(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022172875
(43)【公開日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ジオール化合物ならびにその製造方法およびその重合体
(51)【国際特許分類】
C07C 49/835 20060101AFI20221110BHJP
C07C 45/64 20060101ALI20221110BHJP
C08G 63/547 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C07C49/835
C07C45/64 CSP
C08G63/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021079192
(22)【出願日】2021-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼坂 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】大山 真賢
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC41
4H006BA69
4H006BB25
4J029AB01
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE04
4J029AE17
4J029BC09
4J029BE03
4J029CB03A
4J029CG05Y
4J029GA02
4J029HA01
4J029HB05
4J029JC033
4J029KB02
4J029KB13
4J029KE03
4J029KE07
4J029KH04
4J029KH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主鎖にフルオレン骨格およびアクリロイル系骨格を含む樹脂を形成可能な新規なジオール化合物、前記化合物を重合成分として含む樹脂、および前記化合物の前駆体、ならびにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるジオール化合物を調製する。
(式中、R
1は置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、R
2aおよびR
2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、R
3aおよびR
3bは独立して水素原子または置換基を示し、R
4aおよびR
4bは独立して水素原子または置換基を示す)。
前記式(1)において、R
3aおよびR
3bは水素原子であってもよく、R
4aおよびR
4bは水素原子または炭化水素基であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジオール化合物。
【化1】
(式中、R
1は置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
R
2aおよびR
2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
R
3aおよびR
3bは独立して水素原子または置換基を示し、
R
4aおよびR
4bは独立して水素原子または置換基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)において、R3aおよびR3bが水素原子であり、R4aおよびR4bが水素原子または炭化水素基である請求項1記載のジオール化合物。
【請求項3】
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)および(3b)で表される化合物とを反応させて、請求項1または2に記載のジオール化合物を製造する方法。
【化2】
(式中、R
1、k、R
2aおよびR
2b、m1およびm2、R
3aおよびR
3b、R
4aおよびR
4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ請求項1記載の式(1)に同じ。)
【請求項4】
請求項1または2に記載のジオール化合物を重合成分に含む樹脂。
【請求項5】
ジオール単位とジカルボン酸単位とを含むポリエステル系樹脂であって、前記ジオール単位が、下記式(1P)で表されるジオール単位を含む、請求項4記載の樹脂。
【化3】
(式中、R
1、k、R
2aおよびR
2b、m1およびm2、R
3aおよびR
3b、R
4aおよびR
4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ請求項1記載の式(1)に同じ。)
【請求項6】
前記ジカルボン酸単位が、芳香族ジカルボン酸成分に由来するジカルボン酸単位を含む請求項5記載の樹脂。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の樹脂を、塩基の存在下で分解する方法。
【請求項8】
前記塩基が求核剤である請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項4~6のいずれか一項に記載の樹脂を含む硬化性組成物。
【請求項10】
請求項9記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジオール化合物(フルオレン化合物)およびその製造方法、ならびにこのジオール化合物を重合成分として含む重合体(または樹脂)に関する。
【背景技術】
【0002】
コールタールから産出されるフルオレンは、π共役系を有する芳香族化合物であり、剛直で対称性に優れた化学構造を有するとともに、反応性に富むユニークな炭化水素である。このような構造的または化学的特徴から、フルオレンは様々なファインケミカル材料の出発物質として利用されている。例えば、フルオレン骨格を形成するベンゼン環を化学修飾した誘導体は、液晶材料や光機能材料、有機EL色素などとして利用されている。また、9位に2つの芳香環を置換したフルオレン化合物は、高耐熱性、高屈折率、高透明性などの優れた特性を示すポリマーを調製可能な機能性モノマーなどとして有効に利用でき、工業的に生産されている。
【0003】
一方、フルオレン骨格を利用した新たなファインケミカル材料の開発に注目が集まっている。例えば、特開2011-236415号公報(特許文献1)には、芳香族骨格および2つのエチレン性不飽和結合を有する不飽和化合物と、ジチオール化合物とのエンチオール反応(チオール-エン反応)により得られる熱可塑性樹脂について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施例では、9,9-ビスフェニルフルオレン骨格を有する不飽和化合物を用いて熱可塑性樹脂が調製されており、フルオレン骨格の1~8位にアクリロイル骨格、例えば、(メタ)アクリロイル基などのアクリロイル骨格(または置換されていてもよいアクリロイル基)を有する化合物については記載されておらず、また、主鎖にアクリロイル骨格を含む樹脂についても何ら記載されていない。
【0006】
従って、本発明の目的は、主鎖にフルオレン骨格およびアクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格、すなわち、[-C(=O)-C(=CHR3a)-]および[-C(=O)-C(=CHR3b)-])を含む樹脂を形成可能な新規なジオール化合物、前記化合物を重合成分として含む樹脂、および前記化合物の前駆体、ならびにこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の化学構造を有するジオール化合物(フルオレン化合物)を重合成分とすることで、主鎖にフルオレン骨格およびアクリロイル系骨格を含む樹脂を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明のジオール化合物(フルオレン化合物)は、下記式(1)で表される。
【0009】
【0010】
(式中、R1は置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
R2aおよびR2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
R3aおよびR3bは独立して水素原子または炭化水素基を示し、
R4aおよびR4bは独立して水素原子または置換基を示す)。
【0011】
前記式(1)において、R3aおよびR3bは水素原子であってもよく、R4aおよびR4bは水素原子または炭化水素基であってもよい。
【0012】
本発明は、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)および(3b)で表される化合物とを反応させて、前記ジオール化合物を製造する方法を包含する。
【0013】
【0014】
(式中、R1、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3b、R4aおよびR4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ前記式(1)に同じ)。
【0015】
また、本発明は、前記ジオール化合物を重合成分に含む樹脂(前記ジオール化合物を重合成分とする樹脂)も包含する。前記樹脂は、ジオール単位とジカルボン酸単位とを含むポリエステル系樹脂であってもよく、前記ジオール単位は、下記式(1P)で表されるジオール単位を含んでいてもよい。
【0016】
【0017】
(式中、R1、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3b、R4aおよびR4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ前記式(1)に同じ)。
【0018】
前記ジカルボン酸単位は、芳香族ジカルボン酸成分に由来するジカルボン酸単位を含んでいてもよい。
【0019】
また、本発明は、前記樹脂を塩基の存在下で分解する方法も包含する。前記塩基は弱塩基であってもよく、求核剤であってもよい。
【0020】
さらに、本発明は、前記樹脂を含む硬化性組成物、この硬化性組成物が硬化した硬化物も包含する。
