐4の取り回しについて説明する。本実施の形態の紐保持部81Cと実施の形態1の紐保持部81との異なる点は、紐4を保持する箇所である。実施の形態1の紐4は、紐保持部81の平面視の略中央位置に設けられる固定部81aの1か所で固定されていた。本実施の形態の紐4は、紐保持部81Cの平面視の略中央位置よりも上方および下方位置に設けられる2カ所の固定部81aCで固定されている。この固定部81aCは、切込み部であり、紐4の端部を挟み込める形状になっている。本実施の形態では、1本の紐ではなく、2本の紐4が設けられることになる。
【0121】
図12(C)に示すように、鍔部84Cは、回転軸線に対して直交する方向に延び、下ホルダ34Cの上方に当接する。
図15(C)に示すように、鍔部84Cの裏面には、係合歯87Cが設けられる。
【0122】
図12(C)および
図15(C)に示すように、ロック部材70Cは、ロック本体71Cと、ロック本体71Cの上面に設けられる係合爪72Cと、ロック本体71Cを付勢する付勢部材75Cとを含む。ロック本体71Cは、係合爪72Cと係合歯87Cが係合する係合位置(
図14(A))と、係合爪72Cと係合歯87Cが係合しない非係合位置(
図14(B))とに変位可能である。係合歯87Cは、リール80Cの回転軸線に対して直交する方向にのびる上面に設けられている。ロック部材70Cの係合爪72Cとリール80Cの係合歯87Cとは、リール80Cの回転を禁止する「回転ロック機構」である。
【0123】
ロック解除部材60Cは、リール80Cの回転禁止状態を解除し、リール80Cの自由回転を可能とする。つまり、ロック解除部材60Cを操作することで、リール80Cで巻き取った紐4を引き出すことが可能となる。
図14(A)は、ロック解除部材60Cが操作されていない状態であり、リール80Cに紐4を巻き取れる状態であるが送り出しができない状態である。
図14(B)は、ロック解除部材60Cが操作されている状態であり、リール80Cから紐4を送り出しができる状態である。ロック解除部材60Cは、リール80Cの回転軸線に対して平行な方向に移動することで、リール80Cの回転禁止状態を解除する。
【0124】
これらの図を参照して、ロック解除部材60Cは、使用者が操作する操作部61Cと、操作部61Cに操作により上下方向にスライド移動し、上下方向に棒状に延びるロック解除本体62Cとを含む。ロック解除部材60Cは、ロック部材70Cの上方に当接している。これにより、ロック解除部材60Cは、付勢部材75Cにより、常にロック解除位置(上方)に付勢されている。
【0125】
(ワンウェイクラッチ機構について)
図15を参照して、ワンウェイクラッチ機構について説明する。上記実施の形態では、ワンウェイクラッチ機構は、ロック部材70Cが回転軸線に対して直交する方向に移動することで行われたが、本実施の形態では、ロック部材70Cが回転軸線に対して平行な方向に移動することで行われる。
【0126】
本実施の形態では、ウェンウェイクラッチ機構は、リール80Cに設けられた係合歯87Cと、ロック部材70Cに設けられた係合爪72Cとの係合により行われる。係合爪72Cは、リール80Cとともに回転する係合歯87Cに係合してリール80Cの回転を禁止する第1位置と、リール80Cとともに回転する部分から離れてリール80Cの回転を許容する第2位置との間を変位可能である。リール80Cの係合歯87Cは、第1傾斜部87aCと第2傾斜部87bCとを含む。第1傾斜部87aCと第2傾斜部87bCとのなす角度は、たとえば直角であることが好ましい。また、ロック部材70Cの係合爪72Cは、係合歯87Cの形状に合わせて直角であることが好ましい。係合爪72Cは係合歯87Cに対して直交する方向に変位する。
【0127】
(動作伝達部および動作切り離し部について)
図17,
図18を参照して、回転操作部材40Cと移動部材50Cに設けられる動作伝達部および動作切り離し部について説明する。動作伝達部および動作切り離し部については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、図面を付して簡単に説明する。
【0128】
