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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172863
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079163
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】樫山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055CA36
4B055CD17
4B055CD61
4B055GB29
4B055GC16
4B055GC33
4B055GD04
(57)【要約】
【課題】内鍋内部の圧力を計測する専用の計測手段を設けずに、内鍋内部の圧力を把握してこれを制御し、所定の圧力炊飯工程を実行可能な炊飯器を得ること。
【解決手段】被炊飯物を入れる内鍋30と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部20aを有する炊飯器本体20と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体10と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋内部の空間に外気を導入可能なポンプユニット40と、前記加熱手段と前記ポンプユニットの動作を制御して、少なくとも、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記ポンプユニットを用いて、前記炊飯工程において前記内鍋内部の圧力を1気圧以上の所定の値に制御する圧力炊飯工程を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を入れる内鍋と、
前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、
前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、
前記内鍋を加熱する加熱手段と、
前記内鍋内部の空間に外気を導入可能なポンプユニットと、
前記加熱手段と前記ポンプユニットの動作を制御して、少なくとも、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段が、前記ポンプユニットを用いて、前記炊飯工程において前記内鍋内部の圧力を1気圧以上の所定の値に制御する圧力炊飯工程を実行することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値に基づいて前記内鍋内部の圧力を検出し、検出された前記内鍋内部の圧力値が所定の圧力となるように前記加熱手段の出力を制御する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記内鍋内部の圧力を調整可能な圧力調整手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値に基づいて前記内鍋内部の圧力を検出し、検出された前記内鍋内部の圧力値が炊飯工程に定められた所定の圧力となるように前記圧力調整手段を操作する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ポンプユニットを動作させて外気を前記内鍋内部に供給することで前記内鍋内部の圧力をより高くする、請求項2または3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値と前記内鍋内部の圧力との関係を記憶した参照テーブルデータに基づいて、前記内鍋内部の圧力値を把握する、請求項1~4のいずれかに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器に関し、特に、昇温工程から炊き上げ工程に至る炊飯工程において、内鍋内部の気圧を1気圧以上に設定して炊飯を行う圧力炊飯工程を備えた加圧炊飯方式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、炊飯器は、内鍋の周囲に配置された温度センサにより検出された内鍋温度に基づいて、加熱手段であるIHコイルやヒータへの通電電流をマイクロコンピュータによって制御し、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程(沸騰工程)、追い炊き工程、むらし工程という炊飯工程それぞれにおいて内鍋の温度を細かく調整することで、炊飯量や環境温度の変化に左右されずにおいしいお米を炊くことができるようになっている。