【0021】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC1、C6、C10などで示すことがある。例えば、「C1アルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【0022】
また、「ジオール単位」、「ジオール成分由来の構成単位」は、対応するジオール成分の2つのヒドロキシル基から、水素原子をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジオール成分」(ジオール成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジオール単位」と同義に用いる場合がある。同様に、「ジカルボン酸単位」、「ジカルボン酸成分由来の構成単位」は、対応するジカルボン酸の2つのカルボキシル基から、OH(ヒドロキシル基)をそれぞれ除いた単位(または2価の基)を意味し、「ジカルボン酸成分」(ジカルボン酸成分として例示される化合物を含む)は、対応する「ジカルボン酸単位」と同義に用いる場合がある。
【0023】
さらに、「ジカルボン酸成分」とは、ジカルボン酸に加えて、そのエステル形成性誘導体を含む意味に用いる。エステル形成性誘導体としては、例えば、アルキルエステル、酸クロリドなどの酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。前記アルキルエステルとしては、低級アルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステルなどのC1-4アルキルエステルなどが挙げられる。なお、エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)またはジエステルであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の新規なジオール化合物は、特定の化学構造を有しているため、主鎖にフルオレン骨格およびアクリロイル骨格を含む樹脂を容易にまたは効率よく形成できる。また、前記樹脂は特定の化学構造を有するため、高い耐熱性や、高い屈折率などの光学特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、合成例1-1で得られた化合物(2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレン)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図2】
図2は、合成例1-2で得られた化合物(2,7-ジアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図3】
図3は、実施例1で得られたジオール化合物(2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-フルオレン)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図4】
図4は、実施例2で得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン、すなわち、2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-フルオレンとイソフタル酸との重合体)の
1H-NMRスペクトルである。
【
図5】
図5は、実施例8で得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の分解反応前後を比較したサイズ排除クロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のフルオレン骨格およびアクリロイル骨格(ビニルケトン骨格)を有する新規なジオール化合物(フルオレン化合物)は、下記式(1)で表される。
【0027】
[式(1)で表されるフルオレン化合物]
【0028】
【0029】
(式中、R1は置換基を示し、kは0~2の整数を示し、
【0030】
【0031】
で表される結合(すなわち、実線と破線との二重線で表される結合)は単結合または二重結合を示し、
R2aおよびR2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
R3aおよびR3bは独立して水素原子または置換基を示し、
R4aおよびR4bは独立して水素原子または置換基を示す)。
【0032】
前記式(1)において、R1で表される置換基としては、例えば、炭化水素基、置換アミノ基、ハロゲン原子などの1価の基、酸素原子(またはオキソ基[=O])などの2価の基などが挙げられる。
【0033】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基などが挙げられる。
【0034】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルキル基などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-12アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。
【0035】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられ、好ましくはC5-8シクロアルキル基が挙げられる。
【0036】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基)、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基などのC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基が挙げられる。
【0037】
炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基としては、例えば、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられる。アルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノまたはジC1-6アルキルC6-10アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)などのC6-10アリールC1-6アルキル基などが挙げられる。
【0038】
置換アミノ基としては、例えば、アルキルアミノ基、アシルアミノ基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのモノまたはジアルキルアミノ基が挙げられ、アシルアミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのモノまたはジアシルアミノ基などが挙げられる。
【0039】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0040】
好ましいR1としては、アルキル基などの炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、ヘキシル基、デシル基などのC1-12アルキル基、さらに好ましくは以下段階的に、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基、C1-2アルキル基、メチル基である。
【0041】
なお、R1が前記2価の基である場合、R1はフルオレン環の9位に二重結合で結合し、kは1であり;R1が1価の基である場合、R1はフルオレン環の9位に単結合で結合し、kは1または2であり;kが0(無置換)である場合、フルオレン環の9位には水素原子が結合する。また、kが2である場合、2つのR1(1価の基)の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0042】
R1の係数kは、0~2のいずれの整数であってもよく、0または2が好ましく、2がさらに好ましい。
【0043】
R2aおよびR2bで表される置換基としては、アクリロイル骨格を有しない置換基であり、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
【0044】
m1、m2が1以上である場合、好ましいR2a、R2bは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基などのアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、さらに好ましくはアルキル基、特にメチル基などのC1-3アルキル基が好ましい。
【0045】
R2a、R2bの置換数m1、m2は、例えば0~2程度の整数、好ましくは0または1、さらに好ましくは0である。m1およびm2は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。また、m1およびm2が1以上である場合、フルオレン骨格を構成する異なるベンゼン環に置換するR2aおよびR2bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、m1、m2が2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR2a、R2bの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。また、R2a、R2bの置換位置は、特に制限されず、基[-C(=O)-CH(=CHR3a)-CH(R4a)-OH]、[-C(=O)-CH(=CHR3b)-CH(R4b)-OH]、(以下、アクリロイル骨格含有基ともいう)の置換位置以外の位置に置換していればよい。
【0046】
R3aおよびR3bで表される置換基としては、例えば、炭化水素基、ハロゲン原子、具体的には、R1の項で例示した炭化水素基およびハロゲン原子と同様の基などが挙げられ、好ましい置換基としては、アルキル基などの炭化水素基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基などであってもよく、好ましくはC1-6アルキル基であり、さらに好ましくはC1-4アルキル基である。
【0047】