図17(C),(D)に示すように、回転操作部材40Cの上面41Cの裏面41aCには、駆動ギア部43が設けられる。
図17(A)に示すように、移動部材50の上面には、従動ギア部53が設けられる。
【0129】
図17(B)に示すように、回転操作部材40Cを巻き取り方向Tに回転させて、駆動ギア部43と従動ギア部53が噛み合って回転する場合には、回転操作部材40Cの回転に合わせて、移動部材50C(リール80C)も伴周りする。伴周りしている状態は、
図18(A)で示している。
【0130】
さらに、回転操作部材40Cを巻き取り方向Tに回転し続け、紐4を巻き取り終えると、移動部材50C(リール80C)は回転できなくなる。その場合に、回転操作部材40Cをさらに巻取方向Tに回転し続けると、駆動ギア部43従動ギア部53との噛み合いに一定以上の荷重がかかり、
図18(B)に示すように、駆動ギア部43は、従動ギア部53を乗り越えて、回転操作部材40Cだけが回転する。つまり、回転操作部材40Cに一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40Cの回転運動をリール80Cに伝達しない。この状態は、
図18(B)で示している。
図18(B)に示すように、駆動ギア部43が従動ギア部53を乗り越えて、移動部材50は、寸法Lだけ下方に下がる。このように、一定以上の荷重がかかった場合は、回転操作部材40が空回りしながら、移動部材50が上下動を繰り返す。
【0131】
また、回転操作部材40Cは、操作性を向上させるため、紐4を引き出せないようなワンウェイクラッチ構造になっている。回転操作部材40Cを送り出し方向Sに回転すると、駆動ギア部43が従動ギア部53部を乗り越えて空回りする。つまり、回転操作部材40Cに一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40Cの回転運動をリール80Cに伝達しない。
【0132】
(動作について)
実施の形態2の調節機構3Cの動作について説明する。紐4を巻き取りたい場合は、回転操作部材40Cを回転し、紐4を送り出したい場合は、ロック解除部材60Cを押圧して紐4を引っ張る。
【0133】
具体的には、紐4を巻き取りたい場合は、回転操作部材40Cを巻き取り方向に回転させる。
図14(A),
図15(B)に示すように、リール80Cの係合歯87Cとロック部材70Cの係合爪72Cとは係合しているものの、ワンウェイクラッチ機構により、リール80Cの係合歯87Cがロック部材70Cの係合爪72Cに乗り上がり、次の係合歯87Cに係合するという動作を繰り返し、リール80Cが時計回りに回転して、リール80Cが紐4を巻き取る。
【0134】
紐4を送り出したい場合は、
図14(B)に示すように、ロック解除部材60Cの操作部61Cを下方に向かって押圧する。すると、ロック解除本体62Cが移動部材50Cを下方に移動させて、ロック部材70Cの係合爪72Cとリール80Cの係合歯87Cの係合が外れる。これにより、リール80Cが回転自在となり、紐4を引っ張ることで、紐4を送り出すことが可能となる。
【0135】
本実施の形態では、回転操作部40CCとロック解除部材60Cが同じ位置に設けられているものの、ロック解除部材60Cは回転動作、操作部61Cは上下方向の移動動作で操作方向が異なるため、操作性は向上するとともに、誤操作も防止することができる。
【0136】
(変形例1)
図19を参照して、変形例1における調節機構3Dについて説明する。調節機構3Dは、上記実施の形態のロック解除部材60Cとロック部材70Cが一体的に形成された部材であってもよい。つまり、ロック解除部材60Dは、リール80Cの回転をロックまたはロック解除する機能を備えている。ロック解除部材60Dを操作することで、ロック解除部材60D自体が下方に移動し、リール80Cが回転自在となる。これにより、この変形例1に係る調節機構3Dは、上記実施の形態のロック解除部材60Cとロック部材70Cが一体成型されるため、部品点数を軽減することができ、より簡易な構成にすることができる。
【0137】
(変形例2)