【0003】
また、よりおいしいお米を炊くために、蓋部に内鍋内部の圧力を調整可能な圧力弁を備え、一例として、昇温工程から炊き上げ工程にかけての高温工程で圧力弁を閉じて内鍋内部の圧力を1気圧以上の高圧状態に保つことで、より高い温度での沸騰状態を維持する圧力炊飯工程を備えた加圧炊飯方式の炊飯器が実現している。
【0004】
加圧炊飯方式の炊飯器において、内鍋内部を炊飯工程に応じた所定の圧力に維持する方法として、内釜内部の蒸気を逃がす蒸気逃がし通路に当該通路を開閉する球体弁とこの球体弁を制御する電磁プランジャとが配置された圧力調整機構を2系統設け、2系統の圧力調整機構を調整して、両方の圧力調整機構が閉じているときには内鍋内部を高圧(一例として1.25気圧)状態に、1系統の圧力調整機構が閉じていて他方の圧力調整機構が開いている場合には中圧(一例として1.05気圧)状態に、2系統の圧力調整機構が両方開いている場合には常圧(1気圧)にする方法が提案されている(特許文献1参照)。また、内鍋内部と外部とを接続する蒸気排出穴と、この蒸気排出穴を閉塞位置と開放位置との間で調整可能な圧力弁と、内鍋内部の圧力を検出する圧力センサユニットとを備え、圧力センサユニットにより計測される内鍋内部の圧力が、炊飯プログラムとして定められた所定の圧力となるように圧力弁の開閉度合いを制御する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに近年、内鍋内部の空間に外気を導入可能なポンプユニットを備えて、炊飯工程最終盤のむらし工程や炊き上がり後の保温時に、内鍋内部に外気を取り込んで過剰な熱と水蒸気とを放出することで、炊き上がりのご飯に張りと弾力とを与え、保温時にもご飯の張りと弾力とを維持できる炊飯器が実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-221160号公報
【特許文献2】特開2019- 37591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の技術は、簡易な構成の圧力調整機構と、電磁プランジャの制御のみで内鍋内部の圧力を3段階に切り替えることができるため、低コストで、かつ、安定して内鍋内部の圧力を調整することが可能である。しかし、圧力の調整段階が限られるとともに、炊飯器におけるIHヒータの配置位置や内鍋の材料、形状が異なるものに設計変更される際に、最終的には実際の炊飯工程を経て圧力調整機構の開放タイミングを調整する必要があり、汎用性が十分とは言えない部分があった。一方、特許文献2に記載の従来技術では、内鍋内部の圧力を測定するための圧力センサユニットを別途設けなくてはならず、また、圧力センサユニットで測定された内鍋内部の圧力を炊飯プログラムで定められた所定圧力と一致させるためのフィードバック制御機構が必要となって、コスト高を招きやすい構成であった。
【0008】
本発明はこのような加圧炊飯方式の炊飯器の課題を解決するものであり、内鍋内部の圧力を計測する専用の計測手段を設けずに、内鍋内部の圧力を把握してこれを制御し、所定の圧力炊飯工程を実行可能な炊飯器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の炊飯器は、被炊飯物を入れる内鍋と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋内部の空間に外気を導入可能なポンプユニットと、前記加熱手段と前記ポンプユニットの動作を制御して、少なくとも、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記ポンプユニットを用いて、前記炊飯工程において前記内鍋内部の圧力を1気圧以上の所定の値に制御する圧力炊飯工程を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の炊飯器は、制御手段が、内鍋内部に外気を導入して内鍋内部空間内の過剰な蒸気を放出するポンプユニットを用いて、内鍋内部の圧力を1気圧以上の所定の値とする圧力炊飯工程を実行する。このため、内鍋内部の圧力を検出する専用の圧力センサを備えていなくても、内鍋内部の圧力に応じた圧力炊飯工程を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかる炊飯器の外観を示す斜視図である。