好ましいR3aおよびR3bとしては、水素原子である。なお、R3aおよびR3bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0048】
R4aおよびR4bで表される置換基としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基(置換基を有していてもよい炭化水素基)などが挙げられる。炭化水素基としては、R1の項で例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられ、好ましい炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、さらに好ましくはメチル基などのC1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリールC1-4アルキル基である。炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換アミノ基、ニトロ基などが挙げられ、ハロゲン原子および置換アミノ基としては、R1の項の例示と同様の基などが挙げられる。
【0049】
好ましいR4aおよびR4bとしては、水素原子または炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子である。なお、R4aおよびR4bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0050】
前記式(1)において、2つのアクリロイル骨格含有基の置換位置は特に制限されないが、好ましくは2,7位である。
【0051】
前記式(1)で表される代表的なジオール化合物としては、R3aおよびR3bが水素原子であり、R4aおよびR4bが水素原子またはアルキル基などの炭化水素基であるジオール化合物などが挙げられ、例えば、2,7-ビス[α-ヒドロキシメチル-アクリロイル]フルオレンなどのビス[α-ヒドロキシアルキル-アクリロイル]フルオレン;9,9-ジメチル-2,7-ビス[α-ヒドロキシメチル-アクリロイル]フルオレンなどの9,9-ジアルキル-ビス[α-ヒドロキシアルキル-アクリロイル]フルオレンなどが挙げられ、好ましくは9,9-ジメチル-2,7-ビス[α-ヒドロキシメチル-アクリロイル]フルオレンなどの9,9-ジC1-4アルキル-2,7-ビス[α-ヒドロキシC1-4アルキル-アクリロイル]フルオレンが挙げられる。
【0052】
[式(1)で表されるジオール化合物の製造方法]
前記式(1)で表されるジオール化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3a)および(3b)で表される化合物とを反応させる方法などによって調製してもよく、代表的の方法としては、下記式(5)で表される化合物を出発原料として、には下記反応工程により調製できる。
【0053】
【0054】
(式中、X1aおよびX1bは、独立して脱離基を示し、
X2aおよびX2bは、独立してハロゲン原子を示し、
R1、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3b、R4aおよびR4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
【0055】
(式(4)で表される化合物の調製)
前記式(4)で表される化合物は、前記式(5)で表される化合物と、前記式(6a)および(6b)で表される化合物とをフリーデル・クラフツ アシル化反応させることにより合成できる。
【0056】
前記式(5)で表される代表的な化合物としては、例えば、9H-フルオレン、9,9-ジメチルフルオレンなどのフルオレン類が挙げられる。
【0057】
前記式(6a)および(6b)[ならびに式(4)]において、X1aおよびX1bで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カーボネート基[-O-C(=O)-O-RX1]、カルバメート基[-O-C(=O)-N(RX1)2]、スルホ基[-SO3H](またはスルホキシル基)などが挙げられる。なお、カーボネート基およびカルバメート基におけるRX1は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を示す。
【0058】
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0059】
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
【0060】
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基などのC2-10アシルオキシ基などが挙げられる。
【0061】
カーボネート基[-O-C(=O)-O-RX1]およびカルバメート基[-O-C(=O)-N(RX1)2]において、RX1で表される炭化水素基としては、例えば、前記式(1)の項でR1として例示されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた基と同様の基が挙げられる。
【0062】
カーボネート基[-O-C(=O)-O-RX1]としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基などのC1-10アルコキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。
【0063】
カルバメート基[-O-C(=O)-N(RX1)2]としては、例えば、カルバモイルオキシ基;N-メチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基などの(モノまたはジ)アルキル-カルバモイルオキシ基などが挙げられる。
【0064】
好ましいX1aおよびX1bとしてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カーボネート基、カルバメート基、スルホ基が挙げられ、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に塩素原子である。X1aおよびX1bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0065】
また、前記式(6a)および(6b)において、X2aおよびX2bで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。X2aおよびX2bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0066】
前記式(6a)および(6b)で表される代表的な化合物としては、例えば、R3aおよびR3bが水素原子である化合物などが挙げられ、具体的には、3-クロロプロピオニルクロリドなどの3-ハロプロピオニルハライドなどが挙げられる。前記式(6a)および(6b)で表される化合物は、同一化合物であるのが好ましい。
【0067】
前記式(6a)および(6b)で表される化合物の合計使用割合は、前記式(5)で表される化合物1モルに対して、例えば2~10モル、好ましくは2.2~5モル、さらに好ましくは2.3~3モルである。
【0068】
フリーデル・クラフツ アシル化反応は、ルイス酸の存在下で反応させる。ルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム、塩化鉄(III)などのハロゲン化鉄(III)、塩化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、塩化スズ(II)などのハロゲン化スズ(II)、三フッ化ホウ素またはその錯体、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素エーテル錯体などが挙げられる。
【0069】
これらのルイス酸は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。好ましいルイス酸は、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウムである。ルイス酸の使用割合は、前記式(5)で表される化合物1モルに対して、例えば2~10モル、好ましくは2.2~5モル、さらに好ましくは2.3~3モルである。
【0070】
フリーデル・クラフツ アシル化反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化アルカン、ニトロベンゼンなどが挙げられる。これらの溶媒のうち、ジクロロメタンが好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、前記式(5)、(6a)および(6b)で表される化合物、ならびにルイス酸の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度であってもよい。
【0071】
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば-20℃~50℃、好ましくは-10℃~30℃である。反応時間は特に制限されず、例えば1~48時間程度であってもよく、好ましくは12~24時間である。反応終了後、クエンチング(クエンチ処理)してもよく、例えば、氷水と濃塩酸との混合物などを添加してクエンチしてもよい。
【0072】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0073】
このようにして得られる前記式(4)で表される代表的な化合物としては、例えば、2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)フルオレンなどの2,7-ビス(3-ハロプロパノイル)フルオレン;9,9-ジメチル-2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)フルオレンなどの9,9-ジアルキル-2,7-ビス(3-ハロプロパノイル)フルオレンなどが挙げられる。
【0074】
(式(2)で表される化合物の調製)