図20を参照して、変形例2における調節機構3Eについて説明する。調節機構3Eは、上記実施の形態の回転操作部材40Cとリール80Cが一体的に形成された部材であってもよい。つまり、リール80E自体を回転させて紐4を巻き取るようにしてもよい。これにより、この変形例2に係る調節機構3Eは、回転操作部材40Cとロック部材70Cが一体成型されるため、部品点数を軽減することができ、より簡易な構成にすることができる。なお、この変形例では、実施の形態2の回転操作部材40Cと移動部材50Cとが一体に形成されるため、動作伝達部および動作切り離し部は設けられない。
【0138】
<実施の形態3>
図21~
図31を参照して、実施の形態3における調節機構3Fについて説明する。実施の形態1,2で示した調節機構3,3Cとの相違点のみ詳細に説明する。実施の形態1と本実施の形態とは、様々な相違点はあるが、概略としてロック解除部材60Fおよびロック部材70Fにおいて異なる。なお、調節機構3Fは、育児関連器具の様々な箇所に取り付けられるが、以下の説明では、
図21(C)および
図22の紙面上の上下方向を調節機構3Fの上下方向、紙面上の左右方向を調節機構3Fの左右方向として説明する。
【0139】
調節機構3Fは、概略として、紐4と、調節機構本体5Fとを備える。特に
図21,
図22を参照して、調節機構本体5Fは、ホルダ30Fと、回転操作部材40F、移動部材50Fと、ロック解除部材60Fと、ロック部材70Fと、リール80Fとを備えている。調節機構3Fも上記した実施形態と同様に、回転操作部材40Fで紐4の巻き取りを行い、ロック解除部材60Fを操作することで巻き取った紐4を引き出す(送り出す)ことができるものである。
【0140】
ホルダ30Fは、上ホルダ31Fと、下ホルダ34Fとを含む。
図22,
図23に示すように、上ホルダ31Fは、その上面において、左寄りに設けられる貫通孔32Fと、貫通孔32Fの斜め上下方向に対向して設けられる一対の長孔32fFとを有する。
【0141】
上ホルダ31Fの貫通孔32Fには、上方からリンク部材57Fの一対の脚部57cFが貫通し、下方からロック部材70Fの係合爪73F,93Fが貫通する。
図23を参照して、貫通孔32Fの外周縁には、穴の内方に向かって突出するリブ32aFが設けられている。リブ32aFは、円弧部32bFと、円弧部32bFに沿って一定間隔で設けられる係合歯32cFとを含む。係合歯32cFは、リール80Fの周方向に沿うように上ホルダ31Fの貫通孔32Fの内周面に設けられる。係合歯32cFは、第1傾斜部32dFと第2傾斜部32eFとを含む。第1傾斜部32dFは円弧部32bFに対して略直角であり、第2傾斜部32eFは円弧部32bFに対して鈍角となるように形成されている。ロック部材70Fの係合爪73F,93Fと上ホルダ31Fの係合歯32cFとは、リール80の回転を禁止する「回転ロック機構」である。
【0142】
図21(A)および
図22に示すように、上ホルダ31Fの対向する一対の側面には、紐4が貫通する紐穴部33Fがそれぞれ設けられる。一対の長孔32fFは、貫通孔32Fの円弧形状に沿う形状である。長孔32fFには、後述する第2解除部材64Fのネジ穴68dFが貫通する。
【0143】
図22に示すように、下ホルダ34Fは、下蓋の役割を果たし、たとえば矩形形状の板状部材である。下ホルダ34Fの4つの角部には、脚が設けられていてもよい。
【0144】
回転操作部材40Fは、リール80Fの回転を操作するためのものである。
図28(A)および
図29(A)に示すように、回転操作部材40Fは、その上面41の略中央部分に貫通孔46Fが設けられる。この貫通孔46Fには、ネジ47Fが貫通し、移動部材50Fを上下移動可能に支持する。また、
図28(C)に示すように、上面41の裏面41aには、下方に向かって突出する駆動ギア部43が設けられる。
【0145】
特に
図28(A),(B)に示すように、移動部材50Fは、回転操作部材40Fの下方に設けられる。移動部材50Fには、上面51aFから下方に凹む従動ギア部53Fが設けられる。従動ギア部53Fは、上述した回転操作部材40Fの駆動ギア部43と係合する。
【0146】