図2】本実施形態にかかる炊飯器の蓋体を開いた状態の外観を示す斜視図である。
図3】本実施形態にかかる炊飯器における、内鍋内部の圧力制御の第2の形態を用いた場合の蓋体内部の構成を説明するための斜視図である。
図4】本実施形態にかかる炊飯器における、内鍋内部の圧力制御の第1の形態の制御機構を説明するブロック図である。
図5】本実施形態にかかる炊飯器における、ポンプユニットの電動ポンプの電流値と内鍋内部の圧力値との関係を示す図である。
図6】本実施形態にかかる炊飯器における、内鍋内部の圧力制御の第2の形態を用いる場合の蓋体内部の構成を説明するための斜視図である。
図7】本実施形態にかかる炊飯器における、内鍋内部の圧力制御の第2の形態の制御機構を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の炊飯器は、被炊飯物を入れる内鍋と、前記内鍋を取り出し可能に収容する内鍋収容部を有する炊飯器本体と、前記内鍋収容部を開閉可能に覆う蓋体と、前記内鍋を加熱する加熱手段と、前記内鍋内部の空間に外気を導入可能なポンプユニットと、前記加熱手段と前記ポンプユニットの動作を制御して、少なくとも、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程を含む炊飯工程を実行する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記ポンプユニットを用いて、前記炊飯工程において前記内鍋内部の圧力を1気圧以上の所定の値に制御する圧力炊飯工程を実行する。
【0013】
本発明の炊飯器は、上記のように、制御手段が内鍋内部に外気を導入して過剰な蒸気を排出するポンプユニットを用いて、内鍋内部の圧力を1気圧以上とする圧力炊飯工程を実行する。このため、内鍋内部の圧力を把握するための専用の圧力センサを用いずに、内鍋内部の圧力に応じた圧力炊飯工程を実行できる。
【0014】
上記本発明にかかる炊飯器において、前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値に基づいて前記内鍋内部の圧力を検出し、検出された前記内鍋内部の圧力値が所定の圧力となるように前記加熱手段の出力を制御することが好ましい。このようにすることで、内鍋内部を圧力炊飯工程として定められた所定の圧力値に維持することができる。
【0015】
また、前記内鍋内部の圧力を調整可能な圧力調整手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値に基づいて前記内鍋内部の圧力を検出し、検出された前記内鍋内部の圧力値が炊飯工程に定められた所定の圧力となるように前記圧力調整手段を操作することが好ましい。このようにすることで、内鍋内部の圧力値を計測する専用の圧力センサを用いることなく、圧力調整手段を用いて内鍋内部の圧力を所定の値に維持した圧力炊飯工程を実行することができる。
【0016】
さらに、前記制御手段は、前記ポンプユニットを動作させて外気を前記内鍋内部に供給することで前記内鍋内部の圧力をより高くすることが好ましい。このようにすることで、迅速に内鍋内部の圧力値を高くして、炊飯プログラムに沿った圧力炊飯工程を実行することができる。
【0017】
さらにまた、前記制御手段は、前記ポンプユニットの動作電流値と前記内鍋内部の圧力との関係を記憶した参照テーブルデータに基づいて、前記内鍋内部の圧力値を把握することが好ましい。このようにすることで、ポンプユニットの動作電流値から内鍋内部の圧力値を容易に把握することができる。
【0018】
(実施の形態)
以下、本発明にかかる炊飯器の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1、および、図2は、本実施形態の炊飯器の外観を示す斜視図である。図1では、蓋体を閉じた状態を、図2では、蓋体を開けた状態を示している。
【0020】
図1、および、図2に示すように、本実施形態の炊飯器は、米と水、さらに、具入り炊飯モードでは野菜や豆類、肉類などの各種の具である被炊飯物を入れる内鍋30と、この内鍋30を内鍋収容部20aに収容することができる炊飯器本体20と、炊飯器本体20の内鍋収容部20aを開閉可能に覆う蓋体10とを有している。