前記式(2)で表されるフルオレン化合物((メタ)アクリロイル化合物)は、前記式(4)で表される化合物を脱離反応させることにより合成できる。脱離反応としては、E1cb反応であるのが好ましい。E1cb反応は、塩基の存在下で反応させる。塩基としては、例えば、無機塩基、有機塩基に大別できる。
【0075】
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物など;金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩など;金属炭酸水素塩、具体的には、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩などが挙げられる。
【0076】
有機塩基としては、例えば、アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなどの複素環式アミンなどが挙げられる。
【0077】
これらの塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、アミン類、例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどがよく利用される。塩基の使用割合は、例えば、前記式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは3~7モル、さらに好ましくは4~6モルである。
【0078】
E1cb反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化アルカンなどが挙げられる。これらの溶媒のうち、クロロホルムが好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、前記式(4)で表される化合物100質量部に対して、例えば50~5000質量部程度であってもよい。
【0079】
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば0~50℃、好ましくは10~40℃、さらに好ましくは20~35℃である。反応時間は特に制限されず、例えば1~48時間程度であってもよく、好ましくは12~36時間である。
【0080】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、デカンテーション、再結晶、再沈殿、クロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0081】
なお、得られた前記式(2)で表される化合物の保存安定性を向上するために、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよく、重合禁止剤の存在化で調製(反応)してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ベンゾキノン;ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、t-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノンなどのヒドロキノン類;p-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノールなどのカテコール類;N,N-ジエチルヒドロキシルアミンなどのアミン類;1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル;トリ-p-ニトロフェニルメチル;フェノチアジンなどが挙げられる。重合禁止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。重合禁止剤の割合は、前記式(2)で表される化合物の100質量部に対して、例えば0.001~10質量部程度であってもよく、前記式(2)で表される化合物に対して500ppm程度であってもよい。
【0082】
このようにして得られる前記式(2)で表される化合物として、代表的な化合物は、R3aおよびR3bが水素原子である化合物などが挙げられ、例えば、2,7-ビス[(メタ)アクリロイル]フルオレンなどのビス[(メタ)アクリロイル]フルオレン;9,9-ジメチル-2,7-ビス[(メタ)アクリロイル]フルオレンなどの9,9-ジアルキル-ビス[(メタ)アクリロイル]フルオレンなどが挙げられる。
【0083】
(式(1)で表される化合物の調製)
前記式(1)で表されるジオール化合物は、前記式(2)で表される(メタ)アクリロイル化合物と、前記式(3a)および(3b)で表される化合物(アルデヒド類)とを反応、例えば、森田-Baylis-Hillman反応(MBH反応)させて調製できる。
【0084】
前記式(3a)および(3b)において、基R4aおよびR4bは、好ましい態様を含めて前記式(1)と同様である。また、基R4aおよびR4bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
【0085】
前記式(3a)および(3b)で表される代表的な化合物としては、例えば、R4aおよびR4bが水素原子または置換されていてもよい炭化水素基である化合物などが挙げられ、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類が挙げられ、好ましくはホルムアルデヒドである。前記式(3a)および(3b)で表される化合物は、同一化合物であるのが好ましい。
【0086】
前記式(3a)および(3b)で表される化合物の合計使用割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば2~10モル、好ましくは2.2~5モル、さらに好ましくは2.3~3モルであってもよく、特に2.1~2.5モルである。
【0087】
MBH反応は、触媒の存在下で反応させる。触媒は特に制限されず、MBH反応の慣用の触媒を利用してもよく、例えば、3級アミン類、3級ホスフィン類などが挙げられ、好ましくは3級アミン類であり、さらに好ましくは環式3級アミン類(環状3級アミン類)である。
【0088】
環式3級アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(またはキヌクリジン)、キヌクリジン-3-オールなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)などの環状アミジン類などが挙げられる。
【0089】
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい触媒は、環式3級アミン類であり、DABCOなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類が更に好ましい。触媒の使用割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば2~10モル、好ましくは2.2~5モル、さらに好ましくは2.3~3モルであってもよく、特に2~2.5モルである。
【0090】
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。これらの溶媒のうち、ジクロロメタンなどのハロゲン化アルカンが好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、前記式(2)、(3a)および(3b)で表される化合物、ならびに触媒の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度であってもよく、好ましくは300~500質量部である。
【0091】
反応は、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば-50℃~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは10~30℃である。反応時間は特に制限されず、例えば1時間~100日程度であってもよく、好ましくは3時間~10日、さらに好ましくは6~72時間であってもよく、特に5~60分である。
【0092】
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、晶析(再結晶)、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
【0093】
[式(1)で表されるジオール化合物を重合成分として含む重合体(樹脂)]
前記式(1)で表されるジオール化合物は、重合体(樹脂)の重合成分(モノマー)として好適に利用できる。このような樹脂としては、前記式(1)で表されるジオール化合物を重合成分(ジオール成分)として少なくとも含む限り特に制限されず、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂(ポリ共役エステルケトン系樹脂)が好ましい。
【0094】
ポリエステル系樹脂(ポリ共役エステルケトン系樹脂)としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂のうち、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0095】
(ジオール単位)
ポリエステル系樹脂(ポリ共役エステルケトン系樹脂)は、ジオール成分に由来するジオール単位とジカルボン酸成分に由来するジカルボン酸単位とを含むのが好ましい。そのため、前記ジオール単位は、前記式(1)で表されるジオール化合物(第1のジオール成分)に対応する下記式(1P)で表されるジオール単位(第1のジオール単位)を少なくとも含んでいる。
【0096】
【0097】
(式中、R1、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3b、R4aおよびR4bならびに実線と破線との二重線は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
【0098】
ジオール単位は、必要に応じて、前記式(1P)で表される第1のジオール単位とは異なる他のジオール単位(第2のジオール単位)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0099】