図29(A)に示すように、リンク部材57Fは、上方部分57aFと、下方部分57bFとを含む。上方部分57aFは、上方が開放する筒状である。上方部分57aFは、その内部に移動部材50Fおよび付勢部材56を保持する。下方部分57bFは、下方に向かって突出する一対の脚部57cFを含む。一対の脚部57cFは、リール80Fと連結する。これにより、リンク部材57Fとリール80Fとは固定され、リンク部材57Fの回転がリール80Fの回転に直結する。
【0147】
図22,
図27に示すように、リール80Fは、紐保持部81Fと、紐保持部81Fを回転自在に保持する鍔部84Fとを含む。なお、
図27(B)において、紐4の巻き取り方向Tおよび送り出し方向Sを矢印で示している。紐保持部81Fにおける紐4の取り回しは、実施の形態1の紐保持部81と略同一である。本実施の形態では紐4をリール80Fに固定する固定部は設けられていないが、実施の形態1と同様に面視の略中央位置で固定されていてもよい。また、実施の形態1では紐4の折り返し箇所にのみアール部81cが設けられ、左右対称対称な形状ではなかったが、本実施の形態では、左右対称な形状であり、紐4が折り返されていない箇所でもアール部81cFが設けられていてもよい。
【0148】
図22に示すように、リール80Fの鍔部84Fは、回転軸線に対して直交する方向に延びている。鍔部84Fは、紐保持部81Fの上方に位置し、リンク部材57Fの脚部57cFと連結する。つまり、リール80Fは、リンク部材57Fと連結され、リンク部材57Fの回転とともにリール80Fも回転する。
【0149】
図22~
図26を参照して、ロック部材70Fについて説明する。以下の説明において、特に
図24(A)を参照して、本実施の形態のロック部材70Fは、上スライド部材71Fと、上スライド部材71Fに重なって設けられる下スライド部材91Fと、上スライド部材71Fと下スライド部材91Fの間に設けられるスプリング90Fとを含む。
【0150】
上スライド部材71Fは、スライド本体部72Fと、スライド本体部72Fから上方に向かって突出する係合爪73Fと、スライド本体部72Fから下方に向かって突出する支持部74Fと、スライド本体部72Fに形成される第1切込み穴77Fと、第1切込み穴77Fから分岐する第1穴75Fおよび第2穴76Fとを含む。
【0151】
下スライド部材91Fは、上スライド部材71Fと略左右対称に設けられる。下スライド部材91Fは、スライド本体部92Fと、スライド本体部92Fから上方に向かって突出する係合爪93Fと、スライド本体部92Fから下方に向かって突出する支持部94Fと、スライド本体部92Fに形成される第1切込み穴97Fと、第1切込み穴97Fから分岐する第1穴95Fおよび第2穴96Fとを含む。係合爪73F,93Fは、上述した上ホルダ31の貫通孔32Fを貫通する。係合爪73F,93Fは、上述した係合歯32cFに対して水平方向に変位する。また、下スライド部材91Fの紙面上の上方には、上スライド部材71Fの左右方向のスライドを案内するために、左右方向に延びるガイド部98Fが設けられている。
【0152】
上スライド部材71Fと下スライド部材91Fが上下に重なることで第1穴75F,95Fが上下に貫通し、第2穴76F,96Fが上下に貫通する。
図24(B),(C)に示すように、上スライド部材71Fが右方にスライドし、下スライド部材91Fが左方にスライドすることで、第1穴75F,95Fおよび第2穴76F,96Fの形状が変化し、小さくなるする。
【0153】
上スライド部材71Fの支持部74Fと下スライド部材91Fの支持部94Fには、スプリング90Fが挟まれる。これにより、上スライド部材71Fと下スライド部材91Fは、常に離れる方向に付勢される。
【0154】
次に、ロック部材70Fの動作について説明する。
図22および
図25に示すように、ロック部材70Fの第1穴75F,95Fおよび第2穴76F,96Fには、リンク部材57Fの脚部57cFが貫通する。リンク部材57Fの脚部57cFは、リール80Fにネジで連結されている。ロック部材70Fは、リンク部材57Fとリール80Fの間に挟まれている。これにより、リンク部材57Fを
図25(A)の巻取方向Tに回転させると、