【0021】
蓋体10には、ユーザが炊飯器に各種設定を与えるための各種の操作ボタン11と、操作ボタン11による操作状況や炊飯器の動作状態等を表示するための液晶パネルその他の画像表示パネルにより形成された表示部12が配置されている。操作ボタン11は、炊飯ボタン、保温ボタンなどの動作を指示するボタンと、白米炊飯モードや具入り炊飯モードなどの調理メニューを選択したり、保温時間やタイマーを設定したりするメニューボタンとを含む各種のスイッチ類を含む。
【0022】
蓋体10の後方側中央部分には、内釜内部の水蒸気等を外部に放出する蒸気放出口13が配置されている。後述する制御部からの制御によって蓋体10に配置された開放弁16が制御されて、内鍋内部の空間と蒸気放出口13とが連通可能であって、所定のタイミングで蒸気放出口13と内鍋内部の空間とが連通されることによって内鍋内部に存在する水蒸気が外部に放出されるとともに、内鍋内部の気圧を下げて大気圧(1気圧)に近づけることができる。
【0023】
本体部20の前方側最上部には、蓋体10のロックを解除するロックレバーボタン21が設けられ、図1に示す蓋体10が閉じている状態でロックレバー21を押し下げると、蓋体10のロックが外れ、図示しないバネ機構などによって蓋体10全体がヒンジ機構22を中心として後方側(奥側)に回動し、図2に示す蓋体が開いた状態となる。
【0024】
なお、図示は省略するが、蓋体10内部の表示部12の下側に位置する部分に、各種操作ボタン類11に接続された動作回路と、表示部12での表示画像を出力する駆動回路などが含まれた回路部が配置されている。また、本実施形態の炊飯器において、ユーザにより設定された炊飯モードに従って炊飯プログラムの制御を行う、制御手段であるマイコンを含む制御回路(図示省略)も、回路部を構成する回路基板上に搭載されている。
【0025】
本実施形態の炊飯器では、回路部に配置された制御回路が、炊飯器本体20の内部の内鍋収容部20aの底面中央部に配置された温度センサ(図示省略)からの出力に基づいて内鍋30の温度を把握し、内鍋収容部20aの周囲を取り囲むように配置された加熱手段であるIHヒータ(図示省略)への通電を制御することで、炊飯メニューや炊飯量に応じて設定された所定の炊飯プログラムにしたがって内鍋30の温度を制御し、各種の炊飯工程を実行する。
【0026】
なお、加熱手段への電力投入量を制御するマイコンを含む制御回路が、表示部12の下側の回路部に配置されていることは一例に過ぎない。加熱手段の調整が、表示部12での表示内容を制御する回路基板とは別の回路基板上に配置された制御回路で行われる場合もあり、また、制御回路が、蓋体10内の表示部12の下部ではなく例えば炊飯器本体20内部に配置された回路基板上に形成される場合もある。
【0027】
上述したように、蓋体10は、炊飯器本体20の背面側上部に配置されたヒンジ機構22により炊飯器本体に対して回動することで、内鍋収容部20aを開閉することができる。そして、蓋体10が閉じられたとき、ロックレバー21に連動する図示しないロック機構により、蓋体10が炊飯器本体20の上面にしっかりと押しつけられた状態で固定される。
【0028】
蓋体10と炊飯器本体20とがしっかりと押しつけられた状態で固定された際、蓋体10の内側表面に配置された内蓋14に取り付けられたパッキン材15が、内鍋30の内側面30aの上端部近傍と内鍋30の上端のフランジ部分30bとに当接して、蓋体10に配置された内蓋14と内鍋30との内部に形成された空間(以下適宜「内鍋内部の空間」と称する)が気密状態で封鎖される。本実施形態の炊飯器では、内鍋30は、内鍋収容部20aの底部に配置された図示を省略する弾性支持機構によって蓋体10側に付勢されているため、内鍋内部の空間の気密状態を確実に維持することができる。この結果、内鍋30内部を例えば1.25気圧などの所定の高圧状態とすることができる。
【0029】
炊飯器本体20の内鍋収容部20aには、内鍋30の底面から側面に対向するように、加熱手段としての第1のワークコイル、第2のワークコイル、側面ヒータが配置されている(図示省略)。
【0030】
第1のワークコイルは、内鍋30の底面に対向するように内鍋収容部20aの底面に配置されている。内鍋収容部20aの底面中央には、内鍋30の底面中央部の温度を検出する温度センサである図示しないセンターセンサが配置されているため、第1のワークコイルは、平面視すると中央に穴の開いた円環(ドーナツ)状になっている。