第2のジオール単位を形成するための第2のジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール成分、脂環族ジオール成分、芳香族ジオール成分(前記式(1)で表される化合物は除く)、およびこれらのジオール成分のアルキレンオキシド(またはアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体などが挙げられる。
【0100】
脂肪族ジオール成分としては、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0101】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(または1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖状または分岐鎖状C2-12アルキレングリコールなどが挙げられる。好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレングリコール、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレングリコールが挙げられる。
【0102】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジないしデカ直鎖状または分岐鎖状C2-12アルキレングリコールなどが挙げられる。好ましくはジないしヘキサ直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレングリコール、さらに好ましくはジないしテトラ直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレングリコールが挙げられる。
【0103】
脂環族ジオール成分としては、例えば、シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン;ビスフェノールAの水添物などの後述する芳香族ジオール成分の水添物などが挙げられる。
【0104】
芳香族ジオール成分としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類などが挙げられる。
【0105】
これらのジオール成分のアルキレンオキシド(または対応するアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体としては、例えば、C2-4アルキレンオキシド付加体、好ましくはエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体などのC2-3アルキレンオキシド付加体が挙げられ、付加モル数は特に制限されない。具体的には、ビスフェノールA 1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
【0106】
ジオール単位(B)は、これらの第2のジオール単位を、単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0107】
第1のジオール単位の割合は、ジオール単位全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。第1のジオール単位の割合が少なすぎると、耐熱性や、屈折率などの光学的特性が低下するおそれがある。
【0108】
(ジカルボン酸単位)
ジカルボン酸単位は特に制限されないが、耐熱性や、屈折率などの光学的特性などの観点から、芳香族ジカルボン酸成分(第1のジカルボン酸成分)に由来する芳香族ジカルボン酸単位(第1のジカルボン酸単位)を少なくとも含むのが好ましい。
【0109】
芳香族ジカルボン酸成分(第1のジカルボン酸成分)としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸;アルキルベンゼンジカルボン酸、具体的には、4-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
【0110】
多環式芳香族ジカルボン酸としては、例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸、具体的には、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-24アレーン-ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸など;ビアリールジカルボン酸、具体的には、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジカルボキシ-1,1’-ビナフチルなどのビC6-10アリール-ジカルボン酸など;ビス(カルボキシアルコキシ)ビC6-10アリール、具体的には、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチルなどのビス(カルボキシC1-4アルコキシ)ビC6-10アリールなど;ビス[(カルボキシアルコキシ)-C6-10アリール]アルカン、具体的には、ビス[2-(カルボキシメトキシ)-1-ナフチル]メタンなどのビス[(カルボキシC1-4アルコキシ)-C6-10アリール)C1-6アルカンなど;ジアリールアルカンジカルボン酸、具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸など;ジアリールケトンジカルボン酸、具体的には、4.4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸など;ジアリールエーテルジカルボン酸、具体的には、4.4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)エーテル-ジカルボン酸など;ジアリールスルホンジカルボン酸、具体的には、4.4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)スルホン-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0111】
前記ナフタレンジカルボン酸としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0112】
ジカルボン酸単位は、これらの芳香族ジカルボン酸単位を単独でまたは二種以上組み合わせて含んでいてもよい。これらの芳香族ジカルボン酸単位のうち、単環式芳香族ジカルボン酸単位が好ましく、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位などのベンゼンジカルボン酸単位がさらに好ましい。
【0113】
ジカルボン酸単位は、必要に応じて、芳香族ジカルボン酸単位(第1のジカルボン酸単位)とは異なる他のジカルボン酸単位(第2のジカルボン酸単位)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0114】
第2のジカルボン酸単位を形成するための第2のジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分などが挙げられる。
【0115】
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2-12アルカン-ジカルボン酸など;不飽和脂肪族ジカルボン酸、具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0116】
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、具体的には、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルカンジカルボン酸など;シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸など;架橋環式シクロアルケンジカルボン酸、具体的には、ノルボルネンジカルボン酸などのビまたはトリシクロアルケンジカルボン酸;およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0117】
芳香族ジカルボン酸単位(第1のジカルボン酸単位)の割合は、ジカルボン酸単位全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。第1のジカルボン酸単位の割合が少なすぎると、耐熱性や、屈折率などの光学的特性が低下するおそれがある。
【0118】
(カーボネート単位)
樹脂は、前記ジオール単位を含むポリエステル系樹脂である場合、必要に応じてさらにカーボネート単位を含むことでポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂を形成してもよい。
【0119】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「カーボネート単位」とは、ジオール成分などとの反応によりカーボネート結合[-O-C(=O)-O-]を形成可能なカーボネート結合形成成分に由来する構成単位、すなわち、カルボニル基[-C(=O)-]を意味する。換言すると、カーボネート単位(カルボニル基)に隣接して結合する2つのジオール単位の末端酸素原子とともにカーボネート結合を形成できる。
【0120】
そのため、カーボネート結合形成成分としては、ジオール成分との反応により、カーボネート結合を形成可能な化合物であればよく、代表的なカーボネート結合形成成分としては、例えば、ホスゲン、トリホスゲンなどのホスゲン類、ジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステル類などが挙げられる。これらのカーボネート結合形成成分は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0121】
樹脂中のジカルボン酸単位およびカーボネート単位の総量と、ジオール単位との割合は、前者/後者(モル比)=1/0.8~1/1.2、好ましくは1/0.9~1/1.1であり、ほぼ等モルであるのが好ましい。また、ジカルボン酸単位とカーボネート単位との割合は、前者/後者(モル比)=100/0~0/100の範囲から選択でき、例えば99/1~1/99程度であってもよい。
【0122】
(他の構成単位)