図25(C)に示すように、リンク部材57Fの脚部57cFが上スライド部材71Fの第1穴75Fを右方に押し、リンク部材57Fの脚部57cFが下スライド部材91Fの第2穴96Fを左方に押す。これにより、上スライド部材71Fが右方に移動し、下スライド部材91Fが左方に移動し、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fが内方に移動する。
【0155】
図26(A)~(D)は、
図21(C)のXXVI線から見た断面図である。簡単に言うと、
図25(B)~(D)の上方にさらに上ホルダ31Fを重ねた状態を示す図である。ロック部材70Fの係合爪73F,93Fは、リンク部材57Fの回転により、その間隔は広がったり縮まったりしながら回転する。具体的には、
図26(A)に示す状態で巻取方向Tに回転すると、
図29(B)に示すようにロック部材70Fの係合爪73F,93Fが互いに近づく。さらにリンク部材57Fを回転すると、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fは、次の係合歯32cFに係合する。このように、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fは、たとえば45度ずつ回転しながら、紐4を巻き取る。なお、ワンウェイクラッチ機構であるため、紐4を送り出す送り出し方向Sには回転しない。
【0156】
図22,
図30,
図31を参照して、ロック解除部材60Fについて説明する。
図31(A)は、ロック解除部材60が操作されていない状態であり、
図31(B)は、ロック解除部材60が操作されている状態である。
図31(A),(B)の左側の図は、上ホルダ31および第2解除部材64Fだけを取り出して示した平面図であり、右側の図は、第1解除部材61Fをさらに重ねて、
図26に示す部分を透視した図面である。ロック解除部材60は、リール80Fの回転軸線に対して直交する方向に移動することで、リールの回転禁止状態を解除する。なお、
図30,
図31において、理解を容易にするために、第1解除部材64Fに薄墨を付して示している。
【0157】
図22を特に参照して、ロック解除部材60Fは、使用者が操作する第1解除部材61Fと、第1解除部材61Fの操作により上下方向にスライド移動する第2解除部材64Fと、第2解除部材64Fをロック解除方向とは反対の方向に付勢する付勢部69Fとを含む。第1解除部材61Fと第2解除部材64Fとは、一体的に動くようになっている。付勢部69Fは、たとえばコイルばねであり、第1解除部材61Fと第2解除部材64Fとを離れる方向に付勢する。なお、第1解除部材61Fと第2解除部材64Fと付勢部69Fは、別の部材で構成されず、一体的に設けられていてもよい。
【0158】
第1解除部材61Fは、ロック解除本体62Fと、ロック解除本体62Fの略中央に設けられる貫通孔63Fとを含む。ロック解除本体62Fには、貫通孔一対のネジ穴62aFが設けられる。ロック解除本体62Fは、平面視略円形状であるが、一部分が突出して操作部となっている。貫通孔63Fには、上述したリンク部材57Fの一対の脚部57cFが貫通する。
【0159】
図22および
図30を参照して、第2解除部材64Fは、解除本体65Fと、解除本体65Fから突出する突出部66Fとを含む。解除本体65Fには、略中央部において貫通孔67Fが形成され、貫通孔67Fの周囲には、一対のネジ穴68dFが設けられる。貫通孔67Fには、上述したリンク部材57Fの一対の脚部57cFが貫通する。一対のネジ穴68dFには、第1解除部材61Fのネジ穴62aFを貫通したネジが貫通する。突出部66Fには、穴部66aFが設けられる。この穴部aFには、付勢部材69Fの端部に位置するピン部材69aFが貫通する。これにより、ロック解除部材62Fは、ロック解除方向とは反対の方向に付勢される。
【0160】
次に、ロック解除部材60Fの動作について説明する。
図31(A)に示すように、ロック解除部材60Fの第1解除部材61Fを反時計回りに(約45度程度)回転させると、第2解除部材64Fも同様に反時計回りに回転する。