【0031】
第2のワークコイルは、内鍋30の底面と側面との境界に位置する傾斜部分に対向するように配置されている。第2のワークコイルも第1のワークコイルと同様に円環状となっている。
【0032】
これら第1のワークコイル、第2のワークコイルは、いわゆるIHコイル(高周波コイル)であり、コイルに流れる電流により渦電流が生じて誘導加熱が起きるように、内鍋30が非金属材料で形成されている場合には、内鍋30の第1のワークコイルと第2のワークコイルに対向する部分の外面側に、図示しない発熱体が配置される。発熱体は、銀もしくはステンレスなどの金属薄膜がコーティングされたもの、もしくは、金属箔が転写されたものなどとして非金属製の内鍋30の表面に形成されている。そして、第1のワークコイル、第2のワークコイルに電流を流すことによって発熱体が発熱し、この発熱体の発熱が非金属製の内鍋30全体の温度を上昇させる。
【0033】
なお、本実施形態では、発熱体が内鍋30の外表面の、第1及び第2のワークコイルに対向する部分に形成された例を示したが、発熱体はワークコイルからの誘導起電力により発熱して非金属製の内鍋30の温度を上昇させることができる、いずれの位置に配置することもできる。
【0034】
内鍋30の側面に対向する内鍋収容部20aの側壁部分には、側面ヒータが配置されている。この側面ヒータは、電流が流れることにより発熱してその輻射熱で内鍋を温めるものであり、炊飯工程後の保温工程において内鍋30を保温するために使用される。また、炊飯時に、第1のワークコイルおよび第2のワークコイルとともに、側面ヒータを内鍋30の加熱に使用することもできる。
【0035】
本実施形態の炊飯器では、これら第1のワークコイル、第2のワークコイル、側面ヒータが加熱手段を構成しており、蓋体10の回路部に搭載された制御回路により、それぞれに流れる電流量が制御されることで、加熱手段のオンとオフ、また、オンの場合の発熱量の制御が行われる。なお、加熱手段として、上記の第1のワークコイル、第2のワークコイル、側面ヒータの他にも、内鍋収容部20aの周囲の他の部分や蓋体10の内部に、加熱のためのコイルやヒータなどを配置することも可能である。
【0036】
図示は省略するが、炊飯器本体20の背面側に配置されたヒンジ機構22の下部には、炊飯器に電力を供給するために商用電源に接続される電源プラグに接続された電源コードとこれに接続された電源回路基板、さらに、電源コードを収納するコードリールなどが配置されている。
【0037】
本実施形態の炊飯器に用いられている内鍋30は、基体が非金属製の焼き物であるいわゆる土鍋であり、基体部分はコーディエライト系の材料で形成されていて、成分としてSiO2を含んでいる。この基体部分の両面にリチア系の釉薬が塗布され、外表面には発熱体である銀ペーストがコーティングされている。また、内表面には、アルミ溶射膜を介してフッ素コーティングが施されている。なお、上記内鍋30の構成は例示であり、本実施形態の炊飯器として用いられる非金属製の内鍋としては、セラミックやガラス素材などの非金属製鍋、また、アルミやステンレスの金属層にセラミックや中空ガラスビーズなどの非金属部材の層をコーティングした内鍋などを好適に用いることができる。さらに、内鍋として、従来周知の銅やアルミ、ステンレスなどの金属層により形成される金属製内鍋を用いることもできる。
【0038】
また、本実施形態の炊飯器では、内鍋30の底部中央の温度を測定するセンターセンサ以外にも、例えば蓋体10の内鍋収容部20aと対向する部分や、炊飯器本体20の内鍋30の側面と対向する部分などに1または2以上の温度センサを配置することができる。本実施形態の炊飯器に用いられるセンターセンサをはじめとする各温度センサは、例えばサーミスタに代表される熱的電気素子を用いて構成される従来周知の温度センサを、そのまま用いることができる。
【0039】
図3は、本実施形態にかかる炊飯器の蓋体の内部構成を示す斜視図である。
【0040】
図3は、図1に示した斜視図から蓋体10の上部筐体を取り除いて、蓋体10の内部構造を見ることができるようにしたものである。
【0041】