なお、樹脂はその種類に応じて、ジオール単位、ジカルボン酸単位およびカーボネート単位とは異なる他の構成単位を含んでいなくてもよいが、必要に応じ、本発明の効果を害しない範囲で含んでいてもよい。
【0123】
他の構成単位としては、樹脂がポリエステル系樹脂である場合、例えば、ヒドロキシカルボン酸成分や対応するラクトン成分、3以上の重合性基(カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)を有する多官能性重合成分などに由来する構成単位が挙げられる。
【0124】
ヒドロキシカルボン酸成分としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、6-ヒドロキシヘキサン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸(ヒドロキシアルカン酸);これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。対応するラクトン成分としては、例えば、ε-カプロラクトンなどのヒドロキシアルカン酸に対応するラクトンなどが挙げられる。
【0125】
合計で3以上の重合性基(カルボキシル基および/またはヒドロキシル基)を有する多官能性重合成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。
【0126】
このような他の構成単位の割合は、構成単位全体(ジオール単位、ジカルボン酸単位、カーボネート単位および他の構成単位の総量)に対して、例えば、50モル%以下、好ましくは以下段階的に、0~30モル%、0~10モル%、0.01~5モル%であり、他の構成単位を実質的に含まないのが好ましい。
【0127】
(樹脂の製造方法)
樹脂の製造方法(または重合)は、前記第1のジオール成分を少なくとも含むジオール成分を重合成分として用いること以外は特に制限されず、樹脂の種類や他の重合成分(共重合成分)などに応じて、慣用の方法が利用できる。
【0128】
例えば、ポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂である場合、前述のジオール単位などに対応するジオール成分と、前述の各ジカルボン酸単位などに対応するジカルボン酸成分とを含む重合成分を重合して製造すればよく、慣用の方法、具体的には、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などであってもよい。
【0129】
ジオール成分とジカルボン酸成分との仕込み割合は、前者/後者(モル比)=例えば、1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9である。また、必ずしもこの範囲である必要はなく、重合成分から選択される少なくとも1種の成分を、予定する導入割合に対して過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどのジオール成分は、ポリエステル系樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
【0130】
また、カーボネート結合形成成分を用いる場合、ジカルボン酸成分およびカーボネート結合形成成分の総量と、ジオール成分との使用割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/1.2~1/0.8、好ましくは1/1.1~1/0.9である。なお、カーボネート結合形成成分は、反応における揮発や分解を考慮して、予定する導入割合に対してやや過剰に用いてもよく、ジカルボン酸単位およびカーボネート単位の総量(樹脂中への導入予定量の総量)に対して、例えば0.1~5モル%、好ましくは2~3モル%過剰にカーボネート結合形成成分を用いてもよい。
【0131】
反応は、必要に応じて、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;チタン、マンガン、コバルトなどの遷移金属;亜鉛、カドミウムなどの周期表第12族金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウム、鉛などの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。代表的な金属化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート(またはチタン(IV)テトラブトキシド)、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが挙げられる。
【0132】
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウム、チタン(IV)テトラブトキシドなどが好ましい。触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
【0133】
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。これらのうち、熱安定剤がよく利用され、熱安定剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルホスフェート(またはリン酸ジブチル)、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。これらのうち、リン酸ジブチルがよく利用される。熱安定剤の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
【0134】
なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなど;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、THFなどのエーテル類、DMFなどのアミド類が好ましい。
【0135】
また、ジカルボン酸成分としては、酸クロリドなどの酸ハライドを用いる場合、反応で生成するハロゲン化水素を捕捉(トラップ)するため、塩基の存在下で反応させてもよい。塩基としては、例えば、無機塩基、有機塩基などが挙げられる。
【0136】
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物など;金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩など;金属炭酸水素塩、具体的には、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩などが挙げられる。
【0137】
有機塩基としては、例えば、アミン類、具体的には、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなどの複素環式アミンなどが挙げられる。塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。
【0138】
これらの塩基のうち、アミン類、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどがよく利用される。塩基の使用量は、特に限定されないが、例えば、ジカルボン酸ハライド1モルに対して、例えば1~5モル程度、具体的には1~2モル、好ましくは1.05~1.5モル、さらに好ましくは1.1~1.2モルであってもよく、特に2~4モル、なかでも2~2.5モルである。
【0139】
反応は、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、常圧下であってもよく、減圧下、例えば、1×102~1×104Pa程度で行うこともできる。エステル交換反応は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、重縮合反応は、減圧下で行ってもよい。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、150~320℃、好ましくは250~310℃、さらに好ましくは270~300℃である。また、ジカルボン酸成分がジカルボン酸ハライドである場合、反応温度は、例えば-10℃~30℃、好ましくは0~20℃、さらに好ましくは2~10℃であってもよく、例えば10~40℃、好ましくは20~30℃である。
【0140】
反応終了後、生成した樹脂は、慣用の方法、例えば、洗浄、抽出、濃縮、乾燥、再沈殿、遠心分離、ろ過、カラムクロマトグラフィー、吸着などの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
【0141】
(樹脂の特性)
本発明の樹脂は、構成単位(重合成分)として、前記式(1P)で表されるジオール単位を含むため、主鎖骨格中にフルオレン骨格およびアクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格、すなわち、[-C(=O)-C(=CHR3a)-]および[-C(=O)-C(=CHR3b)-])を有している。そのため、高い耐熱性や、高い屈折率などの光学的特性を示すこともできる。
【0142】
樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば50~200℃程度であってもよい。また、樹脂の5%質量減少温度は、例えば80~400℃程度であってもよい。樹脂は結晶性または非晶性樹脂であってもよく、結晶性樹脂である場合、融点Tmは、例えば100~300℃程度であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tg、5%質量減少温度および融点Tmは、熱重量示差熱分析(TG-DTA)や示差走査熱量分析(DSC)により測定できる。
【0143】
また、樹脂の屈折率は、温度25℃、波長589nmにおいて、例えば1.5~1.7程度であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、屈折率は、多波長アッベ屈折計により測定できる。
【0144】
また、樹脂の数平均分子量Mnは、例えば1000~100000(例えば10000~50000)程度であってもよく、好ましく以下段階的に、1000~50000、3000~10000、4000~7000である。樹脂の分子量分散度D(Mw/Mn)は、例えば1~5程度であってもよく、好ましく以下段階的に、1.5~4、2~3.5、2.5~3である。数平均分子量や分子量分散度は、樹脂の用途などに応じて適宜調整するのが好ましい。