図31(B)に示すように、上ホルダ31Fのリブ32aFの係合歯32cFが第2解除部材64Fの円弧部67aFで覆われ、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fが内方に移動し、ロック部材70Fに連結されているリール80Fが回転自在となる。このように、ロック解除部材60Fをリール80Fの回転軸線に対して直交する方向に移動させることで、ロック部材70Fと上ホルダ31Fとの係合を解除することが可能となる。
【0161】
(ワンウェイクラッチ機構について)
図26を参照して、ワンウェイクラッチ機構について説明する。本実施の形態のワンウェイクラッチ機構は、実施の形態1と同様に、ロック部材70Fが回転軸線に対して直交する方向に移動することで行われる。
【0162】
本実施の形態のウェンウェイクラッチ機構は、上ホルダ31Fに設けられた係合歯32cFと、ロック部材70Fに設けられた係合爪73F,93Fとの係合により行われる。係合爪73F,93Fは、係合歯32cFに対して直交する方向に変位する。上ホルダ31Fの係合歯32cFは、第1傾斜部32dFと第2傾斜部32eFとを含む。第1傾斜部32dFと円弧部32bFとのなす角度は、たとえば直角であることが好ましい。また、第2傾斜部32eFと円弧部32bFとのなす角度は、たとえば鈍角であることが好ましい。これにより、リール80Fは巻き取り方向Tには回転可能であるが、送り出し方向Sには回転できない構造となる。
【0163】
(動作伝達部および動作切り離し部について)
図25および
図26を参照して、回転操作部材40Fと移動部材50Fの間に設けられる動作伝達部および動作切り離し部について説明する。動作伝達部および動作切り離し部については、上述した実施の形態1とほぼ同じであるため、図面を付して、説明は簡単に済ませることする。
【0164】
図28(C)に示すように、回転操作部材40Fの裏面には、駆動ギア部43が設けられる。
図28(A)に示すように、移動部材50Fの上面には、従動ギア部53Fが設けられる。
【0165】
図28(A)に示すように、駆動ギア部43と従動ギア部53Fが噛み合って回転する場合には、回転操作部材40Fの回転に合わせて、移動部材50F(リール80F)も伴周りする。さらに回転操作部材40Fを巻き取り方向に回転し続け、紐4を巻き取り終えると、移動部材50F(リール80F)は回転できなくなり、駆動ギア部43Fと従動ギア部53Fとの噛み合いに一定以上の荷重がかかった場合に、回転操作部材40Fをさらに回転させると、
図28(B)に示すように、駆動ギア部43は、従動ギア部53Fを乗り越えて、回転操作部材40Fだけが回転する。つまり、回転操作部材40Fに一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40Fの回転運動をリール80Cに伝達しない。
【0166】
また、回転操作部材40Fは、操作性向上のため、紐4を引き出せないようなワンウェイクラッチ構造になっている。回転操作部材40Fを送り出し方向に回転すると、駆動ギア部43が従動ギア部53Fを乗り越えて空回りする。つまり、回転操作部材40Fに一定以上の荷重がかかった場合、回転操作部材40Fの回転運動をリール80Cに伝達しない。
【0167】
(動作について)
実施の形態3の調節機構3Fの動作について説明する。紐4を巻き取りたい場合は、回転操作部材40Fを回転し、紐4を送り出したい場合は、ロック解除部材60Fを回転させて紐4を引っ張る。
【0168】
具体的には、紐4を巻き取りたい場合は、
図25(A)に示すように、回転操作部材40F(リール80F)を時計回りに回転させる。すると、
図26(A)~(D)に示すように、ワンウェイクラッチ機構により、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fと上ホルダ31Fの係合歯32cFとの係合が外れ、回転して次の係合歯32cFに係合するという動作を繰り返し、リール80Fも時計回りに回転して、リール80Fが紐4を巻き取る。
【0169】
紐4を送り出したい場合は、