本実施形態にかかる炊飯器では、蓋体10の内部に、電動ポンプ41と、この電動ポンプ41の吐出口と蓋体10を厚み方向に貫通する空気送入口17とを接続する送気パイプ42と、電動ポンプ41の吸入口と蓋体後方の吸気口(図示省略)とを接続する吸気パイプ43とによって構成されたポンプユニット40を備えている。また、蓋体10の内部には、内鍋内部の空間と前述した蒸気放出口13とを連通させる開放弁16が配置されている。本実施形態にかかる炊飯器では、上記ポンプユニット40の電動ポンプ41としてダイヤフラムポンプを、上記開放弁16としてソレノイドバルブを採用している。
【0042】
本実施形態にかかる炊飯器では、炊飯工程の最終盤に行われる高温でのむらし工程において、ポンプユニット40と開放弁16とを動作させることで内鍋内部の空間に外気を取り入れるとともに内鍋内部の熱と余分な蒸気を外部に排出する。このように、内鍋内部の空間の水分量をコントロールすることで、炊き上がりのご飯に張りと弾力を与えることができる。また、炊飯工程の完了後に適宜行われる保温工程においても、ポンプユニット40を動作させることで、外部の空気を取り入れた内鍋内部空間の余分な熱と蒸気とを外部に放出する。このようにすることで、保温時においても、内鍋内部空間の水分量を適切な状態に維持して、保温後においてもご飯のつやと香りを維持することができる。
【0043】
なお、図1、および、図2を用いて説明した本実施形態の炊飯器の全体の形状や、各部材の具体的な構成や配置はあくまで一例に過ぎず、本発明にかかる炊飯器において、上記図1および図2に例示した構成とは異なるさまざまな構成を採用することができる。
【0044】
<内鍋内部の圧力制御形態>
以下、本実施形態にかかる炊飯器における圧力炊飯工程での内鍋内部の圧力の制御について説明する。
【0045】
本実施形態にかかる炊飯器では、図3を用いて説明した、内鍋内部に外気を導入可能なポンプユニット40を用いて、制御手段が圧力炊飯工程時の内鍋内部の空間の圧力を制御することを特徴とするものである。
【0046】
[第1の圧力制御形態]
まず第1の圧力制御の形態として、ポンプユニット40の電動ポンプを用いて内鍋内部の圧力を検出し、検出結果に基づいて加熱手段であるIHコイルへの電力投入量を調整して内鍋内部の空間の圧力を所定の値とする制御方法を説明する。
【0047】
図4は、この第1の圧力制御形態における内鍋内部の圧力を制御する制御機構の相互の関係を示すブロック図である。なお、図4において、図1図2図3を用いて説明した炊飯器の各構成部材には、同じ符号を付している。
【0048】
上述したように、制御手段である制御回路は、例えば炊飯工程中の炊き上げ工程においてポンプユニット40を動作させて、炊飯器の外部から空気を吸入して内鍋内部に導入する。このとき、開放弁16を閉じている状態でポンプユニット40を動作させると、ポンプユニット40の電動ポンプ41を動作させるための動作電流の値が、空気の導入先である内鍋内部の圧力値と強い相関関係を有することがわかった。
【0049】
図5は、本実施形態にかかる炊飯器において測定された、内鍋内部の空間の圧力の上昇値と電動ポンプを動作させるための電流値との関係を示すグラフである。
【0050】
図5から、横軸に示す内鍋内部の圧力の上昇値、すなわち、1気圧からの加圧された圧力の値(kPa)が高くなるにつれて、縦軸に示される電動ポンプに供給される電力の内の電流値(mA)が大きくなり、本実施形態にかかる炊飯器では、両者の関係が、ほぼ線形に変化する略比例関係にあることがわかる。これは、動作電圧が加えられた電動ポンプ41のモータが駆動してダイヤフラムが拡張/圧縮の脈動動作を行う際に、内鍋内部の空間の圧力が高いほどダイヤフラムを動作させるための力学的負荷が大きくなって、内鍋内部の圧力の1気圧からの高さ(=大きさ)が電動ポンプのモータに加わる負荷の大きさとして電流値の増大に現れたものと考えることができる。
【0051】
例えば、図5に示す本実施形態にかかる炊飯器では、内鍋内部の圧力が大気圧と同じ状態で加圧されていない状態(+0kPa)での電流値A0が43mAで、内鍋内部が大気圧よりも5kPa加圧されている状態では、電流A1が47mAとなる。また、内鍋内部が大気圧と比較して25kPa加圧されている状態では、電流値A2が58mAとなっている。
【0052】
このように、内鍋内部の加圧圧力の大きさ(kPa)と、そのときの電動ポンプにおける電流値(mA)との関係がわかっていれば、炊飯工程中にポンプユニット40を動作させて、そのときの電動ポンプの駆動電流値(mA)から、内鍋内部の空間の加圧状態を知ることができる。
【0053】