【0145】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数平均分子量Mnおよび分子量分散度D(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0146】
前記樹脂は、高い耐熱性や、高屈折率などの光学的特性を備えた成形体を形成できるため、本発明は、前記樹脂を含む成形体も包含する。成形体は、少なくとも前記樹脂を含んでいればよい。
【0147】
成形体は、他の樹脂や慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の合計割合は、前記樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
【0148】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0149】
成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
【0150】
なお、本発明の樹脂は、アクリロイル骨格を有する構成単位を含むためか、比較的穏和な条件下で分解することもできる。例えば、樹脂がポリエステル系樹脂(ポリ共役エステルケトン系樹脂)である場合、エステル結合ではなく、前記式(1P)で表される単位中のアリル位の炭素原子([-CHR4a-]および[-CHR4b-])と、この炭素原子に隣接する酸素原子との間の結合が加水分解するためか、室温(20~30℃程度)、水中、塩基の存在下、特に、前記塩基が水酸化物イオン、アルコール、水、チオール、アンモニア、アミンなどの求核剤の存在下であっても容易にまたは効率よく分解できる。これらの塩基または求核剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基または求核剤うち、水酸化ナトリウム水溶液などの水酸化物イオンを含む水溶液、トリエチルアミンなどの3級アミンが好ましく、双方を組み合わせて用いるのがさらに好ましい。さらに、分解生成物から重合に用いたモノマー成分を回収できる場合もあり、リサイクル可能な環境に優しい樹脂、すなわち、循環型ポリマーとして有用である。
【0151】
また、本発明の樹脂は、主鎖骨格中にアクリロイル骨格を有しているため、このアクリロイル骨格の不飽和結合を用い、硬化性樹脂(重合成分)または架橋剤などとして利用して硬化性組成物を形成してもよい。
【0152】
硬化性組成物は、前記樹脂を少なくとも含んでいればよく、不飽和二重結合を有する他の重合成分を含んでいてもよい。他の重合成分としては、例えば、不飽和二重結合を有するモノマー(または反応性希釈剤)、具体的には、スチレンなどの芳香族ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートなど;多官能性(メタ)アクリレートなどの硬化性樹脂などが挙げられる。
【0153】
また、硬化性組成物は、不飽和二重結合を有する他の重合成分(またはモノマー成分)の他に、熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)などの重合開始剤、光増感剤、溶媒、前記慣用の添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0154】
前記硬化性組成物は、活性エネルギー(又は活性エネルギー線)を付与して硬化し、硬化物を形成してもよい。前記活性エネルギーは、熱エネルギーおよび/または光エネルギー、例えば、紫外線、X線などが有用である。
【0155】
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度としては、例えば、50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~120℃である。
【0156】
また、光エネルギー(例えば、紫外線など)を利用して光照射する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50~10000mJ/cm2、好ましくは70~8000mJ/cm2、さらに好ましくは100~5000mJ/cm2、特に、500~3000mJ/cm2である。
【0157】
硬化物の形状も特に制限されず、前記成形体の形状として例示した形状と同様である。
【実施例0158】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各評価方法は以下のとおりである。
【0159】
[評価方法]
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「AVANCE NEO」)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を用い、化学シフト値はテトラメチルシラン(TMS)および溶媒の信号で較正した。
【0160】
(分子量)
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)および分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「HK-404L」(昭和電工(株)製)を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(高速液体クロマトグラフ用、安定剤あり、和光純薬工業製)を0.6mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光製)および示差屈折率計(RI-4035,日本分光製)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー製、TSKゲルオリゴマーキット、Mn:1.03×106、3.89×105、1.82×105、3.68×104、1.63×104、5.32×103、3.03×103、8.73×102)による三次曲線で較正して評価した。
【0161】
[合成例1-1]2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの合成
【0162】
【0163】
アルゴン雰囲気下、氷浴中で塩化アルミニウム(57.6g、432mmol)にジクロロメタン(72mL)を加え、そこに式(6-1)で表される3-クロロプロピオニルクロリド(54.6g、432mmol)のジクロロメタン(144mL)溶液を20分かけて加え、その後、ジクロロメタン(90mL)に式(5-1)で表される9,9-ジメチルフルオレン(35.9g、180mmol)を溶解させて調製した溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、40分間氷浴中で反応させ、その後は氷浴を取り払い室温で22時間反応させた。
【0164】
反応後、氷水(190g)に濃塩酸(20mL)を加えて調製した試薬に反応混合溶液を流し込みクエンチングを行った。このとき、沈殿が生じたため、ろ過により溶液を回収し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、洗浄した。また、沈殿物にジクロロメタンを加えて洗浄し、可溶部を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和、洗浄した。得られた有機層を合わせて、溶媒を留去して固体を得た。固体をメタノールおよび熱ヘキサンで洗浄し、真空乾燥して、式(4-1)で表される2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンを収量63.4g、収率93.8%で得た。
【0165】
得られた式(4-1)で表される2,7-ビス(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの
1H-NMRスペクトルデータを
図1および以下に示す。
【0166】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,25℃):δ8.08(s,2H,1位および8位),8.10-7.99(m,2H,3位および6位),7.88-7.86(m,2H,4位および5位),3.97(t,J=6.8Hz,4H,CH2Cl),3.54(t,J=6.8Hz,4H,C(O)CH2),1.55(s,6H,CH3)ppm。
【0167】
[合成例1-2]2,7-ジアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンの合成
【0168】
【0169】
アルゴン雰囲気下、式(4-1)で表される2,7-ジアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(63.4g、169mmol)をアルゴン雰囲気下でクロロホルム(300mL)に溶かし、室温で溶液を撹拌しながら、トリエチルアミン(82.2g、811mmol)を10分かけて滴下し、室温で35分間反応させた。
【0170】
その後、反応溶液を1M塩酸(100mL×2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL×2)、蒸留水(100mL×2)、および飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL×1)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮し、常温で真空乾燥を行って固体として式(2-1)で表される2,7-ジアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンを白色固体として得た。収量および収率は、それぞれ42.5g、収率83.1%であった。
【0171】
得られた2,7-ジ(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの
1H-NMRスペクトルデータを
図2および以下に示す。