図31(A),(B)に示すように、ロック解除部材60Fの第1解除部材61Fを半時計周り(矢印方向)に回転させる。すると、第2解除部材64Fが回転して、上ホルダ31Fの係合歯32cFに第2解除部材62Fの円弧状部67aFが重ね合わさり、ロック部材70Fの係合爪73F,93Fが上ホルダ31Fの係合歯32cFに係合しない。これにより、リール80Fの回転自在となり、紐4を引っ張ることで、紐4を送り出すことが可能となる。
【0170】
なお、本実施の形態において、ロック解除部材60Fとロック解除部材70Fとは別の部材で形成されていたが、上述した実施形態と同様、一体的に形成されていてもよい。
【0171】
(変形例1)
図32を参照して、変形例1における調節機構3Gについて説明する。調節機構3Gは、動作伝達部および動作切り離し部の構成について異なっている。実施の形態3では、移動部材50Fの下方に付勢部材56が設けられ、移動部材50Fが回転操作部材40Fに向かって付勢されていたが、本変形例では、回転操作部材40Gが移動部材50Gに向かって付勢されている。
【0172】
具体的には、調節機構3Gは、回転操作部材40Fの上面に設けられる凹部46Gに嵌る蓋部48Gをさらに備える。回転操作部材40Fの凹部46Gと蓋部48Gとの間には、回転操作部材40Gを下方に付勢する付勢部材56Gが設けられている。これにより、一定の荷重を超えた状態で回転操作部材40Gを回転させると、回転操作部材40Gの駆動ギア部43が移動部材50Gの従動ギア部53を乗り越えて回転する。本変形例では、回転操作部材40Fが空転する際には、回転操作部材40Fは上下に動く。
【0173】
<実施の形態4>
図33,
図34を参照して、実施の形態4における調節機構3Hについて説明する。実施の形態2で示した調節機構3Cとの相違点のみ詳細に説明する。本実施の形態は、回転操作部材が設けられておらず、リール80Cを巻き取り方向に付勢する付勢部材110Hが設けられている点において異なる。調節機構3Hは、育児関連器具の様々な箇所に取り付けられるが、以下の説明では、
図33の紙面上の上方を調節機構3Hの上方、紙面上の下方を調節機構3Hの下方として説明する。
【0174】
本実施の形態の調節機構3Hは、紐4と、ホルダ30Cと、ロック解除部材60Cと、ロック部材70Cと、リール80Cと、付勢部材110Hとを備えている。調節機構3Hは、弛んだ紐4を自動的に巻き取ることができるものである。
【0175】
付勢部材110Hの付勢力は、可動部が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されている。付勢力については、動作の説明で詳細に説明する。付勢部材110Hは、たとえば渦巻き状に巻かれたゼンマイバネである。付勢部材110Hは、径方向内側に位置する一端がリール80Cに固定されており、径方向外側に位置する他端は上ホルダ31Cに固定されている。これにより、リール80Cは常に巻取方向に向かって付勢されている。
【0176】
なお、本実施の形態では、付勢部材110Hとしてゼンマイバネを用いたが、付勢部材110Hは、リール80Cを紐4の巻き取り方向に回転させるように付勢する部材であればよく、たとえば他のばねであってもよいし、弾性的な付勢力を発揮する他の付勢部材を用いてもよい。
【0177】
上述のように、ロック部材70Cは、紐4の巻取り方向へのリール80Cの回転を許容し、紐4の送り出し方向へのリール80Cの回転を禁止するワンウェイクラッチ機構である。ワンウェイクラッチ機構は、上述した駆動ギア部43および従動ギア部53のように、動作伝達部および動作切り離し部が設けられるような構成であってもよいし、実施の形態2で説明したものと同様であってもよい。
【0178】
ロック部材70Cの係合爪72Cは、リール80Cの回転をロックするリールロック爪である。リールロック爪は、リール80Cとともに回転する部分に係合してリール80Cの回転を禁止する第1位置と、リール80Cとともに回転する部分から離れてリール80Cの回転を許容する第2位置との間を変位可能である。この動作は、ロック部材70Cが上下にスライド移動することで行われ、
図14(A),(B)で示している。
【0179】
ロック部材70Cを上下にスライド移動させることは、ロック解除部材60Cで行われる。ロック解除部材60Cは、ロック部材70Cを第2位置にもたらし、リール80Cの自由回転を可能とする部材である。