図5に示すように、このとき、制御回路は、電動ポンプの電流値(mA)に基づいて内鍋内部の加圧圧力値(kPa)を把握して、加熱手段であるIHコイルへの投入電力量を増減する。例えば、内鍋内部の加圧圧力値が、圧力炊飯工程として定められた所定の圧力よりも低い場合には、IHコイルに投入する電力量を増大させて内鍋内部の空間の温度を上昇させることで、内部の加圧圧力を大きくする。反対に、内鍋内部の加圧圧力が所定の値よりも大きい場合には、IHコイルに投入する電力量を下げて内鍋内部の空間の温度を下げて、加圧圧力を小さくする。このように、把握された内鍋内部の加圧圧力の大きさに基づいて、加熱手段であるIHコイルへの投入電力量を増減させて、加圧圧力量が制御される。
【0054】
このように、本実施形態にかかる炊飯器では、内鍋内部の圧力を内鍋内部に外気を導入するために設けられたポンプユニットの電動ポンプの電流値から把握することができるため、内鍋内部の圧力を測定するための圧力センサを別途設ける必要が無い。また、内鍋内部の圧力状態により動作する機械的な圧力調整機構も不要となるため、加圧炊飯工程を実行するための機構を大幅に削減することができる。さらに、内鍋内部の圧力値を把握して加熱手段への電力投入を変化させるため、正確な加圧圧力の調整が可能となる。さらに、内蓋に配置されていた圧力調整機構が不要となることで、ユーザにとってお手入れのしやすい炊飯器とすることができる。
【0055】
なお、上述のように加熱手段であるIHコイルへの電力投入量を増加させるだけでは、内鍋内部の加圧圧力値が所定の値まで十分に上昇しない場合があり得る。そのような場合には、ポンプユニット40を動作させることで内鍋内部に外気を導入することで内鍋内部の空気の圧力を上昇させることができる。
【0056】
また、圧力炊飯工程が終了した後に内鍋内部の熱や水蒸気を外部に放出する際には、制御回路は開放弁16を開放した状態でポンプユニット40を動作させて、外気を内鍋内部に導入しつつ内鍋内部の過剰な蒸気を蒸気放出口13から外部へと排出する動作を行う。
【0057】
[第2の圧力制御形態]
次に、本実施形態にかかる炊飯器における第2の圧力制御の形態として、ポンプユニット40の電動ポンプを用いて内鍋内部の圧力を検出し、検出結果に基づいて圧力制御機構を制御することで内鍋内部の空間の圧力を所定の加圧圧力値とする制御方法について説明する。
【0058】
図6は、第2の圧力制御形態が採用される炊飯器の、蓋体内部の構成を示す斜視図である。
【0059】
図6も、図3と同様、図1に示した斜視図から蓋体10の上部筐体を取り除いて、蓋体10の内部構造を見ることができるようにしたものである。
【0060】
図6に示すように、第2の圧力制御形態が採用される炊飯器においても、図3に示した第1の圧力制御形態の炊飯器と同様に、蓋体10の内部に電動ポンプ41、送気パイプ42、吸気パイプ43からなるポンプユニット40が配置されている。さらに、第2の圧力制御形態の炊飯器では、内鍋内部空間の圧力を制御するための、多段階の開閉操作を行うことができる圧力調節機構18が配置されている。
【0061】
圧力調整機構18は、制御手段である制御回路からの制御信号によって、内鍋内部の空間を外部の空間から隔てている圧力弁を多段階に開閉することができ、例えば、内鍋内部の圧力を高圧での加圧状態から一気に大気圧と同等レベルの圧力に下げたり、緩やかに減圧したりするなど、圧力弁の開閉度合いと開閉時間とを調整して内鍋内部の圧力を所定の加圧圧力値とすることができる。
【0062】
図7は、圧力制御の第2の形態を実行する各種構成要素の制御関係を示ブロック図である。
【0063】
図7に示す、第2の圧力制御状態でも、図5を用いて説明した第1の圧力制御状態と同様に、開放弁16を閉じている状態で内鍋内部に外気を導入可能なポンプユニット40を動作させ、ポンプユニット40の電動モータ41の動作電流値(mA)に基づいて、内鍋内部の空間の加圧圧力値(kPa)を検出する。このため、第2の圧力制御形態においても、図5に示した、電動モータ41の動作電流値(mA)と内鍋内部の加圧圧力値(kPa)との相関関係から、制御回路は内鍋内部の加圧状態を把握する。
【0064】
ここで制御回路は、内鍋内部の空間の加圧圧力が加圧炊飯工程として定められた圧力条件を満たすように、圧力調整機構18の圧力弁の開度を制御する。この第2の圧力制御形態においても、制御回路は加熱手段であるIHコイルへの投入電流量を制御してIHコイルの出力を調整するが、上述の第1の圧力制御形態の場合とは異なり、IHコイルの出力は炊飯プログラムに設定された炊飯工程における熱量の供給という観点からのみ制御される。