【0172】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,25℃):δ8.08(d,J=1.5Hz,2H,1位および8位),7.99(dd,J1=7.9Hz,J2=1.5Hz,2H,3位、および6位),7.87(d,J=7.9Hz,2H,4位および5位),7.24(dd,J1=17.0Hz,J2=10.5Hz,2H,-CH=),6.48(dd,J1=17.0Hz,J2=1.7Hz,2H,CHH=),5.98(dd,J1=10.5Hz,J2=1.7Hz,2H,CHH=),1.57(s,6H,CH3)ppm。
【0173】
[実施例1]2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの合成
【0174】
【0175】
大気雰囲気下、式(2-1)で表される2,7-ジアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(42.5g、140mmol)と、式(3-1)で表されるホルムアルデヒド(37質量%水溶液、25.1g、308mmol)と、DABCO(31.4g、280mmol)と、テトラヒドロフラン(440mL)とを混合し、室温で35分撹拌しながら反応させた。反応後、反応液を蒸留水(300mL)で希釈し、酢酸エチル(200mL×1、100mL×2)で抽出した。有機層を2つに分け、それぞれの有機層を蒸留水(100mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)との混合溶液で洗浄した後、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去した。粗生成物を酢酸エチル、クロロホルムで洗浄し、常温で真空乾燥を行って固体として式(1-1)で表される2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンを白色固体として収量25.6g、収率55.1%で得た。
【0176】
得られた2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの
1H-NMRスペクトルデータを
図3および以下に示す。
【0177】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,25℃):δ8.08(d,J=7.8Hz,2H,1位および8位),7.98(d,J=1.0Hz,2H,3位および6位)、7.80(dd,J1=7.8Hz,J2=1.0Hz,2H,4位および5位)、6.10(d,J=1.0Hz,2H,CHH=),5.68(d,J=1.0Hz,2H,CHH=),5.18(t,J=5.7Hz,2H,OH),4.33(d,J=5.7Hz,4H,アリル位),1.52(s,6H,メチル基)ppm。
【0178】
[実施例2]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
【0179】
【0180】
アルゴン雰囲気下、式(1-1)で表される2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレン(0.362g、1.00mmol)のジクロロメタン(1.0mL)溶液にトリエチルアミン(0.28mL、2.0mmol)を加えて氷浴で冷却し、イソフタル酸クロリド(0.203g、1.00mmol)のジクロロメタン溶液(1.0mL)を10分かけて滴下し、30分後に室温で21時間反応させた。
【0181】
反応後、反応液をジクロロメタン(2mL)で希釈し、メタノール(80mL)に滴下し、沈殿を3000rpmで10分間遠心分離した。50℃で真空乾燥を行って、得られた固体をジクロロメタン(2.5mL)に溶かし、メタノール(50mL)に再沈殿した。沈殿を3000rpmで15分間遠心分離した。50℃で真空乾燥を行って、得られた固体をジクロロメタン(2.5mL)に溶かし、ヘキサン(50mL)に再沈殿した。50℃で真空乾燥を行って、固体として上記式で表されるポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.459g、収率93.2%で得た。
【0182】
得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の
1H-NMRスペクトルデータを
図4および以下に示す。
【0183】
1H-NMR(400MHz,CDCl3,25℃):δ8.78(s,1H,イソフタロイル基の2位)、8.26(d,J=7.6Hz,2H,イソフタロイル基の4位および6位)、7.92(s,2H,フルオレン環の1位および8位)、7.83(br,4H,フルオレン環の3~6位)、7.54(t,J=7.6H,イソフタロイル基の5位)、6.22(s,2H,CHH=)、5.93(s,2H,CHH=)、5.30(s,4H,アリル位)、1.53(s,H,メチル基)ppm。
【0184】
また、得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは4200であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は3.34であった。
【0185】
[実施例3]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
溶媒をジクロロメタンに代えてテトラヒドロフランとした以外は実施例2と同様に実験し、ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.459g、収率93.2%で得た。得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは4900であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は3.55であった。
【0186】
[実施例4]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
溶媒をジクロロメタンに代えてN,N-ジメチルホルムアミド(1mL)とした以外は実施例2と同様に実験し、ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.467g、収率94.8%で得た。得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは5200であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は2.71であった。
【0187】
[実施例5]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
塩基をトリエチルアミンに代えてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.38mL,2.0mmol)とした以外は実施例2と同様に反応を仕込み、氷浴で冷却しながら15分間、その後室温で21時間反応させ、重合溶液をメタノール(50mL)に滴下し再沈澱を行った。遠心分離(3000rpm,15分)で沈殿を回収し、50℃で真空乾燥して、ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.463g、収率94.1%で得た。得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは4900であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は3.49であった。
【0188】
[実施例6]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
実施例4で、トリエチルアミンと2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとの溶液にイソフタル酸クロリドの溶液を滴下していたところ、イソフタル酸クロリドの溶液にトリエチルアミンと2,7-ビス(α-ヒドロキシメチル-アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとの溶液を滴下する操作に変更した。それ以外の操作は実施例4と同様に行い、ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.470g、収率95.5%で得た。得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは2900であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は2.99であった。
【0189】
[実施例7]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の合成
トリエチルアミンの量を2.0mmolに代えて、4.0mmolとしたこと以外は実施例6と同様にしてポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を収量0.293g、収率59.5%で得た。得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の数平均分子量Mnは4400であり、分子量分散度D(Mw/Mn)は2.60であった。
【0190】
[実施例8]ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の分解
実施例6で得られたポリエステル(ポリ共役エステルケトン)148mgをN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶かし、トリエチルアミン0.416mL(3.00mmol)を滴下し、さらに20質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.50mL,3.1mmol)を加えて室温で撹拌して、ポリエステル(ポリ共役エステルケトン)を分解(主鎖切断)した。1時間後に蒸留水を沈殿が生成するまで加え、分解物63mgを得た。
分解反応前後のポリエステル(ポリ共役エステルケトン)の分子量を評価したサイズ排除クロマトグラムを
図5に示す。分解前のピークトップ分子量(Mp)が30200であるのに対して、分解後のピークトップ分子量(Mp)は検量線の範囲外(計算上は300および66)であり、分子量が大きく低下した。