【0180】
図33を参照して、実施の形態4における調節機構3Hが用いられる育児関連器具としてのチャイルドシート1Cの動作について説明する。本実施の形態で用いられるチャイルドシート1Cの基本的な構成は、
図3のチャイルドシート1Bと略同一である。
【0181】
図34に示すように、チャイルドシート1Cの背もたれ部22の上端には、調節機構本体5Hが設けられる。紐4は、肩ベルト23の跳ね上げ機構27の回動部28に取り付けられている。肩ベルト23の跳ね上げ機構27は、子供を乗せるときに肩ベルト23が邪魔にならないように、肩ベルト23を座席20が開放されるように固定させるものである。
【0182】
図34(A)の状態からバックル26の連結を解除して、
図34(B)に示すように、肩ベルト23を上方に移動させると、回動部28に連結している紐4が弛む。調節機構3Hには、リール80Cを巻き取り方向に付勢している付勢部材110H(
図33)が設けられている。付勢部材110Hは、肩ベルト23および跳ね上げ機構27がその自重によって鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さくなるように設定されている。言い換えれば、付勢部材110Hは、肩ベルト23および跳ね上げ機構27が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力が掛からなくなれば、リール80Cを回転させ、紐4を巻き取る。
【0183】
付勢部材110Hは、巻き取り方向に付勢されているため、
図34(C)に示すように、弛んだ紐4はリール80Cに巻き取られる。これにより、使用者は何の作業をすることなく弛んだ紐4を巻き取られるため、子供の乗せ下ろしをスムーズに行うことができる。
【0184】
子供をチャイルドシート1Cに乗せた後は、
図34(D)に示すように、ロック解除部材60Cの操作部61Cを操作して、ロック部材70Cとリール80Cのロックを解除する。付勢部材110Hの付勢力は、肩ベルト23および跳ね上げ機構27が鉛直方向下方に移動しようとする付勢力よりも小さいため、肩ベルト23および跳ね上げ機構27の重みで自動的に紐4が引き出される。最後に、肩ベルト23をバックル26で連結すればよい。
【0185】
なお、本実施の形態では、可動部は、肩ベルト23の跳ね上げ機構27および肩ベルト23であるとしたが、自重によって鉛直方向下方に移動しようとする部材であればよい。たとえば、乳母車のリクライニング機構において、背もたれ部が可動部であってもよいし、子守帯のヘッドレストの高さ調節において、ヘッドレスト部が可動部であってもよい。
【0186】
また、可動部は、鉛直方向下方に移動するとしたが、水平面に対して垂直な鉛直下方だけでなく、鉛直方向に対して傾斜した下方であってもよい。さらに、可動部が鉛直方向下方に移動しようとする力は、可動部自身の自重だけでなく、たとえばバネなどで可動部を鉛直方向下方に移動しようとする付勢力なども含まれていてもよい。
【0187】
また、本実施の形態では、ロック解除部材60Cとロック部材70Cとは別の部材であったが、ロック解除部材60Cとロック部材70Cは一体的に設けられていてもよい。
【0188】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0189】
1,1A,1B,1C チャイルドシート(育児関連器具)、3,3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H 調節機構、4 紐、10 ベース本体、11 ISOFIX、23,24,25 ベルト、30,30C,30F ホルダ、32cF,87,87C 係合歯、40,40C,40D,40F,40G 回転操作部材、43,43F 駆動ギア部、50,50C,50F,50G 移動部材、53,53F 従動ギア部、56,56G,110H 付勢部材、60,60B,60C,60F ロック解除部材、70,70C,70F ロック部材、72,72B,72C,73F,93F 係合爪、80,80A,80C,80E,80F リール、90F 付勢部。