【0065】
このように、第2の圧力制御形態の場合には、ポンプユニット40の電動モータ41の電流値(mA)から内鍋内部の空間の加圧圧力値(kPa)を把握して、その加圧圧力値が炊飯プログラムにおける加圧炊飯工程において定められた所定の圧力となるように圧力調整機構18を用いて調整する。このため、第2の圧力制御形態の場合も、内鍋内部の圧力を測定するための圧力センサを別途設ける必要が無い。
【0066】
また、この第2の圧力制御形態は第1の圧力制御形態と比較して、加熱手段であるIHコイルの出力を内鍋内部の加圧圧力の調整に用いない分、加熱手段であるIHコイルの制御がシンプルになる。ただし、内蓋14に圧力調整機構18に対応した部材を配置する必要が生じるため、炊飯器の構成がやや複雑化すること、また、圧力調整機構18のお手入れが必要となるというデメリットが存在する。
【0067】
なお、第2の圧力制御形態においても、圧力調整機構18の制御だけでは内鍋内部の加圧圧力値が所定の値まで十分に上昇しない場合があり得る。そのような場合には、ポンプユニット40を動作させることで内鍋内部に外気を導入することで内鍋内部の空気の圧力を上昇させることができる。
【0068】
また、第2の圧力制御形態の場合においても、圧力炊飯工程が終了した後に内鍋内部の熱や水蒸気を外部に放出する際には、制御回路は開放弁16を開放した状態でポンプユニット40を動作させて、外気を内鍋内部に導入しつつ内鍋内部の過剰な蒸気を蒸気放出口13から外部へと排出する動作を行う。
【0069】
以上説明したように、本実施形態にかかる炊飯器では、炊き上がり時や保温時のご飯に張りと弾力を与えるために外気を導入して内鍋内部の温度と蒸気量を調整するポンプユニットを備え、このポンプユニットを加圧炊飯時に動作させた際に検出される動作電流値から、内鍋内部の圧力を把握して所定の圧力値となるようにフィードバックをかけることができる。このため、内鍋内部の圧力を検出する専用の圧力センサを用いることなく、内鍋内部の実際の加圧圧力値に応じて適切な圧力調整を行うことができる。
【0070】
特に、第1の圧力制御形態として説明した、加熱手段への投入電力量を調整してその出力を制御することで内鍋内部の圧力を調整する形態であれば、内鍋内部の圧力を調整する圧力調整手段も不要となるため、適切な加圧炊飯を行うために必要な機構を大幅に減らして低コスト化が図れ、かつ、お手入れも簡単な炊飯器を実現することができる。
【0071】
なお、上述したポンプユニットの動作電流値と内鍋内部の加圧圧力との相関関係については、制御手段がアクセス可能なデータ記憶手段に、図5として示した、電流値と加圧圧力値との相関関係を示すグラフ、または、その関係を示す関係式を記憶させることで、制御手段が容易に加圧圧力値を把握することができる。また、制御手段がアクセス可能な記憶手段に、代表的なポンプユニットの動作電流値と加圧圧力値の対応についての参照テーブルを記憶させることで、より少ないデータ量とデータ処理量で、制御手段が加圧圧力値を把握できるようになる。
【0072】
また、上記実施形態では、ポンプユニットの電動ポンプとしてダイヤフラムポンプを用いる例を示したが、ポンプユニットの電動ポンプはダイヤフラムポンプには限られず、外気を吸入して炊飯器内部に送入可能であり、内鍋内部の気圧の高さが負荷となって動作時の電流値が変化する電動ポンプであれば、既存の各種の電動ポンプを使用することができる。また、上記実施形態では、ポンプユニットで外気を内鍋内部に導入する際に、内鍋内部の空間と蒸気放出口とを連通させる開放弁としてソレノイドバルブを用いる例を示したが、開放弁はソレノイドバルブに限られず、制御回路からの制御によって内鍋内部と蒸気放出口との間を連通させたり閉塞させたりすることができる、各種の電動弁機構を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の炊飯器は、専用のセンサ手段を用いることなく、制御手段が圧力炊飯工程での内鍋内部の圧力を把握して、所定の加圧圧力値となるように制御することができるため、低コストで、かつ、シンプルな構成でありながら、おいしいお米を炊くことができる炊飯器として有用である。
【符号の説明】
【0074】
10 蓋体
20 炊飯器本体
20a 内鍋収容部
30 内鍋
40 ポンプユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7